説明

分化した内皮前駆細胞の治療的使用

本発明は、内皮コロニー形成細胞を単独で又は他の細胞型及び/又は薬剤と併用して投与し、それを必要とする組織内で血管新生及び/又は脈管形成を誘導することにより、虚血のおそれがある又は実際に虚血の組織への血流を回復するための生成物、工程、及び治的療方法に関する。一態様において本発明は、虚血性心疾患、及び他の虚血性血管疾患を含む虚血成疾患を患う患者において、血管新生及び/又は脈管形成を誘導するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国暫定出願第61/149,872号の優先権を主張し、その全体は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明は一般に、哺乳動物の治療的使用を含むさまざまな目的に、高度に増殖するECFCsと呼ばれる内皮前駆細胞の血管新生能と脈管形成能に関連する生成物と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
虚血は、体のあらゆる場所への酸素不足を特徴とする内科的疾患である。例えば末梢血管疾患(PAD)とは、動脈閉塞や脚への血流障害が引き起こす虚血状態である。PADは、特に年配者に多く見られ、アメリカでは約1030万人が発症している。PADの多くの患者は、労作が原因で消耗性の下肢痛を発症する。現在用いられている治療法による積極的な治療にもかかわらず、PADの患者の25%は診断の1年内に片脚を部分的に切断する必要がある。これは毎年アメリカでは、10万人以上が該当することを意味する。5年後までに両脚が無傷なのはこれらの患者のわずか半数であり、初期患者の20%近くがPAD又は虚血性疾患関連で死亡する。
【0003】
虚血はまた、心臓疾患を引き起こすことがある。毎年約120万人のアメリカ人が心臓発作を患い、結果的に約40%が死亡する。多くの心臓発作は、心臓血管の一部又は全部の閉塞をもたらす冠動脈疾患(CAD)に起因する。約60%の患者が心臓発作を克服するものの、しばしば永続的な心筋障害を生じる。心臓専門医は、最高でも心臓発作後の約60%の心筋しか救うことができない。国民健康栄養調査によると、2003年のアメリカではあらゆる形態の冠動脈性心疾患の総罹患数が1300万人を上回り、4030億ドルという驚くべき費用が必要となった(心臓疾患と脳卒中−2008年更新:血液循環、2008年;117e25−e146)。心臓発作の初期兆候に対する国民意識の高まりと正確な診断をするために改良された医術により、心臓発作を回避する介入療法の可能性が高まった。初期及び末期の心臓疾患の患者を治療する、薬理学的、新血管形成、及び/又は細胞に基づいた治療を含む低侵襲方法の改良によって、心不全の頻度や重症度が低下することが期待される。この目標が成功する重要な要素は、心筋虚血問題を上手く対処することである。
【0004】
慢性心筋虚血は、心臓機能を低下させ最終的に虚血心臓組織を死滅させる。脈管形成や血管形成として知られる生体内作用の刺激により心臓機能が救済され、正常な状態まで回復すると考えられている(Melero−Martin,J.M.et al.,In Meth.Enzymol.,445,303−329(2008))。脈管形成が新たに新しい血管を形成することをいうのに対し、血管新生は既存の血管から新たな血管を形成することを意味する。脈管形成は、主に胎生発育間に生じ、新しい血管を形成する成長因子や細胞外マトリクスなどの局所因子に反応して内皮コロニー形成細胞(ECFC)の移動と分化に関連する。新たに形成された血管樹はその後余分なものが剪定され、血管形成過程へ広がる。
【0005】
近年、成体内においても脈管形成が生じることが発見された(Melero−Martin,J.M.et al.,Circ.Res.,103,194−202(2008))。程度の差はあるものの循環ECFCsは、例えば腫瘍増殖の間又は外傷後の血管再生において生じる新血管形成に寄与する。
【0006】
心筋虚血や他の虚血関連疾患の治療及び/又は予防において、脈管形成と血管新生を誘導する手段が重要であるとわかっている。虚血病状が発現した後に心筋領域は壊死し、組織は死滅して線維性瘢痕組織を形成する。デノボの血液供給が、壊死組織へ栄養物やガス交換機能を供給する最初のステップとして定着すれば、線維成組織の機能的再形成が生じる可能性がある。虚血領域における既存の周囲の機能的組織の脈管構造と吻合する血管組織網の設立は、再生過程の特性である。一旦この過程が生じたら、局所的な血管形成過程は、組織再構成及び機能回復として血管密度の最適度合いを供給する。
【0007】
外科的介入は心筋虚血を含む多くの虚血の治療に高い成果を収める。例えば、冠動脈バイパス手術や冠動脈血管形成術によりほとんどの場合において心筋虚血の症状が緩和される。しかし、患者にとって医療費、不快感、及び回復期間の削減を含むさまざまな理由で外科的介入の代替が望ましい。この点で、新しい血管を生成する身体能力を促進する可能な手段として、薬学的介入の関心が高まっている。例えば、FGF−1、FGF−2、FGF−5、PDGF−1、PDGF−2、VEGF、及びIGFなどの増殖因子の1又はそれ以上の投与にかなりの研究的興味が示されている。虚血性疾患の治療及び/又は予防用の細胞ベースの治療を含む他の潜在的な治療への関心が高まっている。
【0008】
細胞ベースの治療は、血管の回復を促進すべく損傷部位に前駆細胞又は幹細胞の配送を含んだ虚血性疾患を治療する新しい選択肢を提示する。骨髄由来細胞や末梢血中で循環する細胞が、創傷治癒、肢虚血、及び心筋梗塞後の新血管形成に寄与するといくつかの研究が示している(Rafii,S,and Lyden,D.,Nat.Med.6,702−712,2003を参照されたい)。細胞ベースの治療における技術の進歩は有望であるが、より小さい末梢血管の適切な血管再生がいまだ課題である。さらに、血管再生が生じても、臓器機能が完全に回復し、組織への更なる損傷を防止するには、大抵の場合速度がゆっくり過ぎる。更にさまざまな臓器特異的な幹細胞、前駆細胞、造血細胞を含む骨髄単核細胞の全集団の使用は、新しい毒性上の懸念を伴う(e.g.,Arora et al.,Biol.Blood & Marrow Transplant 13 145,2007)。
【0009】
哺乳類動物の組織における血管新生及び/又は血管の増殖及び機能を高める効果的な細胞ベースの方法と虚血性疾患を含むヒトの疾患の効果的な治療手段が依然として必要である。新血管再生治療を通して初期及び末期疾患の患者を治療する血管形成及び血管原性の療法の直接投与といった侵襲性の少ない方法を改良することで、心臓血管や他の虚血関連疾患の頻度と重症度が大幅に減少することが期待される。本願発明は、細胞に基づいた組成物の投与によりヒト組織を含む哺乳動物の組織への血流を改善する組成物、生産物、及び方法を提供する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、必要に応じて哺乳動物の組織への血流を増大することを含む産業上、研究上、及び/又は治療上のアプリケーションに増殖性の高い内皮コロニー形成細胞を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、ヒトを含む哺乳類動物において、潜在的又は実際の虚血や血流の減少又は遅延に関する損傷(即ち酸素供給不足)に起因あるいはこれらを伴う疾患又は病気を予防、緩和、又は治療する細胞に基づいた方法を提供することであり、心筋の病気や疾患、先天性心臓障害、心臓弁疾患、不整脈、左心室拡大塞栓、心不全、冠動脈疾患(CAD)、狭心症、心内膜下線維症、左又は右心室肥大、心筋炎、心筋梗塞(MI)、鬱血性心不全(CHF)、脳卒中、末梢動脈疾患(PAD)、創傷治癒、及び/又は他の虚血性疾患を含むがこれらに限定されるものではない。
【0012】
本発明の別の目的は、哺乳動物の組織において血管新生及び/又は脈管形成を誘導する方法を提供し、臨床的応用で用いる血管を生成又は再生成することにより血流を回復及び/又は増大させることであり、組織は虚血又は潜在的に虚血な組織を含むが、これらに限定されるものではなく、臨床的応用は、心筋梗塞、末梢動脈疾患、冠動脈疾患、創傷治癒、発作、腎動脈疾患、糖尿病潰瘍治癒、及び鬱血性心不全を含むがこれらに限定されない。
【0013】
本発明の別の目的は、治療の目的で核型が正常なECFCsを具える増殖性の高い内皮コロニー形成細胞を具える組成物を提供することであり、この治療を必要とする虚血性疾患の患者を治療することを含む。
【0014】
本発明の別の目的は、凍結されたECFCsを含むECFCsを具えるキットや虚血性疾患の治療に用いる凍結されたあるいは生の単離された脂肪間質細胞(ASC)などのヘルパー細胞、薬学的な担体、添加物、バッファ、タンパク質、ペプチド、マトリクス材料、及び/又は他の薬剤を含む他の薬剤の1又はそれ以上の他の薬剤を選択的に提供することである。
【0015】
更なる本発明の別の目的は、ECFCsの血管新生の可能性を向上及び/又は増大させる生成方法及び/又は過程に関連する。
【0016】
これらや他の本発明の目的は、発明の概要、望ましい実施例の説明、及び特許請求の範囲から明らかである。
【0017】
一実施例では、本発明は核型が正常なECFCsを具える物質の組成に関連する。
【0018】
他の一実施例では、本発明は核型が正常なECFCsを具えるプロダクトバイプロセスに関する。
【0019】
他の一実施例では、本発明は心筋梗塞(MI)、冠動脈疾患(CAD)、鬱血性心不全(CHF)、脳卒中、末梢動脈疾患(PAD)を含む虚血性疾患や、慢性心筋虚血及び急性心筋虚血を含む他の虚血性疾患の患者の治療方法に関するものであり、これは血管新生及び/又は脈管形成を促進する効果的な量のECFCsを投与する方法を具える。
【0020】
他の実施例では、本発明は、虚血性傷害の部位を含む患者の必要な部位に血流又はかん流を増加させる方法に関するものであり、これはECFCsを投与する方法を具える。
【0021】
他の実施例では、本発明は、血管新生及び/又は脈管形成を誘導することで必要とする患者の虚血性障害及び/又は組織死を回復、抑制、又は予防する方法に関するものであり、ECFCsを効果的な量投与する方法を具える。
【0022】
他の実施例では、本発明は、虚血性疾患又は虚血性状態を伴う血管損傷を回復、抑制、又は予防する方法に関するものであり、これは効果的な量のECFCsを投与する方法を具える。
【0023】
他の実施例では、本発明は、ECFCsの投与を具える心臓細胞アポトーシスを回復、抑制、又は予防する方法に関する。
【0024】
他の実施例では、本発明は、1若しくはそれ以上のヘルパー細胞型又は他の平滑筋細胞及び/又は周皮細胞、更に好ましくは適切なマトリクス材料など他のソースと併用し、それを必要とする患者へECFCsを投与することを具える虚血性疾患を回復、抑制、又は予防する方法に関するものである。
【0025】
他の実施例では、本発明は、ECFCsを単独で又は1若しくはそれ以上の適切なヘルパー細胞やマトリクス材料と併用し、それを必要とする患者に投与することにより、心筋虚血を含むがこれに限定されない虚血を伴う線維症を阻害し又は回復させる方法に関する。
【0026】
他の実施例では、本発明は、ECFCsの単独又は脂肪間質細胞、骨髄単核細胞、及び子宮内膜間葉細胞、又はWharton’s jelly間葉細胞からなる群から選択されるものを含むもののこれに限定されないヘルパー細胞と併用投与に関するものであり、血流を増大させて心筋梗塞(MI)、鬱血性心不全(CHF)、脳卒中、末梢動脈疾患(PAD)、及び他の虚血性疾患を含む虚血性疾患を回復、抑制、又は予防する。
【0027】
他の実施例では、本発明は、β−遮断薬、利尿剤、Caチャネル遮断薬、及びACE阻害剤を含むもののこれに限定されない1又はそれ以上の他の薬剤と併用するECFCsの投与に関するものであり、心筋梗塞(MI)、鬱血性心不全(CHF)、脳卒中、末梢動脈疾患(PAD)、及び虚血性疾患又は状態を含む疾患を治療又は予防する。
【0028】
他の実施例では、本発明は、ECFCs単独で具える組成物又はヘルパー細胞を併用し、選択的に補助具を併用したマトリクス材料を含んだ組成物を必要な患者に投与することに関するものであり、補助具はステントや人工血管を含む人工器官を含むがこれに限定されるものではない。
【0029】
他の実施例では、本発明は、タンパク質、ペプチド、及び増殖因子を含む1又はそれ以上の他の生理活性物質をECFCsと併用して投与するステップを具える心筋梗塞(MI)、鬱血性心不全(CHF)、脳卒中、末梢動脈疾患(PAD)、冠動脈疾患(CAD)、及び虚血の治療方法に関する。
【0030】
更なる実施例において本発明は、治療的に効果的な量のECFCsを単独で又はヘルパー細胞及び/又は他の薬剤を含む1又はそれ以上の薬剤と併用して具える薬学的組成物に関するものであり、他の薬剤は、増殖因子、β−遮断薬、利尿剤、Caチャネル遮断薬、ACE阻害剤、及び選択的に適切なマトリクス材料を更に含有するものを含むもののこれに限定されるものではない。
【0031】
この発明の概要は、ある概念を単に紹介したに過ぎず、他に指定のない限り特許請求の範囲のいかなる重要な又は本質的な特徴を特定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1A】図1A(上のパネル)は、コントールとECFCで治療した動物を示すヌードラットの心虚血誘導4週間後の左心室拡張末期径(LVEDD)である。ECFCで治療した動物は直径の減少が大幅に改善されており、ネガティブコントロールと比べてノーマルの直径に密接に近似することを示す。
【図1B】図1B(下のパネル)は、ノーマル、コントロール、及びECFCで治療した動物を示すヌードラットの心虚血誘導の4週間後の左心室短縮の割合である。ECFCで治療した動物は、コントロールの動物より約50%の改善を示す。
【図2】図2は、梗塞誘導2週間後と4週間後のコントロール(上下とも左のパネル)とECFCで治療された動物(上下とも右のパネル)である梗塞を起こしたラットの心臓の染色切片における毛細血管密度を示す。
【図3】図3は、コントロールとECFCで治療した梗塞を起こしたラットの心臓における毛細血管密度(mmあたり)である。
【図4】図4は、健康なヒトの結腸の組織切片である。ヒトの抗核マトリクスタンパク質を用いて茶色に染色した核である。ヒト抗CD31を用いてCD31を赤に染色した。
【図5】図5は、ECFCs、ASC、及びExtracel(商標)マトリクス材料の混合物を注入した健康なラットの心筋の組織切片である。
【図6】図6は、ECFCs、ASC、及びExtracel(商標)マトリクス材料の混合物を注入して実験的に誘導した虚血のラットの心筋の組織切片である。矢印「B」は、ラットの血管内膜に組み込まれた細胞中のヒトの核を特定したもである。
【図7】図7は、注入部位に隣接した心臓の一部から採取し、実験的に虚血を誘導したラットの心筋の組織切片である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
ここで用いられる用語「HPP−EPC」は、WO/2005/078073に説明されているように、高い増殖可能性を有する臍帯血から単離された内皮前駆細胞のサブクラスをいう。
【0034】
ここで用語「ECFCs」は、胎盤索条組織、臍帯血、及び他の適したソースから単離した内皮コロニー形成細胞をいう。好ましい実施例では、ECFCsは、正常核型を示す。核型が正常なECFCは、本書に記載された方法により正常核型を有するクローンからHPP−EPCを拡大することにより得ることができる。好ましいECFCsの市販のソースは、EndGenitor Technologies,Inc(Indianapolis,IN)が製造する臍帯血から単離されたECFCs(登録商標)であり、調査利用にDynacell Life Science,LLC 19 Hendricks St.Ambler,PA 19002 and Lonza Walkersville,Inc.,8830 Biggs Ford Road City,Walkersville.Country,Maryland.,21793から入手することができる。
【0035】
用語「連絡する」、「吻合する」、「吻合」は、生体作用又は血管を含む管状構造間で生成される物理的な接続の結果物をいう。
【0036】
ここで使用する用語「治療効果のある」は、例えば心かん流を増加、狭心症を減少、及び/又は新血管形成させることにより心筋虚血などの治療において、患者に臨床的に有意義な利益を提供するこという。
【0037】
ここで使用する用語「ASC」は、ヒト又は他の哺乳動物由来の細胞を含む脂肪組織間質細胞をいう。
【0038】
ここで使用する用語「血管新生」は、既存の管から新しい血管を増殖させることを含む任意の生理学的過程を意味する。
【0039】
ここで使用する用語「脈管形成」は、血管細胞から新しい血管を自然形成する用語に使用する。
【0040】
用語「動脈形成」は、既存の動脈血管の直径が増大することをいう。
【0041】
ここで細胞又は細胞集団に対して用いる用語「正常核型」又は「実質的に正常な核型」あるいは「核型的に正常」は、染色体が適切な数存在し、著しく変化しないことを意味する。細胞集団で任意の適切な手段で検出するときは、約95%以上、より好ましくは約98%以上、更には約99%以上の細胞がこの特徴を示すのが好ましい。一実施例では、ここで説明するようにコンフルエンスに先立ち増殖細胞を採取することにより、核型的に正常なECFCs(すなわちECFCs(登録商標))を生成する。
【0042】
用語「マトリクス」又は「マトリクス材料」あるいは「薬学的に許容なマトリクス」若しくは「細胞外マトリクス」は、ここでは合成又は組み換え技術において作られたペプチド又はタンパク質ポリマーを含む任意の適切な生体適合性ポリマーを意味する。例えば、このポリマーマトリクスは、コラーゲン及び/又はフィブロネクチンを含むマトリクス材料、天然又は修飾ヒアルロン酸、ヘパリン、及びゼラチンの組み合わせを含むヒドロゲル、架橋ポリエチレングリコールジアクリレート、PEGDAを含むがこれらに限定されるものではない。本発明のいくつかの実施例では、特定の場所に細胞を集結させると考えられるマトリクス材料を投与前に細胞に混合する。
【0043】
用語「同時投与する」又は「同時投与」は、ヒト患者を含む対象に1を超える薬剤を同時又は連続して治療的に投与することをいう。例えば、2つの異なる細胞型の同時投与は、2つの異なる細胞型を混合する剤形で1回投与すること、又は1の細胞型を有する剤形を患者に1回又はそれ以上を投与した後に別の細胞型を有する服用量を投与することを含む。
【0044】
ここで使用される用語「ヘルパー」又は「ヘルパー細胞」若しくは「ヘルパー集団」は、それを必要とする哺乳動物に投与したときに、ECFCsと組み合わさって血管新生及び/又は脈管形成を促進する任意の細胞集団、細胞ベースの材料、又は物質の組成を意味する。「ヘルパー」又は「ヘルパー細胞」は、ヒトを含む哺乳類動物にインビボで投与又は同時投与するときに、血管新生及び/又は脈管形成を増大させる周皮細胞及び/又は平滑筋細胞の適切なソースを提供すると信じられている。例えば、適切なヘルパーは、脂肪間質細胞及び/又は子宮内膜間葉細胞を単独で又は1又はそれ以上の他のヘルパー細胞型と併用するものを含むが、これに限定されるものではない。用語「ヘルパー細胞」は、広く平滑筋細胞及び/又は周皮細胞の任意の適切なソースを含むものを意味する。
【0045】
用語「虚血性疾患」又は「虚血」はここでは、体内の任意の組織への酸素供給が減少することにより特徴付けられる疾患及び/又は状態をいい、例えば虚血性心疾患、一過性脳虚血発作(TIA)、心虚血、脳卒中、再かん流傷害、腸管虚血、腸虚血、末梢動脈疾患、重症虚血肢、腸間膜、脳虚血、下肢虚血、心筋梗塞、末梢動脈疾患、冠動脈疾患、狭心症、創傷治癒、腎動脈疾患、糖尿病潰瘍治癒、鬱血性心不全、及び肝虚血をいうが、これに限定されない。虚血は、多くの病気によって引き起こされ、これは貧血、脳卒中、及びアテローム性動脈硬化を含むがこれに限定されるものではない。多くの疾患は、例えば脳血管虚血、腎虚血、肺虚血、肢虚血、心筋虚血、及び虚血性心筋症を含む虚血に起因する。この記載は心筋虚血に焦点を当てるが、当然のことながらここに記載された方法と組成物は組織内及び心臓以外の臓器の虚血性疾患および病気を治療及び/又は予防も対象としている。
【0046】
ECFCs及び/又は他の細胞を、それを必要とする患者への投与に関連しここで使用される、用語「用量」、「量」又は「数」は、臨床的利点を得るために投与するECFCs、好ましくはECFCs(登録商標)、又は他の細胞の量を示すのに本質的に互換性を有して使用される。
【0047】
例えば虚血関連の病気の治療又は予防において、動脈血管の増殖を促進するのに本発明の方法と医薬組成物を用いることができる。かかる病気は、脳卒中又は心臓発作を含むがこれに限定されるものではない。更に、創傷治癒を促進し、手術で移植された組織の血管発生を促進し、外科的に作られた吻合の治癒を増進させるべく本発明の製品、方法、及び組成物を用いることができる。
【0048】
本発明の方法と組成物は、臓器又は組織への虚血障害を患っている又は患う恐れがある患者を治療するステップを含んで、生体組織への血流を増進させるのに効果的であり、この組織は心筋組織を含むがこれに限定されるものではない。組織への血液供給の減少は、例えば動脈硬化、外傷、又は外科的手術による血管閉塞によって引き起こされる。組織が血管閉塞による虚血性障害を患う恐れがあるか又は、既に患っているかの決定は、さまざまな画像法(例えば、99mテクネチウムセスタミビ、X線、及びMRI血管造影法などの放射性トレーサー方法)や生理学的検査を含む当業者に知られる任意の適切な方法を用いて容易に解明することができる。
【0049】
虚血を患っている又はその恐れのある組織において本発明の方法や組成物を用いた血管の増殖の誘導は、その原因にかかわらず、臓器又は組織において虚血を予防し、治療し又は回復させると期待されており、その臓器又は組織は、脳、心臓、膵臓、又は手足を含むがこれに限定されるものではない。
【0050】
成人の末梢CD34細胞を用いた過去の研究は、心筋虚血の免疫不全のラットモデルの心機能を改善し血管密度を増大させることを示した(Kawamoto,A.et al.Circulation 2006 114 2163−9)。CD34細胞によって誘導された血管新生の増加は物証が裏付けているが、これらの細胞により改善された機能のメカニズムは明確ではなかった。
【0051】
HPP−EPCは、内皮前駆細胞の亜集団であると、WO2005/078073,WO2008/101100,US2008/0025956及びM.C.Yoder et al.,Blood,109,1801−1809(2007)に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。他の内皮前駆とは違ってHPP−EPCは、内皮細胞コロニー形成ユニット(CFU−EC)や内皮伸長細胞(EOC)とは異なる高度に増殖する内皮前駆細胞(EPC)の亜集団を示す。例えば、ヒト臍帯血又は成体末梢血あるいはWO2005/078073に記載されている臍帯静脈及びヒト大動脈血管などの血管から選択し、エクスビボで増殖しHPP−EPCを得る。HPP−EPCは、CD31、CD105、CD146及びCD144を含む内皮細胞に特徴的な細胞表面抗原を発現するが、CD45やCD14のような造血細胞に特徴的な抗原は発現しない。WO2005/078073に記載されているように、90%乃至100%のコンフルエンスにおいて細胞を継代してHPP−EPCを得る。
【0052】
[A.核型的に正常なECFCsの単離]
HPP−EPCなどの幹細胞を急速に増殖させながら継代すると、染色体全部の欠損又は付加、転位、逆位、大規模な欠失、及び複製を含む不安定な核型細胞遺伝的異常が引き起こされる。そのような異常の多くはヒトが患う疾患を引き起こすことが知られており、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、ダウン症候群、猫鳴き症候群、及びアンジェルマン症候群などが例として挙げられる。更に染色体異常は、特定の癌性細胞内で生じることが知られている。例えば、慢性骨髄性白血病は、いわゆるフィラデルフィア染色体の原因となる染色体転位に関連する。
【0053】
染色体異常を有する幹細胞又は前駆細胞の患者への投与に関連する安全性と有効性の懸念を緩和すべく、正常又は実質的に正常な核型を有するECFCs集団を生成及び/又は精製することが望ましい。
【0054】
本発明の発明者は、公知の方法によりHPP−EPCを調整し染色体不安定性の現象を継代細胞がコンフルエンスに又はそれに近い、即ちコンフルエンスが90%以上になるまで観察することにより、ECFCsの調整間に不安定な核型の発生率を予防する方法を見つけた。
【0055】
一実施例では、本発明はコロニー的に精製され、実質的に正常な核型を有する高度に増殖する内皮コロニー形成細胞集団に関する。実質的に正常な核型を有するECFCsは、ここに記載する方法を含む任意の適切な方法により臍帯血を含むさまざまな組織ソースから生成されうる。本発明のこの態様に関する方法は、継代中の内皮前駆細胞を増殖させるにあたり異常な核型の発生率を減少させる。ECFC細胞における核型常態の増進は、安全及び/又はより効果的な臨床結果を提供すると考えられる。
【0056】
本発明のこの態様の更に好ましい実施例では、ECFCs(即ちECFCs(登録商標))の生成方法は、コンフルエンスになるまで内皮前駆クローンを継代することを含む。例えば、約90%以下のコンフルエンス、又は約70%乃至約90%以下のコンフルエンス、あるいは約80%以下のコンフルエンスになったら細胞を継代し、トリプシン処理や継代する前に約75%から約80%のコンフルエンスであることがより好ましい。
【0057】
[B.インビボでの血管形成の誘導]
本発明の別の態様は、これを必要とする組織に血流を誘導するステップに関し、ECFCsと例えばASCなどのヘルパー細胞の混合物を投与するステップを具える、組織は虚血心筋などの虚血性組織を含むがこれに限定されるものではない。本発明のこの態様を更に調査するため、ECFCsを1又はそれ以上の異なるヘルパー細胞と混合し、NOD/SCIDマウスに注入する。いくつかの実験では、ECFCs(登録商標)を、1又はそれ以上のヘルパー細胞型とマトリゲル(商標)(GFR−Matrigel:HC−Matrigel)に、ECFCs(登録商標)とヘルパー細胞の比率が3:1になるように混合し、NOD/SCIDマウスへ皮下注入する前に細胞の50:50の混合物をマトリクス材料に合わせる。細胞とマトリクスの混合物を注入の14日後に採取し、組織的検査用に処理した。ヒトの血管形成をH&E染色と抗ヒトCD31/抗ヒト核マトリクス染色を用いた免疫化学で検査した。
【0058】
【表1】

【0059】
表1に記載したように、NOD/SCIDマウスに注入しても、単一細胞型は検出可能なヒト血管形成を生成しなかった。
【0060】
しかし、表2に示すように、ECFCs(登録商標)をもう1つのヘルパー細胞型と3:1で混合すると、ヘルパー細胞がASCのときには、このモデルではヒト血管形成を検出したが、ECFCs(登録商標)をWhaton’s jelly(WJ−MSC)、ヒト大動脈平滑筋(HASMC)、又はCD133細胞(増殖又は増殖しない)と混合したときは、検出しなかった。
【0061】
【表2】

【0062】
更に1又はそれ以上のヘルパー細胞とECFCs(登録商標)の混合の効果を調査すべく、比率3:1:1(ECFC:細胞型1:細胞型2)の3細胞型併用を検査した。表3と4に示すように、ECFCs(登録商標)、ASCとWJ−MSCの併用は、検出可能なヒト血管増殖をもたらさなかった。しかし、ECFCs(登録商標)とASCを含む他の3細胞型併用は全て検出可能なヒト血管の増殖をもたらした(表3)。
【0063】
【表3】

【0064】
一方、3細胞併用からASCを除外すると、検出不可能なほど少ないヒト血管の増殖しか生じなかった(表4)。
【0065】
【表4】

【0066】
これらの結果は、ECFCs(登録商標)がASCと共に、単独又は他のヘルパー細胞型と併用して投与すると、NON/SCIDマウスモデルの新しい血管形成が増大することを示す。ECFCs(登録商標)をHASMCとCD133+(増殖しない)と混合すると、新しい血管形成はまたも低いレベルで検出された(表4)。
【0067】
[C.ECFCsによる虚血心への血流の回復]
本発明に一実施例は、心筋虚血を含む虚血性組織への血流を回復及び/又は改善させるための、ECFCs、好ましくは核型的に正常なECFCs(例えばECFCs(登録商標))の効果的な量又は用量の投与に関する。
【0068】
脈管形成が望ましい場合、ヘルパー細胞と適切なマトリクスとECFCsを混合する。任意のソースの間葉細胞であるASC、又はECFCsを単独で投与、あるいはECFCsとマトリクス材料を併用しても、1又はそれ以上の適切な「ヘルパー」細胞が存在するECFCsと比較して健全な脈管形成の誘導を示さない。ヘルパー細胞は、脈管形成の促進に寄与し、ECFCsと共に脈管形成の促進に相乗効果を与え、初期の管形成を安定させると考えられる平滑筋細胞及び/又は周皮細胞のソースを提供すると考えられている。適切なヘルパー細胞は、例えばASCや子宮内膜間葉細胞(Cryo−Cell,Inc)などの平滑筋細胞及び/又は周皮細胞を含むが、これに限定されるものではない。ヘルパー細胞と併用しECFCsを投与することにより脈管形成を増大する効果は、適切なマトリクス材料中の細胞を投与することで促進される。マトリクスは、投与(例えば注入)部位に細胞を集結させ、細胞の移動又は希釈を防止すると考えられている。
【0069】
[C.1.ラットの心筋虚血モデル]
ECFCs(登録商標)をラットの心筋虚血モデルで検査し、それらの血液かん流を回復する能力や虚血性組織における心機能を改善する能力を評価する(研究1−3)。実験動物にECFCs(登録商標)を単独投与、ASCを単独投与、ECFCs(登録商標)+ASCを投与、又は生理食塩水を投与する。オスの無胸腺「ヌード」ラットで心筋虚血を誘導する(Hsd:RHNU;Charles River Laboratories)。手術当日に、4グループの各々から1動物を開心手術し、細胞投与と左前下行枝(LAD)の結紮を施す。左心室組織の白化が示すように、左心室への血液かん流は虚血になるに十分なまで減少する。研究1と2に関して、ECFCs(登録商標)を液体担体に注入し、この液体担体を各々20−50μlの4つのアリコートで虚血領域の周囲に注入した。体重1kgあたり計約10細胞を各動物に投与する。研究3に関して、血流と心機能の回復における相乗効果の可能性を評価するための投与の前に、ECFCs(登録商標)とASCを適切なマトリクス材料に(マトリゲル(登録商標)/ヒドロゲル)混合する。エンドポイントは、投与14日後(研究1−3)と28日後(研究2)に、生体動物を心エコー測定により測定する。屠殺後、虚血性組織の血管サイズと血管密度を組織学的検査により評価する。更に、心臓血管の内膜内のヒト細胞を明らかにすべく組織学的なサンプルを染色する。
【0070】
[培地と試薬]
ECFCs(登録商標)増殖培地。EGM(商標)−2(VEGFを含むさまざまな増殖因子を含有する完全内皮細胞培養培地)。
【0071】
HSC増殖培地。SLII(いくつかの増殖因子サイトカインとヒト血清アルブミンを含有する完全CD34細胞培養培地)。
【0072】
ASC増殖培地:ADSC培地(10%のウシ胎仔血清を含有する脂肪由来の完全幹細胞培地)又は10%のウシ胎仔血清を含有するDMEM。
【0073】
HSC凍結培地。0.5%のウシ血清アルブミンと10%のジメチルスルホキシドを含有するダルベッコリン酸緩衝生理食塩水。
【0074】
ECFCs(登録商標)とASC凍結培地。5%のジメチルスルホキシドを含有するウシ胎仔血清。
【0075】
HSC解凍培地。0.5%のウシ血清アルブミンを含有するダルベッコリン酸緩衝生理食塩水。
【0076】
Extracel(登録商標)−HPキット:bFGF、VEGF、及びヒト臍帯細胞外マトリクスの併用の有無にかかわらず、50:50で混合したHeprasil(登録商標)とGelin−S(登録商標)。
【0077】
[ECFCs(登録商標)の単離、増殖、及び凍結保存]
標準的な方法により提供された臍帯血から臍帯血単核細胞(MNC)を作り、4mLの完全なEGM(登録商標)−2培地(Lonza)を含有するコラーゲンでコートされた6ウェルプレートに、これを5×10細胞/ウェルで蒔き、37℃;5%(v/v)COで加湿されたインキュベータに配置する。7日間は24時間ごとに、それ以降は2日ごとに、培地を丁寧に取り換える。12日目にクローンをウェルから引き抜いて、トリプシン/EDTAでコロニーを分離する。各コロニーを完全なEGM(登録商標)−2を2mL含有する単ウェルに蒔き、インキュベータに戻す。細胞が約75−80%以下のコンフルエントのときは、通常4乃至7日でフラスコ内で細胞は増殖する。クローン選択と再び培地で培養する過程は、臍帯血内のMNC由来の接着細胞のHPP ECFCs(登録商標)の亜集団を選択する。3継代後、増殖されたECFCs(登録商標)は、1バイアル(「継代3」バイアル)あたり10細胞のアリコートで凍結保存される。継代3バイアルを解凍し、約10細胞を生産しながら継代4へ拡大し、適切なアリコート(ECFCs(登録商標)内で凍結保存する。
【0078】
[ASCの継代、増殖、及び凍結保存]
凍結保存したASCを液体窒素貯蔵から取り出して、バイアル内で結晶が出てこなくなるまで37℃のウオーターバス内で温める。ASCをクライオバイアルから20mLのASC完全培地へ移し、コラーゲンコートされたT150で培養する。この細胞を37℃、5%のCOで加湿型組織培養インキュベータ内で、一晩インキュベートする。残留DMSOを取り除くため、18時間後に組織培養基を細胞から除去し、生のASC完全培地を20mL細胞に添加する。細胞が継代される85%のコンフルエンスまで、ASCを培養する。接着ASCに1日おきに生のASC完全培地を補充する。85%のコンフルエンスになった後、1バイアルあたり10細胞のアリコートで凍結保存する。この細胞を制御レートフリーザーを用いてゆっくり−70℃に冷やして、液体窒素内で貯蔵する。
【0079】
[注入用の細胞調整]
[液体培地内におけるECFCs(登録商標)の調整(研究1&2)]
ECFCs(登録商標)を、液体窒素貯蔵から取り出して、37℃のウオーターバスで素速く温める。予熱した、完全なEGM(商標)−2に細胞を移し、7−10分間、300−400×gで細胞を沈殿させる。上清を取り除き、37℃、5%(v/v)のCOの加湿型インキュベータ内で、懸濁液中の完全培地の中で培養するため細胞を1−2時間再懸濁した。300−400×gで7−10分間遠心分離し上清を取り除き、ダルベッコPBS内で10 細胞/kg量を投与するための濃度で細胞を再懸濁する。注入用30Gハミルトンシリンジに再懸濁した細胞を吸引する。
【0080】
[EXTRACEL(登録商標)/ASC/ECFCs(登録商標)混合物の調整(研究3)細胞調整:]
上記のように細胞を培養する。接着細胞をトリプシン処理、遠心分離、及びEGM−2(商標)内で10細胞/mlで再懸濁する。
【0081】
[Extracel(登録商標)−HP調整:]
メーカーの仕様(Glycosan BioSytems,Salt Lake City,UTに)従い、Gelin−S(登録商標)1バイアル、Heprasil(登録商標)1バイアル、及び1バイアルExtraLink(登録商標)を、−20℃から37℃の組織培養インキュベータへと変える。バイアルは、37℃で30分間予熱される。Gelin−S(登録商標)とHeprasil(登録商標)の各々のバイアルにシリンジを用いてDQ水1mlを添加する。DQ水0.5mをExtraLink(登録商標)のバイアルに添加する。更にバイアルを37℃で30分間インキュベートする。15mlの円錐フラスコ内で1mlのGelin−S(登録商標)を1mlのHeprasil(登録商標)と組み合わせる。1注入部位あたりExtracel−HP(登録商標)255μl+細胞を調整する。
【0082】
[Extracel−HP(登録商標)用:]
50:50のHeprasil(登録商標)とGelin−S(登録商標)の混合物143μL+PBS22μl。
【0083】
[Extracel−HP(登録商標)+bFGF+VEGF用:]
50:50のHeprasil(登録商標)とGelin−S(登録商標)の混合物143μL+bFGF(100ng/ml)1μl+VEGF(100ng/ml)1μl+PBS20μl。
【0084】
[Extracel−HP(登録商標)+bFGF+VEGF+ECM用:]
50:50のHeprasil(登録商標)とGelin−S(登録商標)の混合物143μL+bFGF(100ng/ml)1μl+VEGF(100ng/ml)1μl+ECM20μl。
【0085】
[1注入部位あたり:]
ECFCs(登録商標)(10細胞/mlで)30μl+ASC(10細胞/mlで)10μl。
【0086】
EGM−2(細胞制御せず)40μl。
【0087】
適切なExtracel−HP(登録商標)混合物165μlをEGM−2内の細胞40μlに添加してよく混合する。凝固を開始させるため各サンプルにExtraLink(登録商標)50μlを添加する。15−20分後に、Extracel−HP(登録商標)は凝固を始め、注入用シリンジで細胞で満たされたマトリクスを吸収する。
【0088】
[被験及び溶媒/コントロール物質の投与]
[投与法]
100μlハミルトンシリンジと28ゲージ針を介して心筋内注入により被験物質を投与する。0日目に1回心臓の左心室自由壁の4カ所にさまざまな細胞投与量とボリュームの被験及び溶媒/コントロール物質を投与する。例えば、100μlボリュームあたり約1−2×10の細胞を投与する。
【0089】
永続的なLAD結紮がなされた梗塞動物、ラット1匹あたりにつき約0.3×10(1kgあたり100万細胞)細胞を心筋内注入する。
【0090】
一時的なLAD結紮がなされたラットに約0.3×10(心臓あたり)細胞を心筋内注入する。それぞれ20−50μlのボリュームで被験動物に4回投与した。
【0091】
[動物調整]
絶食していないメスの無胸腺ヌードラット(生後10週、体重225−250g)は、以下の手術がなされる。
【0092】
[手術前処置]
表5の記載のように、麻酔を投与し維持する。治療を受ける動物に人工呼吸器を付ける。皮膚下に乳酸リンガー液を投与する。通常の無菌法を手術を通して用いる。胸部の側面を削り、ヨードスクラブ、70%のイソプロピルアルコールとヨウ素溶液で処理する。
【0093】
【表5】

【0094】
[外科的処置]
動物に麻酔をかけて胸骨正中切開術を行う。非梗塞動物の心膜を切開し、被験物質又は溶媒を心臓の左心室自由壁の4カ所の異なる部位に注入する。梗塞動物は、LADが確認されたら縫合され永続的に閉塞又は約1時間程一時的に閉塞される。心筋の白化やECG波形(例えばST上昇型)において虚血特有の変化により閉塞を確認する。1時間閉塞した後に縫合を除去すると梗塞領域は再かん流する。再かん流の後、上記のように被験物質を注入して胸部を閉じる。
【0095】
[手術後処置]
手術後、心臓血管/呼吸の低下、低体温症、及び手術部位からの過度の出血を含む生理学的機異常について動物を念入りに観察する。疼痛や梗塞の兆候の検査も手術後の長期間のモニタリングに含む。手術の7−10日後にステープル使用した場合はこれを除去する。必要により任意の追加的な疼痛処理や抗菌治療を施す。
【0096】
[心エコー検査による分析]
研究1で、手術の直前に心エコー検査による動物の分析をし、再び手術の2週間後、屠殺の前に分析する。研究2では、ゼロ時間、手術の2週間後、及び屠殺直前の手術の4週間後に動物を分析する。
【0097】
[生前の研究の評価]
[詳しい臨床検査]
研究中は週に1回、各動物の詳しい臨床検を行う。観測は、皮膚、毛皮、目、耳、鼻、口腔、胸部、腹部、外性器、肢と足、呼吸作用や循環効果、唾液分泌などの自律神経効果、振戦、痙攣、ハンドリングに対する反応性、及びとっぴな行動を含む神経系効果の医学的鑑定を含む。出現の3日内の、ランダム化の前に少なくとも1度、及び研究の間は週に一度、体重を測定して記録する。
【0098】
[死後の研究評価と組織学的調整]
研究の終わりに(14日目又は28日目)、動物を安楽死させて検査する。心臓を除去し、左心室1つにつき各約3mm厚さの4つのスラブを生成すべく一定の無作為抽出により先端から底部を切開する。通常処理してスラブをパラフィン包埋する。約5ミクロン乃至8ミクロンの厚さの多くの組織切片を、各スラブからカットしヘマトキシリンとエオシン、又はピクロシリウスレッドで染色し、若しくは免疫組織化学的にvWF、CD31、及びヒト核マトリクスで染色する。
【0099】
[組織形態計測的:]
[梗塞範囲の評価]
梗塞領域の1つの指標として、コラーゲン密度を評価すべく切片をコラーゲン染色(例えばピクロシリウスレッド)で染色する。組織形態計測を行い、以下(1)内部LV外周、(2)外部LV外周、(3)外部及び内部梗塞円弧、及び(4)梗塞の領域の測定をする。梗塞のLV領域の割合としてデータを記録する。
【0100】
[組織化学]
[毛細血管密度の評価]
抗ラットvWF(フォンウィルブランド因子)で切片を染色する。心筋線維の長軸と垂直に切断された各切片から5つの顕微鏡視野(倍率400倍)を得て、デジタル化した。Image−Pro Plusソフトウェア(Media Cybernetics,Rockville,MD)と計算した毛細血管密度(毛細血管/mm )を用いて各領域内の毛細血管の総数を数える。
【0101】
[ヒトの血管形成の評価]
各ブロックから、移植された前駆細胞の成熟内皮細胞への分化及びヒト細胞検出用の抗ヒト核マトリクス抗体を決定するために抗ヒトCD31で切片を染色する。ヘマトキシリンで核を対比染色する。
【0102】
[C.2.結果(研究1&2)]
液体担体内でECFCs(登録商標)を単独で心筋虚血モデルのラットの心筋に直接注入すると、処置の14日後と28日後に心室機能の改善が観察される。更に処置の14日後と28日後に測定したコントロールとECFCs(登録商標)の虚血性組織の血管密度の組織学的評価は、治療された動物において著しい改善を示す。機能的改善のメカニズムは、コントロールとECFCs(登録商標)で治療された動物の梗塞領域の毛細血管密度を測定して評価する。ECFCs(登録商標)の血管新生及び/又は脈管形成活性による血管密度の上昇が少しでも見られたら、ECFCs(登録商標)の毛細血管の内膜への取り込みを証明することでECFCs(登録商標)が脈管形成に関わっているかを評価する梗塞領域の免疫組織化学的な分析を行う。
【0103】
手術の直前と2週間後、屠殺前に心機能の心エコー評価を行う。左心室(LV)の二次元の短軸像が、乳頭中央レベルと心尖部レベルで得られる。Mモードトレーシングは前方及び後方のLV壁を通して記録することで、心臓の梗塞及び梗塞でない領域の壁の厚さや動きを描写する。この結果を記録してLVの質量を決定する。関連する前壁の厚さ、後壁の厚さ、及びLV寸法を測定して、少なくとも3回連続心周期を測定するのが好ましい。心内膜の短縮率と中央壁の短縮率は、LVの収縮機能を判断する指標となる。
【0104】
有意性を決定するテューキーの事後比較でANOVAを用いて、実験動物のグループ間を比較する。臨界値P<0.05は、有意差又は治療効果と考えられる。
【0105】
細胞処理された動物の左心室の圧力と収縮性を含む心エコー測定は、ネガティブコントロールとたいして違いはない。一方、左心室の機能と形状には、かなりの治療の差が見られた。例えば、梗塞が誘導されたラットは、正常なラットと比較し、永続的な動脈結紮後に左心室拡張末期径(LVEDD)が、かなり増進することを示す。しかし、ECFCs(登録商標)を用いた以下の治療をすると、正常なLVEDDへと減少する(図1参照)。
【0106】
更に、治療効果は、短縮率とも言われる左心室の短縮パーセントを測定し評価する。冠動脈を結紮し、続いて生理食塩水注入を制御すると短縮パーセントが著しく減少する。しかし、ECFCs(登録商標)で治療したラットは、生理食塩水で制御したものと比較して著しい改善が見られた(図1B参照)。
【0107】
治療の効果の別の検査として、前壁の厚さの測定を採用する。冠動脈結紮に続いて生理食塩水注入を受けたラットは、前壁の厚さが著しく減少する。しかし、ECFCs(登録商標)で治療されたラットは、前壁の厚さが著しく増大したことを示す。一方、コントロールと比較して治療されたグループは、後壁の厚さに違いはない(データは示さず)。
【0108】
駆出率は心機能の追加的な独立した測定であり、心臓の乳頭中央レベルでデジタル画像からの短軸モードで日常的に判断される。結紮処置によって誘導された梗塞の多くは、心臓の心尖部のより低い部分にあるので、乳頭中央レベルで得られた駆出率が機能障害を示すとは予期できない。従って、駆出率は心臓の心尖部で決定する。ECFCs(登録商標)で治療された動物に駆出率の改善が見られた(データは示さず)。
【0109】
要するに、液体担体中のECFCs(登録商標)の直接注入は、ラットモデルでは虚血性傷害を伴う心機能の改善に効果的な手段である。
【0110】
更に本発明のこの態様の有効性は、ここで述べたように治療した動物の心臓から得た組織切片においても明らかである。ECFCs(登録商標)群は、コントロールと比較して梗塞サイズが減少する傾向がより大きいことをデータは示す。永続的に左前下行枝の結紮を施し、2週間前に生理食塩水溶液を心筋内に注入した(擬似コントロール)ラットの心臓からレベル2で採取した頭蓋の頭頂部の組織切片は、病変部位の実質的な前左心室自由壁梗塞と顕著な菲薄化と線維症(赤い染色が線維状コラーゲンを強調している)を伴うモデルに特有の形態(ピクロシリウスレッド染色、倍率20倍)を示す。ラットの心臓に類似の冠動脈結紮を施し、冠動脈結紮と同時にECFCs(登録商標)を注入し、レベル2から採取した頭蓋の頭頂部の組織切片は、ECFCs(登録商標)で治療した動物の可能性を維持する実質的に生存能力のある収縮組織心筋壁の菲薄化の大幅な減少を示す。
【0111】
研究2では28日目に左心室拡張末期径と左心室短軸径短縮パーセントの両方における著しい機能の改善を測定する。
【0112】
毛細血管密度の測定は、治療上有用である可能なメカニズムの1つである、血管新生における治療の効果を評価する根拠を提供する。14日目は、毛細血管密度(P=0.553)においては治療の効果はさほど見られない(図2;上下とも左のパネル)。しかし、28日目に、著しい血管密度の増大が見られた(図2;上下とも右のパネル)。これを定量的に図3において表す(コントロール=48±3毛細血管/mm,ECFCs(登録商標)=119±12毛細血管/mm )。ヒト内膜特異抗CD31抗体を用いたECFCs(登録商標)の治療による梗塞のラットの組織の組織学的な検査で、ヒト細胞が毛細血管の内膜では検出されないことが明らかにとなる。これは、虚血心のラットに ECFCs(登録商標)を注入すると、おそらく血管新生のパラクリン誘導として毛細血管密度の増大を誘導することを示していると考えられる。
【0113】
[ECFC/ヘルパー細胞/マトリクスの混合物の心筋への注入(研究3)]
宿主血液を含有して循環させる移植片内の吻合を伴った血管により明らかな通り、ECFCsは、NOD/Scid免疫不全のマウス内の皮膚下のコラーゲン/フィブロネクチン移植片で脈管形成を起こすことを示した。インビボ(Yoder et al.,Blood,109,1801−1809,2007)と健常組織(Malero−Martin et al Circulation Res.(2008);103 194−202)で内皮細胞が血管ネットワークを形成することを示す。しかし、注入用マトリクス内の細胞混合物を病的な虚血性組織に直接的に投与すると、デノボで脈管形成が起こることについていかなる記載もなかった。
【0114】
心筋虚血を含む多くの虚血の例において、虚血性組織障害の停止及び/又は回復させる可能性性を増大し、正常機能領域への組織の再形成を実現する方法として、デノボで新しい血管形成を誘導する過程である脈管形成は、必要又は少なくとも望ましいと考えられている。本発明のこの態様における細胞の混合物は、更に非毒性の細胞外マトリクスを具えることが好ましい。好ましい実施例では、核型的に正常である(例えばECFCs(登録商標))。例えば、一実施例ではECFCs(登録商標)とASC(ヒト脂肪組織間質細胞)が、心筋の虚血領域を含む虚血成組織へ注入など投与の前にMatrigel(登録商標)やExtracel(登録商標)などの細胞外マトリクス中で混合する。虚血心筋のラットにECFCs(登録商標)/ASC/マトリクス組成物を注入すると、ラットの心臓の虚血領域内に安定したヒト血管を形成を引き起こし、虚血心筋環境内で脈管形成が生じることを示した。
【0115】
[結果]
CD31染色(赤い染料に結合するヒト抗CD31)と核染色(茶色の染料に結合するヒト抗核マトリクスタンパク質)を示すコントロールの健康なヒトの結腸の組織切片を図4に示す。血管内のヒト抗CD31とヒトの核を示すECFCs(登録商標)、ASC、及びExtracel(登録商標)の混合物を注入した正常なラットに心筋の組織切片を、図5に示す。血管がラットの赤血球を含み、ヒト血管がラットの血液供給を連絡することを示す。図6は血管に並ぶヒト内皮細胞確保して、ECFCs(登録商標)、ASC、及びExtracel(登録商標)の混合物を注入した虚血心筋のラット内のヒトの血管の存在を示す。血管の初期領域は、図6のラベルされない矢印によって特定され、周囲の組織からの血管の腔を分けるラインを示している。図6の矢印「B」は、血管の初期内膜に組み込まれた細胞内のヒト核・・・すなわちヒト由来の、ひいてはECFCs(登録商標)由来の内皮細胞を識別する。図7では、血管に関連のない別のヒト核を表しており、図6に示した隣接する切片のH&E染色は、ヒト血管を含む虚血心領域のラット赤血球のみを示す。ヒト細胞が見られないExtracel(登録商標)マトリクスに隣接する領域内は、赤血球又は血管状構造の証拠がない。
【0116】
従って、本発明の一態様は、ECFCsが単独で、好ましくは液体担体に内包されて投与されることにより、血管新生効果を促進することに関する。別の態様では、本発明は、ECFCsの投与又は1又はそれ以上のヘルパー細胞型と同時投与することによる脈管形成効果に関するものであり、適切なマトリクス材料に内包されて投与されるのが好ましい。ECFCsは、正常な核型を有するのが好ましく、ECFCsがECFCs(登録商標)であるのが最も好ましい。
【0117】
本発明のこの態様は、各患者の必要に応じ臨床的利点を最大にするさまざまな治療の選択肢を提供することが期待される。ECFCsを単独で又はヘルパー細胞として投与することにより、さまざま生理学的効果が誘導される。この治療は、血管新生のみを増進又は血管新生と脈管形成両方の促進を対象にすることができる。例えば、梗塞域周辺の損傷組織にECFCs(登録商標)を単独で投与することにより、パラクリン血管新生効果が誘導される。代替として、ECFCs(登録商標)と関連する非毒性マトリクスに内包されたASCなどの1又はそれ以上のヘルパー細胞型を同時投与するこにより、血管新生及び脈管形成効果が誘導され得る。脈管形成及び/又は血管新生の誘導は、血流の修復、組織改造の促進、及び虚血性組織機能の回復を介してより効果的な治療が期待される。
【0118】
[D.臨床的応用]
本発明の方法は、心筋梗塞(MI)、鬱血性心不全(CHF)、脳卒中、末梢動脈疾患(PAD)、虚血性疾患など血流の減少及び/又は不十分なかん流を伴う疾患を治療する治療的方法の改善を提供するものであり、虚血性疾患は心筋虚血、更に具体的には急性心筋虚血、慢性心筋虚血、心筋梗塞、CAD、左心室機能障害、及び末期の虚血性心疾患を含む。適切な患者は、重度の心不全と慢性冠動脈疾患を伴う者を含むが、これらに限定されるものではない。
【0119】
本発明は、治療目的でECFCsの単独使用又はヘルパー細胞及び/又は適切なマトリクス材料や増殖因子など他の薬剤との併用使用にある程度関係するものである。好ましい実施例では、ECFCsは、核型的に正常(例えばECFCs(登録商標))であり、好ましくはASCとマトリクス材料であるヘルパー細胞との混合物として投与される。臨床的応用で核型的に正常なECFCsを使用すると、有効性及び/又は安全性が増進すると予測される。本発明のこの態様の一実施例では、心筋梗塞、鬱血性心不全、脳卒中、末梢動脈疾患、及び虚血性疾患などを含む疾患を予防又は治療のためECFCsを単独で又は1又はそれ以上のヘルパー細胞型と併用しそれを必要とする患者に投与するものであり、虚血性疾患は、肢虚血、又は急性及び慢性の心筋虚血などの心筋虚血を含む。好ましい実施例では、ASCとマトリクス材料との混合物として、組織の虚血領域の部位又はそれに近い部位に、ECFCs(登録商標)を投与する。例えば、心臓の虚血領域に投与する目的で、ECFCsを脂肪間質細胞やExtracel(登録商標)などのマトリクス材料と混合する。この組成物と方法はまた、1又はそれ以上の増殖因子を含み、この増殖因子はVEGF、bFGF、PDGF−1、PDGF−2、IGF、FGF−1、FGF−2を含むがこれらに限定されるものではない。ECFCsは、ASCとExtracel−HP(登録商標)、Gelfoam(登録商標)(Pharmacia&Upjohn)などの適切なマトリクス材料の混合物、又はコラーゲン/フィブロネクチン混合物と併用されるのが好ましい。ECFCsとASCは、各々10:1乃至0.5:1の比率で、あるいは5:1乃至1:1の比率で、好ましくは3:1乃至2:1の比率で併用される。
【0120】
本発明の別の態様では、ECFCs;又はECFCsとヘルパー細胞;あるいはECFCs、ヘルパー細胞、及びマトリクス材料を具える細胞に基づいた組成物を、心筋虚血を含む虚血性疾患の治療で、ステント又は他の血管人工器具の使用を含む当業者に知られる他の治療の選択肢と併用して用いる。この器具が取り付けられる前、間、又は後に本発明のこの態様で考えられるECFC組成物を投与する。
【0121】
本発明の方法は、血管形成を誘導して血流を改善することでこれを必要とする患者に臨床的利点をもたらす。本発明は、心筋梗塞の危険性の減少及び/又は予防及び/又は梗塞後の瘢痕化や線維症など心筋の損傷を減少させることが期待される。この方法はまた、血管形成を誘導して、それを必要とする血管及び/又は器官への血流を増大させることにより、虚血、脳卒中、鬱血性心不全、及び末梢動脈疾患の危険性及び/又は損傷を減少させることが期待される。
【0122】
本発明の別の実施例では、同種のECFCs運搬を単独で又はヘルパー細胞及び/又は増殖因子及び/又はマトリクス材料を含む1又はそれ以上の他の薬剤と併用し、必要とする患者に、全身又は心臓の虚血領域など組織の虚血領域へ直接投与する。心筋虚血に関する以下に説明する方法は、例示目的であり発明の範囲を制限することを意図するものではなく、他の種類の虚血もまた本発明の処置と方法での治療に適していると理解できるはずである。更に好ましい実施例では、ECFCsは核型的に正常であり、最も好ましい実施例では、ECFCsはECFCs(登録商標)である。
【0123】
ECFCsは、侵襲的又は非侵襲的に虚血心筋に送ることができる。例えば、ECFCsは、全身注入か、心筋の虚血部位又は虚血部位の周辺領域に局所的に投与することができる。本発明の別の実施例では、トランス心内膜的又はトランス心外膜的にECFCsを注入し、細胞が保護周囲膜を通り抜けるようにする。本発明の好ましい実施例は、トランス心内膜的な注入におけるカテーテルに基づいたECFCsの送達の使用を含む。カテーテルの使用は、胸腔切開の必要を回避して迅速な回復をもたらす、侵襲的ではない送達手段を提供する。好ましい実施例では、心臓カテーテルを介して虚血の心臓領域壁に細胞を注入する。細胞はまた、健康な周辺組織領域にも注入されてもよい。この治療は、細胞を複数の虚血性傷害部位又はこれに近い部位へ1又はそれ以上の注入を具えることが好ましい。侵襲的な手段は、外科的に露出した心臓の虚血領域、梗塞領域、又は疾患領域周辺の生存心筋組織に細胞を心外膜的に注入することを含むがこれに限定されるものではない。
【0124】
損傷した心筋へECFCsを配送する他の好ましい他の手段は、侵襲性が少ないという利点を供給するカテーテルに基づいたトランス心内膜注入と、可視的に心臓をマップし細胞を注入する最適な場所を決定する能力を含む。例えば、冬眠心筋はこの処置方法の好ましいターゲットになり得る。
【0125】
この発明により患者に投与又は配送するECFCsの適切な量は、特定の患者、治療を受ける状態に依存し、投与方法、患者の体重、及び治療を受けている疾患や状態の重症度が要素に含まれる。通常、効果的な用量は体重kgあたり約1×10乃至約1×10ECFCs、又は注入部位あたり約1×10乃至約1×10細胞の範囲内にある。ECFCsがヘルパー細胞と同時投与されるとき、ECFCsとヘルパー細胞の比率は、約1:1乃至約20:1、好ましくは約2:1乃至約3:1である。一実施例では、ヘルパー細胞がASCのときは、比率は約6:4乃至約1:9でもよい。ある実施例では、治療的に効果的な用量のECFCs細胞を心臓に供給し、配送し、又は投与し、それを必要とする患者の心臓に埋め込む。効果的な用量とは、有益又は望ましい臨床結果を得るのに十分な量又は数をいう。1又はそれ以上の投与で効果的な投与量を投与する。しかし、体重、年齢、梗塞領域のサイズ、及び損傷が生じてから経過した時間を含む各患者の個々の要素に基づいて、効果的な投与量を的確に決定する。治療する医師、外科医、又は心臓専門医は、過度の実験を行うことなく、この開示と当該技術分野の知識から、効果的な投与量を構成する細胞の数を決定することができる。
【0126】
本発明の別の態様では、心臓、特に梗塞の境界領域にECFCsを送達する。当業者が認識するように、梗塞領域は通常裸眼で見ることができるので、梗塞領域へ幹細胞を標的配置することが可能である。
【0127】
本発明は、例えばCD34細胞、β遮断剤、利尿剤、Caチャネル遮断剤、ACE阻害剤、タンパク質又はペプチド及び増殖因子を含めた1又はそれ以上の他の薬剤とECFCs、好ましくはECFCs(登録商標)など核型的に正常なECFCsの方法とキットを併用し又は同時に投与することを意図する。一実施例では、同時投与は、ECFCsを1又はそれ以上の他の薬剤と、連続し、共に、又は同時に投与することを含む。別の実施例は、ECFCsを有する容器、更にヘルパー細胞、マトリクス材料、CD34細胞、β遮断剤、利尿剤、Caチャネル遮断剤、ACE阻害剤、タンパク質又はペプチド及び増殖因子からなる群から選択された1又はそれ以上の他の薬剤を有する容器を選択的に含んだキットに関する。本発明によれば、このキットはまた、ステント、カテーテル、又はシリンジなどの器具を含む。他に実施例は、Extracel(登録商標)の修飾版、Heprasil(登録商標)(チオールで修飾されたヒアルロン酸、HA、及びチオールで修飾されたヘパリンの組み合わせ)、Gelin−S(登録商標)(チオールで修飾されたゼラチン)、及びExtralink(登録商標)(チオール反応性架橋剤、ポリエチレングリコールジアクリレート、PEGDA)内に含まれる反応性チオールを介してタンパク質、ペプチド増殖因子、サイトカイン及び抗生物質に直接的に共有的に結合する能力に関する。
【0128】
本発明は、さまざまな実施例と方法が説明されている。しかし、当然のことながら、当該技術において知られる多くの変形と変更は、特許請求の範囲に含まれるものである。以下に実施例を記載するが、この実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0129】
[臍帯血由来のECFCsの調整]
標準的なficoll−paque密度勾配遠心法によりヒト臍帯血由来の単核細胞分画(MNC)を単離した。ウェルにつき4mlの温かいEGM−2を有するコラーゲンコートされた6ウェルプレートに50×10 細胞/ウェルになるようにMNCを蒔いた。1日目に、2mlのEGM−2(EBM−2培地+bullet kit+10%FBS+1%Pen/Strep)でウェルをゆっくりと洗浄し、4mlのEGM−2に交換した。7日間毎日培地を交換した(4mlの温かいEGM−2を接着されたECFCsを洗い流してしまわないよう注意して)。7日目以降は、例えば月曜、水曜、金曜毎など週に3回培地を交換する。4日目あたりでコロニーが目に見えるようになり、通常4日乃至12日の間にECFCsコロニーの発生が始まる。直径が約0.5cm又はそれ以上になると、コロニーを取り出す。約75−80%のコンフルエンスになりと、クローンをより大きい容器で継代する。P3クローンは、継代の準備がされると、凍結され、各クローンについてMatrigel(登録商標)管形成、細胞表面マーカー、及び増殖などの品質管理試験(QC)が行われる。QC試験にパスしたクローンを、T150フラスコ又はローラーボトルで増殖し、液体窒素中で凍結する。マイコプラズマとバクテリアの汚染について凍結されたP4細胞の各バッチを検査し、核型分析する。気相液体窒素中でECFCsを凍結保存する。
【実施例2】
【0130】
[心筋虚血患者へのECFCsの投与]
60才の男性患者は、血圧160/90、心拍数90、及び体重210ポンドで、中程度の運動により誘導される胸痛を呈した(狭心症)。ETT(トレッドミル運動負荷試験)とAECG(携帯型心電計)と血清脂質プロファイリング(上昇したLDLを示す)を含む臨床試験により心筋虚血を伴うCADの診断がなされた。この患者は、毎日81mgのアスピリン、β遮断剤、脂肪を制限した食事が与えられ、毎日スタチン系の薬剤(Liptor80mg/d)と2gmの魚油による積極的な治療により、高かったトリグリセリドとLDLコレステロールのレベルが低下した。6ヶ月後、この患者はまだ中程度の運動をすると狭心症になる。約1×10細胞/mlの濃度のECFCs(登録商標)とASCの比率が2:1のECFCs(登録商標)とASCと適切なマトリクス材料の混合物を具えるECFCに基づいた組成物の心膜内投与することを予定する。注入する直前にこの細胞をマトリクスと混合する。心臓カテーテルを用いて患者に細胞を投与する。虚血領域のだいたい同等に分散した各4つの場所に、約100μlの細胞マトリクス混合物を注入し、注入部位につき約1×10細胞を提供する。2日後、患者は退院する。手術の2ヶ月後と6ヶ月後のMSCTスキャンは、心血流の著しい改善を示し、運動後の狭心症は報告されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚血関連疾患を患う患者を治療する方法であって、ECFCsとECFCs、ヘルパー細胞、及びマトリクス材料の混合物からなる群から選択される組成物を虚血性組織障害の部位へ効果的な用量投与するステップを具えることを特徴とする治療方法。
【請求項2】
前記虚血関連疾患が、心筋虚血、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、心筋梗塞、脳卒中、鬱血性心不全、創傷治癒、及び重症虚血肢からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与が、虚血性傷害部位におけるECFCsの注入又は外科的移植によることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヘルパー細胞がASCであり、前記ECFCsが核型的に正常であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
核型的に正常なECFCsと核型的に正常なECFCsを具える細胞/マトリクス組成物からなる群から選択される組成物を治療的に効果的な用量投与するステップを具え、それを必要とする患者の虚血性組織障害の部位において血流が改善することを特徴とする方法。
【請求項6】
前記虚血性組織障害が、心臓内で生じることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ECFCsが、心筋内注入又は外科的移植により投与されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
心筋虚血を治療する方法であって、細胞に基づいた組成物を治療的に効果的な量それを必要とする患者に投与するステップを具え、前記組成物が、ECFCs(登録商標)、ヘルパー細胞、及びマトリクス材料の混合物を具えることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記投与するステップが、(a)周囲梗塞域にECFCs(登録商標)を注入又は外科的に移植するステップと、(b)梗塞域にECFCs(登録商標)、ヘルパー細胞、及びマトリクス材料の混合物を注入又は外科的に移植するステップを具えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、虚血部位又は虚血部位の近くに心筋内注入することにより投与されることを特徴とする請求項8に記載に記載の方法。
【請求項11】
請求項19のECFCsを具えることを特徴とする医薬組成物。
【請求項12】
哺乳動物の組織の血流を増進させ、核型的に正常なECFCs、ヘルパー細胞、及びマトリクス材料を具えることを特徴とする医薬組成物。
【請求項13】
前記ECFCsがECFCs(登録商標)であり、前記ヘルパー細胞が、ASCであることを特徴とする請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記ヘルパー細胞が、2つの異なる細胞型を具えており、第1の細胞型がASCであり、第2の細胞型が子宮内膜間葉細胞、HASMC、及びCD133+からなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
請求項11乃至14のいずれか1項に記載の組成物の使用であって、虚血性傷害により損傷した組織を回復するために薬剤を調整することを特徴する組成物の使用。
【請求項16】
前記ECFCsが、ECFCs(登録商標)であることを特徴とする請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項17】
核型的に正常な細胞用に増殖されたECFCs集団を調整するプロセスであって、
a.適切なヒトソース由来の単核細胞分画(MNC)を単離するステップ;
b.MNCを約50×10細胞/ウェルで蒔くステップ;
c.約4日乃至28日後に、個々のECFCsクローンコロニーを単離するステップ;
d.単離されたクローンが約90%未満のコンフルエンスに達した場合に継代するステップ;及び
e.前記細胞が、実質的に正常な核型を有することを確認するステップ;を具えることを特徴とする調整するステップを具えることを特徴とするプロセス。
【請求項18】
実質的に増殖された集団であって、核型的に正常であることを特徴とする、請求項17のプロセスによって生成されるECFCs。
【請求項19】
実質的に正常な核型を有することを特徴とするECFCs。
【請求項20】
請求項17の工程により生成されたECFCsを含む容器を具え、任意にヘルパー細胞、医薬品賦形剤、及び増殖因子からなる群から選択される薬剤を含む1又はそれ以上の追加的な血管を含むことを特徴とする治療的な医薬キット。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−516853(P2012−516853A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548415(P2011−548415)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/022996
【国際公開番号】WO2010/091051
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(511185162)エンドジェニター テクノロジーズ,インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ENDGENITOR TECHNOLOGIES,INC.
【Fターム(参考)】