説明

分子コンジュゲート

ヒドラジドチオール・リンカーを使用して2つの分子のコンジュゲートを作成する方法が開示される。特定の作業実施態様では、Fc特異的抗体−酵素コンジュゲートが、本方法を使用して作成され、そして免疫組織化学的およびインサイチューハイブリダイゼーションアッセイにおいて先例のない染色感度および特異性を提供することが例証された。

【発明の詳細な説明】
【関連出願データ】
【0001】
本出願は、2005年11月23日提出の米国暫定特許出願第60/739,794号の利益を請求するものであり、この出願は引用によって本明細書に組み入れられている。
【技術分野】
【0002】
本発明は、分子コンジュゲート(molecular conjugate)、そのようなコンジュゲートを作成するためのリンカー、コンジュゲートおよびリンカーの作成方法、ならびにコンジュゲートを使用する方法に関する。より具体的には、本発明は、Fc特異的抗体コンジュゲート、Fc特異的コンジュゲートを作成するためのヒドラジドチオール・リンカー、Fc特異的コンジュゲートを作成する方法、ならびにFc特異的抗体コンジュゲートを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
分子を一緒に結合してコンジュゲートを形成するために広範な種類の方法が開発されている。特に興味があるのは生物分子コンジュゲートであって、これは、典型的には、結合される分子の官能基を組み合わせて1つの構築物になるように作成される。生物分子コンジュゲートの1つのタイプは、その他の分子に特異的に結合する生物分子(例えば核酸、抗体、レクチンまたはアビジン)と、検出可能な標識(例えば蛍光標識、蛍光ナノ粒子または酵素)とを組み合わせる。
【0004】
抗体と検出可能な標識のコンジュゲート(抗体コンジュゲート)は、生物学的サンプルにおける特異的な標的分子を検出するためのイムノアッセイにおいて使用することができる。そのようなコンジュゲートの抗体部分は、サンプル中の標的に特異的に結合し、そして検出可能な標識が利用されて、標的の存在および/または位置を指示する検出可能なシグナルを提供する。特に免疫組織化学的分析のために、広く使用されるようになったコンジュゲートの1つのタイプは、抗体と酵素のコンジュゲート(抗体−酵素コンジュゲート)である。検出可能なシグナルは、抗体部分がその標的に結合される部位において、抗体−酵素コンジュゲートの酵素部分が基質を検出可能な生産物(例えば着色、異なる着色または蛍光生産物)に変換する条件下で、サンプルに基質を添加することによって生成される。
【0005】
抗体コンジュゲートは、典型的には、反応性基の一方が抗体における官能基と反応され、そして反応性基の他方が検出可能な標識における官能基と反応される、少なくとも2つの反応性基を有することを特徴とするカップリング試薬を使用して作成される。しかしながら、カップリングは、抗体および検出可能な標識の一方または両方の失活をもたらすことがある。特に、カップリングは、立体効果によるか、あるいはカップリング試薬が、特異性および/または触媒活性のために決定的である抗体および/または酵素の部分に置かれる官能基と反応するので、抗体−酵素コンジュゲートを脱活性化(deactivate)することがある。さらにまた、若干のカップリングスキームは、水溶解度を低下したコンジュゲートをもたらす。
【0006】
抗体の特異性および/または酵素の活性の損傷の低い抗体−酵素コンジュゲートを提供できるカップリングスキームが所望され、そして免疫化学的アッセイ、例えば免疫組織化学的アッセイにおいて達せられる感度をより大きくさせる。より大きな感度は、さらなる増幅段階が望ましくない自動工程のためには特に重要である。
【発明の開示】
【0007】
概要
ヒドラジドチオール・リンカーを含む分子コンジュゲートが開示される。1つの態様では、抗体のFc部分に共有結合されたヒドラジドチオール・リンカーを含む抗体−検出可能な標識コンジュゲートが提供される。この態様のFc特異的コンジュゲートは改良された検出感度を提供し、それによって、標的分子の免疫組織化学的検出を、自動化および大量迅速処理用途に一層適合させる。
【0008】
また、ヒドラジドチオール・リンカーを使用してコンジュゲートを作成する方法が開示される。1つの態様では、チオール基が実質的にその中性酸形態において存在し、したがって実質的に不反応性である条件下でリンカーが第1の分子と反応されるので、リンカーのチオール基の保護基は必要とされない。そのような条件下では、共有結合は、リンカー化合物のヒドラジド基と第1の分子との間で形成することができ、その間、第2の分子のチオール反応性基との続く反応のためのチオール基を実質的に維持している。
【0009】
ヒドラジドチオール・リンカーおよびヒドラジドチオール・リンカーを作成する方法がまた開示される。さらに、開示されたコンジュゲートを使用して、組織切片または細胞学的サンプルのようなサンプルにおける標的分子を検出する方法が記述される。標的分子を検出する方法は、開示されたコンジュゲートによって示される改善された感度によって容易に自動化することができる。ある種の実施態様では、開示されたコンジュゲートを使用する多重送信(multiplexed)アッセイ、例えば、検出可能な標識として蛍光分子または蛍光ナノ粒子を有する開示された抗体コンジュゲートを用いる多重送信アッセイが提供される。
【0010】
図面の簡単な説明
図1は、開示されたFc特異的抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いる扁桃組織におけるKappaの検出のための染色パターンを示す一連の画像である。
図2は、開示されたFc特異的抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いる扁桃組織におけるLambdaの検出のための染色パターンを示す一連の画像である。
図3は、開示されたFc特異的抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いる肺組織におけるCMVの検出のための染色パターンを示す一連の画像である。
図4は、開示されたFc特異的抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いる脾臓組織におけるEBERの検出のための染色パターンを示す一連の画像である。
図5は、開示されたFc特異的抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いるCaSki異種移植組織におけるHPVの検出のための染色パターンを示す一連の画像である。
図6は、開示されたFc特異的抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いるHeLa異種移植組織におけるHPVの検出のための染色パターンを示す一連の画像である。
図7は、開示されたFc特異的抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いるSiHa異種移植組織におけるHPVの検出のための染色パターンを示す一連の画像である。
図8は、開示されたFc特異的抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いる細胞学的サンプルにおけるHPVの検出のための染色パターンを示す一連の画像である。
図9は、開示されたFc特異的抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いる筋肉組織におけるアクチンの検出のための染色パターンを示す一連の画像である。
図10は、開示された抗体−酵素コンジュゲートの感度の相互の比較、および開示された抗体−酵素コンジュゲートの感度と他の方法によって作成された抗体−体(body)酵素コンジュゲートの感度との比較を示す一連の画像である。
【0011】
いくつかの具体的に説明する実施態様の詳細な記述
本発明のさらなる態様は、次の限定されるものではない記述および実施例によって具体的に説明され、これらは以下の略語および用語に関して進行する。
【0012】
I.略語
Ab − 抗体
(Ab−AP) − 抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲート
AP − アルカリホスファターゼ
BSA − ウシ血清アルブミン
CMV − サイトメガロウイルス
EBER − Epstein−Barrウイルス初期RNA
DL − 検出可能な標識
Fc − 結晶化可能なフラグメント
HRP − セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ
IHC − 免疫組織化学
ISH − インサイチュー・ハイブリダイゼーション
MAL − マレイミド
MBCH − メルカプト酪酸カルボヒドラジド
MBH − メルカプト酪酸ヒドラジド
NHS − N−ヒドロキシ−スクシンイミド
PEG − ポリエチレングリコール
SBM − 特異的結合分子
【0013】
II.用語
用語「a」、「an」および「the」は、文章が明白に他に指示しない限り、単数および複数の両指示語を含む。
【0014】
本明細書で使用されるように、用語「アミノ化」はアルデヒドまたはケトンのカルボニル基とアミン基との反応を指し、ここで、アミンまたはヒドラジドのようなアミン含有化合物はアルデヒドまたはケトンと反応して最初にShiff塩基を形成し、これが次に、より安定な形態物に可逆的に転位されてもよく、あるいは場合によっては反応の反転を防ぐために還元されてもよい。「還元的アミノ化」条件は、還元剤の添加、より典型的には温和な還元剤、例えばシアノホウ水素化(cyanoborohydride)ナトリウム、またはそのco−genersの1種、例えばトリアセトキシホウ水素化ナトリウムの添加を含む。使用されてもよい他の温和な還元剤は種々のアミンボランを含む。
【0015】
用語「抗体」は、集合的には、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様分子(IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、ならびにいずれかの生物体、例えばヒト、ヤギ、ウサギおよびマウスのような哺乳動物における免疫応答の間に産生される類似の分子を含む)、またはそのフラグメントを指し、これらは、他の分子への結合を実質的に排除して標的(または高度に類似する標的群)に特異的に結合する。若干の実施態様では、抗体は、サンプル中の他の分子の結合定数よりも少なくとも10−1高い、10−1高いまたは10−1高い結合定数により標的に特異的に結合する。他の実施態様では、抗体は、10−6M以下、例えば10−9M以下または実に10−12M以下の次数で存在する抗原決定基(例えばハプテンまたはエピトープ)に対する結合のKd値を有する。Kd値は、例えば、競合的ELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)によるか、またはBiacoreT100(Biacore,Inc.,Piscataway,NJから得られる)のような表面プラズモン共鳴装置を使用して決定することができる。抗体フラグメントは、タンパク質分解抗体フラグメント[例えば、当該技術分野において既知であるF(ab’)フラグメント、Fab’フラグメント、Fab’−SHフラグメントおよびFabフラグメント]、組み換え抗体フラグメント(例えば、当該技術分野において既知であるsFvフラグメント、dsFvフラグメント、二重特異性sFvフラグメント、二重特異性dsFvフラグメント、diabodyおよびtriabody)、およびcamelid抗体(参照、例えば、米国特許第6,015,695号;同第6,005,079号;同第5,874,541号;同第5,840,526号;同第5,800,988号および同第5,759,808号)を含む。抗体は、モノクローナルおよびポリクローナル両抗体調製物を含む。開示されるコンジュゲートの抗体は、いかなる特定の分子またはいかなる特定の高度に類似する分子群にも特異的に結合できるけれども、特定の実施態様では、本抗体は、抗ハプテン抗体(例えば、興味ある核酸配列に対向されるハプテン標識されたプローブ配列を検出するために使用できる)を含む。特定の実施態様では、抗体は、イムノアッセイにおいて2次抗体として使用できる抗−抗体抗体を含む。例えば、抗体は、抗IgG抗体、例えば抗マウスIgG抗体、抗ウサギIgG抗体または抗ヤギIgG抗体を含んでもよい。
【0016】
句「ヒドラジドチオール・リンカーのチオール基がその中性酸形態において実質的に存在する条件」は、リンカーのチオール基(−SH;プロトン付加された中性の酸形態物)の約1%未満がその共役塩基形態物(−S;プロトン未付加の、負電荷形態物)において存在するpHの条件のような、条件を指す。例えば、そのような条件下では、リンカーの約0.1%未満、約0.01%未満またはわずか約0.001%未満が共役塩基形態物において存在できる。ヒドラジドチオール・リンカー化合物のチオール基がその中性酸形態において実質的に存在する条件は、約7未満のpH、例えば、約5.5未満のpHのような約6未満のpHを含む。特定の実施態様では、そのような条件は、pHの範囲、例えば約3のpH〜約7のpH、約4のpH〜約7のpH、約4のpH〜約6のpH、約4.5のpH〜約5.5のpH、またはこれらの各範囲のすべてのサブ範囲を含む。他の実施態様では、特定のリンカーのチオール基がその中性酸形態(共役塩基形態物として存在しているチオール基の1%未満)において実質的に存在するpH範囲の下限は、7以上、例えば8のpHであってもよい。当業者は、特定のチオール基がその中性酸形態において実質的に存在できるpH範囲の上限を、Henderson−Hasselbachの式およびリンカーのチオール基のpKa値を用いて容易に決定することができる。なおその他の実施態様では、特定のリンカーのチオール基は、正確なpHが決定できない溶媒系中で、その中性酸形態物において実質的に存在することができ、そして当業者は、水より低い極性である溶媒系が比較的高い見かけのpHにおいてその中性酸形態物でチオール基を保持するのを助けることを認識できる。特定の条件下で、リンカーのチオール基がその中性酸形態において実質的に存在するか否かの実験的決定は、チオールがその他の分子において存在するジスルフィド結合を還元できるか否かを決定することによって実施することができる。例えば、決定は、pHの特定の条件(または非水性系のための推定pH)下のリンカーとの接触によってジスルフィドを有する分子(例えば免疫グロブリン)中に導入される遊離チオール基の数について(例えば、Ellman’s試薬を使用して)実施できる。時期間(例えば1時間以上)にわたる過剰量のヒドラジドチオール・リンカー(例えば50倍以上の過剰)付加に続いて、分子中に導入された遊離チオールの平均数の決定が実施できる。遊離チオールが相当な程度(例えば1免疫グロブリン分子当たり導入された平均2個超のチオール)まで生成される場合、それは、リンカーのチオールが試験された条件下でその中性酸形態においては実質的に存在しないことを示している。例えば、約7のpHでは、免疫グロブリンに対して100倍過剰量のリンカーMBHは、1免疫グロブリン分子当たり平均約2個のチオールを生成できる。より低いpH5では、1000倍過剰量のMBHリンカーが、平均して、24時間で1免疫グロブリン当たり実質的に1未満のチオールを生成できる。これらの結果は、リンカーMBHでは、pHが低下されるにつれて、中性酸形態とその共役塩基との間の平衡が中性酸形態へと一層シフトされるので、チオール基が、約7以下のpHでその中性酸形態において実質的に存在することを例証している。
【0017】
「コンジュゲート(conjugate)」は、より大きな構築物になるように共有結合されている、2種以上の分子(および/またはナノ粒子のような材料)を指す。若干の実施態様では、コンジュゲートは、1種以上の他の分子、例えば1種以上の他の生物分子に共有結合される1種以上の生物分子(例えばペプチド、核酸、タンパク質、酵素、糖、多糖、脂質、糖タンパク質およびリポタンパク質)を含む。他の実施態様では、コンジュゲートは、1種以上の検出可能な標識(例えば蛍光分子、蛍光ナノ粒子、ハプテン、酵素およびそれらの組み合わせ物)に共有結合される1種以上の特異的結合分子(例えば抗体および核酸配列)を含む。
【0018】
「検出可能な標識」は、サンプル中の標識の存在および/または濃度を指示する検出可能な(例えば可視的、電子的または他の方法で)シグナルを発生することができる分子または材料である。特異的結合分子に複合された場合、検出可能な標識は、特異的結合分子が対向される標的の位置を指示し、そして/またはそれを定量するために使用することができる。それによって、サンプル中の標的の存在および/または濃度が、検出可能な標識によって生成されるシグナルを検出することによって検出できる。検出可能な標識は、直接的または間接的に検出されてもよく、そして異なる特異的結合分子に複合されたいくつかの異なる検出可能な標識が、1種以上の標的の検出と組み合わせて使用することができる。例えば、第1の検出可能な標識、例えば標的に対して特異的な核酸プローブまたは抗体に複合されたハプテンは、第1の検出可能な標識を特異的に結合する分子に複合されている第2の検出可能な標識の使用をとおして間接的に検出することができる。別々に検出することができる多数の検出可能な標識が、サンプル中の多数の標的の同時検出を提供できる多重送信アッセイを提供するために、異なる標的を特異的に結合する異なる特異的結合分子に複合されてもよい。検出可能なシグナルは、光子(高周波、マイクロ波、赤外、可視光および紫外周波数を含む)の吸収、放出および/または散乱を含むすべての既知またはこれまでに発見されたメカニズムによって生成することができる。検出可能な標識は、着色、蛍光、リン光およびルミネセンス分子および材料、1つの物質をその他の物質に変換して(例えば無色物質を着色物質にまたはその逆に変換することによって、あるいは沈殿物を生成するか、またはサンプル濁度を増強することによって)検出可能な差異を提供する触媒(例えば酵素)、さらなる検出可能に標識された抗体コンジュゲートを用いる抗体−ハプテン結合相互作用をとおして検出できるハプテン、ならびに常磁性および磁性分子または材料を含む。検出可能な標識の特定の例は、酵素、例えばセイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼまたはβ−ラクタマーゼ;蛍光分子、例えばフルオレセイン、クマリン、BODIPY染料、レソルフィン(resorufins)およびローダミン(蛍光分子の多くのさらなる例は、The Handbook−A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies,Molecular Probes,Eugene,ORにおいて見出だすことができる);ナノ粒子、例えば量子ドット(quantum dots)(例えば、QuantumDot Corp,Invitrogen Nanocrystal Technologies,Hayward,CAから得られる;また参照、米国特許第6,815,064号、同第6,682,596号および同第6,649,138号、これらの各特許は、引用によって本明細書に組み入れられている);金属キレート、例えばGd3+のような放射性または常磁性金属イオンのDOTAおよびDPTAキレート;ならびにリポソーム、例えば、捕捉された蛍光分子を含有するリポソーム;を含む。検出可能な標識が酵素を含む場合、検出可能な基質、例えば色原体、蛍光発生(fluorogenic)化合物、または発光性(luminogenic)化合物が、検出可能なシグナルを生成する酵素と組み合わされて使用されてもよい(広範な種類のそのような化合物が、例えばInvitrogen Corporation,Eugene ORから市販されている)。色原体化合物の特定の例は、ジアミノベンジジン(DAB)、リン酸4−ニトロフェニル(pNPP)、fast red、リン酸ブロモクロロインドリル(BCIP),ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、BCIP/NBT、fast red、AP Orange、AP blue、テトラメチルベンジジン(TMB)、2,2’−アジノ−ジ−[3−エチルベンゾチアゾリンスルホネート](ABTS)、o−ジアニシジン、4−クロロナフトール(4−CN)、ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)、o−フェニレンジアミン(OPD)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−Gal)、メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトピラノシド(MU−Gal)、p−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシド(PNP)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド(X−Gluc)、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)、フクシン、ヨードニトロテトラゾリウム(INT)、テトラゾリウムブルーおよびテトラゾリウムバイオレットを含む。あるいはまた、酵素は、金属組織学的検出スキームにおいて使用することができる。金属組織学的検出法は、水溶性金属イオンおよび酵素のレドックス不活性(redox−inactive)基質と組み合わせて、アルカリホスファターゼのような酵素を使用することを含む。基質は、酵素によってレドックス活性(redox−active)作用物に変換され、そしてレドックス活性作用物は金属イオンを還元して、それが検出可能な沈殿物を形成するようにさせる。(参照、例えば、2004年12月20日提出の同時係属出願米国特許第11/015,646号、PCT公開2005/003777および米国特許公開第2004/0265922号;これらの各々は、引用によって本明細書に組み入れられている)。金属組織学的検出法は、水溶性金属イオン、酸化剤および還元剤とともにオキシドレダクターゼ酵素(例えばセイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ)を用いて、再び検出可能な沈殿物を形成させることを含む。(参照、例えば、引用によって本明細書に組み入れられている米国特許第6,670,113号)。ハプテンは、抗体によって特異的に結合される小分子であるが、それ自体では、それらは動物における免疫応答を惹起できず、そして最初に比較的大きい担体分子、例えばタンパク質またはポリ核酸に結合されて免疫応答を生成しなければばらない。ハプテンの例は、ジ−ニトロフェノール、ビオチン、ジゴキシゲニンおよびフルオレセインを含む。オキサゾール、ピラゾール、チアゾール、ニトロアリール、ベンゾフラン、トリペルペン、尿素、チオ尿素、ロテノイド、クマリンおよびシクロリグナンハプテンのさらなる例が、2006年11月1日提出の同時係属米国暫定特許出願第60/856133号において開示されており、これは引用によって本明細書に組み入れられている。
【0019】
本明細書で使用されるような用語「Fc−特異的コンジュゲート」は、免疫グロブリン(またはそのフラグメント)のコンジュゲートを指し、これには、第2の分子(例えば検出可能な標識)が免疫グロブリンのグリコシル化部分(またはグリコシル化部分を保持する免疫グロブリンのフラグメント)に共有結合されている。免疫グロブリンのグリコシル化部分はFc部に見出だされ、これは免疫グロブリンの特異的結合活性に関与している免疫グロブリンの部分の外側の位置における免疫グロブリンの重鎖に置かれている免疫グロブリンの領域である。
【0020】
用語「ヒドラジド基」は、ヒドラジド基(−CO−NH−NH);カルボヒドラジド基(−NH−NH−CO−NH−NH);セミカルバジド基(−NH−CO−NH−NH);チオセミカルバジド基(−NH−CS−NH−NH);チオカルバジド基(−NH−NH−CS−NH−NH);炭酸ジヒドラジン基(−NH−CO−NH−NH−CO−NH−NH)またはその硫黄含有誘導体;またはヒドラジンカルボキシレート基(−O−CO−NH−NH)またはその硫黄含有誘導体を指す。
【0021】
用語「ヒドラジド反応性基」は、ヒドラジド基と反応し、そしてヒドラジド基に対して共有結合を形成できる原子の1群を指す。アルデヒドおよびケトン基はヒドラジド反応性基の例である。ヒドラジド反応性基は、分子の固有部分であってもよく、または分子に導入されてもよい。多糖および糖タンパク質中にアルデヒド基(ヒドラジド反応性基)を導入する1つの方法は、近接ジオールの過ヨウ素酸媒介酸化のような酸化による方法である。さらに、不飽和脂肪酸およびセラミドにおける二重結合は、四酸化オスミウムによってジオールに転化され、次いで過ヨウ素酸塩によってアルデヒドに酸化することができる。さらにまた、ペプチドおよびタンパク質のN末端セリンおよびトレオニン残基は、過ヨウ素酸塩によってアルデヒド基に選択的に酸化されて、コルチコトロフィンおよびβ−ラクタマーゼのようなある種のタンパク質の選択的修飾を可能にする。過ヨウ素酸−酸化された抗体の修飾は典型的には抗体を不活性にしない。酸化反応において過ヨウ素酸ナトリウムの濃度を変えることは、修飾される糖残基の種類に関して若干の特異性を与える。例えば、0℃における1mMの過ヨウ素酸ナトリウムは、典型的には、シアル酸残基の炭素原子7、8および9の間の隣接ヒドロキシルにおいてのみ開裂させ、それによって与えられた多糖上に多くのアルデヒドを生成する。適当な一般的プロトコールは、Hermanson、”Bioconjugate Techniques,”Academic Press,SanDiego,1996,ISBN 0−12−342336−8によって記述されており、これは引用によって本明細書に組み入れられている。生物分子中にアルデヒドを導入するその他の方法は、特異的な糖オキシダーゼ、例えば、ガラクトースオキシダーゼの使用によるものであり、これは、特に糖タンパク質において、末端ガラクトース残基をアルデヒドに酸化する酵素である。ガラクトース残基がシアル酸残基に対して終わりから2番目にある場合、ノイラミニダーゼが使用されてシアル酸残基を除去し、そして末端残基としてガラクトースを露出することができる。ノイラミニダーゼと、ガラクトース残基を酸化するガラクトースオキシダーゼとの組み合わせ物を用いて反応性のアルデヒド基を提供するプロトコールは、Hermanson、”Bioconjugate Techniques,”Academic Press,SanDiego,1996,ISBN 0−12−342336−8において提供されており、これは引用によって本明細書に組み入れられている。また、アルデヒドは、分子のアミノ基をNHS−アルデヒド、例えばスクシンイミヂルp−ホルミルベンゾエート(SFB)またはスクシンイミヂルp−ホルミルフェノキシアセテート(SFPA)(Invitrogen Corp.,Eugene,OR)と反応させることによって分子に導入することができる。あるいはまた、ビス−アルデヒド化合物、例えばグルタルアルデヒドは、アミン基を改変するために使用されてアルデヒド基を提供することができる。また、適当なプロトコールは、Hermanson、”Bioconjugate Techniques,”Academic Press,SanDiego,1996,ISBN 0−12−342336−8において提供されており、これは引用によって本明細書に組み入れられている。
【0022】
用語「ヒドラジドチオール・リンカー」は、1個以上の連結原子を介して共有的に結合された1個以上のヒドラジド基と1個以上のチオール基(−SH)とを含む分子を指す。ヒドラジドチオール・リンカーのヒドラジド基とチオール基は、メチレン基(−CH−)、分枝アルキレン基、さらなるヒドラジド基、芳香族基、ヘテロ芳香族基、脂環式基、ポリアルキレングリコール基(例えばエチレンオキシド基;−O−CH−CH−)、アミド基(−CONH−)、アミン基(−NH−)、エーテル基(−O−)およびそれらの組み合わせ物を含む1個以上の種々の原子を介して結合されてもよい。「PEGに基づく(PEG−based)ヒドラジドチオール・リンカー」は、その構造物の一部として1個以上のエチレングリコール基を含むリンカーを指す。「多官能性ヒドラジドチオール・リンカー」は、少なくとも1個のヒドラジド基、少なくとも1個のチオール基、および少なくとも1個のさらなる反応性基、例えばさらなるヒドラジド基、さらなるチオール基、または分子コンジュゲートを作成するために有用なすべての他の基を有する分枝リンカーを指す。若干の実施態様では、PEGに基づくヒドラジドチオール・リンカーは、別のPEG(dPEG)リンカーを含み、これは、米国特許出願公開第20060020134号において開示されているようなdPEG材料から作成されてもよく、そしてQuanta Biodesign(Powell,OH)から購入されてもよい。多官能性ヒドラジド−チオール・リンカーに含まれてもよいさらなる反応性基の例は、マレイミド基および活性エステル、例えばN−ヒドロキシスクシンイミドエステル、およびヒドロキシ基(−OH)を含む。反応性基のさらなる例は、Hermanson、”Bioconjugate Techniques,”Academic Press,SanDiego,1996,ISBN 0−12−342336−8において見出だすことができ、これは引用によって本明細書に組み入れられている。
【0023】
用語「サンプル」は、標的が存在してもよいすべての液状、半固形または固形物質(または材料)を指す。特に、サンプルは生物学的サンプルまたは生物学的材料から得られるサンプルであってもよい。生物学的サンプルの例は組織サンプルおよび細胞サンプルを含む。
【0024】
用語「特異的結合分子」は、第2の分子に特異的に結合する分子を指す。「特異的に結合する」は、特異的結合分子が、サンプル中に存在する他の分子を実質的に排除して第2の分子に結合することを意味する(例えば、特異的結合分子の結合定数は、サンプル中の他の分子に対する結合定数を超えて少なくとも10−1高い、10−1高い、10−1高いまたは10−1高い)。特異的結合分子の例は、核酸、受容体、抗体、酵素、レクチンおよびアビジンを含む。特異的結合分子が関与できる特異的結合相互作用の例は、核酸配列の二重らせんおよび三重らせんの形成、受容体−リガンド相互作用(例えば、葉酸−葉酸受容体相互作用)、抗体−抗原相互作用、酵素−基質相互作用、レクチン−糖相互作用およびアビジン−ビオチン相互作用(例えばストレプトアビジン−ビオチン相互作用)を含む。
【0025】
用語「標的」は、存在、位置および/または濃度が決定されているか、または決定することができるすべての分子を指す。標的分子の例は、タンパク質、核酸配列およびハプテン、例えば核酸配列またはタンパク質に共有結合されたハプテンを含む。標的分子は、典型的には、特異的結合分子および検出可能な標識の1種以上のコンジュゲートを使用して検出される。
【0026】
用語「チオール反応性基」は、チオール基と反応し、それと共有結合を形成することができる原子を指す。チオール反応性基は、分子の固有部分であってもよく、または1種以上の他の分子との反応をとおして分子に導入されてもよい。チオール反応性基の例は、非重合性Michaelアクセプター(acceptor)、ハロアセチル基(例えばブロモアセチルおよびヨードアセチル基)、ハロゲン化アルキル、マレイミド、アジリジン、アクリロイル基、ビニルスルホン、ベンゾキノン、求核置換を受けることができる芳香族基、例えばフルオロベンゼン基(例えばテトラおよびペンタフルオロベンゼン基)、およびジスルフィド基、例えばピリジルジスルフィド基およびEllman’s試薬により活性化されるチオールを含む。これらの各基の種類のさらなる例は、当業者には明らかであろう。1種類の反応性基をその他と交換してチオール反応性基を付加するための反応条件および方法に関するさらなる例および情報は、Hermanson、”Bioconjugate Techniques,”Academic Press,SanDiego,1996,ISBN 0−12−342336−8において提供され、これは引用によって本明細書に組み入れられている。特定の実施態様では、ヘテロ二官能性(heterobifunctional)リンカー分子が、分子に結合されてチオール反応性基が導入される。例えば、マレイミド基およびヒドロキシスクシンイミド(NHS)基を有するリンカーは、NHS基を介して分子のアミン基に結合することができ、それによって、その他の分子上のチオール基と反応されて、コンジュゲートを形成することができるチオール反応性マレイミド基をもつ分子(例えば、ヒドラジドチオール・リンカーおよび開示される方法を用いて導入されるもの)を提供する。
【0027】
III.概観
当業者は、開示された方法が、ヒドラジドチオール・リンカーと反応することができる官能基を有する分子のすべての組み合わせ物を結合するために使用できることを認識できる。次に示す限定されるものではない記述は、抗体コンジュゲート、より具体的には抗体−酵素コンジュゲートに焦点を合わせるが、本発明の範囲を限定するものと考えるべきではない。具体的に開示されるコンジュゲートは抗体−酵素コンジュゲートであるけれども、他の生物分子(例えば核酸配列)と他の検出可能な標識(例えば、ハプテン、蛍光標識、蛍光ナノ粒子および蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質)との間のコンジュゲートも意図されており、そして本発明の範囲内に入る。
【0028】
したがって、1つの態様では、方法は、2種以上の分子のコンジュゲートを形成するために開示される。この方法は、ヒドラジドチオール・リンカーをヒドラジド反応性基(例えばアルデヒド)を有する第1の分子(例えば抗体)と反応させて、チオール化された第1の分子を形成することを含む。反応は、ヒドラジドチオール・リンカーのチオール基が、実質的に、その中性酸(プロトン付加された)形態において存在する条件下で実施される。チオール化された第1の分子は、次に、チオール反応性基(例えば、第2の分子に導入されるマレイミド基)を有する第2の分子と反応されて、コンジュゲートを形成することができる。特定の実施態様では、第1の分子のリンカーとの反応は、約pH=4〜約pH=7のpHにおいて実施される。他の特定の実施態様では、ヒドラジドチオール・リンカーは、PEGに基づくヒドラジドチオール・リンカー、多官能性ヒドラジドチオール・リンカーまたはPEGに基づく多官能性ヒドラジドチオール・リンカーであってもよい。
【0029】
その他の実施態様では、方法は、特異的結合分子を検出可能な標識に共有結合するために使用されてもよい。より特定の実施態様では、方法は、グリコシル化部分を有する第1の分子をその他の分子に結合するために使用されてもよい。この実施態様では、グリコシル化部分は、最初に酸化されて、ヒドラジドチオール・リンカーと反応することができるアルデヒド基を生成する。なおより特定の実施態様では、グリコシル化された第1の分子は、グリコシル化Fc部を有する抗体であってもよい。Fc特異的チオール化抗体は、ヒドラジドチオール・リンカーとの反応によって形成され、そしてFc特異的チオール化抗体は、チオール反応性基を有する検出可能な標識と反応することができる。
【0030】
その他の態様では、同じものを作成するための種々のヒドラジドチオール・リンカーおよび方法は、次に示す合成の概観および特定の実施例において概説されるように提供される。さらなる態様は、開示されたリンカーにより作成されるコンジュゲートである。さらなる態様では、コンジュゲートを作成するために開示された方法を実施するための開示されたリンカーおよび方法を含むキットが開示される。また、開示されたコンジュゲートを用いてサンプル中の標識を検出するための方法が開示される。
【0031】
IV.合成の概観
A.ヒドラジドチオール・リンカーの作成
いかなるヒドラジドチオール・リンカーも、コンジュゲートを作成する開示された方法において使用されてもよいが、1つの実施態様では、ヒドラジドチオール・リンカーは、下記スキーム1にしたがって、チオールラクトンと、ヒドラジン、カルボヒドラジドまたはジヒドラジドとを反応させることによって提供されてもよい。式中、n=1、2または3、Rは、H、−CONHNHまたは−CO−A−CONHNHであり、ここで、Aは、1〜100個の炭素原子を有する二価の基であり、これは、1個以上のヘテロ原子(例えば、O,NまたはS)によって中断されていてもよく、そして例えば、1個以上のアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アシル、カルボキシ、ハロゲン、スルホネート、オキソ、ホスホネートおよび/またはアミン基により置換されていてもよい。より特定の実施態様では、Aは、1〜10個のメチレン基(−CH−)および/または1〜24個のエチレンオキシド(−CH−CH−O−)基からなる二価の基である。なおより特定の実施態様では、Aは、1〜6個のメチレン基または4〜12個のエチレンオキシド基からなる二価の基である。
【0032】
【化1】

【0033】
開示される方法において使用できる広範なヒドラジドチオール・リンカーはまた、下記スキーム2にしたがって提供されてもよい。このスキームにおいて、Zは、1〜100個の炭素原子を有する二価の基であり、ここで、二価の基は1個以上のヘテロ原子(例えば、O,NまたはS)によって中断されていてもよく、そして例えば、1個以上のヒドロキシル、アルコキシ、アシル、カルボキシ、ハロゲン、スルホネート、オキソ、ホスホネートおよび/またはアミン基により置換されていてもよい。より特定の実施態様では、Zは、1〜10個のメチレン基(−CH−)および/または1〜24個のエチレンオキシド(−CH−CH−O−)基からなる二価の基である。なおより特定の実施態様では、Zは、1〜6個のメチレン基または4〜12個のエチレンオキシド基からなる二価の基である。Rは、H、−CONHNHまたは−CO−A−CONHNHであり、ここで、Aは、1〜100個の炭素原子を有する二価の基であり、これは、1個以上のヘテロ原子(例えば、O,NまたはS)によって中断されていてもよく、そして例えば、1個以上のアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アシル、カルボキシ、ハロゲン、スルホネート、オキソ、ホスホネートおよび/またはアミン基により置換されていてもよい。
【0034】
【化2】

【0035】
若干の実施態様では、開示される方法において使用できるPEGに基づくヒドラジドチオール・リンカーは、スキーム3にしたがって提供され、そして作成される。スキーム3において、m=2〜50;Rは、H、−CONHNHまたは−CO−A−CONHNHであり、ここで、Aは、1〜100個の炭素原子を有する二価の基であり、これは、1個以上のヘテロ原子(例えば、O,NまたはS)によって中断されていてもよく、そして例えば、1個以上のアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アシル、カルボキシ、ハロゲン、スルホネート、オキソ、ホスホネートおよび/またはアミン基により置換されていてもよく;そしてXおよびYは、独立して、結合、または1〜20個の炭素原子を有する二価の基である。より特定の実施態様では、Aは、1〜10個のメチレン基(−CH−)および/または1〜24個のエチレンオキシド(−CH−CH−O−)基からなる二価の基である。なおより特定の実施態様では、Aは、1〜6個のメチレン基または4〜12個のエチレンオキシド基からなる二価の基である。XおよびYの二価の基は、1個以上のヘテロ原子(例えば、O,NまたはS)によって中断されていてもよく、そして例えば、1個以上のアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アシル、カルボキシ、ハロゲン、スルホネート、オキソ、ホスホネートおよび/またはアミン基により置換されていてもよい。より特定の実施態様では、XおよびYは、独立して、結合、または−(CH−[式中、p=1〜3]である。カップリング反応において使用されるカルボジイミドは、スキームにしたがって所望のカップリングを提供するいかなるカルボジイミドであってもよい。適当なカルボジイミドの例は、DCC(N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド)およびDIC(N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド)を含む。以下で議論される作業実施態様では、DCCが使用されてカップリングが実施される。
【0036】
【化3】

【0037】
他の実施態様では、開示される方法において使用されてもよい多官能性ヒドラジドチオール・リンカーが提供される。下記スキーム4a,4b,4cおよび4dは、ホモシステイン、リジン、グルタミン酸およびホモセリンのそれぞれから多官能性リンカーを作成する一般的方法を示す。スキーム4a,4b,4cおよび4dにおいて、Dは、1〜100個の炭素原子を有する二価の基であり、ここで、二価の基は1個以上のヘテロ原子(例えば、O,NまたはS)によって中断されていてもよく、そして例えば、1個以上のアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アシル、カルボキシ、ハロゲン、スルホネート、オキソ、ホスホネートおよび/またはアミン基により置換されていてもよい。より特定の実施態様では、Dは、1〜10個のメチレン基(−CH−)および/または1〜24個のエチレンオキシド(−CH−CH−O−)基からなる二価の基である。なおより特定の実施態様では、Dは、1〜6個のメチレン基または4〜12個のエチレンオキシド基からなる二価の基である。また、スキーム4a,4b,4cおよび4dにおいて、Rは、H、−CONHNHまたは−CO−A−CONHNHであり、ここで、Aは、1〜100個の炭素原子を有する二価の基であり、これは、1個以上のヘテロ原子(例えば、O,NまたはS)によって中断されていてもよく、そして例えば、1個以上のアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アシル、カルボキシ、ハロゲン、スルホネート、オキソ、ホスホネートおよび/またはアミン基により置換されていてもよい。より特定の実施態様では、Aは、1〜10個のメチレン基(−CH−)および/または1〜24個のエチレンオキシド(−CH−CH−O−)基からなる二価の基である。なおより特定の実施態様では、Aは、1〜6個のメチレン基または4〜12個のエチレンオキシド基からなる二価の基である。
【0038】
【化4】

【0039】
【化5】

【0040】
【化6】

【0041】
【化7】

【0042】
他の特定の実施態様では、開示される方法において使用できるPEGに基づく多官能性ヒドラジドチオール・リンカーが提供される。スキーム5a,5bおよび5cは、そのようなリンカーを提供するために使用できる一般的合成スキームを具体的に説明している。これらのスキームにおいて、p=2〜50であり、そしてRは、H、−CONHNHまたは−CO−A−CONHNHであり、ここで、Aは、1〜100個の炭素原子を有する二価の基であり、これは、1個以上のヘテロ原子(例えば、O,NまたはS)によって中断されていてもよく、そして例えば、1個以上のアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アシル、カルボキシ、ハロゲン、スルホネート、オキソ、ホスホネートおよび/またはアミン基により置換されていてもよい。より特定の実施態様では、Aは、1〜10個のメチレン基(−CH−)および/または1〜24個のエチレンオキシド(−CH−CH−O−)基からなる二価の基である。なおより特定の実施態様では、Aは、1〜6個のメチレン基または4〜12個のエチレンオキシド基からなる二価の基である。RはH、アルキルまたは保護基であってもよい。
【0043】
【化8】

【0044】
【化9】

【0045】
【化10】

【0046】
B.Fc特異的抗体コンジュゲートの作成
1つの実施態様では、ヒドラジドチオール・リンカーを含むコンジュゲートは、抗体および検出可能な標識のコンジュゲートを含む。特定の実施態様では、コンジュゲートは、抗体および検出可能な標識のFc特異的コンジュゲートを含む。より特定の実施態様では、コンジュゲートは、抗体および酵素、例えばアルカリホスファターゼのFc特異的コンジュゲートを含む。スキーム6は、Fc特異的様式においてヒドラジドチオール・リンカーを抗体に付加する方法を具体的に説明している。
【0047】
【化11】

【0048】
スキーム6では、グリコシル化Fc部を有する抗体が、部位特異的に酸化されて、グリコシル化Fc部の糖部分において1個以上のアルデヒド基を生成する。アルデヒド基は、次いで、ヒドラジドチオール・リンカーのチオール基が実質的にプロトン付加される条件下で(実質的に、その中性酸形態において)ヒドラジドチオール・リンカーと反応される。そのような条件下で、リンカーのヒドラジド基は、抗体のFc部に共有結合されるが、一方、チオール基は実質的に未反応で(例えば、抗体におけるジスルフィド結合と実質的に反応せずに)残され、その結果、チオール反応性基を有する第2の分子、例えばチオール反応性基を有する検出可能な標識、とのその後の反応のために保持される。反応は、望ましくは、より安定なヒドラゾンを形成するための温和な還元体(reductant)とのさらなる反応(還元的アミノ化の例)を含む。チオール化された抗体とチオール反応性基(例えばマレイミド基)を有する検出可能な標識とのカップリングはスキーム7において具体的に説明される。
【0049】
【化12】

【0050】
F.実施例
作業実施態様の次の限定されるものではない例は、本発明のある種の態様をさらに具体的に説明するために提供される。
【0051】
例1−メルカプト酪酸ヒドラジド(MBH)の合成
特定の作業実施態様では、ヒドラジドチオール・リンカーは、スキーム8にしたがってγ−ブチロチオラクトンから製造された。
【0052】
【化13】

【0053】
特に、ヒドラジン1水和物(2.43ml,50mmol)の撹拌溶液にγ−ブチロチオラクトン(0.43ml,5mmol)を徐々に添加した。4時間後、過剰のヒドラジンを真空除去した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO,1:19MeOH/MeCN)によって精製して、無色のオイルとして所望の生成物を得た。収量:599mg(89%):HNMR(250MHz,CDCl)δ 7.56(s,1H),3.89(s,2H),2.56−2.47(q,J=6.9Hz,2H),2.28−2.22(t,J=7.0Hz,2H),1.94−1.83(p,J=7.0Hz,2H),1.35−1.29(t,J=8.0Hz,1H);13CNMR(62.9MHz,CDCl)δ 173.02、32.38、29.16、23.94;ESI−HRMS m/z 135.05955(M+H,C11OS cal’d 135.05921).
【0054】
例2−メルカプト酪酸カルボヒドラジド(MBCH)の合成
その他の特定の作業実施態様では、カルボヒドラジドチオール・リンカーは、スキーム9にしたがってγ−ブチロチオラクトンから製造された。
【0055】
【化14】

【0056】
特に、γ−ブチロチオラクトン(0.43ml,5mmol)をアセトニトリル(5ml)中に希釈し、次いで、脱イオン水(5ml)中カルボヒドラジド(2.25g,25mmol)の溶液に徐々に添加した。反応液を40℃で18時間撹拌し、次いで、真空濃縮した。粗生成物をアセトニトリルを用いる濾過およびフラッシュクロマトグラフィー(SiO,1:19MeCN/MeOH)によって除去して、白色固体として生成物を得た。収量:672mg(70%):HNMR(250MHz,DO)δ 2.62−2.56(t,J=7.1Hz,2H),2.47−2.41(t,J=7.4Hz,2H),1.98−1.87(m,2H);13CNMR(62.9MHz,DO)δ 179.14、163.94、34.86、31.74,25.91;ESI−HRMS m/z 215.05818(M+Na,C12NaOS cal’d 215.25787).
【0057】
例3−メルカプト−dPEG−ヒドラジドの合成
なおその他の特定の作業実施態様では、PEGに基づくヒドラジドチオール・リンカーは、スキーム10にしたがって製造されて、メルカプト−dPEGヒドラジドを提供した。
【0058】
【化15】

【0059】
アセチル−S−dPEGTM−NHSエステル(Quanta Biodesign,Powell,OH;580mg,1.38mmol)を無水ヒドラジン(10ml)に徐々に添加し、そして周囲温度で18時間撹拌した。反応液を真空濃縮して、粗生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィー(SiO,199:1MeCN/AcOH)により無色固体として生成物を得た。収量:240mg(59%):HNMR(250MHz,CDCl)δ 8.04(s,1H),3.88(s,2H),3.68−3.52(m,17H),2.65−2.60(t,J=6.3Hz,2H),2.43−2.39(t,J=5.8Hz,2H);13CNMR(62.9MHz,CDCl)δ 171.94、72.74,70.52,70.49,70.38,70.15,70.09,66.72,35.17,24.12;ESI−HRMS m/z 319.13073(M+Na,C1124NaOS cal’d 319.13036).アセチル−S−dPEGTM−NHSエステルはまた、Quanta Biodesign(Powell,OH)から市販されている。一般に、メルカプト−dPEG−ヒドラジドは、式HN−NH−CO−(CH−CH−O)−CH−CH−SH[式中、t=2〜50である]を有する。
【0060】
例4−IgGおよびアルカリホスファターゼのコンジュゲートの合成
Fc特異的チオール化免疫グロブリンをスキーム11にしたがって製造した。
【0061】
【化16】

【0062】
具体的には、ポリクローナル抗体の溶液(1.5ml,3.0mg/ml)に、過ヨウ素酸ナトリウム(0.5ml,脱イオン水中10mg/ml)を添加して、11.7mMの最終過ヨウ素酸濃度を得た。反応溶液を2時間撹拌し、その後PD−10脱塩用カラム(0.1MNaOAc,1mMEDTA,pH=5.0)を通過させて過剰の過ヨウ素酸塩を除去した。ヒドラジドチオール・リンカー(MBH,AMBH,MBCHまたはメルカプト−dPEG−ヒドラジド)を抗体に対して1000倍モル過剰で添加し、続いてシアノホウ水素化ナトリウム(3.14mg,50μmol)を添加し、そして反応液を18時間撹拌し、その後1mlの最終容量まで濃縮した。サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex200;0.1MNaOAc,pH=5.0)により精製チオール化抗体を得た。チオール数は、改変Ellman’sアッセイにより定量された(参照、例えば、Hermanson、”Bioconjugate Techniques,”Academic Press,SanDiego,1996,ISBN 0−12−342336−8、これは引用によって本明細書に組み入れられている)。この操作において1抗体当たり平均3〜5個のチオール基を得た。
【0063】
免疫グロブリンのFc部に導入されたアルデヒド基とヒドラジドチオール・リンカーの反応は、温和な酸性pH、例えば、pHほぼ5のような4〜6のpHにおいて有利に実施される。理論に捕らわれなければ、そのような温和な酸性pHでは、アルデヒド基は、アルデヒド酸素のプロトン付加によって求電子的に活性化され、そして同時に、ヒドラジド基(pKa約4)は実質的にプロトン付加されず、高度に求核性のままであり、それによってアルデヒド基とヒドラジド基の間の反応を促進すると考えられる。そのような温和な酸性条件は、また、チオール基の硫黄が実質的にプロトン付加される(実質的に中性酸形態において存在する)条件を表し、かくして免疫グロブリンの重鎖および軽鎖を結んでいるジスルフィドとは反応できないので、反応は容易であり、そして免疫グロブリンの構造をほとんど破壊しないであろう。さらにまた、遊離チオール基は、コンジュゲートを形成するさらなる反応のために維持される。
【0064】
チオール反応性マレイミド基をスキーム12にしたがってアルカリホスファターゼに導入した。
【0065】
【化17】

【0066】
具体的には、Trisを含有する反応バッファーにおいて受領したアルカリホスファターゼ(Biozyme,SanDiego,CA)を、PD−10カラムを通過させて非反応バッファー(0.1Mリン酸ナトリウム、0.1M塩化ナトリウム、1mM塩化マグネシウム、0.1mM塩化亜鉛、pH=7.5)中のAPへと換えた。次いで、アルカリホスファターゼの溶液(0.8ml,17.5mg/ml)に、NHS−dPEG12−MAL(Quanta Biodesign,Powell,OH)の100倍過剰量を添加し、そして反応液を1時間撹拌した。サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex200;0.1MTris,1mMMgCl,0.1mMZnCl,pH=7.5)により精製マレイミド−アルカリホスファターゼを得た。マレイミド数は、改変Ellman’sアッセイを用いて定量され(参照、例えば、Hermanson、”Bioconjugate Techniques,”Academic Press,SanDiego,1996,ISBN 0−12−342336−8、これは引用によって本明細書に組み入れられている)、そして平均17〜25個のマレイミド基において各アルカリホスファターゼ酵素に導入された。
【0067】
次いで、チオール化Abと反応性APの最終的複合をpH7以上において実施したが、これは、この例では、AP上のチオール(より高いpHにおいて、より高度に共役塩基チオール塩形態において存在する)と、アルカリホスファターゼに導入したチオール反応性マレイミド基との反応によるコンジュゲートの迅速な形成を可能にした。下記スキーム13はチオール化Abとチオール反応性APの最終コンジュゲートを示している。
【0068】
【化18】

【0069】
具体的には、精製マレイミド−アルカリホスファターゼを、精製チオール化抗体と1:1モル比で合わせ、そして18時間撹拌した。サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex200;0.1MTris,1mMMgCl,0.1mMZnCl,pH=7.5)により精製コンジュゲートを得て、これを、StabilzymeTMAP酵素安定化希釈液(SurModics,Eden Prairie,MN)の1:1希釈液中にA280=0.0087まで希釈し、そして次に示す実施例において記述されるように組織において分析した。得られるコンジュゲートは、次に示す実施例において示されるように、種々の組織において先例のない染色感度を示した。
【0070】
この操作にしたがうAb−APコンジュゲートの合成は、約270kDaの中央分子量を有する1:1コンジュゲートを生成する。これは、コンジュゲートを調製するために使用された抗体(例えばヤギ抗マウスIgG、ヤギ抗ウサギIgGおよびウサギ抗DNP抗体)には無関係に事実である。複合後に得られた粗クロマトグラムは、生成物と出発材料(145kDaの中央分子量)との間で重複部分を示し、これは、精製工程中を考慮に入れることができる。
【0071】
例5−扁桃組織におけるKappaの検出
この実施例では、例4の操作にしたがってMBHを用いて製造されたAb−APコンジュゲートの性能を、その検出感度についてインサイチューハイブリダイゼーション(ISH)アッセイにおいて評価した。利用される操作は、BenchMarkTM自動スライド染色装置(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)において利用できる標準ISHプロトコールから適合された。自動染色プロトコールは次のとおりであった。
【0072】
スライド上のパラフィン包埋扁桃組織サンプルを、4分間75℃に加熱し、そして75℃においてEZPrepTM容積アジャスト(volume adiust)(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)により2回処理し、その後LiquidCoverslipTM(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)をEZPrepTM容積アジャストとともに適用した。75℃で4分後、スライドを洗浄し、そしてEZPrepTM容積アジャストをLiquidCoverslipTMとともに添加して、76℃で4分間脱パラフィンを行った。LiquidCoverslipをEZ−Prepを覆うために分配した。次いで、スライドを4分間90℃に加熱し、そして洗浄後に37℃まで冷却した。ISH−Protease−1(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加し、2分間インキュベートし、次いで洗浄し、その後フルオレセイン標識したkappa核酸プローブ(100μl,INFORMTMKappa,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加した。4分間インキュベートした後、スライドを12分間85℃に加熱し、次いで47℃に冷却し、そしてさらに64分間インキュベートした。スライドを4回洗浄した後、マウス抗フルオレセイン1次抗体(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加し、これを20分間インキュベートし、次いで2回洗浄した。この時点で、2次抗体(さらなる増幅のために)を自動的に添加するか、あるいはAb−APコンジュゲートを手動で添加または自動的に分配器から添加した。増幅されたスライドでは、ウサギ抗マウス抗体(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加し、8分間インキュベートし、次いでスライドを2回洗浄した。いずれの場合でも、Ab−APコンジュゲート(2次抗体を含有するサンプルおよび含有しないサンプルについて、ヤギ抗ウサギまたはウサギ抗マウスIgGコンジュゲート、それぞれ;100μl)をスライドに適用した後、スライドを16分間インキュベートし、そしてスライドを2回洗浄した。iViewTMBlue Enhanceエンハンサー(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を適用した後、4分間インキュベートし、そしてiViewTMBlue NBT(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)およびiViewTMBlue BCIP(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)の両方を適用した。アルカリホスファターゼの基質であるBCIPは不溶性の暗青色/紫色沈殿を生成し、そしてNBTはBCIPの着色を増進する。次いで、スライドを32分間インキュベートし、2回洗浄し、そしてCounterstain NFR(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加した。6分間対比染色剤(counterstain)とともにインキュベートした後、スライドを再び洗浄し、装置からはずした。スライドを洗剤液で処理し、その後一連のエタノール、アセトン、次いでキシレンにより脱水した。カバースリップをスライドに添加し、スライドを顕微鏡をとおして観察し、そして写真撮影した。また、kappaプローブで処理しなかったネガティブ対照を同様の方式で調製した。
【0073】
比較のために、参照扁桃組織サンプルを、kappaプローブの検出のためのSA−APコンジュゲートを用いる類似操作を使用して染色した(この操作は、前記2次抗体の添加と、それに続く余分の増幅段階を含み、ここで、ビオチン化抗IgG抗体の自動添加が、Ab−APコンジュゲートの適用の代わりに実施され、次いで、SA−APコンジュゲートの添加が実施された)。ビオチン標識抗体およびSA−APコンジュゲートの使用は、自動ISH染色方法における検出のための工業規準であり、Ab−APコンジュゲートの相対性能を決定するために参照として役立った。また、kappaプローブで処理されないネガティブ対照スライドを、SA−AP検出を使用して類似の方式で作成した。カバースリップをスライドに添加し、そしてそのスライドを明視野顕微鏡をとおして40Xで観察し、写真撮影した。
【0074】
図1は、抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびSA−APコンジュゲートを使用する扁桃組織におけるkappaISH検出のために観察された所望の染色およびバックグラウンド染色を比較する一組の顕微鏡写真である。図1Aでは、2次抗体によって与えられる増幅のない、そして開示される抗体コンジュゲートを使用するkappaの染色が示される。図1Bは、コンジュゲートにより処理されたネガティブ対照スライドを示す。図1Cは、SA−APを使用するkappaの染色を示し、そして図1Dは、同一物についてのネガティブ対照を示す。図1Aと1Cの比較は、抗体コンジュゲートによるより明確な染色を例証し(より少ない増幅段階が使用されたとしても)、そして図1Bと1Dの比較は、抗体コンジュゲートによって与えられるより低いバックグラウンドを例証している。これらの結果は、抗体コンジュゲートによって可能とされた非ビオチン検出スキームの優位性を具体的に説明している。
【0075】
例6−扁桃組織におけるLambdaの検出
例5において記述された自動染色方法(使用されたフルオレセイン標識核酸プローブは、Lambda;INFORMTMLambda,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ、に特異的であり;そしてISH Protease 1は4分間インキュベートされたことを除いて)を、扁桃組織におけるLambdaの検出についてAb−APコンジュゲートの性能を評価するために使用した。Ab−APコンジュゲートを2次抗体増幅段階なしに使用し、そして例4に記述されたようにMBHを使用して作成した。比較のためには、参照スライドを例4に記述されたSA−APコンジュゲート検出スキームを使用して作成した。
【0076】
結果は図2において示される。具体的には、図2Aおよび2Bは、Lambda特異的核酸プローブの、それぞれ添加および無添加(ネガティブ対照)の下でAb−APコンジュゲートを使用して得られた染色パターンを示す。図2Cおよび2Dは、Lambdaプローブの、それぞれ添加および無添加(ネガティブ対照)の下でSA−APコンジュゲートを使用して得られた染色パターンを示す。図2Aと2Cの比較は、Ab−APコンジュゲートを使用して得られた染色パターンが、Ab−APコンジュゲートについて使用された方法が1つ少ない増幅段階を伴うにも拘わらず、SA−APコンジュゲートを用いて見られるパターンと少なくとも同じ強度であることを示している。図2Bと2Dの比較は、Ab−APコンジュゲートでは、より弱いバックグラウンド染色(組織の比較的暗い全体的染色によって証明される)が存在することを例証している。再び、これらの結果は、開示されたAb−APコンジュゲートが用いられる場合に見られるバックグラウンドの有益な低下を例証している。
【0077】
例7−肺組織におけるCMVの検出
例5において記述された自動染色方法(使用されたフルオレセイン標識核酸プローブは、CMV;INFORMTMCMV,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ、に特異的であり;そしてISH Protease 1は4分間インキュベートされたことを除いて)を、肺組織におけるCMVの検出についてAb−APコンジュゲートの性能を評価するために使用した。Ab−APコンジュゲートを2次抗体増幅段階なしに使用し、そして例4に記述されたようにMBHを使用して作成した。比較のためには、参照スライドを例4に記述されたSA−APコンジュゲート検出スキームを使用して作成した。
【0078】
結果は図3において示される。具体的には、図3Aは、プローブの存在下でAb−APコンジュゲートを使用して得られた染色パターンを示し、図3Bは、プローブの不在下でAb−APコンジュゲートを使用して得られた染色パターンを示し、図3Cは、プローブの存在下でSA−APコンジュゲートを使用して得られた染色パターンを示し、そして図3Dは、プローブの不在下でSA−APコンジュゲートを使用する染色パターンを示す。図3Aと3Cの比較は、Ab−APコンジュゲートによる染色が、SA−APコンジュゲートによって与えられた染色よりも明確であり、そしてそれと少なくとも同じ強度(1つ少ない増幅段階を有するにも拘わらず)であることを示している。さらにまた、より弱いバックグラウンド染色がAb−APコンジュゲートについて見られる。また、Ab−APコンジュゲートによって提供されるバックグラウンドにおける低下は、図3Bと3Dの比較からも立証される。
【0079】
例8−脾臓組織におけるEBERの検出
例5において記述された自動染色方法(使用されたフルオレセイン標識核酸プローブは、EBER;INFORMTMEBER,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ、に特異的であり;そしてISH Protease 1は4分間インキュベートされたことを除いて)を、脾臓組織におけるEBERの検出についてAb−APコンジュゲートの性能を評価するために使用した。Ab−APコンジュゲートを2次抗体増幅段階なしに使用し、そして例4に記述されたようにMBHを使用して作成した。比較のためには、参照スライドを例4に記述されたSA−APコンジュゲート検出スキームを使用して作成した。
【0080】
結果は図4において示される。具体的には、図4Aは、プローブの存在下でAb−APコンジュゲートを使用して得られた染色パターンを示し、図4Bは、プローブの不在下でAb−APコンジュゲートを使用して得られた染色パターンを示し、図4Cは、プローブの存在下でSA−APコンジュゲートを使用して得られた染色パターンを示し、そして図4Dは、プローブの不在下でSA−APコンジュゲートを使用する染色パターンを示す。図4Aと4Cの比較は、Ab−APコンジュゲートによる染色が、SA−APコンジュゲートによって与えられた染色よりも明確であり、そしてそれと少なくとも同じ強度(1つ少ない増幅段階を有するにも拘わらず)であることを示している。さらにまた、より弱いバックグラウンド染色がAb−APコンジュゲートについて見られる。また、Ab−APコンジュゲートによって提供されるバックグラウンドにおける低下は、図4Bと4Dの比較からも立証される。
【0081】
例9−組織の異種移植片におけるHPVの検出
この実施例では、例4の操作にしたがってMBHを用いて製造されたAb−APコンジュゲートの性能を、それが、ISHによるHPV配列の検出のために必要な段階の数において、さらなる減少を可能にするような十分な感度を提供するか否かを決定するために、一部評価した。結果は、検出のために必要な段階の数における減少を達成することが可能であり、それによって、段階の数における減少が、処理時間と同時にアッセイコストにおける有意な減少をもたらす自動工程のために、開示されたAb−APコンジュゲートを非常に有用なものにさせることを示す。
【0082】
スキーム14〜16として以下に提示される3種の検出スキームは、自動または半自動方式で実施された。これらのスキームの各々において、HPV核酸配列の少なくとも一部分に特異的に結合するDNP標識核酸プローブが、最初にサンプルに添加される。これらのスキームにおいて描かれる続いての段階は、HPV核酸に結合されたプローブの存在を検出するために使用される段階である。
【0083】
【化19】

【0084】
【化20】

【0085】
【化21】

【0086】
スキーム14では、抗DNP抗体が最初にプローブに結合される。抗IgG抗体が次に添加される(最初の増幅段階)。第2の増幅段階では、ビオチン化抗IgG抗体が添加される。SA−APコンジュゲートが添加され、これがビオチン化抗体に結合し、そして染色は、APによって作用される色原体基質の添加により実施される。スキーム15では、第2の増幅段階は除外され、そしてAPに複合された抗IgG抗体が、SA−APコンジュゲートよりもむしろ染色前に添加される。スキーム16では、両増幅段階が除外され、そしてDNP標識プローブが、APに複合された抗DNP抗体によって直接検出される。
【0087】
SCIDマウスにおける異種移植片において増殖された種々の細胞系におけるHPVの検出を、BenchMarkTM自動染色装置(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)のための標準ISHプロトコールを改良された次の操作にしたがって実施した。スライド上のパラフィン包埋組織を、4分間75℃に加熱し、次いで75℃においてEZPrepTM容積アジャスト(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)により2回処理し、その後LiquidCoverslipTM(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)をEZPrepTM容積アジャストとともに適用した。75℃で4分後、スライドを洗浄し、そしてEZPrepTM容積アジャストを添加して、76℃で4分間、組織を脱パラフィンさせた。LiquidCoverslipをEZPrepTMを覆うために分配した。Cell Conditioner #2、細胞条件付け(conditioning)溶液(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加し、スライドを4分間90℃に加熱し、そして8分間インキュベートした。この後、Cell Conditioner #2のさらなる添加および90℃で12分間のさらなるインキュベーションを実施した。スライドをReaction Buffer(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を用いて洗浄し、37℃まで冷却し、そしてISH−Protease 3(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加した。4分間のインキュベーション後、スライドを3回洗浄し、その後、ハイブリダイゼーションバッファー(iViewTM+HybReadyTMSolution,100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を適用し、4分間インキュベートした。DNP標識HPV核酸プローブ(HPV HR Probe,200μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加し、その後、37℃で4分間、95℃で12分間および52℃で124分間インキュベートした。次いで、スライドを2回洗浄し、72℃に加温した。この最後の段階をさらに2回反復した後、スライドを37℃まで冷却し、次いで、その後の検出スキームに応じて、そのようなスライドを、3方法の1つにおいて自動または半自動方式で処理した。
【0088】
スキーム14に描かれたような1つの例では、iViewTM+抗DNP(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)1次抗体を適用し、そして20分間インキュベートした。次いでスライドを2回洗浄し、その後、iViewTM+Amp(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)2次抗体を添加した。コンジュゲートのインキュベーションを8分間実施し、その後スライドを洗浄した。iViewTM+Biotin−Ig(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加し、続いて12分間インキュベートし、そしてiViewTM+SA−AP(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加した。スライドを3回洗浄し、その後iViewTM+Enhance(100μl,VMSI)を適用し、その後、これを4分間インキュベートし、そしてiViewTM+NBT(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)およびiViewTM+BCIP(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)の両方を適用した。次いで、スライドを24分間インキュベートし、3回洗浄し、そしてCounterstain NFR(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加した。4分間対比染色剤とともにインキュベートした後、スライドをさらに3回洗浄し、装置からはずした。スライドを洗剤液で処理し、その後一連のエタノール、アセトン、次いでキシレンにより脱水した。カバースリップをスライドに適用し、次いで、スライドを明視野顕微鏡をとおして観察し、そして写真撮影した。
【0089】
スキーム15に描かれたようなその他の例では、ウサギ抗DPN1次抗体を添加した(iViewTM+抗DNP1次抗体、100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)。1次抗体を20分間インキュベートし、次いでスライドを2回洗浄し、その後、アルカリホスファターゼに複合された抗ウサギIgG抗体(100μl)を手動で添加した(この段階はまた自動化されて、操作を完全に自動化させることができる)。コンジュゲートのインキュベーションを16分間実施し、その後スライドを4回洗浄した。iViewTM+Enhance(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を適用し、その後、4分間インキュベートし、そして発色のためのNBTおよびBCIP(iViewTM+NBTおよびiViewTM+BCIP、100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)の両方を適用した。次いで、スライドを24分間インキュベートし、3回洗浄し、そしてCounterstain NFR(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加した。4分間対比染色剤とともにインキュベートした後、スライドをさらに3回洗浄し、装置からはずした。スライドを洗剤液で処理し、その後エタノール、アセトンおよびキシレンにより脱水した。カバースリップを適用した後、スライドを顕微鏡をとおして観察し、そして明視野顕微鏡を使用して40Xで写真撮影した。
【0090】
スキーム16に描かれたような、なおその他の例では、スライドを、アルカリホスファターゼ・ウサギ抗DPNコンジュゲート(100μl)により直接処理した。スライドを20分間インキュベートし、次いで2回洗浄し、その後、iViewTM+Enhance(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を適用した。その後、これを4分間インキュベートし、そして同時に、iViewTM+NBT(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)およびiViewTM+BCIP(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)の両方を適用した。次いで、スライドを24分間インキュベートし、3回洗浄し、そしてCounterstain NFR(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加した。4分間対比染色剤とともにインキュベートし、スライドをさらに3回洗浄し、装置からはずした。スライドを洗剤液で処理し、その後エタノール、アセトンおよびキシレンにより脱水した。カバースリップをスライドに添加し、そしてそれを明視野顕微鏡使用して40Xで観察し、そして写真撮影した。
【0091】
図5〜7は、3種の異なる異種移植片組織タイプにおけるHPV検出の結果を示している。図5A,5Bおよび5Cでは、スキーム14、15および16の各々にしたがうCaSki異種移植片組織におけるHPV検出に関する染色パターンがそれぞれ示される。図6A,6Bおよび6Cでは、スキーム14、15および16の各々にしたがうHeLa異種移植片組織におけるHPV検出に関する染色パターンがそれぞれ示される。図7A,7Bでは、スキーム14および15の各々にしたがうSiHa異種移植片組織における単コピーHPV検出(矢印で指示される)に関する染色パターンがそれぞれ示される。
【0092】
図5Aと5Bの比較は、スキーム15にしたがう検出によって与えられた染色強度が、スキーム15が2つ少ない増幅段階を含むにも拘わらず、スキーム14にしたがって与えられた強度よりも強いことを例証している。図5Cは、HPV検出が、例4にしたがって作成されたAb−APコンジュゲートによる直接検出(スキーム16)を使用して増幅なしに実施できることを例証している。また、図6Aと6Bの比較は、スキーム15にしたがう検出によって与えられた染色強度が、スキーム15が2つ少ない増幅段階を含むにも拘わらず、スキーム14にしたがって与えられた強度よりも強いことを例証している。図6Cは、HPV検出が、例4にしたがって作成されたAb−APコンジュゲートによる直接検出(スキーム16)を使用して増幅なしに実施できることを例証している。図7Aと7Bの比較は、HPV核酸配列の単コピーでさえ、スキーム15の検出方法により検出できることを示している。全般的に、結果は、開示されたFc特異的Ab−APにより与えられる優れた感度が、組織サンプルにおけるHPVを検出するために必要な段階の数を減少させることによって自動検出を可能にすることを例証している。スキーム14と15の間の段階数の減少は、総自動染色工程時間を15%(6.5時間から5.5時間まで)低下させることができる。工程時間のさらなる低下はスキーム16の使用によって実現できる。
【0093】
DNP標識プローブおよび抗体の特定の種類がこの実施例において記述されたが、当業者は、多数の他のハプテン(例えばフルオレセイン、ジゴキシゲニンおよびビオチン)が核酸配列を標識するために使用でき、そして各々異なるハプテン標識を有する、種々の標的に対する多数の核酸プローブの使用が、多重送信検出を可能にする(例えば、種々の異なる波長の光を発する異なる蛍光ナノ粒子に複合された異なる検出抗体により)ために使用できることを評価できる。さらにまた、当業者は、他のタイプの抗体および記述されたもの以外の種からの抗体、他の検出可能な標識、および検出可能なシグナルを生成するための他の試薬が、他の標的を検出するための類似アッセイにおいて使用できることを認識できる。
【0094】
例10−液体に基づく調製物におけるHPVの検出
液体に基づくprepHPVアッセイのためのスライドを、ThinPrepTM2000 Systemスライド作成システム(Cytyc Corporation,Marlborough,MA)を使用して作成した。膣擦過により得られた細胞をメタノールに基づく緩衝化保存溶液(ThinPrepTMPreservCyt Solution,Cytyc Corporation,Marlborough,MA)内に入れ、次いで、この機器によってガラススライド上に塗布した。
【0095】
次に示すものは、Ventana BenchMarkTM装置より適合された操作である:液体に基づくprepスライドを、12分間65℃に加熱し、その後75℃においてさらに4分間加熱し、そして75℃でReaction Buffer(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を用いて2回洗浄し、その後、LiquidCoverslip(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を適用した。次いでスライドをRinse buffer(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)の0.9mlにより洗浄し、その後、Cell Conditioner #2、細胞条件付け(conditioning)溶液(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を適用し、そしてスライドを90℃に加熱し、そして16分間インキュベートした。スライドをReaction Bufferを用いて洗浄し、37℃まで冷却し、そしてISH−Protease 3(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加した。4分間のインキュベーション後、スライドを3回洗浄し、その後、iViewTM+HybReady(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を適用し、これを4分間インキュベートした。HPV HR Probe(200μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加し、その後、37℃で4分間、95℃で12分間および52℃で124分間インキュベートした。次いで、スライドを2回洗浄し、72℃に加温した。この最後の段階をさらに2回反復した後、スライドを37℃まで冷却し、そしてiViewTM+抗DNP(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加した。
【0096】
標準SA−AP検出(前記スキーム14にしたがう)では、1次抗体を20分間インキュベートし、次いでスライドを2回洗浄し、その後、iViewTM+Amp2次抗体(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ,100μl)を添加した。抗体のインキュベーションを8分間実施し、その後洗浄した。iViewTM+Biotin−IgG抗体コンジュゲート(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ,100μl)を添加し、続いて12分間インキュベートし、そして洗浄した。最後に、iViewTM+SA−AP(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ,100μl)を添加し、そして8分間のインキュベーション後、スライドを3回Reaction Bufferで洗浄した。2次抗体としてAb−APコンジュゲートを使用する検出(前記スキーム15にしたがう)では、1次抗体を20分間インキュベートし、次いでスライドを2回洗浄し、その後、AP−IgGコンジュゲート(100μl)を添加した。コンジュゲートのインキュベーションを8分間実施し、その後Reaction Bufferで3回洗浄した。Ab−APコンジュゲートを用いる標識プローブの直接検出では、コンジュゲートを20分間インキュベートし、その後スライドをReaction Bufferで3回洗浄した。
【0097】
すべて3回の場合において、前記段階の後、iViewTM+Enhance(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を適用し、その後、4分間インキュベートし、そしてiViewTM+NBT(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)およびiViewTM+BCIP(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)の両方を適用した。次いで、スライドを24分間インキュベートし、3回洗浄し、そしてCounterstain NFR(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加した。4分間対比染色剤とともにインキュベートした後、スライドをさらに3回洗浄し、装置からはずした。スライドを洗剤液で処理し、その後エタノール、アセトンおよびキシレンにより脱水し、続いて、カバースリップをスライドに適用し、この後、スライドを顕微鏡をとおして観察した。
【0098】
図8Aと8Bの比較は、例4の操作にしたがってMBHを使用して作成されたAb−APコンジュゲートを用いる、スキーム15にしたがう検出(参照、例9)が、スキーム14にしたがうSA−APコンジュゲートを用いる検出(参照、例9)によって与えられるよりも強い染色を提供することを示している。図8Bと8Cの比較は、スキーム16にしたがう抗DNP Ab−APコンジュゲートを用いる直接検出(参照、例9)が、スキーム14にしたがうSA−APコンジュゲートによって与えられるシグナルに匹敵するシグナルを提供することを例証している。これらの結果は、例4にしたがうFc特異的Ab−APにより与えられる検出感度が、十分なシグナルを与えるために必要な段階の数における低下を可能にすることを例証している。
【0099】
例11−筋肉組織におけるActinの検出
この実施例では、MBHリンカーを用いて例4における記述のように作成されたAb−APコンジュゲートを使用するタンパク質標的(アクチン)の免疫組織化学的検出が、SA−APコンジュゲートの性能と比較された。
【0100】
次に示すものは、Ventana BenchMarkTM装置より適合された操作である:スライド上のパラフィン被覆組織を、75℃に4分間加熱し、そしてEZPrepTM容積アジャスト(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)により75℃で2回処理し、その後LiquidCoverslip(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)をEZPrepTM容積アジャストにより適用した。76℃でさらに4分後、スライドを洗浄し、そしてDepar容積アジャスト(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)をLiquidCoverslipに沿って添加して、組織を脱パラフィンした。次いで、スライドを2分間42℃に冷却し、その後最終温度37℃に到達させた。次いで、1次抗体(100μl,抗筋肉アクチン、Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加し、そしてスライドを16分間37℃でインキュベートした。次いで、スライドを2回洗浄し、そしてアルカリホスファターゼ複合ヤギ抗マウス材料(100μl)を添加し、そして16分間37℃でインキュベートした。スライドを1回洗浄し、その後、Enhanced V−Red Enhancer(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)およびEnhance Naphthol(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を同時に添加し、そして再び、4分間37℃でインキュベートした。この後、Enhance Fast Red A(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)を添加し、そして8分間インキュベートし、そしてEnhance Fast Red B(100μl,Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)して最後に8分間インキュベートした。着色の発色後、スライドを洗剤液で処理し、その後エタノール、アセトンおよびキシレンにより脱水し、そしてカバースリップをスライドに適用し、この後、スライドを顕微鏡をとおして観察した。
【0101】
結果は図9において提示される。具体的には、図9Aは、Ab−APコンジュゲートおよび単一増幅段階を用いる検出が、SA−APコンジュゲートおよび2つの増幅段階を用いる検出(図9B)よりも優れていることを示している。これらの結果は、再び、開示によるFc特異的抗体によって与えられる優れた検出感度を例証している。
【0102】
例12−抗体リンカーの長さおよび型の変化
この実施例では、コンジュゲート組成物および染色特性に及ぼすリンカーの長さおよび型の影響が決定された。例4の方法にしたがったが、種々のヒドラジドチオール・リンカーを使用して数種のコンジュゲートを作成した、具体的には、チオ−PEG−ヒドラジドリンカー、メルカプト酪酸ヒドラジド(MBH)リンカーおよびメルカプト酪酸カルボヒドラジド(MBCH)リンカーを使用してコンジュゲートを作成した。これらのコンジュゲートは、互いに比較され、そして免疫グロブリンジスルフィドの還元によるチオールの生成をとおして作成されたコンジュゲート、具体的には、DTT還元によるチオールの生成と、それに続くPEGに基づくマレイミド−NHS二官能性リンカーを用いる複合を伴う、同時係属米国暫定特許出願第60/675759号に記述された方法によって作成されたAb−APコンジュゲートと比較された。また、比較のためには、市販されるアセトアミドメルカプト酪酸ヒドラジド(AMBH,Invitrogen,Eugene,OR)リンカーを例4の方法において使用して、Ab−APコンジュゲートを生成した。さらに、マレイミド−ヒドラジド(EMCH;N[ −マレイミド酪酸]ヒドラジド、Pierce Biotechnology,Rockford,IL)により製造者の指示を使用して作成したAb−APコンジュゲートを作成し、比較のための染色プロトコールにおいて使用した。さらにまた、シスタミンを用いる米国特許第5,191,066号に記述されたFc特異的複合方法を使用して、比較のためのFc特異的Ab−APコンジュゲートを提供した。
【0103】
Eiiman’sアッセイの結果は、3〜5チオール/Abが、MBHおよびPEGに基づくヒドラジドチオール・リンカーによる付加を介して免疫グロブリンに付加され、AMBHおよびMBCHリンカーでは5〜7チオール/Abが、そしてDTT還元法では8〜12チオール/Abが付加されたことを示した。免疫グロブリンに導入または生成されたチオールのマレイミド誘導化APへのカップリングの後、サイズ排除クロマトグラムが得られた。
【0104】
サイズ排除クロマトグラムは、Superdex10/300 200GLカラムおよび移動相として0.1MTris、1mMMgCl、0.1mMZnCl、pH=7.5を使用するAKTA Purufier LC(GE Biosciences,Uppsala,Sweden)を使用して得られた。サイズ排除クロマトグラムから、コンジュゲートの最良収量がAMBHを用いて得られることが決定された。しかしながら、2〜8℃で48時間保存した場合、それは溶液から沈殿し始めた。他のリンカーはすべて、類似のサイズ排除プロフィルを有するコンジュゲートを生成した。
【0105】
図10は、2次抗体としてコンジュゲートを使用する扁桃組織におけるKappaの例6に概説されたような染色を比較している。図10Aは、EMCHにより作成されたAb−APコンジュゲートについて見られた染色パターンを示す。図10Bは、米国特許第5,191,066号のFc特異的シスタミン法について見られた染色パターンを示す。図10Cは、dPEGに基づく二官能性リンカーを利用した、2006年4月27日提出の米国特許出願第11/413,418号にしたがうDTT還元法によって作成されたAb−APコンジュゲートについて見られた染色パターンを示す。図10Dは、Fc特異的複合の開示された方法を使用して市販のAMBHリンカーにより作成されたAb−APコンジュゲートについて見られた染色パターンを示す。図10Eは、例1の開示されたMBHリンカーを用いて開示されたFc特異的複合法にしたがって作成されたAb−APコンジュゲートについて見られた染色パターンを示す。図10Fは、例3の開示されたdPEGヒドラジドチオール・リンカーを用いて開示されたFc特異的複合法にしたがって作成されたAb−APコンジュゲートについて見られた染色パターンを示す。図10Gは、例2の開示されたMBCHヒドラジドチオール・リンカーを用いて開示されたFc特異的複合法にしたがって作成されたAb−APコンジュゲートについて見られた染色パターンを示す。染色パターンの比較は、コンジュゲートによって与えられた染色強度について次に示す傾向を表している:
EMCH<Cystamine<AMBH<MBCH<PEG4=DTT<MBH
画像は、開示された方法および種々の開示されたリンカーおよび市販のヒドラジドチオール・リンカーを用いて、酵素のFc特異的複合によって得ることができる優れた感度を具体的に説明している。また開示された方法は、シスタミンFc特異的方法およびEMCHとのカップリングより優れているコンジュゲートを生成する。DTT媒介の複合方法のみが、類似の特異性および感度を与えるコンジュゲートを提供する。
【0106】
例13−MBHリンカー過剰量の変化
この実施例では、過剰量のヒドラジドチオール・リンカーに対するコンジュゲート組成物および染色特性の依存性が決定された。AP−IgGコンジュゲートのMBHリンカーによる合成を、例4の操作にしたがって実施したが、MBHリンカーのモル過剰量を、5000倍過剰量から50倍過剰量まで変化させた。Eiiman’sアッセイからの結果は、次に示す数のチオール/Abを示した:5000x − 9〜15;1000x − 7〜10;500x − 3〜5;100x − 2〜4;50x − 1〜3。マレイミド誘導化Abとの反応後のコンジュゲート(5000x,1000x,500x,100x,および50x)の分析を、サイズ排除クロマトグラフィーによって実施し、そして、より多い過剰量のリンカーを使用して合成したコンジュゲートが、より高い総収量を有することを示した。しかしながら、これらのコンジュゲートの各々についての組織染色(抗マウス−筋肉、筋肉アクチン;抗ウサギ−皮膚、S100)は、500xが、最低のバックグラウンド量をもつ最高の強い染色を有することを示した。
【0107】
例14−アルカリホスファターゼリンカーの長さ/型の変化
この実施例では、アルカリホスファターゼにチオール反応性基を付加するために使用されるリンカーの長さと型に対するコンジュゲート組成物および染色特性の依存性が決定された。MBHリンカーによるAP−IgGコンジュゲートの合成は、例4の方法にしたがって実施されたが、次のリンカーが、チオール化抗体との反応のためにアルカリホスファターゼを活性化するために使用された:LC−SMCC(Pierce,Rockford,IL),MAL−dPEG−NHSエステル(Quanta Biodesign,Powell,OH)、MAL−dPEG−NHSエステル(Quanta Biodesign,Powell,OH)およびMAL−dPEG12−NHSエステル(Quanta Biodesign,Powell,OH)。これらのリンカーの各々を、バッファー系(0.1Mリン酸ナトリウム、0.1MNaCl、1mMMgCl、0.1mMZnCl、pH=7.5)中で1時間、100倍過剰量におけるAPと反応させた。LC−SMCCをジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、そしてAPに添加する必要があったが、バッファ中DMFの10%総容量を超えてはならない。Ellman’sアッセイは、PEG12およびLC−SMCCリンカーでは20/AP、PEGリンカーでは27/AP、そしてPEGリンカーでは30/APのマレイミド組み入れを示した。Fcチオール化抗体(MBHにより作成された)へのカップリング後、サイズ排除クロマトグラムを精製により得た。PEG12リンカーが最高のコンジュゲート収量を提供し、続いてPEG、LC−SMCCおよびPEGリンカーであった。組織染色(抗マウス−筋肉、筋肉アクチン;抗ウサギ−皮膚、S100)は、最高の強い染色を与えるPEG12コンジュゲートによるコンジュゲート収量を反映させた。
【0108】
例15−NHS−PEG12−MALリンカー過剰量の変化
この実施例では、アルカリホスファターゼへのチオール反応性基の付加のために使用される過剰量のNHS−PEG12−MALリンカーに対するコンジュゲート組成物および染色特性の依存性が決定された。例4の方法にしたがうAP−IgGコンジュゲートの合成を実施したが、この場合、MAL−dPEG12−NHSエステル・リンカーのモル過剰量を、500倍過剰量から25倍過剰量まで変化させた。
【0109】
Eiiman’sアッセイの結果は、500x − 34マレイミド;250x − 29マレイミド;100x − 18〜20マレイミド;50x − 17マレイミド;25x − 15マレイミドのマレイミド組み入れを示した。サイズ排除クロマトグラフィーを使用する、Fcチオール化Abとの反応後のコンジュゲート(500x,250x,100x,50xおよび25x)の分析は、より多い過剰量のリンカーを使用して合成したコンジュゲートが、より高い収量とより高いマレイミド組み入れパーセンテージを有することを示した。コンジュゲートの各々についての組織染色(抗マウス−筋肉、筋肉アクチン;抗ウサギ−皮膚、S100)は、100xマレイミドの使用が、もっとも鮮明な最高の強い染色を与えることを示した。
【0110】
例16−AP/Abモル比の変化
この実施例では、最終反応におけるマレイミド誘導化AP(NHS−PEG12−MALリンカー)に対するチオール化抗体(MBH−リンカーによって作成された)の比率におけるコンジュゲート組成物および染色特性の依存性が決定された。次の比率(抗体/AP)を使用した:2:1、1:1、1:2および1:3。サイズ排除クロマトグラフィーのプロフィルは、最高収量がモル比2AP:1Abである場合に得られることを示した。しかしながら、コンジュゲートの組織染色(抗マウス−筋肉、筋肉アクチン;抗ウサギ−皮膚、S100)は、最良のシグナル対ノイズ比が1:1コンジュゲートにより見られることを例証した。
【0111】
例17−架橋されたAPの合成
アルカリホスファターゼは二量体タンパク質であり、そしてその安定性は、二量体の解離を防ぐのを助けるよう酵素を架橋することによって増大することができる。アルカリホスファターゼは次の操作を用いて架橋された。アルカリホスファターゼ(Biozyme,SanDiego,CA;17.5mg,0.125μmol)は、それが受領されたバッファーと異なるバッファー(0.1Mリン酸ナトリウム、0.1M塩化ナトリウム、1.0mM塩化マグネシウム、0.1mM塩化亜鉛、pH=7.5)に交換し、そしてシアノホウ水素化ナトリウム(1.6mg,25μmol)の存在下で、再構成され予め酸化されたアルデヒド活性化デキストラン(平均分子量40,000;Pierce,Rockford,IL;5mg,0.125μmol)に添加した。次いで、反応混合液を室温で1時間撹拌した。過剰量のアルデヒドをエタノールアミン(151μl,2.5mmol)によって不活性化し、続いてさらなるシアノホウ水素化ナトリウム(157.1mg,2.5mmol)を添加した。反応混合液をさらに1時間撹拌した。架橋されたAPを、Superdex 200GL 10/300カラム(GE Biosciences,Uppsala,Sweden)を備えたAKTA Purufier LC(GE Biosciences,Uppsala,Sweden)を使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって単離した。流速は1ml/minであり、そして水性移動相は0.1Mリン酸ナトリウム、0.1M塩化ナトリウム、1.0mM塩化マグネシウム、0.1mM塩化亜鉛、pH=7.5であった。反応後に残っているアミン数を、フルオルアルデヒド・アッセイ(Protein Assay Technical Handbook,Pierce Biotechnology,Rockford,IL)を使用して定量し、そして平均8〜12アミンが架橋後に残っていた。架橋APをMAL−dPEG12−NHSエステル(残留アミンと反応した)に結合させ、そして例4に記述されたようにFcチオール化抗体に複合して、架橋AP酵素を含むコンジュゲートを生成した。安定性研究では、架橋が、アビジン含有希釈液(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ;P/N95130)においてコンジュゲートの安定性を改善したことを示した。具体的には、45℃で、架橋APを有するコンジュゲートについての3日目における染色強度の総損失は50%であったが、これに対して、同じ希釈液中、その温度では、無架橋のAPにより作成されたコンジュゲートは1日目にその染色強度の95%を失った。
【0112】
安定性を増大するためにAPを架橋する代替法は、Bieniarz et al.,Bioconj.Chem.,9:390−398,1998、Bieniarz et al.,Bioconj.Chem.,9:399−402,1998、および米国特許第5,789,219号において与えられる。また、これらの方法は、開示されたコンジュゲートにおける使用のための架橋アルカリホスファターゼ酵素に対して使用することができる。
【0113】
例18−アルカリホスファターゼコンジュゲートの分析用SDS PAGE
この実施例では、例4の複合方法のFc特異性が、変性条件下でポリアクリルアミドゲル電気泳動によって例証される。コンジュゲートの6種の異なる調製物、抗マウスIgG抗体を用いて作成された3種および抗ウサギIgG抗体を用いて作成された3種が分析された。簡単に言えば、各コンジュゲートの100〜200ng/μl溶液の5〜20μlを、4X LDSゲル装填バッファー(Invitrogen,Carlsbad,CA)と混合し、そして2−メルカプトエタノールを1mMの最終濃度まで添加した。サンプル混合液を48〜50℃において5分間適度に加熱した。この温度は、酵素と抗体間の共有結合の解離を最小化するように選ばれたが、2−メルカプトエタノールによるコンジュゲートの抗体部分の軽鎖と重鎖を解離することはなお可能であった。次いで、各サンプルを冷却し、そしてポリアクリルアミドゲル(Invitrogen,Carlsbad,CA製、1.0mmの厚さの、予め形成されたNuPAGETM4〜20%ポリアクリルアミドBis Trisゲル、またはNuPAGETM3〜8%ポリアクリルアミドTrisアセテートゲルのいずれか)の異なるウェルに添加した。使用した分子量標準品は、予備染色されたMulimarkTMおよびMark12 wide rangeTM標準品であり、両方ともInvitrogen(Carlsbad,CA)から購入した。電気泳動を、Novex XCell IIカセットシステム(Invitrogen,Carsbad,CA)を使用して室温で60〜90分間70mAにおいて実施した。展開バッファーは、それぞれ3〜8%および4〜20%ゲルについてMES−SDSまたはTrisアセテート−SDSバッファーであった。ゲルをカセットから取り出し、そしてSDSおよびバッファーを除去するために脱イオン水中で5分間、2回洗浄した。次いで、SDS−PAGEゲルをエタノール/水/酢酸[40:50:10(v:v:v)]中で1時間室温で固定し、そしてメタノール/水/酢酸[50:40:10(v:v:v),Sigma−Aldrich,St.Louis,MO]中に溶解したCoomassie Blue R−250により染色した。ゲルを最小2時間〜最大一夜、室温で弱く振盪して染色した。脱染色を染色と同じ様式で実施した。脱染色溶液は染色溶液マイナス染料と同一であった。ゲルをInvitrogenゲル乾燥キット(Invitrogen,Carsbad,CA)を使用して乾燥した。ゲルの分析により、コンジュゲートの各々について抗体の軽鎖に対応する分子量におけるバンドの存在が示された。また、各コンジュゲートでは、重鎖およびアルカリホスファターゼの分子量に対応するバンドは実質的に不在であった。その代わりに、より高い分子量における一連のバンドは、アルカリホスファターゼが各コンジュゲートのIgGの重鎖に選択的に結合していたことを示した。免疫グロブリンの重鎖はFc部を含むので、この結果は複合のFc部位特異的性質を示した。
【0114】
例19−Fc特異的抗体−HRPコンジュゲートの合成
この実施例では、PEGに基づくヒドラジドチオール・リンカーを含むFc特異的抗体コンジュゲートの作成が記述される。チオール反応性マレイミド基を次のようにセイヨウワサビ・ペルオキシダーゼに付加した。4mlアンバーバイアルに、MAL−dPEGTMNHSエステル(Quanta Biodesign,Powell,OH)の7.8mg(15.2μmol,100eq.)と、続いてセイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP;Pierce Biotechnology,Rockford,IL;0.25ml,0.1MNaPO,0.15MNaCl,pH=7.5中25mg/ml)とを添加した。バイアルを周囲温度で1時間暗所で撹拌し、その後、バッファー水溶液(0.1MNaPO,0.15MNaCl,pH=7.5)を用いてSuperdex 200カラム(GE Biosciences,Uppsala,Sweden)を備えたAkta Purufierを使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。HRP含有フラクションを貯えてHRP−PEG−マレイミドの溶液を得た。HRP濃度を、溶液のA280(ε280=0.652mlcm−1mg−1)から決定し、そしてマレイミド数を改変Ellman’sアッセイにより定量して、酵素当たり6〜8マレイミドであった。
【0115】
精製マレイミド−セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼを精製チオール化抗体(例4にしたがって、MBHリンカーを用いて作成した)とモル比3:1で合わせ、そして18時間撹拌した。サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200;0.1MNaPO,0.15MNaCl,pH=7.5)により精製コンジュゲートを得て、これをB5 Blockerを含有するAvidin Diluent(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)中にA280=0.0375に希釈し、そして組織において分析した。米国暫定特許出願第60/675,759号に記述されるように免疫グロブリンのDTT還元により作成されたHRPコンジュゲートに対する、この実施例のHRPコンジュゲートを使用する前立腺組織における前立腺特異的抗原の染色の比較は、本実施例のHRPコンジュゲートが、DTTで作成されたHRPコンジュゲートよりもやや弱いバックグラウンドを表すが、またやや弱い染色強度も表すことを示した。
【0116】
例20−アミノ酸由来の多官能性ヒドラジドチオール・リンカー
若干の実施態様では、開示された方法において使用できる多官能性ヒドラジドチオール・リンカーは、前記スキーム4a,4b,4cおよび4dにしたがってアミノ酸およびアミノ酸類似体から作成される。この実施例では、特定のリンカーへの合成経路が次に示すスキームにおいて概説される。特定のスキーム17a,17b,17cおよび17dの各々では、アミノ酸またはアミノ酸類似体(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)を、最初に、トリエチルアミン(TEA)の存在下でN−スクシンイミジルS−アセチルチオアセテート(SATA;Pierce Biotechnology,Rockford,IL)と反応させる。スキーム17aでは、この最初の反応の生成物をヒドラジンと反応させて、1個のヒドラジド基と2個のチオール基を有する多官能性ヒドラジドチオール・リンカーを得る。スキーム17bでは、DCCとのカルボジイミド媒介カップリングを使用して、第1の反応の生成物のカルボン酸官能基をもつNHSエステルを形成させ、続いてヒドラジンと反応させて、1個のヒドラジド基と2個のチオール基を有するその他の多官能性ヒドラジドチオール・リンカーを得る。17bにおけると同様に、17cでは、第1の反応の生成物を使用してNHSエステルを形成させ、続いてヒドラジンと反応させて、2個のヒドラジド基と1個のチオール基を有する多官能性ヒドラジドチオール・リンカーを得る。スキーム17dでは、ヒドラジンとの反応によって、1個のヒドラジド基、1個のチオール基および1個のヒドロキシル基を有するその他の多官能性ヒドラジドチオール・リンカーを得る。
【0117】
【化22】

【0118】
【化23】

【0119】
【化24】

【0120】
【化25】

【0121】
スキーム17a,17b,17cおよび17dの生成物は、それぞれ、2−メルカプトアセトアミド−メルカプト酪酸ヒドラジド(MAMBH)、N,N’−(6−ヒドラジニルー6−オキソヘキサンー1,5−ジイル)ビス(2−メルカプトアセトアミド)(BTAL)、N−(1,5−ジヒドラジニルー1,5−ジオキソペンタンー2−イル)−2−メルカプトアセトアミド(TAGD)およびN−(1−ヒドラジニルー4−ヒドロキシ−1−オキソブタンー2−イル)−2−メルカプトアセトアミドである。
【0122】
特定の実施態様では、MAMBHは次のように合成される。最初に、S−アセチルチオアセトアミドホモシステインを、アセトニトリル(10ml)中トリエチルアミン(0.15ml,1.1mmol)溶液を作成し、これに塩酸ホモシステイン(150mg,1.0mmol)を添加することによって作成する。得られるスラリーを5分間撹拌し、その後、S−アセチルチオアセテート(250mg,1.1mmol)を添加した。反応液を周囲温度で16時間撹拌し、次いで、真空濃縮した。カラムクロマトグラフィー(SiO,9:1CHCl/EtO)により無色粉末としての生成物を単離した。収量:174mg(75%):HNMR(250MHz,CDCl)δ 6.66(bs,1H),4.51−4.41(p,J=6.7Hz,1H),3.63−3.50(m,2H),2.88−2.80(m,1H),2.36(s,3H),2.01−1.88(m,1H);13CNMR(62.9MHz,CDCl)δ 204.37,195.38,168.59,59.51,32.74,31.43,30.18,27.43;ESI−HRMS m/z 256.00693(M+Na,C11NNaO calcd 256.00780).次いで、2−メルカプトアセトアミド−メルカプト酪酸ヒドラジド(MAMBH)を、S−アセチルチオアセトアミドホモシステイン(300mg,1.3mmol)を、ヒドラジン1水和物(10ml)に添加することによって作成する。得られるスラリーを周囲温度で16時間撹拌し、この時点で溶液は均質になる。ヒドラジンを真空除去し、そして粗生成物を逆相フラッシュクロマトグラフィー(15%C SiO,160:39:1HO/MeOH/AcOH)により精製して、所望の化合物を無色オイルとして得た。収量:207mg(72%):HNMR(250MHz,CDOD)δ 4.52−4.46(m,1H),3.23−3.21(m,2H),2.59−2.52(m,2H),2.10−2.01(m,2H);13CNMR(62.9MHz,CDOD)δ 172.82,172.43,52.49,37.72,21.42,20.49;ESI−HRMS m/z 246.03251(M+Na,C13NaO calcd 246.03469)。
【0123】
スキーム17a,17bおよび17cにおけるSATAを6−アセチルチオヘキサン酸NHSエステルに置換することにより、以下に示される対応する化合物TMBH、BTHLおよびTHGDを得る。6−アセチルチオヘキサン酸NHSエステルは、6−アセチルチオヘキサン酸とN−ヒドロキシスクシンイミドとのカルボジイミド媒介カップリングによって作成することができる。
【0124】
【化26】

【0125】
6−アセチルチオヘキサン酸NHSエステルは次の構造:
【0126】
【化27】

【0127】
を有し、そして6−アセチルチオヘキサン酸とN−ヒドロキシスクシンイミド(共にSigma−Aldrich,St.Louis,MOから得られる)のカルボジイミド媒介カップリングによって作成される。
【0128】
また当業者は、PEGに基づくS−アセチルチオカルボン酸誘導体を、前記スキームにおけるSATAの代わりに用いて、開示された複合方法において使用される多官能性PEGに基づくリンカーを提供できることを認識することができる。例えば、PEGに基づく多官能性ヒドラジドチオール・リンカーは、前記スキーム17a−dにおけるSATAの代わりに次の式:
【0129】
【化28】

【0130】
[式中、m=2〜50]の分子を用いることによって作成できる。この式の化合物は、Quanta Biodesign(Powell,OH)から市販されているか、または対応するカルボン酸から作成することができる。
【0131】
例21−多官能性のPEGに基づくヒドラジドチオール・リンカー
若干の実施態様では、開示された方法において使用できる多官能性のPEGに基づくヒドラジドチオール・リンカーが、前記スキーム5a,5bおよび5cにしたがって作成される。この実施例では、特定のリンカーへの合成経路が次のスキーム18a,18bおよび18cにおいて概説される。また、反応についての特定のプロトコールが提示される。別に記述されない限り、試薬および溶媒は慣用のものであり、例えば、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から得ることができる。
【0132】
【化29】

【0133】
スキーム18aにしたがって、10mlの水中Tris5.0gの溶液に、炭酸ナトリウム(1.3eq.)、次いでフェノキシアセチルクロリド(1.2eq.)を添加し、そして反応液を窒素下氷上で16時間撹拌させる。次に、沈殿したアミノ保護生成物を水で3回洗浄し、そして真空乾燥する。この最初の段階から得られる純粋化合物を、アセトニトリル/H2O、5−100%アセトニトリルにより30分かけて溶出したC18シリカのカラムにおけるクロマトグラフィーによって得る。次いで、メシレート基を、DMF中トリエチルアミン(4.0eq.)およびメタンスルホニルクロリド(5.0eq.)による処理によって導入する。DMFを真空除去し、残渣を乾燥DCMに採取し、塩を濾過によって除去する。真空下でDCMを除去して粗メシレート2を得て、これを、さらなる精製なしに使用する。乾燥DMF中メシレート(0.3eq.)の溶液に、HO−dPEGTM−SATA(1.0eq;Quanta Biodesign,Powell,OH)およびKCO(1.5eq)を添加し、そして反応液を窒素下で16時間撹拌させる。DMFを真空除去し、残渣を乾燥DCMに採取し、塩を濾過によって除去する。真空下でDCMを除去し、続いて、シリカゲルクロマトグラフィーによってペグ化(pegylated)中間体を得る。次いで、Pac保護基をEtAc/MeOHの混合液中Pd/Cによる処理によって除去する。次いで、得られる中間体を、最初にカルボニルジイミジゾール(10eq)、続いてヒドラジン(100eq)により処理してセミカルバジドを完成する(elaborate)。
【0134】
【化30】

【0135】
スキーム18bにしたがって、DCM中アルコール(HO−dPEG4−SATA,Quanta Biodesign,Powell,OH,1.3eq)溶液に、ジアゾ−ジイソプロピルジカルボキシレート1.5eq、続いてトリブチルホスフィン1.8eqを添加し、そして反応液を乾燥窒素下で30分間撹拌する。得られる懸濁液に、次にDCM中フェノール1.0eqを添加し、そして反応液を乾燥窒素下で16時間撹拌し続ける。シリカゲルクロマトグラフィー後に得られるフェノールエーテルを、次いで純ヒドラジンに採取し、そして溶液をマイクロ波処理して多官能性のPEGに基づくヒドラジドチオール・リンカーを得る。
【0136】
【化31】

【0137】
スキーム18cにしたがって、10mlの水中Tris5.0gの溶液に、炭酸カリウム(1.3eq.)、次いでフェノキシアセチルクロリド(1.2eq.)を添加し、そして反応液を窒素下氷上で16時間撹拌放置する。次に、沈殿したアミノ保護生成物を水で3回洗浄し、そして真空乾燥する。次いで、DMF中水素化ナトリウム(3.0eq)および臭化プロパルギル(10eq)による処理によって、アルキン基を導入して、シリカゲルクロマトグラフィー後にアルキン中間体1を得る。DCM中HO−PEG−SATA(Quanta Biodesign,Powell,OH)の溶液に、メタンスルホニルクロリド(1.2eq)、続いてトリエチルアミン(1.4eq)を添加し、そして反応液を窒素下氷上で16時間撹拌放置する。次いで、トリエチルアミン塩を濾過によって除去し、メシレート生成物を真空乾燥する。DCM中メシル化アルコール溶液に、アジ化ナトリウム(1.2eq)を添加し、そして反応液を窒素下で16時間撹拌し、シリカゲルクロマトグラフィー後にアジ化中間体2を得る。硫酸銅(0.2eq)およびアスコルビン酸ナトリウム(0.5eq)を含有するt−ブタノール/水の1:1溶液に、中間体アルキン1および中間体アジ化物2の各々1当量を添加する。次いで、反応液を窒素下で16時間撹拌して、シリカゲルクロマトグラフィー後に保護された窒素をもつ中間体を得る。次いで、窒素保護基を、酢酸エチルとメタノールの1:1混合液中10%Pd/Cによる処理によって除去し、次いで、遊離アミンを酸−塩基処理によって得る。DCM中遊離アミンの溶液に、カルボニルジイミジゾール(10eq)を添加し、そして反応液を窒素下で4時間撹拌する。続いて反応液を真空濃縮し、残渣を純ヒドラジン中に採取する。次いで、溶液を100℃1時間マイクロ波処理して多官能性のPEGに基づくヒドラジドチオール・リンカーを得る。
【0138】
PEGに基づく分子がこれらのスキームにおいて他のSATAアルコールにより置換されて、さらなる多官能性のPEGに基づくヒドラジドチオール・リンカーを得ることができ、そして種々の長さのPEG SATAアルコールが同様に置換されてもよいことは、当業者にとっては容易に理解できる。
【0139】
例22−ポリアクリルアミドヒドラジドチオール・リンカーの合成
この実施例では、重合多価ヒドラジドチオール・リンカーが提供され、このリンカーは下記スキーム19にしたがって作成することができる。
【0140】
【化32】

【0141】
スキーム19では、xは、例えば100〜500であってもよく、そしてyは、例えば10〜50であってもよい。Lは、ヒドラジド基の一部分をチオール基に変換するために使用されるチオール化試薬を表す。ポリアクリルアミドヒドラジド(PAH)は、公開米国特許出願第20050158770号において提供される方法によって合成することができる。簡単に言えば、凝縮器を備えた100mlの丸底フラスコ中で、20mlポリアクリルアミド(1mmol,水中50%,Sigma−Aldrich,Milwaukee,Wis.)を、10ml蒸留(DI)水および20mlヒドラジン1水和物(420mmol,Sigma−Aldrich,Milwaukee,Wis.)と混合する。反応液を60分間マイクロ波処理する。室温に冷却後、反応液を等量のメタノールを用いて沈殿させ、遠心し、そしてデカントする。残渣を50mlのDI水に採取し、そして沈殿を全3回反復する。最終残渣をDI水に溶解し、そして凍結乾燥して微細、白色の吸湿性粉末を得る。適当な溶媒中で、得られるPAHをチオール化剤、例えばチオール−dPEG−NHSエステル(Quanta Biodesign,Powell,OH)またはTraut’s試薬と反応させて、利用できるヒドラジド(z=5〜40)の一部分(例えば、ほぼ50〜75%)をチオール化し、そして開示された方法において使用できる重合多官能性ヒドラジドチオール・リンカーを提供する。さらなるチオール化試薬は、例えば、Hermanson,”Bioconjugate Techniques,”Academic Press,San Diego,1996,ISBN 0−12−342336−8において見出だすことができ、これは引用によって本明細書に組み入れられている。
【0142】
2つの方法、すなわち、ポリアクリルアミドヒドラジドチオール・リンカーを最初に合成し、そして開示された複合方法を使用するか、あるいは最初にPAHを1つの分子と反応させ、PAHをチオール化し、次に、ここでチオール化された最初の分子を第2の分子と反応させるか、いずれか1つにおいてポリアクリルアミドヒドラジドチオール・リンカーを使用/作成することが可能である。
【0143】
本発明の原理は、いくつかの図で示された実施態様に関して記述されたけれども、その実施態様の細部がそのような原理から逸脱することなく改変されてもよいことは当業者には明らかである。例えば、詳細な説明は抗体−酵素コンジュゲートに焦点を絞ったけれども、リンカーおよび方法は、抗体と、他の検出可能な標識、例えばナノ粒子(例えば、金属および半導体ナノ粒子、例えばそれぞれ金ナノ粒子および量子ドット(dot))、蛍光分子、蛍光発生(fluorogenic)分子、着色分子、発色(colorogenic)分子および常磁性構築物(例えば常磁性イオンのキレート)とのコンジュゲートを含む、すべての種類のコンジュゲートを作成するために使用することができる。管理(directed)療法のための抗体のコンジュゲート(例えば、抗体と薬物分子、毒素および放射性構築物、例えば放射性金属イオンのキレートとのコンジュゲート)もまた意図される。提供される特定の実施例はヒドラジドとカルボヒドラジド基を有するヒドラジドチオール・リンカーの使用を示すけれども、いかなる「ヒドラジド基」も、開示された方法および開示されたコンジュゲートの両方において示されたヒドラジドまたはカルボヒドラジド基の代わりに用いられてもよい。さらにまた、1個以上の単一ヒドラジドチオール・リンカーがコンジュゲートを形成するために使用されてもよいが、また、コンジュゲートを形成するために複数の異なるヒドラジドチオール・リンカーを使用することも可能であることを理解すべきである。開示されたコンジュゲートは、検出可能な標識に結合された特定の結合分子が使用できるいかなる種類のアッセイにおいても、例えば、具体的に説明された免疫組織化学的アッセイに加えていかなる種類のイムノアッセイにおいても、またはいかなる種類のインサイチュー・ハイブリダイゼーションアッセイにおいても使用することができる。検出プロトコールは手動的にまたは自動化方式で実施することができる。さらにまた、開示されたリンカーは、基質に分子を結合させるために表面を修飾するために使用されてもよく、そしてそのような表面修飾反応は開示された方法を使用して実施することができる。本発明は、次に示す請求項の範囲および精神の中にはいるようなすべてのその修飾物、改変物および等価物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】開示されたFc特異的抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いる扁桃組織におけるKappaの検出のための染色パターンを示す一連の画像である。
【図2】開示されたFc特異的抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いる扁桃組織におけるLambdaの検出のための染色パターンを示す一連の画像である。
【図3】開示されたFc特異的抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いる肺組織におけるCMVの検出のための染色パターンを示す一連の画像である。
【図4】開示されたFc特異的抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いる脾臓組織におけるEBERの検出のための染色パターンを示す一連の画像である。
【図5】開示されたFc特異的抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いるCaSki異種移植組織におけるHPVの検出のための染色パターンを示す一連の画像である。
【図6】開示されたFc特異的抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いるHeLa異種移植組織におけるHPVの検出のための染色パターンを示す一連の画像である。
【図7】開示されたFc特異的抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いるSiHa異種移植組織におけるHPVの検出のための染色パターンを示す一連の画像である。
【図8】開示されたFc特異的抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いる細胞学的サンプルにおけるHPVの検出のための染色パターンを示す一連の画像である。
【図9】開示されたFc特異的抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびストレプトアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲートを用いる筋肉組織におけるアクチンの検出のための染色パターンを示す一連の画像である。
【図10】開示された抗体−酵素コンジュゲートの感度の相互の比較、および開示された抗体−酵素コンジュゲートの感度と他の方法によって作成された抗体−体(body)酵素コンジュゲートの感度との比較を示す一連の画像である。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】

【図3A】

【図3B】

【図3C】

【図3D】

【図4A】

【図4B】

【図4C】

【図4D】

【図5A】

【図5B】

【図5C】

【図6A】

【図6B】

【図6C】

【図7A】

【図7B】

【図8A】

【図8B】

【図8C】

【図9A】

【図9B】

【図10A】

【図10B】

【図10C】

【図10D】

【図10E】

【図10F】

【図10G】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドラジドチオール・リンカーをヒドラジド反応性基を有する第1の分子と反応させて、チオール化された第1の分子を形成する工程であって、かつ、ヒドラジドチオール・リンカーと第1の分子との反応、ヒドラジドチオール・リンカーのチオール基が、実質的に、その中性酸形態において存在する条件下で反応させることを含む、工程;および
チオール化された第1の分子を第2の分子、チオール反応性基を有する第2の分子と反応させて、コンジュゲートを形成する工程:
を含んでなる、2種以上の分子のコンジュゲートを形成する方法。
【請求項2】
第1の分子が特異的結合分子を含み、そして第2の分子が検出可能な標識を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
ヒドラジドチオール・リンカー化合物のチオール基が、実質的に、その中性酸形態において存在する条件下での反応が、約7未満のpHにおける反応を含む、請求項1の方法。
【請求項4】
ヒドラジドチオール・リンカー化合物のチオール基が、実質的に、その中性酸形態において存在する条件下での反応が、約pH=3〜約pH=7における反応を含む、請求項1の方法。
【請求項5】
ヒドラジドチオール・リンカー化合物のチオール基が、実質的に、その中性酸形態において存在する条件下での反応が、約pH=4〜約pH=6における反応を含む、請求項1の方法。
【請求項6】
第1の分子のヒドラジド反応性基がアルデヒド基を含む、請求項1の方法。
【請求項7】
第1の分子がグリコシル化された分子を含み、そしてアルデヒド基が、第1の分子のグリコシル化部分の酸化によって第1の分子に導入される、請求項6の方法。
【請求項8】
グリコシル化された分子が抗体を含み、そしてアルデヒド基が抗体のFc部に導入される、請求項7の方法。
【請求項9】
第2の分子のチオール反応性基が第2の分子に導入されたマレイミド基を含む、請求項1の方法。
【請求項10】
第2の分子に導入されたマレイミド基が、NHS−PEG−マレイミド・リンカーを使用して導入される、請求項9の方法。
【請求項11】
第2の分子が検出可能な標識を含む、請求項9の方法。
【請求項12】
ヒドラジドチオール・リンカー化合物が、1種以上のMBH、MBCH、MAMBH、THMBH、BTAL、BTHL、TAGD、THGD、PEGに基づくヒドラジドチオール・リンカー、多官能性ヒドラジドチオール・リンカー、PEGに基づく多官能性ヒドラジドチオール・リンカーおよびポリアクリルアミドヒドラジド・リンカーである、請求項1の方法。
【請求項13】
ヒドラジドチオール・リンカー化合物が、1種以上のMBH、MBCHまたはメルカプト−dPEG−ヒドラジド・リンカーである、請求項12の方法。
【請求項14】
ヒドラジドチオール・リンカー化合物が、式:
【化1】

[式中、n=1,2または3;そしてRは、H、−CONHNHまたは−CO−A−CONHNHであり、ここで、Aは、1〜100個の炭素原子を有する二価の基である]を有する、請求項1の方法。
【請求項15】
ヒドラジドチオール・リンカー化合物が、式:
【化2】

[式中、m=2〜50、Rは、H、−CONHNHまたは−CO−A−CONHNHであり、ここで、Aは、1〜100個の炭素原子を有する二価の基であり、そしてXおよびYは、独立して、結合、または1〜20個の炭素を有する二価の基である]
を有する、請求項1の方法。
【請求項16】
請求項1の方法にしたがって製造されるコンジュゲート。
【請求項17】
ヒドラジドチオール・リンカーが、1種以上のMBH、MBCH、MAMBH、THMBH、BTAL、BTHL、TAGD、THGD、PEGに基づくヒドラジドチオール・リンカー、多官能性ヒドラジドチオール・リンカー、PEGに基づく多官能性ヒドラジドチオール・リンカーおよびポリアクリルアミドヒドラジド・リンカーであり、リンカーのヒドラジド基が抗体のFc部に共有結合される、ヒドラジドチオール・リンカーを介して検出可能な標識に共有結合された抗体を含んでなるコンジュゲート。
【請求項18】
ヒドラジドチオール・リンカーが、PEGに基づくヒドラジドチオール・リンカーを含む、請求項17のコンジュゲート。
【請求項19】
PEGに基づくヒドラジドチオール・リンカーが、メルカプト−dPEG−ヒドラジド・リンカーを含む、請求項18のコンジュゲート。
【請求項20】
ヒドラジドチオール・リンカーが、MBHまたはMBCHを含む、請求項17のコンジュゲート。
【請求項21】
検出可能な標識が、酵素、蛍光分子、ハプテンまたは蛍光ナノ粒子を含む、請求項17のコンジュゲート。
【請求項22】
検出可能な標識が酵素を含む、請求項21のコンジュゲート。
【請求項23】
検出可能な標識が、アルカリホスファターゼおよびセイヨウワサビ・ペルオキシダーゼからなる群から選ばれる酵素を含む、請求項22のコンジュゲート。
【請求項24】
検出可能な標識がアルカリホスファターゼを含む、請求項23のコンジュゲート。
【請求項25】
アルカリホスファターゼが、架橋されたアルカリホスファターゼを含む、請求項24のコンジュゲート。
【請求項26】
抗体が抗ハプテン抗体を含む、請求項17のコンジュゲート。
【請求項27】
抗体が抗抗体抗体を含む、請求項17のコンジュゲート。
【請求項28】
式:
【化3】

[式中、Rは、Hまたは−CONHNHであり、そしてn=1,2または3である]
を有する、ヒドラジドチオール・リンカー。
【請求項29】
式:
【化4】

[式中、Rは、Hまたは−CONHNHであり、そしてn=1,2または3である]
を有するヒドラジドチオール・リンカー;および
請求項1の方法を実施するための説明書;
を含んでなるキット。
【請求項30】
式:
N−NH−CO−(CH−CH−O)−CH−CH−SH
[式中、t=2〜50]
を有するヒドラジドチオール・リンカー;および
請求項1の方法を実施するための説明書;
を含んでなるキット。

【公表番号】特表2009−521405(P2009−521405A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542455(P2008−542455)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/045302
【国際公開番号】WO2007/062177
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(599075070)ベンタナ・メデイカル・システムズ・インコーポレーテツド (31)
【Fターム(参考)】