説明

分子篩SSZ−13の製造

本発明は結晶ゼオライトSSZ−13の製造方法を開示しており、この方法は
(a)(1)少なくとも1種の四価元素または四価元素の混合物の酸化物の活性供給源、(2)場合により、少なくとも1種の三価元素または三価元素の混合物の酸化物の活性供給源、(3)少なくとも1種のアルカリ金属の活性供給源、(4)ゼオライトSSZ−13のシード結晶、(5)ゼオライトSSZ−13の結晶を形成するのに充分な量のベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、ここでこのベンジルトリメチルアンモニウムカチオンは1−アダマンタアンモニウムカチオンの不存在下に使用する、および(6)小孔ゼオライトを結晶化させ、維持するのに要する量よりも実質的に過剰ではない量の水を含む反応混合物を調製し;次いで(b)この反応混合物を結晶化条件においてSSZ−13の結晶を含有する結晶化生成物が形成されるのに充分な時間にわたり加熱することを含む方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35 USC 119の下に2006年12月27日付けで出願された仮出願60/882,010の優先権を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明はSSZ−13と命名される結晶ゼオライトを反応混合物から製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
分子篩は商業的に重要な種類の結晶ゼオライトである。これらは相違するX−線回折図形により証明される定められた孔構造を有する種々の結晶構造を有する。この結晶構造は種類の相違を特徴付ける空隙および孔を定めている。
【0004】
国際ゼオライト協会(International Zeolite Associate)(IZA)により構造コードCHAを有するものとして同定されている分子篩は公知である。一例として、SSZ−13として知られている分子篩は公知結晶CHA物質である。
これは1985年10月1日付けでZonesに対し発行された米国特許第4,544,538号に記載されており、この特許全体を引用してここに組入れる。米国特許第4,544,538号において、SSZ−13分子篩は、有機テンプレートとしても知られている構造指向剤(structure directing agent)(「SDA」)として作用するN,N,N−トリメチル−1−アダマンタアンモニウムカチオンの存在下に製造されている。しかしながら、その価格は商業的方法におけるSSZ−13の有用性を制限することができる。したがって、高価なN,N,N−トリメチル−1−アダマンタアンモニウムカチオンSDAを用いることなくSSZ−13を合成する方法の発見が望まれている。
【0005】
SSZ−13の合成におけるN,N,N−トリメチル−1−アダマンタアンモニウムカチオンSDAの量を減少させる方法の一つは、Zonesにより2006年9月25日付けで出願された審査中の暫定出願第60/826,882号に記載されている。この方法では、SSZ−13反応混合物にベンジルトリメチルアンモニウムカチオン(例えば、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム)を添加することによってSSZ−13の合成に要するN,N,N−トリメチル−1−アダマンタアンモニウムカチオンSDAの量が格別に減少されている。この合成方法によって格別の費用節約を得ることができるが、依然として高価なN,N,N−トリメチル−1−アダマンタアンモニウムカチオンSDAの使用が必要である。
【0006】
ここに、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタアンモニウムカチオンのような1−アダマンタアンモニウムカチオンの不存在下にベンジルトリメチルアンモニウムカチオン(「BzTMAカチオン」)を使用してSSZ−13を製造することができることが見出された。
【0007】
Millerに対し1996年9月24日付けで発行された米国特許第5,558,851号は、所望により反応混合物を形成することができるのに充分な量のみの水を含有する反応混合物から結晶アルミノシリケートゼオライトを製造する方法を開示している。この方法は、反応混合物を結晶化条件下および外部液相の不存在下に加熱する方法である。したがって、結晶の乾燥に先立ち、結晶質物質から過剰の液体を除去する必要はない。米国特許第5,558,851号の全体を引用してここに組入れる。
【0008】
(要旨)
本発明は結晶ゼオライトSSZ−13の製造方法を提供し、この方法は、
a.(1)四価元素または四価元素の混合物の酸化物の少なくとも1種の活性供給源、(2)場合により、三価元素または三価元素の混合物の酸化物の少なくとも1種の活性供給源、(3)アルカリ金属の少なくとも1種の活性供給源、(4)SSZ−13を形成可能なシード結晶、(5)ゼオライトSSZ−13の結晶を形成するのに充分な量のベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、ここでベンジルトリメチルアンモニウムカチオンは1−アダマンタアンモニウムカチオンの不存在下に使用される、および(6)SSZ−13を結晶化させ、維持するのに要する量よりも実質的に過剰ではない量の水を含む反応混合物を調製し;ならびに
b.当該反応混合物の結晶化条件における加熱を、SSZ−13の結晶を含有する結晶化生成物が形成されるのに充分な時間にわたり行うこと、
を含む方法である。
【0009】
本発明はさらに、成型結晶ゼオライトSSZ−13の製造方法を提供し、この方法は、
a.少なくとも(1)四価元素または四価元素の混合物の酸化物の少なくとも1種の活性供給源、(2)場合により、三価元素または三価元素の混合物の酸化物の少なくとも1種の活性供給源、(3)アルカリ金属の少なくとも1種の活性供給源、(4)SSZ−13を形成可能なシード結晶、(5)ゼオライトSSZ−13の結晶を形成するのに充分な量のベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、ここでベンジルトリメチルアンモニウムカチオンは1−アダマンタアンモニウムカチオンの不存在下に使用される、および(6)SSZ−13を結晶化させ、維持するのに要する量よりも実質的に過剰ではない量の水を含む反応混合物を調製し;
b.この反応混合物を成型粒子に成型し;
ならびに、
c.当該反応混合物の結晶化条件における、外部液相の不存在での加熱を、SSZ−13の結晶を含有する結晶化生成物が形成されるのに充分な時間にわたり行うこと、
を含む方法である。
【0010】
本発明はまた、合成されたままの状態および無水状態として、(1)四価酸化物または四価酸化物の混合物(例えば、ケイ素酸化物、ゲルマニウム酸化物またはそれらの混合物)、(2)場合により、三価酸化物または三価酸化物の混合物(例えば、アルミニウム酸化物、ホウ素酸化物、ガリウム酸化物、鉄酸化物またはそれらの混合物)、および(3)ベンジルトリメチルアンモニウムカチオンを含む組成を有する分子篩であって、合成されたままの状態のSSZ−13が1−アダマンタアンモニウムカチオンを含有していない分子篩を提供する。
【0011】
本発明はまた、結晶ゼオライトSSZ−13の製造方法を提供し、この方法は、
a.(1)四価元素または四価元素の混合物の酸化物の少なくとも1種の活性供給源、(2)場合により、三価元素または三価元素の混合物の酸化物の少なくとも1種の活性供給源、(3)アルカリ金属の少なくとも1種の活性供給源、(4)SSZ−13を形成可能なシード結晶、(5)ゼオライトSSZ−13の結晶を形成するのに充分な量のベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、ここでこのベンジルトリメチルアンモニウムカチオンは1−アダマンタアンモニウムカチオンの不存在下に使用される、および(6)SSZ−13を結晶化させ、維持するのに要する量よりも実質的に過剰ではない量の水を含む反応混合物を調製し;ならびに
b.当該反応混合物の結晶化条件における加熱を、SSZ−13の結晶を含有する結晶化生成物が形成されるのに充分な時間にわたり行うことを含む方法であって、上記反応混合物が結晶化期間中、約1〜約5の水対(1)モル比を有する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の態様の詳細な説明)
本発明は、小孔ゼオライト−13の製造方法に関する。本明細書で使用されているものとして、「小孔ゼオライト」の用語は5オングストローム未満の孔サイズを有するゼオライトを表し、この中には当該孔が8員環を有するものが包含される。当該小孔ゼオライトは、ゼオライト骨格中に12より大きい(2)三価酸化物または三価酸化物の混合物(例えば、アルミニウム酸化物、ホウ素酸化物、ガリウム酸化物、鉄酸化物またはそれらの混合物)に対する(1)四価酸化物または四価酸化物の混合物(例えば、ケイ素酸化物、ゲルマニウム酸化物またはそれらの混合物)のモル比を有し、このモル比には200またはそれ以上のモル比が包含される。
【0013】
小孔ゼオライトSSZ−13を、そこにおいて、およびその中において、結晶化させる反応混合物は、四価酸化物または四価酸化物の混合物(例えば、ケイ素酸化物、ゲルマニウム酸化物またはそれらの混合物)の少なくとも1種の活性供給源および少なくとも1種の三価酸化物または三価酸化物の混合物(例えば、アルミニウム酸化物、ホウ素酸化物、ガリウム酸化物、鉄酸化物またはそれらの混合物)、SSZ−13ゼオライトを形成可能な構造指向剤(「SDA」)、およびゼオライトSSZ−13を結晶化させ、維持するのに要する量よりも実質的に過剰ではない量の水を含んでいる。本明細書で使用されているものとして、「結晶化させ、維持するのに要する量よりも実質的に過剰ではない」の用語は、SSZ−13を結晶化させ、維持するのに要する最低量の水の量を意味する。この水の量は通常のゼオライト製造方法において要求される量に比較し格別に少ない。この最低量よりも僅かに過剰の量も使用することができるが(とくに、反応混合物を充分に混合することができるようにするために必要な場合、および/または練り混ぜることができるようにするために必要な場合)、反応混合物中に使用される水の量は、反応混合物が溶液または流動性ゲルに変化する量ほど多い量であってはならない。
【0014】
本発明の反応混合物中に要する液体(ここで、液体は水性および有機性(例えば、SDA)を包含することができる)の量は、混合物を適度に混和するのに要求される量である。したがって、反応混合物は水をSSZ−13ゼオライトの活性供給源と混合し、例えば重質ペースト様コンシステンシーの形状あるいは粉末または顆粒の形状であることができる均一な塊を形成することによって調製する。活性供給源は均一な塊中に容易に混和することができる形態であり、また例えば粉末、水和粒子、または濃縮水性溶液であることもできる。反応混合物の混合および/または練り混ぜ期間中、粉末の全部を湿らせるのに充分な量の水を添加する。別法として、粉末を均一で、一般に均質な自己支持性混合物に練り混ぜることができるのに充分な量の水を添加する。活性供給源に添加される水は液体様混合物を生成するには不十分であることから、活性供給源の全部を練り混ぜ期間中に水に直ちに溶解する必要はない。この水の添加量は使用される混合装置および活性供給源に依存する。当業者はゼオライトの活性供給源を適当に混合するのに要する液体の量を過度の実験によらなくても容易に決定することができる。一例として、ゼオライトの水和されている供給源は比較的少量の水を必要とし、乾燥した供給源は比較的多量の水を必要とすることがある。混合物は均一で、均質の外観を呈するまで混和および/または練り混ぜると好ましいが、混合物を練り混ぜるのに要する時間の長さは、本発明において臨界的ではない。
【0015】
混和および/または練り混ぜ後の反応混合物の水含有量は、例えば乾燥によって、または反応混合物が望ましいコンシステンシーを有するように水を添加することによってさらに調整することができる。
【0016】
ある態様においては、SSZ−13の製造に使用される反応混合物の調製において、結晶化工程用に調製されるものとしての反応混合物中に存在する水の量は当該SSZ−13の結晶化を生じさせ、維持するのに充分であるが、水が反応混合物に対し外部に液相を形成するほどには多くないか、または反応混合物を溶液または流動性ゲルに変形させるほどには多くないことが重要である。反応混合物は顆粒形状、粉末または自己支持性塊の形状であると好ましい。反応混合物を結晶化条件に付する前に、反応混合物を成型粒子に形成する必要はないが、かなりの場合、このようにすると望ましいことがある。この場合、本発明の反応混合物に使用される水の量は通常のゼオライト調製方法で要求される水の量よりも少ない。すなわち、本発明の方法に従う結晶化工程期間中、結晶の乾燥に先立ち、結晶化工程の終了時点で結晶化された物質から、例えば濾過または傾斜によって除去されなければならない分離した液体相は存在していない。また、反応混合物中に存在する水の量は反応混合物を崩壊または「融解」させるには不充分な量であり、すなわち反応混合物が一旦形成されると(液体含有量の調節が必要であることがある全部の場合を包含する)、生成する塊は自己支持性である。本明細書で使用されている「自己支持性」の用語(またはその同等の用語の全部)は、それ自体の重量下に崩壊または「融解」しない反応混合物を表す。この用語には、反応混合物が自己支持性である個別の顆粒を含んでおり、これらの顆粒がそれぞれ、自己支持性であるか、または粉末中の粒子がそれぞれ、自己支持性である粉末を含んでいる場合が包含される。
【0017】
反応混合物中の固形物含有量は所望されるSSZ−13の特定の組成に依存する。非常に大きい四価酸化物対三価酸化物のモル比を有するSSZ−13ゼオライトは本発明の方法内にあり、三価酸化物(例えば、アルミニウム酸化物、ホウ素酸化物、ガリウム酸化物、鉄酸化物またはそれらの混合物)に対する四価酸化物(例えば、ケイ素酸化物、ゲルマニウム酸化物またはそれらの混合物)のモル比が12よりも大きいSSZ−13ゼオライトが包含され、200またはそれ以上のモル比を有するSSZ−13ゼオライトもまた包含される。さらに、アルミニウム酸化物などの三価酸化物(1種または2種以上)を基本的に含有していないSSZ−13ゼオライト、すなわちゼオライト中の酸化物の基本的に全部が四価酸化物である(例えば、全部がケイ素酸化物である)SSZ−13ゼオライトが包含される。とくに、市販のシリカ供給源を使用する場合、アルミニウムが多少の程度で常時存在する。したがって、「アルミニウムを含有していない」の用語は、例えばアルミナまたはアルミネート反応剤として反応混合物に意図的に添加されているアルミニウムは存在していないが、反応剤中の夾雑物としてのみ産生されているある程度のアルミニウムは存在することを意味する。反応混合物に添加することができるその他の金属成分は、たとえばゲルマニウム酸化物、アルミニウム酸化物、ホウ素酸化物、ガリウム酸化物、鉄酸化物およびそれらの混合物の活性供給源を包含する。
【0018】
ケイ素酸化物(SiO)の代表的供給源は、ケイ酸塩、シリカヒドロゲル、ケイ酸、コロイド状シリカ、ヒュームドシリカ、テトラアルキルオルトシリケート、シリカ水酸化物、沈殿シリカおよびクレーを包含する。反応混合物に使用される場合、アルミニウム酸化物(Al)の代表的供給源は、アルミン酸塩、アルミナ、およびアルミニウム化合物、例えばAlCl、Al(SO、アルミニウム水酸化物(Al(OH))、カオリンクレー、およびその他のゼオライト類を包含する。ゲルマニウム、ホウ素、ガリウムおよび鉄は、それらのアルミニウムおよびケイ素対応成分に相当する形態で添加することができる。塩類、とくに塩化ナトリウムなどのハロゲン化アルカリ金属化合物を反応混合物に添加することができ、または反応混合物中で生成させることができる。これらの化合物は、格子構造におけるケイ素の閉塞を防止しながら、ゼオライトの結晶化を助長するものとして文献に開示されている。
【0019】
反応混合物はまた、1種または2種以上の酸化アルカリ金属の活性供給源を含んでいる。リチウム、ナトリウムおよびカリウムの供給源を使用すると好ましく、ナトリウムは代表的アルカリ金属である。結晶化プロセスに有害ではない全部のアルカリ金属化合物が適当である。非限定的例は、アルカリ金属の酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩、クエン酸塩および酢酸塩を包含する。
【0020】
本発明の一態様において、反応混合物のコンシステンシーに応じて、反応混合物は、結晶化工程に先立ち、望ましい自己支持性形状に形成することができる(本明細書において、この工程を「予備形成工程」と称する)。これにより、混合物中で生成されるゼオライトを含有する触媒物質の調製に要する処理工程の数が減少される。反応混合物の形成に先立ち、その形状を保持する成型可能な塊を得るために、乾燥によるか、またはさらに液体を添加するかのどちらかによって、反応混合物の液体含有量を変える必要があることがある。一般に、大部分の成型法において、水は一般に、反応混合物の約20重量パーセント〜約60重量パーセント、好ましくは約30重量パーセント〜約50重量パーセントを構成する。
【0021】
予備形成工程において、反応混合物は成型粒子に形成することができる。粒子の調製方法は当業者にとって周知であり、例えば押出し、噴霧乾燥、顆粒化、凝集などを包含する。粒子は好ましくは、最終触媒にとって望ましいサイズおよび形状であり、例えば押出し成型体、球形顆粒、凝集体およびピルの形状であることができる。これらの粒子は一般に、約1/64インチ〜約1/2インチ、好ましくは約1/32インチ〜約1/4インチの横断径を有する、すなわちこれらの粒子は1/64インチ、好ましくは1/32インチの篩上に保有され、かつ1/2インチ、好ましくは1/4インチの篩を通過する。
【0022】
一態様において、反応混合物から調製された成型粒子は所望形状を保有するのに充分の水を含有する。成型粒子内における結晶化を開始または維持するために、反応混合物に追加の水は不必要である。確実なこととして、結晶化に先立ち、成型粒子から過剰の水を幾分、除去することが好ましいことがある。湿った固形物を乾燥させるのに都合の良い方法を使用し、成型粒子を乾燥させることができ、例えば約200℃以下の温度および準大気圧から約5気圧までの圧力において窒素またはヘリウムなどの不活性気体中で乾燥させる方法が包含される。
【0023】
天然産出クレー、例えばベントナイト、カオリン、モントモリロナイト、セピオライトおよびアタパルガイトは必須ではないが、結晶化に先立ち、成型粒子中に包含させることができ、これにより良好な粉砕強さを有する粒子を得ることができる。このようなクレー類は元の資源としてそのままの状態で使用することができ、または初期に焼成、酸処理または化学的変性に付すことができる。微結晶セルロースはまた、粒子の物理的性質を改良することが見出されている。
【0024】
本発明の方法に従い、ゼオライトSSZ−13は反応混合物内で、または反応混合物から調製された成型粒子内で結晶化させる。どちらの場合でも、SSZ−13が生成される反応混合物の組成は下記モル組成範囲を有する:
【表1】

【0025】
Yはケイ素、ゲルマニウムまたはその両方であり、Wはアルミニウム、ホウ素、ガリウム、鉄またはそれらの混合物であり、Mはアルカリ金属イオン、好ましくはナトリウムであり、およびRはベンジルトリメチルアンモニウムカチオンであり、このベンジルトリメチルアンモニウムカチオンは1−アダマンタアンモニウムカチオンの不存在下に使用される。
【0026】
上記したように、反応混合物(成型粒子の形状であることができる)中に存在する液体は、存在する水の量がSSZ−13ゼオライトの結晶化を生じさせ、維持するのに充分であると同時に、当該反応混合物の自己支持性を任意に保持するかぎり、水性および有機性液体の組合せであることができる。総液体含有量は、例えば反応混合物からの全部の成型粒子の物理的強度に影響を与えることから、結晶化期間中の反応混合物の総揮発性物質含有量は反応混合物の約20%〜約60%(重量/重量)、好ましくは約30%〜約60%(重量/重量)の範囲であると好ましい。ここで、総揮発性物質含有量は水を包含する総揮発性液体の測定値である。SSZ−13の結晶化を生じさせ、維持するのに要する以上の追加の液体は反応混合物内における結晶化に不必要であることは、本発明の方法の特徴である。
【0027】
一態様において、ゼオライトの結晶化は外部液相の不存在下に、すなわち反応混合物から分離している液相の不存在下に生じる。一般に、若干の液状水が反応混合物または結晶化期間中の成型粒子と接触して存在していても、本発明の方法にとって有害ではなく、若干の水が結晶化期間中の反応混合物の表面上に存在しうることは予測できる。しかしながら、本発明の目的は、結晶化後に処理しなければならないか、および/または廃棄しなければならない水の量が最低にされるような方法でSSZ−13を結晶化する方法を提供することにある。この目的のために、本発明の方法はSSZ−13の結晶化を生じさせ、維持し、同時に場合により、反応混合物を自己支持性にするのに要する充分の量以上の追加の水は不必要であるSSZ−13の合成方法を提供する。確実なこととして、ある条件において、結晶化期間中に存在する液状水は反応混合物または成型粒子の形状を変えることがあり、極端な状況下では、反応混合物または成型粒子にその一体性を失わせるか、または溶解させることがある。
【0028】
結晶化は高められた温度において、通常オートクレーブ中で、小孔ゼオライト結晶が形成されるまで、反応混合物を自家圧力に付して行う。熱水結晶化工程中の温度は代表的に、約140℃〜約200℃に維持する。
【0029】
SSZ−13の結晶化がしばしば、慣用の結晶化方法に比較して加速されることは本方法の重要な特徴である。すなわち、結晶の形成に要する結晶化時間は代表的に、約1時間〜約10日間、さらに多くの場合、約3時間〜約4日間の範囲である。
【0030】
SSZ−13は、無定形の非結晶反応剤を含む反応混合物内で結晶化させる。結晶化工程に先立ち、SSZ−13の結晶(すなわち、「シード」結晶)を混合物に添加する。シード結晶を添加することによりゼオライトの結晶化を強化する方法は周知である。シード結晶は反応混合物中にケイ素酸化物を約1〜約10重量%(活性シリカ供給源の量から計算して)の量で使用する。
【0031】
SSZ−13結晶が形成されたならば、これらの結晶は水洗することができ、次いで例えば90℃〜150℃において8〜24時間かけて乾燥させることができる。乾燥工程は大気圧または準大気圧において行うことができる。
【0032】
本発明はまた、その合成されたままの状態で本発明により調製されたSSZ−13を包含する。「合成されたまま」(as−synthesized)の用語は、その形態が熱処理(例えば、焼成)またはその他の方法によりBzTMAカチオンが除去される前の形態であるSSZ−13を表す。すなわち、合成されたままのSSZ−13は、(1)四価酸化物または四価酸化物の混合物(例えば、ケイ素酸化物、ゲルマニウム酸化物またはそれらの混合物)、(2)場合により、三価酸化物または三価酸化物の混合物(例えば、アルミニウム酸化物、ホウ素酸化物、ガリウム酸化物、鉄酸化物またはそれらの混合物)、および(3)BzTMAカチオンを含む組成を有し、この合成されたままのSSZ−13は1−アダマンタアンモニウムカチオンを含有していない。
【0033】
SSZ−13ゼオライトは触媒に(例えば、メタノールをエチレンおよびプロピレンなどの軽質オレフィン類に変換するために)、分離に(例えば、メタンからCOを分離するための混合マトリックス膜に)、および環境用途に(例えば、COおよび軽質炭化水素の吸収に)使用することができる。前記したように、反応混合物から成型粒子を形成する場合、これらはSSZ−13が使用される用途における使用に望ましいサイズおよび形状を有することができる。別様には、SSZ−13有孔質ゼオライトは、噴霧乾燥、押出し成型などの技術を用いて温度およびその他の条件に対し耐性である物質と配合することができる。
【0034】
下記例は本発明を制限することなく、説明するものである。
例1
【0035】
Hi−Sil233(ケイ素酸化物供給源)20グラムを適当な容器に入れた。レーイス(Reheis)F−200アルミナ(1.7グラム)を50%水性NaOH溶液5グラム中に溶解し、次いで容器中のHi−Sil233に添加した。この反応混合物を充分に混合する。生成する混合物に、SSZ−13シード結晶1グラムを添加し、混合物を再度、5分間かけて充分に混合する。この混合物に混合しながら、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムの2.36ミリモル/グラム溶液23.3グラムを1時間かけてゆっくりと添加した。生成する混合物は59.6%の揮発性物質含有量を有する僅かに湿潤している顆粒の形態であった。
【0036】
合成混合物のモル組成は下記のとおりであった:
【表2】

【0037】
生成する反応混合物を2部(A部およびB部)に分け、それぞれを別々に、3.5インチパイプオートクレーブに入れ、160℃で2日間(A部の場合)および4日間(B部の場合)かけて結晶化させた。
【0038】
生成物はpH12.5の水で2回、次いで普通の蒸留水で1回、洗浄した。生成物を濾過し、減圧オーブン中で120℃において一夜かけて乾燥させ、次いで1100華氏度において6時間かけて焼成した。
生成する生成物はSSZ−13であった。
【0039】
例2
Hi−Sil233(ケイ素酸化物供給源)20グラムを適当な容器に入れた。レーイスF−200アルミナ(1.7グラム)を50%水性NaOH溶液7.9グラム中に溶解し、次いで容器中のHi−Sil233に添加した。この反応混合物を充分に混合する。生成する混合物に、SSZ−13シード結晶1グラムを添加し、混合物を再度、5分間かけて充分に混合する。この混合物に混合しながら、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムの2.36ミリモル/グラム溶液23.3グラムをゆっくりと添加した。蒸留水8グラムをゆっくりと添加し、生成する混合物を1時間かけて充分に混合した。生成する混合物は61%の揮発性物質含有量を有する僅かに湿潤している顆粒の形態であった。
【0040】
合成混合物のモル組成は下記のとおりであった:
【表3】

【0041】
生成する反応混合物を3.5インチパイプオートクレーブに入れ、170℃で2日間かけて結晶化させた。
【0042】
生成物はpH11の水で2回、次いで普通の蒸留水で1回、洗浄した。生成物を濾過し、減圧オーブン中で120℃において一夜かけて乾燥させ、次いで1100華氏度において6時間かけて焼成した。
生成する生成物はSSZ−13であった。
【0043】
例3
Hi−Sil233(ケイ素酸化物供給源)20グラムを適当な容器に入れた。バルクロフト(Barcroft)250アルミナ(52%Al)1.2グラムを50%水性NaOH溶液7.9グラム中に溶解し、次いで容器中のHi−Sil233に添加した。生成する混合物を充分に混合する。生成する混合物に、SSZ−13シード結晶1グラムを添加し、混合物を再度、5分間かけて充分に混合する。この混合物に混合しながら、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムの2.36ミリモル/グラム溶液23.3グラムをゆっくりと添加した。生成する混合物に蒸留水6グラムをゆっくり添加し、次いで生成する混合物を1時間かけて充分に混合した。生成する混合物は60%の揮発性物質含有量を有する僅かに湿潤している顆粒の形状であった。
【0044】
合成混合物のモル組成は下記のとおりであった:
【表4】

【0045】
生成する反応混合物を3.5インチパイプオートクレーブに入れ、170℃で2日間かけて結晶化させた。
【0046】
生成物はpH11の水で2回、次いで普通の蒸留水で1回、洗浄した。生成物を濾過し、減圧オーブン中で120℃において一夜かけて乾燥させ、次いで1100華氏度において6時間かけて焼成した。
生成する生成物はSSZ−13であった。
【0047】
本明細書および添付特許請求の範囲の目的にかかわり、別段の記載がない限り、全部の数値は容量、パーセンテージまたは割合を表し、本明細書および添付特許請求の範囲に使用されている数値は「約」の用語で全部の場合が加減されているものと理解されるべきである。さらにまた、本明細書に記載の全部の範囲は末端を包含するものとし、独立して組合わせ可能である。
【0048】
本出願書に引用されている刊行物、特許および特許出願書はいずれも、それぞれ個別の刊行物、特許出願書または特許の記載が特別に、また個別にその全体を引用して指示されている場合、同一範囲までそれらの全体を引用してここに組み入れる。
【0049】
ここに記載されている説明は本発明を説明するための最良の態様を包含する例を使用しており、当業者は本発明を実施および使用することができるように、これらを使用することができる。本発明の具体的態様にかかわる多くの修正は当業者の容易に実施することができることである。したがって、本発明は添付特許請求の範囲内に入る構成および方法の全部を包含するものと考えられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、結晶ゼオライトSSZ−13の製造方法:
a.(1)四価元素または四価元素の混合物の、酸化物の少なくとも1種の活性供給源、(2)場合により、三価元素または三価元素の混合物の、酸化物の少なくとも1種の活性供給源、(3)アルカリ金属の少なくとも1種の活性供給源、(4)SSZ−13を形成可能なシード結晶、(5)ゼオライトSSZ−13の結晶を形成するのに充分な量のベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、ここでこのベンジルトリメチルアンモニウムカチオンは1−アダマンタアンモニウムカチオンの不存在下に使用する、および(6)SSZ−13を結晶化させ、維持するのに要する量よりも実質的に過剰ではない量の水を含む反応混合物を調製すること;ならびに、
b.当該反応混合物の結晶化条件における加熱を、SSZ−13の結晶を含有する結晶化生成物が形成されるのに充分な時間にわたり行うこと。
【請求項2】
結晶化の間において、反応混合物が約1〜約5の水対(1)モル比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
結晶化条件における反応混合物の加熱を外部液相の不存在下に行う、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(1)および(2)から形成されるSSZ−13中の酸化物のモル比が12よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(1)および(2)から形成されるSSZ−13中の酸化物のモル比が200以上である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
SSZ−13の孔サイズが5オングストローム未満である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
反応混合物が下記モル組成範囲を有する、請求項1に記載の方法:
【表1】


ここで、Yはケイ素、ゲルマニウムまたはそれらの両方であり、Wはアルミニウム、ホウ素、ガリウム、鉄またはそれらの混合物であり、Mはアルカリ金属イオンであり、およびRはベンジルトリメチルアンモニウムカチオンであり、このベンジルトリメチルアンモニウムカチオンは1−アダマンタアンモニウムカチオンの不存在下に使用する。
【請求項8】
以下を含む、成型結晶ゼオライトSSZ−13の製造方法:
a.少なくとも、(1)四価元素または四価元素の混合物の酸化物の少なくとも1種の活性供給源、(2)場合により、三価元素または三価元素の混合物の酸化物の少なくとも1種の活性供給源、(3)アルカリ金属の少なくとも1種の活性供給源、(4)SSZ−13のシード結晶、(5)ゼオライトSSZ−13の結晶を形成するのに充分な量のベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、ここでこのベンジルトリメチルアンモニウムカチオンは1−アダマンタアンモニウムカチオンの不存在下に使用する、および(6)SSZ−13を結晶化させ、維持するのに要する量よりも実質的に過剰ではない量の水を含む反応混合物を調製すること;
b.当該反応混合物を成型粒子に成型すること;ならびに、
c.当該反応混合物の結晶化条件における加熱を、前記成型粒子内にSSZ−13の結晶が形成されるのに充分な時間にわたり行うこと。
【請求項9】
結晶化中における成形粒子が約1〜約5の水対(1)モル比を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
結晶化条件における反応混合物の加熱を外部液相の不存在下に行う、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(1)および(2)から形成されるSSZ−13中の酸化物のモル比が12よりも大きい、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
(1)および(2)から形成されるSSZ−13中の酸化物のモル比が200以上である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
小孔ゼオライトの孔サイズが5オングストローム未満である、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
反応混合物が下記モル組成範囲を有する、請求項8に記載の方法:
【表2】


ここで、Yはケイ素、ゲルマニウムまたはその両方であり、Wはアルミニウム、ホウ素、ガリウム、鉄またはそれらの混合物であり、Mはアルカリ金属イオンであり、およびRはベンジルトリメチルアンモニウムカチオンであり、このベンジルトリメチルアンモニウムカチオンは1−アダマンタアンモニウムカチオンの不存在下に使用する。
【請求項15】
合成されたままの無水状態で、(1)四価酸化物または四価酸化物の混合物、(2)場合により、三価酸化物または三価酸化物の混合物、および(3)ベンジルトリメチルアンモニウムカチオンを含む組成を有する分子篩であって、合成されたままのSSZ−13が1−アダマンタアンモニウムカチオンを含有していない分子篩。
【請求項16】
四価酸化物または四価酸化物の混合物が、ケイ素酸化物、ゲルマニウム酸化物およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項15に記載の分子篩。
【請求項17】
三価酸化物または三価酸化物の混合物が、アルミニウム酸化物、ホウ素酸化物、ガリウム酸化物、鉄酸化物およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項15に記載の分子篩。
【請求項18】
組成物がアルミニウムを含有していない、請求項15に記載の分子篩。
【請求項19】
組成物中の酸化物(1)対酸化物(2)のモル比が12よりも大きい、請求項15に記載の分子篩。
【請求項20】
酸化物(1)対酸化物(2)モル比が200以上である、請求項19に記載の分子篩。
【請求項21】
5オングストローム未満の孔サイズを有する、請求項15に記載の分子篩。
【請求項22】
当該分子篩が8員環を有する孔を有する、請求項15に記載の分子篩。
【請求項23】
以下を含む、結晶ゼオライトSSZ−13の製造方法:
a.(1)四価元素または四価元素の混合物の酸化物の少なくとも1種の活性供給源、(2)場合により、三価元素または三価元素の混合物の酸化物の少なくとも1種の活性供給源、(3)アルカリ金属の少なくとも1種の活性供給源、(4)SSZ−13を形成可能なシード結晶、(5)ゼオライトSSZ−13の結晶を形成するのに充分な量のベンジルトリメチルアンモニウムカチオン、ここでこのベンジルトリメチルアンモニウムカチオンは1−アダマンタアンモニウムカチオンの不存在下に使用する、および(6)SSZ−13を結晶化させ、維持するのに要する量よりも実質的に過剰ではない量の水を含む反応混合物を調製すること;ならびに、
b.当該反応混合物の結晶化条件における加熱を、SSZ−13の結晶を含有する結晶化生成物が形成されるのに充分な時間にわたり行うこと、ここで、結晶化の間の当該反応混合物は約1〜約5の水対(1)モル比を有する。
【請求項24】
結晶化条件における反応混合物の加熱を外部液相の不存在下に行う、請求項23に記載の方法。

【公表番号】特表2010−514663(P2010−514663A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544212(P2009−544212)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/088478
【国際公開番号】WO2008/083048
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】