説明

分子送達ベシクル

少なくとも1つの脂質の少なくとも約30%が、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選択される、カベオリンタンパク質と少なくとも1つの脂質とを含む単離カベオリン含有ベシクルが開示される。単離カベオリン含有ベシクルの作成方法、組換え型カベオリンタンパク質を含む単離カベオリン含有ベシクル、単離カベオリン含有送達ベシクル、単離カベオリン含有送達ベシクルの作成方法、および単離カベオリン含有送達ベシクルを用いた分子の送達による疾患または状態の治療方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カベオリン含有ベシクルに関する。特に、本発明は、カベオリン含有ベシクルおよびそのベシクルを用いた分子の送達方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関心分子を輸送するためのビークルとして機能させるために、様々な脂質担体を使用する試みが多数行われてきた。
たとえば、特許文献1は、カベオラを含む哺乳動物細胞膜の内在性ミクロドメインまたは成分の単離と精製、および、これらの精製ミクロドメインを、薬物などの分子を様々な細胞に送達するための潜在的用途を記載している。
【0003】
特許文献2に記載の別の手法では、無傷の細胞壁を有する細胞が非対称分裂を起こしてできる大腸菌(E.coli)または他の細菌細胞の非染色体産物である細菌由来のミニセルを記載している。特許文献2は、これらのミニセルを薬物分子の送達のために用いることについても記載している。ミニセル表面構造および細胞表面受容体の両方に特異性を有する二特異性リガンドを使用して、送達を標的化してもよい。
【0004】
リ(Li)らの非特許文献1は、昆虫細胞中での哺乳動物カベオリンタンパク質の発現と、それらのカベオリンサイズベシクルへのアセンブリについて記載している。しかしながら、著者は、カベオリンタンパク質の細菌発現が、カベオラに似たあらゆる形態学的構造の形成を、いかに駆動できないかについても述べている。
【0005】
ムラタ(Murata)らの非特許文献2には、タンパク質1モルあたりに外来コレステロールが少なくとも1モルとなるように、細菌により発現されたカベオリンをリポソーム中で再構成することが記載されている。
【0006】
上記記載した系のいずれも、特定または一貫した成分による脂質担体の信頼性ある生産、単離、および/または精製を可能にするものではない。これは、真核性ベシクルにおける高度な不均一性によるものと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0848614号明細書
【特許文献2】PCT/IB2005/000204
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】JBC、1996年、271:45、28647〜54頁
【非特許文献2】PNAS、1995年、92、10339〜43頁
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】カベオリン含有ベシクルの生産およびキャラクタリゼーションを示す図。A〜C:大腸菌BL21(1DE3)におけるMBP−Cav1の発現。固定後、大腸菌を凍結切片化およびMBPに対するイムノゴールド標識化のために処理した。MBPのみではなく(図示せず)、MBP−Cav1の発現が、流体力学半径55±5nmの球状カベオリン含有ベシクルの形成を誘導する。D〜E:精製カベオリン含有ベシクルをネガティブ染色するか(D)、急速凍結した(E)。E:急速に凍結したガラス状(vitrified)MBP−Cav1誘導性カベオリン含有ベシクルを−160℃の水和状態で観察し、単軸電子断層写真を作成した。断層写真から、膜および推定される個々のMBPタンパク質が明確な単一画像を示す(楕円状の電子密度の高い粒子)。F:MBP−カベオリン融合タンパク質の配置を示すための、断層写真からの1つのカベオリン含有ベシクルの予備再構築。
【図2】大腸菌におけるMBP−カベオリン−1の発現のタイムコースを示す図。MBP−カベオリン−1を90分間誘導し、その後、細菌培養物を固定し、10nmプロテインAゴールドをつなげたMBPタグによる免疫電子顕微鏡の局在診断(A、B)のための処理を行った。低倍率においても、本質的にすべての細胞がMBP陽性の内部ベシクルを蓄積していることが明らかである。より高い倍率において、これらのベシクルは、カベオラ(矢印)または出芽したカベオラの形態を有する。MBP−カベオリン−1発現(パネルE)の構成レベルが低い未誘導の培養を調べたところ、MBP−カベオリン−1は、宿主細菌の細胞質膜に限定されることがわかった(矢印、パネルD)。カベオラ様外形の存在に注目のこと(パネルC矢印、パネルD矢頭)。E:誘導から指定時間後のウェスタンブロッティングによるMBP−カベオリン−1の検出。
【図3】A:大腸菌におけるカベオリン含有ベシクルの形成のためのモデルを示す図。暗色の点は、カベオリンを示す、白色の点は、膜不透過性蛍光色素を示す。このモデルにおいて、色素は、Cにおいて実験的に示されるように、カベオリン含有ベシクルの形成時にこれに取り込まれる。B:MBP−Cav1のウェスタンブロッティングと、Cに示したMBP発現大腸菌細胞を示す図。C:MBP−Cav1を発現しているが、MBPを発現していない大腸菌による色素の取込みを示す図。
【図4】蛍光色素取込みの定量を示す図。膜不透過性蛍光色素をカベオリン含有ベシクル形成の誘導のあいだ、大腸菌培地に加えた(MBP−カベオリン1)。次に細胞をよく洗浄し、カベオリンを発現しない細胞(MBP対照)における非特異的バックグラウンドと比較した。上側のパネルは、カルボキシフルオレセインを示し、下側のパネルはテトラブロモフルオレセインを示す。統計学的有意性を処理間の分散の単因子分析を用いて評価したP<0.025、**P<0.001。
【図5A】SDSゲルPAGEによって分析された精製カベオリン含有ベシクルを示す図。MBP−カベオリン−1融合タンパク質に対応する単一バンドのみが見られる(レーン1)。TEVプロテアーゼを用いたタグの開裂後、MBPは約40kDaにおいて見られ、タグを付けなかったカベオリン−1はクーマシー色素による染色は不十分である(レーン2)。
【図5B】精製カベオリン含有ベシクルの脂質組成を示す図。脂質組成は、宿主膜の組成と類似している。アフィニティ精製したカベオリン含有ベシクルの脂質含量の薄層クロマトグラフィー分析。同定のための標準として精製脂質を流した。PCはホスファチジルコリン、PSはホスファチジルセリン、PIはホスファチジルイノシトール、PEはホスファチジルエタノールアミン、cavはカベオリン含有ベシクルからの脂質、E.coliは、対照の大腸菌全細胞から抽出された脂質を示す。PG、ホスファチジルグリセロールおよびPEは、使用した溶媒系には溶けにくく、大腸菌における膜リン脂質の10%を構成する。
【図6A】アフィニティ精製したカベオリン含有ベシクルの透過型電子顕微鏡(TEM)分析の例を、酢酸ウラニルによるネガティブ染色(スケールバーは200nmを示す)について示す図。
【図6B】アフィニティ精製したカベオリン含有ベシクルの透過型電子顕微鏡(TEM)分析の例を、ガラス状「天然」状態におけるクライオ電子顕微鏡による個々のカベオリン含有ベシクル(染色されず)について示す図。
【図7】カベオリン−プロテインA融合タンパク質およびErbB2へのヘパリン抗体を用いたカベオリン含有ベシクル標的化のためのスキームを示す図。スフェアは、ErbB2陽性細胞によってエンドソームに特異的に取り込まれ、ここでそれらの内容物が放出される。
【図8】カベオリン含有ベシクル媒介性ドキソルビシン毒性を示す図。。明らかな用量依存性毒性が観察される。ヒト乳腺癌細胞(SK−BR−3)をドキソルビシン装填カベオリン含有ベシクルとともに、成長培地中で60時間インキュベートし、細胞増殖に対する影響をMTTアッセイによって評定した。細胞増殖における用量依存性減少が観察される。非装填カベオリン含有ベシクルと成長培地添加の間の違いは、2つのカベオリン含有ベシクル調製(TEV=アフィニティタグの除去)の間の違いと同様に、統計的に有意なものではない。空のカベオリン含有ベシクルとドキソルビシン装填カベオリン含有ベシクルの間の違いは、処理間の分散の単因子分析に基づいて有意である。データは4本の反復実験(n=4)の平均を示し、誤差は、標準偏差を示す。添加した総量は、CLV−DXRが22.8μg/mL、CLV−DXRTEVが16.2μg/mL、0.5CLV−DXRが11.4μg/mL、0.5CLV−DXRTEVが8.1μg/mLである。
【図9】同所性HER2−ヒト乳癌腫瘍(BT474由来)を保持する(メスの)ヌードマウスにおけるトラスツズマブ装填カベオリン含有ベシクルの蓄積を示す図。フルオレセイン標識したカベオリン含有ベシクルを(合成Zドメインに対するIgGの結合によって)トラスツズマブ/ヘルセプチンに共役させ、ヌードマウスに静脈注射した。腫瘍中での標的化カベオリン含有ベシクルの蓄積は切除腫瘍において後から長い時間かけておこり、注射から24時間後に始まる明確な時間依存性を示した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、広義には、カベオリンタンパク質と、脂質および/またはリン脂質とを含むカベオリン含有ベシクルに関する。典型的には、排他的にではないが、カベオリン含有ベシクルは原核細胞中で生産される。
【0011】
本発明の特に好ましい一形態は、カベオリンタンパク質と、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選ばれる少なくとも1つの脂質とを含む、単離されたカベオリン含有ベシクルに関する。
【0012】
第1の態様において、本発明は、カベオリンタンパク質と、1つ以上の脂質とを含む単離カベオリン含有ベシクルであって、この1つ以上の脂質のうちの約30%以上は、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選択される単離カベオリン含有ベシクルを提供する。
【0013】
第2の態様において、本発明は、単離カベオリン含有ベシクルを作成する方法であって、カベオリンタンパク質を1つ以上の脂質と会合させることによって単離カベオリン含有ベシクルを作成する工程を含み、1つ以上の脂質のうちの約30%以上は、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選択される方法を提供する。
【0014】
第3の態様において、本発明は、単離カベオリン含有ベシクルであって、1つ以上の脂質に会合した、原核細胞中で発現される組換え型カベオリンタンパク質を含み、組換え型カベオリンタンパク質および1つ以上の脂質は原核細胞中で会合する単離カベオリン含有ベシクルを提供する。
【0015】
第4の態様において、本発明は、単離カベオリン含有ベシクルを作成する方法であって、組換え型カベオリンタンパク質を原核細胞中で発現させる工程と、発現させた組換え型カベオリンタンパク質を原核細胞中で1つ以上の脂質と会合させる工程と、によって単離カベオリン含有ベシクルを作成する方法を提供する。
【0016】
第5の態様において、本発明は、単離カベオリン含有送達ベシクルであって、カベオリンタンパク質と、1つ以上の脂質と、ベシクルによって送達される分子と、を含む単離カベオリン含有送達ベシクルを提供する。1つ以上の脂質のうちの約30%以上は、ホスフ
ァチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選択される。
【0017】
第5の態様の一実施形態において、ベシクルによって送達される分子は、ベシクルに含まれてもよく、ベシクル膜に一体化されてもよく、および/または、周囲でベシクル膜に会合していてもよい。
【0018】
第6の態様において、本発明は、単離カベオリン含有送達ベシクルを作成する方法であって、カベオリンタンパク質を1つ以上の脂質とベシクルによって送達される分子との両方と会合させることによって単離カベオリン含有送達ベシクルを作成する工程を含み、1つ以上の脂質のうちの約30%以上は、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選択される方法を提供する。
【0019】
第6の態様の一実施形態において、カベオリンタンパク質と送達される分子とは、原核細胞内で共発現される。
第6の態様の別の実施形態において、カベオリンタンパク質を発現する原核細胞は、送達される分子に暴露される。
【0020】
第6の態様のさらに別の実施形態において、カベオリンタンパク質は原核生物において発現され、少なくとも1つの脂質と会合して単離カベオリン含有ベシクルを形成し、この単離カベオリン含有ベシクルは、ベシクルによって送達される分子と会合する。
【0021】
第7の態様において、本発明は、単離カベオリン含有送達ベシクルを作成する方法であって、カベオリンタンパク質および送達される分子を共発現させる工程と、カベオリンタンパク質を1つ以上の脂質とベシクルによって送達される前記分子とに会合させる工程と、によって単離カベオリン含有送達ベシクルを作成する方法を提供する。
【0022】
第7の態様の一実施形態では、1つ以上の脂質のうちの約30%以上がホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選択され、単離カベオリン含有送達ベシクルを作成してもよい。
【0023】
第8の態様において、本発明は、第6の態様の、または第7の態様に従って作成された単離カベオリン含有送達ベシクルを用いた分子の送達により、疾患または病気を治療する方法を提供する。
【0024】
適切には、分子は治療活性を有する。
第9の態様において、本発明は、第6の態様の、または第7の態様に従って作成された単離カベオリン含有送達ベシクルを用いた分子の送達により、分子を送達する方法を提供する。
【0025】
第10の態様において、本発明は、第6の態様の、または第7の態様に従って作成された単離カベオリン含有送達ベシクルと、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを含む組成物を提供する。
【0026】
上記のいずれかの態様の一実施形態において、カベオリンタンパク質は、原核生物において発現される組換え型カベオリンタンパク質である。
上記のいずれかの態様の一実施形態において、カベオリンタンパク質は、細菌により発現される組換え型カベオリンタンパク質である。
【0027】
上記のいずれかの態様の一実施形態において、1つ以上の脂質のうちの約50%以上は、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選択される。
上記のいずれかの態様の一実施形態において、1つ以上の脂質のうちの少なくとも一部は、原核細胞に内在するか、原核細胞によって生産される。
【0028】
上記のいずれかの態様の一実施形態において、ベシクルは、カルジオリピン(ジホスファチジルグリセロール)、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、および/またはホスファチジル−N−メチルエタノールアミンのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0029】
上記のいずれかの態様のさらに別の実施形態において、ベシクルは、1つ以上のリン糖脂質を含んでもよい。
上記のいずれかの態様の一実施形態において、ベシクルは、標的化分子をさらに含んでもよい。
【0030】
本明細書において、「含む(“comprise”、“comprises”、“comprising”)」または類似の用語は、列挙した要素を含む方法、系または装置が、それらの要素のみを含むのではなく、列挙していない他の要素も含んでよいというような、非排他的包含を意味する。
【0031】
本発明は、少なくとも部分的に、原核細胞中で発現された組換え型カベオリンタンパク質が1つ以上の原核性脂質と会合して、カベオリン含有ベシクルに会合しうるという予期せぬ発見に関連したものである。カベオリンは原核性タンパク質ではなく、したがって、原核生物において発現されたカベオリンが細菌脂質と会合してベシクルを生成できることは驚くべき結果であった。
有益なことに、カベオリン含有ベシクルは、ベシクルによって送達される分子をさらに含んでいてもよい。なかでも著しい利点は、カベオリン含有ベシクルが、標的細胞によるエンドサイトーシスおよび/またはそこへの送達の効率を高める比較的小さいサイズを有していることである。
【0032】
ここでいう「ベシクル」とは、内腔を囲むベシクル壁または膜を含むマイクロカプセルである。好ましくは、ベシクル壁は、連続しており、内腔を包んでいる。
カベオラ様ベシクルまたはカベオスフェア(caveophere)とも呼ばれるカベオリン含有ベシクルは、脂質二重層ベシクル壁内またはこれに会合したカベオリンタンパク質を含むベシクルである。カベオリンタンパク質の多くのタンパク質が、カベオリン含有ベシクル内の四次または超分子構造に凝集している。
【0033】
カベオリンタンパク質は、任意のカベオリンタンパク質であってよい。
カベオリンタンパク質は、カベオリン1、カベオリン2、カベオリン3および/またはその任意のアイソフォームであってよい。
【0034】
好ましくは、カベオリンタンパク質は、哺乳類カベオリンタンパク質である。一実施形態において、カベオリンタンパク質はヒトカベオリンタンパク質である。
好ましくは、カベオリン含有ベシクルは実質的に内在性の細菌性膜タンパク質を含まない。
【0035】
カベオリン含有ベシクルは、1つ以上の非カベオリンポリペプチドを含んでいてもよい。
本発明のカベオリン含有ベシクルのサイズは、カベオリン含有ベシクル内に含まれるカベオリンタンパク質に依存するものであってもよい。
【0036】
本発明のカベオリン含有ベシクルは、約250nm未満の直径を有していてもよい。一実施形態において、直径は約100nm未満である。別の実施形態において、直径は約4
5±30nm、約45±20nm、約45±10nm、約45±5nmまたは約45nmである。好ましくは、カベオリン含有ベシクルは、45±5nmの直径を有する。直径は、膜から膜への測定距離である。
【0037】
本発明のカベオリン含有ベシクルは、約300nm未満の流体力学半径を有していてもよい。一実施形態において、流体力学半径は約100nm未満である。別の実施形態において、流体力学半径は約55±30nm、約55±20nm、約55±10nmまたは約55±5nmである。好ましくは、カベオリン含有ベシクルは、55±5nmの流体力学半径を有する。流体力学半径は、膜およびタンパク質性コートを含んでいる。流体力学半径は、光子相関分光法(動的光散乱)または粒子サイズ測定のための任意の他の適切な方法によって決定してもよい。値は、回転半径を決定するための静的光散乱および/または小角X戦散乱によって測定された場合と同じまたは類似している。
【0038】
上述のように、この比較的小さいサイズは、エンドサイトーシスと到達の効率を高めることから、有益である。カベオリン含有ベシクルのサイズが小さいことは、それらが、通常のエンドサイトーシス過程によってエンドサイトーシスされ、細胞中で分解されうることを意味する。
【0039】
カベオリン含有ベシクルは、少なくとも1つの脂質も含んでいる。脂質は、リン脂質であってもよい。好ましいリン脂質としては、ホスファチジルグリセロール(PG)および/またはホスファチジルエタノールアミン(PE)が挙げられる。好ましくは、カベオリン含有ベシクルのリン脂質含量は、少なくとも約30%ホスファチジルグリセロール、少なくとも約30%ホスファチジルエタノールアミン、および/または少なくとも約30%のホスファチジルグリセロールとホスファチジルエタノールアミンとの組み合わせを含む。ホスファチジルグリセロール(PG)とホスファチジルエタノールアミン(PE)との両方が存在する場合には、それらは異なる量で存在していてもよい。
【0040】
カベオリン含有ベシクルの脂質含量は、少なくとも約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%ホスファチジルグリセロール(PG)および/またはホスファチジルエタノールアミン(PE)を含んでいてもよい。
【0041】
カベオリン含有ベシクルの脂質含量は、少なくとも約80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%のPEを含んでいてもよい。好ましくは、PE含量は約80%である。
【0042】
カベオリン含有ベシクルの脂質含量は、少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20%のPGを含んでいてもよい。好ましくは、PG含量は約10〜約15%である。
【0043】
カベオリン含有ベシクルは、1つ以上の他の脂質および/またはリン脂質を含んでいてもよい。1つ以上の他の脂質および/またはリン脂質は、カベオリンが発現されている宿主膜の構成脂質および/またはリン脂質であってもよい。このような脂質の非限定的な例としては、カルジオリピン、ホスファチド酸、ホスホグリセロ脂質、ホスファチジル−N−メチルエタノールアミンまたはホスファチジルイノシトールマンノシドが挙げられる。
【0044】
カベオリン含有ベシクルは、カベオリンの発現のために用いられる原核細胞の脂質組成物を含んでいてもよい。カベオリン含有ベシクルに含まれる特定の脂質および/またはリン脂質は、カベオリンの発現のために用いられる原核細胞において見られるものと同じ種であってもよい。
【0045】
カベオリン含有ベシクルは、1つ以上のリン糖脂質を含んでいてもよい。
カベオリン含有ベシクルは、内在性宿主膜と比べて長鎖脂肪酸の量が豊富である。「長鎖脂肪酸」という用語は、炭素数約16以上の長さの炭素鎖を有する脂肪酸のことをいう。
【0046】
好ましくは、長鎖脂肪酸は18個以上の炭素を有している。
カベオリン含有ベシクルは、宿主内膜と比べて、長鎖脂肪酸構成成分の存在量が2〜8倍増加していてもよい。
【0047】
少なくとも1つの脂質の1つ以上の脂質の相対存在量は、宿主と比べて増えていても減っていてもよい。
カベオリン含有ベシクルのカベオリンタンパク質は、宿主原核細胞内で発現されてもよい。
【0048】
カベオリン含有ベシクルが原核生物において発現される場合には、好ましくは少なくとも1つの脂質の少なくとも一部が、その原核細胞に内在する脂質である。
有益なことに、カベオリン含有ベシクルは、外来性脂質および/または内在性脂質を添加することなく生産することができる。カベオリン含有ベシクルは、外来性脂質を添加せずに生産してもよいが、1つ以上の外来性脂質をカベオリン含有ベシクルに添加してもよい。
【0049】
カベオリン含有ベシクルは、宿主中で発現させてもよい。
宿主中でのカベオリン含有ベシクルの発現が好ましいが、カベオリン含有ベシクルは当該技術分野において知られる方法によって合成的に作成してもよい。
【0050】
宿主は、細菌または古細菌などの原核細胞、および/またはその突然変異体または変異体であってもよい。適切な宿主としては、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌が挙げられる。
【0051】
適切なグラム陰性宿主としては、真正細菌、大腸菌およびその株、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス種、およびネズミチフス菌(Salmonella enterica var Typhimurium)が挙げられる。大腸菌の適切な種としては、様々なK−12誘導体およびB株が挙げられる。
【0052】
適切なグラム陽性宿主としては、乳酸桿菌(Lactobacillus lactis)、枯草菌(Bacillus subtilis)、乳酸球菌(Lactococcus lactis)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、ストレプトマイセス・セリカラー(S.coelicolor)、およびコリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)が挙げられる。
【0053】
適切な古細菌としては、限定はされないが、ハロフェラックス・ボルカニイ(Haloferax volcanii)が挙げられる。
好ましい実施形態において、宿主は大腸菌である。
【0054】
好ましくは、カベオリン含有ベシクルは、実質的に細菌性タンパク質を含まない。
「実質的に含まない」という表現は、カベオリン含有ベシクルのタンパク質含量のうちの5%未満、4%未満、3%未満、2%未満または1%未満が細菌由来のものであることを意味する。
【0055】
どの理論とも結合されることなく、発明者は、細菌性膜タンパク質が、カベオリン含有ベシクル膜の湾曲、またはカベオリン脂質ドメイン内に隔離された脂質と宿主膜貫通領域の間での疎水性ミスマッチによって除外されるという仮説を立てた。
【0056】
カベオリン含有ベシクルは、カベオリンタンパク質を少なくとも1つの脂質と会合させることにより作成してもよい。
カベオリンが原核細胞内で発現される場合、好ましくは、原核細胞内でカベオリンタンパク質と少なくとも1つの脂質との会合が起こる。このことは、ベシクルの古典的再構成が必要でないことから非常に有益である。
【0057】
カベオリン含有ベシクルを精製するために、細胞はリゾチーム存在下でのインキュベーション、超音波処理、フレンチプレスまたはそれらの組み合わせを含む任意の方法によって溶菌してもよい。好ましくは、細胞はリゾチームとともにインキュベートしてから、超音波処理する。
【0058】
その後、細胞デブリスは、遠心または他の適切な方法によって除去してもよい。
その後、カベオリン含有ベシクルは、任意の適切な精製方法を用いて上清より単離してもよい。適切な精製方法としては、任意のアフィニティ(親和性)精製方法、たとえば、アフィニティカラム精製が挙げられる。
【0059】
精製カベオリン含有ベシクルは、たとえば遠心などの任意の適切な手段によって濃縮してもよい。
[送達ベシクル]
送達される1種以上の分子は、カベオリン含有ベシクルの中や上に組み込むか、またはそれに会合させてもよい。送達される1種以上の分子は、ペイロードと呼ばれる場合もある。
【0060】
送達される1種以上の分子をカベオリン含有ベシクルに組み込むための多数の方法がある。1つの適切な方法は、送達される1種以上の分子とカベオリンタンパク質とを共発現させることである。
【0061】
送達される1種以上の分子は、カベオリンタンパク質との翻訳融合物として遺伝子的にコードされてもよい。
別の適切な方法は、カベオリンタンパク質を発現している細菌をベシクルによって送達される分子に暴露して、送達される分子がカベオリン含有送達ベシクルによって取り込まれるようにすることである。
【0062】
さらに別の適切な方法は、細菌内でカベオリンタンパク質を発現させて、カベオリンタンパク質を少なくとも1つの脂質に会合させて、単離カベオリン含有ベシクルを形成することである。その後、単離カベオリン含有ベシクルを、ベシクルによって送達される分子と会合させて、カベオリン含有送達ベシクルに取り込まれるようにする。
【0063】
好ましくは、カベオリン含有ベシクルは、送達される分子と会合させる前に、少なくとも部分的に精製される。
ベシクルは、ベシクルによって送達される1種以上の分子を遊離可能に担持、および/または保持していてもよい。
【0064】
ベシクルによって送達される1種以上の分子は、治療用分子、薬物、小分子、タンパク質、治療用タンパク質、膜貫通タンパク質またはペプチドであってよい。
「薬物」という用語は、局所または全身的効果を与える任意の生理的または薬理学的に活性な物質を含む。薬物は、無機または有機化合物であってよく、たとえば、ペプチド、タンパク質、核酸、小分子が挙げられる。薬物は、薬物誘導体、たとえば、塩、酸、塩基、エステルまたはアミドであってもよい。
【0065】
ベシクルによって送達される1種以上の分子はカチオン性であってもよいし、たとえば、送達される分子がタンパク質である場合、ポリアルギナーゼ配列を付加することによってカチオン性に変えられてもよい。
【0066】
ベシクルによって送達される1種以上の分子は、カベオスフェアの陥入および/または形成の間に、細菌膜の外葉に会合および/または繋留されてもよい。
送達される1種以上の分子は、任意の適切な方法によって膜と会合した状態にしてもよい。適切な方法としては、限定はされないが、糖質化、膜相互作用ポリペプチド配列、たとえば細菌MinDC末端膜標的化配列などの付加、または1つ以上のベイト配列に対する親和性が挙げられる。1つ以上のベイト配列は、カベオリンタンパク質との融合ペプチドとして含有させてもよい。適切なベイトタンパク質の例は、ユビキチンドメインのN末端側半分がカベオリンタンパク質に融合され、ユビキチンドメインのC末端側半分が送達される1つ以上の分子に融合された分割ユビキチンドメインである。
【0067】
ベシクルによって送達される分子は、ベシクル内にあってもよいし、ベシクルに含有されるか、および/または内腔に保持されていてもよい。
ベシクルによって送達される分子は、ベシクル膜に一体化されてもよい。ベシクル膜に一体化されてもよい分子の例は、膜貫通タンパク質または膜貫通ペプチドである。
【0068】
送達される分子は、膜に会合されていてもよい。膜との会合は、周縁会合であってよく、たとえば、ベシクルによって送達される分子は、ベシクル膜上に被覆されていてもよい。
【0069】
カベオリン含有ベシクルは、分子の送達のためのビークルとして機能してもよい。このため、送達される分子は、ペイロードと呼ばれることもある。
送達される分子は、非荷電分子、分子複合体、および/または薬学的に許容される塩などの任意の形態であってよい。
【0070】
[カベオリン含有送達ベシクルの標的化]
カベオリン含有送達ベシクルは、標的化分子を含んでいてもよい。標的化分子は、標的部位へのカベオリン含有ベシクルの送達を引き起こす、可能にする、易化する、支援する、または可能にする任意の分子または分子の組み合わせである。
【0071】
標的化分子は、カベオリンタンパク質および/または少なくとも1つの脂質との会合を可能にさせることにより、カベオリン含有送達ベシクルに組み込まれてもよい。
標的化分子は、カベオリン含有送達を特定の細胞、組織および/または臓器に標的化することのできる抗体または任意の他の同種リガンドおよび/または受容体である。
【0072】
標的とされる特定の細胞は、腫瘍細胞または寄生虫などの任意の特定の型の細胞であってよい。
好ましくは、標的化分子は抗体である。
【0073】
抗体は、たとえば、動物を関心タンパク質またはその断片で免疫することにより得られるポリクローナルまたはモノクローナルであってよい。抗体は、当該技術分野においてよく理解されるように、組み換えによって生産されてもよい。
【0074】
抗体断片、とりわけFab、F(ab’)2、Fv、scFV断片などの抗原結合性抗体断片や、二重特異性抗体も想定される。
標的分子は、カベオリン含有送達ベシクルの単一成分に対して特異的な1つの領域と、標的の単一成分に対して特異的な別の領域とを有する二特異性リガンドであってよい。
【0075】
二特異性リガンドの例としては、二特異性抗体および/または二特異性抗体複合体が挙げられる。
当業者であれば、ヒトにおける治療的用途に用いられる抗体は、これらの抗体をヒトにおける使用に適したようにする特定の性質を有していなければならないことを理解しているであろう。一般に、非ヒト起源の治療用抗体は、抗体が典型的には90%を超えるヒト配列と非ヒト抗体の相補的決定領域を含むように「ヒト化」される。ヒト化抗体は、異物免疫反応を誘発する可能性を減少させることから、医療用途に対しては特に有益である。
【0076】
当該技術分野においてよく理解されているように、抗体は、色原体、触媒、酵素、フルオロフォア、化学発光分子、ビオチンおよび放射性同位体からなる群より選択される標識と共役させてもよい。
【0077】
本発明において有用な適切な酵素標識には、アルカリホスファターゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、リゾチーム、マレイン酸デヒドロゲナーゼなどが挙げられる。酵素標識は、単独で用いてもよいし、溶液中で別の酵素と組み合わせて用いてもよい。
【0078】
フルオロフォアは、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、アロフィコシアニン(APC)、テキサスレッド(TR)、Cy5またはR−フィコエリスリン(RPE)を含む群から選択されてもよい。有用なフルオロフォアの例は、たとえば、参照により本願に組み込む米国特許第4,520,110号および米国特許第4,542,104号に見られる。
【0079】
ある用途において、標的化分子は、カベオリンタンパク質との翻訳融合物として遺伝子的にコードされる。たとえば、単鎖可変ドメイン抗体(scFv)、ラクダナノボディ、レクチンおよび/または別の同種リガンドに対するコーディング配列が挙げられる。
【0080】
さらなる用途において、抗体を介した標的化は、抗体結合性ドメインをカベオリンタンパク質との翻訳融合物として遺伝子的にコードすることによって達成される。このようなメディエータの例としては、微生物IgG結合性タンパク質、たとえば黄色ブドウ球菌プロテインAまたは連鎖球菌プロテインGが挙げられる。
【0081】
ある用途において、2つ以上の遺伝子的にコードされた標的化配列が同時に発現される。この2つ以上の遺伝子的にコードされた標的化配列は、二または多シストロン性メッセージとして発現されてもよい。この例としては、カベオリンタンパク質を有した異なる翻訳融合物を1つのニシストロン性転写物中で結合すること、たとえば、IgG結合性ドメインとカベオリンとの翻訳融合物を結合した、単鎖抗体とカベオリンとの翻訳融合物であろう。この特定の用途では、適切な抗体と結合されると、遺伝子的にコードされた二特異性カベオリン含有ベシクルを与えることになる。この特定の用途は、標的化分子に限定されることなく、カベオリンとの任意の適切な翻訳融合物に適用できると考えられる。これに対する例としては、限定はされないが、検出のための蛍光タンパク質ドメインおよびタンパク質転座ドメインまたは標的となる膜と相互作用する孔形成ドメインが挙げられる。この特定の用途は、多機能カベオリン含有ベシクルを与える。
【0082】
[治療方法]
治療方法および薬学的組成物は、ヒトおよびヒト以外の哺乳動物、限定はされないが、家畜(たとえば、ウマ、ウシおよびヒツジ)、ペット(たとえば、イヌおよびネコ)、実験動物(たとえば、マウス、ラットおよびモルモット)および演技動物(たとえば、競走馬、グレーハウンド、およびラクダ)などを含む哺乳動物の予防的または治療的処置に適用可能であることがわかるであろう。
【0083】
好ましくは、薬学的組成物は、投与に適した薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とともに調合される。
「薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤」とは、全身投与において安全に使用できる固体または液体の充填剤、希釈剤または封入物質を意味する。個々の投与経路に応じて、当該技術分野において周知の様々な担体を使用してもよい。これらの担体は、糖、デンプン、セルロースおよびその誘導体、麦芽、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、植物油、合成油、ポリオール、アルギニン酸、リン酸緩衝溶液、乳化剤、等張生理食塩水、および、塩酸塩、臭化物および硫酸塩を含む鉱物酸塩などの塩、酢酸塩、プロピオン酸塩およびマロン酸塩などの有機酸、およびピロゲンフリー水を含む群より選択してもよい。
【0084】
薬学的に許容可能な担体、希釈剤および賦形剤を記載した有用な参照文献は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.米国ニュージャージー州、1991年)である。
【0085】
患者に本発明の組成物を与えるために、任意の安全な投与経路を用いることができる。たとえば、経口、直腸、非経口、舌下、口腔内、静脈内、動脈内、筋肉内、皮膚内、皮下、吸入、眼内、腹腔内、脳室内および経皮投与を採用してもよい。
【0086】
投与の様式および部位は、標的細胞の位置に応じて選択してもよい。たとえば、標的細胞が体内にある場合には、静脈内投与が好ましいかもしれない。
投与形態には、錠剤、分散液、懸濁液、注射液、溶液、シロップ、トローチ、カプセル、座薬、アエロゾル、経皮パッチなどが含まれる。これらの投与形態は、当該目的のために特別に設計された注入または移植徐放装置、またはこの様式において付加的に作用するように修飾された移植片の他の形態を含んでいてもよい。治療剤の徐放は、これを、アクリル樹脂、ワックス、高級脂肪族アルコール、ポリ乳酸およびポリグリコール酸およびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのある種のセルロース誘導体を含む疎水性ポリマーで被覆することによって行うことができる。さらに、徐放は他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを用いることによって行ってもよい。
【0087】
経口または非経口投与に適した本発明の薬学的組成物は、それぞれ所定量の本発明の1つ以上の治療剤を、粉末または顆粒として、あるいは水性液体、非水性液体、水中油エマルションまたは油中水液体エマルション中の溶液または懸濁液として含む、別個の単位、たとえば、カプセル、サシェまたは錠剤として提供されてもよい。このような組成物は、任意の薬学の方法によって調製してもよいが、すべての方法は、上述のような1つ以上の薬剤を1つ以上の必須成分を構成する担体と会合させる工程を含む。一般に、組成物は、本発明の薬剤を液体担体または細かく分割された固体担体、あるいはその両方と均一かつ密接に混合し、その後、必要であれば製品を所望の体裁に整形することによって調製される。
【0088】
上記組成物は、投与処方に沿うように、かつ薬学的に有効な量で投与してもよい。本発明の内容において、患者に投与される用量は、適当な時間にわたって患者において有益な反応を発効するのに十分なものとすべきである。投与される薬剤の量は、施術者の判断に応じた因子である、年齢、性別、体重およびその一般的健康状態を含めて、治療すべき対
象に依存するものであってよい。
【0089】
本発明は、治療用途に限られない。たとえば、いくつかの実施形態において、本発明は、カベオリン含有送達ベシクルを研究道具として使用するための組成物および方法を提供する。
【0090】
たとえば、カベオリン含有送達ベシクルは、分子を関心領域に送達するために用いてもよい。送達される分子は、単数および/または複数の試薬または非反応性化合物、たとえば色素または他の可視化剤であってもよい。関心領域は、特定の細胞、細胞型、組織または臓器であってもよい。
【0091】
本発明が容易に理解され、実用的効果をもたらすために、以下の非限定的な例について述べる。
[実施例]
[カベオリン含有ベシクルの製造]
T7プロモータとカベオリンcDNA(およびT7終止配列)とを含む標準的な大腸菌プラスミドの発現を駆動するために、T7RNAポリメラーゼを用いた。実験は哺乳動物カベオリン−1、−2および−3(ヒト、イヌ、およびマウスコーティング配列)、ならびに魚類カベオリン−1を用いて行った。
【0092】
大腸菌BL21(ラムダDE3)またはK−12誘導体培養を、37℃において中間対数期まで増殖させて、誘導剤(IPTGまたはラクトース)を添加後に25℃にして、振盪機上で20時間インキュベートした。T7RNAポリメラーゼは、IPTG(イソプロピル−チオ−ベータ−ガラクトシダーゼ)またはラクトースのいずれかを加えることによって、富栄養培地、すなわちLBブロスまたはテリフィックブロスにおいて、発現株の対数期培養(595nmにおけるOD<1.0)まで誘導した。
【0093】
カベオリンタンパク質の様々な誘導タンパク質(たとえば、N/C末端ヘキサヒスチジン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)およびMBP)および対応する対照(パートナーを発現)も発現させて、カベオリンタンパク質が、内膜からの小水疱形成を誘導するのに必要かつ十分であることを実証した。これらの親和性の高いタグに加えて、場合によっては、ヘキサヒスチジン配列などのより小さい配列をコーティング配列に加えた。
【0094】
その後、細胞を切片化した後にカベオリン含有ベシクル(in vivo)の形成を電子顕微鏡で観察した(代表的な例を図1に示す)。
発現されたカベオリンは、真正細菌大腸菌宿主において、カベオリン含有ベシクルを生成した。これらのベシクルは、細胞内部に充満していた(図2)。
【0095】
カベオリン含有ベシクルは均質に精製することができ、それらの構造は、ネガティブ染色および、急速凍結後の凍結水和標本において分析されている(図6)。カベオリン含有ベシクルは、球状または実質的に球状であり、動的光散乱によって測定される流体力学半径が約55±5nmであり、均一なサイズ分布を有し、顕著な明確に規定されたコートを有する。
【0096】
経時的免疫電子顕微鏡による研究から、カベオリン含有ベシクルは、細胞質膜におけるカベオリンリッチドメインとして形をなし、その後細胞に入り込む(pinch into)ことが示唆される(図2)。このモデルと矛盾することなく、カベオリン誘導時に培地に添加された色素は、カベオリン含有ベシクル中に組み込まれる(図4)。
【0097】
カベオリン含有ベシクルの形成は、カベオリンタンパク質のもつ、真核細菌膜におけるカベオラの基礎的な産生能を反映したものである。重要な発見としては以下のものが挙げられる。
1)動物細胞におけるように、カベオリンタンパク質はオリゴマー化し、異種宿主の細胞膜中に一体化する。
2)カベオリンオリゴマーを形成する能力に欠陥があり、哺乳動物細胞においてカベオラを産生しない変異体は、大腸菌中でカベオリン含有ベシクルを産生しない。
3)経時的実験から、カベオリンリッチドメインは、膜から外れてカベオリン含有ベシクルとして細胞質中に放出される前に、細胞膜において形成されることがわかる。
4)細胞表面のカベオラ中の「成熟した」カベオリンを認識する配座抗体はカベオリン含有ベシクル中のカベオリンは認識するが、ゴルジ複合体内のカベオリンの「非成熟」型を認識する抗体にはこれができない。
【0098】
大腸菌以外の原核細胞発現系におけるカベオリン/カベオリン含有ベシクルの発現
我々は、異種膜タンパク質の原核細胞での発現の印象的な研究を代表する、工業的かつバイオテクノロジー的に関連する原核細胞発現系の印象的なアレイを組み立てた。宿主へのクローニングは、表1に示した系に対して行われたか、行う。
【0099】
[カベオリン含有ベシクルの単離と精製]
カベオリン含有ベシクルは、細胞膜からピンチオフして、細胞質内に蓄積する。カベオリン含有ベシクルを精製するために、リゾチームインキュベーション後に超音波バースト(手持ち式実験室超音波破砕機で)により細胞を溶菌した。溶解物から細胞デブリスを遠心分離により沈殿させ、上清はアフィニティマトリックスにアプライした(融合相手に応じて、Ni−アガロース、グルタチオン−アガロース、またはマルトシル−アガロース)。溶解物を、アフィニティマトリックスを有したカラムに通し、続いて緩衝生理食塩水中でよく洗浄した。カベオリン含有ベシクルを、マトリックスへの結合のための競争剤、すなわちイミダゾール、グルタチオンまたはマルトースを含む生理食塩水バッファ中に溶出した。その後、カベオリン含有ベシクルを、超遠心により所望の程度まで濃縮した。
【0100】
たとえば、マルトース結合タンパク質(MBP)カベオリン融合タンパク質によって産生されるカベオリン含有ベシクルは、超音波処理または他の技術によって大腸菌膜を破壊した後にマルトースカラム上で均質に精製することができる。精製カベオリン含有ベシクルの電子顕微鏡分析から、平均径が約45nmの均一なベシクルの集団が認められた(図6)。
【0101】
[カベオリン含有ベシクルの分子キャラクタリゼーション]
上述の調製物を用いて、タンパク質組成、タンパク質均一性、脂質組成を含む因子については生化学的手段によって、また、酢酸ウラニルで固定/染色されるか、ガラス状状態の「天然の」のいずれかについては電子顕微鏡によって、in vitroにおけるカベオリン含有ベシクルのキャラクタライズを行った。
【0102】
形成
カベオリン含有ベシクルの形成のためのモデルを図3に示す。マルトース結合タンパク質(MBP)カベオリン融合タンパク質の誘導は、大腸菌の細胞質膜からのカベオリン含有ベシクルの迅速な形成をもたらす。誘導されたベシクルは最終的には真正細菌大腸菌宿主を全体的に満たす(図1A〜C)。経時的免疫電子顕微鏡の研究から、カベオリン含有ベシクルが、細胞質膜におけるカベオリンリッチドメインとして形をなし、その後細胞に食い込む(pinch into)ことが示された(図2)。このモデルと矛盾することなく、カベオリン誘導時に培地に添加された蛍光色素は、カベオリン含有ベシクル中に組み込まれる(図3および図4)。対照実験からは、これが膜の漏れによるものではなく、
膜から形成するベシクルへの色素の組み込みによるものであることが示されている。様々な膜不浸透性小分子を組み込んだカベオリン含有ベシクルが精製されており、その内容物と漏れについては長い間にわたり調べられている。
【0103】
タンパク質分析
標準的なタンパク質分析方法では、精製カベオリン含有ベシクル調製物中にカベオリン融合タンパク質しかなく、他の大腸菌タンパク質はないことがわかる。すなわち、カベオリン含有ベシクルは、細菌性タンパク質からは遊離または実質的に遊離している。図5aに示すように、全タンパク質着色において、組換え型タンパク質だけが検出された。宿主タンパク質は一切検出されなかった。図5aの右側レーンは、操作された部位を介した融合タンパク質の開裂を示す。
【0104】
脂質分析
特定の脂質種はカベオリン発現によって誘導され、図5bに示す薄層クロマトグラフィー、および表2にまとめる質量分析によって判定されるように、カベオリン含有ベシクルに一体化される。主要なリン脂質は、ホスファチジルエタノールアミン(PE)であり、全脂質のおよそ90%以上を占める。少ない脂質成分としては、ホスファチジルグリセロール(PG)およびカルジオリピンが挙げられる。
【0105】
この特定の脂質組成は、大腸菌または他の宿主において生産されるカベオリン含有ベシクルに特徴的なものであってもよく、その変化はカベオリン発現によって誘導される。
質量分析によるPEプロファイリングから、対照としての融合相手のみを発現している細胞の脂質組成に比べて、カベオリン含有ベシクルでは長鎖脂肪酸が富化されていることが分かった。対照を発現している細胞は、より高いC16アシル鎖の相対含量を有する。PEにおける長鎖脂肪酸の増加は、アフィニティ精製したカベオリン含有ベシクルにおいて、「全膜」脂質抽出物においても同様に(そしてより高い濃度で)検出可能である。カベオリン分子に対する脂質の化学量論は、約70:1であると推定される。
【0106】
カベオリン含有ベシクルの、構造、化学量論、および組成のさらなるキャラクタリゼーション〜カベオリン含有ベシクルの脂質プロファイリング
カベオリン含有ベシクル膜は、本質的に、2つのリン脂質、ホスファチジルエタノールアミン(PE,約90%)およびホスファチジルグリセロール(PG,約10%)からなる。微量のカルジオリピンが存在するが、質量分析によっては容易に検出することができず、また微量のホスファチジン酸(PA)が存在する。脂肪酸組成は、本質的に3つの脂肪酸、すなわちパルミチン酸(C16:0)と、2つのシス−不飽和脂肪酸、パルミトレイン酸(C16:1シス−Δ)およびバクセン酸(C18:1シス−Δ11)からなる。
【0107】
表2に示すように、カベオリン含有ベシクルにおいて短鎖脂肪酸を有するリン脂質の頻度は少ないが(実際にカベオリン含有ベシクルを発現している全培養、N.B.は、カベオリン含有ベシクル膜の合計を示す)、長い鎖長を有する脂肪酸は著しく富化されている。驚いたことに、ホスファチジン酸がカベオリン含有ベシクル膜において著しく減少している。さらに驚くべきことは、大腸菌膜において最も豊富に存在するリン脂質であるジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(PEC32.0)は、対照膜に比べて、カベオリン含有ベシクルにおいて減少している。
【0108】
カベオリン含有ベシクルの脂質含量は、宿主のものと類似しているか、影響を受けることもある。すなわち、カベオリン含有ベシクルの成分脂質は、宿主中に含まれる脂質およびリン脂質と同じ種であってもよい。カベオリン含有ベシクルにおける成分脂質の相対量は、宿主と比べて、同一、類似または異なっていてもよい。
【0109】
アフィニティ精製
アフィニティ精製したカベオリン含有ベシクルの代表的な例を図6に示したTEM中に示す。図6a)は、酢酸ウラニル(スケールバーは200nmを表す)によってネガティブ染色されたカベオリン含有ベシクルを示し、図6b)は、ガラス状「天然」状態(染色されていない)における、クライオ電子顕微鏡による個々のカベオリン含有ベシクルを示す。
【0110】
電子顕微鏡分析
カベオリン含有ベシクルは、急速凍結し、300kVクライオTEMにおいて、ガラス質氷中、高解像度EMによって分析した。クライオEM断層撮影実験は、天然のガラス状標本中に見られるような、カベオリン含有ベシクルの表面超構造に対する情報を与える、優れた構造的保存性(図1E)を示した。MBPタグの特徴的形状および単離されたカベオリン含有ベシクルのコート周りに見える電子密度に基づいて、1つのカベオリン含有ベシクル内には約160のカベオリン分子が存在すると推定された。
【0111】
カベオリン含有ベシクルの構造およびカベオリンの化学量論
ガラス状カベオリン含有ベシクルのクライオ電子顕微鏡再構築(フーリエ空間重み付け逆投影)により、我々は、カベオリン含有ベシクルコート内のカベオリン分子の組織中への知見を得ることができた。カベオリン「ネイル」上への大きな親水性「ヘッド」であるマルトース結合タンパク質(MBP)の存在は、スフェア表面上の個々の分子の同定を非常に容易にする。
【0112】
注目すべきは、露出した膜に驚くほど大きな斑点(patches)が見られ、これは、我々の以前の生化学的データから予想されたことであった。これは、カベオリン分子、たとえば、GFPまたは単鎖抗体(scFv)の末端に追加の融合相手を(暗に)収納できるようにするものである。これらの実験は、MBP−カベオリン−GFPカベオリン含有ベシクルおよびscFvドメインを用いて行った。
【0113】
[カベオリン含有ベシクル表面の操作]
ここに示す結果は、機能的なカベオリン含有ベシクル産生を生み出す、様々なポリペプチド配列とのカベオリンの翻訳融合物をアミノ末端および/またはカルボキシ末端のいずれにおいても作成できるということを実証するものである。ポリペプチド/タンパク質の下記のリストが明確に示すように、これらのポリペプチド配列は、ウィルス、原核細胞または真核細胞を起源とすることができる。
【0114】
様々なポリペプチド配列がカベオリンコーディング配列に翻訳的に融合され、上述と同じ特性を有した完全に機能的なカベオリン含有ベシクルが得られている。うまく融合されたポリペプチド配列としては、マルトース結合タンパク質、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、ヘキサヒスチジン、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)プロテインAのIgG結合ドメイン、単鎖抗体可変ドメイン(scFv、たとえば、c−erb−B2(Her2、EGF受容体2))またはヒト癌胎児性抗原(CEA、CD66e)に対するもの)、インフルエンザ血球凝集素HA2、ヒトCD8または緑色蛍光タンパク質(GFP)などの様々なアフィニティタグが挙げられる。
【0115】
これらのグラフトされたポリペプチド配列は、カベオリン含有ベシクルの腫瘍細胞中への内在化(たとえば、GFP)を可視化するか、抗体を細胞に特異的に標的化するための抗体の付着を媒介する(たとえば、本明細書中に記載するようにHER2を発現している腫瘍細胞)ために用いられてきた。重要なことは、このことが、カベオリン含有ベシクルを、事実上任意の適切な抗体との共役を可能にする標的配列またはポリペプチドに、思い
通りに適応可能な遺伝子的にコードされたベシクルを産生するように、操作できることを実証している。このユニークな特徴は、近い将来、たとえば、多特異性および/または機能性を有するカベオリン含有ベシクルが組み合わせられる場合などに、個人用医薬品の開発に大きく貢献するであろう。インフルエンザ血球凝集素融合ドメインのグラフト化の成功により、カベオリン含有ベシクルは、適切な環境下(たとえば、受容体によって媒介されるエンドサイトーシスに続くHA2に対する後期エンドソームpH(pH5.5))で、潜在的に融合性の実体を形成するように適応させることが可能であることが実証される。これは、カーゴを細胞に送達する際には非常に重要である。ヒトCD8(細胞外ドメインおよび膜貫通セグメント)のカベオリン上への移動は、膜貫通ドメインをカベオリン足場上にグラフト化できることを実証するものであり、さらに、スフェアの内部にポリペプチドが含まれてもよいことを暗示する。好ましい用途は、治療用ポリペプチドをカベオリン含有ベシクル中に含めることであり、たとえば、腫瘍への標的化送達のための毒素、または嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)の輸送において欠損する上皮細胞中への送達のためのコレクタ(corrector)ペプチドである。
【0116】
[輸送ベシクルとしてのカベオリン含有ベシクルの製造]
分子をカベオリン含有ベシクルに組み込むために、蛍光色素、5−(6−)カルボキシフルオレセインを、タンパク質誘導の約1時間前、すなわち初期対数期に加え、上述のように進行させた。
【0117】
図3に示す例において、カベオリン含有輸送ベシクルを生産するために、5−(6−)カルボキシフルオレセインをカベオリン含有ベシクル中に組み込んだ。細菌を5−(6−)カルボキシフルオレセインと同時培養し、よく洗浄した。図3c)は、カベオリンタンパク質を発現している細胞と、MBPを発現している対照細胞のミクログラフを示す(蛍光なし)。実質的には、MBP発現培地からはすべての蛍光を除去し、カベオリン含有ベシクル内においては保護したままにする。
【0118】
タンパク質発現後、生理食塩水バッファ中への再懸濁および再沈殿により細胞をよく洗浄した。カベオリンタンパク質を発現している細胞は、強力な蛍光を保持していたが、MBPを発現している対照細胞は、実質的に何も保持していない。
【0119】
また、上述のような方法によって、他の蛍光色素を含むカベオリン含有輸送ベシクルも洗浄し、精製した。これらの溶液は結果的に強い蛍光を示した。これらの精製カベオリン含有ベシクルを、100,000gRCFで1時間沈殿させたところ、蛍光は膜カベオリン含有ベシクル内に含まれ、上清には殆どまたは全く蛍光が残っていないことが明確に分かる。
【0120】
[カベオリン含有ベシクルの標的化および取込み]
ハーセプチンによりErbB2陽性SKBr細胞およびErbB2陽性大腸癌細胞に特異的に標的化したプロテインAのIgG結合ドメインを有するカベオリン融合タンパク質
カベオリン融合タンパク質においてコードされる情報が、ヘパリンなどの加えられる抗体を用いたカベオリン含有ベシクルの標的化を可能にするという、標的化スキームを開発した(図7におけるスキームを参照)。MBP−プロテインA−カベオリン−GFPの融合タンパク質を含むヘパリンでコートされたカベオリン含有ベシクルを用いて、ErbB2陽性細胞陽性細胞の初期エンドソームへのカベオリン含有ベシクルの特異的取込みが示されている。ハーセプチンを省略した場合には、同じカベオリン含有ベシクルの取込みは全く観察されなかった。これらの結果は、この方法のinvivoでの使用を確証するものである。
【0121】
カベオリンコーディング配列を、黄色ブドウ球菌のプロテインAのN末端合成IgG結
合ドメイン(Zドメイン)およびC末端強化GFPに適応させた。カベオリン含有ベシクルは、MBPアフィニティクロマトグラフィによって上述のように発現および精製したところ、高い蛍光性を有するカベオリン含有ベシクルが得られた。次に、これらのカベオリン含有ベシクルを、HER2に対するヒト化モノクローナル抗体(EGF受容体2)であるトラスツズマブ(Herceptin(商標名))と混合した。乳腺癌(SK−BR−3)またはヒト結腸直腸腺癌(LoVo&SW−480)を発現しているHER2を用いて、トラスツズマブによって媒介される標的化の特異性および適応されたカベオリン含有ベシクルの取込みを調べた。SK−BR−3細胞はDMEM(20%ウシ胎児血清、1%L−グルタミンを添加)中で、LoVo/SW−480はF−12(10%ウシ胎児血清、1%L−グルタミンを添加)中で成長させた。細胞は、カベオリン含有ベシクル調製物とのインキュベーションの前にガラスカバー片上で成長させた。カベオリン含有ベシクル(mLあたり10〜30μg)をCU2独立培地中で標的細胞とインキュベーションする前に、トラスツズマブ(mLあたり10μg)と相互作用させる。細胞を成長培地から除去し、CO独立培地中で冷やした。細胞にカベオリン含有ベシクル−トラスツズマブ複合体を加え、冷やしながら20分間インキュベートした。インキュベーションに続いて、CO独立培地で細胞を洗浄し、標準成長培地中で、ウォームアップさせ、表面結合カーゴ、すなわち、トラスツズマブによってEGFR2/HER2に結合されたカベオリン含有ベシクルを内在化させた。次に細胞を0.5Mグリシン(pH3.5)で5分間、酸ストリップ処理して、内在化されていない表面結合スフェアを除去した。インキュベーションを2時間まで続け、GFP蛍光によってカベオリン含有ベシクルの内在化を分析した。細胞を様々な間隔で取り出し、パラホルムアルデヒドで固定してから、顕微鏡分析を行った。カベオリン含有ベシクル+トラスツズマブとともにインキュベートした癌細胞は、細胞質内に強い点状の蛍光を示した。これらの標的化および取込み実験の結果は、i)カベオリン含有ベシクルが、トラスツズマブによって細胞表面に特異的に結合していること(抗体を含まない対照スフェアは、細胞に結合しない)、ii)内在化は、表面からのEGFR2内在化によって媒介されること(酸ストリップ処理した細胞が表面標識を示さない)を明確に実証するものである。エンドソームマーカー用のイムノ標識、たとえばEEA1を利用したさらなる分析により、EEA1による広範囲の共局在化が示された。このことは、取り込まれたスフェアの大多数が、初期エンドソーム区画に輸送されていることを実証するものである。小さな画分が、細胞周辺のEEA陰性区画内に残っている。
【0122】
[カベオリン含有ベシクルのローディング]
カベオリン含有ベシクルに治療薬を装填するために2つの異なる方法をうまく最適化した。
大腸菌によるカベオリン含有ベシクル形成中の色素の取込み
蛍光色素および化学治療薬(フルオロウラシル)を装填する実験から、外部培地からの物質を、カベオリン含有ベシクルが膜を形成する際にベシクル中に組み込み可能であることが示された。このことは、ペプチドおよび小さなタンパク質を治療的送達およびワクチン開発のためにカベオリン含有ベシクルに導入するという可能性を開くものである。
【0123】
(上述のように)カベオリンに対する発現プラスミドを有した大腸菌細胞を、少なくとも2回の細胞分裂を経た中間対数増殖期まで増殖させてから、カベオリンタンパク質を誘導し、蛍光色素を増殖培地中に直接加えた。カベオリンタンパク質の発現を上述のように行った。カベオリンタンパク質の誘導後、細胞を緩衝生理食塩水でよく洗浄して、ペリプラスム空間内の色素を含む、残った組み込まれていない色素を除去した。図3は、小分子がどのようにして、カベオリン含有ベシクルに内在化されると考えられるかのモデルを示したものである。アフィニティタグのみを発現する対照細胞は、図3および4に示すように有意量の蛍光色素を組み込むことはない。取込みに成功した小分子としては、5−(6−)カルボキシフルオレセイン、テトラブロモフルオレセイン、5−(ジメチルアミノ)ナフタレン−1−スルホン酸、5−フルオロウラシルが挙げられる。さらに、大腸菌脂質
に対する親和性を有した蛍光色素(たとえば、10−ノニルアクリジンオレンジブロミド、10−NAO)は、カベオリン含有ベシクルが細胞質膜からピンチオフする際にこれに組み込むことができる。アフィニティ精製された蛍光カベオリン含有ベシクルの沈殿(100000gで1時間)による分析から、この手順によって生産されるカベオリン含有ベシクルは、非常に安定で、緩衝生理食塩水溶媒中で4℃で長期間保存した後でも漏洩性は殆どなかった。
【0124】
[リモートローディングを用いた薬物の取込み]
カベオリン含有ベシクルに大腸菌におけるカベオリン含有ベシクル形成中にリン酸アンモニウムを装填し、続いて化学治療薬(ドキソルブシン)を装填することに成功した。これらの実験は、(イムノ)リポソーム(31)に対して最適化された方法の適用を含む、多数の方法を、薬物をin vitroでカベオリン含有ベシクルに導入するために使用できることを示した。このことは、薬物送達に対する方法の一般的有用性を強調するものである。
【0125】
カベオリン含有ベシクルのリモートローディングと、薬物を装填したカベオリン含有ベシクルの、癌細胞に対する細胞毒性
抗HER2単鎖抗体で操作されたカベオリン含有ベシクルを、300mM二塩基性リン酸アンモニウム中で増殖中の細胞から生産させた。標準的な手順による精製の後、これらのカベオリン含有ベシクルには、Fritzeら(31)によって開発された方法に従って、140mM塩化ナトリウムおよび10mMHEPES、pH7.4中、8℃一晩でドキソルビシンが非常に効果的に装填された。遊離のドキソルビシンを徹底的な超遠心により除去した。これにより、(イムノ)リポソームまたは他のベシクルに対して最適化された方法は、カベオリン含有ベシクル系にそのまま適用可能であることが実証される。DMEM(20%ウシ胎仔血清、1%L−グルタミンを添加)中で増殖させたヒト乳腺癌細胞(SK−BR−3)を図10に示すような様々な濃度のドキソルビシンを装填したカベオリン含有ベシクルとともにインキュベートした。次に細胞毒効果をMTT増殖アッセイによって検定した。細胞促成には明確な用量依存性が認められた。非装填カベオリン含有ベシクルは、SK−BR−3の増殖に対して効果を有しなかった。最も高い濃度(22.8μg/mL増殖培地)において、実質的にすべての細胞が48時間以内に死んだ。強いドキソルビシン蛍光が、3時間のインキュベート後にすでに細胞の核内に容易に見られるケースもあった。
【0126】
[in vivo腫瘍部位における標的化カベオリン含有ベシクルの蓄積]
カベオリン含有ベシクルの薬物送達系としての有用性を立証するために、同所性腫瘍部位におけるin vivo蓄積を調べた。操作されたZ−ドメイン(プロテインAの合成IgG結合ドメイン)を有するカベオリン含有ベシクルを、カルボキシフルオレセインで共有結合的に標識した。アミン共役に続いて、カベオリン含有ベシクルをしっかりと透析した後、洗浄し、超遠心により濃縮した。その後、蛍光性カベオリン含有ベシクルを、生理食塩水(0.9%w/v塩化ナトリウム)中、トラスツズマブと複合体を形成させた。
【0127】
蛍光タグを付けたカベオリン含有ベシクルの局在化をBT474(HER2+)腫瘍を保持したメスのC.B−17−Igh−1b−Prkdc重症複合免疫不全(SCID)マウスにおいて調べた。皮下接種したBT474(ヒト乳癌、HER2過剰発現)細胞からうまく腫瘍を発症した12匹のメスSCIDマウスを実験のために選んだ。マウスに一意的に識別されるマイクロチップを埋め込み、実験の0日目における腫瘍サイズに基づいて、それぞれ3匹ずつの3つの治療グループに無作為に分けた。0日目における腫瘍体積の範囲は、33.7〜122.5mmであった。
【0128】
マウスを4つのグループのいずれか1つに割り当てた。グループ1は3時間時点で回収
、グループ2は12時間時点で回収、グループ3は24時間時点で回収、グループ4は48時間時点で回収した。
【0129】
すべてのマウスは、フルオレセイン標識されたカベオリン含有ベシクルの、静脈(i.v.)尾静脈注射による単回投与(のみ)を受けた。各時点の腫瘍において、肝臓、腎臓、肺、心臓および脾臓を回収し、次の凍結切片法のためにOCT中でスナップ凍結した。
【0130】
図9に示すように、カベオリン含有ベシクル注射から48時間後の腫瘍に明らかな蛍光が観察された。臓器の撮影の結果を表4にまとめる。評価の過程にわたってすべての臓器において蛍光が観察されたが、これは、カベオリン含有ベシクルが体の脈管系を介して移動することに矛盾しない。
【0131】
[カベオリン含有ベシクルの安定性]
カベオリン含有ベシクルの長期安定性は、生理食塩水溶液中、4℃での長期保存について調べた。カベオリン含有ベシクルの構造の完全性は、1年を超える期間に対しては影響しないことがわかった。さらに、カベオリン含有ベシクルは、封入された膜不透過性分子について、漏れがないことが分かった。カベオリン含有ベシクルは、生理食塩水、ウシ胎仔血清またはウマ血清中で、37℃でのインキュベーションによるアッセイ(120時間)の間中、完全に安定であることがわかった。カベオリン含有種のベシクル性およびサイズ分布のいずれも、インキュベーションによる影響を受けなかった。
【0132】
[他の用途]
カベオリン含有ベシクルは、培養細胞およびin vivoの両方において、多くの他の用途の可能性を有している。カベオリン含有ベシクルは、細菌宿主の細胞膜からそれが形成する際に、培地に含まれる膜不透過性物質(細胞質膜に比べて高い透過性を示す外細菌膜)を組み込むことができる。カベオリンが細菌の細胞質膜におけるカベオリン含有ベシクル形成を誘導する独特の経路は、ペリプラズム空間を標的とした共発現されるタンパク質を潜在的に組み込むことができる。カベオリン含有ベシクルの形成時に薬物を導入できることは、標的化可能な遺伝子的にコードされたベシクルを生み出すための途方もない可能性を与えるものである。形成時にカベオリン含有ベシクル内でタンパク質を発現させることができることは、抗原をベシクル封入形態で送達して特異的免疫反応を発生させるワクチン開発に対する潜在性、およびin vivoにおけるペプチドおよびタンパク質治療剤の送達に対する潜在性を有するものである(30)。
【0133】
系の単純性は、治療のコストを下げるためのかなりのプレッシャがあるなかで、代替ベシクル系を凌ぐ大きな利点である(20)。大腸菌などの原核細胞は、工業用培養器において大量に容易に増殖させることができる。大腸菌に導入するために条件を最適化することができれば、ErbB2結合ドメインなどの標的化配列に融合されたカベオリンは、内腔に向けられた治療剤または抗原カベオリン含有ベシクルとともに、薬物またはポリペプチドの標的化送達またはワクチン開発に対するコスト効率の高い戦略を与えることができるであろう。
【0134】
膜タンパク質は、大腸菌において高濃度発現と精製がしにくいことで有名である。カベオリン含有ベシクル系は、カベオリンを膜タンパク質と共発現させて、細胞質膜にではなく、出芽したカベオリン含有ベシクルにそれらを組み込ませることを可能にする。これが、膜タンパク質(たとえば、細胞質膜を透過性にするチャンネル)の毒性を低減し、摂動する大腸菌の増殖または生存率による、それらの増加した発現を可能にする。また、単純な一工程での精製も可能になるであろう。関心の膜タンパク質を含有するベシクルは、構造の研究または機能の研究に対して使用可能であろう(リポソームに基づく再構成技術とは対照的に、精製なしに膜タンパク質が所定の配向でベシクル内に組み込まれる)。治療
上重要な膜タンパク質を含有する小ベシクルの生成は、治療的用途、たとえば、嚢胞性線維症膜貫通調節因子(CFTR)の送達の可能性を有するものであろう。カベオリン含有ベシクルのさらなる用途としては、次のものが挙げられる。
【0135】
1.カベオリン含有ベシクルは、共発現されるcDNAからのタンパク質を、これらのタンパク質を精製する必要なく、発現および送達させる潜在性を有する。このことは、細胞中へのタンパク質導入を必要としている生物学者にとって非常に有用な技術であろう。
【0136】
2.タンパク質を精製することなくカベオリン含有ベシクルに組み込むことは、治療的用途またはワクチン送達のためのタンパク質を封入したベシクルを生成させるためのコスト効率が高く効率的な方法を提供する。
【0137】
3.その効率的な発現と単純な精製、構造的または機能的キャラクタリゼーションおよび治療的送達を可能にする、カベオリン含有ベシクル中への膜タンパク質の組み込み。
細胞毒性薬物の全身投与に伴う重篤な毒性は、今日の医学界において深刻な問題である。細胞毒性薬物が薬物を特定のin vivo部位に標的化できるベシクル内に封入された標的化送達系は、化学治療剤の全身投与に伴う重篤な毒性を回避することができる。標的化薬物送達を可能にするための現行の戦略としては、リポソーム、ポリマーに基づく治療剤、および薬物を非特異的に組み込むことのできる無核細胞である「ミニセル」が挙げられる。これらの戦略の欠点の多くを回避することができるようなベシクルに基づく標的化送達系が、至急求められている。さらに、タンパク質およびペプチド治療剤を安全かつ有効な形で有効に包装して送達できる送達系が求められている。すでに使用が許可されており、何十億ドルもの収益を生み出している多くのタンパク質およびペプチド生物的治療剤(30)とともに、そのような送達系は計り知れない価値をもつであろう。ここで、カベオリン含有ベシクルは、in vivo治療的用途に対するその有用性を示唆する多くの特性を有していることが確証された(表3)。たとえば、カベオリン含有ベシクルは、検出可能な細菌性タンパク質を含んでおらず、外来の物質をその内腔内に組み込むことができ、非常に小さく均一であり、そして、哺乳動物細胞において容易に飲食(エンドサイトーシス)される。
【0138】
細菌ミニセル(またはナノセル)および無核細菌細胞(16〜19)を用いて、興味深い比較を行うことができた。ミニセルは、径が10倍大きく、その組織への浸透と、エンドサイトーシスによる取込みを減少させる。ミニセルは、ファゴサイトーシスされることができるが、Cos7やHeLa(17)などの細胞における従来の形のエンドサイトーシスによっては取り込まれることができない。これに対し、カベオリン含有ベシクルは、哺乳動物細胞によって容易にエンドサイトーシスされることが示されている。ミニセルは、受動的非選択的機構を介して生物活性分子を組み込む(19)。これに対し、カベオリン含有ベシクルは、培地中に含まれる膜不透過性物質(細胞質膜に比べて高い透過性を示す外細菌膜)を、それらが細菌宿主の細胞質膜から形成する際に取込むことができる。カベオリンが、細菌の細胞質膜におけるカベオリン含有ベシクル形成を誘導するユニークな経路は、ペリプラズム空間を標的とした共発現タンパク質を潜在的に組み込むことができる。カベオリン含有ベシクルの形成時に薬物を導入できることにより、標的化可能な遺伝子的にコードされたベシクルを生産するための多大な可能性が与えられる。形成中にカベオリン含有ベシクル内でタンパク質を発現できる能力は、抗原をベシクル封入形態で送達して、特異的免疫反応を発生させることのできるワクチン開発に対する潜在性、およびinvivoにおけるペプチドおよびタンパク質治療剤の送達に対する潜在性をもつであろう(30)。
【0139】
カベオリン含有ベシクルの利点としては、それらが直径45〜55nmの均一なナノベシクルであり、少なくとも、1つのカベオリンタンパク質の発現を必要とするが、検出可
能な細菌性タンパク質を有しないということが挙げられる。これらの特徴は、ミニセルなどの従来の技術と比べてすべて有利なものである。
【0140】
カベオリン含有ベシクルは、非常に単純な一工程発現および一工程精製系で作られる。この単純な製法は高濃度への精製を可能にする。
連結タンパク質をカベオリンに付加して、特定部位への標的化を可能にすることもできる。たとえば、プロテインAを抗体に結合するように加えて、カベオリン含有ベシクルを、ErbB2過剰発現腫瘍に対して標的化してもよい。本明細書中で報告するように、プロテインA−カベオリン融合タンパク質を含むカベオリン含有ベシクルは、ErbB2陽性細胞へのヘルセプチン依存性取込みを示す。
【0141】
カベオリン含有ベシクルは、他の送達物質に比べて非常に小さい。カベオリン含有ベシクルは、「ミニセル」よりも大きさが桁違いに小さく、これにより、ファゴサイトーシスではなくエンドサイトーシスによって取込まれることができ、組織への透過性が高まるはずである。
【0142】
カベオリン含有ベシクルの形成時に薬物を取り込む潜在性もある。ここでは、蛍光性マーカーがカベオリン含有ベシクルに効率的に一体化することも示した。ドキソルビシンのリモートローディングおよび5−フルオロウラシルによるin vivo装填についても示した。
【0143】
カベオリン含有ベシクルは、大腸菌中での共発現により細胞へ一意的に送達するためのタンパク質の組み込みの潜在性を有する。したがって、組み込まれるタンパク質を精製する必要がない。
【0144】
本発明のカベオリン含有ベシクルは、効率的なエンドサイトーシスと関心部位への送達へとつながる、比較的小さいサイズという著しい利点を有している。さらに、本発明のカベオリン含有ベシクルは、高容量かつ高い安定性で精製することができる。
【0145】
カベオリン含有ベシクルは、タンパク質精製の必要なく、in vivoにおける薬物送達から哺乳動物細胞へのタンパク質移送までの多数の用途を有している。
本発明によって達成された薬物などの分子の標的化送達は、薬物治療の副作用を低減するかもしれない。
【0146】
本発明のカベオリン含有ベシクルは、容易に生産可能であり、漏れがなく、簡単に規模を上げることができる。
本発明は、脊椎動物(好ましくは哺乳動物)タンパク質の発現によって生成されることになる小さく均一な大きさのベシクルの、原核細胞宿主中での生産を可能にする。細菌性タンパク質を含まないこれらのベシクルは、宿主がこれらのベシクルで充満されるまで、細胞質膜から出芽する。
【0147】
これらのベシクルは、一工程において高純度まで単離することができる。
重要なことは、膜からのピンチオフ時に、外来物質を非常に特異的な様式でベシクル内に取り込むことができる。
【0148】
同等に重要かつ意義深いこととして、ナノベシクルの外部を誘導しコートするタンパク質は、ナノベシクルを特定の細胞型を標的とするように、または、ベシクルの融合性特性を与えるように操作されてもよい。
【0149】
本明細書全体を通して、本発明の好適な実施形態を本発明をいずれか1つの実施形態ま
たは特定の特徴のコレクションに限定せずに、説明することを意図している。したがって、当業者であれば、本開示に鑑みて、本発明の範囲から逸脱することなく、例示した個々の実施形態において様々な修飾および変更を行ってもよいことを理解するであろう。
【0150】
すべてのコンピュータプログラム、アルゴリズム、引用した特許および科学文献は、参照により本願に組み込まれる。
【0151】
【表1】

【0152】
【表2】

【0153】
【表3】

【0154】
【表4】

【0155】

【表5】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
カベオリンタンパク質と、1つ以上の脂質とを含む単離カベオリン含有ベシクルであって、前記1つ以上の脂質のうちの約30%以上は、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選択される単離カベオリン含有ベシクル。
【請求項2】
カベオリンタンパク質は、原核細胞において発現される組換え型カベオリンタンパク質である請求項1に記載の単離カベオリン含有ベシクル。
【請求項3】
前記1つ以上の脂質のうちの約50%以上は、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選択される請求項1に記載の単離カベオリン含有ベシクル。
【請求項4】
前記1つ以上の脂質のうちの少なくとも一部は、原核細胞により発現されるカベオリンタンパク質が発現した原核細胞に内在するか、原核細胞によって生産される請求項2に記載の単離カベオリン含有ベシクル。
【請求項5】
カルジオリピンをさらに含む請求項1に記載の単離カベオリン含有ベシクル。
【請求項6】
カベオリンタンパク質は、細菌により発現される組換え型カベオリンタンパク質である請求項1に記載の単離カベオリン含有ベシクル。
【請求項7】
標的化分子をさらに含む請求項1に記載の単離カベオリン含有ベシクル。
【請求項8】
単離カベオリン含有ベシクルを作成する方法であって、カベオリンタンパク質を1つ以上の脂質と会合させることによって単離カベオリン含有ベシクルを作成する工程を含み、前記1つ以上の脂質のうちの約30%以上は、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選択される、方法。
【請求項9】
カベオリンタンパク質は、原核生物において発現される組換え型カベオリンタンパク質である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上の脂質のうちの約50%は、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選択される請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の脂質のうちの少なくとも一部は、原核細胞により発現されるカベオリンタンパク質が発現した原核細胞に内在するか、原核細胞によって生産される請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ベシクルはカルジオリピンをさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項13】
カベオリンタンパク質は、細菌により発現される組換え型カベオリンタンパク質である請求項8に記載の方法。
【請求項14】
単離カベオリン含有ベシクルであって、1つ以上の脂質に会合した、原核細胞中で発現される組換え型カベオリンタンパク質を含み、前記組換え型カベオリンタンパク質および前記1つ以上の脂質は原核細胞中で会合する単離カベオリン含有ベシクル。
【請求項15】
前記1つ以上の脂質のうちの約30%以上は、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選択される請求項14に記載の単離カベオリン含有ベシ
クル。
【請求項16】
前記1つ以上の脂質のうちの約50%以上は、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選択される請求項14に記載の単離カベオリン含有ベシクル。
【請求項17】
前記1つ以上の脂質のうちの少なくとも一部は、原核細胞に内在するか、原核細胞によって生産される請求項14に記載の単離カベオリン含有ベシクル。
【請求項18】
カルジオリピンをさらに含む請求項14に記載の単離カベオリン含有ベシクル。
【請求項19】
原核細胞は細菌である請求項14に記載の単離カベオリン含有ベシクル。
【請求項20】
標的化分子をさらに含む請求項14に記載の単離カベオリン含有ベシクル。
【請求項21】
単離カベオリン含有ベシクルを作成する方法であって、
組換え型カベオリンタンパク質を原核細胞中で発現させる工程と、
発現させた組換え型カベオリンタンパク質を原核細胞中で1つ以上の脂質と会合させる工程と、
によって単離カベオリン含有ベシクルを作成する方法。
【請求項22】
前記1つ以上の脂質のうちの約30%以上は、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選択される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記1つ以上の脂質のうちの約50%以上は、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選択される請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記1つ以上の脂質のうちの少なくとも一部は、原核細胞に内在するか、原核細胞によって生産される請求項21に記載の方法。
【請求項25】
単離カベオリン含有ベシクルはカルジオリピンをさらに含む請求項21に記載の方法。
【請求項26】
原核細胞は細菌である請求項21に記載の方法。
【請求項27】
原核細胞中で標的化分子を発現させ、該標的化分子を、原核細胞中で、前記発現させた組換え型カベオリンおよび前記1つ以上の脂質と会合させることをさらに含む請求項21に記載の方法。
【請求項28】
単離カベオリン含有送達ベシクルであって、
カベオリンタンパク質と、
1つ以上の脂質と、前記1つ以上の脂質のうちの約30%以上は、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選択されることと、
前記ベシクルによって送達される分子と、
を含む単離カベオリン含有送達ベシクル。
【請求項29】
ベシクルによって送達される前記分子は、ベシクル内に含まれる請求項28に記載の単離カベオリン含有送達ベシクル。
【請求項30】
ベシクルによって送達される前記分子は、ベシクル膜に一体化される請求項28に記載の単離カベオリン含有送達ベシクル。
【請求項31】
ベシクルによって送達される前記分子は、周囲でベシクル膜と会合していることを特徴とする請求項28に記載の単離カベオリン含有送達ベシクル。
【請求項32】
単離カベオリン含有送達ベシクルを作成する方法であって、カベオリンタンパク質を1つ以上の脂質とベシクルによって送達される分子との両方と会合させることによって単離カベオリン含有送達ベシクルを作成する工程を含み、前記1つ以上の脂質のうちの約30%以上は、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選択される、方法。
【請求項33】
カベオリンタンパク質と、送達される前記分子とは、原核細胞中で共発現される請求項32に記載の方法。
【請求項34】
カベオリンタンパク質を発現する原核細胞は、送達される前記分子に暴露される請求項32に記載の方法。
【請求項35】
カベオリンタンパク質は原核細胞において発現され、前記1つ以上の脂質と会合して単離カベオリン含有ベシクルを形成し、前記単離カベオリン含有ベシクルは、ベシクルによって送達される前記分子と会合する請求項32に記載の方法。
【請求項36】
単離カベオリン含有送達ベシクルを作成する方法であって、
カベオリンタンパク質および送達される分子を共発現させる工程と、
カベオリンタンパク質を1つ以上の脂質とベシクルによって送達される前記分子とに会合させる工程と、
によって単離カベオリン含有送達ベシクルを作成する方法。
【請求項37】
前記1つ以上の脂質のうちの約30%以上は、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールから選択される請求項36に記載の方法。
【請求項38】
原核細胞は細菌である請求項36に記載の方法。
【請求項39】
請求項28に記載の単離カベオリン含有送達ベシクルを用いた分子の送達により疾患または病気を治療する方法。
【請求項40】
送達される前記分子は治療活性を有する請求項39に記載の方法。
【請求項41】
請求項32に記載の方法によって作成した単離カベオリン含有送達ベシクルを用いた分子の送達により、疾患または病気を治療する方法。
【請求項42】
送達される前記分子は治療活性を有する請求項41に記載の方法。
【請求項43】
請求項28に記載の単離カベオリン含有送達ベシクルを用いることによって分子を送達する、分子を送達する方法。
【請求項44】
請求項32に記載の方法によって作成した単離カベオリン含有送達ベシクルを用いることによって分子を送達する、分子を送達する方法。
【請求項45】
請求項28に記載の単離カベオリン含有送達ベシクルと、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを含む組成物。
【請求項46】
請求項32に記載の方法によって作成した単離カベオリン含有送達ベシクルと、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを含む組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図9】
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【図5A】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−540466(P2010−540466A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526110(P2010−526110)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001416
【国際公開番号】WO2009/039567
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(500446937)ザ ユニバーシティ オブ クイーンズランド (6)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF QUEENSLAND
【Fターム(参考)】