説明

分子集合体

【課題】 スマネンまたはその誘導体等を基にした産業上有用な分子集合体を提供する。
【解決手段】 下記式(1)で表される化合物(スマネンまたはその誘導体)を溶媒に溶かして再結晶する等の方法により、その分子の積層構造を含む分子集合体が得られる。前記分子の積層構造は、例えば、図6に示す通り、各分子が、その上または下に接した分子と実質的に60°(または180°もしくは300°)ずれながら平行に積層され、芳香環のπ電子が効率よくパッキングされている。前記分子集合体は、例えば単結晶が好ましいが、多結晶等の任意の状態でも良い。本発明の分子集合体は、例えば、有機半導体および有機トランジスタ材料として有用であり、その他、各種電子材料等の工業用材料、金属内包型フラーレン化合物のモデル化合物等の基礎研究用材料、光増感剤、重合触媒等、あらゆる用途に使用可能である。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な分子集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、本発明者らは、スマネン(Sumanene)と呼ばれる有機化合物(下記式(84))の合成に世界ではじめて成功した(非特許文献1等参照)。この化合物は、学術的観点のみならず産業上の観点からも多大な利用可能性が見込まれており、例えば電子材料等への応用の可能性が注目されている。以下、本発明者らがスマネンおよびその製造方法の発明をするに至った経緯について説明する。
【0003】
【化6】

【0004】
60(下記式(82))やC70をはじめとする各種フラーレンおよびカーボンナノチューブと呼ばれる一群の炭素同族体(以下、これらを総称して「フラーレン類」と呼ぶことがある)は、その特異的な物性から次世代材料として注目されている。フラーレン類は、C60やC70以外にも種々の構造のものが知られており、それぞれが固有の物性を有している。それらを化学修飾することにより、さらに多様な機能を付加しようとする研究も全世界的に活発に行なわれている。
【0005】
【化7】

【0006】
しかし、現状では、フラーレン類の製造方法はいわゆるアーク放電法等に限定されており、C60およびC70は比較的容易に得られるが、その他のフラーレン類はごく微量しか生産することができず、入手が非常に困難である。したがって、フラーレン類を化学修飾して種々の構造の高機能材料を製造しようとしても、出発原料の種類の貧困さが問題となる。
【0007】
上記の事情に鑑み、フラーレン類を化学的に合成しようとする試みが世界各地で盛んに行なわれているが、この研究はようやく端緒についたばかりであり、いまだ誰も成功していない。しかしながら、有機合成化学の手法によれば、前記アーク放電法等と異なり生成物の分子構造を自由自在に制御できるため、研究が進めば、従来は入手困難であったフラーレン類も自由に得られることが期待できる。さらに、既存のフラーレン類に限定されず、新規なフラーレン類およびその誘導体についても合成できれば、新規材料の設計に大きな風穴を開けることになると考えられる。例えば、フラーレン類の炭素原子の一部をヘテロ原子で置き換えたヘテロフラーレン類は、理論研究によりその挙動が注目されている(例えば、非特許文献2参照)が、C59N(非特許文献3参照)等のごく一部の化合物を除いていまだ製造されておらず、その有機化学的合成法の確立が期待される。
【0008】
現在は、C60の部分的構造である非平面共役系炭素骨格を含む化合物を合成すべく研究が進められている。しかし、従来は、コランニュレン(Corannulene)と呼ばれる化合物(下記式(83))およびその誘導体が1966年に合成されたことが報告されているのみであり、かつ、実験室レベルでの合成しか行われていなかった。なお、1999年には、フラスコ内の穏やかな条件下においてコランニュレンを比較的大量に合成できるルートも報告されている(非特許文献4)。
【0009】
【化8】

【0010】
コランニュレンは、前記C60の部分的構造を含む化合物としては世界ではじめて合成された化合物であり、その学術的意義は大きいが、産業上利用等の観点から見ると難点があった。なぜならば、その骨格の炭素原子が全てベンゼン核に取り込まれているため反応性がさほど高くないからである。したがって、コランニュレンは、前記C60の部分的構造を含むにも関わらず、実際にC60等のフラーレン類およびその他の化合物の合成原料等として用いるには困難を伴う。実際に、コランニュレン誘導体も、現時点ではごく限られた構造のものが合成されているだけである。
【0011】
研究者の間で、コランニュレンの他にもう一つ注目されてきた化学構造が、前記スマネン(Sumanene)であった。コランニュレンがC60のC5対称部分骨格を含むのに対し、スマネンはC60のC3対称部分骨格を含む。そして、スマネンは、コランニュレンと異なり、ベンジル位炭素を3ヶ所に含んでいることが大きな特徴である。一般に、ベンジル位炭素を含む化合物は合成原料として価値が高い。なぜならば、ベンジル位炭素は非常に活性が高く、カチオン種、アニオン種、カルベンなど様々な活性種を発生させることができ、その活性種を足がかりにさらなる結合生成反応への応用が可能だからである。したがって、スマネンはコランニュレンよりもはるかに反応性が高く、例えば、ベンジル位の酸化反応などにより様々な官能基を直接導入し、多種多様な誘導体を合成できると考えられる。そして、さらにそれら誘導体を原料としてフラーレン類のみならず様々な化合物を合成できることが期待される。
【0012】
また、ベンジル位炭素を含むことは、合成原料として有利なだけでなく、前記活性種自体にも大きな利用価値がある。例えば、スマネンのベンジルアニオン種はシクロペンタジエニルアニオンと同様の構造を含むことから、金属包摂能等を有すると考えられる。したがって、それ自体に大きな産業上の利用可能性があるだけでなく、金属内包型フラーレン化合物のモデル研究用化合物としての発展等も期待できる。
【0013】
このように、スマネンは、学術的にも絶大な価値を有し、そして産業上利用価値も多大なものが見込まれることから、多くの研究者がその合成に取り組んできた。しかし、その分子ひずみが大きいためか、合成に成功したとの報告はいまだになかった。スマネンについて述べた文献は少なくないが、いずれも理論計算等を行なうに止まっていた(例えば、非特許文献5および6参照)。
【0014】
なお、スマネンのベンジル位炭素を硫黄原子に置き換えた化合物(下記式(85))が合成されている(非特許文献7)。これ自体興味深い化合物ではあるが、合成するには、今のところ真空中で1000℃という厳しい条件が必要であり、大量生産して産業ベースに載せることは難しい状況である。また、そもそもスマネンとは物性が大いに異なる。例えば、前記硫黄原子の反応性はベンジル位炭素のように自由自在ではなく、オキソ基等を付加できるに止まると思われる。このように、スマネンの化学構造および有用性は予想されてはいるものの、合成に成功した例は今までになかった。
【0015】
【化9】

【0016】
以上のような状況の中で、本発明者らは、鋭意検討の結果、前述の通り、スマネンの合成に世界で初めて成功し、その製造方法を確立するに至った。この製造方法によれば、有機合成化学の手法を用いてスマネンおよびその誘導体を困難なく得ることができる。例えば、安価で容易に入手可能なノルボルナジエンから、フラスコ内において、穏和な条件下、わずか3ステップでスマネンを合成することも可能である。
【0017】
スマネンおよびその誘導体については、前述の通り、学術的にも絶大な価値を有し、そして産業上利用価値も多大なものが見込まれている。しかしながら、スマネンは、世界ではじめて合成に成功したばかりの化合物であるため、その物性等についてはいまだ未知の部分が多いのも事実である。そのため、産業上利用可能性の探求等の観点から、スマネンについてさらなる研究が望まれている。
【非特許文献1】Hidehiro Sakurai, Taro Daiko, Toshikazu Hirao, Science, 2003, 301, p.1878.
【非特許文献2】M. Riad Manaa, David W. Sprehn, and Heather A. Ichord, J. Am. Chem. Soc., 2002, 124, p.13990-13991.
【非特許文献3】Science, 1995, 269, p.1554.
【非特許文献4】Andrzej Sygula and Peter W. Rabideau, J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, p.6323-6324.
【非特許文献5】U. Deva Priyakumar and G. Narahari Sastry, J. Phys. Chem. A, 2001, 105, p.4488-4494.
【非特許文献6】U. Deva Priyakumar and G. Narahari Sastry, Tetrahedron Letters, 2001, 42, p.1379-1381.
【非特許文献7】Koichi Imamura, Kazuo Takimiya, Yoshio Aso and Tetsuo Otsubo, Chem. Commun., 1999, p.1859-1860.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明は、スマネンまたはその誘導体等を基にした産業上有用な分子集合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するために、本発明の分子集合体は、下記一般式(1)で表される化合物分子、その互変異性体分子、その立体異性体分子、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つの分子が集合した分子集合体であって、前記分子またはそのイオンが上下方向に積層した構造を有する。
【0020】
【化10】

【0021】
式(1)中、A1〜A6はそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、直鎖もしくは分枝アルキル基、または芳香族炭化水素基であり、A1〜A6上にベンジル位水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、
前記A1〜A6上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、電子供与基または電子求引基であるか、または、同一のAr(rは1から6までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するArとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
1〜X3はそれぞれ同一であるかまたは異なり、メチレン基(下記式(2))、ビニリデン基(下記式(3))、カルボニル基(下記式(4))、チオカルボニル基(下記式(5))、イミノメチレン基(下記式(6))、イミノ基(下記式(7))、または酸素原子(下記式(8))、であり、X1〜X3上に水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、
【0022】
【化11】

【0023】
前記X1〜X3上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、電子供与基または電子求引基であるか、または、同一のXa(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するXaとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良い。
【発明の効果】
【0024】
本発明の分子集合体は、前記式(1)で表される化合物の分子またはそのイオンが上下方向に積層した構造を有することにより、例えば、電気的性質等において優れ、有機半導体等の用途に好ましく使用することができ、産業上有用である。なお、本発明の分子集合体では、前記式(1)で表される化合物の分子は、中性分子であってもよいが、前記の通り、正または負の電荷を持ったイオンの状態であっても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。
【0026】
本発明者らは、前記式(1)で表される化合物の性質について鋭意研究した結果、その分子またはイオンが積層構造をとることにより、例えば半導体特性などの有用な性質を発現することをつきとめ、本発明に至った。本発明の分子集合体の用途は特に限定されず、例えば、各種電子材料等の工業用材料、金属内包型フラーレン化合物のモデル化合物等の基礎研究用材料、光増感剤、重合触媒等、あらゆる用途に使用可能である。しかし、前述のように、電気的性質等において優れ、有機半導体等に特に好ましく使用できる。
【0027】
本発明の分子集合体において、前記式(1)で表される化合物の分子またはそのイオンが積層構造をとる理由、および本発明の分子集合体が電気的性質等に優れる理由は、必ずしも全てが明らかではないが、例えば以下のような理由が考えられる。すなわち、まず、前記式(1)で表される化合物(スマネンおよびその誘導体)は、その分子構造中にベンゼン環構造を含み、前述の通り芳香族化合物としての性質を示す。しかしながら、その分子骨格が、通常の状態では、平面ではなく若干湾曲したボウル状であるために、π電子が完全には非局在化されず、若干の電荷の偏りが生じていると考えられる。分子中におけるこの若干の電荷の偏りのために、本発明の分子集合体は、電気的性質等において優れ、特に半導体に適した電気伝導性、電子移動性等を有すると推測される。さらに、前記式(1)で表される化合物分子は、前記電荷の偏りのために、分子間において電子密度の高い部分と低い部分とが引き合い、その結果、固体中においては規則正しく積層された構造をとると考えられる。そして、本発明の分子集合体では、分子がこのような構造をとる結果、芳香環のπ電子が効率よくパッキング(充填)されるため、そのことも電気伝導性、電子移動性等に対して有利に働くと思われる。ただし、この説明は、推測されるメカニズムの一例であり、本発明を限定するものではない。
【0028】
本発明の分子集合体は、前記式(1)で表される化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩のみからなっていても良いが、必要に応じてその他の成分を含んでいても良い。また、本発明の分子集合体は、電気的性質等の観点から、結晶構造を有することが好ましく、理想的には、いわゆる単結晶の状態であるのが良いが、これに限定されず、例えば、いわゆる多結晶その他任意の状態が可能である。
【0029】
このような本発明の分子集合体の製造方法も特に限定されないが、例えば、前記一般式(1)で表される化合物、その互変異性体、その立体異性体、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つを、溶媒に溶解後、再結晶するか、または融解後、固体化する工程を含む製造方法により製造することができる。このとき、必要であれば、前記一般式(1)で表される化合物、その互変異性体、その立体異性体、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つに、さらにその他の成分を加えても良い。ただし、分子の規則正しい配列の妨げとなる不要な不純物は、あらかじめクロマトグラフィー等により除去しておくことが好ましい。再結晶する場合、溶媒は特に限定されず、前記式(1)で表される化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩の溶解度等を考慮して適宜決定すれば良いが、例えば、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、酢酸エチル等のエステル、ジエチルエーテル、THF(テトラヒドロフラン)、ジメトキシエタン、ジオキサン等のエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール等があげられ、これらは単独で用いても良いし二種類以上併用しても良い。再結晶により結晶を析出させる方法としては、温度による溶解度の相違を利用して、前記式(1)で表される化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩および必要に応じてその他の成分(以下、単に「溶質」と呼ぶことがある)を含む高温の飽和溶液を冷却する方法、溶質を含む溶液から溶媒を蒸発させて濃縮する方法、溶質を含む溶液に他の適切な溶媒を加えて前記溶質の溶解度を減少させる方法等を用いることができる。いずれの方法を用いる場合も、結晶を析出および成長させるための時間は、極力長くかければ、分子が規則正しく配列した大きい結晶が得られる等の利点があるが、この時間は、結晶の製造効率等も考慮して適宜決定することが好ましい。
【0030】
再結晶方法としては、より具体的には、例えば、前記溶質を適切な溶媒に添加し、その溶媒の沸点付近まで加熱して前記溶質を完全に溶解させた後に、静置したまま冷却して過冷却(過飽和)溶液とし、さらにそのままの温度で静置して結晶を析出させる方法等を用いることができる。静置する際には、例えば室温で静置しても良いし、必要に応じて冷蔵庫等で冷却しても良い。静置する際の温度も特に限定されないが、例えば、0〜20℃が好ましく、また、前記の通り、例えば室温でも良い。なお、「室温」とは、本発明では特に限定されないが、例えば、JIS K 0050の規定によれば5〜35℃である。
【0031】
本発明の分子集合体は、前述の通り、前記式(1)で表される化合物分子またはそのイオンの積層構造を含むが、電気伝導性、電子移動性等の観点から、前記式(1)で表される化合物分子またはそのイオンが平行に積層されていることが好ましい。より具体的には、前記式(1)で表される化合物分子またはそのイオンにおいて、原子団X1中でスマネン骨格中のベンゼン環と直接結合している原子をxIとし、原子団X2中でスマネン骨格中のベンゼン環と直接結合している原子をxIIとし、原子団X3中でスマネン骨格中のベンゼン環と直接結合している原子をxIIIとし、xI、xIIおよびxIIIの3原子を含む平面をx面と定義した場合に、前記分子またはそのイオンの積層構造中において、各分子またはイオンの前記x面同士が互いに平行であることが好ましい。また、前記式(1)で表される化合物分子またはそのイオンにおいて、前記xI、xIIおよびxIIIの3原子を頂点とする三角形を定義した場合に、前記分子またはそのイオンの積層構造中において、任意の前記分子またはイオン中における前記三角形が、その上または下に接して積層されている分子またはイオンの前記三角形に対し、前記x面内で60°±10°、180°±10°または300°±10°回転させた角度で位置することがより好ましい。なお、前記式(1)で表される化合物分子またはそのイオンが、例えば母体化合物のスマネン(前記式(84))のようにC3対称性を有する場合は、前記角度が60°である状態、180°である状態、および300°である状態は、みな同じ状態を指す。また、本発明において、式(1)で表される化合物分子またはそのイオンが「平行」であると言う場合は、厳密に平行な状態のみならず実質的に平行である状態をも含む。
【0032】
なお、本発明の分子集合体中における各分子の構造および各分子間の位置関係等は、例えば、X線構造解析等の機器分析方法を用いて確認することができる。
【0033】
次に、前記式(1)で表される化合物およびその製造方法についてさらに詳しく説明する。
【0034】
本発明者らは、前述の通り、スマネンの合成に世界で初めて成功した。そして、前記一般式(1)で表される本発明の化合物(すなわち、スマネンおよびその誘導体)とその製造方法とを確立した。
【0035】
前記一般式(1)で表される化合物、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩の製造方法は特に限定されず、どのような方法により製造しても良いが、例えば、以下に説明する製造方法により製造することが好ましい。この製造方法によれば、有機合成化学の手法を用いてスマネンおよびその誘導体を困難なく得ることができる。例えば母体化合物のスマネンについては、下記スキーム1に示すように、安価で容易に入手可能なノルボルナジエン(下記式(86))から、フラスコ内において、穏和な条件下、わずか3ステップで合成することも可能である。
【0036】
【化12】

【0037】
以下、前記製造方法についてさらに具体的に説明する。すなわち、まず、下記式(76)で表される化合物を準備する。この化合物およびその塩は、本発明者らの発明に係る新規化合物であり、さらに酸化(脱水素)反応を経由してスマネンおよびその誘導体に変換することができる。
【0038】
【化13】

【0039】
式(76)中、R1〜R6はそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、直鎖もしくは分枝アルキル基、または芳香族炭化水素基であり、好ましくは、水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、フェニル基、またはナフチル基である。X11、X21およびX31はそれぞれ同一であるかまたは異なり、メチレン基、イミノ基または酸素原子であり、イミノ基の場合は、その水素原子は保護基により置換されていても良い。以下、この化合物の製造方法について説明する。
【0040】
前記式(76)で表される化合物およびその塩の製造方法は特に限定されないが、下記式(77)で表される化合物のメタセシス反応を含む製造方法がより好ましい。この製造方法は本発明者らの発明に係る新規な製造方法である。メタセシス反応はよく知られている反応であるが、本発明者らはそれを下記式(77)で表される化合物に適用することを見出した。この方法を発明したことにより、スマネンおよびその誘導体を困難なく得ることができるようになった。
【0041】
【化14】

【0042】
式(77)中、R1〜R6、X11、X21およびX31はそれぞれ前記式(76)と同じである。
【0043】
前記メタセシス反応の条件は特に限定されず、従来のメタセシス反応と同様に行なうことができるが、触媒を用いて行なうことが好ましい。前記触媒は特に限定されず、いわゆるメタセシス触媒として通常用いられているものを使用することができ、単独で使用しても良いし二種類以上併用しても良い。また、前記触媒は、例えば、ルテニウム、アルミニウム、チタン、モリブデンおよびタングステンからなる群から選択される少なくとも一つの元素を含むことがより好ましい。このようなメタセシス触媒、特にルテニウムやモリブデンを含む触媒は多数開発されている。本発明に使用する前記触媒としては、具体的には、例えば、(PCy3)2RuCl2=CHPhすなわちビス(トリシクロヘキシルホスフィノ)ベンジリデンルテニウム(II)クロリド、Al(C2H5)3-TiCl4、Al(C2H5)3-MoCl3、およびAl(C2H5)3-WCl6からなる群から選択される少なくとも一つを含むことが特に好ましいが、これらに限定されるものではない。前記触媒の使用量も特に限定されず、反応効率やコスト等を考慮して適宜調整すれば良いが、例えば、いわゆる化学量論量以下が好ましい。前記触媒の適切な使用量は、触媒の種類や反応スケール等によって変化し、一定ではないが、フラスコレベルの反応では、前記式(77)で表される化合物に対し、例えば5mol%程度である。なお、一般に、触媒反応では、反応スケールが大きくなれば、相対的に触媒使用量を減らせる(すなわち、基質量に対する触媒使用量の比率を小さくできる)傾向がある。
【0044】
また、前記メタセシス反応は、前記式(77)の化合物と反応するもう一種類のオレフィンを用いて行なうことが反応効率や収率の観点から好ましい。この場合のオレフィンは特に限定されないが、反応効率、コスト、扱いやすさ等の観点から、例えばエチレンがより好ましい。
【0045】
前記もう一種類のオレフィン、例えばエチレンを用いる場合の操作および反応原理は、例えば以下のように説明される。すなわち、まず、前記式(77)の化合物とエチレンとをメタセシス反応により化合させ、前記式(77)の化合物におけるオレフィン結合部分を開環させる。そして、その反応生成物をさらにメタセシス反応させて閉環させることにより、前記式(76)で表される化合物を生成させる。この閉環反応により再びエチレンが生成し、最終的に系中から除かれる。このようにすると、前記式(76)で表される化合物をさらに効率よく得ることができる。
【0046】
前記メタセシス反応におけるその他の使用物質や反応条件は特に限定されず、従来のメタセシス反応等を参考にして適宜設定すれば良い。溶媒は、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素や、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化物や、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒や、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等の高極性溶媒が使用可能であり、これら溶媒は単独で用いても二種類以上併用しても良い。反応温度および反応時間も特に限定されず、前記式(77)中におけるR1〜R6、X11、X21およびX31の構造や反応スケール等により適宜設定すれば良い。また、反応生成物の分離や精製の方法も特に限定されず、カラムクロマトグラフィーやGPC等の公知の手段を適宜用いて行なうことができる。
【0047】
以上のようにして、前記式(77)の化合物から前記式(76)の化合物を製造することができる。前記式(77)で表される化合物の製造方法も特に限定されないが、下記式(78)〜(80)で表される化合物をハロゲン化し、さらにWurtz型カップリングにより環化させることを含む製造方法が好ましい。
【0048】
【化15】

【0049】
ただし、式(78)〜(80)中、R1〜R6、X11、X21およびX31はそれぞれ前記式(77)と同じである。
【0050】
Wurtz型カップリングとは、ハロゲン化物同士のカップリング反応として知られており、本発明者らは、この反応を前記式(77)の化合物の製造に用いることを見出した。前記ハロゲンとしては、例えばフッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられ、これらの中で臭素がより好ましい。反応は、例えば金属ナトリウム、金属リチウム等のアルカリ金属や触媒等の存在下で行なわれ、前記触媒としては、例えば、銅触媒、ニッケル触媒、パラジウム触媒等があげられ、これらの中で銅触媒がより好ましい。また、ハロゲン化物は、単離状態で準備し、それをカップリングさせても良いが、反応系中でハロゲン化物を生成させ、同一の反応系中で(単離することなく)カップリングさせても良い。本発明では、前記Wurtz型カップリングの具体的な操作や反応条件は特に限定されないが、例えば以下の通りである。すなわち、まず、前記式(78)〜(80)の化合物(以下、単に「ジエン」と呼ぶことがある)と、カリウムt-ブトキシド、n-ブチルリチウムヘキサン溶液、1,2-ジブロモエタン、ヨウ化銅(I)、および溶媒としてのTHFを準備し、これら全ての反応物質および溶媒と、反応容器とを十分に乾燥させる。ジエンおよび溶媒以外の物質の使用量は特に限定されないが、副反応等を抑制するために全て同じ化学等量ずつ用いることがより好ましい。次に、前記反応容器内を不活性ガス置換し、t-BuOKおよびTHFを加えて溶解させる。その後、反応系温度をマイナス78 ℃まで下げ、ジエンを加え、さらにn-BuLiのヘキサン溶液を2時間かけ滴下する。滴下終了後、反応系の温度をマイナス40 ℃まで昇温し、さらに30分攪拌する。そして、前記系の温度をマイナス78℃に再び下げた後、1,2-ジブロモエタンを加え、その後再びマイナス40 ℃に昇温し、1時間半攪拌する。次に、再び前記系の温度をマイナス78 ℃に戻した後、ヨウ化銅(I)を加える。そして、マイナス78℃で4時間攪拌後、冷却を停止し、徐々に室温まで戻しながらさらに7時間攪拌する。その後、定法によりワークアップして、前記式(77)で表される目的化合物を得る。
【0051】
この反応における使用物質、反応温度および反応時間等は前記には限定されず、従来のWurtz型カップリング反応等を参考にして適宜設定することができる。また、前記式(78)〜(80)において、前記X11〜X31のうちいずれかがイミノ基である場合は、その水素原子は、副反応等を抑制するため保護基により置換されていることがより好ましい。保護基としては特に限定されず、公知の保護基を適宜用いることができるが、例えば、Greene and Wuts著 "Protective Groups in Organic Synthesis" 第2版(2nd Edition)に記載の保護基等があげられ、具体的には、t-ブトキシカルボニル基(Boc)、アセチル基(Ac)、ベンジルオキシカルボニル基(Z)、ベンジル基(Bz)等がある。
【0052】
なお、前記式(77)の化合物はsyn体であるが、通常、その異性体であるanti体との混合物として得られる。これらはGPC等の一般に用いられている手段により分離することができる。さらに、前記X11〜X31の全てが同一ではない場合、目的とする前記式(77)の化合物以外に多数の副生成物が得られるが、これらも、カラムクロマトグラフィーやGPC等の手段により分離することができる。
【0053】
また、前記式(77)の化合物の製造方法は、前記Wurtz型カップリング法には限定されず、公知の方法で合成することもできる。これら公知の方法としては、例えば、 "Giuseppe Borsato, Ottorino De Lucchi, Fabrizio Fabris, Luca Groppo, Vittorio Lucchini, and Alfonso Zambon, J. Org. Chem., 2002, 67, p.7894-7897." に記載されたハロゲン化物と有機金属試薬とのクロスカップリング法や、 "Harold Hart, Abdollah Bashir-Hashemi, Jihmei Luo and Mary Ann Meador, Tetrahedron, 1986, 42, p.1641-1654." , "Harold Hart, Chung-yin Lai, Godson Chukuemeka Nwokogu and Shamouil Shamouilian, Tetrahedron, 1987, 43, p.5203-5224." および "Francisco Raymo, Franz H. Kohnke and Francesca Cardullo, Tetrahedron, 1992, 48, p.6827-6838." 等に記載の合成法等がある。しかし、前記Wurtz型カップリング法を用いれば、例えば前述の通り、前記式(78)〜(80)で表される化合物をハロゲン化した後、前記ハロゲン化と同一の反応系中で(単離することなく)環化を行なうこともできる。このようにすれば、前記式(77)の化合物を、前記式(78)〜(80)の化合物から1ステップで簡便に合成できるため好ましく、前記X11〜X31の全てがメチレン基である場合には特に有効である。
【0054】
そして、前記式(77)の化合物が得られたら、前記の通り、この化合物のメタセシス反応により前記式(76)の化合物を得る。
【0055】
なお、前記式(77)の化合物から前記式(76)の化合物を得る方法として、前記メタセシス反応以外に、例えば以下のような製造方法もある。すなわち、まず、前記式(77)で表される化合物をオゾン分解して、下記式(77')で表される化合物を得る。このオゾン分解の条件は特に限定されず、公知のオゾン分解反応等を参考にして適宜設定することができる。
【0056】
【化16】

【0057】
式(77’)中、R1〜R6はそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、直鎖もしくは分枝アルキル基、または芳香族炭化水素基であり、X11、X21およびX31はそれぞれ同一であるかまたは異なり、メチレン基、イミノ基または酸素原子であり、イミノ基の場合は、その水素原子は保護基により置換されていても良い。
【0058】
オゾン分解とは、炭素−炭素不飽和結合を持つ化合物をオゾン化し、それをさらに分解してカルボニル化合物を得る反応として知られている。オゾン化物(オゾニド)を分解してカルボニル反応を得る方法としては、例えば、水により分解する方法および還元剤を用いる方法があり、より具体的には、例えば、酢酸存在下Zn−H2Oにより還元する方法、白金触媒やパラジウム触媒等の存在下で水素を用いて接触還元する方法、ラネーニッケルを用いて還元する方法等があげられる。オゾン分解について記述している文献は多数あるが、例えば、 "P. S. Bailely, Chem. Rev., 1958, 58, p.925." および "R. W. Murray, Acc. Chem. Res., 1968, 1, p.313." 等があげられる。
【0059】
なお、前記式(77')で表される化合物およびその塩は本発明に係る新規化合物であり、前記式(77)で表される化合物のオゾン分解を含む製造方法により製造されることが好ましいが、この製造方法に限定されずどのような方法により製造しても良い。
【0060】
そして、前記式(77')で表される化合物が得られたら、その分子内カップリング反応により前記式(76)で表される化合物を得る。この分子内カップリング反応の条件は特に限定されず、公知の反応を参考にするなどして適宜設定することができる。前記分子内カップリング反応は、遷移金属元素を用いた還元的カップリング反応が好ましく、前記遷移金属元素がチタンを含むことがより好ましい。なお、低原子価チタンを用いたカルボニル化合物の還元的カップリングはMcMurry反応として知られている。前記低原子価チタンは、例えばTiCl3やTiCl3(DME)1.5錯体(DMEはジメトキシエタンを表す)を反応系中で還元して発生させる方法がよく用いられており、この場合の還元剤としては、例えばZn(Cu)やC8K(カリウムグラファイト)等が用いられる。McMurry反応について述べた文献も多数あるが、例えば、 "J. E. McMurry, Acc. Chem. Res., 1974, 7, p.281." , "J. E. McMurry, Acc. Chem. Res., 1983, 16, p.405." , "J. E. McMurry and K. L. Kees, J. Org. Chem., 1977, 42, p.2655."および "D. L. J. Clive et al., J. Am. Chem. Soc., 1988, 110, p.6914." 等があげられる。
【0061】
以上のようにして前記化学式(76)で表される化合物が準備できたら、それを酸化して下記式(81)で表される化合物を製造する。
【0062】
【化17】

【0063】
式(81)中、R1〜R6、X11、X21およびX31はそれぞれ前記式(76)と同じである。
【0064】
前記酸化反応の条件は特に限定されず、従来の脱水素反応と同様の条件で行なうことができる。例えば、DDQやクロラニル等の酸化剤を用いても良いが、工業的には触媒を用いることが好ましい。前記触媒は特に限定されず、脱水素反応に通常用いられるものを使用することができるが、例えば、Pd−C(パラジウムカーボン)、白金、ロジウム、金属硫黄および金属セレン等が使用可能である。また、これら触媒は単独で用いても良いが、二種類以上併用しても良い。
【0065】
その他の使用物質や反応条件も特に限定されず、従来の脱水素反応を参考にするなどして適宜設定することができる。前記DDQ等の酸化剤やPd−C等の触媒を用いる場合、反応溶媒は、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素や、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒が使用可能であり、これら溶媒は単独で用いても二種類以上併用しても良い。この場合の反応温度および反応時間も特に限定されず、反応物質の種類等により適宜選択すればよい。
【0066】
そして、前記式(81)で表される化合物が得られたら、X11〜X31上の水素原子およびR1〜R6上のベンジル位水素原子を必要に応じ置換して、前記式(1)で表される本発明の化合物を得ることができる。X11〜X31のうちいずれかがイミノ基であって、その水素原子が保護基により置換されている場合は、イミノ基を必要に応じ脱保護してからあらためて置換しても良い。脱保護の方法は特に限定されず、前記保護基の種類等に応じて公知の方法を適宜使用すれば良い。
【0067】
前記X11〜X31上の水素原子を置換する方法も特に限定されず、類似の化学構造を有するジフェニルメタン、フルオレンおよびカルバゾール等の置換反応と同様の方法で様々な置換基を導入することが可能である。例えば、X11〜X31のいずれかがメチレン基である場合、そのメチレン基をアルキル化するためには、前記メチレン基の水素をブチルリチウム等により脱離させてカルボアニオンを生成させ、さらにヨウ化アルキル等を加える等の方法を用いることができる。また、アルコキシ化するためには、ベンジル位のアルコキシ化に通常用いられる方法、例えばハロゲン化の後アルコーリシス反応させる方法等を使用することができる。さらに、R1〜R6上にベンジル位水素原子が存在する場合、その水素原子を置換する方法も特に限定されず、一般的なベンジル位置換反応と同様に行なうことができる。例えば、アルキル基やアルコキシ基で置換するには上述と同様の方法等を用いることが可能である。
【0068】
以上のようにすれば、前記式(1)で表される化合物を、有機合成化学的手法により困難なく得ることができる。しかし、前記式(1)で表される化合物の製造方法はこれに限定されず、どのような方法により製造しても良い。
【0069】
そして、前記式(1)で表される化合物を用いて、例えば前述の製造方法により、本発明の分子集合体を得ることができる。本発明の分子集合体は、前述の通り、有機半導体等の用途に好ましく使用可能であり、その他にもあらゆる用途に用いることができる。
【0070】
なお、本発明の分子集合体は、前記式(1)で表される化合物分子もしくはそのイオンに代え、またはそれに加え、前記式(1)で表される化合物の分子から誘導される基が、二個以上、共有結合および架橋鎖の少なくとも一方により連結されている構造を有する化合物分子もしくはそのイオン(以下、単に「架橋体」と呼ぶことがある)を含んでいても良い。ただし、前記二個以上の基の構造は互いに同一でも異なっていても良い。このような分子集合体を製造する場合、前記式(1)で表される化合物分子もしくはそのイオンに代え、またはそれに加え、前記架橋体を用いることができる。前記架橋鎖は特に限定されず、例えば、アルキレン基でも、ポリエンでも、エステル結合やエーテル結合等を含む架橋鎖等であっても良い。これらの中で、例えばアルキレン基が好ましく、メチレン基または炭素数2〜10のポリメチレン基がより好ましい。そして、前記二個以上の基が、それぞれ少なくとも一つのベンジル位炭素を含み、前記共有結合または架橋鎖との結合部位が前記ベンジル位炭素であることが好ましい。
【0071】
このような架橋体の製造方法も特に限定されず、目的とする架橋体の構造等に応じて公知の方法を適宜用いることができるが、一例として以下のような方法がある。すなわち、まず、スマネン(前記式(84)の化合物)のベンジル位を一箇所、モノハロゲン化し、ハロゲン化アルキレン、例えば1,4-ジブロモブタンとカップリング反応させる。この方法は特に限定されないが、例えば、前記スマネンのモノハロゲン化物に金属Mgを加えてGrignard試薬とした後、1,4-ジブロモブタンを加えてカップリングさせる方法がある。このようにすると、スマネンのベンジル位同士がテトラメチレン基で連結された化合物が得られる。さらに、必要に応じ、残りのベンジル位に前記の方法等で置換基を導入して目的の架橋体を得る。
【0072】
また、前記式(1)で表される化合物分子もしくはそのイオンもしくは架橋体に互変異性体、立体異性体、光学異性体等の異性体が存在する場合は、本発明の分子集合体は、前記式(1)で表される化合物分子もしくはそのイオンもしくは架橋体に代え、またはそれに加え、前記異性体を含むものであっても良い。さらに、前記式(1)の化合物およびその他本発明に係る化合物が塩を形成し得る場合は、本発明の分子集合体は、その塩を含む分子集合体であっても良い。前記塩は特に限定されず、例えば酸付加塩でも塩基付加塩でも良く、さらに、前記酸付加塩を形成する酸は無機酸でも有機酸でも良く、前記塩基付加塩を形成する塩基は無機塩基でも有機塩基でも良い。前記無機酸としては、特に限定されないが、例えば、硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸および、ヨウ化水素酸等があげられる。前記有機酸も特に限定されないが、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸等があげられる。前記無機塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩等があげられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウム等があげられる。前記有機塩基も特に限定されないが、例えば、エタノールアミン、トリエチルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等があげられる。
【0073】
前記式(1)で表される化合物の塩の製造方法も特に限定されず、例えば、前記式(1)で表される化合物に、前記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる等の方法で製造することができる。
【0074】
本発明の分子集合体では、前記式(1)において、A1〜A6、および前記X1〜X3上の置換基が下記の条件を満たすことが好ましい。
【0075】
(A1〜A6、および前記X1〜X3上の置換基の条件)
1〜A6はそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、直鎖もしくは分枝アルキル基、または芳香族炭化水素基であり、A1〜A6上にベンジル位水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、
前記A1〜A6上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、飽和もしくは不飽和炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換されたアルキル基、アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルカノイル基、またはアルコキシカルボニル基であるか、または、同一のAr(rは1から6までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するArとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
前記X1〜X3上の置換基は互いに同一であるかまたは異なり、
その結合するXa(aは1から3までのいずれかの整数)がメチレン基またはビニリデン基である場合は、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、飽和もしくは不飽和炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換されたアルキル基、アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルカノイル基、またはアルコキシカルボニル基であるか、または、同一のXa(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するXaとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
その結合するXaがイミノメチレン基またはイミノ基である場合は、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、飽和もしくは不飽和炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、1個以上のハロゲンで置換されたアルキル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルカノイル基、またはアルコキシカルボニル基である。
【0076】
また、前記式(1)において、A1〜A6、および前記X1〜X3上の置換基が下記の条件を満たすことがより好ましい。
【0077】
(A1〜A6、および前記X1〜X3上の置換基の条件)
1〜A6はそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、フェニル基、またはナフチル基であり、A1〜A6上にベンジル位水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、
前記A1〜A6上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、置換基を有するか有しない飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝炭化水素鎖、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基である)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基であるか、または、同一のAr(rは1から6までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するArとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
前記X1〜X3上の置換基は互いに同一であるかまたは異なり、
その結合するXa(aは1から3までのいずれかの整数)がメチレン基またはビニリデン基である場合は、ハロゲン、置換基を有するか有しない飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝炭化水素鎖、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基である)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基であるか、または、同一のXa(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するXaとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
その結合するXaがイミノメチレン基またはイミノ基である場合は、ハロゲン、置換基を有するか有しない飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝炭化水素鎖、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基である。
【0078】
そして、前記式(1)において、A1〜A6、および前記X1〜X3上の置換基が下記の条件を満たすことがさらに好ましい。
【0079】
(A1〜A6、および前記X1〜X3上の置換基の条件)
1〜A6はそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、フェニル基、またはナフチル基であり、A1〜A6上にベンジル位水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、
前記A1〜A6上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、炭素数1〜3000(特に好ましくは1〜300、最適には1〜30)の直鎖状炭化水素基(ただし、主鎖中の結合はそれぞれ飽和結合でも不飽和結合でも良く、主鎖上の水素原子は任意にハロゲン、またはメチル基で置換されていても良い)、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、下記式(9)〜(75)のいずれかの化合物から任意の1個の水素を除いた構造を有する環状置換基(ただし、上記環状置換基は、1個または複数の置換基でさらに置換されていても良く、それらの置換基は互いに同一であるかまたは異なり、前記置換基は、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、またはアミノ基である)、
【0080】
【化18】

【0081】
【化19】

【0082】
【化20】

【0083】
ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基である)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基であるか、または、同一のAr(rは1から6までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するArとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
前記X1〜X3上の置換基は互いに同一であるかまたは異なり、
その結合するXa(aは1から3までのいずれかの整数)がメチレン基またはビニリデン基である場合は、ハロゲン、炭素数1〜3000(特に好ましくは1〜300、最適には1〜30)の直鎖状炭化水素基(ただし、主鎖中の結合はそれぞれ飽和結合でも不飽和結合でも良く、主鎖上の水素原子は任意にハロゲン、またはメチル基で置換されていても良い)、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、前記式(9)〜(75)のいずれかの化合物から任意の1個の水素を除いた構造を有する環状置換基(ただし、上記環状置換基は、1個または複数の置換基でさらに置換されていても良く、それらの置換基は互いに同一であるかまたは異なり、前記置換基は、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、またはアミノ基である)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基である)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基であるか、または、同一のXa(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するXaとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
その結合するXaがイミノメチレン基またはイミノ基である場合は、ハロゲン、炭素数1〜3000(特に好ましくは1〜300、最適には1〜30)の直鎖状炭化水素基(ただし、主鎖中の結合はそれぞれ飽和結合でも不飽和結合でも良く、主鎖上の水素原子は任意にハロゲン、またはメチル基で置換されていても良い)、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、前記式(9)〜(75)のいずれかの化合物から任意の1個の水素を除いた構造を有する環状置換基(ただし、上記環状置換基は、1個または複数の置換基でさらに置換されていても良く、それらの置換基は互いに同一であるかまたは異なり、前記置換基は、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、またはアミノ基である)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基である。
【0084】
なお、本発明で「ハロゲン」とは、任意のハロゲン元素を指すが、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。また、アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基等があげられ、アルキル基をその構造中に含む基(例えば、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基等)についても同様である。不飽和炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、プロパルギル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基および2−ブテニル基等があげられる。アルカノイル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基およびイソバレリル基等があげられ、アルカノイル基をその構造中に含む基(アルカノイルオキシ基、アルカノイルアミノ基等)についても同様である。また、炭素数1のアルカノイル基とはホルミル基を指すものとし、アルカノイル基をその構造中に含む基についても同様とする。
【0085】
前記共役系高分子鎖またはオリゴマー鎖は、ポリフェニレン、オリゴフェニレン、ポリフェニレンビニレン、オリゴフェニレンビニレン、ポリエン、オリゴビニレン、ポリアセチレン、オリゴアセチレン、ポリピロール、オリゴピロール、ポリチオフェン、オリゴチオフェン、ポリアニリンおよびオリゴアニリン(ただし、これらは1個以上の置換基で置換されていても良いし、置換されていなくても良い)からなる群から選択される少なくとも一つであることがさらに好ましく、この場合の置換基は、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、およびアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つであることが特に好ましい。また、前記共役系高分子鎖またはオリゴマー鎖は、その式量が30〜30000の範囲であることがさらに好ましい。前記式量は、特に好ましくは50〜5000、最適には50〜1000である。
【0086】
また、前記式(1)において、前記同一のAr(rは1から6までのいずれかの整数)または同一のXa(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士が共有結合により結合され、それらの結合するArまたはXaとともに炭素環またはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成する場合、前記環の構成原子数が3〜20であり、前記置換基が、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、およびアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0087】
また、前記式(1)において、前記X1〜X3上の置換基のうち少なくとも一つが、その結合するXaおよびさらにそのXaが結合するベンゼン核と一体となって共役系を形成していれば、電気伝導性、電子移動性等の観点から、有機半導体の用途にさらに好ましく使用することができる。このような化合物は多数存在するが、例えば下記式(89)〜(91)で表される化合物等がある。ただし式(89)〜(91)の化合物は例示に過ぎず、これらに限定されるものではない。
【0088】
【化21】

【0089】
前記式(1)において、前記X1〜X3上の置換基が存在しない(すなわち、前記X1〜X3上の水素原子のいずれもが前記置換基により置換されていない)化合物は、そのまま本発明の分子集合体の原料として用いても良いが、その他の誘導体の合成原料等に使用しやすいため、前記その他の誘導体に変換してから本発明の分子集合体の原料として用いても良い。A1〜A6については、全て水素原子であることが、同様に、その他の誘導体の合成原料等や本発明の分子集合体の原料に使用しやすく好ましい場合があるが、A1〜A6がアルキル基や芳香族炭化水素基を含んでいても良い。
【0090】
また、前記式(1)において、X1〜X3は、例えば、メチレン基、ビニリデン基、イミノ基および酸素原子からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましく、X1〜X3の全てがメチレン基であることがより好ましい。特に、A1〜A6の全てが水素原子であり、かつ、X1〜X3の全てがメチレン基であり、そのいずれもが置換されていない化合物、すなわち母体化合物のスマネンは、各種誘導体の合成原料等として利用しやすいのみならず、それ自体も有機半導体用材料等に好適である。
【0091】
さらに、本発明の分子集合体は、前記式(1)で表される本発明の化合物またはその架橋体と、金属元素との錯形成構造を含む組成物であっても良く、前記式(1)の化合物またはその架橋体は、その互変異性体または立体異性体であっても良い。前記金属元素は、単一の金属元素でも二種類以上の金属元素を含んでいても良いが、例えば、遷移金属元素を含むことが好ましく、この遷移金属が、イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、W(タングステン)、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)およびオスミウム(Os)からなる群から選択される少なくとも一つを含むことがより好ましい。また、前記金属元素は、例えば有機半導体のドーパントとして含まれていても良い。
【0092】
次に、本発明の分子集合体を含む有機半導体および電子機器、特に有機トランジスタについて説明する。
【0093】
本発明の分子集合体の用途は特に限定されず、あらゆる用途への使用が可能であるが、本発明者らは、前述の通り、この分子集合体が有機半導体に好ましく使用できることを見出した。この有機半導体は、種々の電子機器に使用可能であり、中でも有機トランジスタ材料として有用である。また、前記有機半導体は、有機トランジスタに限定されず、他にもあらゆる電子機器に使用可能であるが、例えば、公知の有機デバイス、有機半導体、導電性ポリマー等が使用されている電子機器と同じ種類の電子機器に使用可能であり、より具体的には、例えば、コンデンサ、キャパシタ、電池、有機EL、燃料電池、有機太陽電池等の電子機器に用いることができる。
【0094】
前記有機半導体の形状は特に限定されないが、例えば薄膜状であることが、電子機器への使用等に好ましい。このような薄膜状の有機半導体の製造方法は、前記一般式(1)で表される化合物、その互変異性体、その立体異性体、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つを薄膜状に形成する工程を含む。前記薄膜状に形成する方法は、特に限定されず公知の製膜法を用いることができるが、例えば、蒸着法、化学的気相成長法、スピンコート法および印刷法からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。また、薄膜状に形成する際に、必要に応じ、前記一般式(1)で表される化合物、その互変異性体、その立体異性体、およびそれらの塩以外の成分を適宜併用しても良い。
【0095】
また、前記有機半導体は、導電性を所望の範囲とする等の目的で、ドーパントをさらに含んでいても良い。ドーパントとは、例えば、半導体の導電性を向上する等の目的で添加する物質であり、有機材料、例えば導電性高分子等の導電性を向上する目的で添加することもできる。
【0096】
前記有機半導体に含まれるドーパントは特に限定されず、公知のドーパント等を適宜用いることができ、例えば、下記のものが使用可能である。例えば、電子供与性の化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属、ユウロピウム等のランタノイド、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等があげられる。電子受容性の化合物として、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンおよびハロゲン元素を含む化合物、五フッ化リン、五フッ化砒素、五フッ化アンチモン、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素等のルイス酸、フッ酸、塩酸、硝酸、硫酸、過塩素酸等の無機酸、各種有機酸、アミノ酸、三塩化鉄、四塩化チタン、四塩化ジルコニウム、五塩化ニオブ、五塩化タンタル、三塩化セリウム等の遷移金属化合物、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等の電解質アニオン等があげられる。また、各種金属、例えば、イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、W(タングステン)、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)、オスミウム(Os)等の遷移金属もあげられる。ドーピング方法も特に限定されず、例えば電圧印加、レーザー光照射等の公知の方法を適宜用いることができる。
【0097】
また、前記有機半導体は、前記一般式(1)で表される化合物、その互変異性体、その立体異性体、およびそれらの塩からなる群から選択される物質以外に、必要に応じて、有機半導体としての性質を示すその他の物質を適宜含んでいても良い。
【0098】
本発明の分子集合体を用いた電子機器、特にトランジスタは、本発明の分子集合体から形成された有機半導体を含むことにより優れた性能を有する。前記トランジスタの構成は特に限定されず、任意の構成が可能であり、例えば、公知のトランジスタの半導体部分に代え、またはそれに加え、本発明の分子集合体から形成された有機半導体を含む構成であってもよい。前記トランジスタとしては、具体的には、例えば、薄型化等の観点から、薄層フィルム型トランジスタ(薄膜フィルム型トランジスタまたは薄膜フィルム型コンデンサなどとも呼ばれる)がより好ましい。また、前記トランジスタは、いわゆるバイポーラトランジスタでも電界効果型トランジスタ(電界効果型コンデンサなどとも呼ばれる)でも良いが、特に薄層フィルム型トランジスタである場合等は、製造しやすさ等の観点から、電界効果型トランジスタがより好ましい。
【0099】
本発明の分子集合体を用いたトランジスタの構成は、例えば、本発明の分子集合体から形成された有機半導体層に加え、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、および絶縁層を含む構成であっても良い。これら各構成要素は、例えば絶縁基板上に形成されていても良い。これら各構成要素の位置関係は、例えば従来のトランジスタと同様でも良く、例えば、前記有機半導体層と前記ゲート電極との間は前記絶縁層により隔てられており、かつ、前記ソース電極およびドレイン電極が前記有機半導体層に直接接していても良い。さらに、前記有機半導体層以外の各構成要素の材質および大きさ等は特に限定されず、例えば、従来のトランジスタと同様でも良い。また、前記トランジスタの構成はこれに限定されず、前述の通り任意の構成が可能である。さらに、前記トランジスタの製造方法も特に限定されず、例えば、従来のトランジスタと同様でも良く、より具体的には、例えば、前記有機半導体層を、前記蒸着法、化学的気相成長法、スピンコート法または印刷法等により形成し、それ以外の各構成要素は従来と同様に形成しても良い。
【0100】
本発明の分子集合体の用途は、前述の通り、有機半導体および有機トランジスタ材料に限定されず、例えば、各種電子材料等の工業用材料、金属内包型フラーレン化合物のモデル化合物等の基礎研究用材料、光増感剤、重合触媒等、あらゆる用途に使用可能である。
【実施例】
【0101】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0102】
(測定条件等)
核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、Varian社製のMercury300(商品名)という機器(1H測定時300MHz)を用いて測定した。ケミカルシフトは百万分率(ppm)で表している。内部標準0ppmには、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで示しており、略号s、d、t、q、mおよびbrは、それぞれ、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)および広幅線(broad)を表す。高分解能質量分析(HRMS)は、JEOL社製 JMS-DX-303(商品名)を用い、電子衝撃法または化学的イオン化法により測定した。紫外可視吸収スペクトルおよび発光スペクトル(UV-VIS)は、株式会社日立製作所製U-3500(商品名)を用いて測定した。測定値(波長)はnmで表している。赤外線吸収スペクトル(IR)は、日本分光株式会社製FT/IR 480 plus(商品名)を用い、KBr法により測定した。測定値(波数)はcm-1で表しており、略号mおよびwは、それぞれ、mediumおよびweakを表す。融点は、株式会社柳本製作所製Yanagimoto MicroPoint Apparatus(商品名)を用いて測定した。元素分析値は、Perkin-Elmer社製CHN-Corder PERKIN-ELMER 240C(商品名)を用いて測定した。X線構造解析は、株式会社リガク製 AFCC5R(商品名)X線回折装置を用い、グラファイトで単色化されたMo−Kα線を用いて解析した。電気伝導度は、ケースレーインスツルメンツ株式会社製エレクトロメーター6517(商品名)を用いて測定した。カラムクロマトグラフィー分離には、シリカゲル(商品名Wakogel CF-200、和光純薬工業株式会社)を用いた。薄層クロマトグラフィー(TLC)用のプレートは、和光純薬工業株式会社製Wakogel BF-5(商品名)を用いた。GPCは、日本分析工業株式会社製LC-908(商品名)を用いて行なった。全ての化学物質は、試薬級である。ノルボルナジエンは、東京化成工業株式会社から購入した(500mL、16000円)。n-BuLiのヘキサン溶液は関東化学株式会社から、(PCy3)2RuCl2=CHPhはAldrich社から、エチレンは大阪酸素工業株式会社から、t-BuOK、1,2-ジブロモエタン、ヨウ化銅(I)、トルエンおよびDDQは和光純薬工業株式会社からそれぞれ購入した。
【0103】
(スマネンの合成)
前記スキーム1に従い、スマネンを合成した。前記スキーム1を下に再掲する。
【0104】
【化22】

【0105】
以下、具体的な操作および手順等について説明する。
[ステップa: syn-ベンゾトリス(ノルボルナジエン)(前記式(87))の合成]
まず、1 L の3口フラスコを真空加熱乾燥した後アルゴン置換し、その中に、t-BuOK (120 mmol, 13.5 g)および脱水THFを180 mL 加えて攪拌した。次に、反応系の温度をマイナス78 ℃まで下げた後、攪拌を続けながら前記式(86)で表される化合物であるノルボルナジエン(2,5-norbornadiene, 240 mmol, 22.1 g)を加え、続いてn-BuLiのヘキサン溶液(濃度1.56 mol/L、n-BuLi 120 mmol相当量)を2時間かけ滴下した。滴下終了後、反応系の温度をマイナス40 ℃まで昇温し、さらに30分攪拌した。そして、前記系の温度をマイナス78℃に再び下げた後、1,2-ジブロモエタン (60 mmol, 11.3 g)を加え、その後再びマイナス40 ℃に昇温し、1時間半攪拌した。次に、再び前記系の温度をマイナス78 ℃に戻した後、ヨウ化銅(I) (120 mmol, 22.9 g)を加えた。そして、マイナス78℃で4時間攪拌後、冷却を停止し、徐々に室温まで戻しながらさらに7時間攪拌した。その後、飽和塩化アンモニウム水溶液を用いて反応を停止し、セライト濾過した。その濾液をエーテルで抽出し、残った水層をさらにエーテルで十分抽出した後、合わせた有機層を水で洗浄し、MgSO4で乾燥した。そして、減圧下溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (ヘキサン : ジクロロメタン = 4 :1)により分離し、syn-ベンゾトリス(ノルボルナジエン)(syn-benzotris(norbornadiene)、)とanti-ベンゾトリス(ノルボルナジエン)(anti-benzotris(norbornadiene))のジアステレオマー混合物を得た。さらに、その混合物をGPCにより分離し、目的物であるsyn-ベンゾトリス(ノルボルナジエン)(収量108 mg、単離収率2%)と、anti-ベンゾトリス(ノルボルナジエン)(収量270 mg、単離収率5%)とを得た。以下に、これらの化合物の物性値を示す。
【0106】
syn-ベンゾトリス(ノルボルナジエン): HRMS:270.1403、融点:195 ℃ (dec)、1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ= 6.57 (t, J=1.8 Hz, 6 H), 3.90-3.87 (m, 6 H), 2.22 (dt, J=7.2, 1.5 Hz, 3H), 2.08 (dt, J=7.2, 1.5 Hz, 3 H); 13C-NMR (75 MHz, CDCl3): 141.59, 137.66, 66.73, 17.44 ppm.
anti-ベンゾトリス(ノルボルナジエン): 1H-NMR (300 MHz, CDCl3):δ= 6.68 (t, J= 1.8 Hz, 2 H), 6.65 (dd, J=5.4, 3.0 Hz, 2 H), 6.59 (dd, J= 5.4, 3.0 Hz, 2 H), 3.90-3.87 (m, 2 H), 3.87-3.85 (m, 4 H), 2.05 (dt, J=7.2 1.5 Hz, 4 H), 2.00(dt, J=7.2, 1.5 Hz, 4 H)
[ステップb: ヘキサヒドロスマネン(前記式(88))の合成]
まず、200 mL3口フラスコを真空加熱乾燥後アルゴン置換し、その中に、syn-ベンゾトリス(ノルボルナジエン)(0.074 mmol, 20 mg)をトルエン100 mLに溶かした溶液を加えた。次に、系の温度をマイナス78 ℃に下げ、エチレンガスをバブリングして充分導入し、前記系内をエチレン雰囲気下とした。その後、前記系の温度を室温に戻し、(PCy3)2RuCl2=CHPh (0.0037 mmol, 3 mg, 5 mol%)を加え、エチレン雰囲気を維持したまま室温で24時間攪拌した。さらに、前記系内をアルゴン雰囲気下にし48時間加熱環流した後、反応混合物をシリカゲルによりろ過した。その濾液を減圧下溶媒留去し、得られた粗生成物を薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:トルエン=5 : 1)により単離し、さらに最終的にGPCにより精製し、目的化合物であるヘキサヒドロスマネン(hexahydrosumanene)を得た(収量4 mg、単離収率20%)。以下に、この化合物の物性値を示す。
【0107】
HRMS:Found:m/z = 270.1412, Calcd for C21H18:M = 270.1408、融点:180 ℃(dec)、1H-NMR(300 MHz, CDCl3):δ= 5.69 (s, 6 H), 3.81 (dd, 6 H, J = 9.9 and 7.2 Hz), 2.78 (dt, 3 H, J = 11.4 and 7.2 Hz), 1.01 (dt, 3H, J = 9.9 and 11.4 Hz); 13C-NMR (75 MHz, CDCl3): 141.91, 129.28, 43.66, 40.35 ppm.、IR(KBr):ν = 3010(m), 2919(m), 2814(m), 1595(w), 1445(w), 1260(w) cm-1、UV-VIS(CH2Cl2):最大吸収波長(Absorption λmax) = 240 nm, 最大発光波長(Emission λmax) = 331 nm(励起波長(Excitation λ) = 240 nm)
[ステップc: スマネン(前記式(84))の合成]
まず、10 mLの2口フラスコを真空加熱乾燥した後アルゴン置換した。次に、その中に、ヘキサヒドロスマネン (0.011 mmol, 3 mg)をトルエン2 mLに溶かした溶液をシリンジで加え、さらにDDQ (0.0385 mmol, 9 mg)を加えたのち、110℃で20時間加熱した。反応終了後、溶媒を減圧下留去し、残渣を薄層クロマトグラフィー(ヘキサン)により分離し、目的化合物のスマネンを得た(収量2 mg、単離収率67%)。以下に、この化合物の物性値を示す。また、図1〜5にこの化合物のUV-VIS吸収スペクトル図を示す。使用溶媒は、図1ではシクロヘキシルアミン(CHA)、図2ではテトラヒドロフラン(THF)、図3ではアセトニトリル(CH3CN)、図4ではジクロロメタン(CH2Cl2)であり、溶液の濃度はいずれも1.0×10-4 Mである。また、図5は、図1〜4の全てのスペクトル図を1つにまとめて示した図である。
【0108】
元素分析値:Found; C; 95.22, H; 4.77%; Calcd for C21H12 : C; 95.42, H; 4.58%、HRMS:Found:m/z = 264.0923, Calcd for C21H12:M = 264.0939、融点:115 ℃(空気中)、>290 ℃(窒素封入キャピラリー中)、1H-NMR(300 MHz, CDCl3): δ= 7.01 (s, 6 H), 4.71 (d, J = 19.5 Hz, 3 H), 3.42 (d, J = 19.5 Hz, 3 H); 13C-NMR (75 MHz, CDCl3): 148.78, 148.60, 123.15, 41.77 ppm.、IR(KBr):ν = 2950(m), 2922(s), 2852(m), 1653(m), 1558(m), 1260(w), 803(s) cm-1、UV-VIS(シクロヘキシルアミン(CHA)、1.0×10-4 M):最大吸収波長(Absorption λmax) = 279 nm(logε=4.56)、UV-VIS(テトラヒドロフラン(THF)、1.0×10-4 M):最大吸収波長(Absorption λmax) = 278 nm(logε=4.62)、UV-VIS(アセトニトリル(CH3CN)、1.0×10-4 M):最大吸収波長(Absorption λmax) = 276 nm(logε=4.25)、UV-VIS(CH2Cl2):最大吸収波長(Absorption λmax) = 278 nm(logε=4.52)、 最大発光波長(Emission λmax) = 376 nm(励起波長(Excitation λ) = 278 nm)
なお、温度可変1H-NMR(300 MHz, d10-p-xylene)を25℃〜140℃まで測定したところ、臨界温度Tcは140℃以上であり、反転エネルギーΔG‡は、前記Tcとケミカルシフト値とカップリング定数Jとから19.4 kcal/mol以上と計算された。
【0109】
以上の通り、安価で容易に入手可能なノルボルナジエンからわずか3段階でスマネンを合成することができた。また、全てのステップが極めで穏やかな条件であり、例えばDDQに変えて脱水素触媒を用いる等の工夫により、容易に工業プロセス化、大量合成が可能である。
【0110】
(結晶の製造および構造解析)
以下のようにして、スマネン結晶を製造し、その構造を解析した。すなわち、まず、前述のようにして製造したスマネンをテトラヒドロフランに溶かし、再結晶することにより、無色板状結晶(0.80mm×0.40mm×0.30mm)を得た。
【0111】
次に、この結晶の構造を、X線構造解析により解析した。以下、このX線構造解析について具体的に説明する。
[データ採取]
全ての測定は、前記スマネン結晶をグラスファイバー上に据え付け、グラファイト単色化Mo-Kα放射および回転陽極発生装置を備えた株式会社リガク製 AFCC5R(商品名)X線回折装置によって行った。
【0112】
データ採取のためのセル定数および配向マトリックスは、反射を斜方面体晶(六方晶軸)六方晶セル(ラウエクラス:−3ml)に対応する28.55 < 2θ < 29.49°の範囲に注意深く集中させた25の取り付け角を用いる最小二乗法から得た。そして、格子パラメーターを、下記(数1)の通り決定した。
【0113】
【数1】

【0114】
z=6およびF.W.=264.33であり、密度の計算値は、1.42g/cm3である。下記(数2)の消滅則に基づき、パッキングの考察、強度分布の統計的解析、構造の解析および最適化、空間群を、下記(数3)の通り決定した。
【0115】
【数2】

【0116】
【数3】

【0117】
前記データは、55.0°の最大2θ値のω-2θスキャン技術を用いる23±1℃の温度で収集した。データ収集に先だち、いくつかの強い反射のオメガスキャンが、6.0°のテイクオフ角度を伴う0.32°の高さの半分の平均幅を有していた。(1.68+0.30tanθ)°のスキャンは、16.0°/分(オメガ中)のスピードで行った。弱い反射(I<10.0σ(I))は、再スキャンし(最大5スキャン)、良い係数統計を確保するために計数を集積した。静止バックグラウンド係数は、前記反射の各面上で記録した。ピーク係数時間とバックグラウンド係数時間との比は、2:1であった。入射ビームコリメーターの直径は1.0mm、結晶から検知器までの距離は258mm、および前記検知器口径は9.0×13.0mm(水平×垂直)であった。
[データ整理]
前述の方法で収集した1063の反射のうち525が特別であった(Rint=0.016)。3個の典型的な反射の強さを、150反射毎の後に測定した。データ収集の進行によって、標準は2.5%増加した。直線の補正係数は、この現象を説明するためにデータに加えた。
【0118】
Mo-Kα放射の前記直線の吸収係数μは、0.8cm-1である。いくつかの反射の方位角スキャンに基づいた経験的吸収補正は、0.96から0.99に分布している透過率に帰着する。
[構造解析および最適化]
構造は直接法(下記参考文献1)によって解析し、フーリエ法(下記参考文献2)を用いて拡張した。非水素原子は、異方性で最適化を行い、水素原子は等方性で最適化を行った。フルマトリックス最小二乗法最適化(下記参考文献3)の最終サイクルは、493の観測された反射(I>2σ(I))および80の可変的なパラメーターに基づき、下記(数4)の減量および増量の一致した因子に集約した。
【0119】
【数4】

【0120】
単位重量の観測の標準偏差(下記参考文献4)は、1.22であった。フーリエ合成図の最終的な差の最大および最小ピークは、それぞれ0.36および-0.65e-/Å3に対応している。全ての計算は、Molecular Structure CorporationのteXsan(参考文献5)結晶学ソフトウェアパッケージを用いて行った。
【0121】
参考文献
(1) SIR92: Altomare, A., Burla, M.C., Camalli, M., Cascarano, M., Giacovazzo, C., Guagliardi, A., Polidori, G., (1994). J. Appl. Cryst. 27, 435.
(2) DIRDIF94: Beurskens, P.T., Admiraal, G., Beurskens, G., Bosman, W.P., de Gelder, R., Israel, R. and Smits, J.M.M.(1994). The DIRDIF-94 プログラムシステム, Technical Report of the Crystallography Laboratory, University of Nijmegen, The Netherlands.
(3) SHELXL-97: Sheldrick, G.M. (1997). 結晶構造最適化のためのプログラム University of Goettingen, Germany.
(4) 単位重量の観測の標準偏差:
【数5】

(5) teXsan: 結晶構造解析パッケージ, Molecular Structure Corporation (1985 & 1999)
【0122】
以上の通り行なったX線構造解析により得られた実験データを、下記(数6)〜(数8)、および(表1)〜(表9)に示す。なお、スマネンの分子式はC21H12であるが、分子がC3対称性を有するため、各原子に付された番号は、表中に示す通り、C(1)〜C(7)およびH(1)〜H(4)となっている。また、1Åは0.1nm(10-10m)に等しい。
【0123】
【数6】

【0124】
【数7】

【0125】
【数8】

【0126】
【表1】

【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

【0129】
【表4】

【0130】
【表5】

【0131】
【表6】

【0132】
【表7】

【0133】
【表8】

【0134】
【表9】

【0135】
図6および7に、前記X線構造解析により解析したスマネン結晶構造の概略図を示す。図6は、スマネン結晶中における分子配列を分子側面から見た概略図であり、図7は、スマネン結晶中における分子配列を分子上面から見た概略図である。図示の通り、得られた結晶中では、スマネン分子がボウル状構造を有しており、その二次配列は、ボウルが平行に重なるようにパッキングし、積層体を形成していた。また、各スマネン分子が、実質的に60°ずれながら、すなわち、その上または下に接して積層されているスマネン分子を60°回転させた角度で位置していた。なお、「60°回転させた角度で」と表現したが、スマネン分子はC3対称性を有するため、前記角度を「180°」または「300°」と表現しても、同じ状態を表す。
【0136】
さらに、前記表中に示したスマネン分子中の炭素原子間結合長を、下記化学式に示す。単位はÅである。なお、前述の通り、1Åは0.1nm(10-10m)に等しい。図示の通り、前記X線構造解析により解析したスマネン分子中のベンゼン環構造、特に中心部位のベンゼン環構造中では、各結合長間にわずかな違いが見られる。これは、電荷の若干の偏りを反映していると考えられる。そして、各スマネン分子間において電子密度の高い部分と低い部分とが引き合うために、前述の通り、各分子が、その上または下に接した分子と実質的に60°(または180°もしくは300°)ずれながら平行に積層され、芳香環のπ電子が効率よくパッキングされると推測される。ただし、この説明は、推測されるメカニズムの一例であり、本発明を限定するものではない。
【0137】
【化23】

【0138】
次に、このようなスマネン結晶の電気伝導度および電子移動性を測定し、前記結晶が、有機半導体として優れた電気伝導性および電子移動性を示すことを確認した。
【0139】
(スマネン結晶の電気伝導度測定)
まず、前述のようにして製造したスマネンを、X線構造解析測定時と同様にしてテトラヒドロフラン中で再結晶することにより、無色板状結晶を得た。次に、これを、断面積0.00044cm、結晶長0.10cmのサンプルサイズにカットし、このサンプルを用いて電気伝導度をアルゴン雰囲気下で測定したところ、伝導度は7×10-10 S/cmであった。すなわち、本実施例で得られたスマネン単結晶は半導体としての性質を有していた。
【0140】
(スマネンの電子移動度)
前記と同様のスマネン単結晶について電子移動度を測定したところ、有機トランジスタ材料として、特に電界効果型トランジスタや薄層フィルム型トランジスタ材料として有用な大きな電子移動度を示した。
【0141】
(薄層フィルム型トランジスタ)
さらに、前記のようにして合成したスマネンを用い、スマネンから形成された有機半導体層を有する、電界効果型の薄層フィルム型トランジスタを作成した。この薄層フィルム型トランジスタの性能を評価したところ、電気伝導度および電子移動度等が高く、トランジスタとして優れた性能を有していた。
【0142】
以上の通り、本実施例で得られたスマネンを、テトラヒドロフラン中で再結晶することにより板状結晶とし、X線構造解析したところ、スマネン分子はいわゆるボウル状構造を有しており、また、その二次配列は、ボウルが平行に重なるようにパッキングし、積層体を形成していた。また、パッキングの際には、層をなすスマネン分子が、その上または下に接したスマネン分子と実質的に60°(または180°もしくは300°)ずれながら積層していた。さらに、スマネン単結晶の電気伝導度を測定し、有機半導体としての性質を示すことを確認した。すなわち、スマネンをテトラヒドロフラン中で再結晶することにより板状結晶とし、電気伝導度を測定したところ、有機半導体として優れた電気伝導度を示し、電子材料として、特に、有機トランジスタ材料等に用いる有機半導体として有用であることが確認された。また、大きな電子移動度を示すことからも、有機トランジスタ材料として、特に電界効果型トランジスタや薄層フィルム型トランジスタ材料として有用性があることを確認した。さらに、実際に、スマネンから形成された有機半導体層を有する電界効果型の薄層フィルム型トランジスタを作成し、性能を評価したところ、電気伝導度および電子移動度等が高く、トランジスタとして優れた性能を有していることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0143】
以上説明した通り、本発明の分子集合体は、例えば、電気的性質等において優れ、有機半導体等の用途に好ましく使用することができ、産業上有用である。この有機半導体は、種々の電子機器に使用可能であり、中でも有機トランジスタ材料として有用である。本発明の分子集合体を用いた電子機器、特にトランジスタは、本発明の分子集合体から形成された有機半導体を含むことにより優れた性能を有する。前記トランジスタとしては、特に限定されないが、例えば、電界効果型トランジスタまたは薄層フィルム型トランジスタがより好ましい。さらに、本発明の分子集合体の用途は、有機半導体および有機トランジスタ材料に限定されず、例えば、各種電子材料等の工業用材料、金属内包型フラーレン化合物のモデル化合物等の基礎研究用材料、光増感剤、重合触媒等、あらゆる用途に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】スマネンのUV-VISスペクトル図であり、使用溶媒はCHAである。
【図2】スマネンのUV-VISスペクトル図であり、使用溶媒はTHFである。
【図3】スマネンのUV-VISスペクトル図であり、使用溶媒はCH3CNである。
【図4】スマネンのUV-VISスペクトル図であり、使用溶媒はCH2Cl2である。
【図5】図1〜4の全てのスペクトル図を1つにまとめて示した図である。
【図6】スマネン結晶中における分子配列を分子側面から見た概略図である。
【図7】スマネン結晶中における分子配列を分子上面から見た概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物分子、その互変異性体分子、その立体異性体分子、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つの分子が集合した分子集合体であって、前記分子またはそのイオンが上下方向に積層した構造を有する分子集合体。
【化1】

式(1)中、A1〜A6はそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、直鎖もしくは分枝アルキル基、または芳香族炭化水素基であり、A1〜A6上にベンジル位水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、
前記A1〜A6上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、電子供与基または電子求引基であるか、または、同一のAr(rは1から6までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するArとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
1〜X3はそれぞれ同一であるかまたは異なり、メチレン基(下記式(2))、ビニリデン基(下記式(3))、カルボニル基(下記式(4))、チオカルボニル基(下記式(5))、イミノメチレン基(下記式(6))、イミノ基(下記式(7))、または酸素原子(下記式(8))、であり、X1〜X3上に水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、
【化2】

前記X1〜X3上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、電子供与基または電子求引基であるか、または、同一のXa(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するXaとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良い。
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物分子またはそのイオンにおいて、原子団X1中でスマネン骨格中のベンゼン環と直接結合している原子をxIとし、原子団X2中でスマネン骨格中のベンゼン環と直接結合している原子をxIIとし、原子団X3中でスマネン骨格中のベンゼン環と直接結合している原子をxIIIとし、xI、xIIおよびxIIIの3原子を含む平面をx面と定義した場合に、前記分子またはそのイオンの積層構造中において、各分子またはイオンの前記x面同士が互いに平行である、請求項1記載の分子集合体。
【請求項3】
前記式(1)で表される化合物分子またはそのイオンにおいて、前記xI、xIIおよびxIIIの3原子を頂点とする三角形を定義した場合に、前記分子またはそのイオンの積層構造中において、任意の前記分子またはイオン中における前記三角形が、その上または下に接して積層されている分子またはイオンの前記三角形に対し、前記x面内で60°±10°、180°±10°または300°±10°回転させた角度で位置する、請求項2記載の分子集合体。
【請求項4】
結晶構造を有する請求項1〜3のいずれかに記載の分子集合体。
【請求項5】
前記式(1)において、A1〜A6、および前記X1〜X3上の置換基が下記の条件を満たす請求項1〜4のいずれかに記載の分子集合体。
(A1〜A6、および前記X1〜X3上の置換基の条件)
1〜A6はそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、直鎖もしくは分枝アルキル基、または芳香族炭化水素基であり、A1〜A6上にベンジル位水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、
前記A1〜A6上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、飽和もしくは不飽和炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換されたアルキル基、アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルカノイル基、またはアルコキシカルボニル基であるか、または、同一のAr(rは1から6までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するArとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
前記X1〜X3上の置換基は互いに同一であるかまたは異なり、
その結合するXa(aは1から3までのいずれかの整数)がメチレン基またはビニリデン基である場合は、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、飽和もしくは不飽和炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換されたアルキル基、アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルカノイル基、またはアルコキシカルボニル基であるか、または、同一のXa(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するXaとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
その結合するXaがイミノメチレン基またはイミノ基である場合は、ハロゲン、直鎖状もしくは分枝状の低分子もしくは高分子鎖(ただし、その主鎖および側鎖中には、ヘテロ原子を含んでいてもいなくても良く、不飽和結合を含んでいてもいなくても良く、環状構造を含んでいてもいなくても良い)、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、飽和もしくは不飽和炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、1個以上のハロゲンで置換されたアルキル基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、アルカノイル基、またはアルコキシカルボニル基である。
【請求項6】
前記式(1)において、A1〜A6、および前記X1〜X3上の置換基が下記の条件を満たす請求項1〜4のいずれかに記載の分子集合体。
(A1〜A6、および前記X1〜X3上の置換基の条件)
1〜A6はそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、フェニル基またはナフチル基であり、A1〜A6上にベンジル位水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、
前記A1〜A6上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、置換基を有するか有しない飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝炭化水素鎖、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基である)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基であるか、または、同一のAr(rは1から6までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するArとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
前記X1〜X3上の置換基は互いに同一であるかまたは異なり、
その結合するXa(aは1から3までのいずれかの整数)がメチレン基またはビニリデン基である場合は、ハロゲン、置換基を有するか有しない飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝炭化水素鎖、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基である)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基であるか、または、同一のXa(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するXaとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
その結合するXaがイミノメチレン基またはイミノ基である場合は、ハロゲン、置換基を有するか有しない飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝炭化水素鎖、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、環構成原子数が3〜20である炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基である。
【請求項7】
前記式(1)において、A1〜A6、および前記X1〜X3上の置換基が下記の条件を満たす請求項1〜4のいずれかに記載の分子集合体。
(A1〜A6、および前記X1〜X3上の置換基の条件)
1〜A6はそれぞれ同一であるかまたは異なり、水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、フェニル基またはナフチル基であり、A1〜A6上にベンジル位水素原子が存在する場合は、その水素原子は置換基によって置換されていても良く、
前記A1〜A6上の置換基は、それぞれ同一であるかまたは異なり、ハロゲン、炭素数1〜3000の直鎖状炭化水素基(ただし、主鎖中の結合はそれぞれ飽和結合でも不飽和結合でも良く、主鎖上の水素原子は任意にハロゲン、またはメチル基で置換されていても良い)、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、下記式(9)〜(75)のいずれかの化合物から任意の1個の水素を除いた構造を有する環状置換基(ただし、上記環状置換基は、1個または複数の置換基でさらに置換されていても良く、それらの置換基は互いに同一であるかまたは異なり、前記置換基は、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、またはアミノ基である)、
【化3】

【化4】

【化5】

ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基である)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基であるか、または、同一のAr(rは1から6までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するArとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
前記X1〜X3上の置換基は互いに同一であるかまたは異なり、
その結合するXa(aは1から3までのいずれかの整数)がメチレン基またはビニリデン基である場合は、ハロゲン、炭素数1〜3000の直鎖状炭化水素基(ただし、主鎖中の結合はそれぞれ飽和結合でも不飽和結合でも良く、主鎖上の水素原子は任意にハロゲン、またはメチル基で置換されていても良い)、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、前記式(9)〜(75)のいずれかの化合物から任意の1個の水素を除いた構造を有する環状置換基(ただし、上記環状置換基は、1個または複数の置換基でさらに置換されていても良く、それらの置換基は互いに同一であるかまたは異なり、前記置換基は、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、またはアミノ基である)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、アミノ基、オキシアミノ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基(ただし、そのアルキル基は炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基である)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルホニル基(ただし、そのアルキル基は1個以上のハロゲンで置換されていても良い。)、スルファモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルスルファモイル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基であるか、または、同一のXa(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士は、共有結合により結合され、それらの結合するXaとともに炭素環もしくはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成しても良く、
その結合するXaがイミノメチレン基またはイミノ基である場合は、ハロゲン、炭素数1〜3000の直鎖状炭化水素基(ただし、主鎖中の結合はそれぞれ飽和結合でも不飽和結合でも良く、主鎖上の水素原子は任意にハロゲン、またはメチル基で置換されていても良い)、共役系高分子鎖もしくはオリゴマー鎖、前記式(9)〜(75)のいずれかの化合物から任意の1個の水素を除いた構造を有する環状置換基(ただし、上記環状置換基は、1個または複数の置換基でさらに置換されていても良く、それらの置換基は互いに同一であるかまたは異なり、前記置換基は、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、またはアミノ基である)、ヒドロキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分枝不飽和炭化水素基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイルオキシ基、1個以上のハロゲンで置換された炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、カルボキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキルカルバモイル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルカノイル基、または炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルコキシカルボニル基である。
【請求項8】
前記共役系高分子鎖またはオリゴマー鎖が、ポリフェニレン、オリゴフェニレン、ポリフェニレンビニレン、オリゴフェニレンビニレン、ポリエン、オリゴビニレン、ポリアセチレン、オリゴアセチレン、ポリピロール、オリゴピロール、ポリチオフェン、オリゴチオフェン、ポリアニリンおよびオリゴアニリン(ただし、これらは1個以上の置換基で置換されていても良いし、置換されていなくても良い)からなる群から選択される少なくとも一つである請求項6または7記載の分子集合体。
【請求項9】
前記置換基が、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、およびアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つである請求項8記載の分子集合体。
【請求項10】
前記共役系高分子鎖またはオリゴマー鎖の式量が30〜30000の範囲である請求項6〜9のいずれかに記載の分子集合体。
【請求項11】
前記式(1)において、前記同一のAr(rは1から6までのいずれかの整数)または同一のXa(aは1から3までのいずれかの整数)に結合する置換基同士が共有結合により結合され、それらの結合するArまたはXaとともに炭素環またはヘテロ環(ただし、単環でも縮合環でも、飽和でも不飽和でも良く、置換基を有していてもいなくても良い)を形成する場合、前記環の構成原子数が3〜20であり、前記置換基が、ハロゲン、メチル基、ヒドロキシ基、メトキシ基、オキソ基、およびアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1〜10のいずれかに記載の分子集合体。
【請求項12】
前記式(1)において、前記X1〜X3上の置換基のうち少なくとも一つが、その結合するXaおよびさらにそのXaが結合するベンゼン核と一体となって共役系を形成する請求項1〜11のいずれかに記載の分子集合体。
【請求項13】
前記式(1)において、A1〜A6の全てが水素原子である請求項1〜12のいずれかに記載の分子集合体。
【請求項14】
前記式(1)において、前記X1〜X3上の置換基が存在しない(すなわち、前記X1〜X3上の水素原子のいずれもが前記置換基により置換されていない)請求項1〜13のいずれかに記載の分子集合体。
【請求項15】
前記式(1)において、X1〜X3が、メチレン基、ビニリデン基、イミノ基および酸素原子からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1〜14のいずれかに記載の分子集合体。
【請求項16】
前記式(1)において、X1〜X3の全てがメチレン基である請求項1〜15のいずれかに記載の分子集合体。
【請求項17】
前記式(1)で表される化合物またはその互変異性体もしくは立体異性体と、金属元素との錯形成構造を含む、請求項1〜16のいずれかに記載の分子集合体。
【請求項18】
前記金属元素が遷移金属元素を含む請求項17記載の分子集合体。
【請求項19】
前記遷移金属元素が、イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、W(タングステン)、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)およびオスミウム(Os)からなる群から選択される少なくとも一つを含む請求項18記載の分子集合体。
【請求項20】
前記式(1)で表される化合物分子もしくはそのイオンに代え、またはそれに加え、前記式(1)で表される化合物分子から誘導される基が、二個以上、共有結合および架橋鎖の少なくとも一方により連結されている構造を有する化合物分子もしくはそのイオンを含み、前記二個以上の基の構造は互いに同一であるかまたは異なる、請求項1〜19のいずれかに記載の分子集合体。
【請求項21】
前記架橋鎖が、メチレン基または炭素数2〜10のポリメチレン基であり、さらに、前記二個以上の基が、それぞれ少なくとも一つのベンジル位炭素を含み、前記共有結合または架橋鎖との結合部位が前記ベンジル位炭素である請求項20記載の分子集合体。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれかに記載の分子集合体の製造方法であって、前記一般式(1)で表される化合物、その互変異性体、その立体異性体、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つを溶媒に溶解後、再結晶する工程を含む製造方法。
【請求項23】
請求項1〜21のいずれかに記載の分子集合体の製造方法であって、前記一般式(1)で表される化合物、その互変異性体、その立体異性体、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つを融解後、固体化する工程を含む製造方法。
【請求項24】
請求項22または23に記載の製造方法であって、前記式(1)で表される化合物分子もしくはそのイオンに代え、またはそれに加え、前記式(1)で表される化合物の分子から誘導される基が、二個以上、共有結合および架橋鎖の少なくとも一方により連結されている構造を有する化合物分子もしくはそのイオンを用い、前記二個以上の基の構造は互いに同一であるかまたは異なる製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−45062(P2006−45062A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224096(P2004−224096)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】