説明

分岐ペプチド両親媒性物質、関連するエピトープ化合物およびその自己集合構造物

1つ以上のエピトープ配列に結合するためのペンダントアミノ基を提供する1つ以上の残基を組み込んだ分岐鎖状ペプチド両親媒性物質化合物、エピトープ提示を増強するためのこのような化合物および関連組成物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
生物学におけるリガンドおよび受容体における分子認識には、エピトープの適当な提示が必要である。細胞外マトリックスにおける細胞接着リガンドは、細胞接着および付着において重要な役割を果たしており、細胞増殖、分化および通常の代謝活動の維持に影響する。最近、再生医療または標的化学療法において重要な生物学的事象を誘発するために、人工的なエピトープを有する細胞構造を模倣している骨格の設計に多大な関心が寄せられている。これらの人工的な細胞骨格上での信号の分布および構造的な提示の変化に伴う細胞応答の差が報告されている。例えば、細胞接着リガンド間のナノスケールの間隔を変化させると、信号の認識およびその後の細胞の増殖を改善することが見出されている。バイオマテリアルを合成するために使用される種々の方法のうち、自己集合は、細胞を封入し、インサイチューにおいて集合することができる分子の溶液から骨格を作製するための特に興味を引くツールである。
【0002】
本願は、全体の内容が参照により本明細書に組み入れられる、2003年12月5日提出の出願番号第60/527,442号の優先権の利益を主張する。
【0003】
米国政府は、エネルギー省(Department of Energy)からノースウェスタン大学(Northwestern University)への付与番号DE-FG02-00ER54810に準じ本発明のある種の権利を有する。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
上記を考慮すると、本発明の目的は、生物学的に活性のエピトープを送達し、提示するための分子構造を提供し、それによって上記に概略したものを含む、当技術分野における種々の懸念に対処することである。本発明の1つ以上の局面はある種の目的を満たすことができるが、1つ以上の他の局面はある種の他の目的を満たすことができることが当業者によって理解される。各目的は、本発明の全ての局面に、あらゆる点で等しく適用しないことがある。従って、以下の目的は、本発明の任意の1つの局面に関して別の方法で考察することができる。
【0005】
本発明の目的は、多種多様の生物活性エピトープの構造的提示のために自己集合することができる化合物および関連する組成物を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、エピトープ提示および対応する信号認識を増強する化合物を含む分子構造を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、エピトープ/細胞接着リガンドを分離するのための三次元構造を有する多種多様の両親媒性ペプチド化合物であって、このようなエピトープ/細胞接着リガンドを提示および分布するために、生理的条件下において、自己集合することができるこのような化合物を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的、特徴、利益および利点は、この開示および以下に記載するある種の態様から明らかであり、種々の両親媒性化合物、自己集合技法およびペプチド合成の知識を有する当業者に容易に明らかになる。このような目的、特徴、利益および利点は、添付の実施例、データ、図面およびそれらから引き出される全ての適当な推論と共に考慮すると、上記単独または組み入れられている参照文献の考慮と共に上記から明らかになる。
【0009】
一部には、本発明は非-直鎖状ペプチド両親媒性化合物を含むことができる。このような化合物は、ペンダントアミノ基を含む少なくとも1つのアミノ酸残基を含むペプチド成分を含む。アミノ基は、ペプチド成分の長さ方向または長手軸に非-直鎖状の成分がカップリングまたは直接結合されていてもよい。このような化合物に両親媒性特性を提供すると、ペプチド成分は疎水性成分がカップリングまたは直接結合される。以下にさらに詳細に考察されているように、上記のアミノ酸残基は天然型または非-天然型アミノ酸由来であってもよい。同様に、ペンダントアミノ基は、ペプチド成分に組み込む前または組み込んだ後に別の官能基から誘導されてもよい。さらに、当業者に理解されるように、このような側基は、化合物に分岐鎖状または非-直鎖状構造を提供するために、別の成分に機能的にカップリングまたは直接結合することができる任意の基を含んでもよい。ともかく、ある種の態様において、このような残基は、リシンを含むが、これらに限定されないいくつかの天然型アミノ酸の1つ由来であってもよい。
【0010】
少なくとも2つのこのような残基の組み込みを使用して、ペプチド成分に1つ以上の生物活性エピトープ配列をカップリングすることができる。このような配列には、各々全体の内容が参照により本明細書に組み入れられる、2003年2月18日提出の同時係属出願第10/368,517号(国際公報WO 03/070749)および発明の名称「Self Assembling Peptide Amphiphiles and Related Methods for Growth Factor Delivery」の同時係属出願に提供されているものが挙げられるが、それに限定されるわけではない。従って、このような配列は、例えば細胞増殖、分化および/または代謝に関連する公知のおよび/または入手可能な細胞接着リガンド、それらのバイオミメティック形態および/またはある範囲の増殖因子および/または関連する形態形成タンパク質、ペプチドまたは他の関連する分子成分と相互作用し、上記の同時係属同時提出(co-filed)出願に記載されているものを含むが、これらに限定されない公知のファージディスプレイ法により同定することができる結合配列から選択することができる。
【0011】
以下にさらに詳細に記載するように、当技術分野において公知であると思われる(例えば、さらに分岐鎖状または環状構造に)配列および/または構成されているこのようなエピトープ配列に本発明の両親媒性化合物のペプチド成分のN-末端またはN-末端付近をカップリングまたは直接結合することができる。このような残基がリシン由来または別のこのような天然型アミノ酸由来であるかどうかにかかわらず、エピトープの数およびアイデンティティーは、このような残基および利用可能な側基の化学的機能に応じて変わってもよい。同様に、ペプチド成分の長さまたは配列も、望ましいフレキシビリティ、荷電および/または分子間誘引または結合能に応じて変わってもよい。このような化合物の疎水性成分も変わってもよく(例えば、〜C6-〜C22アルキルまたは置換アルキル、飽和または不飽和等)、得られる両親媒性およびこのような化合物の関連するシステムに対する影響によってのみ制限されることがある。
【0012】
以下にさらに詳細に記載するように、本発明は、分岐鎖状ペプチド両親媒性化合物(PA)に関し、その態様は、生理的pH条件下において、ナノファイバーに自己集合することができる。例えばpH 7.4のリン酸緩衝液を添加する場合および塩基性条件において、またはそれでなければ生理的条件において、分岐鎖状ペプチド配列を有するこのようなPAは、セルフ-サポート型ゲル試料を形成する円筒形ミセルに自己集合する。分岐鎖状ペプチド配列を有するこのようなPAは、自己集合ナノファイバーの表面において生物学的に活性なペプチド配列の露出を良好にすることができる。分岐鎖状ペプチド成分を有するペプチド両親媒性物質は、1つのペプチド両親媒性物質からの多数のエピトープの提示を可能にすることもできる。このような生物学的に活性なペプチドエピトープの例には、Arg-Gly-Asp-Ser-(RGDS)、Pro-His-Ser-Arg-Asn(PHSRN)、Ile-Lys-Val-Ala-Val(KVAN)およびTyr-Ile-Gly-Ser-Arg(YIGSR)を含む配列が挙げられるが、それに限定されるわけではない。このようなペプチド配列またはエピトープは、このような化合物または集合物に細胞接着性または細胞受容体結合特性を与えるために使用することができるが、これに限定されない。
【0013】
本発明の態様は、自己集合すると、ナノファイバー構造の周辺部に、細胞接着を促進する相乗的な配列を有する1つ以上のエピトープを配置する、エピトープを有する分岐鎖状ペプチド両親媒性物質を含んでもよい。本発明の別の態様は、分岐鎖状PA化合物に存在する2つ以上の生物学的に機能のある基を含んでもよい。任意の1つの理論に制限するのではないが、分岐は、集合物の表面の基および/またはエピトープの接近性および提示を良好にすることが考えられる。
【0014】
本発明の別の態様は、組織修復または骨成長に限定されない目的のために本発明のペプチド両親媒性物質のいずれかの細胞投与を含む治療法を含んでもよい。ある態様において、ペプチド両親媒性物質は投与前に自己集合する、または細胞接触もしくは細胞環境への投与の結果もしくはその後に自己集合する。分岐鎖状ペプチド部分を有するペプチド両親媒性物質を含む自己集合ナノファイバーは、細胞試料または哺乳類/患者の細胞もしくは組織部位に治療の一部として送達することができるミセルの疎水性成分またはミセルの表面の1つ以上のエピトープに結合している細胞または治療薬または組成物も含んでもよいが、これに限定されない。このような態様は、種々の細胞および/または抗-炎症化合物、化学療法化合物およびこれらの組み合わせなどであるが、これに限定されない治療薬を封入しても、エピトープに結合してもまたは提示してもよい。
【0015】
分岐鎖状ペプチド配列を含むペプチド両親媒性物質は、望ましい機能により選択される異なるエピトープと共に医学的用途に使用することができる。これらのペプチド両親媒性物質から製造される自己集合材料は、インビトロまたはインビボにおける組織移植、再建組織の増殖または組織増殖のための骨格として使用することができる。分岐鎖状ペプチド配列を有するペプチド両親媒性物質の両親媒性を使用して、ナノファイバーのコアに疎水性薬剤を封入することができる。また、分光プローブの使用を代表して、Gd錯化DOTA分子を、インビトロまたはインビボにおける組織または細胞の核磁気共鳴画像形成検討のためのナノファイバーのエピトープの1つとして結合することができる。
【0016】
ある態様の詳細な説明
本発明の態様は、自己集合してミセルを形成することができる分岐鎖状ペプチド配列を有するペプチド両親媒性物質を含む。このようなミセルには、円筒形ファイバーまたはナノファイバーが挙げられるが、それに限定されるわけではない。本明細書において開示されている自己集合構造物はナノファイバーであるが、本発明は任意の自己集合構造を含み、本発明はナノファイバーに限定されない。
【0017】
本発明において、ペプチド両親媒性物質は、種々の基がカップリングまたは化学的に結合することができる2つ以上の分岐を含んでもよい。これらの基またはエピトープは生物学的に活性であってもよく、アミノ酸、細胞接着ペプチド配列、ペプチド、ファージディスプレイ法によって誘導されるペプチドおよびタンパク質配列、蛍光プローブ、放射性プローブ、磁気プローブおよびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。図1か4に単に例として例示するように、分岐鎖状ペプチド成分を有するペプチド両親媒性化合物には、1つ以上のペプチドまたはアミノ酸残基(例えば、PA6)がリシン(K)などであるが、これに限定されない分岐鎖状アミノ酸に結合しているもの;エピトープおよび側鎖ペプチドまたはアミノ酸残基(例えば、PA 1、4および7)がリシン(K)などであるが、これに限定されない分岐鎖状アミノ酸に結合しているもの;2つ以上の同じエピトープ(例えば、PA2)がリシン(K)などであるが、これに限定されない分岐鎖状アミノ酸に結合しているもの;ならびに多数のエピトープ(例えば、PA 3および5)がリシン(K)などであるが、これに限定されない分岐鎖状アミノ酸に結合しているものを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0018】
例としてにすぎないが、本発明のペプチド両親媒性物質(7)は、C16アルキル鎖であってもよい疎水性成分および分岐鎖状ペプチド成分を有する。ペプチド成分は、分岐鎖状アミノ酸残基リシン(K)および以下の図4に示すエピトープ(DOTA-KG-RGDS-K)を含む。
【0019】
PA7において、ペプチド成分(K-LLL-AAA-(K))は、リシンを有するC-末端方向の疎水性成分に結合している。ペプチド成分は、分岐鎖状アミノ酸(例えば、K)を介して非-直鎖状の少なくとも成分を有することができる。ペプチド分岐鎖の一方または両方は、アミノ酸、細胞接着配列、ペプチド、ファージディスプレイ方によって誘導されるペプチドおよびタンパク質配列、蛍光プローブ、磁気プローブまたはこれらの組み合わせなどであるが、これに限定されない生物学的に活性なエピトープを含むことができる。
【0020】
自己集合ナノファイバーにおける分岐鎖状ペプチド配列を有するペプチド両親媒性物質の存在は、外部分子に対する分岐鎖状ペプチドのエピトープのすぐれた露出、接近性または利用性を提供することができる。この接近性は、組織再生、組織移植のための骨格、細胞認識および再建外科などであるが、これに限定されないバイオメディカル適用の重要な利点を有しうる。
【0021】
本発明の分岐ペプチド(1)における1つのRGDS配列の提示は、自己集合されるナノファイバーの周辺部において容易に認識されるエピトープであるように設計されている本発明の生物学的に活性なペプチド両親媒性物質の限定するものではない例である。従来技術の直鎖状PAはエピトープを1つしか含有することができない。本発明の分岐鎖状システムでは、2つ以上のエピトープを使用して、生物活性を改善することができる。この目的のために、例えば、図1の(PA 3)および図2のPA 5によって示すように、細胞接着エピトープの相乗的な配列を同じPA上に合成してもよい。現在では、イオンの添加または酸性もしくは塩基性条件へのpHの変化が、従来のPAナノファイバーを形成するために使用される方法である。本発明の分岐鎖状PAは、有利なことに、中性pHおよび酸性条件下においてナノファイバーおよびセルフ-サポート型ゲルを形成する。生理的pHにおけるナノファイバー形成は、このようなペプチド両親媒性物質の生物適用のほとんどの望ましい特性である。固相合成により多数の官能基をこれらの分岐鎖状PAに結合することができる。蛍光プローブは、リシンアミノ酸の遊離アミノ基に結合することができる。また、本発明のペプチド両親媒性物質から製造されるナノファイバーの親水性表面の遊離アミン基は他のイオン感知プローブに利用可能であると思われる。DOTA分岐鎖状PA7は、この種類のペプチド両親媒性化合物の1つではない例である。分岐鎖状PA 7のGd錯化DOTA部分は、磁気共鳴画像形成の有用な緩和検討となりうる。
【0022】
種々の薬剤または試薬を使用して、本発明のペプチド両親媒性物質を自己集合することができる。このような薬剤には、相補的に荷電しているペプチド両親媒性物質、酸または塩基、多価イオン、脱水およびこれらの組み合わせを挙げることができるが、それに限定されるわけではない。好ましくは、本発明の分岐鎖状PAは、生理的pHまたは酸性条件においてまたはそれに達したとき、ナノファイバーおよびセルフ-サポート型ゲルを形成する。
【0023】
他のペプチドにカップリングするのに有用なペンダントアミノ基を有するアミノ酸を使用して、本発明のペプチド両親媒性物質の分岐鎖状構造を合成することができる。1つ以上のこのような残基をペプチド成分に組み入れて、多数の分岐部位を形成することができる。図1のペプチド両親媒性物質1は、ペプチド両親媒性物質の骨格に分岐鎖状アミノ酸リシンを有し、RGDS-Kエピトープ方向の分岐鎖および別のリシンアミノ酸(K-)を有する。2つ以上の分岐が必要である場合には、ペプチド両親媒性物質(2)について図1に例示するように、各々側鎖基および/またはアミノ基を有する多数のアミノ酸を使用することができる。リシンは、その化学性を改良するために使用することができる2つのアミノ官能基を有するので、リシンは、本発明においてペプチド両親媒性物質の分岐鎖を合成するために使用することができる。しかし、本発明はリシンに限定されず、アミンまたはペプチドの固相合成のための他の有用な官能基に変換されうる2つ以上の官能基を有する他のアミノ酸を分岐鎖状アミノ酸に使用することができる。例えば、天然型アミノ酸およびβもしくはγアミノ酸などの非-天然型アミノ酸を含むが、これらに限定されないアミノ側鎖を有するアミノ酸を使用することができる。好ましくは、少なくともαおよびεアミン側基を形成するように修飾することができるように、分岐鎖状アミノ酸を選択する。これらのαおよびεアミン側基は、分岐鎖のペプチド合成を継続するために使用することができる。直交する保護基を1つ以上のアミン側基に使用して、異なる化学性を独立に実施させることができる。例えば、疎水性成分を結合するために、αアミン保護を害することなく、直交保護基法を使用することができる。この場合には、εアミン保護を脱離し、アルキル鎖を脱保護したアミノ酸に結合することができる。
【0024】
分岐は、選択した多数の分岐アミノ酸を使用することによって増加することができる。例えば、1つの分岐リシンは2つの活性な分岐部位を提供することができ、さらに2つのリシンは4つの活性な分岐部位を提供することができ、さらに4つのリシンは8つの活性な分岐部位を提供することができる。
【0025】
リシン残基のαおよびεアミン保護は、分岐デザインにより選択した。2つの異なる分岐が望ましい場合には、Mtt基をリシン側鎖保護に使用した。第1の分岐を成長させるためには、Mtt保護を脱離させないで、Fmoc基を脱離させた。第1の分岐鎖配列が完了したら、Mtt切断条件に耐える一番端のアミノ酸をBoc保護に選択する。次いで、Mttを脱離させて、PAの第2の分岐鎖を成長させる。2つの同様の分岐鎖が望ましい場合には、Fmoc側鎖保護したリシンを使用してPAを製造した。両方のFmoc基をピペリシン溶液で脱離させ、PAの2つの分岐鎖を同時に製造した。
【0026】
分岐PAおよび自己集合ミセルは、組織工学、組織再建、合成ワクチン設計、薬物送達、磁気共鳴画像形成およびセンサー適用に使用することができる。これらのPAの両親媒性物質を使用して、単層カーボンナノチューブを単離することもできる。例えば、図3に示すように、分岐鎖状PA6は疎水性薬剤または他の治療分子を封入するために使用することができる。分岐鎖状ペプチド部分を有するペプチド両親媒性物質を含む自己集合ナノファイバーは、ミセルのコアに細胞または治療組成物を含んでも、または細胞試料または細胞もしくは組織を含む患者の部位に治療の一部として送達することができるミセルの表面の1つ以上のエピトープに結合される細胞または治療組成物を含んでもよい。ナノファイバーが事前-成形または事前形成骨格の形態である場合には、ナノファイバーは、細胞試料または細胞もしく組織を含む患者の部位に治療の一部として送達することができる種々の細胞および/または抗-炎症化合物、化学療法化合物およびこれらの組み合わせを封入するまたはエピトープに結合することができる。
【0027】
本発明のPA化合物は、一般に、ある態様において、疎水性アルキル成分および分岐鎖状ペプチド成分を含んでもよい。分岐鎖状ペプチド成分は、成分におけるアミノ酸残基の配列および選択により、荷電基、エピトープおよび生物信号を含んでもよい。親水性アミノ酸は荷電していてもよく、水性環境においてある程度の溶解度を提供するために使用することができる。水性環境において、このようなペプチド両親媒性物質は、疎水性成分が中心方向に配向しており、一般に親水性の機能的ペプチドの分岐鎖状ペプチドが周囲表面に露出している円筒形ミセルまたはナノファイバーに自己集合する能力を有する。分岐鎖状ペプチド成分は、疎水性成分と比較してかさばり、PA化合物に全体的に円錐形の形状を与える。理論に結びつけるわけではないが、この形状ならびにセグメントの疎水性および親水性配列はPAの自己集合において重要な役割を果たすと考えられる。分岐鎖状エピトープ基がファイバーの長さ方向に露出されていると、生物活性エピトープまたは生物信号を環境に提示することができる。
【0028】
PA化合物の堅牢性を増強するために、ペプチド成分は、リシンアミノ酸(示している)またはアラニンおよび/またはグリシンなどであるが、これに限定されない他のアミノ酸にカップリングしている、図3のPA(6)に示す1つ以上のシステイン残基を含んでもよい。集合されると、隣接システイン残基のS-Hリガンドは安定なジスルフィド結合形成を可能にするほど十分に接近する:ヨウ素または酸素などの酸化的条件に接触すると、ジスルフィド結合が形成され、ファイバーが架橋される。このようなPAの万能の特徴は可逆的な架橋である。PAファイバーは、ジチオスレイトール(dithiolthreitol)(DTT)などの還元剤を使用して分解することができる。PAは自己集合して、医学的用途のために適合性を改善することができる。
【0029】
疎水性成分は、両親媒性官能基を提供するために使用することができるアルキル部分または他の構造などであるが、これに限定されない炭化水素であってもよい。このような部分のサイズは変わってもよいが、ある態様において、長さ約C6からそれ以上の範囲である。ペプチド両親媒性物質のこの成分は、PA分子の円錐形分子形状の細い部分を形成する働きをする。疎水性およびペプチド両親媒性物質への自己集合を可能にする形状を提供するトリアセチレンなどの他の化学基も使用することができる。疎水性成分は、上記に記載するように、ペプチド成分にカップリングまたは共有結合される。
【0030】
分岐鎖状PA化合物成分のペプチド成分は、架橋が望ましい場合には、上記に考察するように、システイン残基を含んでもよい。にもかかわらず、アラニン、セリンまたはロイシンなどであるが、これに限定されない他のアミノ酸をこの領域に使用することができる(例えば、本明細書に詳細に記載されているSLSLまたはAAAA)。このようなシステイン-フリー成分は、環境が架橋を調節するのが他より困難である可能性があるインサイチュー生物適用のために適当となる場合がある。システムのSLSL改良は、ナノファイバーの集合を遅くすることが予想される。理論に結びつけるわけではないが、かさばるロイシン側鎖はファイバーへのパッキングにより多くの時間を必要とすると考えられる。遅い自己集合は、ナノ-ファイバーの遅い形成が有利となる場合がある手術室などの機能的なインサイチュー環境における適用も大きいことがある。ペプチド成分は、構造的なフレキシビリティを与えるためにグリシンなどであるが、これに限定されない残基を含んでもよい。
【0031】
ペプチド成分は、リシン、セリン、リン酸化セリン、ジアミノプロピオン酸、ジアミノ酪酸およびアスパラギン酸などの荷電アミノ酸または親水性アミノ酸を含むが、これらに限定されない任意の天然型または非-天然型アミノ酸を含んでもよい-その選択は、図3に示すPA6などの荷電ペプチド-両親媒性物質を提供できる。生理的pH付近では、このような荷電ペプチド両親媒性物質は正または負に荷電することができる。ペプチド成分は、PA化合物の比較的かさばる荷電セグメントであり、円錐形の分子構造の1つ以上の分岐鎖を有する最も広い領域を提供している。
【0032】
異なるPA化合物の混合物の自己集合も、種々の長さおよび/またはアミノ酸配列の対応するペプチド成分の自己集合ナノファイバーの長さ方向の異なるアミノ酸配列の提示も可能にすることができる。さらに、異なるサイズの分岐鎖状ペプチド両親媒性物質または分岐鎖状ペプチド両親媒性物質と異なるサイズのフィラーペプチド両親媒性物質の混合物、またはこれらの組み合わせの自己集合は、自己集合したナノファイバーまたはミセルの表面に突出しているペプチド両親媒性物質を有するナノファイバーまたは他のミセルから自己集合されうることが考慮される。
【0033】
本発明の種々のペプチド両親媒性化合物および分岐鎖状PAは、内容が全体として参照により本明細書に組み入れられる、上記の同時係属出願の公開されている出願および2002年11月14日提出の同時係属出願第10/294,114号(国際公報WO 03/054146号)ならびに全体として参照により本明細書に組み入れられる、Stupp et al. (例えばJ. D. Hartgerink, E. Beniash and S. I. Stupp, Science 294, 1683-1688, 2001)によって最初に記載されている技法の改良を含む当業者に周知の製造技法を使用して合成することができる。これらの参照文献に記載されている合成スキームを本発明に適用することができる。ペプチド両親媒性物質は、完全にプロトン化された形態、部分的にプロトン化された形態または酸もしくは塩基付加塩として存在してもよい。一般に、このようなペプチド両親媒性物質は、ペプチドのN-末端またはN-末端付近への疎水性テイルの付加を含む標準的な固相ペプチド化学によって製造することができる。当業者に公知であり、望ましい両親媒性組成またはペプチド配列に応じて、公知の手技および合成技法または単純な改良を使用して気づくと思われるように、これらの合成方法の改良を実施することができる。例えば、キラル炭素のアミン基ではなくリシンアミノ酸の側基のアミン基に疎水性テイルを結合する。
【0034】
発明の実施例
以下の限定するものではない実施例およびデータは、1つ以上の生物活性エピトープ配列に結合しており、本明細書に記載する合成方法および参照により組み入れられる同時係属出願により入手可能である種々の分岐鎖状ペプチド両親媒性物質の自己集合物を含む、本発明の化合物、システムおよび/または方法に関連する種々の局面および特徴を例示する。従来技術と比較すると、本発明の化合物、システムおよび/または方法は、驚くべきであり、予想されておらず、従来技術と正反対の結果およびデータを提供している。本発明の利用性は、いくつかの両親媒性ペプチド化合物、分岐鎖状構造および/または共に使用することができるエピトープ配列を使用することにより例示されるが、同様の結果は、本発明の範囲と相応の種々の他のペプチド化合物およびそれに結合しているエピトープで得ることができることが当業者によって理解される。
【0035】
実施例1
この実施例は、分岐鎖状ペプチドセグメントを含むペプチド両親媒性物質の製造を記載する。(上記の組み入れられている出願を参照し、以下の図6および7と合わせて、合成の詳細が提供されている)。全てのペプチドは、Fmoc固相ペプチド合成(Fmoc SPPS)プロトコールによって合成した。Fmoc、Bocおよび4-メチルトリチル(Mtt)保護アミノ酸、MBHA Rinkアミド樹脂ならびにHBTUはNovaBiochemから購入した。他の化学物質はFischerまたはAldrichから購入し、提供されているそのままで使用した。ペプチドはMBHA Rinkアミド樹脂上に構築した。アミノ酸カップリングは、4当量のFmoc保護アミノ酸、3.95当量のHBTUおよび6当量のDIEAを用いて4時間実施した。
【0036】
Fmoc脱保護は、30%ピペリジン/DMF溶液を用いて10分間実施した。Mtt脱離は、TISの存在以下において1% TFA/ジクロロメタン溶液を用いて5分間実施した。樹脂からのペプチドの切断は、TFA:TISの97.5:2.5の比の混合物を用いて3時間実施した。過剰のTFAは回転式エバポレーションによって除去した。残存する粘性のペプチド溶液を冷却したエーテルで撹拌し、得られた白色の生成物を真空下乾燥した。PAは、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF MS)および/またはエレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI-MS)によって特徴づけた。
【0037】
透過型電子顕微鏡(TEM)試料は、カーボンコーティング穴開きTEMグリッド上にPAの1重量%ゲルを用いて調製した。ネガティブ染色は2%ホスホタングステン酸溶液によって実施した。TEM用のPAの1重量%ゲルは、2重量%PA水溶液とリン酸緩衝液(pH = 7.4)を1:1混合することによって作製した。
【0038】
最初に、DMF中で30分樹脂を膨潤させ、次いで樹脂のFmoc保護基を30%ピペリジン/DMF溶液によって脱離させた。次いで、Fmoc-Lys(Mtt)-OHを樹脂にカップリングさせた。Fmoc保護を切断しないで、リシン側鎖保護基、Mttを1% TFA/ジクロロメタン溶液によって脱離させた。アミノ酸カップリング試薬を用いてパルミチン酸(C16アルキル鎖)を樹脂にカップリングした。パルミチン酸のカップリングが終了したら、ピペリジン溶液によってFmocを脱離させ、PAのロッド部分であるアミノ酸を同じ方法(Fmoc SPPS)でカップリングした。
【0039】
リシンは、PAの分岐鎖を合成するために選択した。分岐鎖デザインにより、リシンのαおよびεアミン保護を選択した。2つの異なる分岐鎖が望ましい場合には、Mtt基をリシン側鎖保護に使用した。第1の分岐鎖を成長させるためには、Mtt保護を脱離せさせないで、Fmoc基を脱離させた。第1の分岐鎖配列が完成したら、Mtt切断条件に耐えるBoc保護の一番端のアミノ酸を選択した。次いで、Mttを脱離させて、PAの第2の分岐鎖を成長させる。2つの同様の分岐鎖が望ましい場合には、Fmoc側鎖保護リシンを使用してPAを製造した。両方のFmoc基をピペリジン溶液によって脱離させ、PAの2つの分岐鎖を同時に製造した。
【0040】
実施例2
以下に記載する一連の分子は、立体障害のあるかさばるペプチド構造を使用することによって、ナノファイバー表面上の受容体に対するエピトープの接近性を増加するように設計されている新規分岐鎖状PA構造を例示する。限定するものではない代表的な分子はリジンデンドロン部分を含有し、本明細書に組み入れられている種類の他の直鎖状PAと同様に、自己集合して、ナノファイバーのネットワークによって形成される水性ゲルを形成する。図5に示すように、分子は、ペプチド配列KXXXAAAK(X=GまたはL)、それに続く炭素16の飽和アルキルセグメントおよびリシン残基に導入されているデンドロン分岐鎖を含む。アラニン、グリシンおよびロイシン残基を使用して、両親媒性物質の自己集合に典型的に観察される球状ミセルではなく、円筒形ナノファイバーなどの細長い構造への集合に進行するはずである、水素-結合によるβ-シート形成を促進した。周知の生物学的エピトープRGDSが、フィブロネクチンおよびビトロネクチンなどの細胞外タンパク質の細胞結合ドメインに存在し、ある範囲の生物活性ペプチドの1つ以上のこのようなPAシステムへの組み込みを例示するために使用した。RGDSエピトープは、インテグリン受容体に結合することが知られており、この分子認識事象は、細胞外マトリックスへの細胞の接着および以下の複雑な信号伝達カスケードにおいて重要な役割を果たす。
【0041】
分子8は、本発明の分岐鎖状PA中のものとエピトープ利用性を比較するために直鎖状ペプチド構造を用いて合成した。リシン残基を導入して非対称に分岐した分子9Aおよび9Bを製造し、それによって自己集合後の生物活性ペプチド配列の構造的提示を変更した。9Aおよび9Bと同様の様式で対称分岐鎖を導入するように分子10Aおよび10Bを合成して、1つのPA分子による多数のエピトープの提示を検討した。さらに、分子9および10において、グリシン(R=H)残基をロイシン(R=イソブチル)残基と交換することによって、エピトープの構造的な接近性に対する疎水性側鎖の影響を検討した。エピトープの認識および利用性を調査するために、各PAのRGDS配列の末端にビオチン基を結合し、次いで、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)-標識アビジン分子の結合を使用してビオチン接近性を検討した。アビジンはビオチンに対する親和性が非常に高く、タンパク質あたり4つのビオチン結合部位を有することが周知である。この結合親和性は、提示されるビオチン部分の数を変更することによって、単層の表面利用性を検討するために以前に使用されている。フルオロフォアとアビジンのビオチン結合部位のアミノ酸残基と間に相互作用が生じると、蛍光が消光する。従って、ビオチン化PAと蛍光標識アビジンの結合によって、消光的な相互作用を弱くすることによって蛍光を大幅に回復するはずである。
【0042】
実施例3
分岐鎖状PAは、固相ペプチド合成(SPPS)を使用して製造した。ペプチドセグメントの分岐は、直交保護基化学を使用することによって実施した。(Bourel, L.;Carion, O.;Masse, H. G.;Melnyk, O. J. Peptide Sci. 2000, 45, 488-496;およびAletras, A.;Barlos, K.;Gatos, D. Koutsogianni, S.;Mamos, P. J. Peptide Protein Res. 1995, 6, 264-270参照)。リシン残基のアミンのFmoc、Bocおよび4-メチルトリチル(Mtt)保護基は、各々独立に操作することができるので、ペプチドのデザインを制御するために使用した。Fmoc保護アミンは、ペプチドにアミノ酸をカップリングするために使用し、Boc保護基はリシン分岐鎖をブロックするために使用し、Mttは選択的脱保護および非対称分岐鎖の成長のために使用した。RGDSエピトープをリシン残基のεアミンにカップリングして、フレキシブルな炭素4リンカーにより、エピトープの立体配座的自由を増強した。PAのビオチン化は、ペプチド配列の末端にビオチンをカップリングすることによってSPPSにより実施した。
【0043】
実施例4
全てのPAはpH 4において水溶性であり、pHを約6.5に上昇したとき、0.5重量%より大きい濃度においてセルフ-サポート型ゲルを形成した。ゲル形成は、pH変化により完全に可逆的であることが見出された。透過型電子顕微鏡(TEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、FT-IRおよび円二色性(CD)分光分析を使用して、分岐鎖状PA分子の自己集合を特徴づけた。pH 7.4において自己集合したPA 8〜10のTEM顕微鏡写真は、径7±1 nm、長さ数百ナノメーターから数マイクロメーターの範囲の均一で、高アスペクト比のナノ構造の形成を明らかにした。全てのPAの凍結乾燥(フリーズ-ドライ)ゲルのFT-IRは、3280〜3285 cm-1のN-H伸縮ピークに基づいて、ペプチド間の水素結合を示している。1628〜1632 cm-1のアミドIピークはペプチド二次構造の主にβ-シート様の特徴に一致しており、1650〜1675 cm-1のピークによって示される若干のα-ヘリックスおよびランダムコイル配座を伴う。また、約2932から約2921 cm-1のνa(CH2)のシフトは、パルミチル疎水性セグメントの高い程度の秩序化を示している。自己集合したPAの円二色性スペクトルは200から230 nmの幅広いピーク(nπ*遷移)を明らかにしており、β-シートが主に存在し、α-ヘリックスおよびランダムコイル立体配座がわずかに寄与している痕跡として解釈することができる。IRおよびCD結果は、ナノファイバー内に分子が密に充填されている、β-シート特徴を有する水素結合したPAの秩序よく配列された集合物に一致している。
【0044】
実施例5
ビオチン化PAの希釈試料を調製して、FITC-アビジンとの結合の影響を検討した。興味深いことに、直鎖状のPA8と比較して、ビオチン化した分岐鎖状PAにFITC-アビジンを結合すると、蛍光発光の有意な増加が観察される。TEMによって観察される構造的な類似性にもかかわらず、FITC-アビジンは、直鎖状分子から製造されるものと比較し、分岐鎖状分子から製造されるナノファイバー表面のビオチンへの接近性が大きいことをこの結果は示唆している。直鎖状PAシステムでは、密な水素結合により、ナノファイバー表面のエピトープの充填がよりコンパクトにより、ビオチンへのFITC-アビジンの結合を妨害し、蛍光発光の回収が低下する可能性がある。しかし、立体的に障害のある分岐鎖システムでは、アビジン受容体へのビオチンの高い利用性は、ファイバー表面への分子パッキング効率の低さを示している可能性がある。また、PA構造への疎水性側鎖の導入はエピトープの利用性も変更した。9Bおよび10Bのビオチン利用性は、それぞれ、9Aおよび10Aより有意に高かった。従って、これらの分子における疎水性側鎖は集合へのパッキング性、結果としてエピトープの利用性にも影響を与えている可能性がある。
【0045】
実施例6
対照として、PA 8および9Bの非-ビオチン化型を調製し、同一条件下においてFITC-アビジンを用いて試験した。FITC-アビジンの蛍光の有意な変化は観察されず、蛍光の増加は、PAに対する非-特異的なアビジン結合によらないことを示している。これらの結果は、ナノファイバー周辺におけるエピトープ利用性に対する分岐している疎水性側鎖の提案されている影響を確認している。ナノファイバーにおけるRGDSエピトープ提示の構造的な差が、ペプチド両親媒性物質ナノファイバーと共に培養中の細胞によるこのペプチド配列のさらに複雑な認識過程に同様に影響を与えるかどうかを確立するために生物的な実験が進行中である。
【0046】
実施例7
組み入れられている上記の参照文献に記載されており、提供されているように、本発明のペプチド両親媒性化合物は、慣習により逆になった構造的な極性を提供するために製造することができる。比較すると、固相合成は、典型的には、ペプチドセグメントはC-末端からN-末端方向に合成されることが必要である。結果として、このような両親媒性化合物は、アルキル部分を有する遊離N-末端をキャッピングすることによって製造されており、C-末端に遊離酸またはアミド基を有する化合物を生じている。一方ここでは、生物活性または合成のフレキシビリティのために、遊離N-末端を有するペプチド両親媒性物質を提供することが望ましいことがある。従って、C-末端またはC-末端付近への疎水性成分の導入を可能にし、分岐およびエピトープカップリングを生じるように1つ以上の官能側基を提供するように合成経路を考案した。図6および7は、このような合成の改良を略図で例示する。図6を参照すると、直交保護基を使用して、ペプチドの成長の前に疎水性成分(例えば、アルキル部分)が付加されている。図7を参照すると、対応する保護/脱保護法により、1つ以上のリシン残基における分岐および選択的なエピトープ(例えば、RGDS)カップリングが可能になり、対応するミセル構造のペプチド周辺部にアミン末端を提供している。
【0047】
上記に例示するように、分岐鎖状ペプチド両親媒性分子によって製造される円筒形ナノ構造物は、高い密度の表面結合部位を提示する。このような分子の分岐鎖状共有結合構造は、探索中のタンパク質受容体への結合部位の接近性を大きくし、生物学および医学用のナノスケール合成材料における生物活性の超分子的デザインに有用な観察である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
一部には、本発明の態様の他の局面、特徴、利益および利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲および添付の図面に関して明らかになる。
【図1】本発明のペプチド両親媒性物質(1)、(2)および(3)の分子構造の例示を含む。
【図2】本発明のペプチド両親媒性物質(4)および(5)の分子構造の例示を含む。
【図3−4】本発明のペプチド両親媒性物質(6)および(7)の分子構造の例示を含む。
【図5】両親媒性構造8〜10を提供する。
【図6−7】代表的なペプチド両親媒性化合物の合成を略図で例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンダントアミノ基を含む少なくとも1つのアミノ酸残基を含むペプチド成分を含む非-直鎖状ペプチド両親媒性物質化合物であって、該アミノ基は該ペプチド成分の非-直鎖状成分に結合しており、該ペプチド成分は疎水性成分に結合している非-直鎖状ペプチド両親媒性化合物。
【請求項2】
残基が、天然型アミノ酸由来である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
アミノ酸が、リシンである、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
ペプチド成分が、少なくとも2つのリシン残基を含む、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
非-直鎖状成分が、生物活性なエピトープ配列を含む、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
エピトープ配列が、RDGS、PHSRN、IKVAV、YIGSRおよびファージディスプレイ法の認識産物から選択される、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
2つのリシン残基の各々が、エピトープ配列の一方に結合している、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
ペプチド成分が、アラニン、グリシン、ロイシン、システインおよびセリンから選択される残基を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
疎水性成分が、約C6〜約C22の範囲のアルキル部分を含む、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
アルキル部分が、ペプチド成分のC-末端付近のリシン残基に結合している、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
ペプチド成分が少なくとも2つのリシン残基を含み、少なくとも一方の残基がRDGS、PHSRN、IKVAV、YIGSRおよびファージディスプレイ法の認識産物から選択される生物活性なエピトープ配列に結合している、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
配列の少なくとも1つが、分光プローブ成分に結合している、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
集合してミセル構造を構築する、請求項11記載の化合物。
【請求項14】
ペプチド成分、該ペプチド成分に結合している疎水性成分を含み、該ペプチド成分は生物活性なエピトープ配列に結合しているペンダントアミノ基を含む少なくとも1つのアミノ酸残基を含む非-直鎖状ペプチド両親媒性化合物を液体媒体に含むシステム。
【請求項15】
残基が、天然型アミノ酸由来である、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
アミノ酸が、リシンである、請求項15記載のシステム。
【請求項17】
エピトープ配列が、RDGS、PHSRN、IKVAV、YIGSRおよびファージディスプレイ法の認識産物から選択される、請求項14記載のシステム。
【請求項18】
疎水性成分が、ペプチド成分のペンダントアミノ基に結合している、請求項17記載のシステム。
【請求項19】
ペプチド成分が、アラニン、グリシンおよびロイシンから選択される残基を含む、請求項18記載のシステム。
【請求項20】
媒体が生理的pHであり、化合物の集合物を含む、請求項17記載のシステム。
【請求項21】
以下の段階を含む、ペプチド両親媒性のペンダントアミノ基を使用して生物学的に活性なエピトープ配列を提示する方法:
複数のペプチド両親媒性化合物を提供する段階であって、各化合物が疎水性成分およびペプチド成分を含み、化合物の少なくとも1つはペンダントアミノ基を含む少なくとも1つのアミノ酸残基を含む段階;ならびに
アミノ基に生物学的に活性なエピトープ配列を結合する段階。
【請求項22】
ペプチド成分が、N-末端付近にリシン残基を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
エピトープ配列が、RDGS、PHSRN、IKVAV、YIGSRおよびファージディスプレイ法の認識産物から選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
ペプチド成分のN-末端が、2つのリシン残基を含む、請求項22記載の方法。
【請求項25】
残基の各々が、RDGS、PHSRN、IKVAV、YIGSRおよびファージディスプレイ法の認識産物から選択されるエピトープ配列に結合している、請求項24記載の方法。
【請求項26】
化合物が水性媒体中に存在し、該媒体のpHが該化合物を円筒形ミセルに集合させるように調節される、請求項22記載の方法。
【請求項27】
化合物の少なくとも1つが、少なくとも2つのリシン残基を含むペプチド成分を含む、請求項21記載の方法。
【請求項28】
残基の各々が、RDGS、PHSRN、IKVAV、YIGSRおよびファージディスプレイ法の認識産物から選択されるエピトープ配列に結合している、請求項27記載の方法。
【請求項29】
残基の1つが、RDGSエピトープに結合しており、残基の1つがPHSRNエピトープに結合している、請求項28記載の方法。
【請求項30】
化合物が水性媒体中に存在し、媒体中の試薬を使用して集合させられる、請求項29記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−535493(P2007−535493A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542793(P2006−542793)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/040546
【国際公開番号】WO2005/056576
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(596057893)ノースウエスタン ユニバーシティ (35)
【Fターム(参考)】