説明

分岐栓

【課題】混合水栓本体への取付け作業を容易に行える分岐栓を提供することを課題とする。
【解決手段】混合水栓80の構成部材である混合水栓本体2の上方に配置される、分岐栓1であって、軸心方向に貫通される湯側流路11と、軸心方向に貫通される水側流路12と、が形成され、湯側流路11の底面への開口部に形成される湯側開口部11aと、水側流路12の底面への開口部に形成される水側開口部12aと、を備える、分岐栓本体10と、湯側開口部11aまたは水側開口部12aに一端が一体的に接合される、筒形状の連結管40と、を具備する、分岐栓1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合水栓に用いられる分岐栓の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸心方向に貫通される湯側流路および水側流路が形成される分岐栓本体と、前記湯側流路または前記水側流路の底面への開口部に一端が挿入されて吊設される連結管と、を具備する、分岐栓に関する技術は公知となっている。例えば、特許文献1に示す如くである。
このような分岐栓は、混合水栓の構成部材である混合水栓本体の上方に配置され、混合水栓本体の内部に備わる湯側流路管および水側流路管から流出される湯や水を所定の装置に分岐させるものである。
【0003】
もっとも、前記混合水栓には、カートリッジを内装するための筒形状のケースが上方を開口するようにして混合水栓本体に備えられている。そして、このような混合水栓においては、当該ケースの上方に分岐栓が配置されるため、混合水栓本体における湯側流路および水側流路が形成される部分の上面と、分岐栓本体の下面との間には前記ケースの高さ分の隙間が生じており、混合水栓本体の湯側流路管と分岐栓の湯側流路と、また、混合水栓本体の水側流路管と分岐栓の水側流路とを直接連通させることは困難である。
【0004】
そこで、前記連結管によって、混合水栓本体の湯側流路管と分岐栓の湯側流路の開口部と、また、混合水栓本体の水側流路管と分岐栓の水側流路の開口部とをそれぞれ連結して、両者を連通している。具体的には、分岐栓本体に形成される湯側流路または水側流路の底面への開口部に連結管の一端を挿入して、分岐栓本体に前記連結管を取り付ける。そして、係る状態で、混合水栓本体に備えられたケース内において、分岐栓本体に取り付けられた連結管の他端を、混合水栓本体の湯側流路管または水側流路管に挿入しつつ、前記混合水栓本体のケースの上方に混合水栓を配置する。このようにして、混合水栓本体の湯側流路管と分岐栓の湯側流路と、また、混合水栓本体の水側流路管と分岐栓の水側流路とを連通させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−184951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような分岐栓においては、分岐栓本体の湯側流路または水側流路の底面への開口部へは、連結管の一端が単に挿入されているだけである。例えば、連結管の一端の外径を、分岐栓本体の湯側流路または水側流路の底面への開口部の内径よりも若干小さく形成し、前記連結管の一端と前記開口部との間にOリングを介在させた状態で、前記連結管の一端を前記開口部へ挿入しており、連結管はOリングの弾性力によって前記開口部と接続されていた。
このように、前記連結管と分岐栓本体の湯側流路または水側流路との接続は、前記連結管の一端と前記開口部とを螺合するなど、両者を一体的に接合するものではなく、連結管の分岐栓本体に対する取付姿勢が一定していなかった。
このため、混合水栓本体の湯側流路管または水側流路管に連結管の他端を挿入する際に、当該連結管の他端が所望の位置に安定しないこととなり、また、連結管の一端の前記開口部への挿入状態が緩く、連結管が開口部から容易に脱落してしまうため、混合水栓本体への分岐栓の取付け作業は煩雑なものとなっていた。
【0007】
本発明は以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、混合水栓本体への取付け作業を容易に行える分岐栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、混合水栓の構成部材である混合水栓本体の上方に配置される分岐栓であって、軸心方向に貫通される湯側流路と、軸心方向に貫通される水側流路とが形成され、前記湯側流路の底面への開口部が湯側開口部として構成され、前記水側流路の底面への開口部が水側開口部として構成される、分岐栓本体と、前記湯側開口部と前記水側開口部とのうち少なくともいずれか一方に、一端が一体的に接合される、筒形状の連結管と、を具備する、分岐栓としたものである。
【0010】
請求項2においては、前記湯側開口部または前記水側開口部の内周面には雌ネジが形成され、前記連結管の一端の外周面には雄ネジが形成され、前記湯側開口部または前記水側開口部に形成された雌ネジと前記連結管に形成された雄ネジとを螺合させることによって、前記湯側開口部または前記水側開口部に前記連結管の一端が一体的に接合される構成としたものである。
【0011】
請求項3においては、前記分岐栓は、半径方向内側に突出する内突部が設けられ、前記分岐栓本体が下方から嵌装され、前記混合水栓本体に備えられるケースに接合される、筒形状の外装部材をさらに具備し、前記分岐栓本体には、半径方向外側に突出して、前記外装部材内で前記内突部と係合される外突部が設けられるものである。
【0012】
請求項4においては、前記分岐栓は、前記連結管を下方に延出させて前記分岐栓本体を嵌装する、筒形状の外装部材と、前記連結管が前記外装部材から延出する長さと略同一の軸心方向の長さ、および、前記外装部材の上方部分の外径より大きく且つ前記混合水栓本体が備えるケースの外径より大きい内径を備え、前記分岐栓を前記混合水栓に取り付けたときに、前記外装部材の上方部分の外周面を覆うように、または、前記連結管の外周を覆うように配置される、筒形状のカバーと、をさらに具備する構成としたものである。
【0013】
請求項5においては、前記分岐栓は、半径方向内側に突出する内突部が設けられ、前記連結管を下方に延出させて前記分岐栓本体が下方から嵌装され、下端部が前記混合水栓本体の上端部に接合される、筒形状の外装部材と、前記連結管が前記外装部材から延出する長さと略同一の軸心方向の長さ、および、前記外装部材の上方部分の外径より大きく且つ前記混合水栓本体が備えるケースの外径より大きい内径を備え、前記外装部材の上方部分の外周面を覆うように、または、前記連結管の外周を覆うように配置される、筒形状のカバーと、をさらに具備し、前記分岐栓本体は、半径方向外側に突出して、前記外装部材内で前記内突部と係合される、外突部が設けられるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、分岐栓は、湯側開口部と水側開口部とのうち少なくともいずれか一方に、一端が一体的に接合される筒形状の連結管、を具備する。
このため、連結管の分岐栓本体に対する取付姿勢が一定して、連結管の他端が所望の位置に安定することとなり、また、湯側開口部または水側開口部から連結管が容易に脱落しないこととなる。
したがって、混合水栓本体への分岐栓の取付け作業を容易に行うことができる。
【0016】
請求項2においては、湯側開口部または水側開口部に形成された雌ネジと連結管に形成された雄ネジとを螺合させることによって、湯側開口部または水側開口部に連結管の一端が一体的に接合される構成とする。
このため、連結管の分岐栓本体に対する取付姿勢がより一定して、連結管の他端が所望の位置により安定することとなり、また、湯側開口部または水側開口部から連結管が容易に脱落しないこととなる。
したがって、混合水栓本体への分岐栓の取付け作業をさらに容易に行うことができる。また、このような分岐栓を簡易構造で実現することができる。
【0017】
請求項3においては、分岐栓は、半径方向内側に突出する内突部が設けられ、分岐栓本体が下方から嵌装され、混合水栓本体に備えられるケースの上端部に下端部が接合される筒形状の外装部材をさらに具備し、分岐栓本体には、半径方向外側に突出して、外装部材内で内突部と係合される外突部が設けられる。このため、分岐栓本体の外突部と外装部材の内突部とが係合して、分岐栓本体は、混合水栓本体に固定されることとなり動くことがない。
したがって、混合水栓本体への分岐栓の取付け作業を容易に行うことができる。
【0018】
請求項4においては、分岐栓は、分岐栓を混合水栓に取り付けたときに、外装部材の上方部分の外周面を覆うように、または、連結管の外周を覆うように配置される筒形状のカバー、をさらに具備する。
したがって、混合水栓本体に備えられたケースが露出している仕様でも、当該ケースが露出していない仕様でも、美観を損ねることなく混合水栓を配置することができ、また、分岐栓の製造コストを削減することができる。
【0019】
請求項5においては、分岐栓は、半径方向内側に突出する内突部が設けられ、前記連結管を下方に延出させて前記分岐栓本体が下方から嵌装され、下端部が混合水栓本体の上端部に接合される筒形状の外装部材、をさらに具備し、分岐栓本体は、半径方向外側に突出して、外装部材内で内突部と係合される、外突部が設けられる。このため、分岐栓本体の外突部と外装部材の内突部とが係合して、分岐栓本体は、混合水栓本体に固定されることとなり動くことがない。
したがって、混合水栓本体への分岐栓の取付け作業を容易に行うことができる。
【0020】
また、分岐栓は、分岐栓を混合水栓に取り付けたときに、外装部材の上方部分の外周面を覆うように、または、連結管の外周を覆うように配置される。
したがって、混合水栓本体に備えられたケースが露出している仕様でも、当該ケースが露出していない仕様でも、美観を損ねることなく混合水栓を配置することができ、また、分岐栓の製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る分岐栓と混合水栓とを示した側面図。
【図2】本発明に係る分岐栓の平面図。
【図3】本発明に係る分岐栓の平面断面図。
【図4】本発明に係る分岐栓の正面断面図。
【図5】(a)は本発明に係る分岐栓の正面図、(b)は本発明に係る分岐栓と混合水栓とを示した斜視図。
【図6】(a)は本発明に係る分岐栓の正面図、(b)は本発明に係る分岐栓と混合水栓とを示した斜視図。
【図7】本発明に係る分岐栓のA―A断面図。
【図8】本発明に係る分岐栓に蓋部材を設けた状態を示した平面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る分岐栓の実施形態について、図1から図8を用いて説明する。
なお、図1、図4、および、図7においては、図示上方を上方と、図示下方を下方と、図示左方を左方と、図示右方を右方とする。図2、図3、および、図8においては、図示上方を前方と、図示下方を後方と、図示左方を左方と、図示右方を右方とする。図5および図6においては、図示上方を右方と、図示下方を左方と、図示左方を上方と、図示右方を下方とする。
【0023】
図1に示す如く、分岐栓1は、混合水栓80の構成部材である混合水栓本体2の上方に配置され、図示しない浄水器や整水器や食洗機等の接続対象物にホース等を介して接続される。そして、混合水栓本体2から分岐栓1に供給される湯または水は、分岐栓1内で分岐されて、前記接続対象物に流出される。また、前記接続対象物から流出した所定の液体は分岐栓1内に流入し、分岐栓1から混合水栓本体2のスパウトを通じて吐出可能に構成されている。
【0024】
なお、通常の使用状態における混合水栓80は、混合水栓本体2とカートリッジ3とカバーナット4とハンドルレバー5とを具備している。混合水栓本体2内には、図5(a)および図6(b)に示す如く、ボイラー等と接続される湯側流路管2aと、水道管と接続される水側流路管2bと、湯、水、また、湯水混合液が流通する混合流路管2cと、が設けられている。混合水栓本体2の上下中途部の外周部には、混合流路管2cと連通し、前記湯水混合液等を外部に流出するためのスパウトが設けられている。また、混合水栓本体2は、カートリッジ3を内装するための筒形状のケース2dを備える。ケース2dの上端部の外周面には雄ネジが形成されている。カートリッジ3による吐水および止水の切り替えや、湯および水の吐水量の調節は、ハンドルレバー5の操作により行われる。そして、混合水栓80は、混合水栓本体2が台所の流し台に固定して設けられ、当該混合水栓本体2の上部にはカートリッジ3とカバーナット4とハンドルレバー5とが配置されて構成されている。
【0025】
分岐栓1が装着された混合水栓80においては、カートリッジ3と、混合水栓本体2の湯側流路管2a、水側流路管2b、および混合流路管2cとが分岐栓1を介して接続されており、カートリッジ3により、湯側流路管2aおよび水側流路管2bから供給される湯および水の混合流路管2cへの、吐水および止水の切り替えや、湯および水の吐水量の調節が行われる。
【0026】
図2から図4に示す如く、分岐栓1は、分岐栓本体10と、外装部材20と、一対の分岐接続部材30・30と、一対の連結管40・40と、カバー50と、を具備する。
【0027】
図2から図4に示す如く、分岐栓本体10は、金属素材からなる部材であって、軸心方向を上下方向とする円柱形状に形成されている。分岐栓本体10の上部の径は、カートリッジ3の径と略同一に、また、分岐栓本体10の上下中途部の径に比べて小さく形成されている。分岐栓本体10における上下中途部の外周面には、半径方向外側に突出する周状(フランジ状)の外突部17が設けられている。分岐栓本体10には、湯側流路11と、水側流路12と、混合流路13と、横孔14と、が形成され、また、分岐栓本体10は、湯側開口部11aと水側開口部12aと第一開口部15と第二開口部16とを備えている。
【0028】
湯側流路11は、後述する連結管40に接続され、また、連結管40を介して混合水栓本体2の湯側流路管2aから流入される湯を流通させ、カートリッジ3に流出させる流路である。湯側流路11は、分岐栓本体10の軸心方向に貫通され、図2、図3に示す平面視において開口部が前右方に配置されるように形成されている。湯側流路11の上端部から中途部にかけた部分(以降、上方部11bという)の径、および、湯側流路11の下端部の径は、湯側流路11の下方部11c(下端部を除く)の径より大きい径となるように形成されている。
湯側流路11が分岐栓本体10の底面に開口することで、分岐栓本体10の底面に湯側開口部11aが形成されている。湯側流路11の下端部、つまり、湯側開口部11aの内周面には、雌ネジが形成されている。
【0029】
水側流路12は、後述する連結管40に接続され、また、連結管40を介して混合水栓本体2の水側流路管2bから流入される水を流通させ、カートリッジ3に流出させる流路である。水側流路12は、分岐栓本体10の軸心方向に貫通され、図2、図3に示す平面視において開口部が前左方に配置されるように形成されている。水側流路12の上端部の径は、水側流路12の上下中途部の径より大きく形成されている。そして、当該水側流路12の上端部には、水漏れ防止用の環状のパッキンが設けられている。水側流路12の下端部の径は、湯側流路11の下端部の径と略同一に形成されている。水側流路12の上端部および下端部を除く部分(上下中途部)の径は、湯側流路11の下方部11c(下端部を除く)の径と略同一となるように形成されている。
水側流路12が分岐栓本体10の底面に開口することで、分岐栓本体10の底面に水側開口部12aが形成されている。水側流路12の下端部、つまり、水側開口部12aの内周面には、雌ネジが形成されている。
【0030】
混合流路13は、カートリッジ3から流入される、湯、水、または、湯水混合液を流通させ、混合水栓本体2に流出させる流路である。混合流路13は、分岐栓本体10の軸心方向に貫通され、図2、図3に示す平面視において開口部が後方に配置されるように形成されている。
【0031】
横孔14は、湯側流路11に連通され、湯側流路11を流通する湯を湯側流路11から分岐させる流路、および、水側流路12に連通され、水側流路12を流通する水を水側流路12から分岐させる流路、である。横孔14は、軸心方向に対して略直角に、混合流路13の前方を通って分岐栓本体10の外周面を左右方向に貫通するように形成されている。また、横孔14は、湯側流路11後方および水側流路12後方と連通するように、左方部の径が、右方部の径(右方部の外周面近傍を除く)より大きく形成されている。また、横孔14は、右方部の外周面近傍の径が、左方部の外周面近傍の径と略同一となるように形成されている。横孔14の左右それぞれにおける外周面近傍の大径部分の内周面には、雌ネジが形成されている。
横孔14が、分岐栓本体10の左方の外周面に開口することで、分岐栓本体10の左方の外周面に第一開口部15が、また、分岐栓本体10の右方の外周面に第二開口部16が形成されている。第一開口部15と第二開口部16とは、分岐栓本体10の軸心方向において、それぞれ略同一の位置に形成されている。また、第一開口部15と第二開口部16とは、分岐栓本体10の周方向において左右対称となる位置に形成されている。
【0032】
また、図7に示す如く、分岐栓本体10における湯側流路11の上方部11bには、閉塞部材70が挿入されている。閉塞部材70は、湯側流路11の上方部11bに挿入可能なように、その外径が、湯側流路11の上方部11bの内径と略同一の、また、その内径が、湯側流路11の下方部11cの内径と略同一の筒形状に形成されている。閉塞部材70の軸心方向の長さは、湯側流路11の上方部11bの長さと略同一の長さとなるように形成されている。閉塞部材70の上下中途部、即ち、湯側流路11の上方部11bに閉塞部材70を挿入した際における横孔14と湯側流路11とが連通する部分に相当する部分には、周状に凹溝72が形成されている。閉塞部材70には、凹溝72の上下部に、図示しない位置決め溝が各々形成されており、当該位置決め溝にOリング71・71が嵌装されている。閉塞部材70の上端部には、周状の凹部が形成されており、水漏れ防止用の環状のパッキンが設けられている。このように構成された閉塞部材70を、湯側流路11の上方部11bに挿入することで、横孔14と湯側流路11との連通を遮断、つまり、横孔14に対して閉湯側流路11を閉塞している。したがって、閉塞部材70を湯側流路11の上方部11bに挿入することによって、横孔14は、湯側流路11に連通されず、水側流路12にのみ連通されている。
【0033】
外装部材20は、金属素材からなる部材であって、外装本体21と、フクロナット23と、を具備している。外装本体21の下方にフクロナット23が配置される。なお以下において、外装部材20の上部とは、外装本体21の中途部から上部に渡る部分(以下、上部という)で構成され、外装部材20の中途部分とは、外装本体21の下部で構成され、外装部材20の下部とは、フクロナット23で構成されるものとする。
【0034】
外装本体21は、分岐栓本体10およびカートリッジ3を収納可能な軸心方向を上下方向とする筒形状に形成されている。具体的には、外装本体21の下部の内径は、分岐栓本体10の上下中途部の径と略同一に形成される。また、外装本体21の上部の内径は、分岐栓本体10の上部の径、および、カートリッジ3の径と略同一に、形成されている。外装本体21の上部の外径は、外装本体21の下部の外径に比べて小径に形成されている。外装本体21の上部と下部との境界部分には、外装本体21の下部の外径よりは小さく、且つ、外装本体21の上部の外径よりは大きい、つまり、外装本体21の下部および上部に対して段差状となる段部22が周状に形成されている。
外装本体21における下部には、内周面から外周面にわたって貫通する第一貫通孔25と第二貫通孔26とが形成されている。第一貫通孔25は、図2、図3に示す外装本体21の左方に形成されている。第二貫通孔26は、図2、図3に示す外装本体21の右方に形成されている。つまり、第一貫通孔25と第二貫通孔26とは左右対称となるように形成されている。また、第一貫通孔25と第二貫通孔26とは、それぞれ上下方向において略同一の位置に形成されている。
【0035】
フクロナット23は、軸心方向を上下方向とする筒状に形成されている。具体的には、フクロナット23の外径は、外装本体21における下部の外径と略同一となるように形成されている。フクロナット23の内径は、外装本体21における下部の内径より大きい内径、つまり、分岐栓本体10との間に所定の隙間を有した状態で、分岐栓本体10を収納可能なように形成されている。フクロナット23の上端部には、分岐栓本体10をその内部に配置した際に分岐栓本体10に設けられた外突部17と係合するように、半径方向内側に突出する周状の内突部24が設けられている。フクロナット23の軸心方向の長さは、後述する連結管40が分岐栓本体10の湯側開口部11aおよび水側開口部12aに接合され、且つ、分岐栓本体10の外突部17とフクロナット23の内突部24とが係合するように当該分岐栓本体10がフクロナット23に嵌装された状態で、当該連結管40がフクロナット23から所定の長さで下方に延出するような長さに形成されている。つまり、分岐栓本体10の外突部17とフクロナット23の内突部24とが係合するように分岐栓本体10をフクロナット23に嵌装すると、連結管40は下方に延出される。フクロナット23の内周面には、雌ネジが形成されている。
【0036】
外装本体21の下方にフクロナット23が配置されることによって、外装部材20は、全体として筒形状に構成され、また、その内部に分岐栓本体10が嵌装される。
また、外装部材20の内部に分岐栓本体10が設けられる構成は、例えば、分岐栓本体10に上方からフクロナット23を嵌装して、分岐栓本体10の外突部17とフクロナット23の内突部24とを係合させた後、さらに分岐栓本体10に上方から外装本体21を嵌合することで実現することができる。つまり、分岐栓本体10は、下方から外装部材20内に嵌装される。
【0037】
連結管40は、軸心方向の長さが所定の長さに形成される筒形状の金属素材からなる部材であり、軸心方向に貫通する連結流路44が形成され、主に、本体部41と、接合部42と、挿入部43とから構成される。連結管40の両端部を除く部分である本体部41は、湯側流路11および水側流路12の下端部の径よりも大きい径となるように形成されている。連結管40の一端である接合部42および他端である挿入部43は、連結管40の本体部41に比べて小さい径となるように形成されている。具体的には、連結管40の接合部42は、分岐栓本体10における湯側流路11また水側流路12の下端部に挿入可能なように、当該湯側流路11または水側流路12の下端部の径と略同一となるように形成されている。連結管40の挿入部43は、混合水栓本体2の湯側流路管2aまたは水側流路管2bの開口部に挿入可能なように、当該湯側流路管2aまたは水側流路管2bの開口部の径と略同一となるように形成されている。連結管40の接合部42の外周面には、雄ネジが形成されている。連結管40の挿入部43の外周面には、図示しない位置決め溝が形成されており、当該位置決め溝にOリングが嵌装されている。なお、連結管40の軸心方向の長さは、少なくとも、混合水栓本体2に備えられるケース2dの軸心方向の長さよりも長く形成されている。
【0038】
分岐接続部材30は、六角ボルト形状の部材に、当該六角ボルト形状の部材の軸心方向に貫通する分岐流路31が形成された部材である。具体的には、分岐接続部材30は、一端が、円柱形状に形成された挿入部32と、他端が、六角柱形状に形成された六角部33とから構成されている。そして、分岐接続部材30は、挿入部32と六角部33との互いの軸心を一致させるように、挿入部32の一方の底面に六角部33を一体的に設け、且つ、前記軸心方向に貫通する分岐流路31が形成されている。
また、分岐接続部材30における挿入部32の外径は、分岐栓本体10に形成された横孔14における左右の外周面近傍の径(大きい径)と略同一の外径となるように形成されている。分岐接続部材30における挿入部32の外周面には、雄ネジが形成されている。分岐流路31の径は、分岐栓本体10に形成された横孔14における右方の径(小さい径)の径と略同一となるように形成されている。また、分岐接続部材30における六角部33の各角には、雄ネジが形成されている。
【0039】
カバー50は、軸心方向を上下方向とする筒形状の部材である。カバー50の内径は、外装本体21の段部22の外径と略同一に形成される。つまり、カバー50は、外装部材20の上方部分の外径より大きい内径を備える。さらに、カバー50の内径は、混合水栓本体2が備えるケース2dの外径より大きく形成される。カバー50の外径は、フクロナット23の外径と略同一に形成される。つまり、カバー50は、外装部材20の下方部分の外径と略同一の外径を備える。カバー50の軸心方向の長さは、後述する連結管40が分岐栓本体10の湯側開口部11aおよび水側開口部12aに接合され、且つ、分岐栓本体10の外突部17とフクロナット23の内突部24とが係合した状態で、当該連結管40がフクロナット23(外装部材20)から下方に延出する長さと略同一の長さに形成されている。
【0040】
以上のようにして構成された、分岐栓本体10と、外装部材20と、一対の分岐接続部材30・30と、一対の連結管40・40と、カバー50と、を組み合わせることによって、分岐栓1が構成される。以下において、当該組み合わせの手順について具体的に説明する。
【0041】
分岐栓本体10の上方からフクロナット23をかぶせて、分岐栓本体10とフクロナット23とを嵌合させる。そして、係る状態の分岐栓本体10の上方から外装本体21をかぶせて、分岐栓本体10と外装本体21とを嵌合させる。この場合、分岐栓本体10が具備する第一開口部15の位置と外装本体21に形成された第一貫通孔25の位置とを、および、分岐栓本体10が具備する第二開口部16の位置と外装本体21に形成された第二貫通孔26の位置とを、それぞれ一致させた状態で両者を嵌合させる。
【0042】
さらに、一方の分岐接続部材30の一端である挿入部32を第一貫通孔25に挿入し、且つ、当該分岐接続部材30の挿入部32と第一開口部15とを直接接合する。また、他方の分岐接続部材30の一端である挿入部32を第二貫通孔26に挿入し、且つ、当該分岐接続部材30の挿入部32と第二開口部16とを直接接合する。第一開口部15および第二開口部16と分岐接続部材30・30の挿入部32・32との接合は、分岐栓本体10における横孔14に形成された雌ネジと分岐接続部材30・30に形成された雄ネジとを螺合させることによって行う。この場合、横孔14の雌ネジと分岐接続部材30・30の雄ネジとの間は、接着剤等のシール材を介装するなどして水密的にシールされる。
【0043】
一方の連結管40における接合部42の基部にOリングを嵌装して、分岐栓本体10の湯側開口部11aに形成された雌ネジと、当該一方の連結管40の接合部42に形成された雄ネジとを螺合させる。また、他方の連結管40における接合部42の基部にOリングを嵌装して、分岐栓本体10の水側開口部12aに形成された雌ネジと、他方の連結管40の接合部42に形成された雄ネジとを螺合させる。このように、湯側開口部11aまたは水側開口部12aに連結管40の一端を一体的に接合して、連結管40を分岐栓本体10に取り付けることにより、分岐栓本体10の湯側流路11および水側流路12と連結管40の連結流路44とが連通される。
また、分岐栓本体10の湯側開口部11aおよび水側開口部12aと連結管40の接合部42との間は、接着剤等のシール材を介装するなどして水密的にシールされる。なお、係る状態において、連結管40は、外装部材20から下方に延出された状態となっている。
カバー50は、外装部材20の上方部分の外周面を覆うように配置することが、または、外装部材20の下端部に配置して、連結管40・40の外周を覆うことが可能となっている。
このようにして、分岐栓本体10と、外装部材20と、一対からなる分岐接続部材30・30と、一対からなる連結管40・40と、カバー50と、によって、分岐栓1は構成される。
【0044】
分岐栓1は、混合水栓本体2の上方に配置され、また、カートリッジ3を内部に収納することによって、混合水栓80に取り付けられる。以下において、混合水栓本体2の上方に配置され、また、カートリッジ3を内部に収納する際の手順について、混合水栓本体2に備えられたケース2dが露出している仕様の場合と当該ケース2dが露出していない仕様の場合とに分けて説明する。
【0045】
混合水栓本体2に備えられたケース2dが露出している仕様の場合について、図5を用いて説明する。
図5(b)に示す混合水栓本体2には、カートリッジ3を内装するための筒形状のケース2dが上方を開口するようにして備えられている。また、図5(b)に示す混合水栓本体2のケース2dは露出している仕様である。前記ケース2dが露出している仕様とは、混合水栓本体2の外装からケース2dの外周面が露出している仕様を示す。ケース2dの上端部の外周面には雄ネジが形成されている。
なお、このようなケース2dは、通常の使用状態においては、カバーナット4によって被装されている。このため、通常の使用状態においては、混合水栓本体2の外装からケース2dが露出している仕様であっても、混合水栓80の外観が損なわれることはない。
【0046】
当該ケース2dが露出している仕様の場合には、図5(a)に示す如く、カバー50を、外装部材20の下端部に、即ち、連結管40・40が覆われるように配置する。そして、図5(b)に示す如く、係る状態の分岐栓1を混合水栓本体2の上方に配置して混合水栓80に装着すると、前記カバー50はケース2dの外周部に位置することとなり、ケース2dの外周面を覆った状態となる。
また、分岐栓本体10の湯側開口部11aに接合された連結管40の挿入部43を、混合水栓本体2内に設けられた湯側流路管2aの開口部に、および、分岐栓本体10の水側開口部12aに接合された連結管40の挿入部43を、混合水栓本体2内に設けられた水側流路管2bの開口部に、それぞれ挿入しつつ、混合水栓本体2の上方に分岐栓1を載置する。係るように混合水栓本体2の上方に分岐栓1を載置することで、湯側流路管2aと湯側流路11とが、および、水側流路管2bと水側流路12とが、それぞれ連結管40・40の連結流路44・44を介して連通されることとなる。
【0047】
次に、フクロナット23を分岐栓本体10に対して回転してフクロナット23の内周面に形成された雌ネジと、ケース2dの上端部の外周面に形成された雄ネジとを螺合させていく。当該雌ネジと雄ネジとを螺合させることにより、フクロナット23(外装部材20)がケース2dの上端部に接合される。また、このように前記雌ネジと雄ネジとを螺合させることにより、分岐栓本体10の外突部17と、フクロナット23の内突部24とが係合され、分岐栓1は、下方に押圧され混合水栓本体2に固定されることとなる。
そして、分岐栓本体10の上方から、外装本体21内に、カートリッジ3を収納する。さらに、ハンドルレバー5が取り付けられたカバーナット4を外装部材20にかぶせて、カバーナット4を外装本体21の上端部に螺合することで、分岐栓1が混合水栓本体2に装着される。
【0048】
混合水栓本体2に備えられたケース2dが露出していない仕様の場合について、図6を用いて説明する。
図6(b)に示す混合水栓本体2は、図5(b)に示す混合水栓本体2と同様に、カートリッジ3を内装するための筒形状のケース2dが上方を開口するようにして備えられている。もっとも、図6(b)に示す混合水栓本体2のケース2dは露出していない仕様である。前記ケース2dが露出していない仕様とは、混合水栓本体2の外装にケース2dの外周面が覆われている仕様を示す。但し、図6(b)に示す如く、ケース2dの外周面の全体が混合水栓本体2の外装に覆われている必要はなく、分岐栓1が螺合されるケース2dの上端部が混合水栓本体2から露出していないものも、前記ケース2dが露出していない仕様に含むものとする。
当該ケース2dが露出していない仕様の場合には、図6(a)に示す如く、カバー50を外装部材20の上方から被せ、外装本体21の段部22の外周面とカバー50の下端部の内周面とを当接させて外装本体21の段部22をカバー50の下端部に嵌装させる。このようにして、外装部材20の上方部分の外周面を覆うように、カバー50を配置する。
そして係る状態の分岐栓1を、混合水栓本体2の上方に配置する。なお、以降の混合水栓本体2の上方に配置され、また、カートリッジ3を内部に収納する説明においては、上述した混合水栓本体2に備えられたケース2dが露出している仕様の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0049】
以上のように、分岐栓1は、分岐栓本体10の湯側開口部11aまたは水側開口部12aに、一端が一体的に接合される連結管40を具備する。
このため、混合水栓本体2の上方に分岐栓1を配置する際の、湯側開口部11aに接合された連結管40の挿入部43を、混合水栓本体2の湯側流路管2aの開口部に、および、水側開口部12aに接合された連結管40の挿入部43を、混合水栓本体2の水側流路管2bの開口部に、それぞれ挿入する作業時においても、連結管40の分岐栓本体2に対する取付姿勢が一定していて、連結管40の他端は所望の位置に安定することとなり、また、分岐栓本体10の湯側開口部11aまたは水側開口部12aから連結管40が容易に脱落しないこととなる。したがって、混合水栓本体2への分岐栓1の取付け作業を容易に行うことができる。
【0050】
さらに、分岐栓1は、湯側開口部11aまたは水側開口部12aに形成された雌ネジと連結管40に形成された雄ネジとを螺合させることによって、湯側開口部11aまたは水側開口部12aに連結管40の一端が一体的に接合される構成とされる。
このため、連結管40の分岐栓本体2に対する取付姿勢がより一定していて、連結管40の他端は所望の位置により安定することとなり、また、分岐栓本体10の湯側開口部11aまたは水側開口部12aから連結管40が容易に脱落しないこととなる。したがって、混合水栓本体2への分岐栓1の取付け作業をさらに容易に行うことができる。また、このような分岐栓1を簡易構造で実現することができる。さらに、例えば鋳型等によって湯側開口部11aおよび水側開口部12aと連結管40・40の接合部42・42とを接合した形状に分岐栓本体10を成形する場合等に比べて、このような湯側開口部11aまたは水側開口部12aに連結管40の一端が一体的に接合される構成の分岐栓1が、安価に実現することができる。
【0051】
ここで、従来の分岐栓においては、外装部材内に分岐栓本体を設けた状態で、フクロナットと混合水栓本体2のケース2dとを螺合させた場合に、フクロナットと外装本体とが係合するような構成のものがあった。このような構成では、フクロナットを混合水栓本体2のケース2dに螺合して外装部材を混合水栓本体2に固定した状態でも、外装部材内で分岐栓本体が容易に移動し得るため、混合水栓本体2とカートリッジ3との間に分岐栓を配置する際に、その配置作業を煩雑なもとする可能性があった。
しかしながら、分岐栓1は、分岐栓本体10が下方から嵌装され、筒形状の、外装部材20を具備している。外装部材20は、半径方向内側に突出する内突部24が設けられ、また、内周面に雌ネジが形成された、フクロナット23を具備している。分岐栓本体10には、半径方向外側に突出して、外装部材20内で内突部24と係合される、外突部17が設けられる。そして、分岐栓1を分岐栓本体10の上方に配置する際、フクロナット23の雌ネジと混合水栓本体2に備えられたケース2dの雄ネジとを螺合させることにより、フクロナット23(外装部材20)の下端部が混合水栓本体2のケース2dの上端部に接合される。また、このように前記雌ネジと雄ネジとを螺合させることにより、分岐栓本体10の外突部17と、フクロナット23の内突部24とが係合され、分岐栓1は、下方に押圧され混合水栓本体2に固定されることとなり動くことがない。したがって、混合水栓本体2への分岐栓1の取付け作業を容易に行うことができる。
【0052】
分岐栓1は、連結管40が外装部材20から延出する長さと略同一の軸心方向の長さ、および、外装部材20の上方部分の外径より大きく且つ混合水栓本体2に備えられたケース2dの外径より大きい内径、を備えるカバー50を具備する。このため、混合水栓本体2に備えられたケース2dが露出している仕様の場合には、外装部材20の下端部に、即ち、連結管40・40が覆われるようにカバー50を配置した分岐栓1を、混合水栓本体2の上方に配置して、ケース2dの外周面をカバー50で隠すように、即ち、ケース2dを外部から視認できないように、混合水栓80に分岐栓1を取付けることができる。また、混合水栓本体2に備えられたケース2dが露出していない仕様の場合には、また、カバー50を、外装部材20の上方部分の外周面を覆うように配置することができる。
したがって、混合水栓本体2に備えられたケース2dが露出している仕様でも、当該ケース2dが露出していない仕様でも、分岐栓1が用いられた混合水栓80の美観を損ねることなく、混合水栓本体2の上方に分岐栓1を配置することができる。また、分岐栓1は、混合水栓本体2に備えられたケース2dが露出している仕様でも、当該ケース2dが露出していない仕様でも、混合水栓本体2に配置することができるため、分岐栓1の製造コストを削減することができる。
【0053】
分岐栓1は、一対の分岐接続部材30・30を具備している。このため、接続対象物が2台あるような場合においても、一対の分岐接続部材30・30と当該2台の接続対象物とを同時に接続することができ、台所作業を良好に行うことができる。
【0054】
分岐栓1においては、分岐栓本体10が具備する第一開口部15および第二開口部16に分岐接続部材30・30の挿入部32・32を螺合挿入して、第一開口部15および第二開口部16と挿入部32・32とを直接接合するものである。つまり、分岐接続部材30・30が分岐栓本体10に接合される周方向の位置は、分岐栓本体10が具備する第一開口部15および第二開口部16の周方向の位置によって決定されている。このため、分岐栓1においては、混合水栓本体2の上方に分岐栓1を配置する際に、分岐接続部材30・30の周方向の位置を調整する作業を、特に要さないこととなる。したがって、混合水栓本体2への分岐栓1の取付け作業を容易に行うことができる。
【0055】
分岐栓本体10が具備する第一開口部15および第二開口部16と、分岐接続部材30・30の挿入部32・32とが水密的に直接接合されることによって、分岐栓本体10に形成された横孔14と、分岐接続部材30・30に形成された分岐流路31・31と、が連通されることとなる。このため、分岐栓1は、分岐栓本体10の外周面(分岐栓本体10が具備する第一開口部15および第二開口部16の上下)にシール部材を介装する必要がない。
したがって、分岐栓本体10と外装本体21とを嵌合する際にシール部材の破損を気にかける必要がなく作業に熟練を要することもないため作業が容易となり、分岐栓1の水密性を確実に確保することができる。
さらに、分岐栓本体10にシール部材を配置するためのスペースを確保する必要もなく、分岐栓本体10の長さを短く構成することができ、全体的に高さ寸法を抑えた分岐栓1を構成することが可能となる。
【0056】
分岐栓1においては、第一開口部15および第二開口部16と分岐接続部材30・30の一端部とが直接接合されることにより、横孔14と第一分岐流路31・31とが連通される。このため、分岐栓1においては、第一開口部15および第二開口部16(横孔14)と連通する横溝を分岐栓本体10に形成することなく、分岐流路31に水を分岐させることができる。したがって、分岐栓本体10に横溝を形成する工程を省略することができ、ひいては、分岐栓1の製造コストを低減させることができる。
【0057】
分岐栓本体10の第一開口部15と第二開口部16とは、それぞれ、周方向において左右対称となる位置に形成されている。外装本体21の第一貫通孔25と第二貫通孔26とは、それぞれ、周方向において左右対称となる位置に形成されている。このため、一方の分岐接続部材30と第一開口部15とを、および、他方の分岐接続部材30と第二開口部16とをそれぞれ接合した際には、それぞれの分岐接続部材30・30は、平面視で左右対称に、外装部材20からそれぞれ延出することとなる。したがって、左右のいずれの方向に接続対象物が配置されていている場合であっても、それぞれの分岐接続部材30・30と当該接続対象物とを容易に接続することができる。
【0058】
分岐栓本体10の第一開口部15と第二開口部16とは、それぞれ、上下方向において同一の高さに形成されている。外装本体21の第一貫通孔25と第二貫通孔26とは、それぞれ、軸心方向において同一の高さに形成されている。このため、一方の分岐接続部材30と第一開口部15、および、他方の分岐接続部材30と第二開口部16とをそれぞれ接合した際には、それぞれの分岐接続部材30・30は、正面視で軸心方向において同一の高さで、外装部材20からそれぞれ延出することとなる。したがって、分岐栓1の軸心方向の長さを長く構成することなく、2つの分岐接続部材30・30を具備する分岐栓1を実現することができる。
【0059】
図8に示す如く、第二開口部16に接合された分岐接続部材30の他端側に形成された分岐流路31の開口部分は、盲栓などの蓋部材60を用いて閉塞することが可能である。具体的には、蓋部材60は、分岐接続部材30における六角部33の外郭線と略同一の内径を備える、椀形状の部材である。また、蓋部材60の外周面は六角ナット形状に形成され、また、蓋部材60の内周面は雌ネジが形成されている。
そして、蓋部材60の内部に、水漏れ防止用の環状のパッキン61を設け、前記分岐接続部材30の六角部33に形成された雄ネジと、蓋部材60に形成された雌ネジとを螺合させる。このようにして、分岐接続部材30に接続対象物を接続しないような場合には、前記分岐流路31の開口部分を閉塞して、湯または水の誤流出等を防止することができる。
【0060】
なお、分岐栓1は、分岐栓本体10の湯側開口部11aおよび水側開口部12aのいずれにも連結管40が一体的に接合されているが、本発明は、分岐栓本体10の湯側開口部11aおよび水側開口部12aのいずれにも連結管40が一体的に接合されているものに限定するものではない。即ち、本発明においては、湯側開口部11aと水側開口部12aのうちすくなくともいずれか一方に連結管40を一体的に接合する構成でも良いものとする。
【0061】
また、本発明においては、分岐栓本体10の湯側開口部11aおよび水側開口部12aと、連結管40・40の一端部である接合部42・42と、の一体的接合方法は、湯側開口部11aおよび水側開口部12aと連結管40・40の接合部42・42とを互いに螺合させることに限定するものではない。即ち、湯側開口部11aおよび水側開口部12aと連結管40・40の接合部42・42とは、接着剤によって一体的に接合させるものでもよいものとする。また、湯側開口部11aおよび水側開口部12aと連結管40・40の接合部42・42とを接合した形状に、分岐栓本体10を成形するものでも良いものとする。
【0062】
本発明においては、閉塞部材70によって、水側流路12を遮断する構成としてもよいものとする。また、水側流路12と湯側流路11との形状を、ともに閉塞部材70を挿入可能な形状に形成した場合には、湯側流路11と水側流路12とのいずれか一方を選択して遮断することが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1 分岐栓
10 分岐栓本体
11 湯側流路
11a 湯側開口部
12 水側流路
12a 水側開口部
40 連結管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合水栓の構成部材である混合水栓本体の上方に配置される分岐栓であって、
軸心方向に貫通される湯側流路と、軸心方向に貫通される水側流路とが形成され、前記湯側流路の底面への開口部が湯側開口部として構成され、前記水側流路の底面への開口部が水側開口部として構成される、分岐栓本体と、
前記湯側開口部と前記水側開口部とのうちの少なくともいずれか一方に、一端が一体的に接合される、筒形状の、連結管と、
を具備する、分岐栓。
【請求項2】
前記湯側開口部または前記水側開口部の内周面には雌ネジが形成され、前記連結管の一端の外周面には雄ネジが形成され、
前記湯側開口部または前記水側開口部に形成された雌ネジと前記連結管に形成された雄ネジとを螺合させることによって、前記湯側開口部または前記水側開口部に前記連結管の一端が一体的に接合される構成とする、請求項1に記載の分岐栓。
【請求項3】
前記分岐栓は、
半径方向内側に突出する内突部が設けられ、前記分岐栓本体が下方から嵌装され、前記混合水栓本体に備えられるケースに接合される、筒形状の外装部材をさらに具備し、
前記分岐栓本体には、半径方向外側に突出して、前記外装部材内で前記内突部と係合される外突部が設けられる、請求項1または請求項2に記載の分岐栓。
【請求項4】
前記分岐栓は、
前記連結管を下方に延出させて前記分岐栓本体を嵌装する、筒形状の外装部材と、
前記連結管が前記外装部材から延出する長さと略同一の軸心方向の長さ、および、前記外装部材の上方部分の外径より大きく且つ前記混合水栓本体が備えるケースの外径より大きい内径を備え、前記分岐栓を前記混合水栓に取り付けたときに、前記外装部材の上方部分の外周面を覆うように、または、前記連結管の外周を覆うように配置される、筒形状のカバーと、をさらに具備する、請求項1または請求項2に記載の分岐栓。
【請求項5】
前記分岐栓は、
半径方向内側に突出する内突部が設けられ、前記連結管を下方に延出させて前記分岐栓本体が下方から嵌装され、下端部が前記混合水栓本体の上端部に接合される、筒形状の外装部材と、
前記連結管が前記外装部材から延出する長さと略同一の軸心方向の長さ、および、前記外装部材の上方部分の外径より大きく且つ前記混合水栓本体が備えるケースの外径より大きい内径を備え、前記外装部材の上方部分の外周面を覆うように、または、前記連結管の外周を覆うように配置される、筒形状のカバーと、
をさらに具備し、
前記分岐栓本体は、半径方向外側に突出して、前記外装部材内で前記内突部と係合される、外突部が設けられる、請求項1または請求項2に記載の分岐栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−168756(P2010−168756A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10428(P2009−10428)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】