説明

分岐用継手

【課題】分岐用継手の内径と本管の外径とが合致せず、本管の強度が弱い場合であっても、押圧用スリーブ片の押圧用リブと本管の外面とを面接触させることができるので、本管に分岐管を確実に接続することは勿論、本管に局部的に曲げ応力がかからず、局部的な曲げ応力によって本管が悪影響を受ける恐れはない。
【解決手段】分岐管3が接続される分岐部4が形成された半円形状の分岐部用スリーブ片2と、分岐部用スリーブ片2と同径の半円形状の押圧用スリーブ片5とからなり、分岐部3の両側の分岐部用スリーブ片2の内周面には、本管1の外面に当接する支点用リブが形成され、押圧用スリーブ片5の両端部内周面には、前記支点用リブが当接する本管1の外面より外側の外面に当接する押圧用リブが形成され、押圧用スリーブ片5の外面には、その長手方向に沿って複数本のスリット9が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分岐用継手、特に、ガス管等の本管に分岐管を確実に接続することができることは勿論、強度が弱い本管に分岐管を接続する場合であっても、本管に局部的に作用する曲げ応力により本管が受ける悪影響を確実に防止することができる分岐用継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設されたガス管等の本管に分岐管を接続するための分岐用継手として、実公昭46−35063号公報に開示されるものがある。以下、この分岐用継手を従来分岐用継手といい、図面を参照しながら説明する。
【0003】
図7は、従来分岐用継手により本管に分岐管を接続した状態を示す部分断面図、図8は、従来分岐用継手の分岐部用スリーブ片を示す底面図、図9は、従来分岐用継手の押圧用スリーブ片を示す底面図である。
【0004】
図7から図9に示すように、本管11の分岐箇所に装着される従来分岐用継手は、それぞれ半円筒形状に形成された分岐部用スリーブ片12と押圧用スリーブ片13とからなっている。
【0005】
分岐部用スリーブ片12の中央部には、分岐管用開口14Aが設けられた分岐部14が形成され、分岐部14の両側の分岐部用スリーブ片12の内周面には、支点用リブ12Aが形成されている。支点用リブ12Aが形成されていることによって、支点用リブ12Aより外側の分岐部用スリーブ片12の外面と本管11の外面と間には隙間(S1)が形成される。隙間(S1)が形成されることによって、支点用リブ12Aを支点とする本管11の上方向の曲がりが許容される。分岐部14の開口部14Aの周囲と本管11との間にはゴム等からなるリング状パッキング15が挿入される。押圧用スリーブ片13の両端部内周面には、押圧用リブ13Aが形成されている。押圧用リブ13Aが形成されていることによって、押圧用リブ13A間の押圧用スリーブ片13の内面と本管11の外面との間には隙間(S2)が形成される。隙間(S2)が形成されることによって、押圧用リブ13Aによる支点用リブ12Aを支点とする上方向の曲げ応力が本管11にかかる。分岐部用スリーブ片12と押圧用スリーブ片13とは、これらのフランジ12B、13Bに形成されたボルト孔12C、13Cにボルト16を挿入し、ナット17を締め付けることにより円筒状に締結される。
【0006】
このように構成されている従来分岐用継手によれば、以下のようにして、本管に分岐管が接続される。
【0007】
地中に作業溝を掘削して本管11を露出させ、本管11の分岐管接続箇所に分岐部用スリーブ片12と押圧用スリーブ片13とをボルト16、ナット17により締結して固定する。分岐部用スリーブ片12の分岐部14には、リング状パッキング14を挿入しておく。次に、分岐部用スリーブ片12の分岐管用開口14Aから穿孔機のドリル(図示せず)を通して、本管11に孔11Aをあける。次に、分岐管18を分岐管用開口14A内にねじ込む。そして、作業溝を埋め戻せば、本管11に分岐管18が接続される。
【0008】
このようにして、従来分岐用継手によれば、本管11に分岐管18を確実に接続することができる。しかも、ボルト16、ナット17により分岐部用スリーブ片12と押圧用スリーブ片13とを締結すると、押圧用スリーブ片13の押圧用リブ13Aが本管11の下面を、分岐部用スリーブ片12の支点用リブ12Aを支点として押圧するので、本管11には、孔11Aを中心として上向きの曲げ応力が作用する。
【0009】
分岐管18の接続のために、本管11に孔11Aをあけると、その部分の強度が低下する。このように孔11Aがあけられた本管11の埋設地盤に不等沈下等が生じた場合、本管11には、孔11Aを支点として下向きの曲げ応力が作用し、この結果、孔11Aを始点として亀裂が生じ、本管11の破断に至る恐れがある。
【0010】
しかし、上述のように、従来分岐用継手により本管11に孔11Aを中心とする上向きの曲げ応力、すなわち、埋設地盤の不等沈下等により本管11に作用する、孔11Aを支点とする下向きの曲げ応力を打ち消す上向きの曲げ応力を予め本管11に作用させておけば、本管11に生じる亀裂を有効に防止することができる。
【0011】
【特許文献1】実公昭46−35063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来分岐用継手は、以下のような問題を有していた。
【0013】
ボルト16、ナット17により分岐部用スリーブ片12と押圧用スリーブ片13とを締結することによって、本管11に孔11Aを中心とする上向きの曲げ応力を作用させた場合、本管11の老朽化あるいは材質的な関係で、その強度が弱いと本管11に悪影響を及ぼす恐れがあった。
【0014】
本来、分岐用継手の内径が本管11の外径に合致するように、外径が異なる本管11毎に分岐用継手を製造すれば、図6(A)に示すように、押圧用スリーブ片13の押圧用リブ13Aと本管11の外面とは面接触し、この結果、本管11に作用する曲げ応力は分散され、本管11に局部的にかかることはないので、本管11に悪影響を及ぼす恐れはない。しかし、分岐用継手の内径と本管11の外径とが合致しない場合には、図6(B)に示すように、押圧用スリーブ片13の押圧用リブ13Aと本管11の外面とは点接触となるので、本管11にかかる曲げ応力は一点に集中し、この結果、本管11の強度が弱い場合には、本管11に悪影響を及ぼす恐れがあった。
【0015】
従って、この発明の目的は、ガス管等の本管に分岐管を確実に接続することができることは勿論、強度が弱い本管に分岐管を接続する場合であっても、本管に局部的に作用する曲げ応力により本管が受ける悪影響を確実に防止することができる分岐用継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0017】
請求項1に記載の発明は、互いに締結される複数個のスリーブ片からなる、本管に分岐管を接続するための分岐用継手において、前記分岐管が接続される分岐部が形成された分岐部用スリーブ片と、前記分岐部用スリーブ片と対向する位置に設けられる押圧用スリーブ片とを備え、前記分岐部の近傍の前記分岐部用スリーブ片の内周面には、前記本管の外面に当接する支点用リブが形成され、前記押圧用スリーブ片の両端部内周面には、前記支点用リブが当接する前記本管の外面より外側の外周面に当接する押圧用リブが形成され、前記押圧用スリーブ片の外面には、その長手方向に沿って複数本のスリットが形成されていることに特徴を有するものである。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記スリットは、前記押圧用スリーブ片の全長に亘って形成されていることに特徴を有するものである。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記スリットは、前記押圧用スリーブ片の両端部に形成されていることに特徴を有するものである。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか1に記載の発明において、前記押圧用リブの前記本管の外面との当接面は、前記支点用リブを支点とする前記本管の変形に合わせて傾斜していることに特徴を有するものである。
【0021】
請求項5に記載の発明は請求項1から4の何れか1に記載の発明において、1つの前記分岐部用スリーブ片と、これと同径の1つの前記押圧用スリーブ片とからなることに特徴を有するものである。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5の何れか1に記載の発明において、前記スリーブ片は、鋳鉄製であることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、分岐用継手の内径と本管の外径とが合致せず、本管の強度が弱い場合であって、押圧用スリーブ片の押圧用リブと本管の外面とを面接触させることができるので、本管に分岐管を確実に接続することは勿論、本管に局部的に作用する曲げ応力により本管が受ける悪影響を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、この発明の分岐用継手の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、本管に装着された、この発明の分岐用継手を上方から見た斜視図、図2は、本管に装着された、この発明の分岐用継手を下方から見た斜視図、図3は、図1のA−A線断面図、図4は、図1のB−B線断面図である。
【0026】
図1から図4において、1は、ガス管等の本管、2は、半円筒状の鋳鉄製分岐部用スリーブ片であり、中央部には、分岐管3が接続される分岐部4が形成されている。分岐部4には、本管1にあけられる後述する孔1Aに通じる開口4Aが形成されている。分岐部4の両側の分岐部用スリーブ片2の内周面には、本管1の外面に当接する支点用リブ2Aが形成されている。支点用リブ2Aが形成されていることによって、支点用リブ2Aより外側の分岐部用スリーブ片2の内面と本管1の外面と間には隙間(S1)が形成される。隙間(S1)が形成されることによって、支点用リブ2Aを支点とする本管1の上方向の曲がりが許容される。分岐部4の開口部4Aの周囲と本管1との間にはゴム等からなるリング状パッキング8が挿入される(図4参照)。
【0027】
5は、分岐部用スリーブ片2と同径の半円筒状の鋳鉄製押圧用スリーブ片であり、押圧用スリーブ片5および分岐部用スリーブ片2に形成されたフランジ2B、5Bのボルト孔2C、5Cにボルト6を挿入し、ナット7を締め付けることにより円筒状に締結される。押圧用スリーブ片5の両端部内周面には、押圧用リブ5Aが形成されている。押圧用リブ5Aは、分岐部用スリーブ片2の支点用リブ2Aが当接する本管1の外面より外側の外面に当接する。押圧用リブ5Aが形成されていることによって、両側の押圧用リブ5A間の押圧用スリーブ片5の内面と本管1の外面との間には隙間(S2)が形成される。隙間(S2)が形成されることによって、押圧用リブ5Aによる支点用リブ2Aを支点とする上方向の曲げ応力が本管1にかかる。
【0028】
押圧用スリーブ片5の外面には、複数本のスリット9が押圧用スリーブ片5の長手方向に沿って互いに平行に形成されている。スリット9は、押圧用スリーブ片5の全長に亘って形成しても、図5に示すように、押圧用スリーブ片5の両端部に形成しても良い。
【0029】
このように、押圧用スリーブ片5にスリット9を形成することによって、押圧用スリーブ片5は、この締結の際に縮径するように変形する。すなわち、図6(A)に示すように、本管1を包むように変形するので、締結前に分岐用継手の内径と本管1の外径とが合致しない場合であっても、押圧用スリーブ片5の押圧用リブ5Aと本管1の外面とは面接触し、この結果、本管1に作用する曲げ応力は分散され、局部的にかかることはないので、本管1に局部的に作用する曲げ応力によって本管が悪影響を受ける恐れはない。押圧用スリーブ片5にスリット9を形成しても分岐用継手の強度は十分に保持できる。
【0030】
図4に示すように、押圧用スリーブ片5の押圧用リブ5Aの本管1の外面との当接面を、分岐部用スリーブ片2の支点用リブ2Aを支点とする本管1の変形(図4中、二点鎖線で示す。)に合わせて傾斜させておけば、押圧用スリーブ片5の押圧用リブ5Aと本管1の外面との接触面積がさらに増大し、その分、本管1に作用する曲げ応力がさらに分散される。
【0031】
このように構成されている、この発明の分岐用継手によれば、以下のようにして、本管に分岐管が接続される。
【0032】
地中に作業溝を掘削して本管1を露出させ、本管1の分岐管接続箇所に分岐部用スリーブ片2と押圧用スリーブ片5とをボルト6、ナット7により締結して固定する。分岐部用スリーブ片2の分岐部4には、リング状パッキング8を挿入しておく。次に、分岐部用スリーブ片2の分岐管用開口4Aから穿孔機のドリル(図示せず)を通して、本管1に孔1Aをあける。次に、分岐管3を分岐管用開口4A内にねじ込む。そして、作業溝を埋め戻せば、本管1に分岐管3が接続される。
【0033】
分岐部用スリーブ片2と押圧用スリーブ片5とをボルト6、ナット7により締結すると、押圧用スリーブ片5の押圧用リブ5Aにより本管1には、図4中、二点鎖線で示すように、分岐部用スリーブ片2の支点用リブ2Aを支点とする上向きの曲げ応力が作用するが、押圧用スリーブ片5には、スリット9が形成されているので、押圧用スリーブ片5は、図6(A)に示すように、本管1を包むように変形して、押圧用リブ5Aと本管1の外面と面接触する。この結果、支点用リブ2Aを支点とする上向きの曲げ応力は分散されるので、本管1の強度が低下していて、分岐用継手の内径と本管1の外径とが合致しない場合であっても、本管に局部的に曲げ応力がかからず、局部的な曲げ応力によって本管1が悪影響を受ける恐れはない。
【0034】
以上の分岐用継手は、2つのスリーブ片に分割された場合であるが、3つ以上のスリーブ片に分割されている場合も同様である。この場合にも、1つのスリーブ片を分岐用スリーブ片としこれと対向する他のスリーブ片を押圧用スリーブ片とする。
【0035】
また、分岐部用スリーブ片2と押圧用スリーブ片5とは鋳鉄以外に鉄等、他の金属製であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本管に装着された、この発明の分岐用継手を上方から見た斜視図である。
【図2】本管に装着された、この発明の分岐用継手を下方から見た斜視図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図1のB−B線断面図である。
【図5】本管に装着された、この発明の他の分岐用継手を下方から見た斜視図である。
【図6】本管と押圧用リブの接触を示す断面図であり、(A)は、本管と押圧用リブとが点接触する場合を示し、(B)は、本管と押圧用リブとが面接触する場合を示す。
【図7】従来分岐用継手により本管に分岐管を接続した状態を示す部分断面図である。
【図8】従来分岐用継手の分岐部用スリーブ片を示す底面図である。
【図9】従来分岐用継手の押圧用スリーブ片を示す底面図である。
【符号の説明】
【0037】
1:本管
1A:孔
2:分岐部用スリーブ片
2A:支点用リブ
3:分岐管
4:分岐部
4A:開口
5:押圧用スリーブ片
5A:押圧用リブ
6:ボルト
7:ナット
8:パッキング
9:スリット
11:本管
11A:孔
12:分岐部用スリーブ片
12A:支点用リブ
12B:フランジ
12C:ボルト孔
13:押圧用スリーブ片
13A:押圧用リブ
13B:フランジ
13C:ボルト孔
14:分岐部
14A:開口
15:パッキング
16:ボルト
17:ナット
18:分岐管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに締結される複数個のスリーブ片からなる、本管に分岐管を接続するための分岐用継手において、
前記分岐管が接続される分岐部が形成された分岐部用スリーブ片と、前記分岐部用スリーブ片と対向する位置に締結される押圧用スリーブ片とを備え、前記分岐部の近傍の前記分岐部用スリーブ片の内周面には、前記本管の外面に当接する支点用リブが形成され、前記押圧用スリーブ片の両端部内周面には、前記支点用リブが当接する前記本管の外面より外側の外面に当接する押圧用リブが形成され、前記押圧用スリーブ片の外面には、その長手方向に沿って複数本のスリットが形成されていることを特徴とする分岐用継手。
【請求項2】
前記スリットは、前記押圧用スリーブ片の全長に亘って形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の分岐用継手。
【請求項3】
前記スリットは、前記押圧用スリーブ片の両端部に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の分岐用継手。
【請求項4】
前記押圧用リブの前記本管の外面との当接面は、前記支点用リブを支点とする前記本管の変形に合わせて傾斜していることを特徴とする、請求項1から3の何れか1に記載の分岐用継手。
【請求項5】
1つの前記分岐部用スリーブ片と、これと同径の1つの前記押圧用スリーブ片とからなることを特徴とする、請求項1から4の何れか1に記載の分岐用継手。
【請求項6】
前記スリーブ片は、鋳鉄製であることを特徴とする、請求項1から5の何れか1に記載の分岐用継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−144817(P2009−144817A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322774(P2007−322774)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000231877)日本鋳鉄管株式会社 (48)
【Fターム(参考)】