説明

分散剤、組成物

【課題】ナノカーボン材料または中性カーボンを効率良く分散できる分散剤を提供する。
【解決手段】構成単位a及び構成単位bからなり、全体に占める構成単位a及び構成単位bの割合が、aが60重量%より多く、bが40重量%以下であり、かつ重量平均分子量が1,000〜600,000であるアミンオキサイド基含有共重合体を含むことを特徴とするナノカーボン材料または中性カーボン用の分散剤であり、構成単位aが、側鎖にアミンオキサイド基を有する式(1)で示される構成単位である、分散剤


〔式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を、RおよびRは各々独立して、アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を、Xは2価の結合基をそれぞれ示し、nは0又は1である。〕。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、フラーレンなどのナノカーボン材料(以後、ナノカーボン材料と記す)や、蒸留水と混合煮沸した時に中性またはそれより高いpHを示す中性カーボンを分散するための分散剤に関し、またこの分散剤によって分散されたナノカーボン材料または中性カーボンを含むことを特徴とする組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に粉体の分散は界面活性剤の使用、粉体表面の化学的改質、および高分子被覆によって達成されてきた。この中で、アニオン界面活性剤による分散は安価かつ簡便である反面、荷電を有する不純物が入るために用途が限られていた。一方、ノニオン界面活性剤は荷電を有さないために応用範囲は広いが、分散効果が不十分である場合が少なく無かった。
近年、炭素質物質の中でも、特にナノカーボン材料などがその優れた物理特性や電気特性のため、盛んに研究されている。これらの材料は炭素の6員環によって構成され、酸化反応によって生成するカルボキシル基や水酸基など(以後“欠陥部分”と記す)が少ない理想的なπ電子の表面を有する事が知られている。欠陥部分が存在すると他の分子と相互作用する事ができるが、炭素の6員環を主体とした構造部分は他の分子と相互作用しにくいため、各種分散媒への分散性が著しく低いことが知られている。
【0003】
一方、ナノカーボン材料以外の炭素質物質としては、カーボンブラック、黒鉛、グラファイト、カーボン繊維などが挙げられるが、表面の構造により、酸性カーボンと中性カーボンに大別できる。即ち酸性カーボンとは、元々あるいは人工的に酸化した炭素質物質であり、蒸留水と混合煮沸した時に酸性を示す。酸性カーボンは、欠陥部分が多く、自己分散性が相対的に優れるとともに、界面活性剤などの分散剤を併用することで分散する事が可能である。
一方、中性カーボンは、蒸留水と混合煮沸した時に中性またはそれより高いpHを示す事が知られており、上述のナノカーボン材料と酸性カーボンの中間的な分散性を示し、酸性カーボンと比較すると、分散性は非常に低いことが知られている。これらナノカーボン材料または中性カーボンを分散するには、界面活性剤の使用、および高分子被覆が模索されてきたが、必ずしも満足のいく結果が得られていない。
一方、アミンオキサイド基を親水性基とする低分子界面活性剤は古くから知られているが、特許文献1〜5には、アミンオキサイド基を有する(メタ)アクリル系高分子材料が近年検討され始めているものの、ナノカーボン材料または中性カーボンを分散する効果があることは知られていなかった。
【0004】
また、特許文献6〜7には、高分子材料と炭素質物質を含む組成物で、高分子材料中にアミンオキサイド基が有っても良いとする記載は有るものの、分散に関する検討はなされておらず、ナノカーボン材料または中性カーボンを分散する効果があることは知られていなかった。
さらに、特許文献8には、アミンオキサイド基を有するマレイミド系の高分子材料を顔料の分散剤として使用することは知られているものの、ナノカーボン材料または中性カーボンなどの特に分散しにくい炭素質物質を分散する効果があることは知られていないとともに、高分子を構成する主たる化学構造がマレイミドであるため、組成比を変更するための共重合を行う場合、共重合性に乏しいということが問題であった。
また、特許文献9には、石炭や石油コークスに代表されるような炭素質微粉体を水スラリーにするに当たって、アミンオキサイド基を有する低分子界面活性剤を含む組成物が知られているが、アミンオキサイド基を有する高分子材料に関する検討は行われていない。
【特許文献1】特開平10−087439号公報
【特許文献2】特開2001−310915号公報
【特許文献3】特開2003−003197号公報
【特許文献4】特開2004−238325号公報
【特許文献5】特開2005−075737号公報
【特許文献6】特開2001−214089号公報
【特許文献7】特開2004−026999号公報
【特許文献8】特開2000−226414号公報
【特許文献9】特開平01−011195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来難しかったナノカーボン材料または中性カーボンを効率良く分散できる分散剤を提供するとともに、ナノカーボン材料または中性カーボンが分散した組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、種々検討を重ねた結果、従来の親水疎水基のバランスによる界面活性剤とは異なり、アミンオキサイド基の含有量の上昇に伴い、ナノカーボン材料または中性カーボンの分散性が向上することを見出し、上記の目的を達成し得るとの知見を得、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明の、
第1は、構成単位a及び構成単位bからなり、全体に占める構成単位a及び構成単位bの割合が、aが60重量%より多く、bが40重量%以下であり、かつ重量平均分子量が1,000〜600,000であるアミンオキサイド基含有共重合体を含むことを特徴とするナノカーボン材料または中性カーボン用の分散剤であり、
構成単位aが、側鎖にアミンオキサイド基を有する式(1)で示される構成単位であり、
【0008】
【化1】


〔式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を、RおよびRは各々独立して、アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を、Xは2価の結合基をそれぞれ示し、nは0又は1である。〕
構成単位bが、式(2)または式(3)で示される構成単位である、
分散剤である。
【0009】
【化2】

〔式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数24以下の炭化水素基を示す。〕
【0010】
【化3】

〔式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を、RおよびRは各々独立して、炭素数24以下のアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を、Yは2価の結合基を、それぞれ示し、mは0又は1である。〕
本発明の第2は、式(1)で示される構成単位aのR、R、Rがメチル基で、(X)nが下記式(4)または(5)で示される本発明の第1記載の分散剤である。
【0011】
【化4】

〔式(4)中、lは2〜4の整数である。〕
【0012】
【化5】

〔式(5)中、lは2〜4の整数である。〕
【0013】
本発明の第3は、ナノカーボン材料がカーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、フラーレンからなる群から選択される1種以上からなることを特徴とする本発明の第1〜第2記載の分散剤である。
【0014】
本発明の第4は、中性カーボンがカーボンブラック、黒鉛、グラファイト、カーボン繊維からなる群から選択される1種以上であり、かつ、蒸留水との混合液のpHが6.0以上であることを特徴とする本発明の第1〜第2記載の分散剤。
【0015】
本発明の第5は、本発明の第1〜第2記載の重合体、1重量部に対して、ナノカーボン材料または中性カーボンを1000〜0.01重量部含むことを特徴とする組成物である。
【0016】
本発明の第6は、ナノカーボン材料がフラーレンおよび繊維径0.5nm〜1000nmのカーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバーからなる群から選択される1種以上からなることを特徴とする本発明の第5記載の組成物である。
【0017】
本発明の第7は、中性カーボンがカーボンブラック、黒鉛、グラファイト、カーボン繊維からなる群から選択される1種以上であり、かつ、蒸留水との混合液のpHが6.0以上であることを特徴とする本発明の第5記載の組成物である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来難しかったカーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、フラーレンなどのナノカーボン材料や、中性カーボンなどの難分散性炭素質物質をはじめとした炭素質物質を効率良く分散できるとともに、分散度の良好な組成物が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の分散剤および組成物を構成する各成分について以下に説明する。
本発明で使用する分散剤は、下記の構成単位a及び構成単位bから成り、全体に占める構成単位a及び構成単位bの割合が、aが60重量%より多く、bが40重量%以下であり、かつ重量平均分子量が1,000〜600,000であるアミンオキサイド基含有共重合体を含むことを特徴とする。
構成単位aは、側鎖にアミンオキサイド基を有し、式(1)で示される。
【0020】
【化1】

〔式(1)中、R1 は水素原子又はメチル基を、R2およびRは各々独立して、アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を、Xは2価の結合基を、それぞれ示し、nは0又は1である。〕
構成単位bは、式(2)または(3)で示される。
【0021】
【化2】

〔式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数24以下の炭化水素基を示す。〕
【0022】
【化3】


〔式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を、RおよびRは各々独立して、炭素数24以下のアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を、Yは2価の結合基を、それぞれ示し、mは0又は1である。〕
【0023】
式(1)中のR1は、水素原子又はメチル基である。式(1)中のR2およびRは各々独立して、アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基である。R2 〜R3 がアルキル基を示す場合には、その炭素数は通常1〜24である。アリール基を示す場合には、その炭素数は通常6〜24である。アリールアルキル基を示す場合にはその炭素数は通常7〜24である。なお、これらのアルキル基、アリール基、アリールアルキル基には置換基が結合していてもよい。Xが示す2価の結合基としては、例えばアルキレンオキシカルボニル結合(−R−OCO−)、アルキレンアミノカルボニル結合(−R−NHCO−)、アルキレンカルボニルオキシ結合(−R−COO−)、カルボニル結合(−CO−)、アルキレン結合(−R−)、フェニレン結合(−Ph−)、ビフェニレン結合(−Ph−Ph−)及びアルキレンフェニレン結合(−R−Ph−)などが挙げられる。なお、上記において(−R−)はアルキレン基を示し、(−Ph−)はフェニレン基を示すが、共重合性から、アルキレンオキシカルボニル結合(−R−OCO−)、アルキレンアミノカルボニル結合(−R−NHCO−)が好ましい。
【0024】
本構成単位は炭素質物質のπ電子表面と相互作用する重要なドメインであるとともに、水性溶媒を用いた時には(共)重合体に親水性を付与するドメインでもある。
(共)重合体中の本構成単位の割合は60重量%より多い事が好ましい。この構成単位が60重量%以下であると、ナノカーボン材料および/または中性カーボンの分散性が減少し、分散性が発現し難い。
【0025】
本構成単位を(共)重合体中に含有させるには、アミンオキサイド基を有する単量体を必要に応じて他の単量体と(共)重合させてもよいが、アミンオキサイド基を与える3級アミノ基を有する単量体(以後“前駆体”と略す)を必要に応じて他の単量体と(共)重合させ、次いで得られた(共)重合体の3級アミノ基をオキサイド化するのが好ましい。このような“前駆体”としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヘキシル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジシクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジフェニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジベンジル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピオン酸ビニル、N,N−ジエチルアミノプロピオン酸ビニル、N,N−ジメチルアリルアミン、p−ジメチルアミノメチルスチレン、p−ジメチルアミノエチルスチレン、p−ジエチルアミノメチルスチレン、p−ジエチルアミノエチルスチレン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、或いは、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有不飽和化合物とN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンなどとの反応生成物などが挙げられる。なかでも共重合性から、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドを用いるのが好ましいく、供給性から、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドがさらに好ましい。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両者を意味している。
【0026】
本発明で使用する重合体は、式(2)または(3)で示される構成単位を共重合体の全構成の40重量%以下で含む事ができる。
式(2)で示される構成単位は、側鎖に炭素数24以下のアルキル基を有しており、共重合体に疎水性を付与する効果がある。よってこの構成単位が多すぎると水性溶媒に対する溶解度が低下するが疎水性分散媒に対する溶解度は向上するので、適宜組成比を決定すれば良い。一方、この構成単位が40重量%を超えると、前記式(1)で表される構成単位の相対比率が減り、炭素質物質の分散性が低下するために好ましくない。
【0027】
式(2)で示される構成単位は、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ドコシルなどである。
【0028】
式(3)で示される構成単位中のR〜Rがアルキル基を示す場合には、その炭素数は通常1〜24である。アリール基を示す場合には、その炭素数は通常6〜24である。アリールアルキル基を示す場合にはその炭素数は通常7〜24である。なお、これらのアルキル基、アリール基、アリールアルキル基には置換基が結合していてもよい。Yが示す2価の結合基としては、例えばアルキレンオキシカルボニル結合(−R−OCO−)、アルキレンアミノカルボニル結合(−R−NHCO−)、アルキレンカルボニルオキシ結合(−R−COO−)、カルボニル結合(−CO−)、アルキレン結合(−R−)、フェニレン結合(−Ph−)、ビフェニレン結合(−Ph−Ph−)及びアルキレンフェニレン結合(−R−Ph−)などが挙げられる。なお、上記において(−R−)はアルキレン基を示し、(−Ph−)はフェニレン基を示すが、共重合性から、アルキレンオキシカルボニル結合(−R−OCO−)、アルキレンアミノカルボニル結合(−R−NHCO−)が好ましい。
【0029】
具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヘキシル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジシクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジフェニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジベンジル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピオン酸ビニル、N,N−ジエチルアミノプロピオン酸ビニル、N,N−ジメチルアリルアミン、p−ジメチルアミノメチルスチレン、p−ジメチルアミノエチルスチレン、p−ジエチルアミノメチルスチレン、p−ジエチルアミノエチルスチレン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、或いは、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有不飽和化合物とN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンなどとの反応生成物などが挙げられる。なかでも共重合性から、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドを用いるのが好ましいく、供給性から、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドがさらに好ましい。
【0030】
共重合体中に式(2)または(3)の構成単位を含有させるには、前記式(1)で示される構成単位またはその前駆体と前記式(2)または(3)で示される構成単位とを共重合すればよい。
【0031】
本発明に係るアミンオキサイド基含有(共)重合体は式(1)と式(2)、または式(1)と式(3)で表される構成単位を含むことを特徴としているが、重合体中にこれらの構成単位以外の構成を被分散物の分散能がなくならない範囲で含有させてもよい。
【0032】
本発明に係るアミンオキサイド基含有(共)重合体は、式(1)と式(2)、または式(1)と式(3)で表される構成単位を含む(共)重合体を与える単量体を常法に従って(共)重合させればよい。式(1)で表される構成単位の“前駆体”を与える単量体を用いた場合には、得られた(共)重合体に過酸化水素などを反応させて、(共)重合体の3級アミノ基をアミンオキサイド基に転換する。(共)重合反応は、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)などのアゾ化合物や、ベンゾイルパーオキシドなどの過酸化物のようなラジカル重合開始剤の存在下に、30〜120℃程度で1〜20時間程度行えばよい。重合は溶液重合、塊状重合又は懸濁重合のいずれでも行うことができる。好ましくは反応媒体中に反応原料に重合開始剤を添加したものを経時的に添加するなどして重合させることにより、分子量分布の狭い(共)重合体を生成させることができる。重量平均分子量は1,000〜600,000が好ましく、1,000以下では1分子中のアミンオキサイド基の数が少ないため、低分子界面活性剤と同様、分散組成物の高温保存時の安定性に欠け、好ましくなく、600,000以上では、一般的な工業的製法よりも希釈条件で製造する必要があり、実用的でない。
【0033】
得られた(共)重合体の第3級アミノ基をアミンオキサイド基に転換するには、(共)重合体にオキサイド化剤を20〜100℃で反応させればよい。オキサイド化剤としては、過酸化水素、過酸化アンモニウム、過酸化ナトリウム、過酢酸、メタクロロ過安息香酸、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシドなどの過酸化物、オゾンなどを用いればよい。なお、共重合体の製造に際し、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有単量体や2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートなどのイソシアネート基含有単量体を併用した場合には、得られた共重合体にヒドロキシエチル−N,N−ジメチルアミンオキサイドなどを反応させることにより、共重合体中にアミンオキサイド基を含有させることもできる。
【0034】
このようにして得られたアミンオキサイド基含有(共)重合体は、そのまま分散剤として用いることもできるが、所望により種々の精製処理を施して用いることもできる。例えば溶液からの再沈澱や吸着剤による吸着処理が行われる。(共)重合体が異臭を有する場合には、溶媒と共に加熱して臭気成分を共沸除去したり、活性炭、ゼオライト、活性白土などの吸着剤で処理して臭気成分を除去するのが好ましい。また(共)重合体を溶解しない有機溶媒で臭気成分を抽出除去することができる。さらには、透析や限外ろ過などの膜精製を用いる事ができる。
【0035】
また、アミンオキサイド基含有(共)重合体は、そのまま分散剤として用いることもできるが、所望により分散媒に分散または溶解して用いる事ができる。この場合、分散媒は特に限定されず、必要に応じて本発明の組成物の物性を損なわない範囲で、重合開始剤、粘度調節剤、貯蔵安定剤、湿潤剤、酸、塩基、および塩からなる群より選択される1種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0036】
これらの分散媒中のアミンオキサイド基含有(共)重合体の濃度は、後に添加するナノカーボン材料または中性カーボンの表面積に依存するとともに、これらのカーボン材料表面とアミンオキサイド基含有(共)重合体の結合定数に依存するために特に限定されないが、実用的な使用では、50〜0.005重量%が好ましく、40〜0.05重量%がより好ましい。0.005重量%以下ではナノカーボン材料または中性カーボンの分散量が少なくなり、50重量%以上では分散液を製造する際に濃縮工程が必要となり実用的でない。
【0037】
これらの分散媒とアミンオキサイド基含有(共)重合体の混合方法としては、分散媒が液体である場合には、分散媒にアミンオキサイド基含有(共)重合体を加えて加熱、撹拌することで混合できるが、分散媒が固体である場合には分散媒を加熱し、融解した状態でアミンオキサイド基含有(共)重合体を加えて、撹拌することにより混合する方法などが例示できる。
【0038】
本発明に使用できるナノカーボン材料としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、フラーレンが挙げられる。これらの材料は、炭素の6員環からなるグラフェンシートが筒形あるいは毬状に巻いた形状の炭素系材料であり、それ以外のカルボキシル基や水酸基などの構造が少ない事が知られている。また、筒状のナノカーボン材料は、その周壁の構成数と繊維径から単層ナノチューブ(SWCNT)、多層ナノチューブ(MWCNT)、カーボンナノファイバーに大別され、また、グラフェンシートの構造の違いからカイラル(らせん)型、ジグザグ型、およびアームチェア型に分けられるなど各種のものが知られている。本発明は、このようなカーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、フラーレンと称されるものであれば、いずれのタイプのものにも適用することができる。
【0039】
前期ナノカーボン材料の製造方法としては、いずれの製造方法であってもよく、単層構造、多層構造を有するものを得るために、その製造方法を選択することができる。単層構造のカーボンナノチューブを製造するには、レーザーアブレーション法、アーク放電法、熱CVD法、プラズマCVD法、燃焼法などを選択することができる。多層構造のカーボンナノチューブの製造方法としては、触媒の担体としてゼオライトを使用し、アセチレンを原料にした熱CVD法が好ましい。この熱CVD法は精製工程を省略することができ、多少の熱分解炭素などの炭素被覆はあるものの、純度が高く、高度にグラファイト化された多層カーボンナノチューブを得ることができるため好ましい。
【0040】
本発明に使用することができる中性カーボンとしては、カーボンブラック、黒鉛、グラファイト、カーボン繊維などの炭素質物質を挙げることができるが、蒸留水との混合液のpHが6.0以上であることが望ましい。混合液のpHが6.0未満である場合は、炭素質物資表面にカルボキシル基や水酸基が存在している事を示しており、本発明の分散剤を用いなくても分散媒に分散し得ることが知られている。
上記ナノカーボン材料または中性カーボンのうち、粒子状のものについては、一次粒子径の範囲が0.7nm〜100μmであるものが好ましく、0.7nm〜10μmのものがより好ましく、0.7nm〜1μmのものが最も好ましい。また、繊維状のものでは、長さの範囲が0.5nm〜100μmのものが望ましく、1nm〜50μmの範囲にあるものがより望ましい。
【0041】
ナノカーボン材料または中性カーボンなどの炭素質物質と、アミンオキサイド基含有(共)重合体の混合比は、炭素質物質の表面積に依存するとともに、アミンオキサイド基含有(共)重合体と炭素質物質の結合定数に依存するために、各々のケースで最適化されるが、アミンオキサイド基含有(共)重合体1重量部に対して、炭素質物質が1000〜0.01重量部が好ましく、200〜0.1重量部がより好ましい。0.1重量部未満であると、(共)重合体が分散に有効に使用される量が少ないために効率が悪く、0.01重量部未満であると、分散状態に変化が無い割に粘度が上昇するために好ましくない。200重量部以上では特別な分散器具が必要となるために好ましくなく、1000重量部を超えると被分散物が多いために十分な分散効果が得られなくなるため好ましくない。
【0042】
ナノカーボン材料、特にカーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバーの添加に際しては、凝集物をほぐしつつ再度の凝集を防止しながら分散する必要がある。そのためには分散時に十分なせん断力が与えられることが好ましい。これらの分散に用いることの出来る装置としては、特に限定されるものではないが、超音波混合技術または高剪断混合技術を用いたものが特に好ましく、攪拌器、ホモジナイザー、コロイドミル、フロージェットミキサー、ディゾルバー、マントン乳化装置、超音波装置、アジテーターミル、アトライター、コロイドミル、ボールミル、3本ロールミル、パールミル、スーパーミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、ダイナトロン、加圧ニーダー、ペイントコンディショナー、コボールミル、バスケットミル、ホモミキサー、湿式ジェットミル、ナノマイザーなどの分散装置を用いて分散物を得ることができる。また、公知の粉砕化手段、例えば、ボールミリング(ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミルなど)、サンドミリング、コロイドミリング、ジェットミリング、ローラーミリング、乳鉢、サンドグラインダー、ビーズミル、インターナルミキサー、バンバリーミキサー、二軸混練機などを挙げることができる。
【0043】
ナノカーボン材料または中性カーボンが分散された組成物は必要に応じて混合中に反応を行わせることができる。具体的には、分散媒として水酸基またはアミノ基を有する化合物とイソシアネート基を有する化合物を選択した場合には、混合することでウレタン結合またはウレア結合ができる。分散媒に水酸基またはアミノ基を有する化合物とエポキシ基を有する化合物を選択した場合には、混合することでエーテル結合や2価以上のアミノ基による結合ができる。
【0044】
また、ナノカーボン材料または中性カーボンが分散された組成物は、必要に応じて混合後に反応させることもできる。具体的には、分散媒にビニル基を有する単量対を含む場合には、あらかじめ重合開始剤を混合しておき、昇温や、高エネルギー線照射することで重合する事ができる。この場合、選択する重合開始剤によっても異なるが、一般的な重合条件であればよく、30〜120℃程度で0.5〜20時間程度処理するのが実用的である。分散媒にカルボキシル基を有する化合物と水酸基を有する化合物を含む場合、あるいは分散媒にカルボキシル基を有する化合物とアミノ基を有する化合物を含む場合、脱水反応することでエステルあるいはアミドを形成する事ができる。この場合、添加する触媒によっても異なるが、一般的な脱水条件であればよく、常圧の場合、120〜220℃程度で0.5〜20時間程度処理するのが実用的である。
【実施例】
【0045】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1−1)<アミンオキサイド基含有重合体(分散剤)の製造>
エタノール20重量部にジメチルアミノエチルアクリレート(以下、DMAEAと記す)を10重量部加え、重合開始剤としてt−ブチルペルオキシネオデカノエート(商品名「パーブチルND」、日油(株)社製、以下P−NDと略記する)を0.07重量部になるように添加した。この原料液を窒素置換後、滴下ロートに充填し、冷却管存在下、系の温度を60℃に設定した反応容器に3時間かけて滴下した。引き続いて、70℃で1時間攪拌後、70℃で、35%の過酸化水素水7重量部を3時間かけてさらに滴下し、引き続いて還流温度で3時間撹拌後、冷却した。
この溶液を透析膜(スペクトラム・メディカル・インダストリーズ社製、商品名スペクトラポア6、MwCO.8000)に挿入し、重合溶液の10倍の体積のエタノール:水=95:5(体積比)を用いて透析操作を行い、1日1回の溶媒交換を4日間続けた後、透析液をエタノール:水=5:5(体積比)に変更して、1日1回の溶媒交換をさらに3日間続け、さらに透析液を精製水に変更して、1日1回の透析液交換を3日間続けた。次に、この水溶液を凍結乾燥することでアミンオキサイド基含有重合体(分散剤)を得た。
【0046】
(実施例1−2〜1−3、比較例1−1〜1−3)<アミンオキサイド基含有重合体(分散剤)の製造>
実施例1−1で用いた原料と条件を表1に示す原料と条件に変更した以外は、実施例1−1と同様の方法を用いてアミンオキサイド基含有共重合体(分散剤)を作製した。
(参考例1)<構成単位aおよび構成単位bが全体に占める割合の測定と算出>
実施例1−1〜1−3と、比較例1−1〜1−3の分散剤を試料濃度が0.4重量%になるように水で希釈し、Total Nitrogen Analyzer TN−100(三菱化学株式会社製)を用いて、窒素濃度を測定した。
次に、実施例1−1〜1−3と、比較例1−1〜1−3の分散剤を重水に溶解し、1H−NMR測定を行い、ジメチルアミノ基のメチルプロトン由来の2.44ppmのピークの積分値と、ジメチルアミンオキサイド基のメチルプロトン由来の3.34ppmのピークの積分値の比から、側鎖にアミンオキサイド基を有する構成単位aと式(3)のアミノ基を有する構成単位bの比率を求めた。次に、この比率と前記窒素濃度から、側鎖にアミンオキサイド基を有する構成単位a、式(2)の構成単位b、および式(3)の構成単位bが全体に占める比率を算出した。結果を表1に記す。
【0047】
(参考例2)<重量平均分子量、Mw/Mnの測定>
実施例1−1〜1−3と、比較例1−1〜1−3を、以下の条件で、ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー法を用いて、重量平均分子量、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)を測定した。結果を表1に併せて記す。なお、標準物質としてはポリスチレンを用い、標準物質測定時のみ溶離液をテトラヒドロフランに交換した。
測定機器:Waters alliance 2695、Separation Module(ウォーターズ社製)
検出器:Waters 2414、Refractive Index Detector(ウォーターズ社製)
カラム:PLgel MIXED−D 7.5mmφ×300mm(ポリマーラボラトリーズ社製):2本
カラム温度:60℃
溶離液:エタノール+5重量%トリメチルアミン−N−オキサイド・2水和物
流速:0.5mL/分
標準物質:ポリスチレン
インジェクション量:50μL(濃度約1重量%)
【0048】
【表1】

【0049】
(実施例2−1)<溶液状分散剤の製造>
実施例1−1のアミンオキサイド基含有重合体からなる分散剤を濃度が1重量%になるように精製水に溶解し、溶液状分散剤を作製した。
【0050】
(実施例2−2〜2−10、比較例2−1〜2−7)<溶液状分散剤の製造>
実施例2−1で実施例1−1のアミンオキサイド基含有重合体を用いる代わりに、表2に記載した実施例または比較例のアミンオキサイド基含有(共)重合体または界面活性剤を用い、表2に記した濃度で、表2に記した分散媒で溶解した以外は実施例2−1と同様の方法で製造を行い、溶液状分散剤を作製した。
【0051】
【表2】

【0052】
(実施例3−1)
実施例1−1のアミンオキサイド基含有重合体からなる分散剤を濃度が1重量%になるように精製水に溶解し、溶液状分散剤を作製した。次に、実施例1−1の重合体と昭和電工社製カーボンナノファイバー(VGCF−S)の混合重量比が1:0.2になるようにVGCF−Sを配合し、氷浴中でホモジナイズ(10000rpm,30分)した。引き続いて、超音波照射(150W,1時間)し、遠心(2300G,30分)後、体積で全量の半分の上澄みを採集し組成物とした。本検討で使用した機器を以下に列挙する。
・ホモジナイザー:Polytron PT3100 KINEMATICA社製
・撹拌チップ(ジェネレーターシャフト):PT/DA 3012/2(径12mmφ)KINEMATICA社製
・超音波照射器:Ultrasonic Generator Model US150 日本精機製作所製
・遠心分離器:himac CF 15D2 日立工機製
・遠沈管:50ml(PTFE)ナルゲン社製
【0053】
(実施例3−2〜3−13、比較例3−1〜3−16)
実施例3−1で実施例1−1のアミンオキサイド基含有重合体からなる分散剤を用いる代わりに、表3に記載した実施例または比較例のアミンオキサイド基含有(共)重合体または界面活性剤を、表3に記した濃度で、表3に記した分散媒に溶解後、表3に記したナノカーボン材料および/または中性カーボンを、表3に記した混合重量比、分散条件で、分散処理することにより組成物を作製した。
【0054】
【表3】

【0055】
(参考例3)<カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブの分散性の評価>
実施例3−1〜3−6、および比較例3−1〜3−7の組成物を表4に記した条件で保管後、上澄み液の吸光度を10mmセル、λ=500nmの条件で測定した。表4に結果を記す。なお、分散状態が良いほど、吸光度が大きな数値となる。なお、分光光度分析はU−3010日立ハイテクノロジーズ社製を用いて行った
【0056】
【表4】

【0057】
以上より、本特許の組成物は比較例の組成物に比べて吸光度が高く、カーボンナノファイバーおよびカーボンナノチューブの分散状態が良いことが示された。
【0058】
(参考例4)(カーボンブラック分散液の経時安定性評価)
実施例3−7、および比較例3−8〜3−16の組成物25gを30mLのキャップ付き試験管に入れて密封し、60℃で静置した。1週間後、上清を液面から10mm下の所から1mL採取して秤量し、95℃で1時間常圧乾燥後、105℃で減圧乾燥し、再度秤量して、乾燥重量残分%を算出した。結果を表5に記す。
【0059】
【表5】

【0060】
以上より、本特許の組成物は比較例の組成物に比べて中性カーボンの分散性に優れている事が確認された。
【0061】
(実施例4−1)<カーボンナノチューブ組成物の作製>
実施例3−2のカーボンナノチューブ分散液を40℃以下でエバポレーション後、すり鉢で粉砕することで、ポリ(メタクリル酸ブチル−co−メタクリル酸メチル−co−メタクリル酸ジメチルエチルアミンオキサイド)が被覆された組成物を作製した。
【0062】
(参考例5)<分散剤が被覆されたカーボンナノチューブの確認>
実施例4−1の組成物をATRプリズムではさみ、組成物の表面のIR(ATR−IR)測定を行った。その結果、3350、2950、1730、1450、1240、1150および960cm−1の吸収があることが判明した。これらの吸収は実施例1−2の分散剤のポリアタクリル酸ジメチルエチルアミンオキサイドの吸収スペクトルのピークと同じ場所であることから、実施例4−1の組成物は実施例1−2の分散剤で覆われていることが確認された。
【0063】
(実施例4−2)<カーボンブラック組成物の作製>
実施例3−9のカーボンブラック分散液を、中性洗剤と水、アルコールで洗浄した透明ガラス板上にスピンコーターを用いて2000rpmで塗布し、常温で30分セッティングした後、120℃で10分間乾燥した。
【0064】
(参考例6)<カーボンブラック組成物の評価1>
実施例4−2をエポキシ樹脂で包埋した後、ウルトラミクロトームで約800Åの切片を切り出し、電子顕微鏡(5000倍)で観察した。その結果、ほとんど0.1μm以下の凝集塊であり、ブラックマトリックスなどの素材として有用であることが確認された。
【0065】
(参考例7)<カーボンブラック組成物の評価2>
実施例3−9、10の分散液をバーコーター#7を使用し、インクジェット専用紙(光沢紙、マット紙)および/または普通紙(コピー用紙)に展開、転色し、自然乾燥した。その結果、原料の剥がれがなく、被記録剤表面の露出が無かった。
さらに、実施例3−9、10の分散液をセイコーエプソン社製インクジェットプリンターMJ8000Cのインクタンクに入れ、インクジェットプリンタ写真画質専用光沢紙に印刷したところ、出力した画像に相当する印字が確認された。
これらのことから、実施例3−9、10の分散液はインクなどの素材として有用であることが確認された。
【0066】
(参考例8)<カーボンブラック組成物の評価3>
実施例3−11、12の表面にテスター電極をあて、導電率を測定した。その結果、原料の中性カーボンブラックにテスター電極を刺したのと同程度の導電率が確保されていることから、本素材が電極として有用である事が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成単位a及び構成単位bからなり、全体に占める構成単位a及び構成単位bの割合が、aが60重量%より多く、bが40重量%以下であり、かつ重量平均分子量が1,000〜600,000であるアミンオキサイド基含有共重合体を含むことを特徴とするナノカーボン材料または中性カーボン用の分散剤であり、
構成単位aが、側鎖にアミンオキサイド基を有する式(1)で示される構成単位であり、
【化1】



〔式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を、RおよびRは各々独立して、アルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を、Xは2価の結合基をそれぞれ示し、nは0又は1である。〕
構成単位bが、式(2)または式(3)で示される構成単位である、
分散剤。
【化2】

〔式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数24以下の炭化水素基を示す。〕
【化3】

〔式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を、RおよびRは各々独立して、炭素数24以下のアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を、Yは2価の結合基を、それぞれ示し、mは0又は1である。〕
【請求項2】
式(1)で示される構成単位aのR、R、Rがメチル基で、(X)nが下記式(4)または(5)で示される請求項1記載の分散剤。
【化4】

〔式(4)中、lは2〜4の整数である。〕
【化5】

〔式(5)中、lは2〜4の整数である。〕
【請求項3】
ナノカーボン材料がカーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、フラーレンからなる群から選択される1種以上からなることを特徴とする請求項1〜2記載の分散剤。
【請求項4】
中性カーボンがカーボンブラック、黒鉛、グラファイト、カーボン繊維からなる群から選択される1種以上であり、かつ、蒸留水との混合液のpHが6.0以上であることを特徴とする請求項1〜2記載の分散剤。
【請求項5】
請求項1〜2記載の重合体1重量部に対して、ナノカーボン材料または中性カーボンを1000〜0.01重量部含むことを特徴とする組成物。
【請求項6】
ナノカーボン材料がフラーレンおよび繊維径0.5nm〜1000nmのカーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバーからなる群から選択される1種以上からなることを特徴とする請求項5の組成物。
【請求項7】
中性カーボンがカーボンブラック、黒鉛、グラファイト、カーボン繊維からなる群から選択される1種以上であり、かつ、蒸留水との混合液のpHが6.0以上であることを特徴とする請求項5の組成物。

【公開番号】特開2010−119949(P2010−119949A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295289(P2008−295289)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】