説明

分散剤組成物

【課題】炭素粉末及びセラミック粉末に対して高い分散性と分散安定性を有する組成物を提供する。
【解決手段】一般式(1)の化合物と炭素粉末又はセラミック粉末とを含有する組成物。


(Rは炭素数1〜23の炭化水素基を示し、Rは水素又は、カルボン酸基或いはスルホン酸基を有してもよい炭素数1〜3の炭化水素基。Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、又はそれらの塩。Zは−NR’−(R’は、水素又は炭素数1〜10の炭化水素基)、−O−、又は−S−。j、kは0、1、2のいずれかであり、且つj、kは同時に0ではなく、nは2〜20の整数。Xは置換基を有していてもよい分子量100万以下の炭化水素鎖を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の化合物と炭素粉末又はセラミック粉末を含有する組成物に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンナノチューブ(以下、CNTとする)やチタン酸バリウムなどの炭素粉末又はセラミック粉末の利用が各種用途で試みられている。
例えば、CNTはその特性からエレクトロニクス(トランジスター素子、配線など)、エネルギー(燃料電池用電極材料、太陽光発電装置、ガス貯蔵など)、電子放出(フラットパネル装置など)、化学(吸着剤、触媒、センサーなど)、複合材料(導電性プラスチック、強化材料、難燃ナノコンポジットなど)など様々な分野での応用が期待されている。
しかしながら、このCNTは、分散させることが非常に困難であり、これまでに様々な分散方法が試みられている。
【0003】
特許文献1及び2では、ドデシル硫酸ナトリウムや、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤を使用して、CNTを分散させる方法が提案されている。
しかしながら、この場合、分散剤がいずれも金属塩である為に、電子材料分野への用途は困難となってしまう等、CNTの分散剤として使用できる分野が限られてしまう。
【0004】
また、チタン酸バリウムは、積層セラミックスコンデンサー用途で使用されている。具体的には、積層セラミックスコンデンサーとはセラミックの誘電体層を電極で挟んだ複合層を多層設けたものであるが、高い誘電率を有するチタン酸バリウムが、この積層セラミックスコンデンサー中のベースとなる誘電体層に利用される。そして、誘電体層の形成を容易にする方法として、チタン酸バリウムを含有する組成物をコーティングし、その後焼成して誘電体層を得る方法が行われている。
積層セラミックコンデンサーの小型大容量化のためには、電極−誘電体複合層の薄膜化や高積層化が必要であり、現在は、1μm以下の厚さで誘電体層が形成され、容量に応じて数十〜数千層程度積層したものが製造されている。
この誘電体層を、上記のコーティング法で形成させるためには、チタン酸バリウムを微粒化し、さらに、コーティング液中においてチタン酸バリウム粒子を媒体中に安定的に分散させることが必要となる。
また、コーティング被膜表面に平滑性を持たせることが求められるため、チタン酸バリウムを含むコーティング液が十分な流動性を有することも必要となる。さらに、コーティング液には、極性有機溶媒が使用されることが一般的であり、チタン酸バリウムを分散させる分散剤としては、極性有機溶媒中で使用できるものである必要もある。
【0005】
以上のように、CNTやチタン酸バリウム等、分散させるのが困難な無機材料の粉末を分散させる分散剤として、様々な提案がなされている。
【0006】
また、特許文献3では、無機顔料を分散させる分散剤として、ヒドロキシカルボン酸を縮合して得られる酸価10〜100の縮合ヒドロキシカルボン酸又はその塩を使用する技術が開示されている。
【0007】
特許文献4では、セラミック粉末の有機媒質への分散方法として、縮合度2以上のポリヒドロキシカルボン酸と多価アルコールのエステル化物を使用する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−238126号公報
【特許文献2】特開2005−95806号公報
【特許文献3】特公昭54−34009号公報
【特許文献4】特開平06−15157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の分散剤では、分散性及び分散安定性が充分でないという問題を有する。
本発明は、炭素粉末及びセラミック粉末に対して高い分散性と分散安定性を有する組成物の提供を目的とするものである。
更に、本発明は、分散剤が金属塩を含むことが好ましくない電子材料分野への用途にも十分に使用可能な、炭素粉末又はセラミック粉末に対して高い分散性と分散安定性を有する組成物の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の化合物、即ち、分子内に疎水基と親水基とを複数有する特定の化合物と、炭素粉末又はセラミック粉末とを併用した組成物とすることで上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。すなわち、本発明は下記に示す通りである。
[1] 下記一般式(1)で示される化合物と、炭素粉末又はセラミック粉末とを含有する組成物。
【化1】


(上記一般式(1)において、Rは、炭素数1〜23の炭化水素基を示し、Rは、水素又は、カルボン酸基或いはスルホン酸基を有してもよい炭素数1〜3の炭化水素基を示す。Yは、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、又はそれらの塩を示す。Zは、−NR’−(R’は、水素又は炭素数1〜10の炭化水素基)、−O−、又は−S−を示す。j、kは0、1、2のいずれかであり、且つj、kは同時に0ではなく、nは2〜20の整数を示す。Xは、置換基を有していてもよい分子量100万以下の炭化水素鎖を示す。)
[2] 前記一般式(1)中のXの炭素数が、1〜40である[1]に記載の組成物。
[3] 前記一般式(1)で示される化合物が、下記一般式(2)で示される化合物である[1]又は[2]に記載の組成物。
【化2】


(上記一般式(2)において、Rは炭素数1〜23の炭化水素基を示し、Rは水素又は、カルボン酸基或いはスルホン酸基を有してもよい炭素数1〜3の炭化水素基を示す。Yは、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、又はそれらの塩を示す。Zは、−NR’−(R’は、水素又は炭素数1〜10の炭化水素基)、−O−、又は−S−を示す。X’は、カルボキシル基又はその塩、−NHR’基(R’は、水素又は炭素数1〜10の炭化水素基)、−OH基、−SH基のうち少なくともいずれか一つを有する炭素数が1〜20の炭化水素鎖を示す。j、kは0、1、2のいずれかであり、且つj、kは同時に0ではない。)
[4] 炭素粉末を含み、該炭素粉末が、カーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、フラーレンからなる群から選択される1種以上からなることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一つに記載の組成物。
[5] セラミック粉末を含み、該セラミック粉末が、下記の群から選択される1種以上からなることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一つに記載の組成物。
(酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムカルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸バリウム、チタン酸バリウムを主成分に酸化物(例えば、Mn、Cr、Si、Ca、Ba、Mg、V、W、Ta、Nbおよび1種類以上の希土類元素の酸化物)を副成分に含むセラミック粉末、チタン酸バリウム(BaTiO)のBa原子又はTi原子がSn、Pb、Zr原子のいずれかで置換されたペロブスカイト型酸化物強誘電体のセラミック粉末、ZnO、フェライト、PZT、BaO、Al、Bi、R(希土類元素)、TiO、Nd、2MgO・SiO、ZrO、ZrO・SiO、3Al・2SiO、MgO・SiO、2MgO・2Al・5SiOの酸化物の粉末、Ni−Cu−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Cu−Znフェライトのフェライト磁性粉末、YBaCu、BiSrCaCu10の超電導セラミック粉末、酸化チタンナノチューブ、AlN、Si、SiC)
[6] [1]〜[5]のいずれか一つに記載の組成物を含む電子材料。
[7] [1]〜[5]のいずれか一つに記載の組成物を含む印刷材料。
[8] [4]に記載の組成物を含む導電性電子材料。
[9] [5]に記載の組成物を含む誘電性電子材料。
【発明の効果】
【0011】
本発明の組成物は、炭素粉末又はセラミック粉末自体の特性を損なうことなく、炭素粉末又はセラミック粉末が分散媒体に安定して分散し、長期保存しても分離又は凝集しない効果を奏する。
また、本発明の組成物は、分散剤が金属塩を含むことが好ましくない電子材料分野への用途にも十分に使用できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の組成物は、特定の一般式(1)(又は(2))で示される化合物と、炭素粉末又はセラミック粉末を含有する組成物である。
【0013】
[一般式(1)に示す化合物]
下記一般式(1)で示される化合物について説明する。
【0014】
【化3】

【0015】
一般式(1)において、Rは炭素数1〜23の炭化水素基である。好ましくは、炭素数が7から17の炭化水素基である。
一般式(1)において、Rは又は、カルボン酸基或いはスルホン酸基を有してもよい炭素数1〜3の炭化水素基である。
炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシ(イソ)プロピル基、ジヒドロキシ(イソ)プロピル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基及びスルホエチル基等を挙げることができる。
は、好ましくは、水素である。
【0016】
一般式(1)において、Yは、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、又はそれらの塩である。好ましくは、カルボキシル基又はその塩である。
【0017】
Yは、種々の塩基性物質との間に塩を形成し得る。塩を形成しうる金属の具体例を以下に挙げる。
【0018】
アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム及びリチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム及びマグネシウム等が挙げられる。上記した以外の金属としては、アルミニウム、亜鉛、鉄、コバルト、チタン及びジルコニウム、銀等の塩が挙げられる。
また、上記した金属を含む塩基性物質としては、特に限定されないが、以下のものが挙げられる。
【0019】
有機アミン塩としては、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びトリイソプロパノールアミン等の塩が挙げられる。
【0020】
塩基性アミノ酸塩としては、アルギニン及びリジンの塩が挙げられる。
その他にも、アンモニウム塩や多価金属塩等が挙げられる。
また、一般式(1)において、Yは、上記の塩から任意に選ばれる1種又は2種以上の塩を含んでいてもよい。
【0021】
一般式(1)において、Zは、−NR’−(R’は水素又は炭素数1〜10の炭化水素基)、−O−、又は−S−である。
【0022】
一般式(1)において、j、kは0、1、2のいずれかであり、且つj、kは同時に0ではなく、nは2〜20の整数を示す。
【0023】
次に一般式(1)中のXについて説明する。
Xは、置換基を有していてもよい分子量100万以下の炭化水素鎖である。Xは、直鎖でも分枝鎖でも環状鎖でも芳香族炭化水素鎖でもよい。また、Xは、置換基を有していてもよく、特にカルボキシル基を有していることが好ましい。Xの炭素数は、好ましくは1〜40であり、分子量は28〜2000が好ましい。
【0024】
また、Xがカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基及びリン酸エステル基等を含む場合は、種々の塩基性物質との間に塩を形成してもよい。塩を形成しうる金属及びその金属を含む塩基性物質としては、上記したものが挙げられる。また、一般式(1)中の括弧内の部分はn個あり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
一般式(1)で示される化合物は、親水基であるYを2つ以上有し、疎水基であるアシル基RCOを2つ以上有する、ジェミニ型の界面活性剤の化合物である。
【0025】
下記一般式(2)で示される化合物は、一般式(1)で示される化合物における、n=2の場合の一例である。その化合物を用いた組成物は、優れた分散性及び分散安定性が見られるため特に好ましい。
【0026】
【化4】

【0027】
上記一般式(2)において、X’は、カルボキシル基又はその塩、−NHR’基(R’は、水素又は炭素数1〜10の炭化水素基)、−OH基、−SH基のうち少なくともいずれか一つを有する炭素数が1〜20の炭化水素鎖を示す。また、R、R、Y、Z、j、kは一般式(1)と同様である。
なお、水を含まない非水系の本発明の組成物に、上記一般式(1)又は(2)で表される化合物を用いる場合は、上記一般式(1)又は(2)において、Yがカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基である化合物を用いる方が、溶解性の観点から、好ましい。例えば、非水系の本発明の組成物では、後述の製法において、反応後に中和しないで得られる未中和体を用いることが好ましい。
また、電子材料用途に、本発明の組成物を用いる場合は、前記一般式(1)又は(2)の化合物において、未中和体又は、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩、アンモニウム塩など金属を含まない塩の状態であることが好ましい。つまり、前記一般式(1)又は(2)の化合物において、Yはカルボキシル基又は、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩、アンモニウム塩であることがより好ましい。また、X又はX’がカルボキシル基又はその塩を有する場合は、その形態としては、カルボキシル基、又は、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩、アンモニウム塩であることがより好ましい。例えば、このような化合物としては市販品として「ペリセア(登録商標)L−30」(株式会社旭化成ケミカルズ社製)が挙げられる。
【0028】
[一般式(1)に示す化合物製法]
前記一般式(1)で示される化合物の製造方法としては、下記一般式(3)で示されるN−アシル酸性アミノ酸無水物と、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基から選ばれる官能基をm個(mはn以上)有する分子量100万以下の化合物(以下、m価の化合物とする)とを反応させて、前記一般式(1)で示される化合物を得る方法が挙げられる。
【化5】

【0029】
一般式(3)で示されるN−アシル酸性アミノ酸無水物とは、酸性アミノ酸がN−アシル化された無水物である。N−アシル酸性アミノ酸無水物は、光学異性体であるD−体、L−体、ラセミ体のいずれであってもよい。
特に、L−体であるL−酸性アミノ酸が、生分解性に優れることから好ましい。
【0030】
酸性アミノ酸は、分子中に存在するカルボキシル基の数がアミノ基より多いものである。例えば、カルボキシル基とアミノ基の数がそれぞれ2個と1個であるモノアミノジカルボン酸などが挙げられる。
アミノ基の水素は、炭素数1〜3の炭化水素基で置換されていてもよい。
酸性アミノ酸の具体例としては、グルタミン酸、アスパラギン酸が挙げられる。
【0031】
m価の化合物は、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基から選ばれる官能基をm個(m≧n、かつ、2〜20の整数)有する分子量100万以下の化合物である。ここで、m価の化合物は、m個の官能基に由来する結合を作り得る。つまり、ヒドロキシル基は、エステル結合を作り、アミノ基は酸アミド結合を作り、チオール基はチオエステル結合を作ることができる。また、この化合物は上記した官能基以外の置換基を有していてもよい。
【0032】
このようなm価の化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。分子内にヒドロキシル基を2個以上有する化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0033】
2価のヒドロキシル化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、イソプレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ソルバイト、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ダイマージオール、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、酒石酸、ジヒドロキシ酒石酸、メバロン酸、3,4−ジヒドロキシケイ皮酸、3,4−ジヒドロキシヒドロけい皮酸、ヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシフェニルアラニン等が挙げられる。
【0034】
3価のヒドロキシル化合物としては、グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びトリヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0035】
4価のヒドロキシル化合物としては、ペンタエリスリトール、エリスリトール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、ジグリセリン及びソルビタン等が挙げられる。
【0036】
5価のヒドロキシル化合物としては、アドニトール、アラビトール、キシリトール及びトリグリセリン等が挙げられる。
【0037】
6価のヒドロキシル化合物としては、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース及びアロース等が挙げられる。
【0038】
または、上記した2〜6価のヒドロキシル化合物の脱水縮合物やポリグリセリン等が挙げられる。
【0039】
また、m価のポリヒドロキシル化合物として、糖類も挙げられる。以下にその具体例を挙げる。
【0040】
テトロースとしては、エリスロース、スレオース及びエリスルロース等が挙げられる。
ペントースとしては、リボース、アラビノース、キシロース、リクソース、キシルロース及びリブロース等が挙げられる。
単糖類としては、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギューロース、イドース、ガラクトース、タロース、フラクトース、ソルボース、プシコース及びタガトース等のヘキソース等が挙げられる。
オリゴ糖類としては、マルトース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラクトース、ツラノース、トレハロース、サッカロース、マンニトリオース、セロトリオース、ゲンチアノース、ラフィノース、メレチトース、セロテトロース及びスタキオース等が挙げられる。
【0041】
その他の糖類としては、ヘプトース、デオキシ糖、アミノ糖、チオ糖、セレノ糖、アルドン糖、ウロン酸、糖酸、ケトアルドン酸、アンヒドロ糖、不飽和糖、糖エステル、糖エーテル及びグリコシド等の残基でもよく、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン及びキトサン等の多糖類又は上記した糖類を加水分解したものでもよい。
【0042】
分子内にアミノ基を2個以上有する化合物の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0043】
脂肪族ジアミン類としては、N,N’−ジメチルヒドラジン、エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、ジアミノドデカン、ジアミノアジピン酸、ジアミノプロパン酸、ジアミノブタン酸等が挙げられる。
【0044】
脂肪族トリアミン類としては、ジエチレントリアミン、トリアミノヘキサン、トリアミノドデカン、1,8−ジアミノ−4−アミノメチル−オクタン、2,6−ジアミノカプリン酸−2−アミノエチルエステル、1,3,6−トリアミノヘキサン、1,6,11−トリアミノウンデカン、ジ(アミノエチル)アミン等が挙げられる。
【0045】
脂環族ポリアミン類としては、ジアミノシクロブタン、ジアミノシクロヘキサン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン及びトリアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
【0046】
芳香族ポリアミン類としては、ジアミノベンゼン、ジアミノトルエン、ジアミノ安息香酸、ジアミノアントラキノン、ジアミノベンゼンスルホン酸、ジアミノ安息香酸等が挙げられる。
【0047】
芳香脂肪族ポリアミン類としては、ジアミノキシレン、ジ(アミノメチル)ベンゼン、ジ(アミノメチル)ピリジン、ジ(アミノメチル)ナフタレン等が挙げられる。また、ジアミノヒドロキシプロパンのように、上記したアミン類誘導体にヒドロキシル基が置換したポリアミン類等が挙げられる。
【0048】
また、アミノ酸類としては、セリン、トレオニン、システイン、シスチン、シスチンジスルホキシド、シスタチオニン、メチオニン、アルギニン、リジン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン及びオキシプロリン等が挙げられる。これらのアミノ酸は、タンパク質やペプチド等、又はそれらを加水分解したもの等でもよい。
【0049】
分子内にチオール基を2個以上有する化合物の具体例としては、ジチオエチレングリコール、ジチオエリトリトール及びジチオトレイトール等のジチオール化合物類等を挙げることができる。ここで、m価の化合物は、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基から選ばれる官能基を2種以上有していてもよい。その例を以下で挙げる。
【0050】
分子内にアミノ基とヒドロキシル基を有する化合物としては、アミノエタノール、アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、アミノヘキサノール、アミノプロパンジオール、アミノエチルエタノールアミン、アミノエチルアミノエタノール、アミノクレゾール、アミノナフトール、アミノナフトールスルホン酸、アミノヒドロキシ安息香酸、アミノヒドロキシブタン酸、アミノフェノール、アミノフェネチルアルコール及びグルコサミン等が挙げられる。
分子内にチオール基とヒドロキシル基を有する化合物としては、メルカプトエタノール、メルカプトフェノール、メルカプトプロパンジオール及びグルコチオース等が挙げられる。
分子内にチオール基とアミノ基を有する化合物としては、アミノチオフェノール及びアミノトリアゾールチオール等が挙げられる。
【0051】
m価の化合物は、光学異性体であるD−体、L−体、ラセミ体のいずれであってもよく、各異性体であってもよい。
また、m価の化合物の中でも、炭素数1〜40のものが好ましい、さらに好ましくは炭素数1〜20のものである。
また、天然に存在する化合物の方が、生分解性に優れているため、m価の化合物としては、アミノ酸類、ペプチド類、糖類等が好ましい。
N−アシル酸性アミノ酸無水物とm価の化合物とを反応させる際、溶媒を使用してもよい。反応の際に使用する溶媒としては、水、水と有機溶媒との混合溶媒、又はテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、四塩化炭素、クロロホルム及びアセトン等の不活性溶媒が挙げられる。反応温度としては、−5℃〜200℃、かつ上記化合物の融点以上の温度で混合し、反応させることが好ましい。
【0052】
一般式(1)で示される化合物の別の製造方法としては、N−アシル酸性アミノ酸無水物ではなくN−アシル酸性アミノ酸モノ低級エステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル)と、上記したm価の化合物とを反応させて、前記一般式(1)で示される化合物を得る方法が挙げられる。
【0053】
例えば、N−アシル酸性アミノ酸モノ低級エステルとm価の化合物とを、ジメチルホルムアミド等の適当な溶媒中に溶解し、炭酸カリウム等の触媒を加え、減圧下において−5℃〜250℃で加熱反応させた後、反応溶媒を除去することによって、前記一般式(1)で示される化合物が得られる。また、溶媒を用いずに無溶媒で加熱溶融し、水酸化ナトリウム等の触媒を加えて室温〜250℃でエステル交換反応させることによっても前記一般式(1)で示される化合物を得ることができる。
【0054】
[炭素粉末、セラミック粉末]
本発明において用いられる炭素粉末又はセラミック粉末は、いずれも、製造方法や表面修飾などによって、特に限定されない。また、ボールミル、振動ミル、サンドミル、ロールミルなどのボール型混練装置等を用いて粉砕しているものや、化学的、物理的処理によって短く切断されているものも用いることができる。
本発明において用いられる炭素粉末又はセラミック粉末は、具体的には、以下の通りである。
炭素粉末としては、カーボンナノチューブ(単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ)、カーボンナノコイル、カーボンナノファイバー、フラーレン、等方性黒鉛、異方性黒鉛、グラファイト(人造黒鉛、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ)、ハードカーボン、等が挙げられる。
セラミック粉末としては、以下のものが挙げられる。セラミック粉末は、以下の1種又は2種以上からなる。
酸化チタン、種々のチタン酸塩磁器の粉末(例えば、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムカルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛)、ジルコン酸塩磁器の粉末(例えばジルコン酸バリウム等の誘電体磁器原料粉末)等や、チタン酸バリウムを主成分に含み、酸化物(例えば、Mn、Cr、Si、Ca、Ba、Mg、V、W、Ta、Nbおよび1種類以上の希土類元素の酸化物)を副成分に含むセラミック粉末等や、チタン酸バリウム(BaTiO)のBa原子やTi原子を他原子(例えば、Sn、Pb、Zrなど)で置換したようなペロブスカイト型酸化物強誘電体のセラミック粉末等や、その他のセラミック粉末としては、ZnO、フェライト、PZT、BaO、Al、Bi、R(希土類元素)、TiO、Nd、2MgO・SiO、ZrO、ZrO・SiO、3Al・2SiO、MgO・SiO、2MgO・2Al・5SiOなどの酸化物の粉末や、Ni−Cu−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Cu−Znフェライト等のフェライト磁性粉末、YBaCu、BiSrCaCu10などの超電導セラミック粉末、酸化チタンナノチューブ、AlN、Si、SiC、Y、TiC・TiN、スピネル、シリカ、MgO、CaO、シリマナイト、アパタイト等のリン酸カルシウム系セラミックス、チタン酸アルミニウム、炭化ホウ素、べリリア、CaO・SiO、窒化ホウ素、LaB、LiO・Al・4SiO、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ケイ化モリブデン、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛、サイアロン、ホウ化チタン、炭化チタン、窒化チタン、炭化タングステン、ホウ化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、等が挙げられる。
【0055】
<カーボンナノチューブ>
カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブであれば、特に限定されるものではなく、カーボンナノチューブとしては、例えば、単層カーボンナノチューブ、何層かが同心円状に重なった多層カーボンナノチューブ、これらがコイル状になったものを用いることができる。
また、カーボンナノチューブの片側が閉じた形をしたカーボンナノホーンやその頭部に穴があいたコップ型のナノカーボン物質なども用いることができる。
カーボンナノチューブ粉末を含有する組成物である場合、前記一般式(1)又は(2)で示す金属塩を含まない化合物を分散剤として含むことで、本発明の組成物は、分散剤が金属塩を含むことが好ましくない電子材料分野への用途としても、十分に使用できるという利点がある。
【0056】
<チタン酸バリウム>
チタン酸バリウムの粉末を含有する組成物である場合、前記一般式(1)又は(2)で示す化合物を分散剤として含むコーティング液とすることで、コーティング液中においてチタン酸バリウム粒子を媒体中に安定的に分散させることができる。
また、該コーティング液は、流動性が高く、かつ、前記一般式(1)又は(2)で示す化合物は、極性有機溶媒中で使用できるものである。
以上から、積層セラミックコンデンサーの誘電体層を形成するためのコーティング液として、本発明の組成物は非常に有効である。
【0057】
[本発明の組成物]
本発明において、前記一般式(1)又は(2)で示す化合物と、炭素粉末又はセラミック粉末との質量比は、粉体に対し前記一般式(1)又は(2)が0.01%〜500%であることが好ましい。
また、前記一般式(1)又は(2)で示す化合物は、炭素粉末又はセラミック粉末と別々に利用してもよいし、炭素粉末又はセラミック粉末表面に直接処理したり、他の化合物を用いて表面に化学結合することで利用してもよい。この利用方法は他の粉末(顔料、金属、樹脂など、粉末であれば特に限定されない。)にも利用できる。
本発明の組成物は、塗料、電子材料、塗工紙、樹脂材料、工業用研磨剤等への用途に最適である。特に、電子材料への用途が好ましい。
電子材料への用途としては、特に、本発明の組成物を押し出しなどの方法で成形した後に焼成して得られる積層コンデンサー等の誘電材料、電子回路用多層配線基盤の絶縁材料、各種電池の電極、導電ペースト、導電フィルムなどの導電材料、センサや圧電素子などの圧電材料、変圧器の芯や電子部品のコイルなどの磁性材料、半導体のパッケージなどの熱伝導性材料等の用途に好適である。
樹脂材料の用途としては、本発明の組成物をねりこむことで搬送用トレーや自動車の燃料チューブ等の樹脂の帯電防止や補強用途に好適である。
本発明の組成物は、炭素粉末又はセラミック粉末の持つ導電性などの特性を損なうことなく安定して分散し、長期保管においても分離又は凝集しない。
また、前記一般式(1)又は(2)で示す化合物が少量でも本組成物を作製できることから、電材用途などに用いる際の焼成温度を低くすることが可能である。
さらに分散性が良好であるため、平滑に薄くコーティングすることも可能である。
【0058】
また、本発明の組成物には、必要に応じて各種物質を添加して用いることができる。
例えば、分散媒体、導電性ポリマー、高分子化合物、塩基性化合物、界面活性剤、シランカップリング剤、オルガノポリシロキサン、コロイダルシリカ、可塑剤、分散剤、塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保存安定剤、接着助剤、増粘剤、導電性物質、バインダ樹脂、可塑剤、高分子分散剤、消泡剤、助剤、レべリング剤、液体塗膜形成要素、固体塗膜形成要素、乾燥剤、硬化剤、乳化剤、増粘剤、皮張防止剤、殺虫殺菌剤、顔料、副成分粉末等を配合することができる。
本発明において、添加成分は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
分散媒体としては、一般式(1)で示される化合物、炭素粉末又はセラミック粉末、各種添加物質を溶解又は分散するものであれば特に限定されない。
具体的には、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、ブチルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレン付加重合体;ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラハイドロフラン、ジオキサン、メチルセロソルブ等のエーテル類;エトキシエタノール、メトキシエトキシエタノール等のエーテルアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;トリエチルアミン、トリメタノールアミン等のアミン類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;ジメチルスルオキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類等;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル系溶剤;1,2,6−ヘキサントリオール等のアルキレングリコール;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテルアセテート類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル等の酢酸エステル類;乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸プロピルエステル等の乳酸エステル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類;アニリン、N−メチルアニリン等のアニリン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メチレンクロリド、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素含有炭化水素類;m−クレゾール、アセトニトリル、シクロヘキサン、グリセリン、2−ピロリドン、ターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート、イソボニルアセテート、イソボニルプロピネート、イソボニルブチレート、イソボニルイソブチレート、が挙げられる。
【0060】
高分子化合物としては、本発明に用いる溶媒に溶解又は分散(エマルション形成)可能であれば特に限定されるものではない。
具体的にはポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルコール類;ポリアクリルアマイド、ポリ(N−t−ブチルアクリルアマイド)、ポリアクリルアマイドメチルプロパンスルホン酸などのポリアクリルアマイド類;ポリビニルピロリドン類、ポリスチレンスルホン酸及びそのソーダ塩類、セルロース、アルキド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、マレイン酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、スチレン樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合樹脂、フッ素樹脂、セルロース、ポリアクリロニトリル、ピッチ及びこれらの共重合体などが用いられる。また、これらの高分子化合物は2種以上を任意の割合で混合したものであってもよい。
最終的にカーボンナノチューブ含有炭素材料を得る場合は、セルロース、ポリアクリロニトリル、ピッチ及びこれらの共重合体が、焼成のし易さの点で好ましい。
【0061】
塩基性化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、アンモニア、脂式アミン類、環式飽和アミン類、環式不飽和アミン類やアンモニウム塩類、無機塩基などが好ましく用いられる。
環式飽和アミン類としては、ピペリジン、ピロリジン、モリホリン、ピペラジン及びこれらの骨格を有する誘導体及びこれらのアンモニウムヒドロキシド化合物などが好ましく用いられる。
環式不飽和アミン類としては、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピロリン及びこれらの骨格を有する誘導体及びこれらのアンモニウムヒドロキシド化合物などが好ましく用いられる。
無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの水酸化物塩が好ましく用いられる。
【0062】
界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、α−スルホン化脂肪酸、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸、アルキル硫酸、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの塩などのアニオン系界面活性剤;第一〜第三脂肪族アミン、四級アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウムアルキルピリジニウム、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム、N,N−ジアルキルモルホリニウム、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物の第四級アンモニウムおよびこれらの塩などのカチオン系界面活性剤;N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビスポリオキシエチレンアンモニウム硫酸エステルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのベタイン類;N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩などのアミノカルボン酸類などの両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイドなどの非イオン系界面活性剤;及びフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素系界面活性剤が用いられる。ここで、アルキル基は炭素数1〜24が好ましく、炭素数3〜18がより好ましい。
【0063】
シランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン及びテトラメトキシシラン等のアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
エポキシ基を持つものとしては、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
アミノ基を持つものとしては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロポキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
チオール基を持つものとしては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β−メルカプトエチルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
水酸基を持つものとしてはβ−ヒドロキシエトキシエチルトリエトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
エポキシシクロヘキシル基を持つものとしては、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0064】
オルガノポリシロキサンとしては、ポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0065】
コロイダルシリカとしては、特に限定されないが、水、有機溶剤、又は水と有機溶剤との混合溶媒に分散されているものが好ましく用いられる。
有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類等が好ましく用いられる。
また、コロイダルシリカとしては、硬度が不足し、またコロイダルシリカ自体の溶液安定性も低下するという問題を回避する観点から、粒子径が1nm〜300nmのものが用いられ、好ましくは1nm〜150nm、更に好ましくは1nm〜50nmの範囲のものが用いられる。
【0066】
導電性物質としては、特に限定されないが、炭素繊維、導電性カーボンブラック、黒鉛等の炭素系物質、酸化錫、酸化亜鉛等の金属酸化物、銀、ニッケル、銅等の金属が挙げられる
【0067】
バインダ樹脂としては、特に限定されないが、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール等のビニル系の非硬化型樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ロジンエステル、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース及びその誘導体等の各種セルロース誘導体が挙げられる。
【0068】
可塑剤としては、特に限定されないが、フタル酸ベンジルブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸エステルや、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステルや、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル等のセバシン酸エステル、リン酸トリクレジル、n−ヒドロキシメチルフタルイミド等が挙げられる。
【0069】
高分子分散剤としては、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリカルボン酸及びその塩等が挙げられる。
副成分粉末としては、Mg、Ba、Ca、Si、Mn、Al、V、Dy、Y、Ho、Ybのいずれか1種の元素を含む酸化物、炭酸塩等の化合物の粉末が挙げられる。このような化合物の粉末は、1種が用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0070】
[本発明の組成物の製造方法]
これらの構成成分を混合する際、混合できれば特に限定されないが、超音波、ホモミキサー、ホモジナイザー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーサー、ハイブリットミキサー、ボールミル、サンドグラインダー、ローラーミル、高速回転ミル、分級機内蔵型高速回転ミル、ボールミル、媒体攪拌式ミル、気流式粉砕機、圧密せん断ミル、コロイドミル、ロールミル、ビーズミル、サンドミル、メディアミル、ペイントコンディショナー、アトライター、パールミル、コボールミル、バスケットミル、湿式ジェットミル、メディア型分散機(メディアとしてはガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、ステンレスビーズ)等の撹拌、混練、分散装置が用いられる。
【実施例】
【0071】
以下、本実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0072】
一般式(1)で示される化合物を以下に記載の方法により製造した。
【0073】
[製造例1]
L−リジン塩酸塩9.1g(0.05mol)を水57gと混合した。この液を25%水酸化ナトリウム水溶液でpH範囲を10〜11に調整し、反応温度を5℃に維持しながら、攪拌した。攪拌下において、N−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物を31.1g(0.1mol)2時間かけて添加し、反応を実施した。その後、さらに30分攪拌を続け、ターシャリーブタノールを液中濃度20質量%となるように添加した後、75%硫酸を滴下して液のpH値を2に調整し、また液の温度を65℃に調整した。硫酸滴下終了後、攪拌を停止し、20分間65℃で静置して有機層と水層とに分層し、そこから有機層を分離した。分離した有機層にターシャリーブタノール及び水を添加して、温度を65℃にして20分攪拌した。攪拌停止後、静置すると有機層と水層とに分層した。得られた有機層に対して、前記した同じ水洗操作をくり返した後、得られた有機層から溶媒を除去し、水酸化ナトリウムで固形分30質量%、pH6.5(25℃)の水溶液に中和調製した後、これを乾燥して下記式(4)に示す化合物を得た。
【0074】
N−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物とL−リジン塩酸塩との反応において、結合の仕方によって、下記式(4)で示すとおり4種類の化合物が製造されることになる。
【化6】

【0075】
(式4において、Rは炭素数11の炭化水素基、Mは、各々独立にH、Naのいずれかである)
【0076】
[製造例2]
製造例1において、N−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物31.1gをN−ココイル−L−グルタミン酸無水物31.1gとした以外は、製造例1の方法と同じ条件で実施した。
【0077】
[製造例3]
製造例1において、中和処理をアンモニア水溶液で実施した以外は、製造例1の方法と同じ条件で実施した。
【0078】
[製造例4]
製造例1において、中和処理を実施しなかった以外は、製造例1の方法と同じ条件で実施し、未中和体を得た。
【0079】
[評価試験方法]
(溶液状態)
組成物の調製後、24時間経過した溶液状態を目視により観察した。
○:均一に分散あるいは溶解。
×:不均一に分散。
(分散粒度)
動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)を用いて平均粒子径(D50の値)を測定した。希釈溶媒には水或いはメチルエチルケトン(以下、MEKと称する。)を使用した。また、貯蔵安定性は、分散液を40℃で10日間保存した後、分散粒度を測定し、評価した。
(流動性)
組成物が液状かゲル状(プリン状)のものであるか否かで判断した。
○:液状のもの
×:ゲル状のもの
(分散性の評価方法)
25℃、せん断速度10sec-1の条件にて、粘度測定を行った(ブルックフィールド社製DV−IIを使用)。粘度が低い方ものが、粘度の高いものと比較して、分散性が良好である。
(帯電防止性)
離型フィルムとともに、セラミックスシートを4cm×10cmの寸法の試験片に裁断し、塗工面と反対側(フィルム側)を下にして、90度剥離試験用治具を装着した卓上型精密試験機(島津製作所社製オートグラフAGS−X)の台座に両面テープを用いて固定した。次に、セラミックスシートの片端を離型フィルムから少し剥離した後、1cm/秒の速度にて90度剥離し、セラミックスシートの剥離面側の帯電量の最大値を3cm離れたところに設置した静電気センサー(キーエンス社製SK−200)にて測定した。この剥離帯電量が小さいほど、帯電防止性が良好である。
【0080】
[実施例1]
上記製造例1の化合物0.1質量部、カーボンナノチューブ0.1質量部、N,N−ジメチルアセトアミド99.8質量部を室温にて混合し、カーボンナノチューブ分散剤組成物1を調製した。結果を表1に示す。
【0081】
[実施例2]
上記製造例3の化合物0.1質量部、カーボンナノチューブ0.1質量部、N−メチルピロリドン99.8質量部を室温にて混合し、カーボンナノチューブ分散剤組成物2を調製した。結果を表1に示す。
【0082】
[実施例3]
上記製造例4の化合物0.1質量部、カーボンナノチューブ0.1質量部、N−メチルピロリドン99.8質量部を室温にて混合し、カーボンナノチューブ分散剤組成物3を調製した。結果を表1に示す。
【0083】
[比較例1]
カーボンナノチューブ0.1質量部、N−メチルピロリドン99.8質量部を室温にて混合し、カーボンナノチューブ分散剤組成物4を調製した。結果を表1に示す。
【表1】

【0084】
[実施例4]
カーボンナノチューブ(直径10nm、長さ10μm)1.0g、上記製造例3の化合物1g、MEK27.9gを70ccのガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェイカーを用いて1時間分散を行い、カーボンナノチューブ分散剤組成物5を得た。この分散液をMEKで希釈し、分散粒度を測定した。結果を表2に示す。
【0085】
[実施例5]
カーボンナノチューブ(直径10nm、長さ10μm)1.0g、上記製造例4の化合物0.1g、トルエン27.85gを70ccのガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェイカーを用いて1時間分散を行い、本発明のカーボンナノチューブ分散液を得た。この分散液をMEKで希釈し、分散粒度を測定した。結果を表2に示す。
【0086】
[比較例2]
カーボンナノチューブ(直径10nm、長さ10μm)1.0g、MEK29.0gを70ccのガラス瓶に仕込み、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントシェイカーを用いて1時間分散を行い、カーボンナノチューブ分散液を得た。この分散液をMEKで希釈し、分散粒度を測定した。結果を表2に示す。
【表2】

【0087】
[実施例6]
(カーボンナノチューブ集合体分散液調製)
50mLの容器にカーボンナノチューブ10mg、製造例3の化合物の水溶液(30重量%)100mgを量りとり、蒸留水9.93mLを加えて、超音波ホモジナイザー出力25W、20分間で氷冷下分散処理し、カーボンナノチューブ集合体液を調製した。調製した液には凝集体は目視では確認できず、カーボンナノチューブ集合体はよく分散していた。
【0088】
(カーボンナノチューブ集合体を含む透明導電性フィルム)
上記で得たカーボンナノチューブ集合体分散液300μLにメタノール/水(重量比1/1)をぬれ剤として300μL添加後、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製(ルミラー(登録商標) U36)、光透過率90.7%、15cm×10cm)上にバーコーター(No.8、塗布厚み12μm)を用いて塗布し、風乾した後、蒸留水にてリンスし、60℃乾燥機内で2分間乾燥させカーボンナノチューブ集合体を固定化した。得られた塗布フィルムの表面抵抗値は1.2×10Ω/□、光透過率は85%(透明導電性フィルム85%/PETフィルム90.7%=0.94)であり、高い導電性および透明性を示した。
【0089】
[実施例7]
平均一次粒子径20nmのチタン酸バリウムの40質量部、製造例2の化合物の6質量部、酢酸プロピルの54質量部をペイントシェイカーでΦ(直径)0.3mmのジルコニアビーズにて練肉し、チタン酸バリウム分散組成物1を得た。結果を表3に示す。
【0090】
[実施例8]
平均一次粒子径20nmのチタン酸バリウムの40質量部、製造例3の化合物の0.1質量部、酢酸プロピルの59.9質量部をペイントシェイカーでΦ(直径)0.3mmのジルコニアビーズにて練肉し、チタン酸バリウム分散組成物2を得た。結果を表3に示す。
【0091】
[実施例9]
平均一次粒子径20nmのチタン酸バリウムの40質量部、製造例4の化合物の1質量部、酢酸プロピルの59質量部をペイントシェイカーでΦ(直径)0.3mmのジルコニアビーズにて練肉し、チタン酸バリウム分散組成物3を得た。結果を表3に示す。
【0092】
[実施例10]
ヘンシェルミキサーに平均一次粒子径20nmのチタン酸バリウムの40質量部を入れ、続いて製造例4の化合物の1質量部をエタノール50部に溶解したものを滴下混合し、よく混合した。その後、ヘンシェルミキサー内を加熱および減圧し、エタノールを除去した。ヘンシェルミキサーから取り出し、粉砕して製造例4の化合物が1質量部処理されたチタン酸バリウムを得た。
その表面処理チタン酸バリウムに酢酸プロピルの59質量部を添加し、ペイントシェイカーでΦ(直径)0.3mmのジルコニアビーズにて練肉し、チタン酸バリウム分散組成物4を得た。結果を表3に示す。
【0093】
[比較例3]
平均一次粒子径20nmのチタン酸バリウムの40質量部、ポリカルボン酸系分散剤(G700、共栄社化学(株)製)の6質量部、酢酸プロピルの54質量部をペイントシェイカーでΦ(直径)0.3mmのジルコニアビーズにて練肉し、チタン酸バリウム分散組成物4を得た。結果を表3に示す。
【表3】

【0094】
[実施例11]
チタン酸バリウム(BET比表面積より計算した平均粒径50nm)20g、製造例4の化合物0.4gを直径1mmのジルコニアビーズ50gと一緒に100mLの容器に入れ、トルエン/エタノール=48/52(容積比)の混合溶媒を加え、チタン酸バリウムの固形分濃度が50%になるように調整し、卓上型ボールミルにて、96時間、分散処理を行った。次いで、ブチラール樹脂1.6g、可塑剤としてジオクチルフタレート0.32g、1−エチル−3−ヒドロキシメチルピリジニウム・エチルサルファート0.16g、トルエン/エタノール=48/52(容積比)の混合溶媒を加えて、チタン酸バリウムの固形分濃度が35%になるように調整し、卓上型ボールミルにて、2時間混合し、チタン酸バリウム分散組成物5を得た。これを使用してセラミックスシートを成形し、評価した。結果を表4に示す。
【0095】
[比較例4]
製造例4の化合物の化合物を使用しない以外は実施例10と同様の方法でチタン酸バリウム分散組成物6を得た。セラミックシートは粘度が高く形成できなかった。結果を表4に示す。
【表4】

【0096】
[実施例12]
20重量%のカーボンナノチューブと製造例1の化合物を含有するポリスチレンベースのカーボンナノチューブマスターバッチ(ハイペリオンキャタリシスインターナショナルインク社製:PS/20 BN)2kgと、18kgのポリスチレンとを混合かつペレット化して樹脂組成物(カーボンナノチューブ含量:2重量%)を得た。この樹脂組成物を、バッテンフェルト射出成形機PLUS250(東芝機械(株))に仕込み、310℃で加熱し、1.3cc/秒の射出充填速度で、60℃の金型内に射出することにより、80mm×50mm×3mmの試験板を得た。
得られた試験板について、表面抵抗測定器(三菱化学(株)製Hiresta−UPおよびLoresta−GP)を用いて、表面抵抗値を測定した。得られた試験板の表面抵抗値は、10〜10Ω/cmであった。
【0097】
[比較例5]
20重量%のカーボンナノチューブを含有するポリスチレンベースのカーボンナノチューブマスターバッチ(ハイペリオンキャタリシスインターナショナルインク社製:PS/20 BN)2kgと、18kgのポリスチレンとを混合かつペレット化して樹脂組成物(カーボンナノチューブ含量:2重量%)を得た。この樹脂組成物を、バッテンフェルト射出成形機PLUS250(東芝機械(株))に仕込み、310℃で加熱し、1.3cc/秒の射出充填速度で、60℃の金型内に射出することにより、80mm×50mm×3mmの試験板を得た。
得られた試験板について、表面抵抗測定器(三菱化学(株)製Hiresta−UPおよびLoresta−GP)を用いて、表面抵抗値を測定した。得られた試験板の表面抵抗値は、10〜10Ω/cmであった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
炭素粉末又はセラミック粉末自体の特性を損なうことなく、炭素粉末又はセラミック粉末が分散媒体に分散化あるいは可溶化することが可能であり、長期保存においても分離、凝集しない組成物が提供できる。また、分散剤が金属塩を含むことが好ましくない電子材料分野への用途としても、十分に使用できる組成物が提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される化合物と、炭素粉末またはセラミック粉末とを含有する組成物。
【化1】


(上記一般式(1)において、Rは、炭素数1〜23の炭化水素基を示し、Rは、水素又は、カルボン酸基或いはスルホン酸基を有してもよい炭素数1〜3の炭化水素基を示す。Yは、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、又はそれらの塩を示す。Zは、−NR’−(R’は、水素又は炭素数1〜10の炭化水素基)、−O−、又は−S−を示す。j、kは0、1、2のいずれかであり、且つj、kは同時に0ではなく、nは2〜20の整数を示す。Xは、置換基を有していてもよい分子量100万以下の炭化水素鎖を示す。)
【請求項2】
前記一般式(1)中のXの炭素数が、1〜40である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で示される化合物が、下記一般式(2)で示される化合物である請求項1又は2に記載の組成物。
【化2】


(上記一般式(2)において、Rは炭素数1〜23の炭化水素基を示し、Rは水素又は、カルボン酸基或いはスルホン酸基を有してもよい炭素数1〜3の炭化水素基を示す。Yは、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、又はそれらの塩を示す。Zは、−NR’−(R’は、水素又は炭素数1〜10の炭化水素基)、−O−、又は−S−を示す。X’は、カルボキシル基又はその塩、−NHR’基(R’は、水素又は炭素数1〜10の炭化水素基)、−OH基、−SH基のうち少なくともいずれか一つを有する炭素数が1〜20の炭化水素鎖を示す。j、kは0、1、2のいずれかであり、且つj、kは同時に0ではない。)
【請求項4】
炭素粉末を含み、該炭素粉末が、カーボンナノチューブ、カーボンナノコイル、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー、フラーレンからなる群から選択される1種以上からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
セラミック粉末を含み、該セラミック粉末が、下記の群から選択される1種以上からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
(酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムカルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸バリウム、チタン酸バリウムを主成分に酸化物(例えば、Mn、Cr、Si、Ca、Ba、Mg、V、W、Ta、Nbおよび1種類以上の希土類元素の酸化物)を副成分に含むセラミック粉末、チタン酸バリウム(BaTiO)のBa原子又はTi原子がSn、Pb、Zr原子のいずれかで置換されたペロブスカイト型酸化物強誘電体のセラミック粉末、ZnO、フェライト、PZT、BaO、Al、Bi、R(希土類元素)、TiO、Nd、2MgO・SiO、ZrO、ZrO・SiO、3Al・2SiO、MgO・SiO、2MgO・2Al・5SiOの酸化物の粉末、Ni−Cu−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Cu−Znフェライトのフェライト磁性粉末、YBaCu、BiSrCaCu10の超電導セラミック粉末、酸化チタンナノチューブ、AlN,Si、SiC)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物を含む電子材料。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物を含む印刷材料。
【請求項8】
請求項4に記載の組成物を含む導電性電子材料。
【請求項9】
請求項5記載の組成物を含む誘電性電子材料。

【公開番号】特開2012−148970(P2012−148970A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−53056(P2012−53056)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】