説明

分散剤

【課題】 無機顔料スラリー用、農薬粒剤用、セメント用などの分散剤を提供する。
【解決手段】 一般式(1)で表されるアニオン性ビニルモノマー(a)を必須構成モノマーとする重合体(A)からなる分散剤である。
【化5】


式中、Qはアニオン性基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基;Xは−COOM1/r、−COOR1、−CONR23または−CNで表される基、Mは水素原子またはr価のカチオン基、rは1または2、R1は炭素数1〜36の炭化水素基、R2およびR3は水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基;nは1〜200の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分散剤に関する。詳しくは(ポリ)オキシアルキレン鎖を有するアニオン性ビニルモノマーを必須構成モノマーとする、水性分散媒に微粒子を分散させるための分散剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無機顔料用、セメント用、農薬粒剤用、洗剤ビルダー用または掘削泥水用として有用な分散剤としては、ポリアクリル酸の塩、アクリル酸とその他の共重合性単量体(たとえばポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート)との共重合体の塩などが知られている(例えば特許文献−1〜3参照)。
【特許文献−1】特開昭59−193126号公報
【特許文献−2】特開平8−53522号公報
【特許文献−3】特開平9−100302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの分散剤は無機顔料用、掘削泥水用、またはセメント用の場合、得られたスラリーの粘度低下効果やスラリー粘度の経時安定性付与効果において未だ満足すべきものではなく、添加使用量が多いという問題点を有し、農薬粒剤用の場合、水中崩壊拡展性(分散性)が不十分であり、また洗剤ビルダー用としては泥汚れの分散除去性が不十分であるという問題点を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、一般式(1)で表されるアニオン性ビニルモノマー(a)を必須構成モノマーとする重合体(A)からなる分散剤;並びに、該分散剤、無機粒子および水性媒体からなる無機粒子の水性分散体;である。
【0005】
【化3】

【0006】
式中、Qはアニオン性基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基;Xは−COOM1/r、−COOR1、−CONR23または−CNで表される基、Mは水素原子またはr価のカチオン基、rは1または2、R1は炭素数1〜36の炭化水素基、R2およびR3は水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基;nは1〜200の整数を表す。
【発明の効果】
【0007】
本発明の分散剤は、無機顔料用、掘削泥水用またはセメント用の場合、得られたスラリーの粘度低下効果やスラリー粘度の経時安定性付与効果において従来より改善され、かつ、添加使用量が少ない。また、農薬粒剤用の場合、水中崩壊拡展性(分散性)が従来より優れており、また洗剤ビルダー用としては泥汚れの分散除去性が十分である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
まず、本発明における一般式(1)で表されるアニオン性ビニルモノマー(a)について説明する。
一般式(1)において、Qで表されるアニオン性基としては、一般式(2)〜(6)のいずれかで表される基が挙げられる。
【0009】
【化4】

【0010】
式中、R4は炭素数1〜36の炭化水素基、1分子中の2個のLのうちの一方は−SO31/rで、他方は水素原子、Mは水素原子またはr価のカチオン基、好ましくはカチオン基、rは1または2、好ましくは1、pは0または1〜5の整数、好ましくは0を表す。
4で表される炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐の、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、オクタデシルおよびエイコシル基など)、アルケニル基(ビニル、アリル、メタリル、オクテニルおよびドデセニル基など)、アリール基(フェニルおよびナフチル基など)、アラルキル基(ベンジルおよびフェニルエチル基など)およびアルキルアリール基(メチルフェニル、エチルフェニルおよびノニルフェニル基など)が挙げられる。R4のうち好ましいのは分散剤の低泡立ち性の観点から炭素数1〜8のアルキル基である。
Mで示されるr価のカチオン基としては、rが1のもの[ナトリウム、カリウムおよびリチウムなどのアルカリ金属、アンモニウム、1級アミン、2級アミン、3級アミン並びにテトラハイドロカルビル(1つのハイドロカルビル基の炭素数1〜18)アンモニウムなど]およびrが2のもの[カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属など]が挙げられる。Mのうち好ましいのは分散性の観点からアルカリ金属およびアンモニウムである。
【0011】
一般式(1)におけるAで表される炭素数2〜4のアルキレン基としては、エチレン、プロピレンおよびブチレン基が挙げられる。
これらのうち、製造しやすさの観点等から、エチレンおよびプロピレン基が好ましい。
これらのアルキレン基は、1種類でも2種類以上の混合でもよい。2種類以上の混合のとき、n個の(AO)の結合様式はブロック、ランダム及びこれらの組合せのいずれでもよい。また、nは、1〜200、好ましくは1〜100、さらに好ましくは1〜20の整数である。
【0012】
一般式(1)におけるXは、−COOM1/r、−COOR1、−CONRR23又は−CNで表される基であり、Mはおよびrは前述と同様であり、R1は炭素数1〜36の炭化水素基であり、前述のR4で挙げた基と同様の基が挙げられ、好ましいのは低泡立ち性の観点から炭素数1〜8のアルキル基である。R2およびR3は水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基であり前述のR4で挙げた基のうちの炭素数1〜4の基が挙げられる。
Xのうち好ましいのは、分散性の観点から、−COOM1/rで表される基である。
【0013】
一般式(1)で表されるアニオン性ビニルモノマー(a)としては、以下の(a1)〜(a7)等の種類のものが例示される。
(a1)モノカルボン酸(塩)[Qが一般式(2)で表される基で、Xが−COOR1、−CONRR23又は−CNで表される基]、
(a2)ジカルボン酸(塩)[Qが一般式(2)で表される基で、Xが−COOM1/r]、
(a3)モノ硫酸エステル(塩)[Qが一般式(3)で表され、p=0である基で、Xが−COOR1、−CONRR23または−CNで表される基]、
(a4)モノ硫酸エステルモノカルボン酸(塩)[Qが一般式(3)で表され、p=0である基で、Xが−COOM1/rで表される基]、
(a5)モノ燐酸エステル(塩)[Qが一般式(4)で表される基で、Xが−COOR1、−CONRR23または−CNで表される基]、
(a6)スルホコハク酸エステル(塩)[Qが一般式(5)で表される基]、
(a7)スルホコハク酸エステル(塩)[Qが一般式(6)で表される基]、
【0014】
上記(a1)〜(a7)の具体例としては以下の化合物が挙げられる。
(a1)
α−(カルボキシメチルオキシエチルオキシメチル)アクリル酸アルキルエステル、α−{カルボキシメチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸アルキルエステル、α−(カルボキシメチルオキシプロピルオキシメチル)アクリル酸アルキルエステル、α−{カルボキシエチル(ポリオキシプロピレン)オキシメチル}アクリル酸アルキルエステル、α−{カルボキシメチル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)オキシメチル}アクリル酸アルキルエステル;α−(カルボキシメチルオキシエチルオキシメチル)N,N−ジアルキルアクリルアミド、α−{カルボキシメチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}N,N−ジアルキルアクリルアミド、α−(カルボキシメチルオキシプロピルオキシメチル)N,N−ジアルキルアクリルアミド;α−(カルボキシメチルオキシエチルオキシメチル)アクリロニトリル、α−{カルボキシメチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリロニトリル、α−(カルボキシメチルオキシプロピルオキシメチル)アクリロニトリル;並びにこれらの塩、
(a2)
α−(カルボキシメチルオキシエチルオキシメチル)アクリル酸、α−{カルボキシメチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸、α−(カルボキシメチルオキシプロピルオキシメチル)アクリル酸、α−{カルボキシエチル(ポリオキシプロピレン)オキシメチル}アクリル酸、α−{カルボキシメチル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)オキシメチル}アクリル酸、およびこれらの塩、
(a3)
α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸アルキルエステルの硫酸エステル、α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸アルキルエステルの硫酸エステル、α−(ヒドロキシオキシプロピルオキシメチル)アクリル酸アルキルエステルの硫酸エステル、α−{ヒドロキシプロピル(ポリオキシプロピレン)オキシメチル}アクリル酸アルキルエステルの硫酸エステル、α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン)オキシメチル}アクリル酸アルキルエステルの硫酸エステル; α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)N,N−ジアルキルアクリルアミドの硫酸エステル、α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}N,N−ジアルキルアクリルアミドの硫酸エステル、α−(ヒドロキシオキシプロピルオキシメチル)N,N−ジアルキルアクリルアミドの硫酸エステル;α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリロニトリルの硫酸エステル、α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリロニトリルの硫酸エステル、α−(ヒドロキシオキシプロピルオキシメチル)アクリロニトリルの硫酸エステル;およびこれらの塩、
(a4)
α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸の硫酸エステル、α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸の硫酸エステル、α−(ヒドロキシオキシプロピルオキシメチル)アクリル酸の硫酸エステル、
(a5)
α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸アルキルエステルの燐酸エステル、α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸アルキルエステルの燐酸エステル、α−(ヒドロキシオキシプロピルオキシメチル)アクリル酸アルキルエステルの燐酸エステル;α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)N,N−ジアルキルアクリルアミドの燐酸エステル、α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}N,N−ジアルキルアクリルアミドの燐酸エステル;α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリロニトリルの燐酸エステル、α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリロニトリルの燐酸エステル;およびこれらの塩、
(a6)
α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸アルキルエステルのスルホコハク酸モノエステル、α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸アルキルエステルのスルホコハク酸モノエステル、α−(ヒドロキシオキシプロピルオキシメチル)アクリル酸アルキルエステルのスルホコハク酸モノエステル;α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)N,N−ジアルキルアクリルアミドのスルホコハク酸モノエステル、α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}N,N−ジアルキルアクリルアミドのスルホコハク酸モノエステル;α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリロニトリルのスルホコハク酸モノエステル、α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリロニトリルのスルホコハク酸モノエステル;およびこれらの塩、
(a7)
α−(ヒドロキシエチルオキシメチル)アクリル酸アルキルエステルおよびアルカノールのスルホコハク酸ジエステル、α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸アルキルエステルおよびアルカノールのスルホコハク酸ジエステル;
α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}N,N−ジアルキルアクリルアミドおよびアルカノールのスルホコハク酸ジエステル;α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリロニトリルおよびアルカノールのスルホコハク酸ジエステル;およびこれらの塩、
【0015】
(a1)〜(a7)のうち、分散性の観点から好ましいのは(a1)または(a2)、特に好ましいのは、アニオン基密度が高くなり分散性が良好になるという観点から(a2)である。
【0016】
本発明におけるアニオン性ビニルモノマー(a)は、以下の公知の製造方法を組み合わせて得ることができる。
(1)α−ヒドロキシメチル化反応;
[α−ヒドロキシメチルアクリル酸アルキルエステル、α−ヒドロキシメチルアクリロニトリルまたはN,N−ジアルキル−α−ヒドロキシメチルアクリルアミドの製造]
アクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリルまたはN,N−ジアルキルアクリルアミドとホルムアルデヒドとを三級アミンの存在下に反応させることにより、α−ヒドロキシメチルアクリル酸アルキルエステル、α−ヒドロキシメチルアクリロニトリルまたはN,N−ジアルキル−α−ヒドロキシメチルアクリルアミドを得る(たとえば、特開昭61−134353号公報、米国特許第4654432号明細書、特開平5−70408号公報)。
【0017】
(2)α−ヒドロキシメチル基へ(ポリ)オキシアルキレン基の導入;
α−ヒドロキシメチルアクリル酸アルキルエステル、α−ヒドロキシメチルアクリロニトリルまたはN,N−ジアルキル−α−ヒドロキシメチルアクリルアミドのヒドロキシル基に、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド等)を開環付加反応させる(公知のアルカリまたは酸触媒が使用できる)。
【0018】
(3)Xの加水分解等;
[カルボン酸(Xが−COOH)またはカルボン酸塩(Xが−COOM1/r)へ誘導]
α−ヒドロキシメチルアクリル酸アルキルエステル、α−ヒドロキシメチルアクリロニトリルまたはN,N−ジアルキル−α−ヒドロキシメチルアクリルアミドの(ポリ)オキシアルキレン誘導体を加水分解する(たとえば、第4版実験化学講座22、有機合成IV−酸・アミノ酸・ペプチド−、平成4年11月30日、(財)日本化学会編、丸善株式会社発行)。
[その他の加水分解]
カルボン酸ニトリル(Xが−CN)から、アミド(Xが−CONH2)へ加水分解することもできる(たとえば、上記の実験化学講座22、151〜156頁)。
また、カルボン酸アルキルエステル(Xが−COOR1)から、アミド(Xが−CONR23)へ変換することもできる(たとえば、上記の実験化学講座22、148〜151頁)。
カルボン酸ニトリル(Xが−CN)から、カルボン酸エステル(Xが−COOR1)へ変換することができる(たとえば、上記の実験化学講座22、53頁)。
【0019】
(4)アニオン基の導入;
[一般式(2)で示されるアニオン基の導入]
(ポリ)オキシアルキレン基の末端水酸基への一般式(2)で示される基の導入は、通常のカルボキシアルキル化方法により行うことができる。例えばアルカリ(水酸化ナトリウムなど)の存在下にモノハロゲン化アルキルカルボン酸(アルキル基の炭素数1〜6好ましくは1;モノクロル酢酸、モノブロム酢酸など)を反応させる方法、ならびにアルカリの存在下にアクリロニトリル又はアクリル酸低級アルキル(炭素数1〜4)エステルをマイケル付加させた後加水分解する方法が挙げられる。これらの場合、水酸基に対するモノハロゲン化アルキルカルボン酸、アクリロニトリル又はアクリル酸低級アルキルエステルの当量比は通常0.95〜1.5/水酸基である。また反応温度は通常30〜120℃である。アニオン化度は通常90モル%以上であり、好ましくは95モル%以上である。
【0020】
[一般式(3)で示されるアニオン基の導入]
(ポリ)オキシアルキレン基の末端水酸基への一般式(3)で示される基の導入は、通常のスルホン化または硫酸化方法、例えばクロロスルホン酸、無水硫酸、スルファミン酸または硫酸を反応させる方法により行うことができる。無水硫酸については、乾燥窒素等で希釈して用いる。いずれの場合も、硫酸化剤のモル比は通常0.95〜1.03/水酸基であり、反応温度は、クロロスルホン酸または無水硫酸の場合は0〜70℃、スルファミン酸または硫酸の場合は50〜150℃である。結合硫酸量の測定によって求められるアニオン化度は通常90%モル以上であり、好ましくは95モル%以上である。
【0021】
[一般式(4)で示されるアニオン基の導入]
(ポリ)オキシアルキレン基の末端水酸基への一般式(4)で示される基の導入は、通常のリン酸化方法、例えばリン酸、ポリリン酸、無水リン酸、オキシ塩化リン等のリン酸化剤と反応させる方法により行うことができる。一例として、無水リン酸との反応は、反応温度30〜150℃で、窒素雰囲気中で行うことができる。無水リン酸を使用する場合、無水リン酸のモル比は通常0.7〜1.5/水酸基である。生成物の酸価の測定によって求められるアニオン化度は通常90モル%以上であり、好ましくは95モル%以上である。
【0022】
[一般式(5)で示されるアニオン基の導入]
(ポリ)オキシアルキレン基の末端水酸基への一般式(5)で示される基の導入は、通常のスルホコハク酸エステル化方法(マレイン化しスルホン化する方法)、例えば無水マレイン酸と(ポリ)オキシアルキレン化物を無触媒で非水系で反応させ、マレイン酸ハーフエステルであるモノエステルを製造し、さらに、亜硫酸塩または酸性亜流酸塩を反応させる方法により行うことができる。ハーフエステル化反応の温度は通常40〜150℃であり、無水マレイン酸のモル比は0.9〜1.1/水酸基である。スルホン化の温度は40〜100℃であり、亜硫酸塩または酸性亜流酸塩の当量比は0.9〜1.5/水酸基である。結合硫酸量の測定によって求められるアニオン化度は通常90%以上であり、好ましくは95%以上である。
【0023】
[一般式(6)で示されるアニオン基の導入]
(ポリ)オキシアルキレン基の末端水酸基への一般式(6)で示される基の導入は、
上記のマレイン酸ハーフエステルを製造した後、さらに炭素数1〜36の炭化水素基を有するアルコールを脱水しながら(必要により触媒、アルカリ触媒もしくは酸触媒を使用し)エステル化し、さらに、上記と同様にして亜硫酸塩または酸性亜流酸塩を反応させる方法により行うことができる。脱水エステル化の温度は通常80〜150℃、好ましくは80〜120℃である。
【0024】
本発明におけるアニオン性ビニルモノマー(a) は、必要により、各工程の反応生成物を精留、抽出及び再結晶等の精製方法により精製してもよい。
(a)の製造における反応の順序は、好ましくは(1)−(2)−(4)又は(1)−(2)−(3)−(4)の順序である。
【0025】
本発明における分散剤は、上記のアニオン性ビニルモノマー(a)の単独重合体または他のビニルモノマー(m)との共重合体からなる。
【0026】
他のビニルモノマー(m)としては、以下のアニオン性モノマー(m1)、カチオン性モノマー(m2)および非イオン性モノマー(m3)が挙げられる。
【0027】
アニオン性モノマー(m1);
(m11)カルボキシル基含有ビニルモノマーおよびそれらの塩;
カルボキシル基を1個含有するビニルモノマー、例えば、不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、α−メチル(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸など]、不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜8)エステル[マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなど]など;カルボキシル基を2個以上含有するビニル単量体、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸およびアコニット酸などが挙げられる。
塩としては、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)塩、アンモニウム塩、アミン(アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルアミン等:たとえば、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、モノブチルアミン)塩、第4級アンモニウム塩(アルキル基の炭素数が1〜4のテトラアルキルアンモニウム塩:たとえば、テトラメチルアンモニウム塩、トリメチルエチルアンモニウム塩)等が含まれる。
【0028】
(m12)スルホン酸基含有ビニルモノマーおよびそれらの塩;
炭素数2〜6のアルケンスルホン酸[ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸など]、炭素数6〜12の芳香族ビニル基含有スルホン酸[α−メチルスチレンスルホン酸など]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルエステル系単量体[スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸など]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系モノマー[2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸など]、スルホン酸基と水酸基を含有するビニルモノマー[3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸など]、アルキル(炭素数3〜18)アリルスルホコハク酸エステル[ドデシルアリルスルホコハク酸エステルなど]などが挙げられる。塩としては上記と同様の塩が挙げられる。
(m13)硫酸基含有ビニルモノマーおよびそれらの塩;
(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートの硫酸化物などが挙げられる。塩としては上記と同様の塩が挙げられる。、
(m14)リン酸エステル基含有ビニルモノマーおよびそれらの塩;
例えば、リン酸モノアルケニルエステル(炭素数2〜12)[リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸プロペニル、リン酸イソプロペニル、リン酸ブテニル、リン酸ペンテニル、リン酸オクテニル、リン酸デセニル、リン酸ドデセニルなど]、(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数1〜12)リン酸エステル[(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、(メタ)アクリロイロキシイソプロピルホスフェートなど]、ポリ(n=2〜20)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレートエステルのリン酸エステルなどが挙げられる。塩としては上記と同様の塩が挙げられる。
【0029】
(m2)カチオン性モノマー;
(m21)1級もしくは2級アミノ基含有モノマー:
アミノアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミド[アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミドなど]およびこれらのモノアルキル(炭素数1〜6)置換体[モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレートなど]およびモノ(メタ)アリルアミンなどが挙げられる。
(m22)3級アミノ基含有モノマー:
ジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミド[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなど]、並びにモルホリノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
(m23)第4級アンモニウム塩基含有モノマー:
上記の(m21)の第4級アンモニウム塩化物、例えば塩化トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよび塩化ジメチルジアリルなどが挙げられる。
【0030】
(m3)非イオン性モノマー;
(m31)水酸基含有ビニルモノマー;
(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート[アルキレン基としては、炭素数2〜20、好ましくは2〜6のアルキレン基、アルキレングリコール単位数は1〜50、好ましくは1〜20、具体例としては、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの単位数9〜18)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの単位数3)モノ(メタ)アクリレートなど]、ビニルアルコール(酢酸ビニル単位の加水分解により形成される)、炭素数3〜12のアルケノール[アリルアルコール、メタリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、1−オクテノール、1−ウンデセノールなど]、炭素数4〜12のアルケンジオール[2−ブテン−1,4−ジオールなど]、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜6)アルケニル(炭素数3〜10)エーテル[2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、p−ヒドロキシスチレンおよびトリエタノールアミンジ(メタ)アクリレートなど]が挙げられる。
その他、本発明のアニオン性ビニルモノマーにおいてアニオン基を導入する前の化合物が挙げられる。
(m32)非置換アミド基含有ビニルモノマー;
(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
(m33)N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド;
N−モノアルキル(炭素数1〜30、好ましくは4〜30、さらに好ましくは8〜30の直鎖もしくは分岐)置換(メタ)アクリルアミド[例えばN−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−2−エチルへキシル(メタ)アクリルアミド、N−デシル(メタ)アクリルアミド、N−ドデシル(メタ)アクリルアミド、N−オクタデシル(メタ)アクリルアミド、N−2−デシルテトラデシル(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アクリルアミドなど]、N,N−ジアルキル(炭素数1〜30、好ましくは4〜30、さらに好ましくは8〜30の直鎖もしくは分岐)置換(メタ)アクリルアミド[例えばN,N−ジオクチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジドデシル(メタ)アクリルアミドなど]およびエチレンジ(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0031】
(m34)(メタ)アクリル酸エステル;
(m341)(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
アルキル基としては炭素数1〜32(好ましくは1〜24)の直鎖または分岐のアルキル基が挙げられ、具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシルおよび(メタ)アクリル酸テトラコシルなどが挙げられる。
【0032】
(m342)(メタ)アクリル酸アルケニルエステル;
アルケニル基としては、炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルケニル基が挙げられ、例えば(メタ)アクリル酸ブテニル、(メタ)アクリル酸オクテニル、(メタ)アクリル酸デセニル、(メタ)アクリル酸ドデセニル、(メタ)アクリル酸オレイルなどが挙げられる。
【0033】
(m343)(ポリ)アルキレングリコールのモノアルキルエーテルのモノ(メタ)アクリル酸エステル;
アルキレン基としては前述の基などが挙げられる。またモノアルキルエーテルを構成するアルキル基としては炭素数が1〜20、好ましくは1〜18の直鎖または分岐アルキル基が挙げられ、前述のアルキル基が挙げられる。(ポリ)アルキレングリコールにおけるアルキレングリコールの単位の数は好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜20である。
具体例としては、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの単位数6)モノメチルエーテルモノメタクリレート、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルモノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの単位数3)モノブチルエーテルモノメタクリレートなどが挙げられる。
【0034】
(m35)(メタ)アクリル酸以外の不飽和カルボン酸のエステル;
(メタ)アクリル酸以外の不飽和モノカルボン酸[クロトン酸など]の炭素数1〜30のアルキル、シクロアルキルもしくはアラルキルエステル、ならびに不飽和ジカルボン酸[マレイン酸、フマール酸、イタコン酸など]の炭素数1〜24のアルキルジエステル[マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジオクチルなど]が挙げられる。
【0035】
(m36)脂肪族ビニル系炭化水素;
炭素数2〜30のアルケン[エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、1−ヘプテン、4-メチルペンテン−1,1−ヘキセン、ジイソブチレン、1−オクテン、1−ドデセン、1−オクタデセンおよびその他のα−オレフィンなど]、炭素数4〜18のアルカジエン[好ましくは炭素数4〜5のブタジエン、イソプレン、その他1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエンおよび1,7−オクタジエンなど]などが挙げられる。
【0036】
(m37)アルキルアルケニルエーテル;
炭素数1〜30の直鎖または分岐アルキル基を有するアルキルビニルエーテル、アルキル(メタ)アリルエーテル、アルキルプロペニルエーテルおよびアルキルイソプロペニルエーテルなどが挙げられ、好ましくは炭素数1〜24のアルキル基である。具体的には、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなど、アルキル(メタ)アリルエーテルとしては、メチルアリルエーテル、エチルアリルエーテル、n−ブチルアリルエーテルなどが挙げられる。これらのうちで好ましいものは、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、メチルアリルエーテルおよびエチルアリルエーテルである。
【0037】
(m38)脂肪酸ビニルエステル;
脂肪酸としては総炭素数1〜30、好ましくは1〜24、さらに好ましくは1〜18の直鎖状または分岐状の脂肪酸が挙げられ、飽和または不飽和のいずれであってもよい。具体的には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ヘプタン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニルおよびn−オクタン酸ビニル、オレイン酸ビニル、リノール酸ビニル、リノレン酸ビニルなどが挙げられる。
【0038】
(m39)ビニルケトン類;
炭素数1〜8のアルキルもしくはアリールのビニルケトン[メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、フェニルビニルケトンなど]が挙げられる。
【0039】
(m310)脂環基(炭素数5〜24)含有ビニルモノマー;
シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン、ピネン、リモネン、インデン、シクロアルキルカルボン酸ビニルエステル[シクロヘキサン酸ビニル、シクロオクタン酸ビニル、デカヒドロナフチル酸ビニルなど]、シクロアルキルカルボン酸プロペニルエステル[ビシクロペンチル酸プロペニルなど]、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルおよび(メタ)アクリル酸デカヒドロナフチルなど]、(メタ)アクリル酸シクロアルキルアルキルエステル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエチルなど]、シクロヘキシル(メタ)アクリル酸メチル、シクロヘプチル(メタ)アクリル酸エチルなどが挙げられる。
【0040】
(m311)芳香族ビニル系炭化水素;
スチレン、置換スチレン(置換基の炭素数1〜18)[アルキル置換スチレン(好ましくはα−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレンなど)、シクロアルキル置換スチレン(シクロヘキシルスチレンなど)、アリール置換スチレン(フェニルスチレンなど)、アラルキル置換スチレン(ベンジルスチレンなど)、アシル基置換スチレン(アセトキシスチレンなど)、フェノキシ基置換スチレン(フェノキシスチレンなど)など]、ジビニル置換芳香族炭化水素[好ましくはジビニルベンゼン、その他ジビニルトルエンおよびジビニルキシレンなど]、ビニルナフタレンなどが挙げられる。
【0041】
(m312)上記以外の非イオン性モノマー;
ニトリル基含有モノマー[(メタ)アクリロニトリルおよびシアノスチレンなど]、ニトロ基含有モノマー[4−ニトロスチレンなど]およびハロゲン含有ビニルモノマー[塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル、ハロゲン化スチレン(モノおよびジクロルスチレン、テトラフルオロスチレンおよび塩化アリルなど)]が挙げられる。
【0042】
(m)のうち、好ましいのは、分散性および低泡立ち性の観点から、アニオン性モノマー(m1)および非イオン性モノマー(m3)〜(m9)、さらに好ましいのは(m1)のうちの(m11)および(m12)、(m3)のうちの(m31)〜(m35)である。
【0043】
本発明における重合体(A)におけるモノマーのモル比[(a)/(m)]molは、通常0.1〜100/0〜99.9、好ましくは、分散性の観点から、0.5〜50/50〜99.5、さらに好ましくは1〜20/80〜99である。
また、重合体(A)におけるモノマーの重量比[(a)/(m)]wtは、通常0.1〜100/0〜99.9、好ましくは、分散性の観点から、0.3〜50/50〜99.7、さらに好ましくは0.8〜30/70〜99.2である。
【0044】
本発明における重合体(A)の数平均分子量(以下、Mnと略記:GPCによる測定)は、通常1,000〜100,000、分散性の観点から、好ましくは3,000〜20,000、さらに好ましくは5,000〜15,000である。
また、分子量分布を表す分散[Mw(重量平均分子量)/Mn]は、通常1.05〜2.0、分散性の観点から好ましくは1.1〜1.5、さらに好ましくは1.1〜1.4である。
【0045】
本発明における重合体(A)の製造方法は、公知の重合方法を適用でき、たとえば、溶液重合、懸濁重合、塊状重合または逆相懸濁重合のいずれでもよい。これらの重合方法のうち好ましくは溶液重合および逆相懸濁重合、特に好ましくは溶液重合である。これらの重合には、公知の、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤又は溶媒等が使用できる。
【0046】
ラジカル重合開始剤としては、遊離基を生成して重合を開始させるタイプのもの、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−アルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネイト)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)などのアゾ化合物;ジベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過コハク酸などの有機過酸化物;過硫酸塩、過ホウ酸塩、過酸化水素等の無機 過酸化物などが使用できる。また還元剤と組み合わせたレドックス系開始剤等を使用することができる。レドックス系開始剤に用いられる還元剤としては、アスコルビン酸(塩)、ロンガリット、次亜リン酸(塩)、亜硫酸(塩)、重亜硫酸(塩)、第1鉄塩などがあげられる。これらは2種以上を併用してもよい。ラジカル重合開始剤の量は単量体に対して、通常0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。
【0047】
溶液重合の場合の溶剤としては、水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、ケトン類(アセトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル類(テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン系溶剤(エチレンジクロライド等)およびこれらの混合物等があげられる。とくに好ましいものは、イソプロパノールおよびイソプロパノールと水の混合溶剤である。
【0048】
重合温度としては、通常20〜200℃、好ましくは60〜150℃である。常圧下重合溶液の沸点以下の温度、常圧下重合溶液の沸点、および加圧下重合溶液の沸点以上の温度等があげられる。好ましくは加圧下重合溶液の沸点以上で重合する方法である。また乳化剤、分散剤等を使用する場合は特に制限がなく公知のものが使用できる。
【0049】
重合体の中和塩としては、アルカリ金属塩(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウムなど)、アンモニウム塩(アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなど)など、およびこれらの2種以上の混合物があげられる。
【0050】
本発明の分散剤は、無機物質の分散に有用であり、無機顔料用、セメント用、農薬粒剤用、洗剤ビルダー用または掘削泥水分散用の分散剤として特に効果を発揮する。
その他、ボイラーや冷却水に発生するスケールの分散剤としても有効である。
本発明において、対象となる無機物質としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛、クレー、ベントナイト、サチンホワイト、亜鉛華、ベンガラ、フェライト、酸化チタン、タルク、ホワイトカーボン、セメント、石膏、カーボンブラック、各種珪酸塩、等があげられる。
具体的には炭酸カルシウム湿式粉砕用、軽質炭酸カルシウム製造工程用、フェライト製造工程用、紙コーティング塗料用、水系塗料用、モルタル、コンクリート、掘削泥水等の分散剤として有効である。本発明の分散剤を用いて粉体を水性溶媒中に分散を行う場合、分散剤の固形分当りの使用量は、粉体に対して通常0.001〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。0.0005%未満では分散 効果が不十分であり、また10重量%を超える場合には凝集作用が発現し高濃度水系スラリーの場合粘度が上昇する。特に、本発明の分散 剤を用いて炭酸カルシウムや酸化チタン等の無機 顔料を水に分散 を行う場合、分散体組成物の重量に基づいて、分散 剤の固形分当りの使用量は、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜1重量%である。0.0001%未満では分散効果が不十分であり、また5重量%を超える場合には凝集作用が発現し粘度が上昇する。また、無機顔料の量は、60〜80重量%である。
【0051】
本発明の分散剤を使用して、粉体の水系分散物を得る方法としては、通常の分散方法でよく、例えば本発明の分散剤を溶解した水性溶液中に粉体を添加して撹拌、混合する方法が挙げられる。水性溶液としては水、水と水溶性有機溶媒(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、エチレングリコールなど)との混合溶液が挙げられる。この撹拌、混合には高速デイスパー、ホモミキサー、ボールミル、コンクリートミカサーなど一般に用いられる撹拌装置を使用することができる。また、他の方法としては、粉体の原鉱石または粗粒子を湿式粉砕する際同時に本発明の分散剤を添加し、分散物とする方法が挙げられる。
【0052】
本発明において、農薬粒剤用分散剤の場合の使用する農薬としては殺虫剤、殺菌剤、殺ダニ剤および除草剤等であり、例えば、次のようなものを挙げることができる。殺虫剤としてはo,o−ジメチル−s−(N−メチルカルバモイルメチル)ジチオフォスフェート(ジメトエート)、3,5−キシリル−N−メチルカーバメート(XMC)など、殺菌剤としては3−アリルオキシ−1,2−ベンゾイルチアゾール−1,1−ジオキシド(プロベナゾール)など;除草剤としては2,4,6−トリクロロフェニル−4−ニトロフェノール(一般名CNP)、2−クロル−2′,6′−ジエチル−N−(ブトキシメチル)アセトアニリド(ブタクロール)などが挙げられるがこれに限定されるものではない。これらの農薬は一種単独または二種以上の組合せ配合が可能である。本発明の分散剤は、上記農薬および無機鉱物性微粉末を構成成分とする農薬粒剤組成物の分散剤として用いられる。無機鉱物性微粉末としてはベントナイト、クレー、タルク、カオリン、炭酸カルシウムおよびケイソウ土などがあげられる。
【0053】
本発明の分散剤は上記重合体以外にたとえば造粒性改良剤(カルボキシメチルセルロースの一価の塩など)、結合剤(リグニンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコールなど)、浸透剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェートナトリウム塩など)他の分散剤(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなど)などを配合することができる。農薬粒剤組成物の重量に基づいて分散剤は通常0.2〜10%、好ましくは1〜5%である。無機 鉱物性微粉末の量は通常99〜60%、好ましくは96〜75%である。農薬は通常1〜15%、好ましくは3〜10%である。
【0054】
農薬粒剤組成物の製造方法は従来の方法と同様でよく、例えば農薬および分散剤を含有するスラリーに無機 鉱物性微粉末および必要に応じて補助剤などを加え混練後、混合物をスクリーンから押出し造粒機で成型し乾燥させてシフターなどのふるいわけにより所望の粒度の農薬粒剤組成物が得られる。農薬粒剤組成物は、そのまま田畑などに施用する。
【0055】
本発明の分散剤は界面活性剤、アルカリ剤、酵素、蛍光剤、漂白剤、その他のビルダーなどと混合して、衣料用などの洗剤用ビルダーとして用いられる。界面活性剤としてはアニオン性界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテル硫酸エステル塩、スルホ脂肪酸エステル塩、脂肪酸塩など);非イオン界面活性剤(ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドなど);カチオン界面活性剤(アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライドなど);両性界面活性剤(アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなど)などがあげられる。
【0056】
その他、他のビルダー(トリポリリン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸塩、クエン酸塩、ラウリン酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩など);無機 化合物( 硝、尿素など);アルカリ(苛性ソーダ、炭酸ソーダ、珪酸ソーダ、トリエタノールアミンなど);酸(塩酸、クエン酸など);溶剤(エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコールなど);水;酸化剤(過酸化水素、過炭酸ナトリウムなど);還元剤(重亜硫酸ナトリウムなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸塩など);再汚染防止剤(カルボキシメチルセルロースなど);研磨剤(タルク、微粉末シリカなど);濁り剤;香料;着色料;防腐剤;起泡剤;泡安定剤;つや出し剤;酵素;蛍光染料;ハイドロトープ剤などの成分を配合することができる。
【0057】
本発明の分散剤を洗剤用ビルダーとして使用する場合の配合量は、洗剤組成物の重量に基づいて、通常0.05〜50%、好ましくは1〜15%である。ビルダーの量がこの範囲より少ないと硬水を軟水化する能力および再汚染防止能が不足し洗浄力が低下する。また上限を越えると不経済である。また界面活性剤の量は洗剤組成物の重量に基づいて、通常3〜60%、好ましくは10〜40%で、他成分の量は、通常30〜90%、好ましくは50〜70%である。本発明の分散剤を用いた洗剤組成物は、それぞれ通常の方法により、固状、粉末状、液状、ペースト状、スラリー状などに調製できる。
【0058】
本発明の分散剤を用いた洗剤組成物の使用法は、特に限定されず、通常、水に100〜10,000倍程度に希釈し使用される。
【0059】
本発明の分散剤を用いた洗剤組成物は繊維製品の洗剤として好ましく使用することができる。繊維製品としては、木綿、羊毛、絹などの天然繊維、スフ、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ナイロン、アクリル、ポリエステル、ポリプロピレンなどの合成繊維及びこれらを混合した各種繊維などよりなる編物、織物などの繊維製品、とくに家庭用繊維製品(肌着、オムツ、ランジェリー、セーターなど)があげられる。繊維製品への適用法としては、たとえば水に希釈して洗浄浴を調整し、その中に繊維製品を浸漬、撹拌し、すすいだ後、絞って乾燥する方法がある。
【0060】
本発明の分散剤を掘削泥水用の分散剤として使用する場合の対象となる掘削泥水としては、ベントナイト、アタパルジャイト、セピオライト、セリサイト等の無機 粘土質の泥水、カルボキシメチルセルロース(塩)等の水溶性高分子を骨格とするポリマー泥水等があげられる。
【0061】
掘削泥水に対する本発明の分散剤の配合量(純分量)は、掘削泥水組成物の純分合計重量にたいして通常0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%である。0.01重量%未満では海水、セメントその他の電解質により泥水性能の劣化防止効果が低く、5%重量を超えると配合しただけの効果が得られず不経済である。
【0062】
掘削泥水に本発明の分散剤を配合するにあたり、その配合方法としては次の方法があげられる。
(1)無機粘土類、水溶性高分子および本発明の添加剤を同時に混練水に投入する方法
(2)無機粘土類、水溶性高分子等を予め混練水に投入しておき、これらの膨潤後に本発明の添加剤を添加する方法。
本発明の分散剤を使用する方法を例示すると次の通りである。まず本発明の分散剤、無機 粘土類および水溶性高分子等を水に配合して泥水組成物を調製し、これを掘削部へ循環または滞留させながら、掘削機を用いて地盤を掘削する。この場合、泥水組成物は常に掘削部内を満たして摩擦熱の吸収、放熱、潤滑等の作用や掘削土砂の地上への搬出を行うことにより掘削を進めると共に不透水性の泥壁を形成して掘削孔壁の崩壊を防止している。所定の掘削が終了後、通常鉄筋枠組みを入れ底部よりコンクリートを投入して泥水を掘削溝から回収しながら掘削部内にコンクリートを満たして杭または壁を構築する。コンクリートと置換された掘削泥水は再びタンク内に戻され再使用される。
本発明の分散剤の他に、劣化防止剤、腐敗防止剤、溶解促進剤(エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等)、分散 解膠剤(ニトロフミン酸ソーダ、タンニン酸、リグニン酸、リグニンスルホン酸、縮合燐酸塩等)を適宜併用することも可能である。
【0063】
[実施例]
以下、製造例および実施例により本発明をさらに詳細に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。なお、製造例、実施例、比較例中の%および部は重量%および重量部を表す。
【0064】
《GPC測定条件》
機 種 :Waters510(日本ウオーターズ・リミテッド製)
カラム :TSK gel G5000pwXL TSK gel G3000pwXL (いずれも東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃ 検出器 :RI 溶 媒 :0.5%酢酸ソーダ・水/メタノール(体積比70/30)
流 速 :1.0ml/分 試料濃度 :0.25重量% 注入量 :200μl 標準 :ポリオキシエチレングリコール (東ソー株式会社製;TSK STANDARD POLYETHYLENE OXIDE)
データ処理装置:SC−8010(東ソー株式会社製)
【0065】
<製造例1>
[α−{カルボキシメチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸ナトリウム塩の製造]
一般式(1)におけるQが一般式(2)で表される基であって、MはNa、pは0、Aはエチレン基、nは10、XはCOOM1/rであってMはNaのもの:
加熱撹拌装置および冷却器を備えたガラス製反応容器に、アクリル酸72部(1モル部)、37%ホルムアルデヒド水溶液(メタノール含有量7%)122部(1.5モル部)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)7部(63ミリモル部)、メトキシハイドロキノン0.03部及びアセトニトリル100部を仕込み、均一混合した後、80〜82℃で1時間反応させた。この反応液を40℃に冷却し、濃塩酸でpH5.0に調整した後、トルエン200部で抽出した。ついで、抽出物からトルエンを留去して、α−ヒドロキシメチルアクリル酸(HMA)の粗生成体を得た。
HMMAの粗生成体130部を水150部に溶解した後、石油エーテル60部を用いて不純物を3回抽出除去した。ついで、HMA水溶液に食塩を飽和になるまで溶解させた後、トルエン抽出し、HMAを精製した(純度98.5%)。
加熱撹拌装置および冷却器を備えたガラス製耐圧反応容器に、HMA104部(1モル部)、三フッ化硼素(ジエチルエーテル錯体)0.5部およびメトキシハイドロキノン0.03部を混合し、60℃に調整した後、60℃でエチレンオキシド440部(10モル部)を滴下して反応させることにより、α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸(OHMA)を得た。
OHMA542部(1モル部)に、粉末状の水酸化ナトリウム40部(1モル部)およびモノクロル酢酸113部(1.2モル部)を加えて60〜65℃で12時間反応させて、OHMAのカルボキシメチル化物(COHMA)[ α−{カルボキシメチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸]の粗生成体を得た。粗生成体に30%の水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHが9になるまで中和した。
得られた粗生成体中和物をシリカゲルを充填した分離カラムを通してを精製した(純度95.0%)。
【0066】
<製造例2>
[α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸の硫酸エステル(アンモニウム塩)の製造]
一般式(1)におけるQが一般式(3)で表される基であって、Mはアンモニウム、pは0、Aはエチレン基、nは10、XはCOOM1/rであってMはNaのもの:
製造例1と同様にして得られたOHMA542部(1モル部)に、スルファミン酸100部(1.03モル部)および塩化第1銅0.001部を加えて、95℃で13時間反応させて、OHMAの硫酸化物(SOHMA)[ α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸ナトリウムの硫酸エステルアンモニウム塩](純度94.0%)を得た。
【0067】
<実施例1>COHMAとアクリル酸との共重合体からなる分散剤の製造:
製造例1で得られたCOHMAのうちの60部(0.1モル部)をアクリル酸288部(4.0モル部)に溶解させてモノマー混合液を調整した。開始剤溶液として過硫酸アンモニウム6部を水60部に溶解させた溶液を調整した。
加熱装置、撹拌装置、冷却器および窒素導入官を備えたガラス製反応容器に水1,000部およびイソプロピルアルコール100部を仕込み、窒素置換した後、84℃に昇温し、撹拌しながら、上記モノマー混合液および開始剤溶液を3時間かけて等速度で滴下した。その後、さらに3時間同温度で熟成した後、30%水酸化ナトリウム水溶液533部(4.0モル部)を2時間かけて滴下して中和した。系内の温度を徐々に昇温し、イソプロピルアルコールと水の混合物を留去し、 ポリマー成分が30%のα−{カルボキシメチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸ナトリウム塩とアクリル酸ナトリウムの共重合体(P−COHMA/A)の水溶液(分散剤−1)を得た。Mnは8,000であった。
【0068】
<実施例2>SOHMAとアクリル酸との共重合体からなる分散剤の製造:
製造例2で得られたSOHMAのうちの65部(0.1モル部)をアクリル酸288部(4.0モル部)に溶解させてモノマー混合液を調整した。開始剤溶液として過硫酸アンモニウム6部を水60部に溶解させた溶液を調整した。
実施例1と同様にして重合反応を行い、ポリマー成分が30%のα−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸ナトリウム塩の硫酸エステルアンモニウム塩とアクリル酸ナトリウムの共重合体(P−SOHMA/A)の水溶液(分散剤−2)を得た。Mnは8,300であった。
【0069】
<比較例1>2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)とアクリル酸との共重合体からなる分散剤の製造:
AMPS20.7部(0.1モル部)をアクリル酸288部(4.0モル部)に溶解させてモノマー混合液を調整した。開始剤溶液として過硫酸アンモニウム6部を水60部に溶解させた溶液を調整した。
実施例1と同様にして重合反応を行い、ポリマー成分が30%のAMPS−ナトリウム塩とアクリル酸ナトリウムの共重合体(P−AMPS/A)の水溶液(比較分散剤−1)を得た。Mnは8,800であった。
【0070】
比較分散剤−2としては「キャリボンL−400」(ポリアクリル酸ナトリウム:三洋化成工業(株)製:Mn8,000)を用いた。
【0071】
試験例1 (重質炭酸カルシウム粉末の分散 )
水30部と、実施例または比較例の分散剤0.2部(固形分)とを均一に溶解した各水溶液に重質炭酸カルシウムの粉末(エスカロン2000;三共製粉製)を70部添加し、TKホモミクサー(特殊機化工業製)を用いて3,000回転で10分撹拌分散させた。直後、および25℃で7日間静置後の粘度をBL粘度計を用いて25℃、60rpmの条件で測定した。表1に試験結果を示す。
【0072】
【表1】

【0073】
試験例2(重質炭酸カルシウムの湿式粉砕分散 )
水25部と、実施例または比較例の分散剤0.6部(固形分)とを均一に溶解した各水溶液に重炭酸カルシウムの荒挽き鉱石を75部添加し、サンドグラインダーを用いて30分撹拌分散させた。得られた75重量%炭酸カルシウム水性スラリーの製造直後、および25℃で7日間静置後の粘度をBL粘度計を用いて25℃、60rpmの条件で測定した。表2に試験結果を示す。
【0074】
【表2】

【0075】
試験例3(コンクリートの分散 )
実施例または比較例の分散剤を用いて、コンクリート配合物を作り、コンクリートミキサーを用いて分散物を得た。コンクリートの配合は単位セメント量320Kg/m3、水/セメント比55%、細骨材率46%であり、分散剤(固形分)の添加量はセメントに対して1%で試験をおこなった。25℃におけるコンクリートの分散試験結果を表3に示す。
(分散性はスランプで表し、スランプの数値の大きい方が分散 性がよい)
スランプ;JIS A−1101、空気量はいずれも4%であった。
【0076】
【表3】

【0077】
試験例4(農薬粒剤用分散剤)
担体(無機鉱物性微粉末)としてベントナイト25部、ホワイトカーボン5部及びタルク63部、殺虫剤としてジメトエート5部、実施例および比較例の分散剤を各々1.5部を配合した組成物100部に対し水20部を加えて混練し、直径0.9mmの粒剤を造粒機で作成し、下記水中崩壊拡展性(分散性)試験に使用した。その結果を表4に示す。
(1)水中崩壊拡展性試験法3度硬水を直径10cmのシャーレに深さ1cmになるように入れ、温度を20℃に保持する。このシャーレの中央部に粒剤(粒径0.9mm、長さ2mm)1粒を静かに落し30分経過後の粒剤の水中崩壊拡展の面積(cm2)を測定した。拡展の面積は大きいほど分散性が優れていることを示す。
【0078】
【表4】

【0079】
試験例5(洗剤ビルダー用)
実施例および比較例の分散剤をビルダーとして洗浄力試験を行った。
(1)洗浄力試験
本発明のビルダーを用い以下配合の粉末洗剤組成物および液体洗剤組成物を得た。
粉末洗剤組成物;本発明のビルダー=15部、LAS=20部、ケイ酸ナトリウム=10部、炭酸ナトリウム=6部、ボウ硝=48部、カルボキシメチルセルロース=1部。
液体洗剤組成物;本発明のビルダー=5部、炭素数12と13のセカンダリーアルコールエチレンオキサイド9モル付加物=25部、炭素数12と13の脂肪族アルコールエチレンオキサイド3モル付加物の硫酸エステルのナトリウム塩=15部、エタノール=3部、 水=52部。
【0080】
これらの洗剤組成物について洗浄力を次の試験法で試験した。その試験結果を表5に示す。
(1)人工汚垢の作成
下記の有機汚垢成分、焼成粘土およびカーボンブラックを69.7:29.8:0.5(重量比)にて混合した人工汚垢を作成した。
有機汚垢成分;オレイン酸=28.3、トリオレイン=15.6、コレステロールオレート=12.2、流動パラフィン=2.5、スクワレン=2.5、コレステロール=1.6、ゼラチン=7.0。
(2)洗浄
この人工汚垢を用い水溶媒系湿式法にて汚染布を作成し、これを5cm×5cmに裁断して反射率が41±2%のものを試験に供した。試験にはこの汚染布10枚および1枚あたり60mgの有機汚垢を付着させた綿メリヤス布3枚を用いて下記条件にて洗浄を行った。
洗浄条件
試験機 : Terg−O−Tometer
回転数 : 120rpm
水の硬度 : 90ppm(CaCO3換算)
洗液量 : 900ml
洗浄温度 : 30℃
洗剤濃度 : 粉末用0.10%
液体用0.067%
浴 比 : 30倍(清浄綿メリヤス布にて調整)
洗浄時間 : 10分
すすぎ時間: 3分を2回
乾 燥 : ろ紙にはさんでアイロン乾燥
その後、洗浄前後における布の表面反射率を測定し次式から洗浄力を求めた。
洗浄力=[(汚垢布のK/S−洗浄布のK/S)/(汚垢布のK/S−清浄布のK/S)] ×100
ここで、K/S=(1−Rn2/2Rn (Kubelka−Munkの式)
ここで、Rnは布の表面反射率[(%)/100]を示す。
【0081】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の分散剤は、無機顔料用分散剤、セメント用分散剤、農薬粒剤用分散剤、洗剤ビルダー用分散剤、スケール分散剤または掘削泥水用分散剤として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるアニオン性ビニルモノマー(a)を必須構成モノマーとする重合体(A)からなる分散剤。
【化1】

(式中、Qはアニオン性基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基;Xは−COOM1/r、−COOR1、−CONR23または−CNで表される基、Mは水素原子またはr価のカチオン基、rは1または2、R1は炭素数1〜36の炭化水素基、R2およびR3は水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基;nは1〜200の整数を表す。)
【請求項2】
一般式(1)におけるQが一般式(2)〜(6)のいずれかで表される基である請求項1記載の分散剤。
【化2】

(式中、R4は炭素数1〜36の炭化水素基、1分子中の2個のLのうちの一方は−SO31/rで、他方は水素原子、Mは水素原子またはr価のカチオン基、rは1または2、pは0または1〜5の整数を表す。)
【請求項3】
一般式(1)におけるXが−COOM1/rであり、かつ、Qが一般式(2)で表される基である請求項2記載の分散剤。
【請求項4】
無機顔料分散用、セメント分散用、掘削泥水分散用または農薬粒剤分散用である請求項1〜3のいずれか記載の分散剤。
【請求項5】
洗剤ビルダー用である請求項1〜3のいずれか記載の分散剤。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか記載の分散剤、無機粒子および水性媒体からなる無機粒子の水性分散体。

【公開番号】特開2006−239476(P2006−239476A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54426(P2005−54426)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】