説明

分散型電源の発電出力制御システムおよび制御方法

【課題】ガスエンジンと燃料電池を統合制御して、分散型電源の電力供給システムの出力変動を抑制する発電出力制御システムと制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ガスエンジンと燃料電池とを組み合わせて統合制御を行う分散型電源の電力供給システムに再生可能エネルギーなどの出力変動や負荷変動が生じた場合に、商用電力系統接続点の受電点電力の変化に応じてガスエンジンの発電量分担割合が最大になるように燃料電池の出力を下げて、負荷への供給電力を一定に維持する所要の負荷特性を実現することにより、システム全体の発電総合効率を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガスエンジンと燃料電池を組合せて統合制御することにより、再生可能エネルギーなどの出力変動抑制と分散型電源の電力供給システム全体の発電総合効率向上を目指す技術である。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電、燃料電池、発電用ガスエンジンといった様々な分散型電源の実用化、導入が進められている。そのような分散型電源をビル内等の自家発電設備として採用することは、地球温暖化ガスの排出量削減が期待でき、電力会社から供給される電力量の削減、あるいは、震災や火災時の自立安定性も確保し易いといった様々な利点がある。したがって、分散型電源を用いた電力供給システムは、今後広く普及するものと予測される。
【0003】
ところで、上記分散型電源を用いた電力供給システムでは、分散型電源と商用系統(電力会社の電力網)とを併用(系統連系)して当該分散型電源を運転させると、再生可能エネルギーの出力変動により電力系統に影響が出ることがある。特に、今後、大量導入が見込まれる太陽光発電が分散型電源を用いた電力供給システムに組み込まれる場合、太陽光発電の出力が日射量によって変動し、電力の需要と供給のバランスが崩れるため、周波数変動が生ずる可能性がある。
この周波数変動は、この周波数の数値に依存して動く機械もあるため、50Hz系統では一般的には±0.2Hz以上の周波数変動が生じるのは好ましくない。また、商用系統における負荷変動の補償を電力会社にばかり求めると、電力会社の負荷変動に対する調整能力に大きな負担が掛かる。
したがって、近年では、分散型電源を個別にその負荷に追従させて運転させ、取り分け、太陽光発電が導入される場合、その出力変動を抑制するように運転させることが求められている。このようにすれば、商用系統にかかる負荷変動抑制の電力会社側の負担を軽減させることができる。
【0004】
また、上記分散型電源を用いた電力供給システムにおいても、発電におけるエネルギー消費量を最小にすることが好ましく、このようなエネルギー効率を勘案して、分散型電源を個別にその負荷に追従させて運転させる分散型電源を用いた電力供給システムの従来例としては、燃料電池と発電用ガスエンジンとを併用した発電システムとして文献1(特開平6−150951号公報)が挙げられる。
文献1記載の技術は、「燃料電池と発電用ガスエンジンとを併用し、効率良く電力を発生させながら、急激な負荷増大といった負荷変動を良好に吸収するものであって、発電用ガスエンジンと燃料電池とを備え、発電用ガスエンジンと燃料電池に、それぞれからの電力を取り出す第1および第2の集電線を接続し、電力負荷が設定値以下のときには燃料電池のみ作動し、一方、電力負荷が前記設定値を越えたときには、発電用ガスエンジンを作動するとともにその出力が安定作動点を維持する状態で燃料電池の出力を制御し、かつ、燃料電池の出力が定格を越えた状態では発電用ガスエンジンの出力を制御するように構成したもの」である。
【0005】
文献1の発電システムは、「燃料電池と発電用ガスエンジンとを併用し、効率良く電力を発生させながら、急激な負荷増大といった負荷変動を良好に吸収できるようにすることを目的とする」([0006])ものであって、「燃料電池の発電効率の高さを十分に活かしながら、昼間における急激な負荷の増大などに対しては、発電用ガスエンジンの出力の制御によって良好に対応することができる」([0021])と記載されている。
しかし、文献1のものは、燃料電池(以下、適宜「FC」と略称する。)と発電用ガスエンジン(以下、適宜「GE」と略称する。)を組み合わせて負荷変動を吸収する技術、および発電用ガスエンジンで1日の負荷変動に対応することが開示されているが、再生可能エネルギーの出力変動を対象としていない。また、系統連系された分散型電源を用いた電力供給システム(いわゆるマイクログリッド)の負荷変動を対象としておらず、また、燃料電池の発電量を下げて該電力供給システム全体の発電総合効率を向上させるものではない。
【0006】
なお、ガスエンジンとは、ガスを燃料として駆動するエンジンである。ガス器具・設備での利用としては、熱と電気を発生させるコージェネレーションシステムに多く利用され、そのほとんどが自動車用のガソリンエンジンと同様の原理である。一連の工程は、1.シリンダ内(燃焼室)に燃料ガスと空気をあらかじめ混合して供給し、2.混合気をピストンにより圧縮し、電気火花で点火。3.燃焼後の混合気(=燃焼ガス)が膨張しピストンを押し下げる。4.最後にピストンにより燃焼ガスはシリンダから排出される。この3の膨張工程時ピストンが下がるときに外部に仕事をし(クランク機構を経て回転力に変換)し、接続された発電機を回転させ、発電する。業務用、工業用途のほか、都市ガスで発電し、そのとき出る熱でお湯もつくり、暖房もできる家庭用のガスコージェネレーションシステムとして使われている。またコージェネレーションの動力としては、この他にガスタービンもある。
【0007】
また、燃料電池とは、「水の電気分解」と逆の原理で発電する発電装置である。水の電気分解は、水に外部からの電気を通して水素と酸素に分解するが、燃料電池は逆に、水素と酸素を化学反応させて電気をつくりだす。通常の電池とは違い、水素と酸素を供給し続けることで継続的に発電しつづけることができる。
主な燃料電池には、1.リン酸形(PAFC)、2.溶融炭酸塩形(MCFC)、3.固体酸化物形(SOFC)、4.固体高分子形(PEFC)の4種類があり、それぞれ電解質、作動温度が異なり、期待できる発電効率にも差がある。部分負荷効率が優れているリン酸形燃料電池が選定としてより好まれる。
【0008】
また、特開2008−154334には、太陽光発電や風力発電等に使用されるパワーコンディショナーにおいて,系統からみた負荷変動を抑制して系統の電圧変動を未然に抑制し、発電電力の抑制を回避することを防止して自然エネルギーを有効活用することを目的とするものであって、発電手段の発電電力が負荷電力を上回り、余剰電力が発生した際に蓄電手段へ所定の充電電流を上限として充電する充電制御手段を備えたパワーコンディショナーにおいて、蓄電手段の放電深度の時系列変動に応じて所定の充電電流を変更して放電深度が上限値あるいは下限値に飽和しないように制御する上限電流変更手段を備えることで、日々変動する負荷電力と発電電力であっても系統からみた負荷を平準化することができることが開示されている。
しかし、系統からみた負荷変動を抑制して系統の電圧変動を未然に抑制する技術、および需要家側のシステムの電圧上昇を防止するパワーコンディショナーについて開示されているが、ガスエンジンと燃料電池の組み合わせについて記載は無く、ガスエンジンと燃料電池の稼動を制御し、変動抑制と電力供給システム全体の発電総合効率の向上を図るものではない。
【0009】
また、特開2009−27861には、追従性能の異なる複数の分散型電源を統合的に制御する分散型電源の制御方法であって、マイクログリッド内に存在する最も負荷追従性能の良い分散型電源1台にのみ、自立的な高速の負荷追従運転を行わせることで、デジタル通信網に対応した制御システムによる負荷追従運転を行うことができる分散側電源の制御方法について開示されているが、発電用ガスエンジンと燃料電池を組み合わせること、燃料電池の負荷を下げて電力供給システム全体の発電総合効率を向上させることについての開示や示唆は無い。
【0010】
また、特開2010−110088には、各分散型電源の運転制御を実施する際に高精度な負荷追従運転を実現することができる分散型電源システムについて開示されているが、電力供給システム全体の発電総合効率の低下を避けるために燃料電池の負荷を下げて、電力供給システム全体の発電総合効率を上げることについての開示や示唆は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−150951号公報
【特許文献2】特開2008−154334号公報
【特許文献3】特開2009−27861号公報
【特許文献4】特開2010−110088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ガスエンジンは部分負荷効率が良くないが、応答性に優れていて、燃料電池は応答性が良くないが、部分負荷効率が優れていることに着目し、この部分負荷効率と応答性のそれぞれの違いを利用してガスエンジンと燃料電池を統合制御することにより、分散型電源の電力供給システムの出力変動を抑制する発電出力制御システムおよび制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の分散型電源の発電出力制御システム、または、制御方法は、少なくとも、発電用ガスエンジンと燃料電池とを組み合わせて統合制御を行う分散型電源の発電出力制御システムであって、該分散型電源の電力供給システムに負荷変動が生じた場合に、商用電力系統接続点の受電点電力の変化に応じて発電用ガスエンジンの発電量および燃料電池の合計発電量が上記負荷への供給電力を一定に維持するように制御する発電出力制御システムにおいて、上記制御が、ガスエンジンの発電量分担割合が最大になるように燃料電池の出力を下げて、上記負荷への供給電力を一定に維持する所要の負荷特性を実現し、上記分散型電源の電力供給システムの変動抑制を行うことを特徴とする。
【0014】
さらに、前記分散型電源の発電システム内に、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを含むことを特徴とする。
またさらに、前記燃料電池は、自らの部分負荷効率が優れている範囲にて制御することを特徴とする。
またさらに、前記発電用ガスエンジンは、再生可能エネルギーや前記燃料電池の立ち上がり時定数を考慮し負荷の瞬間変動に対応すると共に、最も発電効率のよい定格付近で制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の分散型電源の発電出力制御システムおよび制御方法は、その時の電力負荷に対して該分散型電源の電力供給システムの発電総合効率が最大になるように制御するので、エネルギー消費量が最小化され、省エネ効果が最適化される。
また、これにより、エネルギー消費が抑制されるので、系統電力の必要発電量を分散型電源の発電により軽減すると共に、再生可能エネルギーの利用により系統電力消費全体の省エネにも寄与することができる。
また、分散型電源を用いた電力供給システムにおいて出力変動抑制を行うので、電力会社側の商用系統にかかる負荷変動に対する調整能力の負担を軽減させると共に、該電力供給システムの負荷変動抑制を最適な発電総合効率で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の分散型電源の発電出力制御システムの全体概念図を示す。
【図2】図2は、図1の分散型電源の発電出力制御システムにおいて、変動抑制を説明する図である。
【図3】図3は、受電点電力(Pr)が減少した場合の、前記発電用ガスエンジンと燃料電池の出力制御のフローチャートを示す。
【図4】図4は、発電用ガスエンジンと燃料電池の効率特性例を示す。
【図5】図5は、分散型電源の発電出力制御システムにおいて、変動抑制制御に対して発電用ガスエンジンの出力を変化させた場合と本発明の変動抑制制御を行った場合の比較を説明する図である。
【図6】図6は、図5の変動抑制に対して発電用ガスエンジンの出力を変化させた場合と本発明の変動抑制制御を行った場合の電力供給システム全体の発電総合効率の比較を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の分散型電源の発電出力制御システムの全体概念図を示す。
図1において、1は商用電力系統であり、7は分散型電源システム15と商用電力系統1との接続点の受電点電力7(Pr)である。分散電源内電力系統8には、負荷2(Pl)、発電用ガスエンジン3(Pge)、燃料電池4(Pfc)、太陽光発電5(Ppv)が接続されており、それぞれ中央制御装置6とデータ回線が接続されている。本発明においては、負荷2(Pl)と太陽光発電5(Ppv)と受電点電力7(Pr)は、10、13、14(2)、5)、1))に示す如く、中央制御装置6では計測のみを行い、11、12(3)、4))に示す如く、発電用ガスエンジン3(Pge)、燃料電池4(Pfc)のみ計測と共に変動抑制制御を行う。
【0018】
なお、括弧内のPr、Pl、Pge、Pfc、Ppvは、それぞれの電力量(使用電力または発電電力)を示し、これらは下記のごとくなる。
Pl=Pge+Pfc+Ppv+Pr …(式1)
いいかえると、
Pr=Pl―(Pge+Pfc+Ppv) …(式2)
となる。
【0019】
図2は、上記図1の分散型電源の発電出力制御システムにおいて、変動抑制を説明する図である。
前述の如く、分散型電源を用いた電力供給システムでは、再生可能エネルギーの出力変動により電力系統に影響が出ることがある。特に、今後、大量導入が見込まれる太陽光発電が分散型電源に組み込まれる場合、太陽光発電の出力が日射量によって変動し、電力の需要と供給のバランスが崩れるため、周波数変動が生ずる可能性がある。この出力変動の例を図2の18に示す。また、同様に、図1には図示されていないが、風力発電が該電力供給システムに組み込まれた場合も、その時の風力によって発電量が変動するので、事情は太陽光発電の場合と同じである。
上記のように、図2において、太陽光発電5は、天候の影響で出力が大きく変化する。今後、太陽光発電が電力系統に大量導入されると、天候による大幅な出力変動により電力の需要と供給のバランスが崩れる可能性がある。また、負荷の使用電力も刻々変化するため、この電力の需要と供給のバランスが崩れると周波数変動が生じる可能性がある。
【0020】
この周波数変動は、この周波数の数値に依存して動く機械もあるため、50Hz系統では一般的に±0.2Hz以上の周波数変動が生じるのは好ましくない。また、商用系統における負荷変動の補償を電力会社にばかり求めると、電力会社の負荷変動に対する調整能力に大きな負担が掛かる。したがって、近年では、分散型電源を個別の負荷に追従させて運転させることが求められている。
この発明のシステムでは、発電用ガスエンジンを用いて出力変動抑制を行い、商用電力系統への貢献を行う。
【0021】
上記発電出力制御は、図1において、まず、発電用ガスエンジンにより、受電点電力(Pr)の変動抑制を行う。これは発電用ガスエンジンの制御反応速度(立ち上がり特性)がよいので、瞬間的負荷変動によく追従できるからである。
次に、燃料電池発電電力(Pfc)を発電用ガスエンジンの平均発電電力値(Pgea)に応じて下げていき、発電用ガスエンジンの発電電力(Pge)の平均出力を向上させる。
この理由は、以下のとおりである。
【0022】
図4に、発電用ガスエンジンと燃料電池の効率特性を示す。図4(a)を見ると、発電用ガスエンジン(以下、単にガスエンジンという。)は、出力が100%に近づくほど、発電効率がよいことがわかる。
これは、ガスエンジンの仕様が、定格(100%稼動)でもっとも効率の良い設計になっていることと、出力によらず補機の消費電力が一定なため、出力が低下すると相対的に該補機の消費電力が増えるためである。
一方、燃料電池の方は、図4(b)に見られるごとく、出力依存性が殆どなく、発電効率はほぼ一定である。
これは、ガスエンジンの場合と同様、補機の消費電力は出力の減少と共に増大するが、燃料電池は、電流密度が少なくなるほど効率がよくなるため、上記補機の消費電力と上記電流密度による効率の上昇がほぼ均衡し、図4(b)のように、出力に係わらず、ほぼ一定の効率となっている。
【0023】
前記制御動作のフローチャートを図3に示す。
図3は、受電点電力(Pr)が減少した場合の、前記ガスエンジンと燃料電池の出力割り振り制御のフローチャートを示す。
・ 制御開始(S21)すると、
・ まず、ガスエンジンの出力が、受電点電力(Pr)の減少に対応して減少する (S22)。これは、ガスエンジンの応答速度が速く、負荷の変動に直ちに対応で きるからである。
・ 次いで、ガスエンジンの平均出力(Pgea)(例えば、数分程度の平均値)を 算出する(S23)。これは、瞬間的な変動に即応するのは制御がばたつき、制御 系の安定性に欠ける点と、燃料電池の応答性に合わせた出力制御をするためであ る。
・ 上記求められたガスエンジンの平均出力(Pgea)が所定の値Kより大きいど うかが比較される(S24)。
なお、Kは、ガスエンジンの変動抑制の幅と許容できる効率低下の値から決定さ れる。
・ Pgea>Kの場合、そのままの発電状態が継続され、終了となる(S25)。
・ 一方、Pgea≦Kの場合、本発明の発電出力制御が行われ、燃料電池が出力を 減じ(S26)、受電点電力(Pr)が上昇する(S27)ので、ガスエンジンが 出力を増大させる(S28)。このガスエンジンの出力増大によりガスエンジンの 発電効率が向上する。
これによって、受電点における分散型電源の出力を一定に制御するが、相対的に ガスエンジンの発電効率が高まることにより、該電力供給システム全体の発電総合 効率は向上する。
【0024】
これを図式化したのが、図6である。
図6において、図6(a)が、制御前の状態であり、図6(b)は本発明の変動抑制制御を行わず、負荷変動が生じた場合、ガスエンジンの出力を制御(この場合、減少)したものを示す。図6(c)は、本発明の変動制御制御を行った場合の出力状態を示す。
図5は、分散型電源の発電出力制御システムにおいて、変動抑制制御に対してガスエンジンの出力を変化させた場合と本発明の場合の変動抑制制御動作の比較を説明する図である。
図5(a)は、上記ガスエンジンを制御したものであって、負荷の変動(必要な電力)が31の如く変動した場合、必要な電力が燃料電池の発電可能な範囲(32)であれば、燃料電池ですべて発電し(35の箇所)、必要な電力が燃料電池の発電可能な定格上限(34)を超えた場合は、不足分の電力は、ガスエンジンの出力(33)を制御して補っている。
【0025】
一方、本発明の場合は、負荷の変動(必要な電力)が図5(a)と同様に、41の如く変動した場合、必要な電力が燃料電池の発電可能な範囲であったとしても、必要な電力をまず燃料電池の発電効率の低下がない最低のレベル(46)にし、不足分の電力は、ガスエンジンの出力(45)を制御して補っている。
必要な電力が増加したら、まず必要な電力がガスエンジンの出力で発電可能な範囲であれば、ガスエンジンの出力ですべて補い(47の箇所)、必要な電力がガスエンジンの出力の発電可能な定格上限(44)を超えた場合、不足分の電力について燃料電池の出力を制御して補っている(48の箇所)。
すなわち、図5(b)において、ガスエンジン出力(44)は、できるだけ高出力で運転するように制御している。このようにすることで、図4(a)に示すガスエンジンの効率が高められ、該電力供給システム全体の発電総合効率が最大となる。尚、再生可能エネルギーの出力変動に対しても同様の動きとなる。
【0026】
ただし、実際には、負荷の瞬間変動に即応して燃料電池を直ちに制御すると制御がばたつくので、燃料電池はガスエンジンの平均出力(例えば、数分程度)によって制御し、瞬間の負荷変動はガスエンジンの定格内で吸収するため、ガスエンジンは定格付近の出力にて運転する。
【0027】
図6(c)は、本発明の発電出力制御を行った図である、燃料電池の出力は、燃料電池の発電効率の低下が発生しない出力にし、その分ガスエンジンの出力を増大させ、必要な負荷電力を供給したものである。図6(c)の状態移行が、図4(a)、(b)の矢印で示される。図4において、21,24が図6(b)の動作点であり、22,23が図6(c)の動作点である。なお、燃料電池は、一定の出力(この場合、50%)を下回ると極端に効率が落ちるので、最低出力を効率低下が発生しない範囲で決定する。
図6(c)のごとく、ガスエンジンと燃料電池の発電する電力分配を定めると、ガスエンジンの発電効率が最大になるので、燃料電池の効率はほぼ一定なことを考慮すると、該電力供給システム全体の発電総合効率が最大な動作点になる。
【0028】
該電力供給システム全体の発電総合効率は、図6(a)〜(c)に示される。
図6(a)において、負荷が十分な場合(例えば、夜間で太陽光発電が0のような場合)、負荷が十分に存在し、ガスエンジン(GE)と燃料電池(FC)は最大出力で駆動されている。図6(a)の場合(GE:160kW,FC:100kW)、発電総合効率は39.6%((160+100)/((160/40)+(100/39)))となる。なお、図中、(…%)の数値は、出力(%)を示す。
ここで、必要な負荷が減少した場合(例えば、昼間で太陽光発電が寄与し、かつ、負荷そのものが一定な場合)、変動に対してガスエンジンの出力を変化させる方法では、図6(b)に示すごとく、ガスエンジン(GE)の出力が下げられて必要な負荷に対応した電力(この場合、180kW)に対応することになる。この時の該電力供給システム全体の発電総合効率は、34.4%((80+100)/((80/30)+(100/39)))である。
一方、本発明の発電出力制御システムを用いると、当初対応速度の速いガスエンジンが反応するが、徐々に燃料電池の出力を下げ、図6(c)に示すごとく、定格の最低出力(この場合、出力50%)にまで下げていき、必要な負荷に対応した電力(この場合、180kW)は上記と同じにするため、その不足分をガスエンジンの出力増(計130kW)で賄う。この場合の電力供給システム全体の発電総合効率は、38.2%((130+50)/((130/37.5)+(50/40)))となる。
このように、この例の場合、変動に対してガスエンジンの出力を変化させる方法と比較すると、分散型電源を用いた電力供給システム全体の発電総合効率が約4%向上する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
前記の如く、本発明の分散型電源の発電出力制御システムは、上記分散型電源を用いた電力供給システムに再生可能エネルギーの出力変動や負荷変動が生じた場合に、商用電力系統接続点の受電点電力の変化に応じてガスエンジンの発電量および燃料電池の合計発電量が上記負荷への供給電力を一定に維持するように統合制御する発電出力制御システムにおいて、ガスエンジンの発電量分担割合が最大になるように、燃料電池の出力を下げて所要の負荷を実現し変動抑制を行うことにより、ガスエンジンの効率向上を図ることにより、変動抑制制御を行いながら、該電力供給システム全体の発電総合効率を最大にすることが出来るので、省エネおよびコスト低減のため、産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0030】
1 商用電力系統
2 負荷
3 ガスエンジン
4 燃料電池
5 太陽光発電
6 中央制御装置
7 受電点電力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ガスエンジンと燃料電池とを組み合わせて統合制御を行う分散型電源の発電出力制御システムであって、該分散型電源の電力供給システムに負荷変動が生じた場合に、商用電力系統接続点の受電点電力の変化に応じてガスエンジンの発電量および燃料電池の合計発電量が上記負荷への供給電力を一定に維持するように制御する発電出力制御システムにおいて、
上記制御が、ガスエンジンが受電点電力の変動抑制を実施し、またガスエンジンの発電量分担割合が最大になるように燃料電池の出力を下げて、上記負荷への供給電力を一定に維持する所要の負荷特性を実現し、上記分散型電源の発電供給システムの変動抑制を行うことを特徴とする分散型電源の発電出力制御システム。
【請求項2】
前記分散型電源の電力供給システム内に、太陽光発電、または風力発電といった再生可能エネルギーを含むことを特徴とする前記請求項1記載の分散型電源の発電出力制御システム。
【請求項3】
前記燃料電池は、自らの部分負荷効率が優れている範囲にて制御することを特徴とする前記請求項1記載の分散型電源の発電出力制御システム。
【請求項4】
前記ガスエンジンは、再生可能エネルギーや前記燃料電池の立ち上がり時定数を考慮し負荷の瞬間変動に対応するとともに、定格付近で制御することを特徴とする前記請求項1記載の分散型電源の発電出力制御システム。
【請求項5】
少なくとも、ガスエンジンと燃料電池とを組み合わせて統合制御を行う分散型電源の発電出力制御方法であって、該分散型電源の発電供給システムに負荷変動が生じた場合に、商用電力系統接続点の受電点電力の変化に応じてガスエンジンの発電量および燃料電池の合計発電量が上記負荷への供給電力を一定に維持するように制御する発電出力制御方法において、
上記制御が、ガスエンジンが受電点電力の変動抑制を実施し、またガスエンジンの発電量分担割合が最大になるように燃料電池の出力を下げて、上記負荷への供給電力を一定に維持する所要の負荷特性を実現し、上記分散型電源の発電供給システムの変動抑制を行うことを特徴とする分散型電源の発電出力制御方法。
【請求項6】
前記分散型電源の電力供給システム内に、太陽光発電、風力発電といった再生可能エネルギーを含むことを特徴とする前記請求項5記載の分散型電源の発電出力制御方法。
【請求項7】
前記燃料電池は、自らの部分負荷効率が優れている範囲にて制御することを特徴とする前記請求項5記載の分散型電源の発電出力制御方法。
【請求項8】
前記ガスエンジンは、再生可能エネルギーや前記燃料電池の立ち上がり時定数を考慮し負荷の瞬間変動に対応するとともに、定格付近で制御することを特徴とする前記請求項5記載の分散型電源の発電出力制御方法。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−231568(P2012−231568A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97281(P2011−97281)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】