説明

分散多モード表面改質ナノ粒子を含む樹脂系

樹脂成分中のナノ粒子の分散系について述べる。ナノ粒子は、少なくとも第一モードと第二モードを含む多モード粒径分布を有する。第一モードの粒子の数平均粒径は、第二モードの数平均粒径分布より大きい。多モードナノ粒径分布と、第1モードと第二モードの粒子の相対数とを使用して、粒子スタッキング挙動を軽減又は除去することについても述べる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂成分中に分散された多モード粒径分布を有する表面改質ナノ粒子に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
簡単に言うと、一態様では、本開示は、樹脂成分と樹脂成分中に分散された表面改質ナノ粒子とを含む樹脂系を提供する。表面改質ナノ粒子は、少なくとも第一モードと第二モードを含む多モード粒径分布を有する。第一モードは、D1の平均粒径を有し、ここでD1は50ナノメートル以上250ナノメートル以下であり、また第一モードでのナノ粒子数はN1である。第二モードは、平均粒径D2を有し、ここでD2はD1未満であり、また第二モードでのナノ粒子数はN2である。D2に対するD1の比率は1.5より大きく、N1に対するN2の比率は0.5より大きい。
【0003】
幾つかの実施形態では、D2は、15ナノメートル未満であり、N1に対するN2の比率は、1.5より大きい。幾つかの実施形態では、D2に対するD1の比率は、10より大きい。幾つかの実施形態では、N1に対するN2の比率は、1.5以上100以下である。
【0004】
幾つかの実施形態では、D2は、20ナノメートル以上50ナノメートル以下である。幾つかの実施形態では、D1は、60nm以上100nm以下であり、例えば、60以上80nm以下である。幾つかの実施形態では、D2に対するD1の比率は、2〜3である。幾つかの実施形態では、N1対するN2の比率は、1以上2以下である。
【0005】
幾つかの実施形態では、レオロジー試験法にしたがって測定されたとき、樹脂成分は、30℃で100Pa・s未満、例えば、30℃で10Pa・s未満、例えば、30℃で5Pa・s未満の複素粘度を有する。幾つかの実施形態では、樹脂系は、樹脂成分とナノ粒子の全重量に基づいて、少なくとも30重量%、例えば、少なくとも40重量%、例えば、少なくとも45重量%のナノ粒子を含み、樹脂成分中のナノ粒子の分散系は、レオロジー試験法にしたがって測定されたとき、30℃で60Pa・s未満、例えば、30℃で40Pa・s未満、30℃で30Pa・s未満の複素粘度を有する。
【0006】
幾つかの実施形態では、樹脂成分は、硬化性樹脂を含む。いくつかの実施形態では、硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含む。幾つかの実施形態では、樹脂成分は、更に、反応性希釈剤を含む。
【0007】
幾つかの実施形態では、ナノ粒子は、シリカ表面を有するコアを有するナノ粒子を含む。幾つかの実施形態では、ナノ粒子は、シリカ表面に共有結合された第1の群と、樹脂成分の少なくとも1つの構成要素と反応性を有する第2の群とを含む少なくとも1つの表面改質剤を含む。幾つかの実施形態では、樹脂系は、0.5重量%未満の溶剤を含む。
【0008】
別の態様では、本開示は、以上の請求のいずれかによる樹脂系を含む物品を提供し、樹脂系は硬化される。幾つかの実施形態では、物品は、樹脂系が含浸された繊維を含む合成物である。幾つかの実施形態では、樹脂系は、基材の表面の被覆である。
【0009】
上記の本開示の概要は、本発明のそれぞれの実施形態を説明することを目的としたものではない。本発明の1以上の実施形態の詳細を以下の説明文においても記載する。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、その説明から、また「特許請求の範囲」から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】NP−D1−Aナノ粒子の粒径分布(数割合)。
【図1B】NP−D1−Bナノ粒子の粒径分布(数割合)。
【図1C】NP−D2−Bナノ粒子の粒径分布(数割合)。
【図1D】NP−BMナノ粒子の粒径分布(数割合)。
【図2】NP−D1−A粒子とNP−D2−Bナノ粒子の混合物の粒径分布(数割合)。
【図3】BIS−Aエポキシ樹脂中のD1/D2比率が2.3の二モード分布を有する表面改質ナノ粒子のレオロジープロファイル。
【図4】BIS−Aエポキシ樹脂中のD1/D2比率が14の二モード分布を有する表面改質ナノ粒子のレオロジープロファイル。
【図5】種々のエポキシ樹脂系中のD1/D2比率が2.4の二モード分布を有する表面改質ナノ粒子のレオロジープロファイル。
【図6】BIS−Fエポキシ樹脂中のD1/D2比率が2.4の二モード分布を有する表面改質ナノ粒子のレオロジープロファイル。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一般に、樹脂系は、例えば、保護層(例えば、ゲルコートと被覆)や合成物中の含浸樹脂(例えば、繊維複合材)のような種々様々な用途に使用される。樹脂系はしばしば、例えば、硬度、強靱性、耐破壊性などを含め、最終生成物の望ましい機械的特性に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、最終製品の視覚的外観は、清澄性及び曇りのような特性が考慮されねばならないように、重要となる場合がある。更に、処理条件によって、粘度などの加工性に影響を及ぼす特性が好ましい範囲になることがある。最後に、製品の望ましい最終用途は、しばしば付加的要件、例えば、耐浸食性又は耐ブリスターが要求される。
【0012】
熱可塑性樹脂は、様々な用途で使用されてきた。しかしながら、多くの用途(例えば、繊維複合材料)では、硬化性樹脂(例えば、架橋性樹脂)が好まれる。一般に、硬化したとき、硬化性樹脂の熱的及び機械的性質は、熱可塑性樹脂で得られる熱的及び機械的性質より優れている傾向がある。
【0013】
改善された機械的性質を呈する樹脂系を得るために、硬化性樹脂を含む樹脂に、表面改質ナノ粒子が添加されてきた。しかしながら、多くの場合、所望の改善を達成するには、例えば樹脂系の全重量を基準にしてナノ粒子が15重量パーセント(15重量%)を超える高い粒子負荷が必要なことがある。例えば、幾つかの実施形態では、少なくとも25重量%、少なくとも35重量%、更にはもっと高い粒子負荷が望ましいことがある。
【0014】
所望の機械的性質を得るには高い粒子負荷が有効になり得るが、高レベルのナノ粒子を追えると、粒子負荷した樹脂系のレオロジーが悪影響を受けることがある。例えば、高負荷では、樹脂系の粘度が、高くなり過ぎて、ゲル状になることもある。更に、ナノ粒子の存在は、温度、煎断速度又はこれらの両方の上昇と共に粘度を高めることがある。
【0015】
ナノ粒子径が小さいほど、過剰な粘度上昇を防ぐために粒子負荷を低くしなければならないことは周知である。この一般的な理解に反して、本発明者は、より大きいナノ粒子が加えられた樹脂系により小さいナノ粒子を加えることによって、特に高い煎断速度で、粘度上昇の驚くべき著しい減少、更には解消を達成できることを発見した。即ち、相対的粒径及び負荷を適切に選択することによって、多モードナノ粒径分布を選択して、粘度と取扱いに対する悪影響なしに所望の高粒子負荷を達成することができる。
【0016】
樹脂系。
【0017】
本明細書で使用されるとき、用語「樹脂系」は、表面改質ナノ粒子、樹脂成分、及び硬化剤(hardener)、硬化剤、開始剤、助触媒、橋架剤、強靱化剤、賦形剤などの任意の添加要素の組み合わせを指す。本明細書で使用されるとき、用語「樹脂成分」は、樹脂と反応性希釈剤を集合的に指す。
【0018】
樹脂。
【0019】
一般に、本開示の様々な実施形態では、任意の既知の樹脂が使用されてもよい。幾つかの実施形態では、硬化性樹脂が、好ましいことがある。一般に、例えば、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、水分硬化性樹脂、及び拡散剤硬化性樹脂などの任意の既知の硬化性樹脂を使用してよい。有用な硬化メカニズムとして、カチオン硬化、アニオン硬化、付加硬化、及びフリーラジカル硬化が挙げられる。幾つかの実施形態では、より高いガラス転移温度(Tg)の「ガラス状」樹脂(例えば、硬化後に50℃を超えるTgを有する樹脂)が使用されてもよい。硬化前、硬化性樹脂は、モノマー及び/又はプレポリマー(例えば、オリゴマー)として存在してよい。
【0020】
適切な樹脂には、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマリミド樹脂、シアン酸エステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂が挙げられる。いくつかの実施形態では、脂肪族及び芳香族ポリエポキシド樹脂を含む、ポリエポキシド樹脂が使用されてもよい。
【0021】
エポキシ樹脂は、当該技術分野において周知であり、1つ以上のエポキシ基を含有する化合物、又はこれら化合物の混合物を含む。この化合物は、飽和若しくは不飽和であってもよく、脂肪族、脂環式、芳香族若しくは複素環式であってもよく、又はこれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、2つ以上のエポキシ基を含有する化合物(すなわち、ポリエポキシド)が好ましい。
【0022】
使用できるポリエポキシドとして、例えば、脂肪族ポリエポキシド及び芳香族ポリエポキシドの両方が挙げられるが、高温用途においては芳香族ポリエポキシドが好ましい場合がある。芳香族ポリエポキシドは、少なくとも1つの芳香環構造、例えばベンゼン環と、2つ以上のエポキシ基とを含有する化合物である。代表的な芳香族ポリエポキシドには、多価フェノールのポリグリシジルエーテル(例えば、ビスフェノールA誘導体樹脂、エポキシクレゾール−ノボラック樹脂、ビスフェノールF誘導体樹脂、エポキシフェノール−ノボラック樹脂)、芳香族カルボン酸のグリシジルエステル、及び芳香族アミンのグリシジルアミンが挙げられる。例示的なエポキシ樹脂には、ビスフェノールA及びビスフェノールFを主成分とするもの(例えば、Hexion Specialty Chemicals,Inc.,Houston,Texasから商標名EPON(商標)で入手可能なもの)が挙げられる。
【0023】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂は、エチレン性不飽和硬化性樹脂であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂を使用してもよい。いくつかの実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂は、1つ以上のアルコール(例えば、多価アルコール)との、1つ以上のカルボン酸又はこれらの誘導体(例えば、無水物及びエステル)の縮合生成物である。
【0024】
他の実施形態では、ビニルエステル樹脂が使用されてもよい。本明細書で使用される「ビニルエステル」という用語は、エチレン性不飽和モノカルボン酸とのエポキシ樹脂の反応生成物を指す。代表的なエポキシ樹脂には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals,Columbus,Ohioから入手可能なEPON 828)が挙げられる。代表的なモノカルボン酸には、アクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。このような反応性生物はアクリル性又はメタクリル性エステルであるが、用語「ビニルエステル」は、ゲルコート産業で一貫して使用されている。(例えば、Handbook of Thermoset Plastics(Second Edition),William Andrew Publishing,page 122(1998)参照のこと。)
更に他の実施形態では、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(マルチ)(メタ)アクリレート、及びエポキシ(マルチ)(メタ)アクリレートを含め、(メタ)アクリレート樹脂を使用してもよい。本明細書で使用するとき、用語(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを指し、すなわち、エチル(メタ)アクリレートは、エチルアクリレート及び/又はエチルメタクリレートを指す。
【0025】
反応性希釈剤。
【0026】
硬化性樹脂の選択に応じて、いくつかの実施形態では、樹脂システムは更に反応性希釈剤を含んでもよい。代表的な反応性希釈剤として、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、メチルメタクリレート、ジアリルフタレート、エチレングリコールジメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、並びに、その他モノ−及び多官能基(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0027】
エポキシ樹脂の反応性希釈剤には、単官能及び多官能脂肪族及び芳香族グリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals,Columbus,Ohioから商標名HELOXYの入手可能なもの)が挙げられる。例示的な反応性希釈剤には、例えば、トリメチルプロパントリグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジル・エーテル、p−第三級ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0028】
表面改質ナノ粒子。
【0029】
一般に、「表面改質ナノ粒子」は、コアの表面に貼着された表面処理剤を含む。いくつかの実施形態では、コアは実質的に球状である。いくつかの実施形態では、コアは主要粒径が比較的均一である。いくつかの実施形態では、コアは狭い粒径分布を有する。いくつかの実施形態では、コアは実質的に完全に縮合している。いくつかの実施形態では、コアは非晶質である。いくつかの実施形態では、コアは等方性である。いくつかの実施形態では、コアは少なくとも部分的に結晶質である。いくつかの実施形態では、コアは実質的に結晶質である。いくつかの実施形態では、粒子は実質的に非凝集性である。いくつかの実施形態では、粒子は、例えばヒュームドシリカ又は焼成シリカとは対称的に、実質的に非凝集性である。
【0030】
本明細書で使用するとき、「集塊した」とは、通例、電荷又は極性で保持し合った主要粒子の弱い結合を叙述している。集塊した粒子は、典型的には、例えば、液体中の集塊した粒子の分散中に遭遇した剪断力で、より小さな存在物に分解され得る。
【0031】
広くは、「凝集した」及び「凝集体」とは、例えば、化学的残材処理、化学的共有結合、又は化学的イオン結合でしばしば結合される一次粒子の強い会合を説明している。凝集体の、より小さな存在物への更なる分解は、達成するのが非常に困難である。典型的には、凝集粒子は、例えば、液体中の凝集粒子の分散中に遭遇した剪断力で、より小さな存在物に分解されない。
【0032】
本明細書で使用されるとき、用語「シリカナノ粒子」は、シリカ表面を有するコアを有するナノ粒子を指す。これには、実質的に全てのシリカ、並びにシリカ表面を有する他の無機(例えば、金属酸化物)又は有機コアを含むナノ粒子コアが挙げられる。いくつかの実施形態では、コアは金属酸化物を含む。任意の既知の金属酸化物が使用できる。代表的な金属酸化物として、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、バナジア、クロミア、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化亜鉛、セリア、及びこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、コアは、非金属酸化物を含む。
【0033】
市販のシリカは、Nalco Chemical Company,Naperville,Illinoisから入手可能なもの(例えば、NALCO 1040、1042、1050、1060、2326、2327、2329);Nissan Chemical America Company,Houston,Texasから入手可能なもの(例えば、SNOWTEX−ZL、―OL、−O、−N、−C、−20L、−40及び−50);及びAdmatechs Co.,Ltd.,Japanから入手可能なもの(例えば、SX009−MIE、SX009−MIF、SC1050−MJM及びSC1050−MLV)が挙げられる。
【0034】
表面処理剤。
【0035】
本開示で使用されるナノ粒子は、表面処理される。一般に、シリカナノ粒子の表面処理剤は、ナノ粒子の表面に共有結合によって化学的に付着することができる第1の官能基を有する有機化学種であり、付着された表面処理剤は、ナノ粒子の1つ又は複数の特性を変化させる。いくつかの実施形態では、表面処理剤は、コアに付加するために、3つ以下の官能基を有する。幾つかの実施形態では、表面処理剤は、例えば平均分子量1000gm/モル未満の低い分子量を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、表面処理剤は、1つ以上の更なる所望の特性を与える1つ以上の追加の官能基を更に含む。例えば、いくつかの実施形態では、付加官能基を、表面改質ナノ粒子と、樹脂系の1つ以上の付加的な構成要素、例えば、1つ以上の硬化性樹脂及び/又は反応性希釈剤との間に望ましい相溶度をもたらすために選択してもよい。いくつかの実施形態では、樹脂システムのレオロジーを調整、例えば、粘度を増減するように、又は、非ニュートンレオロジー的挙動、例えば、チキソトロピー(ずり減粘)を与えるように、追加の官能基を選択してよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、表面改質ナノ粒子は反応性であり、すなわち、本開示のナノ粒子を表面改質するために使用する少なくとも1つの表面処理剤は、1つ以上の硬化性樹脂及び/又は樹脂系の1つ以上の反応性希釈剤と反応することのできる第2の官能基を含んでもよい。清澄性のために、ナノ粒子は、反応性のときでも、樹脂系の樹脂成分の構成要素とは考えられない。
【0038】
表面処理剤は、多くの場合、ナノ粒子の表面に付着することができる一以上の複数の第1の官能基を含む。例えば、アルコキシ基は、シリカナノ粒子の表面上の自由シラノール基と反応して表面処理剤とシリカ表面との間に共有結合を形成することができる共通の第1の官能基である。複数のアルコキシ基を有する表面処理剤の例には、トリアルコキシアルキルシラン(例えば、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリルレート)とトリアルコキシアリールシラン(例えば、トリメトキシフェニルシラン)が挙げられる。
【0039】
多モード粒径分布。
【0040】
本開示の粒径測定は、透過型電子顕微鏡(TEM)に基づくが、滴定法や光散乱法などの他の方法を使用してもよい。この方法を使用して、ナノ粒子のTEM画像を収集し、画像分析を使用して各粒子の粒径を決定する。次に、幾つかの所定の個々の粒径範囲内にある粒径を有する粒子の数を数えることによって、計数ベースの粒径分布が決定される。次に、あるモードでの数平均粒径を計算することができる。
【0041】
本開示では、ナノ粒子は、多モード粒径分布を達成するように選択される。一般に、多モード分布は、2つ以上のモードを有する分布であり、即ち、二モード分布は2つのモードを呈し、三モードは、3つのモードを呈する。
【0042】
幾つかの実施形態では、表面改質ナノ粒子の多モード分布は、50ナノメートル(nm)以上250nm以下の数平均粒径を有する第一モード(TEMによって決定された)を有する。幾つかの実施形態では、第一モードの平均粒径は、少なくとも50nm、少なくとも60nm、又は少なくとも70nmである。幾つかの実施形態では、第一モードの平均粒径(「D1」)は、150nm以下、例えば、100nm以下、更には80nm以下である。
【0043】
本開示の表面改質ナノ粒子の多モード分布は、また、第二モードを有する。第二モードでのナノ粒子の数平均径は、第一モードのナノ粒子の平均径より小さい。幾つかの実施形態では、第二モードの平均粒径(D2)は、50nm以下、例えば、30nm以下、20nm以下、15nm以下、10nm以下である。幾つかの実施形態では、D2は、少なくとも3nm、例えば、少なくとも5nm、例えば、少なくとも10nm、更には少なくとも20nmである。幾つかの実施形態では、D2は、3nm以上10nm以下である。幾つかの実施形態では、D2は、20nm以上50nm以下である。
【0044】
三モード以上のモードの分布の場合、第一及び第二モードは、その分布の範囲内で粒子の数が最も大きい比率を有する2つのモードと解釈される。次に、以下の説明は、二モード分布並びに三モード以上の分布にも当てはまる。
【0045】
本明細書に記載されているように、第一及び第二モードは互いに、第一モードの数平均粒径(D1)が第二モード数平均粒径(D2)より大きくなるように定義される。幾つかの実施形態では、第二モードの平均粒径に対する第一モードの平均粒径の比率(D1:D2)は、少なくとも1.5:1である。幾つかの実施形態では、D1:D2は、少なくとも2:1、少なくとも4:1、更には少なくとも10:1である。一般に、D1:D2の比率は、20:1以下である。幾つかの実施形態では、D1:D2の比率は、15:1以下、例えば、8:1以下、5:1以下、更には3:1以下でもある。幾つかの実施形態では、D1:D2の比率は、1.5:1〜4:1、例えば、2:1〜3:1ある。幾つかの実施形態では、D1:D2の比率は、10:1〜20:1である。
【0046】
本明細書で使用されるとき、樹脂系中のナノ粒子の重量比率は、ナノ粒径分布のモードの数に関係なく、樹脂系中にある全てのナノ粒子に基づく。一般に、ナノ粒子の重量パーセントは、樹脂系中の樹脂成分とナノ粒子を組み合わせた重量に対して60重量%以下である。幾つかの実施形態では、ナノ粒子は、55重量%以下、例えば、50重量%以下で存在する。幾つかの実施形態では、樹脂系は、少なくとも25重量%、例えば、少なくとも30重量%、更には少なくとも40重量%のナノ粒子を含む。
【0047】
本明細書で使用されるとき、より大きいナノ粒子の数に対するより小さいナノ粒子の数の割合は、第一モードと第二モードでのナノ粒子の総数に基づく。即ち、三モード以上の分布では、第一及び第二モードのナノ粒子だけが検討される。更に、二モード分布の場合でも、多数のナノ粒子は、いずれかのモードにあるナノ粒径の範囲に入らないサイズを有するナノ粒子をある程度含んでもよい。また、そのような粒子は、より大きいナノ粒子に対するより小さいナノ粒子の割合の計算から除外される。
【0048】
ナノ粒子数の割合は、第一モードのナノ粒子の総数(N1)と第二モードの粒子の総数(N2)に基づく。即ち、ナノ粒子の数割合は、二モード分布の両方のモードのナノ粒子数、又は三モード分布以上では最大数のナノ粒子を含む2つのモードのみに基づく。これにより、第一モードでの粒子の数割合は、次のように定義される。
【0049】
NF1=N1/(N1+N2) (1)
第二モードの粒子の数割合は、次のように定義される。
【0050】
NF2=N2/(N1+N2) (2)
一般に、より小さいナノ粒子の数割合(NF2)、即ち、より小さい平均粒径D2を有する第二モードのナノ粒子の数割合は、より大きいナノ粒子の数割合(NF1)、即ち、より大きい平均粒径D1を有する第一モードのナノ粒子の数割合とほぼ等しく、実施形態によってはこの数割合以上のこともある。
【0051】
より大きい粒子の数割合(NF1)に対するより小さい粒子の数割合の比率(NF2)は、より大きい粒子の数に対するより小さい粒子の数の比率と等しい。即ち、次のように表される。
【0052】
NF2/NF1=(N2/(N1+N2))/(N1/(N1+N2)=N2/N1 (3)
本発明者は、ナノ粒子を含む樹脂系の粘度が一般に温度の上昇と共に高まることを確認した。これは、一般に、温度の上昇と共に樹脂自体の粘度が低下するという理解と一致している。しかしながら、ある程度のナノ粒子が加えられた樹脂系の場合、本発明者は、更に、温度の上昇により粘度が最初に低下した後で、更なる温度上昇によりナノ粒子を含む有樹脂系の粘度が驚くほど高くなることがあることを発見した。即ち、温度を高めることによって樹脂自体の粘度が低下するとき、ナノ粒子の存在によって、ナノ粒子含有樹脂系の全体的な粘度を上昇させる新しい流動学的挙動が起こる点に達する。本明細書で使用されるとき、用語「粒子スタッキング」は、この新しい流動学的現象を記述するために使用される。
【0053】
粒子スタッキングを呈するナノ粒子含有樹脂の傾向は、特に、低粘度樹脂で悪化する。低粘度樹脂は、レオロジー試験法によって測定されたときに、30℃で10,000パスカル/秒(Pa/s)未満の複素粘度を有するものと定義される。幾つかの実施形態では、低粘度樹脂は、レオロジー試験法によって測定されたとき、30℃で、1000Pa・s未満、10Pa・s未満、更には1Pa・s未満の複素粘度を有することができる。これと対照的に、粒子スタッキング挙動の存在と傾向は、プレプレグ複合物用途に適したものなど、粘度の高い樹脂ほど著しく抑制される。典型的にプレプレグ形成用途で使用される樹脂系は、レオロジー試験法によって測定されるとき、30℃で10,000Pa・sを越える(例えば、10,000〜100,000Pa・s)の複素粘度を有することができる。
【0054】
樹脂中の特に単モードのナノ粒子の全濃度は、粒子スタッキング挙動が存在する傾向にも影響を及ぼす。ナノ粒子の濃度が低いほど、スタッキング挙動を減少させかつ/又はなくすことができる。しかしながら、粒子スタッキング挙動をなくすのに必要とされるナノ粒子密度の低下が大きすぎて、得られたナノ粒子含有樹脂系の熱的及び/又は機械的性質を望み通り改善できないことがある。
【0055】
本発明者は、ナノ粒子の二モード以上の分布を使用することによって、所望の高い粒子負荷を維持しながら、粒子スタッキング挙動を減少又は解消できることを発見した。一般に、より大きい粒子に対するより小さい粒子の望ましい比率(N2/N1)は、より大きい粒子の直径に対するより小さい粒子の直径の比率(D1/D2)に依存する。比率N2/N1の下限は、典型的には、望ましくない粒子スタッキング挙動(即ち、温度の上昇による粘度の増加、又は原樹脂粘度の低下)をなくすのに必要な最低比率によって設定される。比率N2/N1の上限は、より小さい粒子の存在によって、30℃での複素粘度の望ましくない増大をもたらし、この複素粘度は、樹脂系の加工性及び取扱性と関連したパラメータである。
【0056】
幾つかの実施形態では、N2/N1は、少なくとも0.5、例えば、少なくとも0.8.少なくとも0.9、又は少なくとも1である。幾つかの実施形態では、NF2/NF1は、少なくとも1.5、例えば、少なくとも1.7でよい。幾つかの実施形態では、NF2/NF1は、100以下、例えば、90以下である。幾つかの実施形態では、N2/N1は、3以下、例えば、2以下、更には1.5以下である。幾つかの実施形態では、N2/N1の比率は、1.5以上100以下、例えば、1.8以上90以下である。幾つかの実施形態では、N2/N1の比率は、0.5以上2以下、例えば、0.8以上2以下、更には1以上2以下である。
【0057】
幾つかの実施形態では、本開示の樹脂系は、硬化されてもよい。いくつかの実施形態では、硬化性樹脂は、架橋される。熱エネルギー又は化学線(例えば、紫外線及び電子ビーム照射)への暴露を含む、任意の既知の架橋法が用いられてもよい。幾つかの実施形態では、樹脂系は、硬化剤を含んでもよい。一般に、当業者は、例えば、硬化性樹脂の性質、所望の硬化方法(例えば、熱放射又は化学線)、硬化温度、及び所望の硬化時間に基づいて適切な硬化剤を選択することができる。エポキシ樹脂用の例示的な硬化剤には、例えば、アミンや無水物が挙げられる。
【0058】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂はまた、表面修飾剤と反応してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、表面修飾剤の反応基が、硬化性樹脂と反応、例えば、共有結合してもよい。
【0059】
本開示の組成物の種々の実施形態は、多種多様な用途で使用されてもよい。幾つかの実施形態では、組成物は、例えば風力タービンブレード上の被覆や、例えば乗物(例えば、ボート)上のゲルコートとして、物品の表面に適用されることがある。そのような被覆は、硬化(例えば、架橋)されてもよい。
【0060】
幾つかの実施形態では、本開示の組成物は、例えば、スポーツ用品(例えば、ラケット、釣り竿、ホッケー用スティック、野球用バット、帆船マストなど);風力タービンブレード並びに風力タービンブレードの桁及び桁フランジ;衛星、並びに自動車、船、飛行機及び宇宙船を含む乗物及び乗物部品の製造で使用される複合材を含む繊維複合材を形成するために使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、強化用繊維を組成物で含浸して、複合品を形成してもよい。
【0061】
複合材料は、例えば、樹脂トランスファー成形(RTM)、フィラメントワインディング、トウ配置、樹脂注入プロセス、引き抜き成形プロセス、又は伝統的なプリプレグプロセスを含む、任意の既知の手段を使用して形成されてもよい。次いで、樹脂は、熱エネルギー及び/又は化学線への暴露を含む、任意の既知の手段を使用して硬化されてもよい。
【0062】
概して、繊維複合材料での使用に好適な任意の繊維が使用されてもよい。代表的な繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド繊維、及びポリエチレン繊維が挙げられる。また、材料の組み合わせが使用されてもよい。概して、繊維の形態は、特に限定されない。代表的な繊維形態としては、個々の連続繊維の単一方向配列、織物、編物、毛糸、粗紡、網状構造物、及び不織布マットが挙げられる。
【0063】
試験方法。
【0064】
ガスクロマトグラフィー(GC)法。
【0065】
ガスクロマトグラフィーは、残留溶媒の分析に使用されていた。ガスクロマトグラフィーは、HP−5MSカラムを備えたAGILENT 6890Nガスクロマトグラフを使用して行われた(長さ30メートルと内径320マイクロメートルを有する(5%フェニル)−メチルポリシロキサン(クロマトグラフとカラムは両方とも、Agilent Technologies,Incorporated,Santa Clara,Californiaから入手可能)。以下のパラメータを使用した:1マイクロリットルアリコートの10%試料溶液(GCグレード・アセトン中)を注入した);250℃、9.52psi(65.64kPa)及び111mL/分の総流入量で設定された分離流入モード;9.52psiで設定されたカラム定圧モード(65.64kPa);34センチメートル/秒で設定された速度;2.1mL/分の総ガス流量;検出器とインゼクタの温度は250℃;5分間の40℃での平衡状態後、上昇速度20℃/分で260℃までの温度シーケンス。熱伝導性検出器を使用した。
【0066】
透過型電子顕微鏡法。
【0067】
透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して粒径及び粒径分布測定を行った。粒径と粒径分布を測定するために、供給されたままのナノ粒子ゾルを、1又は2滴のゾルを取ってそれを20mLの脱イオン蒸留水と混合することによって薄めた。薄めた試料を10分間超音波処理し(超音波洗浄器、Mettler Electronics Corp.,Anaheim,CA)、1滴の薄めた試料を、カーボン/ホルムバール・フィルム付きの200メッシュCu TEMグリッド(製品01801,Ted Pella,Inc,Redding,CA)上に置き、周囲条件で乾燥させた。
【0068】
乾燥した試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)(HITACHI H−9000NAR、日立株式会社、東京、日本)を使用して、300kVで、各試料中の粒径に応じて1万倍〜5万倍の倍率で撮像した。画像は、CCDカメラでGatan Digital Micrographソフトウェアを使用して取得した(ULTRASCAN 894,Gatan,Inc.,Pleasanton,CA)。各画像には、較正されたスケール・マーカがあった。
【0069】
粒径は、各粒子の中心を通る単一線を使用して測定され、したがって、測定は、粒子が球状であるという仮定に基づく。特定の粒子が非球状の場合、測定線を粒子の最長軸に通した。それぞれの場合に、個々の粒子に対して、誤差レベル5nmの場合にASTM E122テスト方法で規定された測定数を越える数の測定を行った。
【0070】
熱重量分析(TGA)
TGAを使用して樹脂分散系のシリカ含量を測定した。分散系の約20mgの試料を白金TGAパンに入れた。パンをTGA(Q500、TA Instruments,Inc.,New Castle,DE)に装填し、空気パージガス中で30℃から900℃まで20℃/分の割合で高めた。実行後に、850℃で残っている試料の重量(初期重量の割合として)を不燃材料の重量比率として取得し、シリカ固体である生成物の重量比率として報告した。
【実施例】
【0071】
【表1】

【0072】
比較例1。CE−1を以下のように調製した。
【0073】
1.669部のNP−D1−Aナノ粒子ゾル(水性ゾル中39.5重量%のシリカ)を開頭ステンレス鋼撹拌槽に充填し、撹拌しながら1部のメトキシプロパノールを徐々に加えた。次に、0.01714部のTMPS−を混合物に徐々に加えた。混合物を空気圧駆動式インペラーで30分間攪拌した。
【0074】
熱反応器法。PCT公開番号WO2009/120846 A2に記載されたような27リットの連続流水熱反応器を使用して、シリカ微粒子を表面官能化した。27リットル水熱反応器は、18.3メートルの外径(OD)1.27cmと内径(ID)1.09cmのステンレス鋼管、それに続く12.2メートルのOD 0.95cmとID 0.77cmのステンレス鋼管、それに続く198.1メートルのID 1.27cmの高強度304ステンレス鋼編外装のPTFE滑腔内側管を備えていた。水熱反応器内の油温度を155℃に維持し、TESCOM背圧調整器(TESCOM,Elk River,MN)を2.3MPa(330psig)に維持した。隔膜ポンプ(LDC1 ECOFLOW,American Lewa,Holliston,MA)を使用して、流量を制御し、滞留時間を制御し、それにより水熱反応器内の流量が600ml/分になり、滞留時間が45分になるようにした。連続流水熱反応器からの流出液をHDPEドラムに収集した。
【0075】
5.423部の水熱反応器流出液、1部のメトキシプロパノール、及び1.365部の重量のBIS−Aエポキシ樹脂を、攪拌しながら380リットルのケトルに加えて、供給混合物を作成した。ケトルを25℃に維持し、成分を最低14時間攪拌した。
【0076】
WFE法。混合物を、米国仮出願番号61/181,052(2009年5月26日;代理人整理番号65150US002)に記載されたような、1平方メートルのBUSS FILMTRUDER向流高分子加工機を使用し、BLBシリーズ・ロータリー外平歯車と、化学デューティギアポンプ(Zenith Pumps,Sanford,NC)を使用するワイプドフィルムエバポレータ(WFE)の上入口に計量供給した。WFEロータ(BUSS Filmtruder型)を25馬力、340rpmに設定した。2.5〜2.8kPaのレベルの真空を適用した。供給混合物を表2に示された条件下にした。
【0077】
【表2】

【0078】
約15分間の操作後、ワイプドフィルムエバポレータからの生成流出液を、溶剤を含まない青白い流体の液体材料として分離した。ナノ粒子含有樹脂系は、冷えるにつれて、ねばねばした非流動性の粘着性物質になった。TGA結果から、シリカ固体が、CE−1中に生成されたナノ粒子エポキシ樹脂の49.48重量%であることが分かった。GCによる残留溶媒の分析から、樹脂系中に0.05重量%未満のメトキシプロパノールが残っており、また検出可能な量の水がないことが分かった。
【0079】
実施例1〜3と比較例2。
【0080】
1部のNP−D2−Bナノ粒子ゾル(水性の分散系での41.4%のシリカ)を磁気撹拌バー付きジャーに加えることによって、表面改質シリカゾル(「SOS−1」)を調製した。ジャーを撹拌板上に乗せ、溶液を攪拌して3〜5cmの渦を作成した。1.127部のメトキシプロパノールを0.051部のTMPS−1と混合させた。メトキシプロパノール混合物を、磁気撹拌バーで攪拌しながら、ナノ粒子ゾルを含むジャーに徐々に注ぎ込んだ。ジャーを密閉し、80℃のバッチ炉に16時間入れた。得られた材料(SOS−1)は、19.0重量%の表面改質シリカナノ粒子を含んでいた。
【0081】
7.90部のSOS−1、1部のメトキシプロパノール、及び1.5部のBIS−Aエポキシ樹脂を1000mLの広口丸底フラスコ内で混合して、エポキシ樹脂(「SOSE−1」)中の表面改質シリカナノ粒子の分散系を調製した。試料中の溶剤を、真空レベル約95kPaの真空ポンプ(Precision Scientific,Chicago,Illinois)と接続されたBUCHI ROTAVAPOR R−210(BUCHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerland)によって除去した。丸底フラスコを油浴で最終温度150℃まで徐々に加熱し30分間維持した。
【0082】
エポキシ樹脂(SOSE−1)中の得られた表面改質シリカナノ粒子の分散系にTGAを行ない、シリカ固体を48.8重量%として測定した。GCを使用して、試料が測定可能な水を含まず、メトキシプロパノールレベルが、0.05重量%未満であることを確認した。
【0083】
CE−1のエポキシ分散系中のナノ粒子を、表3に示された量のSOSE−1のエポキシ分散系中のナノ粒子と組み合わせることによって、実施例1(EX−1)と実施例2(EX−2)を調製した。SpeedMixer(商標)デュアル非対称遠心分離器機(Flack Tek Incorporated,Landrum,South Carolinaから入手可能なモデルDAC600 FVZ−sp)DACミキサを2000rpmで30秒使用して試料を攪拌した。30秒後、試料を細い撹拌棒によって約30秒間手動で混合し、高粘度材料が、試料全体に分散し、混合カップの中心底に残っていないようにした。手動混合の後、試料を再びDACミキサ内で2000rpmで30秒間混合した。得られた均一な混合物は、実施例EX−1及びEX−2と呼ぶ。
【0084】
追加量のCE−1をEX−2の分散系と組み合わせることによって、実施例3(EX−3)と比較例2(CE−2)を調製した。表3に示された量のCE−1とSOSE−1の材料を混合することによって、比較例3(CE−3)を調製した。材料を混合し処理するために使用した手順は、実施例EX−1及びEX−2の調製について説明した手順と同じであった。
【0085】
CE−1とSOSE−1のそれぞれのシリカの測定量と、これらの材料を混合した比率とに基づいて、実施例EX−1、EX−2及びEX−3中と、比較例CE−2及びCE−3中のシリカ固体の全重量分率を計算し、表3に示した。
【0086】
【表3】

【0087】
実施例4〜7並びに比較例4及び5。
【0088】
凝縮器、サーモウォッチ及びオーバヘッド撹拌機を備えた5リットルビーカーに、1200グラムのNP−D2−Aシリカナノ粒子ゾル(水性分散系中の17.0重量%シリカ)を入れることによって、表面改質シリカゾル(「SOS−2」)を調製した。媒体撹拌で攪拌しながら、1800グラムの1−メトキシ−2−プロパノールと70.8グラムのTMPS−2の予混合溶液を、約10分間にわたって加えた。得られた均一な溶液を90〜95℃で約20時間加熱した。次に、溶液を蒸留して大部分の水を除去し、溶液を濃縮しながら、約780グラムの1−メトキシ2−プロパノール/水混合物を除去した。得られた材料は、SOS−2であった。
【0089】
3.67部のSOS−2と1部のBIS−Aエポキシ樹脂を混合することによって、エポキシ樹脂(「SOSE−2」)中の表面改質シリカナノ粒子の分散系を調製した。これらの材料をよく撹拌して、次にBUCHIロータリーエバポレータ上で、60分間かけて徐々に150℃の最終放散温度まで加熱し放散させた。エポキシ樹脂(SOSE−2)中の表面改質シリカナノ粒子の得られた分散系にTGAを行ない、シリカ固体を28.5重量%と測定した。
【0090】
表4に示されるように、CE−1とSOSE−2のエポキシ樹脂中の表面改質ナノ粒子の分散系を様々な量で混合することによって、実施例4(EX−4)、実施例5(EX−5)及び実施例7(EX−7)を調製した。CE−1とSOSE−2を混合した方法は、EX−1に関して説明した方法と同じである。
【0091】
CE−1の追加量をEX−5の分散系と混合して実施例6(EX−6)を調製した。表4に示された量のCE−1とEX−7の材料を混合することによって、比較例4(CE−4)と比較例5(CE−5)を調製した。材料を混合し処理するために使用した手順は、実施例EX−1の調製に関して述べたものと同じであった。
【0092】
【表4】

【0093】
比較例6。
【0094】
1.694部のNP−D1−Bシリカナノ粒子ゾル(水中に40.99重量%のシリカ)を開頭ステンレス鋼撹拌槽に充填することによって、比較例6(CE−6)を調製した。次に、1部のメトキシプロパノールを、撹拌しながら徐々に加え、次に0.0185部のTMPS−1を混合物に加えた。混合物を空気圧駆動式インペラーで30分間攪拌した。
【0095】
連続流水熱反応器を使用して、比較例CE−1で述べた水熱反応器法にしたがって微粒子シリカを表面官能化した。水熱反応器内の油温度を150℃に維持し、背圧調整器を2.3MPa(330psig)に維持した。隔膜ポンプを使用して流量を制御し、これにより、27リットルの連続流水熱反応器内の流量が約770ml/分となり、滞留時間が35分となるように滞留時間を制御した。連続流水熱反応器からの流出液をHDPEドラムに収集した。
【0096】
5.407部の水熱反応器流出液、1部のメトキシプロパノール、及び1.351部のBIS−Fエポキシ樹脂を、380リットルケトルに撹拌しながら加えて、供給混合物を作成した。ケトルを25℃に維持し、成分を最低14時間攪拌した。混合物は、LUWA Vicon型ロータを使用したことを除き、比較例CE−1で述べたWFE法によって、ワイプドフィルムエバポレータを使用して処理された。WFEロータは、速度780rpm、15馬力に設定された。供給混合物は、表2に示したWFE条件であった。約15分間操作した後で、生成流出液を、溶剤を含まず青白い流動性の液体原料として分離した。物質が冷えるにつれて、ねばねばした非流動性の粘着性物質になった。
【0097】
TGAから、比較例CE−6として生成されたナノ粒子エポキシ樹脂中のシリカ固体が49.29重量%であることが分かった。GCによる残留溶媒の分析から、エポキシ分散系中のナノ粒子に0.05重量%未満のメトキシプロパノールが残っており、検出可能な量の水がないことが分かった。
【0098】
(実施例8、9及び11)。
【0099】
表面改質シリカゾルSOS−1を作成するために実施例1及び2で述べたものと同じ材料及び同じ方法を使用して、NP−D2−Bナノ粒子ゾルから表面改質シリカゾル(「SOS」)の追加バッチを調製した。
【0100】
表5に示された材料と条件を使用して、以下の手順にしたがって実施例EX−8、EX−9及びEX−11を調製した。
【0101】
NP−D1−Bシリカゾル(水溶液中に41.15重量%のシリカ)を開頭ステンレス鋼撹拌槽に充填して、撹拌しながら1部のメトキシプロパノールを徐々に加えた。次に、TMPS−1表面改質剤を混合物に加えた。混合物は、空気圧駆動式インペラーで30分間攪拌された。
【0102】
実施例EX−8及びEX−11に関して、連続流水熱反応器を使用し、反応器に以下の改良を行ったことを除き、比較例CE−1で述べた水熱反応器法によって、粒子を官能化した。26リットルの連続流水熱反応器は、12.2メートルの0.95cm OD(0.77cm ID)ステンレス鋼管と、それに続く198.1メートルの高強度304ステンレス鋼編組外装の1.27cm ID PTFE滑腔内側管で構成された。水熱反応器内の油温度を155℃に維持し、背圧調整器を2.3MPa(330psig)に維持した。隔膜ポンプを使用して、水熱反応器内の流量を制御して、滞留時間が35分になるようにした。この場合も、連続流水熱反応器からの流出液をHDPEドラムに収集した。
【0103】
実施例EX−9に関して、比較例CE−1で述べた水熱反応器法によって、連続流水熱反応器を使用して微粒子シリカを官能化した。水熱反応器内の油温度を150℃に維持し、背圧調整器を2.3MPa(330psig)に維持した。隔膜ポンプを使用して、水熱反応器内の流量を制御して、滞留時間を35分になるようにした。連続流水熱反応器からの流出液をHDPEドラムに収集した。
【0104】
水熱反応器流出液、1部のメトキシプロパノール、エポキシ樹脂(EX−9ではBIS−Aエポキシ樹脂とH−107反応性希釈液と、EX−8及びEX−11ではBIS−Fエポキシ樹脂)、及び表面改質NP−D2−Bシリカゾルを、380リットルのケトルに撹拌しながら加えて、供給混合物を生成した。ケトルを25℃に維持し、成分を最低14時間攪拌した。
【0105】
LUWAビスコン型ロータを使用したことを除いて、比較例CE−1で述べたWFE法によって、ワイプドフィルムエバポレータを使用して混合物を処理した。WFEロータは、15馬力、速度780rpmに設定された。供給混合物は、表2に示されたWFE条件であった。約15分間操作した後で、生成流出液を、溶剤を含まない青白い流動性の液体原料として分離した。材料は、冷えるにつれて、ねばねばした粘着性物質になった。
【0106】
【表5】

【0107】
(実施例10)
以下の手順を除き、実施例EX−8、EX−9及びEX−11に関して説明した手順にしたがって、実施例EX−10を調製した。
【0108】
1.665部のNP−BMシリカゾル(水性分散系で39.9重量%のシリカ)、1部のメトキシプロパノール、及び0.0221部のTMPS−1表面改質剤を使用して実施例EX−10を調製した。材料は、水熱反応器によって、CE−1で使用された水熱反応器法にしたがって、滞留時間を45分にする600ml/分の流量で処理された。流出液をドラムに収集した。
【0109】
5.352部の水熱反応器流出液、1部のメトキシプロパノール、1.298部のBIS−Aエポキシ樹脂を、380リットルのケトルに撹拌しながら加えて、供給混合物を生成した。ケトルを25℃で維持し、構成要素を最低14時間攪拌した。混合物を、ワイプドフィルムエバポレータ内で、CE−1のWFE法にしたがって、駆動25馬力、速度340rpmのWFEロータで処理した。供給混合物は、表2に示したWFE条件下であった。約15分間操作した後で、生成流出液を、溶剤を含まない青白い流体液体材料として分離した。材料は、冷えるにつれて、ねばねばした非流動性の粘着性樹脂になった。
【0110】
TGA結果から、実施例EX−10のナノ粒子エポキシ樹脂分散系中のシリカ固体が49.15重量%であることが分かった。GCによる残留溶媒の分析から、生成物中に0.05重量%未満のメトキシプロパノールが残っており、検出可能な量の水がないことが分かった。
【0111】
比較例7及び8並びに実施例12。
【0112】
CE−6をEX−11と表6に示されたような様々な量で混合することによって、CE−7、CE−8及びEX−12を作成した。CE−6をEX−11と混合する方法は、CE−1とSOSE−1を混合するためにEX−1で述べた方法と同じである。
【0113】
【表6】

【0114】
樹脂成分中のナノ粒子の分散系の特性決定。
【0115】
透過型電子顕微鏡を使用して、透過型電子顕微鏡法にしたがって、様々な市販のシリカゾルの粒径分布を測定した。図1A〜図1Eに粒径の数割合分布を示す。これらの分布データと得られた曲線を使用して、モードの最小径と最大径(即ち、範囲)を選択することによって、分布のモードを区別した。次に、各モード内の平均粒径と、そのモード内の粒子の数割合とを計算した。幾つかの分布では、区別されたモード内に僅かな粒子がなかった。表7に分布の特徴を示す。
【0116】
【表7】

【0117】
BIS−Aエポキシ樹脂中の2.3のD1/D2比率を有する二モード分布。比較例CE−1、CE−2及びCE−3並びに実施例EX−1、EX−2及びEX−3は、BIS−Aエポキシ樹脂中の二モードNP−D1−Aナノ粒子と大量のより小さい単一モードNP−D2−Bナノ粒子との組み合わせに基づく。図2に示されたように、NP−D2−Bナノ粒子の平均径が、NP−D1−Aナノ粒子のより小さいモード(D2)の平均径とほぼ等しいので、得られた組み合わせは、2.3の直径比(D1/D2)を有する二モード分布になった。NP−D1−A及びNP−D2−B材料の測定分布と各混合物中のそれらの相対量に基づいて、小さい粒子と大きい粒子の数割合を計算した。数割合の計算は、第一モードと第二モードのいずれの範囲内にもない粒子を除外する。分布を表8に示す。
【0118】
レオロジー試験法。
【0119】
各レオロジー実験では、試験した分散系は、表面改質ナノ粒子と樹脂だけを含んでいた。硬化剤は加えられず、したがって、温度上昇と共に粘度上昇が起きたとき、これは硬化メカニズムによるものではない。より正確に言うと、より高い温度でのこの粘度の上昇は、本明細書では、表8のように、「粒子スタッキング」又は単に「スタッキング」と呼ばれる。
【0120】
樹脂成分とナノ粒子含有樹脂系のレオロジー特性分析を、平行プレート形状を有するARES RHEOMETRIC SCIENTIFICレオメータ(TA Instruments,New Castle,Delaware)上で行った。レオロジー特性決定は、平行プレート(25mm)形状とギャップ1mmの動的モードで行った。複素粘度と温度(η対温度)プロットに関して、振動周波数は1Hzであり、測定で使用された歪みは、材料の全体的な粘度に依存していた。BIS−Aエポキシ樹脂のみを含むナノ粒子エポキシ混合物の場合、初期歪が2%の方法を使用し、機器は、トルク測定を機器の感度範囲内に維持するために、実行過程の歪みを最大40%に自動調整した。樹脂成分と、BIS−Fエポキシ樹脂を含むナノ粒子含有樹脂系、又はBIS−Aエポキシ樹脂とH−107反応性希釈剤の組み合わせに関して、初期歪みを25%に設定し、許容最大歪みは100%であった。粒子スタッキングを呈するナノ粒子エポキシ樹脂生成物も、剪断に敏感なレオロジーを示したので、歪みは重要なパラメータである。したがって、試料が粒子スタッキングを呈する場合は、同じ試料に対する2つの異なる剪断方法によって、異なるη対温度曲線が得られる。
【0121】
30℃では、レオロジー試験法によって測定されたとき、BIS−Aエポキシ樹脂の複素粘度は、5Pa・sであった。30℃では、80重量%のBIS−Aエポキシ樹脂と20重量%のH−107反応性希釈剤の混合物の複素粘度は、3Pa・sであった。
【0122】
比較例CE−1、CE−2及びCE−3並びに実施例EX−1、EX−2及びEX−3のレオロジーデータは、レオロジー試験法を使用して得られた。結果を図3に示し、表8にまとめた。
【0123】
【表8】

【0124】
図3に示されたように、小さい直径に対する大きい直径の比率(D1/D2)が2.3の場合、大きい粒子に対する小さい粒子の数割合の比率(NF2/NF1)は、粒子スタッキングをなくすためには0.5より大きく、例えば少なくとも0.8でなければならない。しかしながら、NF2/NF1が高くなるほど、30℃での複素粘度が上昇する。一般に、30℃での複素粘度は、加工性と取扱性を示し、したがって、この粘度の著しい上昇は望ましくない。例えば、4.6のNF2/NF1比率を有するEX−1の粘度は、170Pa・sである。これは、CE−1の粘度の約3.5倍であり、用途によっては高すぎることがある。
【0125】
BIS−Aエポキシ樹脂中の14のD1/D2比率を有する三モード分布。比較例CE−4及びCE−5並びに実施例EX−4、EX−5、EX−6及びEX−7は、BIS−Aエポキシ樹脂中のNP−D1−Aナノ粒子と大量のより小さいNP−D2−Aナノ粒子との組み合わせに基づく。二モード分布のNP−D1−Aナノ粒子に5nm NP−D2−Aナノ粒子を加えると、三モード分布になった。これらの分布では、最多数の粒子は、71nmの平均径(第1モード)と5nmの平均径(第2モード)を有する。これにより、14の直径比率(D1/D2)を有する試料が得られた。小さい粒子と大きい粒子の数割合は、NP−D1−Aナノ粒子の測定分布とNP−D2−Aナノ粒子の想定分布、並びに各混合物中のそれらの相対量に基づいて計算された。第1及び第2モードに入らず、27nmの平均径を有する第3モードに入る粒子を含む粒子は、これらの計算には含められなかった。約9%以下のナノ粒子を計算から除外した。レオロジー試験法を使用してレオロジーデータを収集し、結果を図4に示す。分布及びレオロジー挙動を表9に示す。
【0126】
【表9】

【0127】
図4に示されたように、小さい径に対する大きい径の比率(D1/D2)が14の場合、大きい粒子に対する小さい粒子の数割合の比率(NF2/NF1)は、粒子スタッキングをなくすには、1.2より大きく、例えば少なくとも1.7でなければならない。しかしながら、この場合も、NF2/NF1が大きくなるほど、30℃での複素粘度が上昇する。EX−4と特にEX−5の粘度は、用途によっては高すぎる場合がある。
【0128】
D1/D2の比率が2.4の二モード分布。比較例CE−6並びに実施例EX−8及びEX−9は、様々なエポキシ樹脂中のNP−D1−Bナノ粒子と大量のより小さいNP−D2−Bナノ粒子との組み合わせに基づく。これらの分布では、粒子は、74nmの平均サイズ(第1モード)と31nmの平均サイズ(第2モード)を有するモードに含まれる。これにより、2.4の直径比(D1/D2)を有する試料が得られた。これらの材料の測定分布と各混合物中のそれらの相対量に基づいて、小さい粒子と大きい粒子の数割合を計算した。レオロジー試験法を使用してレオロジーデータを収集し、結果を図5に示す。分布とレオロジー挙動を表10に示す。
【0129】
【表10】

【0130】
図5に示されたように、小さい直径に対する大きい直径の比率(D1/D2)が2.4の場合、30℃での複素粘度の望ましくない上昇なしに粒子スタッキングをなくすには、大きい粒子に対する小さい粒子の数割合の比率(NF2/NF1)が1.4であれば十分である。
【0131】
二モード分布の両方のモードに多数の粒子を有するNP−BMゾルから実施例EX−10を調製した。第一モードは、61nmの平均径(D1)を有した。第一及び第二モードの範囲に含まれないナノ粒子を除外するように標準化されたとき、第一モード(NF1)の粒子の数割合は0.74であった。第二モードは、28nmの平均径(D2)を有した。第二モード(NF2)の粒子の数割合は、0.26であった。この結果、D1/D2の比率は2.2となり、NF2/NF1の比率は0.35になった。BIS−Aエポキシ樹脂においてEX−10を調製した。図5に実施例EX−10のレオロジーを示す。実施例EX−10は、スタッキングを呈さず、30℃で44パスカル秒(Pa・s)の複素粘度を有した。
【0132】
BIS−Fエポキシ樹脂中のD1/D2比率が2.4の二モード分布。比較例CE−7及びCE−8並びに実施例EX−11及びEX−12は、BIS−Fエポキシ樹脂中のNP−D1−Bナノ粒子と大量のより小さいNP−D2−Bナノ粒子の組み合わせに基づく。そのような分布では、粒子は、74nmの平均サイズ(第一モード)と31nmの平均サイズ(第二モード)を有するモードに含まれる。これにより、2.4の直径比(D1/D2)を有する試料が得られた。これらの材料の測定分布と各混合物中のそれらの相対量に基づいて、小さい粒子と大きい粒子の数割合を計算した。レオロジー試験法を使用してレオロジーデータを収集し、その結果を図6に示す。分布とレオロジー挙動を表11に示す。
【0133】
【表11】

【0134】
図6に示されたように、小さい直径に対する大きい直径の比率(D1/D2)が2.4の場合、粒子スタッキングをなくすには、大きい粒子に対する小さい粒子の数割合の比率(NF2/NF1)が0.9より大きく、例えば少なくとも1.1であれば十分である。更に、大きい粒子に対する小さい粒子の数割合(NF2/NF1)が1.5と高い場合でも、30℃で複素粘度の望ましくない上昇がある可能性はない。
【0135】
本発明の様々な改変及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者には明らかとなるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分と、前記樹脂成分中に分散された表面改質ナノ粒子とを含む樹脂系であって、前記表面改質ナノ粒子が、多モード粒径分布であって、
平均粒径D1を有する第一モードであって、D1が50ナノメートル以上250ナノメートル以下であり、前記第一モード内のナノ粒子の数がN1である第一モードと、
平均粒径D2を有する第二モードであって、D2がD1未満であり、前記第二モードのナノ粒子の数がN2である第二モードとを含む多モード粒径分布を有し、
D2に対するD1の比率が、1.5を超え、N1に対するN2の比率が、0.5を超え、
モードにおけるナノ粒子の平均粒径と数が、透過型電子顕微鏡法によって測定される、樹脂系。
【請求項2】
D2が、15ナノメートル未満であり、N1に対するN2の比率が、1.5を超える、請求項1に記載の樹脂系。
【請求項3】
D2に対するD1の比率が、10を超える、請求項2に記載の樹脂系。
【請求項4】
N1に対するN2の比率が、1.5以上100以下である、請求項3に記載の樹脂系。
【請求項5】
D2が、20ナノメートル以上50ナノメートル以下である、請求項1に記載の樹脂系。
【請求項6】
D2に対するD1の比率が、2〜3である、請求項5に記載の樹脂系。
【請求項7】
N1に対するN2の比率が、1以上2以下である、請求項5又は6の樹脂系。
【請求項8】
D1が、60nm以上100nm以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂系。
【請求項9】
前記樹脂系が、反応成分と表面改質ナノ粒子の総重量に対して少なくとも40重量%のナノ粒子を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂系。
【請求項10】
前記樹脂成分が、硬化性樹脂を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の樹脂系。
【請求項11】
前記硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含む、請求項10に記載の樹脂系。
【請求項12】
前記樹脂成分が、更に、反応性希釈剤を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の樹脂系。
【請求項13】
前記樹脂成分が、レオロジー試験法にしたがって測定されたとき、30℃で100Pa・s未満の複素粘度を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の樹脂系。
【請求項14】
前記樹脂系が、前記樹脂成分と前記ナノ粒子の全重量に対して少なくとも30重量%のナノ粒子を含み、前記樹脂成分中の前記ナノ粒子の分散系が、レオロジー試験法によって測定されたとき、30℃で60Pa・s未満の複素粘度を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の樹脂系。
【請求項15】
前記ナノ粒子が、シリカ表面を有するコアを有するナノ粒子を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の樹脂系。
【請求項16】
前記ナノ粒子が、前記シリカ表面へ共有結合された第1の群と、前記樹脂成分の少なくとも1つの要素と反応性を有する第2の群とを含む少なくとも1つの表面改質剤を含む、請求項15に記載の樹脂系。
【請求項17】
前記樹脂系が、0.5重量%未満の溶剤を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の樹脂系。
【請求項18】
前記樹脂系が、硬化された、請求項1〜17のいずれか一項に記載の樹脂系を含む物品。
【請求項19】
前記物品が、前記樹脂系を含浸させた繊維を含む合成物である、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
前記樹脂系が、基板の表面上の被覆である、請求項18に記載の物品。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−519756(P2013−519756A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552938(P2012−552938)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2011/024147
【国際公開番号】WO2011/100289
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】