説明

分散性高分子組成物並びにそれらの調製及び使用のための方法

【課題】治療及び他の目的のための肺デリバリーに特に適した特性を有する超微細乾燥粉末組成物を調製する。
【解決手段】生物高分子の超微細粉末を調製するための方法は、高分子の液体溶液を霧化し、該霧化ステップにおいて形成された液滴を乾燥させ、そして乾燥により生じた粒子を収集することを含む。霧化、乾燥及び収集ステップの各々を正確に制御することにより、治療及び他の目的のための肺デリバリーに特に適した特性を有する超微細乾燥粉末組成物を調製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.発明の分野
本発明は、一般に、高分子組成物並びにそれらの調製及び使用のための方法に関する。特に、本発明は、タンパク質純度を保護し、優れた粉末分散性及び他の要求される特徴を生ずる制御された条件下で噴霧乾燥することにより高分子組成物を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
何年もの間、ヒトの種々の病状を治療するために経口吸入(肺デリバリー)のための薬剤分散を形成するのに適した組成物において特定の薬剤が売られている。これらの肺薬剤デリバリー組成物は、その分散内の活性剤が肺に到達し得るように、薬剤分散の患者による吸入により送り出されるようにデザインされる。肺に送り出された特定の薬剤は肺胞領域を通して直ちに直接血液循環内に吸収される。肺のデリバリーは、特に他の投与の経路により送り出すのが難しい高分子(タンパク質、ポリペプチド、高分子量ポリサッカライド、及び核酸)のデリバリーのために有望である。このような肺のデリバリーは、肺の病気を治療するために、全身性のデリバリーについて及び局所的なデリバリーについて有効であり得る。
【0003】
肺薬剤デリバリーは、それ自体、異なるアプローチ、例えば液体ネブライザー、エーロゾル系計量投与吸入器(MDI's)、及び乾燥粉末分散装置により達成することができる。エーロゾル系MDI's は、オゾン層へ悪影響を与えることにより禁止されるクロロフルオロカーボン(CFC's)の使用によるので有利性を失っている。CFC エーロゾル技術に依存しない乾燥粉末分散装置は、乾燥粉末として直ちに調剤することができる薬剤をデリバリーするために有望である。多くの他の状態では不安定な高分子は、それ自体で又は適切な粉末担体と組み合わせて凍結乾燥され又は噴霧乾燥された粉末として保存することができる。
【0004】
しかしながら、乾燥粉末として医薬組成物を送り出す能力は、特定の点で問題がある。多くの医薬組成物の投与はしばしば重大であるので、乾燥粉末デリバリーシステムが正確、精密かつ信頼できるように意図した量の薬剤をデリバリーすることが要求される。更に、多くの医薬組成物は極めて高価である。これにより、薬剤の最小の損失で乾燥粉末を有効に調剤し、処理し、パッケージングし、そしてデリバリーする能力が重要である。肺の中での天然の高分子の透過性は公知であるが、高分子生産プロセス及び高分子デリバリーの組み合わせた無効性は、肺デリバリーのための乾燥高分子粉末の商業化を限定する。
【0005】
乾燥粉末薬剤の肺デリバリーのための特に有望なアプローチは、加圧気体の源を供するためのハンドポンプと共にハンド・ヘルド装置を利用する。その加圧された気体は粉末分散装置を通して急に放出され、そしてその分散された粉末が患者の吸入のために利用される。多くの点で有利であるが、このようなハンド・ヘルド装置はいくつかの他の点で問題がある。デリバリーされる粒子は通常、5μm未満の大きさであり、より大きな粒子より粉末の取り扱い及び分散をより難しくする。その問題は、主動ポンプを用いて利用できる比較的少量の加圧気体により悪化される。特に、ベンチュリ管分散装置は、ごく少量の加圧気体をハンドポンプで利用する場合に分散するのが難しい粉末に不適切である。手で支える及び他の粉末デリバリー装置のための他の要求は有効である。肺のデリバリーのための最適な大きさの分散で患者に薬剤をデリバリーすることにおける高い装置有効性が市販の製品について本質的である。薬剤を送り出すのに用いられる慣用的な技術は、商業化のために要求されるデリバリー効率を有さない。適切な分散と少い分散容量との両方を達成する能力は粉末にされた組成物の各々の単位投与量が直ちにかつ信頼できるように分散されるべきことを要求する大きな技術的チャレンジである。
【0006】
噴霧乾燥は種々の液体及びスラリー出発材料から乾燥粒状固体を作り出すのに用いられる慣用的な化学的処理単位操作である。乾燥粉末医薬の調剤のための噴霧乾燥の使用は周知であるが、通常、熱分解及び他の厳密な処理条件によりセンシティブでない低分子及び他の安定な薬剤に限定されている。生物高分子組成物、例えば、タンパク質、ポリペプチド、高分子量ポリサッカライド、及び核酸の調製のための噴霧乾燥の使用は、これらの高分子はしばしば不安定であり、高い温度及び噴霧乾燥プロセスの他の態様にさらした時に分解されるので問題であり得る。高分子の過剰の分解は、必要な純度を欠く薬剤を導き得る。噴霧乾燥により作られる組成物において粒子の大きさ及び粒子の大きさの分布を制御するのも困難であり得る。肺デリバリーのために、平均粒径を5μm未満、好ましくは 0.4μm〜5μmの範囲に維持し、そして標的の大きさの範囲外の粒子を含む組成物の量を最小にすることが重大である。好ましくは、少くとも90重量%の粉末が 0.1μm〜7μmの範囲の粒径を有するであろう。より好ましくは、少くとも95%が 0.4μm〜5μmの範囲の粒径を有するであろう。更に、最終粒状産物において、特に経済的に、物理的及び化学的安定性のために要求される必要な低水分含量を達成することが時々困難であり得る。最後に及びおそらく最も重要なのは、有効に肺デリバリーに必要な小さな粒子を作り出すことが困難であることである。高価な高分子薬剤について、収集効率(即ち使用可能な形態においてそのプロセスから回収された粒状薬剤の量)は80重量%超、好ましくは90重量%超、そして必要に応じて95重量%超であるべきである。噴霧乾燥は以下に記載されるように研究室規模の装置において、高分子の粉末を調製するのに用いられているが、市販の噴霧乾燥株は肺の大きさの範囲で粉末を作り出すようデザインされていない、霧化、噴霧乾燥及び収集のための方法は、肺のデリバリーのための要求される製品の特徴のタンパク質粉末を、十分な収率でかつ商業的に許容される生産率(1時間当り30g超)でタンパク質粉末を経済的に生産するよう改良されなければならない。
【0007】
それゆえ、肺及び他の薬剤デリバリーに用いるための高分子の噴霧乾燥のための改良された方法を提供することが要求される。特に、上述の欠点の少くともいくつかを扱う改良された方法及び粉末組成物を提供することが要求される。
【0008】
2.背景技術の記載
米国特許第 5,260,306号及び第 4,590,206号、GB 2105189、及びEP 072046 は小さな粒子、好ましくは肺のデリバリーのための2〜15μmの範囲の粒子を形成するためにネドクロミルナトリウム(nedocromil sodium)を噴霧乾燥するための方法を記載する。米国特許第 5,376,386号は、肺薬剤デリバリーのための粒状のポリサッカライド担体の調製を記載する。ここでその担体は、5〜1000μmの大きさで1.75未満のルゴシティー(rugosity) を有する粒子を含む。Mumenthaler ら(1994)(Pharm. Re. 11 : 12) は、組換えヒト成長ホルモン及び組換え組織型プラスミノーゲンアクティベーターを記載する。その研究は、タンパク質が噴霧乾燥の間に分解し得、これにより治療に用いるために十分な活性を保持することができないことを証明した。WO95/23613は、研究室規模の装置を用いて噴霧乾燥することによりDNase の吸入用粉末を調製することを記載する。WO91/16882は、リポソーム担体においてタンパク質及び他の薬剤を噴霧乾燥するための方法を記載する。
【0009】
本願の譲受人に譲渡された以下の出願:1995年4月14日に出願された出願番号08/423,515;1994年3月7日に出願された出願番号08/207,472の一部継続出願である出願番号08/383,475;出願番号08/044,358の継続出願である現在放棄されている1995年4月4日に出願された出願番号08/417,507の一部継続出願である1995年4月14日に出願された出願番号08/472,563;現在放棄されている出願番号07/953,397の継続出願である1994年4月25日に出願された出願番号08/232,849は、生物高分子の乾燥粉末を調製するのに用いることができる。WO94/07514は通し番号07/953,397から優先権を主張する。WO95/24183は通し番号08/207,472及び08/383,475から優先権を主張する。
【発明の概要】
【0010】
本発明によれば、生物高分子を噴霧乾燥するための方法は、従来の噴霧乾燥プロセスに関しての上述の欠点の少くともいくつかを克服する改良された特徴を有する医薬組成物を提供する。本発明の方法は、所定濃度の高分子及び任意に他の賦形剤を、溶液、スラリー、懸濁液等として、液体媒体中、通常水溶液のような水中で供することを含む。高分子は、治療に有効な投与量を供し、乾燥の間の分解を阻害し、粉末分散性を促進し、そして室温での粉末の許容される物理的及び化学的安定性を達成するのに必要とされるように、適合可能な賦形剤、例えば糖、緩衝液、塩、及び他のタンパク質と共に溶液中で任意に調剤される。液体媒体は、所定値又はそれ未満の平均粒径を有する液滴を形成するように選択された条件下で霧化され、そして次にその液滴は所定のしきい値レベル未満の水分含量を有する製剤の粒子を形成するように選択された条件下で乾燥される。乾燥された粒子は収集され、使用に適した形態、典型的には単位投与容器内にパッケージングされる。噴霧及び乾燥する条件は、好ましくは、それら粒子が単一乾燥ステップにおいて標的水分含量未満に乾燥し得るように、及びそれら粒子がパッケージングの前に粒子を更に分離(例えば大きさの分類づけ)しなければならないことのない要求される大きさの範囲で生産されるように選択されるであろう。
【0011】
本発明の方法の第1の好ましい態様において、(高分子及び賦形剤を含む)液体媒体中の全固体成分は10%未満、通常 0.5重量%〜10重量%の範囲であろう。好ましくは、その濃度は、約1重量%〜5重量%の範囲であろうし、そしてその液体媒体は水溶液を含むであろう。5%未満の全固体の濃度の制御は、要求される大きさの範囲、即ち5μm未満、好ましくは 0.4μm〜5μmの範囲の乾燥粒子を得る能力を大きく増加させることが見い出された。
【0012】
本発明の方法の第2の好ましい態様において、溶液は、11μm又はそれ未満の中央液滴サイズを有する液滴を作り出すように霧化される。噴霧装置デザイン及び作動条件の最適化により固体成分は上述のレベルまで増加し、高容量生産を実用的かつ経済的にし得る。好ましくは、霧化ステップは、所定の気体:液体質量流比、好ましくは5超で2流体ノズルを適して溶液及び霧化気体流を流すことにより行われる。空気口の上流の気圧は25psig超に維持される。この気圧は音速を生ずるものより上である、即ちその速度は高速を超えて増加し続けないが、より高圧の霧化気体の密度の増加は形成される液滴の大きさを減少させる。
【0013】
本発明の方法の他の態様において、霧化液滴は乾燥されて5重量%未満の最終水分含量を有する粒子を形成する。好ましくは、粒子は、単一乾燥工程をおいてこのレベルまで乾燥され、典型的には粒子が乾燥工程から収集される前に、粒子中の水を要求されるレベルまでエバポレートするのに十分な熱エネルギーを有する加熱された気体流と一緒に液滴が流れる単一噴霧乾燥工程内で乾燥される。通常、加熱された気体流、典型的には加熱された空気の流れは、乾燥させる高分子により、少くとも90℃、好ましくは少くとも 120℃、より好ましくは少くとも 135℃そしてなお更に好ましくは少くとも 145℃、そしてしばしば 175℃、又は 200℃程度の高温の入口温度を有するであろう。少くとも一部分、加熱された気体乾燥流の入口温度は処理される生物高分子の不安定性によるであろう。インスリンの典型的な場合、 140℃〜150 ℃の範囲の入口温度が好ましい。
【0014】
乾燥工程において形成された粒子の最終的な水分を制御するために、気体出口の温度を制御することも要求される。気体出口の温度は、入口温度、(液体媒体の入口温度、エバポレートされるべき水の量等に依存する)製品乾燥ステップにより加えられる熱的負荷、及び他の因子の関数であろう。好ましくは、気体出口の温度は少くとも50℃又はそれ超、好ましくは少くとも70℃、通常60℃〜80℃の範囲に維持されよう。
【0015】
本発明の方法の更に他の特定の態様において、乾燥条件は動力分散性を増強するために粒子形態を制御するよう選択されるであろう。特に、乾燥条件は、少くとも2のルゴシティーを有する粒子を供するように選択される。ルゴシティーは表面回旋(surface convolution)の基準であり、大きい数字は高い程度の表面不規則性を示す。いずれの方法によっても本発明の範囲を限定するつもりはないが、ルゴシティーにより示される表面不規則性の増加は隣接粒子間の凝集性を減少させる。このような表面相互作用の減少は、次に生じた粉末の分散性を改善する。粒子のルゴシティーは、個々の液滴の乾燥比率及び溶かした固体の組成の両方に影響される。
【0016】
液滴は、最初、その液滴の外側の周囲の材料の粘性の層を作り出すであろう比較的高い比率で乾燥される。乾燥を続けるにつれて、その粘性層は溶媒の蒸発による粒子の収縮ほど迅速に流れることができない。その粘性層の粘度はWLF 等式(Williams, Landel, Ferry Equation) (K. Alexander & C. J. King, Drying Technology, Vol. 3, No. 3, 1985) により材料のガラス転移温度に関連づけられている。乾燥ゾーン内での温度勾配は、粒子が破壊されるほど迅速に進行することなく表面破壊及び回旋を生ずるのに十分に迅速に粒子乾燥が行われるように制御されるべきである。
【0017】
本発明の方法のなお更なる特定の態様において、乾燥した粒子は、気体流からの、乾燥ステップの全体の粒子の産出量を実質的に分離することにより収集される。霧化及び乾燥条件の正確な制御は、 0.1μm〜7μmの範囲の大きさの粒子の量を少くとも90%、より好ましくは 0.4μm〜5μmの範囲の大きさを少くとも95%有する乾燥粉末を作り出すことができ、これによりパッケージングの前にその生成物を大きさで分類する必要なく乾燥ステップの産出物が集められ、粉末が用いられることを許容する。次に集められた粉末は、粉末状医薬のためのいずれかの慣用的な様式で用いることができる。通常、粒子産出物の一部分は適切な容器、例えば乾燥粉末吸入器内で役立つ単位投与容器内にパッケージングされるであろう。
【0018】
本発明の方法のなお他の特定の態様において、粉末分離ステップは、分離を通して全体の気体流を通過させることを含むであろう。ここでその分類器はその気体流から少くとも約90重量%の1μmの大きさを有する粒子を除去する。分離器は、本発明の方法により製造された超微細粒子のための必要な高い除去効率を作り出す条件下で特定にデザインされ作動される高効率サイクロンを含み得る。あるいは、分離器は、フィルター要素例えば焼結金属ファイバーフィルター、膜フィルター(例えばバッグフィルター)等を含み得る。
【0019】
本発明の方法は、生物分子、典型的には医薬としての使用、即ちヒト及び獣医学的目的のための薬剤としての使用に適した高分子の乾燥粉末を作り出すために役立つ。生物高分子には、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、高分子量ポリサッカライド(典型的には2kD超の分子量を有するもの)、核酸等を含む。特定の生物高分子は以下の表1に記載される。本方法は、特に、約 7.5kD又はそれ超の分子量を有するポリペプチドホルモンであるインスリンの乾燥粉末を作り出すのに役立つ。本発明により調製されたインスリン粉末は、動物源、例えばウシインスリンから得ることができ、又は組換えで調製することができる。組換えインスリンは、天然のヒトインスリンのそれと同一のアミノ酸配列を有し得、又は要求されるインスリン活性を維持しながらある程度まで改良することができる。
【0020】
本発明による組成物は、肺デリバリー、即ち患者の肺の肺胞領域内への患者の吸入を意図した分散性高分子粉末を含む。本組成物は、10μm未満の平均粒径及び2超、好ましくは3超、及び時々5超、通常2〜6の範囲、好ましくは3〜6の範囲、及び時々4〜6の範囲のルゴシティーを有する粒子を含む。好ましくは、本組成物の粒子は、5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、及び典型的には2重量%未満の水分を有するであろう。ルゴシティーは、BET 又は他の慣用的な粒子表面分析技術により測定することができる。好ましくは、本組成物の90重量%は 0.1μm〜7μmの範囲の粒径を有し、より好ましくは95%が 0.4μm〜5μmの範囲の粒径を有する。本組成物は、しばしば、治療に有効な量の組成物が単位投与容器、例えばブリスターパック、ゼラチンカプセル等内に存在する単位投与量としてパッケージングされよう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の方法の最初のユニット工程を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明による典型的な方法を行うのに適したシステムを示すより詳細なフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の方法の霧化ステップを行うのに役立つ好ましい霧化を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明の方法の分離ステップを行うための図2のシステムのための他の装置である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、種々の治療的及び臨床的目的のために患者への肺デリバリーを主に意図した生物高分子の超微細乾燥粉末を含む組成物を調製するための方法に関し、ここで本発明の第1の態様は、意図した目的のために粉末の使用を強化する粉末の特徴の制御に関する。本発明の第2の態様は、組成物自体及びパッケージングされた組成物、特に本組成物の単位投与形態を含むものに関する。本発明の第3の態様は、所定の薬剤の市場の要求を満たし得る規模において要求される特徴の粉末を生産するための詳説される方法の能力に関する。
【0023】
用語“生物高分子”は、治療の及び他の有用な活性を有する周知の及び将来の生物学的化合物を含むことを意図する。生物高分子は、典型的には、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、核酸、及び比較的高重量のポリサッカライドであろう。そして本発明の方法は、これらの化合物を、要求される特徴、特に肺デリバリーのための特徴を有する超微細乾燥粉末に変えることができる。本発明の方法により超微細乾燥粉末として調製するのに適した生物高分子のいくつかの例を以下の表1に示す。これらの生物高分子は、最初に、蒸発性液体媒体内に可溶化し、懸濁し、又は分散させられ、それは次に本発明の方法により霧化され、乾燥され、そして収集されるであろう。好ましい生物高分子は、インスリン、インターロイキン−1レセプター、副甲状腺ホルモン(PTH−34)、α−1−アンチトリプシン、カルシトニン、低分子量ヘパリン、ヘパリン、インターフェロン、及び核酸を含む。本発明の方法を用いるインスリン組成物の調製についての詳細な例は以下の実験セクションに示す。
【0024】
【表1】

【表2】

【0025】
用語“超微細粉末”とは、以下に記載の特徴を有する複数の別個の乾燥粒子を含む粉末組成物を意味する。特に、乾燥粒子は5μm未満、より好ましくは 0.4〜5μmの範囲、好ましくは 0.4〜4μm、そして最も好ましくは 0.4〜3μmの範囲の平均粒径を有するであろう。粉末の平均粒径は、慣用的な技術により質量平均直径(mass mean diameter) (MMD) として測定されるであろう。特定の粉末サイジング技術は遠心沈降粒子サイズアナライザー(Horiba Capa 700)を用いる。粉末は、吸入装置内に直ちに分散することができ、次に粒子が肺の肺胞領域内に浸透することができるように患者により吸入され得る。
【0026】
本発明に特に重要なのは、本方法により作られた超微細乾燥粒子組成物は、全身に作用するタンパク質の肺デリバリーのために肺の肺胞領域を標的とすることができる粒径分布を有するであろう。これらの組成物は、有利には、単位投与及び更なるサイズ分類のない他の形態に組み込まれ得る。通常、超微細乾燥粉末は、その粉末の少くとも90重量%が 0.1μm〜7μmの範囲の平均径を有する粒子を含み、好ましくは少くとも95%が 0.4μm〜5μmの範囲の粒子を含むであろうサイズ分布を有するであろう。更に、その粒径分布は極めて小さな平均径、即ち 0.4μm未満の粒子の過剰な量を有することを避けることが要求される。
【0027】
逆に、ぜんそく及び慢性気管支炎の治療のために吸入される治療化合物の周知の粉末は、気道内(即ち肺胞領域でない)でより中心にデリバリーされることを必要とする。これらの粉末は、平均直径3〜10μmを有するかなり大きな粒径分布でエーロゾルを作り出すことができる。この大きさの粉末は、肺デリバリーのための最適粒径を有する粉末より慣用的な噴霧乾燥器において高収量でよりすぐに収集されるであろう。
【0028】
用語“乾燥”とは、粉末の粒子が、粉末が室温での保存において物理的及び化学的に安定であり、吸入装置内で直ちに分散してエーロゾルを形成するような水分を有することを意味する。通常、粒子の水分は、10重量%未満、通常5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは2重量%未満、そして任意に約1重量%又はそれ未満の水分である。水分は、通常、以下に詳細に記載されるように、乾燥条件により制御されるであろう。
【0029】
用語“乾燥”とは、粉末の粒子が、その粉末が吸入装置内で直ちに分散することができてエーロゾルを形成するような水分を有することを意味する。通常、粒子の水分は10重量%未満、通常5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは2重量%未満、そして任意に約1重量%未満の水分である。水分は、通常、以下により詳細に記載されるように、乾燥条件により制御されるであろう。しかしながらいくつかの場合、生物高分子を分散させるために非水性媒体を用いることができ、この場合、水分は0に近づき得る。
【0030】
用語“治療に有効な量”は、予想される生理的反応を供することが必要とされる組成物中に存在する量である。この量は、ケース・バイ・ケースにより各々の薬剤について決定される。用語“生理的に有効な量”とは、要求される緩和又は治癒的効果を与えるように患者にデリバリーされる量である。この量は、各々の薬剤及びその最終的に認められる投与レベルについて特定される。
【0031】
活性な医薬の治療に有効な量は、用いる生物高分子の生物活性及び単位投与形態中に必要とされる量により組成物において種々であろう。問題の粉末は分散性であるので、それらは、調剤者による及び消費者による直ちの操作を許容する様式で単位投与形態で製造されることが極めて好ましい。これは、一般に、単位投与量は乾燥粉末組成物中で約 0.5mg〜15mg 、好ましくは約2mg〜10mgの全ての材料であろうことを意味する。一般に、組成物中の高分子の量は、約0.05重量%〜約99.0重量%で種々であろう。最も好ましくは、組成物は約 0.2重量%〜約97.0重量%の高分子であろう。
【0032】
医薬として許容される担体は、任意に、必要な患者への本組成物の均一な肺デリバリーを増強するように安定性、分散性、コンシステンシー及び/又はバルキング特性を与えるために粒子内に(又は粒子のためのバルク担体として)組み込まれ得る。用語“医薬として許容される担体”とは、その担体が、肺に大きな逆の毒物効果を与えることなく肺に入ることができることを意味する。数字的には、その量は、用いる薬剤の活性により、約0.05重量%〜約99.95 重量%であり得る。好ましくは、約5重量%〜約95重量%が用いられるであろう。
【0033】
これらの医薬として許容される担体は、1つ又は2もしくはそれ超の医薬賦形剤の組合せであり得るが、一般的には、実質的にいずれの“浸透エンハンサー”もないであろう。浸透エンハンサーは、粘膜又はライニングを通しての薬剤の浸透を促進する表面活性化合物であり、鼻内、直腸内、及び腟内製剤における使用について提案されている。典型的な浸透エンハンサーは、胆汁塩、例えばタウロコレート、グリココレート、及びデオキシコレート;フシデート(fusidate) 、例えばタウロデヒドロフシデート;及び生物適合性界面活性剤、例えば Tweens, Laureth−9等を含む。しかしながら、肺のための製剤における浸透エンハンサーの使用は、肺内の上皮の血液関門がこのような表面活性化合物により悪影響を受け得るので一般に一要である。本発明の乾燥粉末組成物は、浸透エンハンサーを用いる必要なく肺内に直ちに吸収される。
【0034】
本発明における担体として役立つ医薬賦形剤の型は、安定剤、例えばヒト血清アルブミン(HSA) 、バルキング剤、例えば炭水化物、アミノ酸及びポリペプチド;pH調節剤又は緩衝液;塩、例えば塩化ナトリウム;等を含む。これらの担体は、結晶性もしくはアモルファス形態であり得、又は2つの混合物であり得る。
【0035】
HSA は、それは改良された分散性を供する点で担体として特に価値あることが見い出されている。
【0036】
本発明の粉末と組み合わせることができるバルキング剤は、適合可能な炭水化物、ポリペプチド、アミノ酸又はそれらの組合せを含む。適切な炭水化物は、モノサッカライド、例えばガラクトース、D−マンノース、ソルボース等;ジサッカライド、例えばラクトース、トレハロース等;シクロデキストリン、例えば2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン;及びポリサッカライド、例えばラフィノース、マルトデキストリン、デキストラン等;アルジトール、例えばマンニトール、キシリトール等を含む。炭水化物の好ましい群は、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、マルトデキストリン、及びマンニトールを含む。適切なポリサッカライドは、アスパラタム(aspartame) を含む。アミノ酸は、アラニン及びグリシンであるが、グリシンが好ましい。
【0037】
本発明の組成物の少量構成物である添加物は、噴霧乾燥の間のコンホメーションの安定性のため及び粉末の分散性を改善するために含まれ得る。これらの添加物は、疎水性アミノ酸、例えばトリプトファン、チロシン、ロイシン、フェニルアラニン等を含む。
【0038】
適切なpH調節物又は緩衝剤は、有機酸又は塩基から調製した有機塩、例えばクエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム等を含むが、クエン酸ナトリウムが好ましい。
【0039】
本発明の方法は、分散可能であり、そして更に取り扱い及びパッケージング工程の間の凝集作用及び不要な密集化に耐える粒子を供することが見い出されている。これらの改良された分散性及び取り扱い特性に直接関係することが見い出されている特定の特徴は、生産物ルゴシティー(product rugosity)である。ルゴシティーは(BET 、分子表面吸収:又は他の慣用的技術により測定した)特定領域と(遠心沈降粒径分析器、Horiba Capa 700 により測定した)粒径分布及び(ピクノメトリーにより測定した)粒子密度から計算した表面領域との比であり、非多孔性球状粒子を仮定する。噴霧乾燥の場合でそうであるように、粒子が全体的にこぶ状の形であることが知られているなら、ルゴシティーは表面の回旋又はホールディングの程度の基準である。これは、SEM 分析により、本発明により作られた粉末について確認することができる。1のルゴシティーはその粒子表面が球状かつ非多孔性であることを示す。1より大きいルゴシティー値は、その粒子表面が不均一で少くともある程度、回旋していることを示し、より高い数字はより高い程度の不均一性を示す。本発明の粉末について、粒子は好ましくは少くとも2、より好ましくは少くとも3、通常2〜6の範囲、好ましくは3〜6、そしてより好ましくは4〜6の範囲のルゴシティーを有することが見い出されている。
【0040】
分散性乾燥粉末生物高分子の肺デリバリーのための単位投与形態は、上述の乾燥粉末を含む単位投与容器を含む。粉末は、単位投与処理のための薬剤を患者に与えるのに十分の量で適切な投与容器内に入れられる。投与容器は、気体流内に分散により乾燥粉末組成物をエーロゾル化してエーロゾルを形成し、次にそのように作られたエーロゾルを、後の治療の必要な患者による吸収のために取り付けられたマウスピースを有するチャンバー内に捕獲することを許容するために適切な吸入装置内に適合するものである。これらの投与容器は、乾燥粉末組成物を分散させるように気体(例えば空気)の流れが容器内に向けられるのを許容する取りはずし可能な部分と共に、ゼラチン又はプラスチックカプセルのような当該技術で周知の組成物を包むいずれかの容器を含む。これらの容器は、1980年10月14日に発行された米国特許 4,227,522号;1980年3月11日に発行された 4,192,309号;及び1978年8月8日に発行された 4,105,027号に示されるものにより例示される。適切な容器は、Glaxo's Ventolin Rotohalerブランド粉末インハラー又はFison's Spinhaler ブランドインハラーと組み合わせて用いられるものも含む。優れた水分バリアーを供する他の適切な単位投与容器は、アルミニウムホイルプラスチックラミネートから形成される。医薬ベースの粉末は、成形可能なホイル内で重量により又は容量により凹部内に満たされ、又は包むホイル−プラスチックラミネートで密閉される。これらの粉末吸入装置に用いるための容器は、米国特許 4,778,054号に記載され、そして Glaxo's DiskhalerR(米国特許 4,627,432号; 4,811,731号;及び 5,035,237号)と共に用いられる。好ましい乾燥粉末インハラーは、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許出願通し番号08/309,691号及び08/487,184号に記載されるものである。後者の出願は、WO96/09085として公開されている。
【0041】
図1を見ると、生物高分子の分散性乾燥粉末を調製するための本発明による方法は、乾燥工程20において乾燥される液体媒体の液滴を作り出す霧化工程を含む。液滴の乾燥は、次に分離工程30において収集される乾燥粉末組成物を形成する別々の粒子を形成する。これらの単位工程の各々は以下により詳細に記載されるであろう。
【0042】
霧化工程10は、噴霧器のいくつかの慣用的形態のいずれか1つを利用することができる。霧化工程は、出発液の表面領域を増加させる。これは、その液体の表面エネルギーの増加を要求し、その大きさはその領域の増加に直接比例し、そしてそれは液滴の直径の2乗に逆比例する。このエネルギー増加の源は用いる噴霧器の型による。約11μm未満の質量中心直径の液滴を生産することができるいずれかの噴霧器(遠心、音波、圧力、2つの流体)を用いることができる。本発明のために好ましいのは、液体媒体が高圧気体流と同時にノズルを通してデリバリーされる2流体噴霧器の使用である。特に好ましいのは10μm未満のメジアン直径を有する液滴を生産することができる以下により詳細に記載される2流体霧化ノズルの使用である。
【0043】
霧化気体は、通常、ろ過されている、又は粒子及び他の汚染物を除去するために洗浄されている空気であろう。あるいは、他の気体、例えば窒素を用いることができる。霧化気体は、霧化ノズルを通してデリバリーのために、典型的には25psig超、好ましくは50psig超に加圧されるであろう。霧化気体の流れは一般に、高速に限られるが、より高いデリバリー圧は霧化気体密度を増加させる。このような増加された気体密度は霧化工程において形成された液滴の大きさを減少させることが見い出されている。より小さい液滴径はより小さな粒径を生じる。霧化気体流速度、霧化気体圧、液体流比率等を含む霧化条件は、フェーズドップラーベロシメトリーにより測定される11μm未満の平均直径を有する液滴を作るように制御されるであう。好ましい霧化デザイン及び作業条件を規定することにおいて、液体スプレーの液滴サイズ分布が、Aerometric's Phase Doppler Particle Size Analyzer を用いて直接測定される。液滴サイズ分布は、測定された乾燥粒子サイズ分布(Horiba Capa 700)及び粒子密度から計算することもできる。これらの2つの方法の結果は互いによく一致する。好ましくは、霧化された液滴は、5μm〜11μm、より好ましくは6μm〜8μmの範囲の平均直径を有するであろう。気体に液体質量流比は好ましくは5超、より好ましくは8〜10の範囲に維持される。これらの範囲内の気体:液体質量流比の調節は、粒子液滴サイズの制御のために特に重要である。
【0044】
これまでは、噴霧乾燥器のための慣用的な霧化装置は本発明に用いる極めて細かな液滴(11μm超)を生産するのに適さないと一般に考えられていた。例えばMasters (Handbook of Spray Drying, 4th ed., Wiley & Sons 1985)を参照のこと。しかしながら、上述のパラメータセット内の2流体ノズルの動作は、要求される大きさの範囲の噴霧液滴を信頼できるように達成することができる。
【0045】
液体媒体は、溶液、懸濁液、又は適切な液体担体中の生物高分子の他の懸濁液であり得る。好ましくは、生物高分子は医薬として許容される担体と組み合わせて液体溶媒中に溶液として存在するであろう。そしてその液体担体は水であろう。しかしながら、他の液体溶媒、例えば有機液、エタノール等を用いることも可能である。(最終乾燥粒子中に存在し得る高分子及び他の担体、賦形剤等を含む)全ての溶かした固体は広範囲の濃度で存在し、典型的には 0.1重量%〜10重量%で存在し得る。しかしながら、通常、吸入サイズの範囲で粒子を生産し、そして要求される分散特性を有する固体濃度を最大にすることが要求され、典型的には 0.5%〜10%の固体濃度範囲、好ましくは 1.0%〜5%の濃度範囲を有するであろう。比較的低濃度の生物高分子を含む液体媒体は、以下により詳細に記載されるように比較的小さい直径を有する乾燥粒子を生ずるであろう。
【0046】
乾燥工程20は、霧化工程10により作られた液滴から液体をエバポレートした後に行われるであろう。通常、乾燥は、典型的には液滴を、水又は他の液体媒体の蒸発を引きおこす加熱された気体と混合することにより、液滴にエネルギーを導入することを必要とするであろう。好ましくは、混合は、噴霧乾燥器又は加熱された気体流が導入される同様のチャンバー内で行われる。好ましくは、加熱された気体流は霧化した液体と同時に流れるであろうが、逆流、クロス流、又は他の流動パターンを用いることも可能であろう。
【0047】
乾燥工程は、上述のような特定の特徴、例えば2を超えるルゴシティーを有する乾燥粒子を供するように制御される。2を超えるルゴシティーは、材料の粘性層が液滴の外部上に迅速に形成されるように、乾燥比を制御することにより得ることができる。その後、乾燥比は、水分が材料の外部層を通して除去され、外部層の破壊及び回旋を生じて高度に不規則な外部表面を供するように十分に迅速であるべきである。しかしながら、乾燥は材料の外部層が破裂するほど迅速であるべきでない。乾燥比は、液滴サイズ分布、気体流の入口温度、気体流の出口温度、液滴の入口温度並びに霧化されたスプレー及び熱い乾燥気体が混合される様式を含むいくつかの変数に基づいて調節することができる。好ましくは、乾燥気体流は、少くとも90℃、より好ましくは上述の範囲内の入口温度を有するであろう。出口温度は、通常、少くとも約70℃、好ましくは上述の範囲内であろう。乾燥する気体は、通常、ろ過されており、又は粒子及び他の汚染物を除去するよう処理されている空気であろう。空気は、慣用的な送風機又はコンプレッサーを用いてシステムを通して動かされるであろう。
【0048】
分離工程30は、乾燥工程20により作られた超微細粒子の極めて高い効率の収集を達成するように選択されるであろう。慣用的な分離工程は、いくつかの場合、それらはサブミクロン粒子の収集を保証するように改良されるが、用いることができる。典型例において、分離は、フィルター媒体、例えば膜媒体(バックフィルター)、焼結金属ファイバーフィルター等を用いて行われる。しばしば、分離は、通常サブミクロン粒子の有効な収集を保証するために高エネルギー分離を供することが要求されるが、サイクロン分離機を用いて行うことができる。分離工程は、収集効率において、全ての粒子の少くとも80%、好ましくは85%超、より好ましくは90%超、そして更により好ましくは95%超が1μm超の平均粒径の収集を達成するべきである。
【0049】
いくつかの場合、サイクロン分離株は、最終的に集められた粒子から、極めて微細な粒子、例えば 0.1μmの粒子を分離するのに用いることができる。サイクロン作動パラメータは、約 0.1μm超の粒子が収集される一方、 0.1μm未満の粒子が頭上の排出口において運び出される適切なカットオフを供するように選択することができる。肺粉末中の 0.1μm未満の粒子の存在は、それらは一般に肺の肺胞領域内に析出しないであろうので不要であり、排出されるであろう。
【0050】
本発明の方法の特定の利点は、乾燥工程において製造され分離工程において収集された粒子の全てを、粒子を要求される大きさの範囲に更に分離又は分類する必要なく要求される医薬パッケージ内にパッケージングするために用いることができることである。この結果は、肺デリバリーのために要求され得る範囲内の大きさの個々の粒子を有する超微細乾燥粉末組成物を生産する霧化及び乾燥条件の組合せである。これにより、分離工程30は、乾燥気体流から粒子を(任意に 0.4μmカットオフで)分離することのみを必要とし、ここで分離はできる限り高い効率で行われる。なぜなら、収集された材料の実質的に全てが医薬製剤に用いるのに適しているからである。
【0051】
図2を見ると、本発明の方法を実施するための典型的なプロセスの流れ図が記載される。そのプロセス流れ図は、(本発明の方法に適合した)市販の噴霧乾燥機、例えば供給元、例えばBuchi, Niro, APV, Yamato Chemical Company, Okawara Kakoki Company 等から利用できるものであり得る噴霧乾燥器を含む。噴霧乾燥器には、供給ポンプ52、フィルター54、及び供給ライン56を通して上述の液体媒体の溶液(供給される溶液)が供給される。供給ライン56は図3と合わせて以下に記載される2流体霧化ノズル57に接続される。霧化する空気は、コンプレッサー58、フィルター60、及びライン62からノズル57に供給される。乾燥する空気はヒーター65及びフィルター66を通して噴霧乾燥器50にも供される。
【0052】
噴霧乾燥器50からの乾燥した粒子は導管70を通してフィルターハウジング72に空気流により運ばれる。フィルターハウジング72は、バックフィルター又は焼結金属ファイバーフィルター例えば Smale (Manufacturing Chemist. p. 26, 1992年4月)に記載される型の焼結ステンレススチールファイバーフィルターであり得る複数の内部フィルター要素74を含む。かわりのフィルター媒体は、バックフィルター、クロスフィルター、及びカートリッジフィルターを含む。全ての場合、乾燥された粒子を運ぶ気体流は、分離器ハウジング72のシェル内に流れ、担体気体はフィルター要素74を通過するであろう。しかしながら、乾燥した粒子の通過は、フィルター要素により遮断され、そして乾燥した粒子は重量によりハウジング72の底に落ちるであろう。ここでは、それらは粒子収集キャニスター76内に集められるであろう。キャニスター76は、周期的に除去され、再びおかれ、そしてキャニスター内の乾燥粉末は単位投与又は他の形態におけるパッケージングのために利用され得る。担体気体はライン80及び排出ファン84を通して分離器ハウジング72の頂上から通り抜けるであろう。フィルター82は、フィルター媒体74を不注意で通過し得るいずれもの粒子も収集するであろう。高圧気体のソース90はフィルター媒体74を通して逆流空気のパルス状の流れを周期的に作り出すために供される。このような逆方向のパルス状の空気の流れは、ケーキングを防ぐためにフィルター媒体の入口側に接着する粒子を追い出すであろう。本発明の方法により、及び図2に従うプロセスの流れを用いるインスリン粉末の生産のための典型的なシステムを以下の実験セクションに供する。
【0053】
図3を見ると、典型的な二流体ノズルが示される。流体ライン56は、内部導管100 及び外部導管102 を含む。内部導管100 は供給された溶液を運び、流体流比による 0.015in〜0.075in 、好ましくは 0.025〜0.05inの範囲の直径を有する口104 内で終わる。出口導管102 は内部導管100 の周囲に軸上に配置され、ライン62からの霧化気体を運ぶ。導管62は導管100 の口104 の周囲の同心の口110 内で終了する。口110 の直径は、典型的には、口104 のそれより大きく、通常、要求される上流圧で空気の要求される質量流比を作り出すのに十分である断面領域を有する。
【0054】
任意に、冷却ジャケット120 が、供給された溶液が噴霧乾燥器50に入る時に供給された溶液の比較的低い温度を維持するために噴霧ノズルの周囲(又は霧化気体と供給された溶液との間)に供され得る。冷却ジャケット120 は、典型的には、生物高分子が分解し得ないレベル未満の溶液供給温度、通常4℃〜45℃に維持するのに十分な温度及び量で冷却水を運ぶ。冷却は、一般に、熱センシティブ高分子でのみ必要であろう。より高い溶液供給温度はより低い粘度を供し、ここでそのより低い粘度は、霧化工程により形成される液滴サイズを減少させることができる。
【0055】
図4を見ると、図2に示されるフィルター分離器72の使用のかわりとして、収集工程は、サイクロン150 により行うことができる。サイクロン150 は導管70を通して乾燥粒子を受容し、そして担体は図2に示されるのと同様に、ライン80を通して上方に通るであろう。サイクロン150 は、本発明の方法により作られる超微細粒子の極めて高い収集効率を保証するようにデザインされ、作動されるであろう。サイクロンの使用は、頭上の出口80を通して極めて微細な粒子のいくつかの繰越しを生ずるであろう。特定の場合、これは不要であり得るが、更なる分離は、肺の肺胞領域に達するのには小さすぎる。例えば7μm未満である粒子を除去するためにあてにされ得る。
【0056】
以下の例は限定でなく詳説するために供される。
【実施例】
【0057】
実施例1
噴霧乾燥装置形状を図2及び4に示す。全部で20リッターの溶液をそのランの間に処理した。その溶液はその20%がインスリンである 250g(1.25重量%)の全固体を含んでいた。固体のバランスは、マンニトール、クエン酸ナトリウム及びグリシンの混合物であった。その溶液をWatson Marlow ペリスタルティックポンプ及びシリコン管材を用いて約44ml/分の速度で4℃で噴霧器に供給した。実際の供給速度は可変コントロールとして噴霧乾燥器の出口温度を用いてPID ループにより制御した。噴霧器温度制御循環ジャケットはそれを通して循環する4℃の水を有する。噴霧器の空気は、12scfm及び38psigで、針状バルブ及びガラスロータメーターを用いて流れを制御し、測定した。空気及び液体の両方の流れは噴霧器(Millipak 60 及びMillipore Wafergard II F−40 In lineガスフィルター)に入る直前にポリッシングフィルターを通過させた。粉末は55インチH2O の圧力降下で動作する高効率サイクロン内に収集した。乾燥する空気の流れの速度は 100scfmでの送風機駆動モーター上のAC速度制御システムにより制御し、オリフィスプレート及び示差圧トランスデューサーを用いて送風機の流出量で測定した。乾燥空気温度は、時間分割PID ループ及び 7.5kwヒーターで 130℃で制御した。全部で 225gの粉末を4つの別個のコレクターで回収し、全部で90%の収率を供した。各々のコレクター中の粉末は、表2に示すように分析した。
【0058】
【表3】

【0059】
実施例2
全部で 2.4リッターの溶液を処理した。その溶液はその20%がインスリンである 100g(4.0重量%)の全固体を含んでいた。固体のバランスは、マンニトール、クエン酸ナトリウム及びグリシンの混合物であった。実施例1で用いた噴霧乾燥器をこの実験に用いた。その溶液をWatson Marlow ペリスタルティックポンプ及びシリコン管材を用いて出口温度で種々の速度で4℃で噴霧器に供給した。実際の供給速度は可変コントロールとして噴霧乾燥器の出口温度を用いてPID ループにより制御した。噴霧器温度制御循環ジャケットはそれを通して循環する45℃の水を有する。噴霧器の空気は、13.8scfm及び70psigで、針状バルブ及びガラスロータメーターを用いて流れを制御し、測定した。空気及び液体の両方の流れは噴霧器(Millipak 60 及びMillipore Wafergard II F−40 In lineガスフィルター)に入る直前にポリッシングフィルターを通過させた。高効率サイクロン乾燥する空気の流れの速度は95scfmでの送風機駆動モーター上のAC速度制御システムにより制御し、オリフィスプレート及び示差圧トランスデューサーを用いて送風機の流出量で測定した。乾燥空気温度は、時間分割PID ループ及び 7.5kwヒーターで 150℃で制御した。乾燥する出口空気は70, 75及び80℃で種々であった。粉末コレクターは各々の温度の設定値について交換した。各々のコレクター内の粉末を表3に示すように分析した。
【0060】
【表4】

【0061】
実施例3
噴霧乾燥器を、焼結ステンレススチールファイバーフィルター部材(Fairey Microfiltrex)を備えたバッグハウスに変更した。装置形態を図2に示す。
【0062】
全部で8リッターの溶液をそのインスリンのランの間に処理した。その溶液はその20%がインスリンである 100g(1.25重量%)の全固体を含んでいた。固体のバランスは、マンニトール、クエン酸ナトリウム及びグリシンの混合物であった。その溶液をWatson Marlow ペリスタルティックポンプ及びシリコン管材を用いて55ml/分の速度で4℃で噴霧器に供給した。噴霧器温度制御循環ジャケットはそれを通して循環する4℃の水を有する。噴霧器の空気は、12scfm及び42psigで、針状バルブ及びガラスロータメーターを用いて流れを制御し、測定した。空気及び液体の両方の流れは噴霧器(Millipak−60及びMillipore Wafergard II F−40 In lineガスフィルター)に入る直前にポリッシングフィルターを通過させた。乾燥する空気の流れの速度は 100scfmでの送風機駆動モーター上のAC速度制御システムにより制御し、オリフィスプレート及び示差圧トランスデューサーを用いて送風機の流出量で測定した。乾燥空気温度は、Niro 7.5KWヒーターで 145℃で制御した。粒子収集は、改良したPacific Engineering (Anaheim, CA) セルフクリーニングチャンバー(バッグハウス又はフィルターハウジング)で行った。バッグハウスをハウス内に入れ、フィルターの数を変えられるように改良した。ケージ及び布帛フィルターを2つのFairey Microfiltrex (Hampshire, UK) 焼結金属ファイバーフィルターと置き換えた。フィルター要素を逆パルスにする(高圧空気でバックを逆流させる)ためのシステムを回収の助けのためにバッグハウスの頂部に構築した。そのパルスは20秒に1秒未満、で動かした。パルス圧は 110psigであった。粉末は重力及び機械的補助(振とう)によりバッグハウスの底に落下した。コレクター内の粉末を表4に示すように分析した。
【0063】
【表5】

【0064】
本発明は明快に理解される目的のため、記載及び例によりいくらか詳細に記載されているが、添付の請求の範囲内で特定の変換及び改良を行うことができることが明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体高分子の分散性乾燥粉末の製造方法であって、以下のステップ:
2kD超の分子量をもつ、所定濃度の生物高分子を含む蒸発性液体媒体を準備し;
上記液体媒体を霧化し;
上記液滴を加熱した気体流中で乾燥させて、エアー・パーミアメトリーによって計測される少なくとも2.0のルゴシティー、10質量%未満の含水率、及び10μm未満の粒径から成る粒子を作製する、
を含む上記製造方法。
【請求項2】
前記液体媒体中の総固体濃度が、10質量%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固形分が、5質量%未満である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記霧化の条件が、11μm未満の平均サイズを有する液滴を形成するように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記粒子を回収するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記分散性粉末の90質量%が、0.1μm〜7μmの直径をもつ粒子から成る、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分散性粉末の95質量%が、0.4μm〜5μmの直径をもつ粒子から成る、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記液滴が、90℃超の入口温度を有する加熱した気体流と同時に流される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記入り口温度が120〜200℃である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記気体流が、110℃超の入口温度を有し、かつ、50℃超の出口温度を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記出口温度が60〜80℃である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記回収ステップの後に、容器内に前記粒子の少なくとも一部をパッケージングするステップをさらに含む、請求項5に記載の方法であって、上記粒子がパッケージング前にサイズで分類されていない上記方法。
【請求項13】
前記粒子が、単位用量容器内にパッケージされる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記高分子が、カルシトニン、エリトロポイエチン、第IX因子、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子、成長ホルモン、インスリン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターロイキン−2、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、ソマトスタチン、バソプレッシン・アナログ、濾胞刺激ホルモン(FSH)、アミリン、毛様体神経成長因子、成長ホルモン放出因子、インスリン様成長因子、インスリノトロピン、インターロイキン−1レセプター・アンタゴニスト、インターロイキン−3、インターロイキン−4、インターロイキン−6、マクロファージ・コロニー刺激因子、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、チモシンα1、IIb/IIIa因子インヒビター、α−1アンチトリプシン、抗−RSV抗体、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、抗−CMV抗体、インターロイキン−1レセプター、及びインターロイキン−1レセプター・アンタゴニストから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記粒子が、エアー・パーミアメトリーによって計測される3〜6の範囲内のルゴシティーを構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記液体媒体が賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記液体媒体が、溶液又は懸濁液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記液体媒体が、水性溶液を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記液体媒体がエタノールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜4、6〜15、及び17〜19のいずれか1項に記載の方法によって製造された高分子組成物。
【請求項21】
前記高分子がインスリンである、請求項20に記載の高分子組成物。
【請求項22】
0.5mg〜15mgの組成物を含む単位投与形態による、請求項21に記載の高分子組成物。
【請求項23】
炭水化物、アミノ酸、緩衝剤、及び塩から成る群から選択される賦形剤をさらに含む、請求項21に記載の高分子組成物。
【請求項24】
前記賦形剤が、単糖類、二糖類、多糖類及び疎水性アミノ酸から成る群から選択される、請求項23に記載の高分子組成物。
【請求項25】
前記賦形剤が、マンニトール、トレハロース、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ロイシン、ラクトース、ラフィノース、アラニン、及びグリシンから成る群から選択される、請求項23に記載の高分子組成物。
【請求項26】
前記生物高分子の所定濃度が1質量%〜5質量%の範囲である、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−191071(P2009−191071A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99209(P2009−99209)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【分割の表示】特願平9−540191の分割
【原出願日】平成9年5月7日(1997.5.7)
【出願人】(597148884)ネクター セラピューティクス (30)
【Fターム(参考)】