分析システム、検査情報処理装置、コンピュータプログラム、および分析装置
【課題】測定範囲内に納まる測定値を得るために必要となる測定回数を減少させることが可能な分析システムを提供する。
【解決手段】この分析システム1の分析装置40は、複数の希釈条件で検体を処理可能に構成された試料調製部43と、試料調製部43で処理された検体を測定する検出部44と、試料調製部43に所定の希釈倍率で検体を処理させ、処理された検体を検出部44に測定させることにより測定値を取得するとともに、測定値と、上下限値DB45aの上限値または下限値とを比較する制御部45とを備えている。また、検査情報処理装置60は、デフォルトの希釈倍率よりも倍率が大きい原倍オーバ希釈倍率が記憶される原倍オーバ希釈倍率DB61cと、検査依頼項目(測定項目)に対応するデフォルトの希釈倍率が記憶されるデフォルト希釈倍率DB61aと含むとともに、制御部45による比較結果に基づいて、検体を提供した被験者の検体を次に測定する場合に用いられる次回希釈倍率を決定する制御部61を備えている。
【解決手段】この分析システム1の分析装置40は、複数の希釈条件で検体を処理可能に構成された試料調製部43と、試料調製部43で処理された検体を測定する検出部44と、試料調製部43に所定の希釈倍率で検体を処理させ、処理された検体を検出部44に測定させることにより測定値を取得するとともに、測定値と、上下限値DB45aの上限値または下限値とを比較する制御部45とを備えている。また、検査情報処理装置60は、デフォルトの希釈倍率よりも倍率が大きい原倍オーバ希釈倍率が記憶される原倍オーバ希釈倍率DB61cと、検査依頼項目(測定項目)に対応するデフォルトの希釈倍率が記憶されるデフォルト希釈倍率DB61aと含むとともに、制御部45による比較結果に基づいて、検体を提供した被験者の検体を次に測定する場合に用いられる次回希釈倍率を決定する制御部61を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析システム、検査情報処理装置、コンピュータプログラム、および分析装置に関し、特に、複数の希釈条件で検体を処理して解析することが可能な分析システム、検査情報処理装置、コンピュータプログラム、および分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の希釈倍率で検体を希釈して測定することが可能な分析装置が知られている。また、このような分析装置を備えた検査情報処理システムとして、検査情報処理装置から転送された分析依頼情報に含まれる希釈倍率に基づいて検体の測定を行う自動化学分析装置を備えた検査情報処理システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示された検査情報処理システムでは、検査情報処理装置が、過去の測定値に基づいて希釈倍率を自動的に決定し、当該希釈倍率を分析依頼情報に含めて自動化学分析装置に送信する。そして、自動化学分析装置は、送信された希釈倍率に従って検体を希釈し、解析する。
【0004】
例えば、上記検査情報処理装置は、自動化学分析装置に送信する希釈倍率の決定にあたって、前回の測定値が測定範囲の最大80%を越えないような場合には、前回と同じ希釈倍率を使用し、前回の測定値が測定範囲の最大80%を越えているような場合には、前々回と前回の測定値の比に1を加えることによって希釈倍率を算出している。
【0005】
【特許文献1】特開平4−38467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたような従来の検査情報処理システムは、上述のように、過去の測定値に基づいて希釈倍率を決定するものであるため、過去の測定値が存在しない初診患者の検体を測定したが希釈倍率が最適ではなかったような場合には、その検体をどのような希釈倍率で希釈すればよいかを決定することができなかった。従って、このような場合には、最適な希釈倍率で検体が希釈されるまで、希釈倍率を徐々に大きくしながら、何回も測定を繰り返すことが必要であった。このように、測定回数が増加すると、検査効率が低下する。例えば、ホルモン・腫瘍マーカーの検査などにおいては、測定に使用される試薬が非常に高価であるため、測定の回数をできるだけ減少させることが求められている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、最適な希釈倍率を決定するために必要となる測定回数を減少させることが可能な分析システム、検査情報処理装置、コンピュータプログラム、および分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による分析システムは、複数の希釈条件で検体を処理可能に構成された検体処理部と、検体処理部で処理された検体を測定する測定手段と、第1希釈条件と、第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段と、検体処理部に第1希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を測定手段に測定させることにより第1測定値を取得する測定制御手段と、第1測定値と、第1の閾値とを比較する比較手段と、比較手段による比較結果に基づいて、第1希釈条件または第2希釈条件を、検体を提供した被験者の検体を次に測定する場合に用いられる次回希釈条件として決定する決定手段とを備えている。
【0009】
この第1の局面による分析システムでは、上記のように、第1希釈条件と、第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段を設けることによって、例えば、第1希釈条件として、健康な被験者または症状の軽い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈条件を希釈条件記憶手段に記憶させ、第2希釈条件として、症状の重い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈条件を希釈条件記憶手段に記憶させることができる。このようにすれば、過去の測定値が存在しない初診患者(被験者)の検体を測定した場合であっても、その被験者が健康または、軽い疾患を有している被験者の場合は、第1希釈条件が最適な希釈条件となり、その被験者が重い疾患を有している被験者の場合は、第2希釈条件が最適な希釈条件となるので、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数は、1回または2回となる可能性が高い。このように、上記構成によれば、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数を減少させることができる。
【0010】
上記第1の局面による分析システムにおいて、好ましくは、第1希釈条件および第2希釈条件は、それぞれ希釈倍率を含み、第2希釈条件に含まれる希釈倍率は、第1希釈条件に含まれる希釈倍率よりも大きく、決定手段は、第1測定値が第1の閾値より大きい場合に、第2希釈条件を、次回希釈条件として決定する。このように構成すれば、最適な希釈倍率が、第1希釈条件に含まれる希釈倍率よりも大きい高濃度の検体を次に測定する場合に、検体は、希釈倍率の大きい第2希釈条件で処理されるので、その測定値が測定可能範囲に収まる可能性が高い。従って、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数を減少させることができる。
【0011】
この場合、決定手段は、第1測定値が、第1の閾値より小さく、第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合に、第1希釈条件を、次回希釈条件として決定する。このように構成すれば、第1測定値が、所定の範囲内に収まっている場合には、次にその被験者の検体を測定する場合にも同じ希釈条件で検体を処理すれば、最適な希釈倍率で検体を希釈することができる可能性が高い。従って、上記の構成とすることにより、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数を減少させることができる。
【0012】
上記第1の局面による分析システムにおいて、好ましくは、希釈条件記憶手段は、第1希釈条件および第2希釈条件とは異なる第3の希釈条件をさらに記憶し、測定制御手段は、検体処理部に第2希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を測定手段に測定させることにより第2測定値を取得し、比較手段は、第2測定値と、第3の閾値とを比較し、決定手段は、比較手段による比較結果に基づいて、第1希釈条件、第2希釈条件および第3希釈条件のうちいずれか1つを、次回希釈条件として決定する。このように構成すれば、第1希釈条件で検体を処理しても、第2希釈条件で検体を処理しても、測定値が所定の範囲に収まらないような場合であっても、最適な希釈条件で検体を処理することが可能となる。
【0013】
上記第1の局面による分析システムにおいて、好ましくは、決定手段によって決定された次回希釈条件を、被験者を識別するための被験者識別情報と対応付けて記憶する被験者記憶手段をさらに備え、測定制御手段は、検体を提供した被験者の検体を次に測定する際に、検体処理部に、被験者記憶手段に記憶された次回希釈条件で検体を処理させる。このように構成すれば、次回希釈倍率が被験者情報と対応付けて記憶されるので、測定制御手段は、次にその被験者の検体を測定する際に、被験者情報に基づいて、次回希釈倍率を読み出すことができる。
【0014】
上記第1の局面による分析システムにおいて、好ましくは、決定手段によって決定された次回希釈条件を変更可能に表示する表示手段をさらに備えている。このように構成すれば、決定された次回希釈倍率をユーザが認識し、それを変更することが可能となるので、検体の特性(色、粘度、その検体を提供した被験者の病状など)に応じた最適な次回希釈条件をユーザが設定することが可能となる。
【0015】
上記第1の局面による分析システムにおいて、好ましくは、第1希釈条件および第2希釈条件は、それぞれ希釈倍率を含み、第2希釈条件に含まれる希釈倍率は、第1希釈条件に含まれる希釈倍率の10倍以上である。このように構成すれば、所定の検体検査施設では、症状の重い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適な希釈倍率は、健康な被験者または症状の軽い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適な希釈倍率の10倍以上である傾向がある。従って、このような希釈倍率とすることにより、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数を減少させることができる。
【0016】
上記第1の局面による分析システムにおいて、好ましくは、検体処理部と、測定手段と、測定制御手段と、比較手段と、を備えた分析装置と、希釈条件記憶手段と、決定手段とを備え、分析装置に通信可能に接続された検査情報処理装置と、を備え、決定手段は、比較手段による比較結果を分析装置から受信し、受信した比較結果に基づいて、第1希釈条件または第2希釈条件を、次回希釈条件として決定する。このように構成すれば、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数を減少させることが可能な分析システムを、分析装置と検査情報処理装置とから構築することができる。
【0017】
この発明の第2の局面による検査情報処理装置は、複数の希釈条件で検体を処理可能に構成された検体処理部と、検体処理部で処理された検体を測定する測定手段と、検体処理部に第1希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を測定手段に測定させることにより第1測定値を取得する測定制御手段と、第1測定値と、第1の閾値とを比較する比較手段と、を備えた分析装置に通信可能に接続された検査情報処理装置であって、第1希釈条件と、第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段と、比較手段による比較結果に基づいて、第1希釈条件または第2希釈条件を、検体を提供した被験者の検体を次に測定する場合に用いられる次回希釈条件として決定する決定手段とを備えている。
【0018】
この第2の局面による検査情報処理装置では、上記のように、第1希釈条件と、第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段を設けることによって、例えば、第1希釈条件として、健康な被験者または症状の軽い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈条件を希釈条件記憶手段に記憶させ、第2希釈条件として、症状の重い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈条件を希釈条件記憶手段に記憶させることができる。このようにすれば、過去の測定値が存在しない初診患者(被験者)の検体を測定した場合であっても、その被験者が健康または、軽い疾患を有している被験者の場合は、第1希釈条件が最適な希釈条件となり、その被験者が重い疾患を有している被験者の場合は、第2希釈条件が最適な希釈条件となるので、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数は、1回または2回となる可能性が高い。このように、上記構成によれば、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数を減少させることができる。
【0019】
この発明の第3の局面によるコンピュータプログラムは、複数の希釈条件で検体を処理可能に構成された検体処理部と、検体処理部で処理された検体を測定する測定手段と、検体処理部に第1希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を測定手段に測定させることにより第1測定値を取得する測定制御手段と、第1測定値と、第1の閾値とを比較する比較手段と、を備えた分析装置に通信可能に接続されたコンピュータを、第1希釈条件と、第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段と、比較手段による比較結果に基づいて、第1希釈条件または第2希釈条件を、検体を提供した被験者の検体を次に測定する場合に用いられる次回希釈条件として決定する決定手段として機能させる。
【0020】
この第3の局面によるコンピュータプログラムでは、上記のように、第1希釈条件と、第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段としてコンピュータを機能させることによって、例えば、第1希釈条件として、健康な被験者または症状の軽い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈条件を希釈条件記憶手段に記憶させ、第2希釈条件として、症状の重い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈条件を希釈条件記憶手段に記憶させることができる。このようにすれば、過去の測定値が存在しない初診患者(被験者)の検体を測定した場合であっても、その被験者が健康または、軽い疾患を有している被験者の場合は、第1希釈条件が最適な希釈条件となり、その被験者が重い疾患を有している被験者の場合は、第2希釈条件が最適な希釈条件となるので、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数は、1回または2回となる可能性が高い。このように、上記構成によれば、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数を減少させることができる。
【0021】
この発明の第4の局面による分析装置は、複数の希釈条件で検体を処理可能に構成された検体処理部と、検体処理部で処理された検体を測定する測定手段と、第1希釈条件と、第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段と、検体処理部に第1希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を測定手段に測定させることにより第1測定値を取得する測定制御手段と、第1測定値と、第1の閾値とを比較する比較手段と、比較手段による比較結果に基づいて、第1希釈条件または第2希釈条件を、検体を提供した被験者の検体を次に測定する場合に用いられる次回希釈条件として決定する決定手段とを備えている。
【0022】
この第4の局面による分析装置では、上記のように、第1希釈条件と、第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段を設けることによって、例えば、第1希釈条件として、健康な被験者または症状の軽い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈条件を希釈条件記憶手段に記憶させ、第2希釈条件として、症状の重い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈条件を希釈条件記憶手段に記憶させることができる。このようにすれば、過去の測定値が存在しない初診患者(被験者)の検体を測定した場合であっても、その被験者が健康または、軽い疾患を有している被験者の場合は、第1希釈条件が最適な希釈条件となり、その被験者が重い疾患を有している被験者の場合は、第2希釈条件が最適な希釈条件となるので、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数は、1回または2回となる可能性が高い。このように、上記構成によれば、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
まず、図1〜図8を参照して、本発明の一実施形態による分析システム1の構成について説明する。
【0025】
本発明の一実施形態による分析システム1は、血液検査を行うためのシステムであり、被験者から採取した検体を指定された希釈倍率で処理(調製)し、その処理された検体に含有される特定の物質を測定して解析するためのシステムである。分析システム1は、図1および図2に示すように、ホストコンピュータ10と、クライアント装置20と、複数の試験管100が載置されたラック110を搬送するための搬送部30と、2台の分析装置40および50と、検査情報処理装置60とを備えている。
【0026】
ホストコンピュータ10は、病院などの院内システムを構築するコンピュータであり、クライアント装置20と、検査情報処理装置60とが、有線または無線による通信ができるように接続されている。また、ホストコンピュータ10は、ラック110に載置される試験管100に貼付されるバーコードラベル120(図3参照)のバーコード番号(検体番号)を発行する機能を有している。
【0027】
クライアント装置20は、診察室に設置され、被験者から採取された検体に対して、検査依頼項目(測定項目)を指定するためのコンピュータである。
【0028】
搬送部30は、被験者から採取された検体を収容した複数(本実施形態では、4本)の試験管100(図3参照)が載置されたラック110を分析装置40および50に搬送するように構成されている。この搬送部30は、未処理の検体を収容した試験管100が載置されたラック110をセットするための搬送ライン投入口31と、搬送ライン投入口31にセットされたラック110を分析装置40および50に搬送するための搬送ライン32と、分析を終了した検体を収容した試験管100が載置されたラック110を収容するための搬送ラックヤード33とを有している。
【0029】
分析装置40および50は、エンザイムイムノアッセイ装置であり、搬送ライン32に沿って配列されている。また、分析装置40および50は、それぞれ、検査情報処理装置60と有線または無線による通信ができるように接続されている。この分析装置40および50は、試験管100内の検体を採取するとともに、採取された検体を指定された希釈倍率で処理して、その処理された検体の特性を解析する。分析装置40は、図2に示すように、バーコードリーダ41と、検体吸引部42と、試料調製部43と、検出部44と、制御部45と、入出力インターフェイス46とを含んでいる。なお、本実施形態では、分析装置50は、分析装置40と同じ構成を有しているため、以下では、分析装置40の構成について説明し、分析装置50の説明は省略する。
【0030】
また、本実施形態では、分析装置40のバーコードリーダ41は、試験管100に貼付されるバーコードラベル120(図3参照)のバーコード番号を読み取るために設けられている。また、検体吸引部42は、ラック110に載置される試験管100に収容される検体を採取するために設けられている。
【0031】
ここで、本実施形態では、試料調製部43は、複数の希釈倍率で検体を処理可能であり、検体吸引部42により採取された検体を処理する際に、複数の希釈倍率のうちの指定された希釈倍率で検体を希釈する。この試料調製部43は、本実施形態では、希釈倍率を、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍および50倍に変更可能である。また、試料調製部43は、検査依頼項目(測定項目)に応じて、検体に種々の試薬を添加する機能も有している。なお、本実施形態の説明において、「希釈倍率1倍で検体を処理する」とは、検体を希釈しないことを意味する。
【0032】
また、検出部44は、試料調製部43により処理された検体を測定することによって、光学的情報を取得するために設けられている。また、制御部45は、入出力インターフェイス46を介して、検査情報処理装置60と情報の送受信を行うとともに、バーコードリーダ41、検体吸引部42、試料調製部43および検出部44の動作の制御を行うために設けられている。この制御部45は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどにより構成されている。また、制御部45は、希釈倍率が指定された試料調製部43により処理され、検出部44によって測定された検体の特性を解析し、測定値を取得する機能を有している。そして、制御部45は、測定値の上限を示す上限値と、測定値の下限を示す下限値とを記憶する上下限値DB(データベース)45aを含んでいる。上下限値DB45aには、希釈倍率に対応する上限値および下限値が測定項目ごとに記憶されている。具体的には、検体の希釈倍率は、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍と変更可能に構成されているため、上下限値DB45aには、図4に示すように、希釈倍率1倍に対応する下限値1および上限値200が格納されている。そして、上下限値DB45aには、同様に、希釈倍率2倍に対応する下限値2および上限値400、希釈倍率5倍に対応する下限値5および上限値1000、希釈倍率10倍に対応する下限値10および上限値2000、希釈倍率20倍に対応する下限値20および上限値4000、および、希釈倍率50倍に対応する下限値50および上限値10000が格納されている。なお、この分析装置40の上下限値DB45aに格納される上限値および下限値は、制御部45が検体の特性を解析することによって算出可能な測定値の最大値および最小値であってもよいし、分析装置40の測定精度上十分な信頼性を得ることが可能な測定値の最大値および最小値であってもよい。なお、図4に示したテーブルは、CA19−9の上下限値を示しており、図示はしないが、HCGなどの他の測定項目の上下限値を示すテーブルもまた、上下限値DB45aに記憶されている。
【0033】
また、本実施形態では、制御部45は、試料調製部43が検体を処理した希釈倍率に応じて、測定値と比較する上限値を上下限値DB45aから読み出し、測定値と読み出した上限値とを比較する機能を有している。また、同様に、制御部45は、試料調製部43が検体を処理した希釈倍率に応じて、測定値と比較する下限値を上下限値DB45aから読み出し、測定値と読み出した下限値とを比較する機能を有している。
【0034】
検査情報処理装置60は、ホストコンピュータ10と、2台の分析装置40および50とに有線または無線による通信ができるように接続されている。また、検査情報処理装置60は、コンピュータにより構成されており、制御部61と、入力部62と、表示部63と、入出力インターフェイス64とを含んでいる。制御部61は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどからなる。
【0035】
制御部61は、入出力インターフェイス64を介して、分析装置40および50と情報の送受信を行うとともに、入力部62および表示部63の動作の制御を行うために設けられている。また、制御部61は、デフォルトの希釈倍率を記憶するデフォルト希釈倍率DB61aと、被験者の情報が格納された被験者DB61bと、原倍オーバ希釈倍率DB61cと、分析装置40の試料調製部43に指定可能な希釈倍率を記憶する指定可能希釈倍率DB61dとを有している。デフォルト希釈倍率DB61aには、検査依頼項目(測定項目)に対応する、デフォルト(原倍)の希釈倍率が記憶されている。このデフォルトの希釈倍率は、本実施形態では1倍であるが、必ずしも、1倍とは限らず、通常の検体に対する希釈倍率であればよい。このデフォルトの希釈倍率は、検査情報処理装置60を病院や検査センターなどの施設に納入する際に、納入者(メーカー)によって、入力部62を使用して測定項目ごとに予め設定される。また、被験者DB61bには、図5に示すように、被験者ID、検体番号、測定項目名、過去結果値および次回希釈倍率を対応付けるテーブルが格納されている。検体番号は、ホストコンピュータ10により発行されるバーコード番号(検体番号)であり、被験者IDは、この検体番号に対応する検体を提供した被験者を識別するための番号である。また、測定項目名(図5の例では、CA−19−9およびHCG)としては、クライアント装置20により入力を受け付けられた検査依頼項目(測定項目)がホストコンピュータ10を介して入力されている。なお、この検査依頼項目(測定項目)は、クライアント装置20からのみではなく、検査情報処理装置60からも入力可能である。また、過去結果値としては、過去の結果値(図5の例では、CA−19−9の結果値が400、HCGの結果値が450)と、その結果値に対応する日付および測定項目とが格納されている。結果値とは、分析システム1の使用者に報告するために最終的に表示部63に表示される検体の解析結果である。なお、被験者が初診患者である場合には、この過去結果値の情報は格納されていない。また、次回希釈倍率としては、被験者から採取した検体を、次に測定するときの希釈倍率が測定項目と対応付けて格納されている。
【0036】
ここで、本実施形態では、原倍オーバ希釈倍率DB61cには、デフォルトの希釈倍率よりも倍率が大きい原倍オーバ希釈倍率が記憶されている。この原倍オーバ希釈倍率は、分析システム1の使用者または納入者(メーカー)により、入力部62を使用して測定項目毎に設定されており、本実施形態では、いずれもデフォルトの希釈倍率の10倍以上の希釈倍率が記憶されている。この原倍オーバ希釈倍率は、デフォルトの希釈倍率での測定値が上限値よりも大きい場合に、再測定の際に指定される希釈倍率である。
【0037】
また、本実施形態では、指定可能希釈倍率DB61dは、試料調製部43によって処理可能な倍率である1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、および50倍が記憶されている。
【0038】
また、表示部63は、分析システム1による検査の進捗状況を確認するための画面(進捗確認画面)、所定の検体に対する結果値の確認や結果値の選択承認を行うための画面(再検選択画面)、および、各測定項目に対して、データチェック方法や基準値の変更を設定するためのメンテナンス用の画面(マスタ設定画面)などを表示するために設けられている。
【0039】
進捗確認画面には、図6に示すように、検体番号を表示するための表示欄631、氏名カナを表示するための表示欄632、診療科を表示するための表示欄633、病棟を表示するための表示欄634、ラック110(画面中ではRack)の番号を表示するための表示欄635、試験管100(画面中ではTube)のラック上の位置を表示するための表示欄636、早急に検査すべき検体であることを示す表示欄637、経過時間を表示するための表示欄638、および、分析装置40における検体の処理状況を表示するための表示欄639、および、分析装置50における検体の処理状況を表示するための表示欄640が表示されている。検体番号を表示するための表示欄631には、分析装置40のバーコードリーダ41により読み取られたバーコードラベル120(図3参照)のバーコード番号が表示されており、氏名カナを表示するための表示欄632には、検体を提供した被験者の氏名がカタカナで表示されている。また、診療科を表示するための表示欄633には、検査を依頼した診療科が表示され、病棟を表示するための表示欄634には、検査を依頼した診療科が所在する病棟が表示されている。そして、早急に検査すべき検体であることを示すための表示欄637には、検体を早急に検査する必要があることを知らせるフラグ(たとえば、「C」)が表示され、検査技師が確認できるようになっている。また、経過時間を表示するための表示欄638には、分析装置40のバーコードリーダ41によるバーコードラベル120の読み取りが開始されてからの経過時間が表示されている。また、分析装置40および50における検体の処理状況を表示するための表示欄639および640には、それぞれの検体について、未検査の測定項目が存在することを示す「○」、再検査を行う必要があることを示す「再」、検体から取得された結果値の確認(承認)を求めることを示す「済」、および、全ての検査依頼項目について結果値の確認が終了したことを示す「◎」のいずれかが表示されている。また、進捗確認画面の下方に位置するボタン641をクリックすることにより、再検選択画面が表示される。
【0040】
再検選択画面には、図7に示すように、所定の検体に対する種々の情報を表示するための表示欄642、検査依頼項目が表示される表示欄(ボタン)643、測定によって得られた結果値(画面中では「結果」)を表示するための表示欄644、結果値を取得した際の希釈倍率(画面中では「希釈率」)を表示するための表示欄645、再検査の理由(画面中では「再」)を表示するための表示欄646、結果値のレベル(画面中では「*」)を表示するための表示欄647、結果ステータス(画面中では「R」)を表示するための表示欄648、1回目および2回目の測定値をそれぞれ表示するための表示欄649および650、1回目および2回目の測定値に対する再検査の理由をそれぞれ表示するための表示欄651および652、1回目および2回目の測定値を取得した際の希釈倍率をそれぞれ表示するための表示欄653および654、次回希釈倍率(画面中では「次回希釈率」)を表示するための表示欄(記入欄)655、前回の結果値(画面中では「前回値」)を表示するための表示欄656、前回の結果値を取得した日付が表示される表示欄657、および、再測定の指示を実行するためのボタン658が表示されている。
【0041】
また、表示欄(ボタン)643には、分析装置40が検査可能な複数の検査依頼項目(測定項目)が表示されている。なお、この表示欄(ボタン)643に表示される測定項目は、クライアント装置20により検体毎に指定された検体毎の測定項目を表示することも可能である。また、表示欄644には、再検査を含む複数回の測定によって最終的に取得された結果値が表示されている。また、表示欄646、651および652には、後述する各種エラー情報である、「装置エラー」の発生を示すフラグ「A」、「上限スケールオーバ異常」および「下限スケールオーバ異常」の発生を示すフラグ「B」、「希釈低値チェック異常」の発生を示すフラグ「C」、「バラツキチェック異常」の発生を示すフラグ「G」、「前回値チェック異常」の発生を示すフラグ「D」、および、いずれにも該当しないことを示すフラグ「Z」のいずれかが表示される。また、表示欄648には、所定の測定項目については、未検査または再検査の必要があることを示すフラグ「0」と、検体から取得された結果値の承認を求めることを示すフラグ「1」と、結果値を承認したことを示すフラグ「2」とのいずれかが表示される。
【0042】
また、本実施形態では、表示欄(記入欄)655には、最新の測定値に基づいて自動的に決定された次回測定時の希釈倍率(次回希釈倍率)が表示されている。この表示欄(記入欄)655に表示される次回希釈倍率は、入力部62(図2参照)を用いて変更可能である。ただし、分析装置40の試料調製部43が希釈可能な希釈倍率(1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍)以外の値が入力された場合には、エラーメッセージが表示される。
【0043】
また、再検選択画面において、各測定項目が表示される表示欄(ボタン)643をクリックすることにより、所定の測定項目について再検査の指示を行うことが可能となる。また、表示欄(ボタン)643をクリックせずに、ボタン658をクリックした場合には、所定の検体に指定された全ての測定項目に対して再測定の指示を行うことが可能である。
【0044】
次に、図8に示したマスタ設定画面は、メンテナンス用の画面であり、管理者のみがデータチェック方法や基準値の変更を設定可能なようにパスワードなどによりロックされている。このマスタ設定画面では、図8に示すように、検査依頼項目(画面中では「検査項目」)を表示するための検査項目659、再検選択画面(図7参照)の表示欄647に示される範囲レベルを設定するための範囲設定項目660、および、測定値のデータチェックを行うための複数のパラメータを指定するための記入欄661a〜661eを有するデルタチェック項目661が表示されている。
【0045】
具体的には、図8に示すように、検査項目659には、検査依頼項目のうちの1つ(本実施形態では、「CA19−9」)が表示されている。また、範囲設定項目660には、結果値の範囲を区分するための記入欄660a〜660fが設けられており、記入欄660c(画面中では「l」)には、「0.0」が記入されており、記入欄660d(画面中では「h」)には、「37.0」が記入されている。これにより、分析装置40により取得される測定項目「CA19−9」についての結果値が、「0.0」より大きく「37.0」以下である場合、再検選択画面(図7参照)の表示欄647には、フラグ「l」が表示される。また、結果値が、「37.0」より大きい場合、表示欄647には、フラグ「h」が表示される。また、デルタチェック項目661の記入欄661a(画面中では「0」)には、前回値有効期限(本実施形態では、「45」)が指定されており、ここに設定された日数より以前の結果値は無効扱いとなる。また、記入欄661b(画面中では「1」)には、再検パターン(本実施形態では、「4」)が指定されており、再検査の際の運用を指定している。たとえば、測定項目によっては、再検査時であっても希釈を行わない運用をする測定項目もあるため、この記入欄661bで再検査時の運用について指定している。
【0046】
また、記入欄661c(画面中では「2」)には、前回値上変動チェック値(本実施形態では、「200」)と前回値下変動チェック値(本実施形態では、「70」)とが指定されている。この前回値上変動チェック値および前回値下変動チェック値は、検体の過誤(検体の取り違えなど)が生じるのを抑制するために用いられるパラメータである。また、記入欄661d(画面中では「3」)には、原倍オーバ希釈倍率(本実施形態では、「10」)と希釈測定時有効最小値(本実施形態では、「30」)とが指定されている。この原倍オーバ希釈倍率は、検体を原倍(デフォルトの希釈倍率)で測定した測定値が、上下限値DB45aに格納される上限値より大きい場合に、次回希釈倍率として分析装置40の試料調製部43にセットされる希釈倍率であり、原倍オーバ希釈倍率DB61cに格納されている。また、希釈測定値有効最小値は、分析装置40により得られた測定値が、信頼度の高い希釈倍率で測定して得られたものであるか否かを判断するためのパラメータである。つまり、この希釈測定値有効最小値は、今回の希釈倍率よりも小さい希釈倍率で測定した場合でも、測定値が上下限値の範囲内に納まる可能性のある検体を、次回測定時に、今回の希釈倍率よりも小さい(1レベル低い)希釈倍率で測定させるために用いられるパラメータである。また、記入欄661e(画面中では「4」)には、バラツキチェック値が指定されている。このバラツキチェック値(本実施形態では、85%)は、再測定時に得られた測定値が一回目の測定値と比較して突発的に高い値となった場合を判断するためのパラメータである。
【0047】
次に、図1〜図3、図9および図10を参照して、本発明の一実施形態による分析システム1の検体検査の手順について説明する。なお、図9に付した番号は、図1に付した番号と対応している。
【0048】
まず、図9のステップS1において、検査技師が、試験管100が載置されたラック110を図1に示した分析システム1の搬送ライン投入口31にセットした後、ステップS2において、ラック110が搬送ライン32により移動される。これにより、ステップS3において、分析装置40にラック110が到着して、分析装置40のバーコードリーダ41により試験管100に貼付されるバーコードラベル120(図3参照)のバーコード番号が読み取られる。そして、この読み取られたバーコード番号に基づき、ステップS4において、分析装置40から検査情報処理装置60に依頼の問い合わせが行われる。具体的には、分析装置40から検査情報処理装置60にバーコード番号(検体番号)が送信され、バーコード番号に対応する検体に対して行うべき測定項目(検査依頼項目)の内容や患者情報が問い合わされる。そして、本実施形態では、ステップS5において、検査情報処理装置60の制御部61は、分析装置40から送信されたバーコード番号に基づいて、被験者DB61bから測定項目とその測定項目に対応する希釈倍率(次回希釈倍率)とを取得し、測定指示電文を作成する。その後、検査情報処理装置60の制御部61は、ステップS6において、ステップS5において作成した測定指示電文を、分析装置40に送信する。この測定指示電文には、図10に示すように、バーコードリーダ41により読み取られた検体番号と、その検体番号に対応する検体に対して行われる測定項目名と、その測定項目に対応する測定希釈倍率との情報が含まれている。
【0049】
そして、ステップS7において、図10に示した測定指示電文に測定項目があるか否かの判断が分析装置40により行われる。ステップS7において、測定項目があると判断された場合には、ステップS8において、測定指示電文に従い、分析装置40の検体吸引部42(図2参照)により試験管100に収容される検体の吸引が行われて測定が実施される。検体吸引の後、ステップS9において、ラック110を搬送ライン32によって搬送することによって、そのラック110を分析装置50の方向に移動させる。一方、ステップS7において、測定項目がないと判断された場合には、ステップS8における測定が実施されず、ステップS9に進み、上記処理が実行される。これにより、ステップS10において、ラック110が分析装置50に到着して、ステップS3からステップS9までの処理が実行され、ラック110が再び搬送ライン32により搬送される。そして、ステップS11において、搬送ライン32によって搬送されるラック110が、搬送ラックヤード33に到着した後、ステップS12において、検査技師が再測定の必要な検体をピックアップして、ステップS1に戻す。
【0050】
次に、図2〜図4および図10〜図12を参照して、上記の手順を実行するために、本発明の一実施形態による分析システム1の分析装置40と、検査情報処理装置60とが実行する制御フローについて説明する。なお、図11に付したアルファベットは、図1に付したアルファベットと対応している。
【0051】
まず、分析装置40側では、図11のステップS20において、検体が収容される試験管100が載置されたラック110が、分析装置40に到着したか否かの判断がなされ、ラック110が到着したと判断されれば、ステップS21において、バーコードリーダ41により試験管100に貼付されたバーコードラベル120(図3参照)のバーコード番号の読取が行われる。一方、ステップS20において、ラック110が分析装置40に到着していないと判断された場合は、ラック110が分析装置40に到着するまでステップS20の判断が繰り返し行われる。そして、ステップS22において、分析装置40から検査情報処理装置60に依頼の問い合わせ(バーコード番号の送信)が行われる。
【0052】
そして、検査情報処理装置60側では、ステップS23において、分析装置40からの依頼の問い合わせ(バーコード番号)を受信したか否かの判断が行われる。そして、ステップS23において、依頼の問い合わせを受信していないと判断された場合は、依頼の問い合わせを受信するまで、ステップS23の判断が繰り返し行われる。一方、ステップS23において、分析装置40からの依頼の問い合わせを受信したと判断された場合には、ステップS24において、受信したバーコード番号に基づいて、検査情報処理装置60の制御部61が、被験者DB61bから測定項目名と次回希釈倍率とを読み込むことによって、図10に示した測定指示電文を作成する。この作成された測定指示電文は、ステップS25において、検査情報処理装置60から分析装置40に送信される。
【0053】
そして、分析装置40側では、ステップS26において、検査情報処理装置60のステップS25において送信された測定指示電文(図10参照)を受信したか否かの判断が行われる。そして、ステップS26において、測定指示電文を受信していないと判断された場合は、測定指示電文を受信するまで、ステップS26の判断が繰り返し行われる。一方、ステップS26において、測定指示電文を受信したと判断された場合には、ステップS27aにおいて、測定指示電文に測定項目があるか否かが判断される。そして、ステップS27aにおいて、測定指示電文に測定項目があると判断された場合には、ステップS27bにおいて、測定指示電文に次回希釈倍率があるか否かが判断される。そして、ステップS27bにおいて、測定指示電文に次回希釈倍率があると判断された場合には、ステップS28において、分析装置40の検体吸引部42(図2参照)により試験管100に収容される検体の吸引(採取)が行われる。そして、ステップS29において、分析装置40の試料調製部43(図2参照)により、測定項目毎に、指定された希釈倍率で試料の調製(検体の処理)が行われる。すなわち、本実施形態では、検査情報処理装置60の制御部61により作成された測定希釈倍率を含む測定指示電文により、分析装置40の試料調製部43に測定希釈倍率が指定されて検体の処理が行われる。その後、ステップS29の処理により得られた試料に光を照射することによって、ステップS30において、検出部44(図2参照)が試料(検体)から光学的情報を検出し、さらに、ステップS31において、分析装置40の制御部45(図2参照)により、検出された光学的情報が解析され、測定値が取得される。
【0054】
ここで、本実施形態では、ステップS32において、分析装置40の制御部45(図2参照)は、上記ステップS31において光学的情報を解析することにより取得される測定値の上下限値チェックを実行する。具体的には、制御部45は、ステップS26において受信した測定指示電文(図10参照)に含まれる希釈倍率に対応する下限値および上限値を上下限値DB45a(図4参照)を用いて参照するとともに、測定用試料から得られた測定値が、参照された下限値と上限値との間の値であるかが判断される。たとえば、測定指示電文の測定項目「CA19−9」に対応する希釈倍率が図10に示す「2倍」である場合には、分析装置40の制御部45は、図4に示した上下限値DB45aの2倍に対応する下限値2と上限値400とを参照する。そして、分析装置40の制御部45は、検体から得られた測定値が下限値2と上限値400との間の値であるか否かを判断する。
【0055】
そして、ステップS33において、分析装置40の制御部45により取得された測定値に基づいて、図12に示すような結果電文が作成される。この結果電文は、ステップS26において受信した測定指示電文(図10参照)の測定項目が複数ある場合には、測定項目毎に結果電文が複数作成される。この結果電文には、図12に示すように、検体番号、測定項目名、測定値、測定希釈倍率およびエラー情報についての情報が含まれている。なお、本実施形態では、測定項目(CA19−9)を2倍の測定希釈倍率で測定した測定値(450)が、希釈倍率2倍に対応する上下限値DB45aの上限値400より大きい値となったため、エラー情報が「上限スケールオーバ異常」となっている。
【0056】
そして、分析装置40は、ステップS33において作成された結果電文(図12参照)を、ステップS34において、検査情報処理装置60に送信する。その後、ステップS35において、分析装置40のシャットダウンを行うか否かの判断が行われる。また、ステップS27aにおいて、測定指示電文に測定項目がないと判断された場合、およびステップS27bにおいて、測定指示電文に次回希釈倍率がないと判断された場合にも、ステップS35に進み、上記したシャットダウンを行うか否かの判断が行われる。そして、ステップS35において、シャットダウンを行うと判断した場合は、ステップS36において、分析装置40のシャットダウン処理が行われ、分析装置40の処理が終了する。なお、分析装置40のステップS20〜S22およびステップS26〜S34の一連の処理は、ステップS35において、分析装置40のシャットダウンを行うと判断されるまで繰り返し行われる。
【0057】
一方、ステップS34において分析装置40から結果電文(図12参照)が送信された検査情報処理装置60側では、ステップS37において、結果電文を受信したか否かの判断が行われる。そして、ステップS37において、結果電文を受信していないと判断された場合は、結果電文を受信するまで、ステップS37の判断が繰り返し行われる。一方、ステップS37において、結果電文を受信したと判断された場合には、ステップS38において、結果電文に含まれる情報に基づいて、データチェック処理が行われる。そして、ステップS38において所定のデータチェック処理が行われた結果に基づく結果値および測定値を、ステップS39において、検査情報処理装置60の表示部63(図2、図6および図7参照)に表示する。その後、ステップS40において、検査情報処理装置60のシャットダウンを行うか否かの判断が行われる。そして、ステップS40において、シャットダウンを行うと判断した場合は、ステップS41において、検査情報処理装置60のシャットダウン処理が行われ、検査情報処理装置60の処理が終了する。なお、検査情報処理装置60のステップS23〜S25およびステップS37〜S39の一連の処理は、ステップS40において、検査情報処理装置60のシャットダウンを行うと判断されるまで繰り返し行われる。
【0058】
次に、図1、図2、図4、図5、図7、図8および図12〜図15を参照して、図11のステップS38におけるデータチェック処理について詳細に説明する。
【0059】
分析装置40(図1および図2参照)から結果電文(図12参照)を受信すると、ステップS51において、分析装置40にエラーが発生したか否かが判断される。具体的には、結果電文のエラー情報に、「装置エラー」の情報が含まれているか否かが判断される。この「装置エラー」は、分析装置40の異常(チューブのつまり、試薬切れなど)が主な原因となる。ステップS51において、装置エラーが発生したと判断された場合には、ステップS52において、被験者DB61bの次回希釈倍率(図5参照)に結果電文に含まれる測定希釈倍率をそのままセットする。なお、この場合、図7に示した再検選択画面の表示欄646、651および652の所定の位置には、「装置エラー」の発生を示すフラグ「A」が表示される。その後、図15に示すステップS53に進み、今回の測定が初回測定(本日の1回目の測定)か否かが判断される。そして、ステップS53において、今回の測定が初回測定であると判断した場合は、ステップS54において、項目を要再検状態にする。このステップS54において、項目を要再検査状態にする場合には、図7に示した再検選択画面の結果ステータスを表示するための表示欄648に「0」が表示され、再検査が実行される。一方、ステップS53において、今回の測定が初回測定でないと判断した場合は、ステップS55において、項目を要確認状態にする。このステップS55において、項目を要確認状態にする場合には、図7に示した再検選択画面の表示欄648に「1」が表示され、検査技師の確認が求められる。
【0060】
一方、ステップS51において、装置エラーが発生していないと判断された場合には、ステップS56において、測定値が上限スケールオーバ異常であるか否かが判断される。具体的には、結果電文のエラー情報に、「上限スケールオーバ異常」の情報が含まれているか否かが判断される。この「上限スケールオーバ異常」は、上述のように、測定値が、上限値DB45aに記憶されている所定の上限値を越えていることを示している。ステップS56において、上限スケールオーバ異常だと判断された場合には、ステップS57において、測定値を「上限値<」に変更して、再検選択画面(図7参照)に表示する。たとえば、図7に示した再検選択画面の測定項目「CA15−3」については、分析装置40により5倍の希釈倍率での測定値が上限スケールオーバ異常だと判断された場合に、5倍の希釈倍率に対応する上下限値DB45aの上限値1000に基づいて、測定値を「1000.0<」に変更して表示欄649に表示している。なお、この場合、図7に示した再検選択画面の表示欄646、651および652の所定の位置には、「上限スケールオーバ異常」の発生を示すフラグ「B」が表示される。その後、ステップS58において、今回の測定希釈倍率が原倍(デフォルトの希釈倍率)であるか否かが判断される。そして、ステップS58において、今回の測定希釈倍率が原倍ではないと判断された場合は、ステップS59において、今回の測定希釈倍率が有効最大値であるか否かが判断される。この有効最大値は、分析装置40の試料調製部43による希釈倍率の最大値であり、本実施形態では、50倍(図4参照)に設定されている。
【0061】
そして、本実施形態では、ステップS59において、今回の測定希釈倍率が有効最大値(50倍)であると判断された場合は、ステップS60において、被験者DB61bの次回希釈倍率の欄を空白にする。つまり、本実施形態では、ステップS56およびS59による処理により、有効最大値の希釈倍率で希釈して得られた測定値が、上下限値DB45aの上限値よりも大きければ、被験者DB61bの次回希釈倍率には何も記憶させない。これにより、次回測定時に、ステップS27b(図11参照)での判断結果が「No」となるので、この検体を提供した被験者の検体が分析装置40および50によって測定されずに、図7に示した再検選択画面の表示欄649に「Through」が表示される。
【0062】
このように、有効最大値の希釈倍率で希釈して得られた測定値が、上下限値DB45aの上限値よりも大きい場合には、分析システム1での測定は不可能であるので、使用者は、その検体を提供した被験者の検体を、顕微鏡により分析するか、手動で50倍以上に希釈して分析装置40を用いて測定する。
【0063】
ここで、本実施形態では、ステップS58において、今回の測定希釈倍率が原倍であると判断された場合は、ステップS61において、被験者DB61bの次回希釈倍率に原倍オーバ希釈倍率DB61cに格納されている「原倍オーバ希釈倍率」の値をセットする。つまり、本実施形態では、ステップS56およびS58による処理により、デフォルトの希釈倍率(原倍)で検体を希釈して得られた測定値が、上下限値DB45aの上限値よりも大きければ、原倍オーバ希釈倍率を、被験者DB61bの次回希釈倍率に記憶させる。また、この場合、再検選択画面(図7参照)の表示欄(記入欄)655に、原倍オーバ希釈倍率が表示される。なお、原倍オーバ希釈倍率を含む表示欄(記入欄)655に表示される希釈倍率は、入力部62(図2参照)により変更可能であり、変更された原倍オーバ希釈倍率は、被験者DB61bの次回希釈倍率に設定される。
【0064】
また、本実施形態では、ステップS59において、今回の測定希釈倍率が有効最大値(50倍)ではないと判断された場合は、ステップS62において、被験者DB61bの次回希釈倍率には今回の測定希釈倍率の1レベル上の希釈倍率を指定可能希釈倍率DB61dから読み出してセットする。つまり、本実施形態では、ステップS56、S58およびS59による処理により、デフォルトの希釈倍率(原倍)よりも大きい倍率の希釈倍率で検体を希釈して得られた測定値が、上下限値DB45aの上限値よりも大きければ、1レベル上の希釈倍率を被験者DB61bの次回希釈倍率に記憶させる。たとえば、2倍の測定希釈倍率で測定した場合には、2倍の1レベル上の5倍の希釈倍率を被験者DB61bの次回希釈倍率にセットする。そして、ステップS60〜S62のいずれかの処理が実行された後、図15に示すステップS53に進み、ステップS53〜S55による上記処理がなされる。
【0065】
一方、ステップS56において、分析装置40により測定値が上限スケールオーバ異常ではないと判断された場合には、ステップS63において、測定値が下限スケールオーバ異常であるか否かが判断される。具体的には、結果電文(図12参照)のエラー情報に、「下限スケールオーバ異常」の情報が含まれているか否かが判断される。この「下限スケールオーバ異常」は、測定値が、上限値DB45aに記憶されている所定の下限値より小さいことを示している。ステップS63において、下限スケールオーバ異常だと判断された場合には、ステップS64において、測定値を「下限値>」に変更して、再検選択画面に表示する。この場合、再検選択画面の表示欄646、651および652の所定の位置には、「下限スケールオーバ異常」の発生を示すフラグ「B」が表示される。その後、ステップS65において、今回の測定希釈倍率が原倍であるか否かが判断される。そして、ステップS65において、今回の測定希釈倍率が原倍ではないと判断された場合は、ステップS66において、被験者DB61bの次回希釈倍率に、今回の測定希釈倍率の1レベル下の希釈倍率を指定可能希釈倍率DB61dから読み出してセットする。
【0066】
つまり、本実施形態では、ステップS63およびS65による処理により、所定の希釈倍率で検体を希釈して得られた測定値が、上下限値DB45aの下限値よりも小さければ、所定の希釈倍率より1レベル小さい希釈倍率を、被験者DB61bの次回希釈倍率に記憶させて、次回希釈時に、検査情報処理装置60の制御部61により、この次回希釈倍率を試料調製部43に指定する。そして、ステップS66の処理が実行された後、図15に示すステップS53に進み、ステップS53〜S55による上記処理がなされる。
【0067】
一方、ステップS63において、測定値が下限スケールオーバ異常ではないと判断された場合には、ステップS67において、今回の測定希釈倍率が原倍であるか否かが判断される。そして、ステップS67において、今回の測定希釈倍率が原倍ではないと判断された場合は、ステップS68において、希釈低値チェック異常か否かの判断がなされる。具体的には、測定値を今回の希釈倍率で割った値が、マスタ設定画面(図8参照)のデルタチェック項目661の記入欄661dで設定可能な「希釈測定時有効最小値(本実施形態では、30)」未満の場合に、希釈低値チェック異常だと判断される。たとえば、図8に示すように、「希釈測定時有効最小値」が30である場合に、希釈倍率が10倍で、かつ、測定値が300未満であるならば、測定値を今回の希釈倍率で割った値が30未満であるので希釈低値チェック異常だと判断される。これにより、今回の測定希釈倍率よりも1レベル下の希釈倍率であっても十分測定範囲に納まる測定値であるか否か、つまり、今回の測定希釈倍率により測定された検体が「希釈しすぎ」であるか否かを判断することが可能である。これにより、必要以上に希釈されていない検体から測定値を得ることが可能になるため、信頼度の高い測定値を得ることが可能となる。なお、希釈低値チェック異常である場合、再検選択画面の表示欄646、651および652の所定の位置には、「希釈低値チェック異常」の発生を示すフラグ「C」が表示される。そして、ステップS68において、今回の測定値が希釈低値チェック異常であると判断された場合は、ステップS69において、被験者DB61bの次回希釈倍率に、今回の測定希釈倍率の1レベル下の希釈倍率を指定可能希釈倍率DB61dから読み出してセットする。そして、ステップS69の処理が実行された後、図15に示すステップS53に進み、ステップS53〜S55による上記処理がなされる。
【0068】
また、ステップS65およびS67において、今回の測定希釈倍率が原倍であると判断された場合は、図14に示したステップS70において、今回の測定が再測定である(初回測定(本日1回目の測定)ではない)か否かが判断される。また、ステップS68において、今回の測定値が希釈低値チェック異常ではないと判断された場合にも、ステップS70に進み、上記した判断が行われる。そして、ステップS70において、今回の測定が再測定であると判断された場合は、ステップS71において、初回(本日の1回目)測定時に、上限スケールオーバ異常が発生したか否かが判断される。そして、ステップS71において、初回測定時に、上限スケールオーバ異常が発生したと判断された場合は、ステップS72において、バラツキチェック異常か否かが判断される。具体的には、今回の測定値が、初回(本日の1回目)の測定値に、マスタ設定画面(図8参照)のデルタチェック項目661の記入欄661eで設定可能な「バラツキチェック値(本実施形態では、85%(0.85))」を乗じた値より小さい場合に、バラツキチェック異常だと判断される。たとえば、図8に示すように、「バラツキチェック値」が85%である場合に、初回の測定値が「1000<」で、かつ、今回の測定値が850未満であるならば、バラツキチェック異常だと判断される。なお、バラツキチェック値は上記85%などの100%に近い値を設定するのが好ましい。また、この場合、再検選択画面(図7参照)の表示欄646、651および652の所定の位置には、「バラツキチェック異常」の発生を示すフラグ「G」が表示される。
【0069】
そして、ステップS72において、今回の測定値がバラツキチェック異常であると判断された場合は、ステップS73において、今回の測定希釈倍率が原倍であるか否かが判断される。そして、ステップS73において、今回の測定希釈倍率が原倍ではないと判断された場合は、ステップS74において、被験者DB61bの次回希釈倍率に、今回の測定希釈倍率の1レベル下の希釈倍率を指定可能希釈倍率DB61dから読み出してセットする。一方、ステップS73において、今回の測定希釈倍率が原倍であると判断された場合は、ステップS75において、被験者DB61bの次回希釈倍率には原倍をデフォルト希釈倍率DB61aから読み出してセットする。そして、ステップS74およびS75の処理が実行された後、図15に示すステップS53に進み、ステップS53〜S55による上記処理がなされる。
【0070】
また、ステップS70において、今回の測定が再測定ではない(初回測定である)と判断された場合は、ステップS76において、有効前回値が存在するか否かが判断される。具体的には、マスタ設定画面(図8参照)のデルタチェック項目661の記入欄661aで設定可能な「前回値有効期限(本実施形態では、45日)」以内の結果値が存在するか否かが、被験者DB61bの過去結果の欄を参照して判断される。たとえば、図8に示すように、「前回値有効期限」が45日である場合に、前回の結果値が45日以上前の値である場合はその結果値を無効とし、前回の結果値が45日以内の値である場合はその結果値を有効とする。また、ステップS71において、初回測定時に、上限スケールオーバ異常が発生していないと判断された場合、および、ステップS72において、バラツキチェック異常ではないと判断された場合にも、ステップS76に進み、上記した判断が行われる。
【0071】
また、ステップS76において、有効前回値が存在すると判断された場合は、ステップS77において、前回値チェック異常か否かの判断が行われる。この前回値チェックは、特殊な場合を除いて検査結果の変動が少ないことを利用して、今回の測定値と前回(直近)の結果値とを比較することにより検体の取り違えなどを検出するために行う処理である。具体的には、今回の測定値が、下記の式(1)または式(2)のいずれかを満たす場合には、前回値チェック異常だと判断される。
(今回の測定値)>(前回の結果値)×{1+(「前回値上変動チェック値」/100)}・・・(1)
(今回の測定値)<(前回の結果値)×{1−(「前回値下変動チェック値」/100)}・・・(2)
【0072】
なお、この「前回値上変動チェック値」および「前回値下変動チェック値」は、マスタ設定画面(図8参照)のデルタチェック項目661の記入欄661cで設定可能に構成されている。たとえば、図8に示すように、「前回値上変動チェック値」が200、「前回値下変動チェック値」が70、および、前回の測定値が1000である場合に、今回の測定値が3000より大きい、または、300未満であるならば、上記式(1)または式(2)により、前回値チェック異常であると判断される。なお、この場合、再検選択画面の表示欄646、651および652の所定の位置には、「前回値チェック異常」の発生を示すフラグ「D」が表示される。そして、ステップS77において、前回値チェック異常であると判断された場合は、ステップS78において、被験者DB61bの次回希釈倍率には今回の測定希釈倍率をそのままセットする。そして、ステップS78の処理が実行された後、図15に示すステップS53に進み、ステップS53〜S55による上記処理がなされる。
【0073】
一方、ステップS76において、有効前回値が存在しないと判断された場合は、図15のステップS79に進み、被験者DB61bの次回希釈倍率に今回の測定希釈倍率をそのままセットする。また、ステップS77において、前回値チェック異常ではないと判断された場合にも、ステップS79に進み、上記処理が実行される。その後、ステップS80において、今回の測定が再測定である(初回測定ではない)か否かが判断される。そして、ステップS80において、今回の測定が再測定であると判断された場合は、ステップS55において、項目を要確認状態にする。一方、ステップS80において、今回の測定が再測定ではない(初回測定である)と判断された場合は、ステップS81において、項目を自動承認する。具体的には、ステップS81において、項目を自動承認する場合には、図7に示した再検選択画面の結果ステータスを表示するための表示欄648に「2」が表示されるとともに、測定値が表示欄644に表示される。なお、この場合、再検選択画面の表示欄646、651および652の所定の位置には、フラグ「Z」が表示される。そして、この測定値が、被験者DB61b(図5参照)の過去結果値に格納される。
【0074】
なお、上限スケールオーバ(ステップS56)、下限スケールオーバ(ステップS63)、希釈低値チェック異常(ステップS68)、バラツキチェック異常(ステップS72)、および前回値チェック異常(ステップS77)のいずれにも該当しなかった測定値は、結果値として用いられ、再検選択画面の表示欄644に表示される。
【0075】
また、ステップS38(図11参照)でセットされた次回希釈倍率は、表示欄655に変更可能に表示されるので、分析システム1の使用者は、検体を搬送ラックヤード33からピックアップして、検体の色、粘度などを観察することによって、最適な希釈倍率を推定し、表示欄655にその希釈倍率を入力することができる。
【0076】
本実施形態では、上記のように、検査情報処理装置60の制御部61にデフォルト希釈倍率DB61aと原倍オーバ希釈倍率DB61cとを設けることによって、デフォルト(原倍)の希釈倍率として、健康な被験者または症状の軽い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈倍率をデフォルト希釈倍率DB61aに記憶させ、原倍オーバ希釈倍率(本実施形態では、いずれもデフォルトの希釈倍率の10倍以上)として、症状の重い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈倍率を原倍オーバ希釈倍率DB61cに記憶させることができる。このようにすれば、過去の測定値が存在しない初診患者(被験者)の検体を測定した場合であっても、その被験者が健康または、軽い疾患を有している被験者の場合は、デフォルト(原倍)の希釈倍率が最適な希釈倍率となり、その被験者が重い疾患を有している被験者の場合は、原倍オーバ希釈倍率が最適な希釈倍率となるので、最適な希釈倍率を決定するために必要となる測定回数は、1回または2回となる可能性が高い。このように、本実施形態では、最適な希釈倍率を決定するために必要となる測定回数を減少させることができる。
【0077】
また、本実施形態では、原倍オーバ希釈倍率DB61cに格納される原倍オーバ希釈倍率を、デフォルト希釈倍率DB61aに格納されるデフォルト(原倍)の希釈倍率の10倍以上にするとともに、制御部61に、デフォルトの希釈倍率により測定された測定値がデフォルトの希釈倍率に対応する上限値より大きい場合に、デフォルトの希釈倍率より1レベル大きい希釈倍率あるいは原倍オーバ希釈倍率を、次回希釈倍率として決定させることによって、最適な希釈倍率が、デフォルト希釈倍率DB61aに格納されるデフォルトの希釈倍率よりも大きい高濃度の検体を次に測定する場合に、検体は、デフォルトの希釈倍率より1レベル大きい希釈倍率あるいはデフォルトの希釈倍率の10倍以上の原倍オーバ希釈倍率で処理されるので、その測定値が測定可能範囲に収まる可能性が高い。従って、最適な希釈倍率を決定するために必要となる測定回数を減少させることができる。
【0078】
また、本実施形態では、制御部61によって決定された次回希釈倍率を、被験者IDや過去測定値などと対応付けて記憶する被験者DB61bを設けるとともに、分析装置40の制御部45を、検体を提供した被験者の検体を次に測定する際に、試料調製部43に、被験者DB61bに記憶された次回希釈倍率で検体を処理させるように制御することによって、次回希釈倍率が被験者DB61bに格納される情報と対応付けて記憶されるので、制御部45は、次にその被験者の検体を測定する際に、被験者DB61bに格納される情報に基づいて、次回希釈倍率を読み出すことができる。
【0079】
また、本実施形態では、制御部61によって決定された次回希釈倍率を変更可能に表示する表示欄(記入欄)655を設けることによって、決定された次回希釈倍率を検査技師が認識し、それを変更することが可能となるので、検体の特性(色、粘度、その検体を提供した被験者の病状など)に応じた最適な次回希釈倍率を検査技師が設定することが可能となる。
【0080】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0081】
例えば、上記実施形態において、原倍オーバ希釈倍率で測定して得られた測定値から、測定値が測定範囲内に納まる最低レベルの希釈倍率を計算し、次回希釈倍率としてセットするようにしてもよい。これにより、次回測定時の希釈倍率をさらに最適化することができる。
【0082】
また、上記実施形態では、分析装置により得られた測定値が分析装置の上下限値DBに格納される上限値(下限値)より大きく(小さく)なる場合に、分析装置側で上限(下限)スケールオーバ異常であると判断する例を説明したが、本発明はこれに限らず、分析装置により取得された測定値が上限(下限)スケールオーバ異常であるか否かの判断を検査情報処理装置側で行ってもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、検査情報処理装置には、ホストコンピュータと2台の分析装置とが通信回線を介して接続される例を示したが、本発明はこれに限らず、検査情報処理装置にクライアントのコンピュータを接続し、クライアントのコンピュータから検査情報処理装置を操作するようにしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、試験管に貼付されるバーコードラベルのバーコードには、検体番号、日付および検査対象分野などの情報が含まれる例を説明したが、本発明はこれに限らず、バーコードラベルのバーコードに被験者識別情報(被験者ID)を含めておき、読み取った被験者識別情報(被験者ID)に対応する次回希釈倍率を試料調製部(検体希釈部)に指定するようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、被験者DB(図3参照)を1つのテーブルにより構成する例を示したが、本発明はこれに限らず、被験者DBは、被験者IDと次回希釈倍率とを対応づけるテーブルと、被験者IDと検体番号とを対応付けるテーブルとの2つのテーブルによって構成されていてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、原倍オーバ希釈倍率DB61cに記憶される測定項目毎の原倍オーバ希釈倍率は、いずれもデフォルトの希釈倍率の10倍以上である例を示したが、本発明はこれに限らず、測定項目によってはデフォルトの希釈倍率の10倍未満の希釈倍率を原倍オーバ希釈倍率DB61cに記憶させておいてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、分析装置40および50として、エンザイムイムノアッセイ装置を用いたが、本発明はこれに限らず、分析装置40として、生化学分析装置、尿分析装置などの他の分析装置を用いることができる。
【0088】
また、上記実施形態では、図2に示すように、デフォルト希釈倍率DB61a、被験者DB61b、原倍オーバ希釈倍率DB61cおよび指定可能希釈倍率DB61dを含む制御部61と、入力部62と、表示部63とを備えた検査情報処理装置60を、上下限値DB45aを含む制御部45と、検出部44と、試料調製部43と、検体吸引部42と、バーコードリーダ41とを備えた分析装置40とは別個に設ける例を示したが、本発明はこれに限らず、図16に示した変形例のように、1つの分析装置40aに、上下限値DB145a、デフォルト希釈倍率DB161a、被験者DB161b、原倍オーバ希釈倍率DB161cおよび指定可能希釈倍率DB161dを含む制御部145と、入力部162と、表示部163と、バーコードリーダ141と、検体吸引部142と、試料調製部143と、検出部144とを全て含め、図13〜図15に示したデータチェック処理を制御部145が実行するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施形態による分析システムの全体構成を示した概略図である。
【図2】図1に示した一実施形態による分析システムのブロック図である。
【図3】図1に示した一実施形態による分析システムに用いられる試験管の側面図である。
【図4】図1に示した一実施形態による分析システムの分析装置の上下限値DBの内容を説明するための図である。
【図5】図1に示した一実施形態による分析システムの検査情報処理装置の被験者DBの内容を説明するための図である。
【図6】図1に示した一実施形態による分析システムの検査情報処理装置の表示部に表示される進捗確認画面を示した図である。
【図7】図1に示した一実施形態による分析システムの検査情報処理装置の表示部に表示される再検選択画面を示した図である。
【図8】図1に示した一実施形態による分析システムの検査情報処理装置の表示部に表示されるマスタ設定画面を示した図である。
【図9】図1に示した一実施形態による分析システムの検体検査の動作の概略を示したフローチャートである。
【図10】図1に示した一実施形態による分析システムの検査情報処理装置から分析装置に送られる測定指示電文の内容を説明するための図である。
【図11】図1に示した一実施形態による分析システムの分析装置と検査情報処理装置とによる処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】図1に示した一実施形態による分析システムの分析装置から検査情報処理装置に送られる結果電文の内容を説明するための図である。
【図13】図11のステップS37に示した一実施形態による分析システムの検査情報処理装置によるデータチェック処理の詳細(サブルーチン)を示したフローチャートである。
【図14】図11のステップS37に示した一実施形態による分析システムの検査情報処理装置によるデータチェック処理の詳細(サブルーチン)を示したフローチャートである。
【図15】図11のステップS37に示した一実施形態による分析システムの検査情報処理装置によるデータチェック処理の詳細(サブルーチン)を示したフローチャートである。
【図16】図1に示した一実施形態による分析システムの分析装置の変形例を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0090】
1 分析システム
40、50 分析装置
43 試料調製部
44 検出部
45 制御部
60 検査情報処理装置
61 制御部
61a デフォルト希釈倍率DB
61c 原倍オーバ希釈倍率DB
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析システム、検査情報処理装置、コンピュータプログラム、および分析装置に関し、特に、複数の希釈条件で検体を処理して解析することが可能な分析システム、検査情報処理装置、コンピュータプログラム、および分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の希釈倍率で検体を希釈して測定することが可能な分析装置が知られている。また、このような分析装置を備えた検査情報処理システムとして、検査情報処理装置から転送された分析依頼情報に含まれる希釈倍率に基づいて検体の測定を行う自動化学分析装置を備えた検査情報処理システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示された検査情報処理システムでは、検査情報処理装置が、過去の測定値に基づいて希釈倍率を自動的に決定し、当該希釈倍率を分析依頼情報に含めて自動化学分析装置に送信する。そして、自動化学分析装置は、送信された希釈倍率に従って検体を希釈し、解析する。
【0004】
例えば、上記検査情報処理装置は、自動化学分析装置に送信する希釈倍率の決定にあたって、前回の測定値が測定範囲の最大80%を越えないような場合には、前回と同じ希釈倍率を使用し、前回の測定値が測定範囲の最大80%を越えているような場合には、前々回と前回の測定値の比に1を加えることによって希釈倍率を算出している。
【0005】
【特許文献1】特開平4−38467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたような従来の検査情報処理システムは、上述のように、過去の測定値に基づいて希釈倍率を決定するものであるため、過去の測定値が存在しない初診患者の検体を測定したが希釈倍率が最適ではなかったような場合には、その検体をどのような希釈倍率で希釈すればよいかを決定することができなかった。従って、このような場合には、最適な希釈倍率で検体が希釈されるまで、希釈倍率を徐々に大きくしながら、何回も測定を繰り返すことが必要であった。このように、測定回数が増加すると、検査効率が低下する。例えば、ホルモン・腫瘍マーカーの検査などにおいては、測定に使用される試薬が非常に高価であるため、測定の回数をできるだけ減少させることが求められている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、最適な希釈倍率を決定するために必要となる測定回数を減少させることが可能な分析システム、検査情報処理装置、コンピュータプログラム、および分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による分析システムは、複数の希釈条件で検体を処理可能に構成された検体処理部と、検体処理部で処理された検体を測定する測定手段と、第1希釈条件と、第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段と、検体処理部に第1希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を測定手段に測定させることにより第1測定値を取得する測定制御手段と、第1測定値と、第1の閾値とを比較する比較手段と、比較手段による比較結果に基づいて、第1希釈条件または第2希釈条件を、検体を提供した被験者の検体を次に測定する場合に用いられる次回希釈条件として決定する決定手段とを備えている。
【0009】
この第1の局面による分析システムでは、上記のように、第1希釈条件と、第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段を設けることによって、例えば、第1希釈条件として、健康な被験者または症状の軽い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈条件を希釈条件記憶手段に記憶させ、第2希釈条件として、症状の重い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈条件を希釈条件記憶手段に記憶させることができる。このようにすれば、過去の測定値が存在しない初診患者(被験者)の検体を測定した場合であっても、その被験者が健康または、軽い疾患を有している被験者の場合は、第1希釈条件が最適な希釈条件となり、その被験者が重い疾患を有している被験者の場合は、第2希釈条件が最適な希釈条件となるので、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数は、1回または2回となる可能性が高い。このように、上記構成によれば、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数を減少させることができる。
【0010】
上記第1の局面による分析システムにおいて、好ましくは、第1希釈条件および第2希釈条件は、それぞれ希釈倍率を含み、第2希釈条件に含まれる希釈倍率は、第1希釈条件に含まれる希釈倍率よりも大きく、決定手段は、第1測定値が第1の閾値より大きい場合に、第2希釈条件を、次回希釈条件として決定する。このように構成すれば、最適な希釈倍率が、第1希釈条件に含まれる希釈倍率よりも大きい高濃度の検体を次に測定する場合に、検体は、希釈倍率の大きい第2希釈条件で処理されるので、その測定値が測定可能範囲に収まる可能性が高い。従って、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数を減少させることができる。
【0011】
この場合、決定手段は、第1測定値が、第1の閾値より小さく、第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合に、第1希釈条件を、次回希釈条件として決定する。このように構成すれば、第1測定値が、所定の範囲内に収まっている場合には、次にその被験者の検体を測定する場合にも同じ希釈条件で検体を処理すれば、最適な希釈倍率で検体を希釈することができる可能性が高い。従って、上記の構成とすることにより、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数を減少させることができる。
【0012】
上記第1の局面による分析システムにおいて、好ましくは、希釈条件記憶手段は、第1希釈条件および第2希釈条件とは異なる第3の希釈条件をさらに記憶し、測定制御手段は、検体処理部に第2希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を測定手段に測定させることにより第2測定値を取得し、比較手段は、第2測定値と、第3の閾値とを比較し、決定手段は、比較手段による比較結果に基づいて、第1希釈条件、第2希釈条件および第3希釈条件のうちいずれか1つを、次回希釈条件として決定する。このように構成すれば、第1希釈条件で検体を処理しても、第2希釈条件で検体を処理しても、測定値が所定の範囲に収まらないような場合であっても、最適な希釈条件で検体を処理することが可能となる。
【0013】
上記第1の局面による分析システムにおいて、好ましくは、決定手段によって決定された次回希釈条件を、被験者を識別するための被験者識別情報と対応付けて記憶する被験者記憶手段をさらに備え、測定制御手段は、検体を提供した被験者の検体を次に測定する際に、検体処理部に、被験者記憶手段に記憶された次回希釈条件で検体を処理させる。このように構成すれば、次回希釈倍率が被験者情報と対応付けて記憶されるので、測定制御手段は、次にその被験者の検体を測定する際に、被験者情報に基づいて、次回希釈倍率を読み出すことができる。
【0014】
上記第1の局面による分析システムにおいて、好ましくは、決定手段によって決定された次回希釈条件を変更可能に表示する表示手段をさらに備えている。このように構成すれば、決定された次回希釈倍率をユーザが認識し、それを変更することが可能となるので、検体の特性(色、粘度、その検体を提供した被験者の病状など)に応じた最適な次回希釈条件をユーザが設定することが可能となる。
【0015】
上記第1の局面による分析システムにおいて、好ましくは、第1希釈条件および第2希釈条件は、それぞれ希釈倍率を含み、第2希釈条件に含まれる希釈倍率は、第1希釈条件に含まれる希釈倍率の10倍以上である。このように構成すれば、所定の検体検査施設では、症状の重い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適な希釈倍率は、健康な被験者または症状の軽い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適な希釈倍率の10倍以上である傾向がある。従って、このような希釈倍率とすることにより、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数を減少させることができる。
【0016】
上記第1の局面による分析システムにおいて、好ましくは、検体処理部と、測定手段と、測定制御手段と、比較手段と、を備えた分析装置と、希釈条件記憶手段と、決定手段とを備え、分析装置に通信可能に接続された検査情報処理装置と、を備え、決定手段は、比較手段による比較結果を分析装置から受信し、受信した比較結果に基づいて、第1希釈条件または第2希釈条件を、次回希釈条件として決定する。このように構成すれば、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数を減少させることが可能な分析システムを、分析装置と検査情報処理装置とから構築することができる。
【0017】
この発明の第2の局面による検査情報処理装置は、複数の希釈条件で検体を処理可能に構成された検体処理部と、検体処理部で処理された検体を測定する測定手段と、検体処理部に第1希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を測定手段に測定させることにより第1測定値を取得する測定制御手段と、第1測定値と、第1の閾値とを比較する比較手段と、を備えた分析装置に通信可能に接続された検査情報処理装置であって、第1希釈条件と、第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段と、比較手段による比較結果に基づいて、第1希釈条件または第2希釈条件を、検体を提供した被験者の検体を次に測定する場合に用いられる次回希釈条件として決定する決定手段とを備えている。
【0018】
この第2の局面による検査情報処理装置では、上記のように、第1希釈条件と、第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段を設けることによって、例えば、第1希釈条件として、健康な被験者または症状の軽い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈条件を希釈条件記憶手段に記憶させ、第2希釈条件として、症状の重い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈条件を希釈条件記憶手段に記憶させることができる。このようにすれば、過去の測定値が存在しない初診患者(被験者)の検体を測定した場合であっても、その被験者が健康または、軽い疾患を有している被験者の場合は、第1希釈条件が最適な希釈条件となり、その被験者が重い疾患を有している被験者の場合は、第2希釈条件が最適な希釈条件となるので、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数は、1回または2回となる可能性が高い。このように、上記構成によれば、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数を減少させることができる。
【0019】
この発明の第3の局面によるコンピュータプログラムは、複数の希釈条件で検体を処理可能に構成された検体処理部と、検体処理部で処理された検体を測定する測定手段と、検体処理部に第1希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を測定手段に測定させることにより第1測定値を取得する測定制御手段と、第1測定値と、第1の閾値とを比較する比較手段と、を備えた分析装置に通信可能に接続されたコンピュータを、第1希釈条件と、第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段と、比較手段による比較結果に基づいて、第1希釈条件または第2希釈条件を、検体を提供した被験者の検体を次に測定する場合に用いられる次回希釈条件として決定する決定手段として機能させる。
【0020】
この第3の局面によるコンピュータプログラムでは、上記のように、第1希釈条件と、第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段としてコンピュータを機能させることによって、例えば、第1希釈条件として、健康な被験者または症状の軽い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈条件を希釈条件記憶手段に記憶させ、第2希釈条件として、症状の重い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈条件を希釈条件記憶手段に記憶させることができる。このようにすれば、過去の測定値が存在しない初診患者(被験者)の検体を測定した場合であっても、その被験者が健康または、軽い疾患を有している被験者の場合は、第1希釈条件が最適な希釈条件となり、その被験者が重い疾患を有している被験者の場合は、第2希釈条件が最適な希釈条件となるので、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数は、1回または2回となる可能性が高い。このように、上記構成によれば、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数を減少させることができる。
【0021】
この発明の第4の局面による分析装置は、複数の希釈条件で検体を処理可能に構成された検体処理部と、検体処理部で処理された検体を測定する測定手段と、第1希釈条件と、第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段と、検体処理部に第1希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を測定手段に測定させることにより第1測定値を取得する測定制御手段と、第1測定値と、第1の閾値とを比較する比較手段と、比較手段による比較結果に基づいて、第1希釈条件または第2希釈条件を、検体を提供した被験者の検体を次に測定する場合に用いられる次回希釈条件として決定する決定手段とを備えている。
【0022】
この第4の局面による分析装置では、上記のように、第1希釈条件と、第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段を設けることによって、例えば、第1希釈条件として、健康な被験者または症状の軽い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈条件を希釈条件記憶手段に記憶させ、第2希釈条件として、症状の重い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈条件を希釈条件記憶手段に記憶させることができる。このようにすれば、過去の測定値が存在しない初診患者(被験者)の検体を測定した場合であっても、その被験者が健康または、軽い疾患を有している被験者の場合は、第1希釈条件が最適な希釈条件となり、その被験者が重い疾患を有している被験者の場合は、第2希釈条件が最適な希釈条件となるので、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数は、1回または2回となる可能性が高い。このように、上記構成によれば、最適な希釈条件を決定するために必要となる測定回数を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
まず、図1〜図8を参照して、本発明の一実施形態による分析システム1の構成について説明する。
【0025】
本発明の一実施形態による分析システム1は、血液検査を行うためのシステムであり、被験者から採取した検体を指定された希釈倍率で処理(調製)し、その処理された検体に含有される特定の物質を測定して解析するためのシステムである。分析システム1は、図1および図2に示すように、ホストコンピュータ10と、クライアント装置20と、複数の試験管100が載置されたラック110を搬送するための搬送部30と、2台の分析装置40および50と、検査情報処理装置60とを備えている。
【0026】
ホストコンピュータ10は、病院などの院内システムを構築するコンピュータであり、クライアント装置20と、検査情報処理装置60とが、有線または無線による通信ができるように接続されている。また、ホストコンピュータ10は、ラック110に載置される試験管100に貼付されるバーコードラベル120(図3参照)のバーコード番号(検体番号)を発行する機能を有している。
【0027】
クライアント装置20は、診察室に設置され、被験者から採取された検体に対して、検査依頼項目(測定項目)を指定するためのコンピュータである。
【0028】
搬送部30は、被験者から採取された検体を収容した複数(本実施形態では、4本)の試験管100(図3参照)が載置されたラック110を分析装置40および50に搬送するように構成されている。この搬送部30は、未処理の検体を収容した試験管100が載置されたラック110をセットするための搬送ライン投入口31と、搬送ライン投入口31にセットされたラック110を分析装置40および50に搬送するための搬送ライン32と、分析を終了した検体を収容した試験管100が載置されたラック110を収容するための搬送ラックヤード33とを有している。
【0029】
分析装置40および50は、エンザイムイムノアッセイ装置であり、搬送ライン32に沿って配列されている。また、分析装置40および50は、それぞれ、検査情報処理装置60と有線または無線による通信ができるように接続されている。この分析装置40および50は、試験管100内の検体を採取するとともに、採取された検体を指定された希釈倍率で処理して、その処理された検体の特性を解析する。分析装置40は、図2に示すように、バーコードリーダ41と、検体吸引部42と、試料調製部43と、検出部44と、制御部45と、入出力インターフェイス46とを含んでいる。なお、本実施形態では、分析装置50は、分析装置40と同じ構成を有しているため、以下では、分析装置40の構成について説明し、分析装置50の説明は省略する。
【0030】
また、本実施形態では、分析装置40のバーコードリーダ41は、試験管100に貼付されるバーコードラベル120(図3参照)のバーコード番号を読み取るために設けられている。また、検体吸引部42は、ラック110に載置される試験管100に収容される検体を採取するために設けられている。
【0031】
ここで、本実施形態では、試料調製部43は、複数の希釈倍率で検体を処理可能であり、検体吸引部42により採取された検体を処理する際に、複数の希釈倍率のうちの指定された希釈倍率で検体を希釈する。この試料調製部43は、本実施形態では、希釈倍率を、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍および50倍に変更可能である。また、試料調製部43は、検査依頼項目(測定項目)に応じて、検体に種々の試薬を添加する機能も有している。なお、本実施形態の説明において、「希釈倍率1倍で検体を処理する」とは、検体を希釈しないことを意味する。
【0032】
また、検出部44は、試料調製部43により処理された検体を測定することによって、光学的情報を取得するために設けられている。また、制御部45は、入出力インターフェイス46を介して、検査情報処理装置60と情報の送受信を行うとともに、バーコードリーダ41、検体吸引部42、試料調製部43および検出部44の動作の制御を行うために設けられている。この制御部45は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどにより構成されている。また、制御部45は、希釈倍率が指定された試料調製部43により処理され、検出部44によって測定された検体の特性を解析し、測定値を取得する機能を有している。そして、制御部45は、測定値の上限を示す上限値と、測定値の下限を示す下限値とを記憶する上下限値DB(データベース)45aを含んでいる。上下限値DB45aには、希釈倍率に対応する上限値および下限値が測定項目ごとに記憶されている。具体的には、検体の希釈倍率は、1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍と変更可能に構成されているため、上下限値DB45aには、図4に示すように、希釈倍率1倍に対応する下限値1および上限値200が格納されている。そして、上下限値DB45aには、同様に、希釈倍率2倍に対応する下限値2および上限値400、希釈倍率5倍に対応する下限値5および上限値1000、希釈倍率10倍に対応する下限値10および上限値2000、希釈倍率20倍に対応する下限値20および上限値4000、および、希釈倍率50倍に対応する下限値50および上限値10000が格納されている。なお、この分析装置40の上下限値DB45aに格納される上限値および下限値は、制御部45が検体の特性を解析することによって算出可能な測定値の最大値および最小値であってもよいし、分析装置40の測定精度上十分な信頼性を得ることが可能な測定値の最大値および最小値であってもよい。なお、図4に示したテーブルは、CA19−9の上下限値を示しており、図示はしないが、HCGなどの他の測定項目の上下限値を示すテーブルもまた、上下限値DB45aに記憶されている。
【0033】
また、本実施形態では、制御部45は、試料調製部43が検体を処理した希釈倍率に応じて、測定値と比較する上限値を上下限値DB45aから読み出し、測定値と読み出した上限値とを比較する機能を有している。また、同様に、制御部45は、試料調製部43が検体を処理した希釈倍率に応じて、測定値と比較する下限値を上下限値DB45aから読み出し、測定値と読み出した下限値とを比較する機能を有している。
【0034】
検査情報処理装置60は、ホストコンピュータ10と、2台の分析装置40および50とに有線または無線による通信ができるように接続されている。また、検査情報処理装置60は、コンピュータにより構成されており、制御部61と、入力部62と、表示部63と、入出力インターフェイス64とを含んでいる。制御部61は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどからなる。
【0035】
制御部61は、入出力インターフェイス64を介して、分析装置40および50と情報の送受信を行うとともに、入力部62および表示部63の動作の制御を行うために設けられている。また、制御部61は、デフォルトの希釈倍率を記憶するデフォルト希釈倍率DB61aと、被験者の情報が格納された被験者DB61bと、原倍オーバ希釈倍率DB61cと、分析装置40の試料調製部43に指定可能な希釈倍率を記憶する指定可能希釈倍率DB61dとを有している。デフォルト希釈倍率DB61aには、検査依頼項目(測定項目)に対応する、デフォルト(原倍)の希釈倍率が記憶されている。このデフォルトの希釈倍率は、本実施形態では1倍であるが、必ずしも、1倍とは限らず、通常の検体に対する希釈倍率であればよい。このデフォルトの希釈倍率は、検査情報処理装置60を病院や検査センターなどの施設に納入する際に、納入者(メーカー)によって、入力部62を使用して測定項目ごとに予め設定される。また、被験者DB61bには、図5に示すように、被験者ID、検体番号、測定項目名、過去結果値および次回希釈倍率を対応付けるテーブルが格納されている。検体番号は、ホストコンピュータ10により発行されるバーコード番号(検体番号)であり、被験者IDは、この検体番号に対応する検体を提供した被験者を識別するための番号である。また、測定項目名(図5の例では、CA−19−9およびHCG)としては、クライアント装置20により入力を受け付けられた検査依頼項目(測定項目)がホストコンピュータ10を介して入力されている。なお、この検査依頼項目(測定項目)は、クライアント装置20からのみではなく、検査情報処理装置60からも入力可能である。また、過去結果値としては、過去の結果値(図5の例では、CA−19−9の結果値が400、HCGの結果値が450)と、その結果値に対応する日付および測定項目とが格納されている。結果値とは、分析システム1の使用者に報告するために最終的に表示部63に表示される検体の解析結果である。なお、被験者が初診患者である場合には、この過去結果値の情報は格納されていない。また、次回希釈倍率としては、被験者から採取した検体を、次に測定するときの希釈倍率が測定項目と対応付けて格納されている。
【0036】
ここで、本実施形態では、原倍オーバ希釈倍率DB61cには、デフォルトの希釈倍率よりも倍率が大きい原倍オーバ希釈倍率が記憶されている。この原倍オーバ希釈倍率は、分析システム1の使用者または納入者(メーカー)により、入力部62を使用して測定項目毎に設定されており、本実施形態では、いずれもデフォルトの希釈倍率の10倍以上の希釈倍率が記憶されている。この原倍オーバ希釈倍率は、デフォルトの希釈倍率での測定値が上限値よりも大きい場合に、再測定の際に指定される希釈倍率である。
【0037】
また、本実施形態では、指定可能希釈倍率DB61dは、試料調製部43によって処理可能な倍率である1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、および50倍が記憶されている。
【0038】
また、表示部63は、分析システム1による検査の進捗状況を確認するための画面(進捗確認画面)、所定の検体に対する結果値の確認や結果値の選択承認を行うための画面(再検選択画面)、および、各測定項目に対して、データチェック方法や基準値の変更を設定するためのメンテナンス用の画面(マスタ設定画面)などを表示するために設けられている。
【0039】
進捗確認画面には、図6に示すように、検体番号を表示するための表示欄631、氏名カナを表示するための表示欄632、診療科を表示するための表示欄633、病棟を表示するための表示欄634、ラック110(画面中ではRack)の番号を表示するための表示欄635、試験管100(画面中ではTube)のラック上の位置を表示するための表示欄636、早急に検査すべき検体であることを示す表示欄637、経過時間を表示するための表示欄638、および、分析装置40における検体の処理状況を表示するための表示欄639、および、分析装置50における検体の処理状況を表示するための表示欄640が表示されている。検体番号を表示するための表示欄631には、分析装置40のバーコードリーダ41により読み取られたバーコードラベル120(図3参照)のバーコード番号が表示されており、氏名カナを表示するための表示欄632には、検体を提供した被験者の氏名がカタカナで表示されている。また、診療科を表示するための表示欄633には、検査を依頼した診療科が表示され、病棟を表示するための表示欄634には、検査を依頼した診療科が所在する病棟が表示されている。そして、早急に検査すべき検体であることを示すための表示欄637には、検体を早急に検査する必要があることを知らせるフラグ(たとえば、「C」)が表示され、検査技師が確認できるようになっている。また、経過時間を表示するための表示欄638には、分析装置40のバーコードリーダ41によるバーコードラベル120の読み取りが開始されてからの経過時間が表示されている。また、分析装置40および50における検体の処理状況を表示するための表示欄639および640には、それぞれの検体について、未検査の測定項目が存在することを示す「○」、再検査を行う必要があることを示す「再」、検体から取得された結果値の確認(承認)を求めることを示す「済」、および、全ての検査依頼項目について結果値の確認が終了したことを示す「◎」のいずれかが表示されている。また、進捗確認画面の下方に位置するボタン641をクリックすることにより、再検選択画面が表示される。
【0040】
再検選択画面には、図7に示すように、所定の検体に対する種々の情報を表示するための表示欄642、検査依頼項目が表示される表示欄(ボタン)643、測定によって得られた結果値(画面中では「結果」)を表示するための表示欄644、結果値を取得した際の希釈倍率(画面中では「希釈率」)を表示するための表示欄645、再検査の理由(画面中では「再」)を表示するための表示欄646、結果値のレベル(画面中では「*」)を表示するための表示欄647、結果ステータス(画面中では「R」)を表示するための表示欄648、1回目および2回目の測定値をそれぞれ表示するための表示欄649および650、1回目および2回目の測定値に対する再検査の理由をそれぞれ表示するための表示欄651および652、1回目および2回目の測定値を取得した際の希釈倍率をそれぞれ表示するための表示欄653および654、次回希釈倍率(画面中では「次回希釈率」)を表示するための表示欄(記入欄)655、前回の結果値(画面中では「前回値」)を表示するための表示欄656、前回の結果値を取得した日付が表示される表示欄657、および、再測定の指示を実行するためのボタン658が表示されている。
【0041】
また、表示欄(ボタン)643には、分析装置40が検査可能な複数の検査依頼項目(測定項目)が表示されている。なお、この表示欄(ボタン)643に表示される測定項目は、クライアント装置20により検体毎に指定された検体毎の測定項目を表示することも可能である。また、表示欄644には、再検査を含む複数回の測定によって最終的に取得された結果値が表示されている。また、表示欄646、651および652には、後述する各種エラー情報である、「装置エラー」の発生を示すフラグ「A」、「上限スケールオーバ異常」および「下限スケールオーバ異常」の発生を示すフラグ「B」、「希釈低値チェック異常」の発生を示すフラグ「C」、「バラツキチェック異常」の発生を示すフラグ「G」、「前回値チェック異常」の発生を示すフラグ「D」、および、いずれにも該当しないことを示すフラグ「Z」のいずれかが表示される。また、表示欄648には、所定の測定項目については、未検査または再検査の必要があることを示すフラグ「0」と、検体から取得された結果値の承認を求めることを示すフラグ「1」と、結果値を承認したことを示すフラグ「2」とのいずれかが表示される。
【0042】
また、本実施形態では、表示欄(記入欄)655には、最新の測定値に基づいて自動的に決定された次回測定時の希釈倍率(次回希釈倍率)が表示されている。この表示欄(記入欄)655に表示される次回希釈倍率は、入力部62(図2参照)を用いて変更可能である。ただし、分析装置40の試料調製部43が希釈可能な希釈倍率(1倍、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍)以外の値が入力された場合には、エラーメッセージが表示される。
【0043】
また、再検選択画面において、各測定項目が表示される表示欄(ボタン)643をクリックすることにより、所定の測定項目について再検査の指示を行うことが可能となる。また、表示欄(ボタン)643をクリックせずに、ボタン658をクリックした場合には、所定の検体に指定された全ての測定項目に対して再測定の指示を行うことが可能である。
【0044】
次に、図8に示したマスタ設定画面は、メンテナンス用の画面であり、管理者のみがデータチェック方法や基準値の変更を設定可能なようにパスワードなどによりロックされている。このマスタ設定画面では、図8に示すように、検査依頼項目(画面中では「検査項目」)を表示するための検査項目659、再検選択画面(図7参照)の表示欄647に示される範囲レベルを設定するための範囲設定項目660、および、測定値のデータチェックを行うための複数のパラメータを指定するための記入欄661a〜661eを有するデルタチェック項目661が表示されている。
【0045】
具体的には、図8に示すように、検査項目659には、検査依頼項目のうちの1つ(本実施形態では、「CA19−9」)が表示されている。また、範囲設定項目660には、結果値の範囲を区分するための記入欄660a〜660fが設けられており、記入欄660c(画面中では「l」)には、「0.0」が記入されており、記入欄660d(画面中では「h」)には、「37.0」が記入されている。これにより、分析装置40により取得される測定項目「CA19−9」についての結果値が、「0.0」より大きく「37.0」以下である場合、再検選択画面(図7参照)の表示欄647には、フラグ「l」が表示される。また、結果値が、「37.0」より大きい場合、表示欄647には、フラグ「h」が表示される。また、デルタチェック項目661の記入欄661a(画面中では「0」)には、前回値有効期限(本実施形態では、「45」)が指定されており、ここに設定された日数より以前の結果値は無効扱いとなる。また、記入欄661b(画面中では「1」)には、再検パターン(本実施形態では、「4」)が指定されており、再検査の際の運用を指定している。たとえば、測定項目によっては、再検査時であっても希釈を行わない運用をする測定項目もあるため、この記入欄661bで再検査時の運用について指定している。
【0046】
また、記入欄661c(画面中では「2」)には、前回値上変動チェック値(本実施形態では、「200」)と前回値下変動チェック値(本実施形態では、「70」)とが指定されている。この前回値上変動チェック値および前回値下変動チェック値は、検体の過誤(検体の取り違えなど)が生じるのを抑制するために用いられるパラメータである。また、記入欄661d(画面中では「3」)には、原倍オーバ希釈倍率(本実施形態では、「10」)と希釈測定時有効最小値(本実施形態では、「30」)とが指定されている。この原倍オーバ希釈倍率は、検体を原倍(デフォルトの希釈倍率)で測定した測定値が、上下限値DB45aに格納される上限値より大きい場合に、次回希釈倍率として分析装置40の試料調製部43にセットされる希釈倍率であり、原倍オーバ希釈倍率DB61cに格納されている。また、希釈測定値有効最小値は、分析装置40により得られた測定値が、信頼度の高い希釈倍率で測定して得られたものであるか否かを判断するためのパラメータである。つまり、この希釈測定値有効最小値は、今回の希釈倍率よりも小さい希釈倍率で測定した場合でも、測定値が上下限値の範囲内に納まる可能性のある検体を、次回測定時に、今回の希釈倍率よりも小さい(1レベル低い)希釈倍率で測定させるために用いられるパラメータである。また、記入欄661e(画面中では「4」)には、バラツキチェック値が指定されている。このバラツキチェック値(本実施形態では、85%)は、再測定時に得られた測定値が一回目の測定値と比較して突発的に高い値となった場合を判断するためのパラメータである。
【0047】
次に、図1〜図3、図9および図10を参照して、本発明の一実施形態による分析システム1の検体検査の手順について説明する。なお、図9に付した番号は、図1に付した番号と対応している。
【0048】
まず、図9のステップS1において、検査技師が、試験管100が載置されたラック110を図1に示した分析システム1の搬送ライン投入口31にセットした後、ステップS2において、ラック110が搬送ライン32により移動される。これにより、ステップS3において、分析装置40にラック110が到着して、分析装置40のバーコードリーダ41により試験管100に貼付されるバーコードラベル120(図3参照)のバーコード番号が読み取られる。そして、この読み取られたバーコード番号に基づき、ステップS4において、分析装置40から検査情報処理装置60に依頼の問い合わせが行われる。具体的には、分析装置40から検査情報処理装置60にバーコード番号(検体番号)が送信され、バーコード番号に対応する検体に対して行うべき測定項目(検査依頼項目)の内容や患者情報が問い合わされる。そして、本実施形態では、ステップS5において、検査情報処理装置60の制御部61は、分析装置40から送信されたバーコード番号に基づいて、被験者DB61bから測定項目とその測定項目に対応する希釈倍率(次回希釈倍率)とを取得し、測定指示電文を作成する。その後、検査情報処理装置60の制御部61は、ステップS6において、ステップS5において作成した測定指示電文を、分析装置40に送信する。この測定指示電文には、図10に示すように、バーコードリーダ41により読み取られた検体番号と、その検体番号に対応する検体に対して行われる測定項目名と、その測定項目に対応する測定希釈倍率との情報が含まれている。
【0049】
そして、ステップS7において、図10に示した測定指示電文に測定項目があるか否かの判断が分析装置40により行われる。ステップS7において、測定項目があると判断された場合には、ステップS8において、測定指示電文に従い、分析装置40の検体吸引部42(図2参照)により試験管100に収容される検体の吸引が行われて測定が実施される。検体吸引の後、ステップS9において、ラック110を搬送ライン32によって搬送することによって、そのラック110を分析装置50の方向に移動させる。一方、ステップS7において、測定項目がないと判断された場合には、ステップS8における測定が実施されず、ステップS9に進み、上記処理が実行される。これにより、ステップS10において、ラック110が分析装置50に到着して、ステップS3からステップS9までの処理が実行され、ラック110が再び搬送ライン32により搬送される。そして、ステップS11において、搬送ライン32によって搬送されるラック110が、搬送ラックヤード33に到着した後、ステップS12において、検査技師が再測定の必要な検体をピックアップして、ステップS1に戻す。
【0050】
次に、図2〜図4および図10〜図12を参照して、上記の手順を実行するために、本発明の一実施形態による分析システム1の分析装置40と、検査情報処理装置60とが実行する制御フローについて説明する。なお、図11に付したアルファベットは、図1に付したアルファベットと対応している。
【0051】
まず、分析装置40側では、図11のステップS20において、検体が収容される試験管100が載置されたラック110が、分析装置40に到着したか否かの判断がなされ、ラック110が到着したと判断されれば、ステップS21において、バーコードリーダ41により試験管100に貼付されたバーコードラベル120(図3参照)のバーコード番号の読取が行われる。一方、ステップS20において、ラック110が分析装置40に到着していないと判断された場合は、ラック110が分析装置40に到着するまでステップS20の判断が繰り返し行われる。そして、ステップS22において、分析装置40から検査情報処理装置60に依頼の問い合わせ(バーコード番号の送信)が行われる。
【0052】
そして、検査情報処理装置60側では、ステップS23において、分析装置40からの依頼の問い合わせ(バーコード番号)を受信したか否かの判断が行われる。そして、ステップS23において、依頼の問い合わせを受信していないと判断された場合は、依頼の問い合わせを受信するまで、ステップS23の判断が繰り返し行われる。一方、ステップS23において、分析装置40からの依頼の問い合わせを受信したと判断された場合には、ステップS24において、受信したバーコード番号に基づいて、検査情報処理装置60の制御部61が、被験者DB61bから測定項目名と次回希釈倍率とを読み込むことによって、図10に示した測定指示電文を作成する。この作成された測定指示電文は、ステップS25において、検査情報処理装置60から分析装置40に送信される。
【0053】
そして、分析装置40側では、ステップS26において、検査情報処理装置60のステップS25において送信された測定指示電文(図10参照)を受信したか否かの判断が行われる。そして、ステップS26において、測定指示電文を受信していないと判断された場合は、測定指示電文を受信するまで、ステップS26の判断が繰り返し行われる。一方、ステップS26において、測定指示電文を受信したと判断された場合には、ステップS27aにおいて、測定指示電文に測定項目があるか否かが判断される。そして、ステップS27aにおいて、測定指示電文に測定項目があると判断された場合には、ステップS27bにおいて、測定指示電文に次回希釈倍率があるか否かが判断される。そして、ステップS27bにおいて、測定指示電文に次回希釈倍率があると判断された場合には、ステップS28において、分析装置40の検体吸引部42(図2参照)により試験管100に収容される検体の吸引(採取)が行われる。そして、ステップS29において、分析装置40の試料調製部43(図2参照)により、測定項目毎に、指定された希釈倍率で試料の調製(検体の処理)が行われる。すなわち、本実施形態では、検査情報処理装置60の制御部61により作成された測定希釈倍率を含む測定指示電文により、分析装置40の試料調製部43に測定希釈倍率が指定されて検体の処理が行われる。その後、ステップS29の処理により得られた試料に光を照射することによって、ステップS30において、検出部44(図2参照)が試料(検体)から光学的情報を検出し、さらに、ステップS31において、分析装置40の制御部45(図2参照)により、検出された光学的情報が解析され、測定値が取得される。
【0054】
ここで、本実施形態では、ステップS32において、分析装置40の制御部45(図2参照)は、上記ステップS31において光学的情報を解析することにより取得される測定値の上下限値チェックを実行する。具体的には、制御部45は、ステップS26において受信した測定指示電文(図10参照)に含まれる希釈倍率に対応する下限値および上限値を上下限値DB45a(図4参照)を用いて参照するとともに、測定用試料から得られた測定値が、参照された下限値と上限値との間の値であるかが判断される。たとえば、測定指示電文の測定項目「CA19−9」に対応する希釈倍率が図10に示す「2倍」である場合には、分析装置40の制御部45は、図4に示した上下限値DB45aの2倍に対応する下限値2と上限値400とを参照する。そして、分析装置40の制御部45は、検体から得られた測定値が下限値2と上限値400との間の値であるか否かを判断する。
【0055】
そして、ステップS33において、分析装置40の制御部45により取得された測定値に基づいて、図12に示すような結果電文が作成される。この結果電文は、ステップS26において受信した測定指示電文(図10参照)の測定項目が複数ある場合には、測定項目毎に結果電文が複数作成される。この結果電文には、図12に示すように、検体番号、測定項目名、測定値、測定希釈倍率およびエラー情報についての情報が含まれている。なお、本実施形態では、測定項目(CA19−9)を2倍の測定希釈倍率で測定した測定値(450)が、希釈倍率2倍に対応する上下限値DB45aの上限値400より大きい値となったため、エラー情報が「上限スケールオーバ異常」となっている。
【0056】
そして、分析装置40は、ステップS33において作成された結果電文(図12参照)を、ステップS34において、検査情報処理装置60に送信する。その後、ステップS35において、分析装置40のシャットダウンを行うか否かの判断が行われる。また、ステップS27aにおいて、測定指示電文に測定項目がないと判断された場合、およびステップS27bにおいて、測定指示電文に次回希釈倍率がないと判断された場合にも、ステップS35に進み、上記したシャットダウンを行うか否かの判断が行われる。そして、ステップS35において、シャットダウンを行うと判断した場合は、ステップS36において、分析装置40のシャットダウン処理が行われ、分析装置40の処理が終了する。なお、分析装置40のステップS20〜S22およびステップS26〜S34の一連の処理は、ステップS35において、分析装置40のシャットダウンを行うと判断されるまで繰り返し行われる。
【0057】
一方、ステップS34において分析装置40から結果電文(図12参照)が送信された検査情報処理装置60側では、ステップS37において、結果電文を受信したか否かの判断が行われる。そして、ステップS37において、結果電文を受信していないと判断された場合は、結果電文を受信するまで、ステップS37の判断が繰り返し行われる。一方、ステップS37において、結果電文を受信したと判断された場合には、ステップS38において、結果電文に含まれる情報に基づいて、データチェック処理が行われる。そして、ステップS38において所定のデータチェック処理が行われた結果に基づく結果値および測定値を、ステップS39において、検査情報処理装置60の表示部63(図2、図6および図7参照)に表示する。その後、ステップS40において、検査情報処理装置60のシャットダウンを行うか否かの判断が行われる。そして、ステップS40において、シャットダウンを行うと判断した場合は、ステップS41において、検査情報処理装置60のシャットダウン処理が行われ、検査情報処理装置60の処理が終了する。なお、検査情報処理装置60のステップS23〜S25およびステップS37〜S39の一連の処理は、ステップS40において、検査情報処理装置60のシャットダウンを行うと判断されるまで繰り返し行われる。
【0058】
次に、図1、図2、図4、図5、図7、図8および図12〜図15を参照して、図11のステップS38におけるデータチェック処理について詳細に説明する。
【0059】
分析装置40(図1および図2参照)から結果電文(図12参照)を受信すると、ステップS51において、分析装置40にエラーが発生したか否かが判断される。具体的には、結果電文のエラー情報に、「装置エラー」の情報が含まれているか否かが判断される。この「装置エラー」は、分析装置40の異常(チューブのつまり、試薬切れなど)が主な原因となる。ステップS51において、装置エラーが発生したと判断された場合には、ステップS52において、被験者DB61bの次回希釈倍率(図5参照)に結果電文に含まれる測定希釈倍率をそのままセットする。なお、この場合、図7に示した再検選択画面の表示欄646、651および652の所定の位置には、「装置エラー」の発生を示すフラグ「A」が表示される。その後、図15に示すステップS53に進み、今回の測定が初回測定(本日の1回目の測定)か否かが判断される。そして、ステップS53において、今回の測定が初回測定であると判断した場合は、ステップS54において、項目を要再検状態にする。このステップS54において、項目を要再検査状態にする場合には、図7に示した再検選択画面の結果ステータスを表示するための表示欄648に「0」が表示され、再検査が実行される。一方、ステップS53において、今回の測定が初回測定でないと判断した場合は、ステップS55において、項目を要確認状態にする。このステップS55において、項目を要確認状態にする場合には、図7に示した再検選択画面の表示欄648に「1」が表示され、検査技師の確認が求められる。
【0060】
一方、ステップS51において、装置エラーが発生していないと判断された場合には、ステップS56において、測定値が上限スケールオーバ異常であるか否かが判断される。具体的には、結果電文のエラー情報に、「上限スケールオーバ異常」の情報が含まれているか否かが判断される。この「上限スケールオーバ異常」は、上述のように、測定値が、上限値DB45aに記憶されている所定の上限値を越えていることを示している。ステップS56において、上限スケールオーバ異常だと判断された場合には、ステップS57において、測定値を「上限値<」に変更して、再検選択画面(図7参照)に表示する。たとえば、図7に示した再検選択画面の測定項目「CA15−3」については、分析装置40により5倍の希釈倍率での測定値が上限スケールオーバ異常だと判断された場合に、5倍の希釈倍率に対応する上下限値DB45aの上限値1000に基づいて、測定値を「1000.0<」に変更して表示欄649に表示している。なお、この場合、図7に示した再検選択画面の表示欄646、651および652の所定の位置には、「上限スケールオーバ異常」の発生を示すフラグ「B」が表示される。その後、ステップS58において、今回の測定希釈倍率が原倍(デフォルトの希釈倍率)であるか否かが判断される。そして、ステップS58において、今回の測定希釈倍率が原倍ではないと判断された場合は、ステップS59において、今回の測定希釈倍率が有効最大値であるか否かが判断される。この有効最大値は、分析装置40の試料調製部43による希釈倍率の最大値であり、本実施形態では、50倍(図4参照)に設定されている。
【0061】
そして、本実施形態では、ステップS59において、今回の測定希釈倍率が有効最大値(50倍)であると判断された場合は、ステップS60において、被験者DB61bの次回希釈倍率の欄を空白にする。つまり、本実施形態では、ステップS56およびS59による処理により、有効最大値の希釈倍率で希釈して得られた測定値が、上下限値DB45aの上限値よりも大きければ、被験者DB61bの次回希釈倍率には何も記憶させない。これにより、次回測定時に、ステップS27b(図11参照)での判断結果が「No」となるので、この検体を提供した被験者の検体が分析装置40および50によって測定されずに、図7に示した再検選択画面の表示欄649に「Through」が表示される。
【0062】
このように、有効最大値の希釈倍率で希釈して得られた測定値が、上下限値DB45aの上限値よりも大きい場合には、分析システム1での測定は不可能であるので、使用者は、その検体を提供した被験者の検体を、顕微鏡により分析するか、手動で50倍以上に希釈して分析装置40を用いて測定する。
【0063】
ここで、本実施形態では、ステップS58において、今回の測定希釈倍率が原倍であると判断された場合は、ステップS61において、被験者DB61bの次回希釈倍率に原倍オーバ希釈倍率DB61cに格納されている「原倍オーバ希釈倍率」の値をセットする。つまり、本実施形態では、ステップS56およびS58による処理により、デフォルトの希釈倍率(原倍)で検体を希釈して得られた測定値が、上下限値DB45aの上限値よりも大きければ、原倍オーバ希釈倍率を、被験者DB61bの次回希釈倍率に記憶させる。また、この場合、再検選択画面(図7参照)の表示欄(記入欄)655に、原倍オーバ希釈倍率が表示される。なお、原倍オーバ希釈倍率を含む表示欄(記入欄)655に表示される希釈倍率は、入力部62(図2参照)により変更可能であり、変更された原倍オーバ希釈倍率は、被験者DB61bの次回希釈倍率に設定される。
【0064】
また、本実施形態では、ステップS59において、今回の測定希釈倍率が有効最大値(50倍)ではないと判断された場合は、ステップS62において、被験者DB61bの次回希釈倍率には今回の測定希釈倍率の1レベル上の希釈倍率を指定可能希釈倍率DB61dから読み出してセットする。つまり、本実施形態では、ステップS56、S58およびS59による処理により、デフォルトの希釈倍率(原倍)よりも大きい倍率の希釈倍率で検体を希釈して得られた測定値が、上下限値DB45aの上限値よりも大きければ、1レベル上の希釈倍率を被験者DB61bの次回希釈倍率に記憶させる。たとえば、2倍の測定希釈倍率で測定した場合には、2倍の1レベル上の5倍の希釈倍率を被験者DB61bの次回希釈倍率にセットする。そして、ステップS60〜S62のいずれかの処理が実行された後、図15に示すステップS53に進み、ステップS53〜S55による上記処理がなされる。
【0065】
一方、ステップS56において、分析装置40により測定値が上限スケールオーバ異常ではないと判断された場合には、ステップS63において、測定値が下限スケールオーバ異常であるか否かが判断される。具体的には、結果電文(図12参照)のエラー情報に、「下限スケールオーバ異常」の情報が含まれているか否かが判断される。この「下限スケールオーバ異常」は、測定値が、上限値DB45aに記憶されている所定の下限値より小さいことを示している。ステップS63において、下限スケールオーバ異常だと判断された場合には、ステップS64において、測定値を「下限値>」に変更して、再検選択画面に表示する。この場合、再検選択画面の表示欄646、651および652の所定の位置には、「下限スケールオーバ異常」の発生を示すフラグ「B」が表示される。その後、ステップS65において、今回の測定希釈倍率が原倍であるか否かが判断される。そして、ステップS65において、今回の測定希釈倍率が原倍ではないと判断された場合は、ステップS66において、被験者DB61bの次回希釈倍率に、今回の測定希釈倍率の1レベル下の希釈倍率を指定可能希釈倍率DB61dから読み出してセットする。
【0066】
つまり、本実施形態では、ステップS63およびS65による処理により、所定の希釈倍率で検体を希釈して得られた測定値が、上下限値DB45aの下限値よりも小さければ、所定の希釈倍率より1レベル小さい希釈倍率を、被験者DB61bの次回希釈倍率に記憶させて、次回希釈時に、検査情報処理装置60の制御部61により、この次回希釈倍率を試料調製部43に指定する。そして、ステップS66の処理が実行された後、図15に示すステップS53に進み、ステップS53〜S55による上記処理がなされる。
【0067】
一方、ステップS63において、測定値が下限スケールオーバ異常ではないと判断された場合には、ステップS67において、今回の測定希釈倍率が原倍であるか否かが判断される。そして、ステップS67において、今回の測定希釈倍率が原倍ではないと判断された場合は、ステップS68において、希釈低値チェック異常か否かの判断がなされる。具体的には、測定値を今回の希釈倍率で割った値が、マスタ設定画面(図8参照)のデルタチェック項目661の記入欄661dで設定可能な「希釈測定時有効最小値(本実施形態では、30)」未満の場合に、希釈低値チェック異常だと判断される。たとえば、図8に示すように、「希釈測定時有効最小値」が30である場合に、希釈倍率が10倍で、かつ、測定値が300未満であるならば、測定値を今回の希釈倍率で割った値が30未満であるので希釈低値チェック異常だと判断される。これにより、今回の測定希釈倍率よりも1レベル下の希釈倍率であっても十分測定範囲に納まる測定値であるか否か、つまり、今回の測定希釈倍率により測定された検体が「希釈しすぎ」であるか否かを判断することが可能である。これにより、必要以上に希釈されていない検体から測定値を得ることが可能になるため、信頼度の高い測定値を得ることが可能となる。なお、希釈低値チェック異常である場合、再検選択画面の表示欄646、651および652の所定の位置には、「希釈低値チェック異常」の発生を示すフラグ「C」が表示される。そして、ステップS68において、今回の測定値が希釈低値チェック異常であると判断された場合は、ステップS69において、被験者DB61bの次回希釈倍率に、今回の測定希釈倍率の1レベル下の希釈倍率を指定可能希釈倍率DB61dから読み出してセットする。そして、ステップS69の処理が実行された後、図15に示すステップS53に進み、ステップS53〜S55による上記処理がなされる。
【0068】
また、ステップS65およびS67において、今回の測定希釈倍率が原倍であると判断された場合は、図14に示したステップS70において、今回の測定が再測定である(初回測定(本日1回目の測定)ではない)か否かが判断される。また、ステップS68において、今回の測定値が希釈低値チェック異常ではないと判断された場合にも、ステップS70に進み、上記した判断が行われる。そして、ステップS70において、今回の測定が再測定であると判断された場合は、ステップS71において、初回(本日の1回目)測定時に、上限スケールオーバ異常が発生したか否かが判断される。そして、ステップS71において、初回測定時に、上限スケールオーバ異常が発生したと判断された場合は、ステップS72において、バラツキチェック異常か否かが判断される。具体的には、今回の測定値が、初回(本日の1回目)の測定値に、マスタ設定画面(図8参照)のデルタチェック項目661の記入欄661eで設定可能な「バラツキチェック値(本実施形態では、85%(0.85))」を乗じた値より小さい場合に、バラツキチェック異常だと判断される。たとえば、図8に示すように、「バラツキチェック値」が85%である場合に、初回の測定値が「1000<」で、かつ、今回の測定値が850未満であるならば、バラツキチェック異常だと判断される。なお、バラツキチェック値は上記85%などの100%に近い値を設定するのが好ましい。また、この場合、再検選択画面(図7参照)の表示欄646、651および652の所定の位置には、「バラツキチェック異常」の発生を示すフラグ「G」が表示される。
【0069】
そして、ステップS72において、今回の測定値がバラツキチェック異常であると判断された場合は、ステップS73において、今回の測定希釈倍率が原倍であるか否かが判断される。そして、ステップS73において、今回の測定希釈倍率が原倍ではないと判断された場合は、ステップS74において、被験者DB61bの次回希釈倍率に、今回の測定希釈倍率の1レベル下の希釈倍率を指定可能希釈倍率DB61dから読み出してセットする。一方、ステップS73において、今回の測定希釈倍率が原倍であると判断された場合は、ステップS75において、被験者DB61bの次回希釈倍率には原倍をデフォルト希釈倍率DB61aから読み出してセットする。そして、ステップS74およびS75の処理が実行された後、図15に示すステップS53に進み、ステップS53〜S55による上記処理がなされる。
【0070】
また、ステップS70において、今回の測定が再測定ではない(初回測定である)と判断された場合は、ステップS76において、有効前回値が存在するか否かが判断される。具体的には、マスタ設定画面(図8参照)のデルタチェック項目661の記入欄661aで設定可能な「前回値有効期限(本実施形態では、45日)」以内の結果値が存在するか否かが、被験者DB61bの過去結果の欄を参照して判断される。たとえば、図8に示すように、「前回値有効期限」が45日である場合に、前回の結果値が45日以上前の値である場合はその結果値を無効とし、前回の結果値が45日以内の値である場合はその結果値を有効とする。また、ステップS71において、初回測定時に、上限スケールオーバ異常が発生していないと判断された場合、および、ステップS72において、バラツキチェック異常ではないと判断された場合にも、ステップS76に進み、上記した判断が行われる。
【0071】
また、ステップS76において、有効前回値が存在すると判断された場合は、ステップS77において、前回値チェック異常か否かの判断が行われる。この前回値チェックは、特殊な場合を除いて検査結果の変動が少ないことを利用して、今回の測定値と前回(直近)の結果値とを比較することにより検体の取り違えなどを検出するために行う処理である。具体的には、今回の測定値が、下記の式(1)または式(2)のいずれかを満たす場合には、前回値チェック異常だと判断される。
(今回の測定値)>(前回の結果値)×{1+(「前回値上変動チェック値」/100)}・・・(1)
(今回の測定値)<(前回の結果値)×{1−(「前回値下変動チェック値」/100)}・・・(2)
【0072】
なお、この「前回値上変動チェック値」および「前回値下変動チェック値」は、マスタ設定画面(図8参照)のデルタチェック項目661の記入欄661cで設定可能に構成されている。たとえば、図8に示すように、「前回値上変動チェック値」が200、「前回値下変動チェック値」が70、および、前回の測定値が1000である場合に、今回の測定値が3000より大きい、または、300未満であるならば、上記式(1)または式(2)により、前回値チェック異常であると判断される。なお、この場合、再検選択画面の表示欄646、651および652の所定の位置には、「前回値チェック異常」の発生を示すフラグ「D」が表示される。そして、ステップS77において、前回値チェック異常であると判断された場合は、ステップS78において、被験者DB61bの次回希釈倍率には今回の測定希釈倍率をそのままセットする。そして、ステップS78の処理が実行された後、図15に示すステップS53に進み、ステップS53〜S55による上記処理がなされる。
【0073】
一方、ステップS76において、有効前回値が存在しないと判断された場合は、図15のステップS79に進み、被験者DB61bの次回希釈倍率に今回の測定希釈倍率をそのままセットする。また、ステップS77において、前回値チェック異常ではないと判断された場合にも、ステップS79に進み、上記処理が実行される。その後、ステップS80において、今回の測定が再測定である(初回測定ではない)か否かが判断される。そして、ステップS80において、今回の測定が再測定であると判断された場合は、ステップS55において、項目を要確認状態にする。一方、ステップS80において、今回の測定が再測定ではない(初回測定である)と判断された場合は、ステップS81において、項目を自動承認する。具体的には、ステップS81において、項目を自動承認する場合には、図7に示した再検選択画面の結果ステータスを表示するための表示欄648に「2」が表示されるとともに、測定値が表示欄644に表示される。なお、この場合、再検選択画面の表示欄646、651および652の所定の位置には、フラグ「Z」が表示される。そして、この測定値が、被験者DB61b(図5参照)の過去結果値に格納される。
【0074】
なお、上限スケールオーバ(ステップS56)、下限スケールオーバ(ステップS63)、希釈低値チェック異常(ステップS68)、バラツキチェック異常(ステップS72)、および前回値チェック異常(ステップS77)のいずれにも該当しなかった測定値は、結果値として用いられ、再検選択画面の表示欄644に表示される。
【0075】
また、ステップS38(図11参照)でセットされた次回希釈倍率は、表示欄655に変更可能に表示されるので、分析システム1の使用者は、検体を搬送ラックヤード33からピックアップして、検体の色、粘度などを観察することによって、最適な希釈倍率を推定し、表示欄655にその希釈倍率を入力することができる。
【0076】
本実施形態では、上記のように、検査情報処理装置60の制御部61にデフォルト希釈倍率DB61aと原倍オーバ希釈倍率DB61cとを設けることによって、デフォルト(原倍)の希釈倍率として、健康な被験者または症状の軽い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈倍率をデフォルト希釈倍率DB61aに記憶させ、原倍オーバ希釈倍率(本実施形態では、いずれもデフォルトの希釈倍率の10倍以上)として、症状の重い疾患を有する被験者の検体を測定する場合に最適となる可能性の高い希釈倍率を原倍オーバ希釈倍率DB61cに記憶させることができる。このようにすれば、過去の測定値が存在しない初診患者(被験者)の検体を測定した場合であっても、その被験者が健康または、軽い疾患を有している被験者の場合は、デフォルト(原倍)の希釈倍率が最適な希釈倍率となり、その被験者が重い疾患を有している被験者の場合は、原倍オーバ希釈倍率が最適な希釈倍率となるので、最適な希釈倍率を決定するために必要となる測定回数は、1回または2回となる可能性が高い。このように、本実施形態では、最適な希釈倍率を決定するために必要となる測定回数を減少させることができる。
【0077】
また、本実施形態では、原倍オーバ希釈倍率DB61cに格納される原倍オーバ希釈倍率を、デフォルト希釈倍率DB61aに格納されるデフォルト(原倍)の希釈倍率の10倍以上にするとともに、制御部61に、デフォルトの希釈倍率により測定された測定値がデフォルトの希釈倍率に対応する上限値より大きい場合に、デフォルトの希釈倍率より1レベル大きい希釈倍率あるいは原倍オーバ希釈倍率を、次回希釈倍率として決定させることによって、最適な希釈倍率が、デフォルト希釈倍率DB61aに格納されるデフォルトの希釈倍率よりも大きい高濃度の検体を次に測定する場合に、検体は、デフォルトの希釈倍率より1レベル大きい希釈倍率あるいはデフォルトの希釈倍率の10倍以上の原倍オーバ希釈倍率で処理されるので、その測定値が測定可能範囲に収まる可能性が高い。従って、最適な希釈倍率を決定するために必要となる測定回数を減少させることができる。
【0078】
また、本実施形態では、制御部61によって決定された次回希釈倍率を、被験者IDや過去測定値などと対応付けて記憶する被験者DB61bを設けるとともに、分析装置40の制御部45を、検体を提供した被験者の検体を次に測定する際に、試料調製部43に、被験者DB61bに記憶された次回希釈倍率で検体を処理させるように制御することによって、次回希釈倍率が被験者DB61bに格納される情報と対応付けて記憶されるので、制御部45は、次にその被験者の検体を測定する際に、被験者DB61bに格納される情報に基づいて、次回希釈倍率を読み出すことができる。
【0079】
また、本実施形態では、制御部61によって決定された次回希釈倍率を変更可能に表示する表示欄(記入欄)655を設けることによって、決定された次回希釈倍率を検査技師が認識し、それを変更することが可能となるので、検体の特性(色、粘度、その検体を提供した被験者の病状など)に応じた最適な次回希釈倍率を検査技師が設定することが可能となる。
【0080】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0081】
例えば、上記実施形態において、原倍オーバ希釈倍率で測定して得られた測定値から、測定値が測定範囲内に納まる最低レベルの希釈倍率を計算し、次回希釈倍率としてセットするようにしてもよい。これにより、次回測定時の希釈倍率をさらに最適化することができる。
【0082】
また、上記実施形態では、分析装置により得られた測定値が分析装置の上下限値DBに格納される上限値(下限値)より大きく(小さく)なる場合に、分析装置側で上限(下限)スケールオーバ異常であると判断する例を説明したが、本発明はこれに限らず、分析装置により取得された測定値が上限(下限)スケールオーバ異常であるか否かの判断を検査情報処理装置側で行ってもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、検査情報処理装置には、ホストコンピュータと2台の分析装置とが通信回線を介して接続される例を示したが、本発明はこれに限らず、検査情報処理装置にクライアントのコンピュータを接続し、クライアントのコンピュータから検査情報処理装置を操作するようにしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、試験管に貼付されるバーコードラベルのバーコードには、検体番号、日付および検査対象分野などの情報が含まれる例を説明したが、本発明はこれに限らず、バーコードラベルのバーコードに被験者識別情報(被験者ID)を含めておき、読み取った被験者識別情報(被験者ID)に対応する次回希釈倍率を試料調製部(検体希釈部)に指定するようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、被験者DB(図3参照)を1つのテーブルにより構成する例を示したが、本発明はこれに限らず、被験者DBは、被験者IDと次回希釈倍率とを対応づけるテーブルと、被験者IDと検体番号とを対応付けるテーブルとの2つのテーブルによって構成されていてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、原倍オーバ希釈倍率DB61cに記憶される測定項目毎の原倍オーバ希釈倍率は、いずれもデフォルトの希釈倍率の10倍以上である例を示したが、本発明はこれに限らず、測定項目によってはデフォルトの希釈倍率の10倍未満の希釈倍率を原倍オーバ希釈倍率DB61cに記憶させておいてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、分析装置40および50として、エンザイムイムノアッセイ装置を用いたが、本発明はこれに限らず、分析装置40として、生化学分析装置、尿分析装置などの他の分析装置を用いることができる。
【0088】
また、上記実施形態では、図2に示すように、デフォルト希釈倍率DB61a、被験者DB61b、原倍オーバ希釈倍率DB61cおよび指定可能希釈倍率DB61dを含む制御部61と、入力部62と、表示部63とを備えた検査情報処理装置60を、上下限値DB45aを含む制御部45と、検出部44と、試料調製部43と、検体吸引部42と、バーコードリーダ41とを備えた分析装置40とは別個に設ける例を示したが、本発明はこれに限らず、図16に示した変形例のように、1つの分析装置40aに、上下限値DB145a、デフォルト希釈倍率DB161a、被験者DB161b、原倍オーバ希釈倍率DB161cおよび指定可能希釈倍率DB161dを含む制御部145と、入力部162と、表示部163と、バーコードリーダ141と、検体吸引部142と、試料調製部143と、検出部144とを全て含め、図13〜図15に示したデータチェック処理を制御部145が実行するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施形態による分析システムの全体構成を示した概略図である。
【図2】図1に示した一実施形態による分析システムのブロック図である。
【図3】図1に示した一実施形態による分析システムに用いられる試験管の側面図である。
【図4】図1に示した一実施形態による分析システムの分析装置の上下限値DBの内容を説明するための図である。
【図5】図1に示した一実施形態による分析システムの検査情報処理装置の被験者DBの内容を説明するための図である。
【図6】図1に示した一実施形態による分析システムの検査情報処理装置の表示部に表示される進捗確認画面を示した図である。
【図7】図1に示した一実施形態による分析システムの検査情報処理装置の表示部に表示される再検選択画面を示した図である。
【図8】図1に示した一実施形態による分析システムの検査情報処理装置の表示部に表示されるマスタ設定画面を示した図である。
【図9】図1に示した一実施形態による分析システムの検体検査の動作の概略を示したフローチャートである。
【図10】図1に示した一実施形態による分析システムの検査情報処理装置から分析装置に送られる測定指示電文の内容を説明するための図である。
【図11】図1に示した一実施形態による分析システムの分析装置と検査情報処理装置とによる処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】図1に示した一実施形態による分析システムの分析装置から検査情報処理装置に送られる結果電文の内容を説明するための図である。
【図13】図11のステップS37に示した一実施形態による分析システムの検査情報処理装置によるデータチェック処理の詳細(サブルーチン)を示したフローチャートである。
【図14】図11のステップS37に示した一実施形態による分析システムの検査情報処理装置によるデータチェック処理の詳細(サブルーチン)を示したフローチャートである。
【図15】図11のステップS37に示した一実施形態による分析システムの検査情報処理装置によるデータチェック処理の詳細(サブルーチン)を示したフローチャートである。
【図16】図1に示した一実施形態による分析システムの分析装置の変形例を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0090】
1 分析システム
40、50 分析装置
43 試料調製部
44 検出部
45 制御部
60 検査情報処理装置
61 制御部
61a デフォルト希釈倍率DB
61c 原倍オーバ希釈倍率DB
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の希釈条件で検体を処理可能に構成された検体処理部と、
前記検体処理部で処理された検体を測定する測定手段と、
第1希釈条件と、前記第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段と、
前記検体処理部に前記第1希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を前記測定手段に測定させることにより第1測定値を取得する測定制御手段と、
前記第1測定値と、第1の閾値とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果に基づいて、前記第1希釈条件または前記第2希釈条件を、前記検体を提供した被験者の検体を次に測定する場合に用いられる次回希釈条件として決定する決定手段とを備えた、分析システム。
【請求項2】
前記第1希釈条件および前記第2希釈条件は、それぞれ希釈倍率を含み、
前記第2希釈条件に含まれる希釈倍率は、前記第1希釈条件に含まれる希釈倍率よりも大きく、
前記決定手段は、前記第1測定値が前記第1の閾値より大きい場合に、前記第2希釈条件を、前記次回希釈条件として決定する、請求項1に記載の分析システム。
【請求項3】
前記決定手段は、前記第1測定値が、前記第1の閾値より小さく、前記第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合に、前記第1希釈条件を、前記次回希釈条件として決定する、請求項2に記載の分析システム。
【請求項4】
前記希釈条件記憶手段は、前記第1希釈条件および第2希釈条件とは異なる第3の希釈条件をさらに記憶し、
前記測定制御手段は、前記検体処理部に前記第2希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を前記測定手段に測定させることにより第2測定値を取得し、
前記比較手段は、前記第2測定値と、第3の閾値とを比較し、
前記決定手段は、前記比較手段による比較結果に基づいて、前記第1希釈条件、前記第2希釈条件および前記第3希釈条件のうちいずれか1つを、前記次回希釈条件として決定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項5】
前記決定手段によって決定された前記次回希釈条件を、被験者を識別するための被験者識別情報と対応付けて記憶する被験者記憶手段をさらに備え、
前記測定制御手段は、前記検体を提供した被験者の検体を次に測定する際に、前記検体処理部に、前記被験者記憶手段に記憶された前記次回希釈条件で検体を処理させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項6】
前記決定手段によって決定された前記次回希釈条件を変更可能に表示する表示手段をさらに備えた、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項7】
前記第1希釈条件および前記第2希釈条件は、それぞれ希釈倍率を含み、
前記第2希釈条件に含まれる希釈倍率は、前記第1希釈条件に含まれる希釈倍率の10倍以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項8】
前記検体処理部と、前記測定手段と、前記測定制御手段と、前記比較手段と、を備えた分析装置と、
前記希釈条件記憶手段と、前記決定手段とを備え、前記分析装置に通信可能に接続された検査情報処理装置と、を備え、
前記決定手段は、前記比較手段による比較結果を前記分析装置から受信し、受信した比較結果に基づいて、前記第1希釈条件または前記第2希釈条件を、前記次回希釈条件として決定する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項9】
複数の希釈条件で検体を処理可能に構成された検体処理部と、前記検体処理部で処理された検体を測定する測定手段と、前記検体処理部に前記第1希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を前記測定手段に測定させることにより第1測定値を取得する測定制御手段と、前記第1測定値と、第1の閾値とを比較する比較手段と、を備えた分析装置に通信可能に接続された検査情報処理装置であって、
第1希釈条件と、前記第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段と、
前記比較手段による比較結果に基づいて、前記第1希釈条件または前記第2希釈条件を、前記検体を提供した被験者の検体を次に測定する場合に用いられる次回希釈条件として決定する決定手段とを備えた、検査情報処理装置。
【請求項10】
複数の希釈条件で検体を処理可能に構成された検体処理部と、前記検体処理部で処理された検体を測定する測定手段と、前記検体処理部に前記第1希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を前記測定手段に測定させることにより第1測定値を取得する測定制御手段と、前記第1測定値と、第1の閾値とを比較する比較手段と、を備えた分析装置に通信可能に接続されたコンピュータを、
第1希釈条件と、前記第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段と、
前記比較手段による比較結果に基づいて、前記第1希釈条件または前記第2希釈条件を、前記検体を提供した被験者の検体を次に測定する場合に用いられる次回希釈条件として決定する決定手段として機能させる、コンピュータプログラム。
【請求項11】
複数の希釈条件で検体を処理可能に構成された検体処理部と、
前記検体処理部で処理された検体を測定する測定手段と、
第1希釈条件と、前記第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段と、
前記検体処理部に前記第1希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を前記測定手段に測定させることにより第1測定値を取得する測定制御手段と、
前記第1測定値と、第1の閾値とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果に基づいて、前記第1希釈条件または前記第2希釈条件を、前記検体を提供した被験者の検体を次に測定する場合に用いられる次回希釈条件として決定する決定手段とを備えた、分析装置。
【請求項1】
複数の希釈条件で検体を処理可能に構成された検体処理部と、
前記検体処理部で処理された検体を測定する測定手段と、
第1希釈条件と、前記第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段と、
前記検体処理部に前記第1希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を前記測定手段に測定させることにより第1測定値を取得する測定制御手段と、
前記第1測定値と、第1の閾値とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果に基づいて、前記第1希釈条件または前記第2希釈条件を、前記検体を提供した被験者の検体を次に測定する場合に用いられる次回希釈条件として決定する決定手段とを備えた、分析システム。
【請求項2】
前記第1希釈条件および前記第2希釈条件は、それぞれ希釈倍率を含み、
前記第2希釈条件に含まれる希釈倍率は、前記第1希釈条件に含まれる希釈倍率よりも大きく、
前記決定手段は、前記第1測定値が前記第1の閾値より大きい場合に、前記第2希釈条件を、前記次回希釈条件として決定する、請求項1に記載の分析システム。
【請求項3】
前記決定手段は、前記第1測定値が、前記第1の閾値より小さく、前記第1の閾値より小さい第2の閾値より大きい場合に、前記第1希釈条件を、前記次回希釈条件として決定する、請求項2に記載の分析システム。
【請求項4】
前記希釈条件記憶手段は、前記第1希釈条件および第2希釈条件とは異なる第3の希釈条件をさらに記憶し、
前記測定制御手段は、前記検体処理部に前記第2希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を前記測定手段に測定させることにより第2測定値を取得し、
前記比較手段は、前記第2測定値と、第3の閾値とを比較し、
前記決定手段は、前記比較手段による比較結果に基づいて、前記第1希釈条件、前記第2希釈条件および前記第3希釈条件のうちいずれか1つを、前記次回希釈条件として決定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項5】
前記決定手段によって決定された前記次回希釈条件を、被験者を識別するための被験者識別情報と対応付けて記憶する被験者記憶手段をさらに備え、
前記測定制御手段は、前記検体を提供した被験者の検体を次に測定する際に、前記検体処理部に、前記被験者記憶手段に記憶された前記次回希釈条件で検体を処理させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項6】
前記決定手段によって決定された前記次回希釈条件を変更可能に表示する表示手段をさらに備えた、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項7】
前記第1希釈条件および前記第2希釈条件は、それぞれ希釈倍率を含み、
前記第2希釈条件に含まれる希釈倍率は、前記第1希釈条件に含まれる希釈倍率の10倍以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項8】
前記検体処理部と、前記測定手段と、前記測定制御手段と、前記比較手段と、を備えた分析装置と、
前記希釈条件記憶手段と、前記決定手段とを備え、前記分析装置に通信可能に接続された検査情報処理装置と、を備え、
前記決定手段は、前記比較手段による比較結果を前記分析装置から受信し、受信した比較結果に基づいて、前記第1希釈条件または前記第2希釈条件を、前記次回希釈条件として決定する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項9】
複数の希釈条件で検体を処理可能に構成された検体処理部と、前記検体処理部で処理された検体を測定する測定手段と、前記検体処理部に前記第1希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を前記測定手段に測定させることにより第1測定値を取得する測定制御手段と、前記第1測定値と、第1の閾値とを比較する比較手段と、を備えた分析装置に通信可能に接続された検査情報処理装置であって、
第1希釈条件と、前記第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段と、
前記比較手段による比較結果に基づいて、前記第1希釈条件または前記第2希釈条件を、前記検体を提供した被験者の検体を次に測定する場合に用いられる次回希釈条件として決定する決定手段とを備えた、検査情報処理装置。
【請求項10】
複数の希釈条件で検体を処理可能に構成された検体処理部と、前記検体処理部で処理された検体を測定する測定手段と、前記検体処理部に前記第1希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を前記測定手段に測定させることにより第1測定値を取得する測定制御手段と、前記第1測定値と、第1の閾値とを比較する比較手段と、を備えた分析装置に通信可能に接続されたコンピュータを、
第1希釈条件と、前記第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段と、
前記比較手段による比較結果に基づいて、前記第1希釈条件または前記第2希釈条件を、前記検体を提供した被験者の検体を次に測定する場合に用いられる次回希釈条件として決定する決定手段として機能させる、コンピュータプログラム。
【請求項11】
複数の希釈条件で検体を処理可能に構成された検体処理部と、
前記検体処理部で処理された検体を測定する測定手段と、
第1希釈条件と、前記第1希釈条件とは異なる第2希釈条件とを記憶するための希釈条件記憶手段と、
前記検体処理部に前記第1希釈条件で検体を処理させ、処理された検体を前記測定手段に測定させることにより第1測定値を取得する測定制御手段と、
前記第1測定値と、第1の閾値とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果に基づいて、前記第1希釈条件または前記第2希釈条件を、前記検体を提供した被験者の検体を次に測定する場合に用いられる次回希釈条件として決定する決定手段とを備えた、分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−33132(P2007−33132A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214246(P2005−214246)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
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