説明

分析物モニタリング

【課題】分析物の濃度を測定するためのデバイスおよび方法を提供する。
【解決手段】デバイスの実施形態には、分析物モニタリングシステムが含まれ、このモニタリングシステムは、患者にセンサを操作可能に取り付け後、実質的な時間遅延なく、臨床的に正確な分析物データを提供することができる分析物センサを含む。患者に分析物センサを操作可能に取り付けることと、取り付けた後に実質的な時間遅延なく、臨床的に正確な分析物データを得ることができる分析物モニタリングシステムおよびキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析物モニタリングに関する。
【0002】
関連出願
本願は、2005年12月28日に出願された「分析物モニタリング (Analyte Monitoring) 」という米国特許出願第11/322,165号(特許文献1)を優先権主張の基礎とするものであり、この特許出願は、本願明細書において参照により援用されている。
【背景技術】
【0003】
グルコース、または乳酸もしくは酸素などの他の分析物の、特定の個人におけるレベルをモニタすることは、個人の健康にとって極めて重要なことである。グルコースまたは他の分析物の高レベルまたは低レベルは、有害な影響を与える可能性がある。例えば、グルコースをモニタすることは、糖尿病の人にとって特に重要である。というのは、糖尿病の人は、体内のグルコースレベルを下げるためにいつインシュリンが必要か、または、体内のグルコースレベルを上げるためにいつ追加のグルコースが必要かを判断しなければならないからである。
【0004】
多くの糖尿病患者が血液グルコースレベルを個人的にモニタするために用いられる従来の技法には、定期的な採血、その血液の試験片への塗布、および比色検出法、電気化学検出法または測光検出法を用いて血液グルコースレベルを測定することが含まれる。この技法は、体内のグルコースレベルを連続して、または自動的にモニタすることができず、一般的には、定期的に手作業で実行しなければならない。不都合な点は、グルコースレベルを検査するための一貫性が、個人により大きく変動することである。多くの糖尿病患者は、定期的な検査が面倒だと感じ、時には、グルコースレベルの検査を忘れるか、または、正規の検査のための時間を持てない。さらに、個人によっては、その検査に伴う苦痛を避けたがる。これらの状況は、結果として、高血糖または低血糖症を発現する可能性がある。個人のグルコースレベルを連続的、または自動的にモニタする体内グルコースセンサであれば、各人がグルコースまたは他の分析物のレベルをより簡単にモニタすることが可能になる。
【0005】
血流または間質液中の、グルコースなどの分析物を連続的または自動的にモニタするための分析物モニタリングデバイスが開発されてきた。このようなデバイスは電気化学センサを含み、このセンサの少なくとも一部は、患者の血管または皮下組織内に操作可能に取り付けられる。
【0006】
使用される分析物モニタリングデバイスの種類に関係なく、一定期間にわたり一過性の低い指示値が生じる場合があることが観測されてきた。これらの低い偽指示値は、使用の最初の数時間の間、またはそれ以降のいつの時点にも生じることがある。特定の実施形態では、低い偽指示値は、夜間に生じることがあるため、時として「夜間ドロップアウト」と称されることもある。例えば、使用者の皮膚の下に操作可能に取り付けた連続モニタリング分析物センサの場合、このような低い偽指示値は、センサの取り付け後一定期間および/または取り付け後の最初の夜に生じる可能性がある。多くの場合、低い偽指示値は、一定期間後には解消する。しかし、これらの一過性の低い指示値は、低い偽指示値が観測される期間中、分析物モニタリングに制約を与える。この問題に対処するための試みは変化し、センサを取り付けた後この低い指示値の期間が過ぎるまでユーザへの指示値の報告を遅らせること、またはセンサの頻繁な較正を含む(この両方はどちらも不便で、どちらも望ましくない)。
【0007】
分析物モニタリングへの関心は続いているので、低い偽指示値(例えば、ユーザにデバイスを取り付けた後、および/またはその後の夜間などにおける偽指示値)を示さないようにするか、または少なくとも最小限にする分析物モニタリングプロトコルに関心がある。ユーザに対して実質的に即時の、正確な分析物の報告をすることにより、低い偽指示値または頻繁な較正を最小にすることができるか、または存在し得ない、分析物モニタリングプロトコルに特に関心がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願第11/322,165号
【特許文献2】米国特許第6,134,461号
【特許文献3】米国特許第6,175,752号
【特許文献4】米国特許第5,593,852号
【特許文献5】米国特許第5,262,035号
【特許文献6】米国特許第5,264,104号
【特許文献7】米国特許第5,264,105号
【特許文献8】米国特許第5,320,725号
【特許文献9】米国特許第5,665,222号
【特許文献10】国際特許出願第PCT/US98/02403号
【特許文献11】米国特許第5,356,786号
【特許文献12】米国特許第6,329,161号
【特許文献13】米国特許第6,881,551号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Al-Muhammed, J. Microencapsul. 13: 293-306, 1996
【非特許文献2】Chonn, Curr. Opin. Biotechnol. 6: 698-708, 1995
【非特許文献3】Ostro, Am. J. Hosp. Pharm. 46: 1576-1587, 1989
【発明の概要】
【0010】
一般に、本発明は、体内または体外の分析物センサを用いて、分析物のレベルをモニタする、例えば、分析物センサを用いて体内で連続的に、および/または自動的にモニタする方法およびデバイスに関する。本発明の実施形態は、低い偽指示値が観測される期間を示さないか、または少なくとも最小限の観測される期間を有するセンサを含む。本発明を用いて、センサの作動(例えば、分析物センサを患者の体内または上に取り付けること)直後の期間および/またはそれ以後のいずれの時間も含む、センサを使用中のいずれの時点においても、得られた分析物の低い偽指示値を最小限にするかまたは除去することができる。実施形態は、センサの少なくとも一部が使用者の皮膚の下に取り付けられるように適応され、かつセンサが患者(例えば、皮下組織内など)に操作可能に配置された実質的に直後に、および/または分析物の偽指示値に起因する実質的な中断なしに、臨床的に正確な分析物データを提供するように適応されたセンサを含む。
【0011】
本発明の実施形態は、センサを患者に取り付けた後、最初の(または唯一の)較正が必要とされる期間が大幅に短くなる(工場出荷時の較正は除く)か、および/または較正の回数が減る(例えば3回以下の較正、例えば2回以下の較正、例えば1回の較正、または較正なし)、較正可能な分析物センサデバイスを含む。
本発明の実施形態は、解糖防止剤またはその先駆物質を含むデバイス(例えば、分析物センサ)を含む。
体液内の分析物の濃度を測定する方法もまた提供され、この場合、実施形態は、低い偽指示値が観測される期間が全くないか、または最小限の期間しかない、体液内の分析物の濃度を測定することを含む。実施形態は、患者に分析物センサを取り付けることと、操作可能に取り付けた実質的に直後に、体液内の分析物の濃度を臨床的な精度で測定することとが含まれる。
【0012】
本発明の方法の実施形態は、解糖防止剤またはその先駆物質を、分析物測定部位に接触させることと、その部位で分析物の濃度を測定することとを含む。
本発明の方法の実施形態は、解糖防止剤またはその先駆物質を含むデバイス(例えば、分析物センサ)を患者に操作可能に取り付けることと、そのセンサを用いて分析物の濃度を測定することとが含まれる。
本発明の方法の実施形態は、センサを患者に取り付けた後、最初の(または唯一の)較正が必要とされる期間が大幅に短くなる(工場出荷時の較正は除く)か、および/または較正の回数が減る(例えば3回以下の較正、例えば2回以下の較正、例えば1回の較正、または較正なし)、分析物測定方法が含まれる。
システムおよびキットもまた提供される。
【0013】
本発明は、添付の図面に関連する本発明の様々な実施形態の以下の詳細な説明を考察することによって、より完全に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による分析物センサを用いた分析物モニタの例示的な実施形態のブロック図を示す。
【図2】本発明による分析物センサの一実施形態の上面図である。
【図3A】図2の分析物センサの断面図である。
【図3B】本発明による分析物センサの別の実施形態の断面図である。
【図4A】本発明による分析物センサの別の実施形態の断面図である。
【図4B】本発明によるセンサの別の実施形態のうちの第4の実施形態の断面図である。
【図5】本発明による分析物センサの別の実施形態の断面図である。
【図6】分析物センサの先端部の拡大上面図である。
【図7】分析物センサの先端部の拡大底面図である。
【図8】図2の分析物センサの側面図である。
【図9】本発明による皮膚上センサ制御ユニットの一実施形態の断面図である。
【図10】図9の皮膚上センサ制御ユニットのベースの上面図である。
【図11】図9の皮膚上センサ制御ユニットのカバーの底面図である。
【図12】患者の皮膚の上の図9の皮膚上センサ制御ユニットの斜視図である。
【図13A】本発明による皮膚上センサ制御ユニットの一実施形態のブロック図である。
【図13B】本発明による皮膚上センサ制御ユニットの別の実施形態のブロック図である。
【図14】本発明による受信機/表示ユニットの一実施形態のブロック図である。
【図15A】生体液を収容するチューブ内に分析物センサを含んだ実験装置を示す。
【図15B】血漿を収容するチューブ内のセンサを示す。
【図15C】ヘパリン処理した全血を収容するチューブ内のセンサを示す。
【図15D】ヘパリン処理していない全血を収容するチューブ内のセンサを示す。
【図15E】実験条件に基づいたセンサ指示値のグラフを示している。
【図16】解糖防止センサおよび制御センサのセンサ指示値のグラフを示す。
【図17】体内での解糖防止センサおよび制御センサの比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本願の説明全体を通して、反対の意味を指摘しない限り、以下の用語は指定された特性を指す。
「生体液」または「生理液」または「体液」とは、その中に含まれる分析物を測定可能ないずれかの体液(例えば、血液、間質液、皮膚液、汗、涙および尿)のことである。「血液」は、全血およびその無細胞成分(例えば、血漿および血清)が含まれる。
「対電極」とは、作用電極とペアになった電極のことであり、この電極を通して、作用電極を通る電流と大きさは等しいが符号が逆の電流を流す。本発明の内容において、用語「対電極」は、基準電極としても機能する対電極(すなわち、対/基準電極)を含むものとする。
「電気化学センサ」とは、センサの電気化学酸化還元反応によって、サンプル中の分析物の存在を検出し、および/または分析物のレベルを測定するように構成されたデバイスである。これらの反応は、サンプル中の分析物の量、濃度またはレベルに相関性のある電気信号に変換される。
「電解」とは、電極で直接的に、または1つもしくは複数の電子移動剤を用いた、化合物の電解酸化または電解還元である。
化合物は、表面上に捕獲されるかまたは化学的に結合すると、表面上に「固定」される。
【0016】
「非浸出性」または「非放出性」化合物、または「非浸出的に配置された」化合物とは、センサが使用されている期間(例えば、センサが患者に埋め込まれるか、またはサンプルを測定する期間)、作用電極の作用面から離れて実質的に拡散しないように、センサ上に固定される化合物を定義するものとする。
成分は、例えば、その成分が、センサの構成要素に共有結合、イオン結合、または配位結合するか、および/または、移動を妨げる重合体もしくはゾルゲルマトリックスもしくは膜内に捕獲される場合、センサ内に「固定」される。例えば、特定の実施形態では、解糖防止剤またはその先駆物質が、センサ内で固定される。
【0017】
「電子移動剤」とは、分析物と作用電極との間で、直接または他の電子移動剤と協働して電子を輸送する化合物のことである。電子移動剤の一例は、酸化還元メディエータである。
「作用電極」とは、分析物(またはそのレベルが分析物のレベルに依存する第2の化合物)が電子移動剤の作用の有無によらず電解酸化または電解還元される電極である。
「作用面」とは、電子移動剤で被膜されるかまたは接触可能で、分析物の含有液に曝すように構成された作用電極の一部である。
「センシング層」とは、分析物の電解を容易にする構成成分を含むセンサの構成要素である。センシング層は、電子移動剤、分析物の反応に触媒作用を及ぼして電極での反応を生成する触媒、またはその両方などの構成成分を含んでもよい。センサのいくつかの実施形態において、センシング層は、作用電極の近くまたは上で、非浸出的に配置されている。
「非腐食性」導電性材料は、炭素および導電性ポリマーなどの非金属材料を含む。
【0018】
1つのアイテムが別のアイテムから「離れている」と示される場合、これは、2つのアイテムが、少なくとも異なる建物の中にあり、少なくとも1マイル、10マイル、または少なくとも100マイル離れている可能性があることを示す。異なったアイテムが相互に「近い」と示されている場合、それらアイテムは相互に離れていない(例えば、それらは同じ建物内にあるか、または建物の同じ部屋内にある可能性がある)。情報を「通信する」、「伝達する」などは、適切な通信チャネル(例えば、専用または公衆通信回線、有線、光ファイバ、無線通信機もしくは衛星またはその他の方法)で、情報を表すデータを電気または光信号として搬送することを示す。相互に近いかまたは離れた装置の間で何らかの通信または伝達ができる。アイテムを「転送する」とは、そのアイテムを物理的に輸送するか、または他の既知の方法(それが可能である場合には)を利用するかのいずれであっても、そのアイテムをある地点から次の地点に到達させる何らかの手段を意味し、少なくともデータの場合には、通信チャネル(電気、光または無線を含む)を介してデータを保持する媒体を物理的に輸送すること、またはデータを通信することを含む。何かを「受信する」とは、物理的なアイテムの転送などの、任意の可能な手段によってデータが取得されることを意味する。情報が受信されると、情報は、伝達(例えば、本願明細書に記載したタイプの任意の通信チャネルを用いて電気信号または光信号によって)の結果のデータとして取得されるか、または情報を保持するその他の何らかの媒体(例えば、磁気、光または固体記憶デバイス)を読み取ることから電気信号または光信号として取得されてもよい。しかし、情報が通信により受信される場合、その情報は他の場所(近くまたは離れた)からの伝達の結果として受信される。
【0019】
2つのアイテムが相互に「関連付け」されている場合、それらアイテムは、例えば一方が他方を参照するといった、一方が他方に関連していることが明らかであるようにして提供される。
同一データ入力(例えば、ファイル名、またはディレクトリ名または検索語)がそれらのアイテム(同じファイル内であろうとなかろうと)を検索するか、または、リンクされたアイテムのうちの1つまたは複数の入力が、残りのアイテムのうちの1つまたは複数を検索する場合には、データのアイテムがメモリ内で互いに「リンク」しているという。
本願全体を通して、「カバー」「ベース」「前方」「後方」「頂部」「上方」「下方」などの語は、相対的な意味においてだけ用いられることもまた理解される。
「してもよい」は随意を表す。
2つ以上のアイテム(例えば、要素またはプロセス)が選択肢「または」で参照されている場合、別個に存在し得るか、あるいはそれらの任意の組み合わせが共に存在してもよいことを示している。しかし、一方の存在が必ずしも他方または残りを排除するわけではない。
説明するいずれの方法も、説明される事象の順番または論理的に可能な任意の他の順番で実行可能である。単数のアイテムへの言及は、同一アイテムが複数存在する可能性を含む。
【0020】
本発明を説明する前に、本発明が説明される特定の実施形態に限定されず、したがって、もちろん変更し得ることが理解されるべきである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本願明細書で用いられている用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであって、限定を意図するものではないこともまた理解されるべきである。
【0021】
数値範囲が与えられている場合、文脈が明瞭にそれ以外と定めない限り、その範囲の上限と下限との間の下限の単位の10分の1に対する各中間値、およびその定められた範囲内の任意の他の定められた値あるいは中間値が、本発明に包含されることは理解されるべきである。これらのより小さい範囲の上限および下限は、定められた範囲内の任意の特に除外された限界値を条件として、本発明に包含されるより小さい範囲内に独立して含まれてもよい。定められた範囲が限界値のうちの一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値のうちの一方または両方を除いた範囲もまた本発明に含まれる。
【0022】
他に定義されない限り、本願明細書で用いられる技術および科学用語は全て、本発明が属する技術分野の当業者によって共通して理解される意味と同じ意味を有する。本願明細書に記載されたものと同様または等価な任意の方法および材料は、本発明の実施または検査において用いることができるが、好ましい方法と材料について以下に説明される。
本願明細書および添付の特許請求の範囲で用いられているように、文脈が明瞭にそれ以外であると定めない限り、単数形の「1つの」および「その」とは、複数の参照対象を含むことに留意しなければならない。
【0023】
この開示を読むことで当業者には明らかになるように、本願明細書で説明、例示された個々の実施形態はそれぞれ、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のうちのいずれかの特徴と容易に分離されるか、または組み合わされてもよい、個別の構成要素および特徴を有する。
本願明細書で示された図は、必ずしも縮尺通りに描かれておらず、いくつかの構成要素および特徴は、明確性の目的で誇張されている。
【0024】
本発明は、少なくとも一部がユーザの皮膚の下に取り付けられるセンサを用いて、体液内の分析物(例えば、グルコース、乳酸など)の濃度などを体内で測定する、分析物モニタリングシステムに適用できる。センサは、例えば患者に皮下に取り付けられ、患者の間質液内の分析物を連続的または定期的にモニタしてもよい。このセンサを用いて、患者の血流のグルコースレベルを推定してもよい。本発明のセンサは、静脈、動脈、または流体を含む体の他の部分に挿入するための、体内分析物センサも含む。本発明のセンサは、以下で詳細に説明されるように、数時間、数日、数週間、またはそれより長い期間におよぶ期間にわたって分析物のレベルをモニタするように構成されてもよい。
【0025】
また、本発明は、体外分析物モニタリングシステムに適用できる。例えば、体液が得られ、皮膚の上の分析物センサと接触するシステムである。このようなシステムは、これらに限定されないが、皮膚開口部(例えば、レーザ、ランセットなど)と、例えば、その部位で浸出した流体を定期的または連続してサンプリングすることによって、その皮膚開口部から得られた体液のサンプル中の分析物の濃度を測定するように適応されたサンプリングデバイスとを含む。皮膚開口デバイスとサンプリングデバイスは、単一のユニットまたはその他の方式で一体化されてもよい。本発明は、主に、少なくとも一部が患者の皮膚の下に操作可能に取り付けられる分析物センサに関して説明されているが、このような説明は、単に例示目的のためであって、いかなる意味でも本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明は、種々の分析物センサ(例えば、皮膚上の分析物センサ)に適用可能であることが理解されるべきである。
【0026】
本発明は、分析物の低い偽指示値の期間が少なくとも実質的に短くなった(完全なる消失を含む)分析物濃度を測定するデバイスおよび方法を含む。この方式において、報告できる分析物の結果は、分析物の低い偽指示値に起因する遅延および/または中断がたとえあったとしても、最小限で得られる。
【0027】
実施形態は、当業者に既知の任意の適切な技術(例えば、クラークエラーグリッド、パークスエラーグリッド、連続グルコースエラーグリッド、MARD分析など)によって示されているように、実質的に即時に、臨床的に正確な(例えば、基準に対して)分析物データを提供する、デバイスおよびシステムを取り付けること、並びに方法が含まれる。例えば、センサが連続センサであり、センサの少なくとも一部が患者の皮膚の下に取り付けられるように適応された実施形態では、センサが、患者に操作可能に取り付けられた実質的に直後に、臨床的に正確な(例えば、基準に対して)分析物データを提供するように適応されている。言い換えると、センサがユーザに取り付けられた時間と、臨床的に正確なデータが得られ、ユーザによって使用される時間からの待機期間が、正確な分析物データが得られ、ユーザによって使用される前に、より長い待機期間を必要とする従来のデバイスと比べて、極めて短くなる。「実質的に即時に」とは、約0時間から約5時間未満(例えば約0時間から約3時間、例えば約0時間から約1時間未満、例えば約30分以下)を意味し、多くの実施形態では、本発明によるセンサは、センサが患者に操作可能に取り付けられると、臨床的に正確な分析物データを提供することができる。
【0028】
実施形態は、解糖防止剤またはその先駆物質を含むデバイス、例えば、解糖防止剤またはその先駆物質(本願明細書では総称して、「活性剤」と称する)を含む分析物センサが含まれる。用語の「解糖防止」は、本願明細書では、生体細胞のグルコース消費を少なくとも遅らせるどの物質も含むものとして、広義に用いられている。解糖防止剤または解糖防止剤の先駆物質は、既知または発見される可能性のあるどの適切な解糖防止剤または先駆物質であってもよい。
【0029】
解糖防止剤の例には、これらに限定されないが、フッ化物、グリセルアルデヒド、マンノース、グルコサミン、マンノヘプツロース、ソルボース−6−リン酸、トレハロース−6−リン酸、マレイミド、ヨード酢酸など、およびそれらの組み合わせが含まれる。解糖防止剤の先駆物質の例には、これらに限定されないが、例えばトレハロース−6−リン酸シンターゼなど、酵素が含まれる。例えば、解糖防止剤は、グリセルアルデヒド(例えば、D−グリセルアルデヒド、l−グリセルアルデヒド、または、d,l−グリセルアルデヒドのラセミ混合物)であってもよい。前述したように、フッ化物(例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムなど)が用いられてもよい。
【0030】
活性剤含有デバイスは、特定の実施形態では、分析物センサであってもよいし、または、分析物測定部位(体液採取部位)の近く(例えば、全体または一部埋め込み可能なセンサ近くなどの分析物センサの近く)に取り付け可能な構造体であってもよい。特定の実施形態において、この構造体は、センサ挿入デバイス、薬物送達デバイス(例えば、インシュリン送達デバイス)などであってもよい。特定の実施形態では、この活性剤含有デバイスは、活性剤送達デバイスであってもよい。本発明の詳細な説明では、本発明は主に、活性剤含有分析物センサに関して説明される。このような説明は、単に例示目的であって、如何なる意味においても、本発明の範囲を限定することを意図していない。活性剤は、分析物センサ以外のデバイスと結合されるか、さもなければ患者の適切な部位と接触されてもよいことが理解されるべきである。
特定の実施形態において、活性剤は、デバイスによって保持されなくてもよく、むしろ、そうでなければ、分析物測定部位、または実質的にその近くに付着されてもよい。したがって、実施形態は、活性剤送達ユニットと分析物センサとを有するシステムを含む。
【0031】
本発明で使用される活性剤は、局所的経路によって経皮的に送達され、塗布スティック、溶液、懸濁液、エマルジョン、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ジェル、塗布剤、粉末およびエアロゾルとして配合されてもよい。例えば、実施形態は、ある一定期間にわたって受容者の外皮に密着して接触し続けるように適応された、分離したパッチまたはフィルムまたは硬膏などの形体の活性剤を含んでもよい。例えば、このような経皮的パッチには、活性剤が保持されるベース層またはマトリックス層(例えば、重合層)が含まれてもよい。ベース層またはマトリックス層は、支持体または裏当材料と操作可能に結合されてもよい。また、経皮投与に適した活性剤は、イオントフォレシスによって送達されてもよく、活性剤を含む随意の緩衝水性溶液の形体を取ってもよい。適切な配合には、クエン酸塩緩衝液またはビス/トリス緩衝液(pH6)、またはエタノール/水が含まれてもよく、かつ適切な量の活性成分を含有してもよい。本発明の活性剤は、静脈内(「IV」)投与、筋肉内(「IM」)、皮下(「SC」または「SQ」)、粘膜などの非経口投与に適応されてもよい。このような投与のための製剤は、薬剤として容認できるキャリアに溶解された活性剤溶液を含んでもよい。使用される容認できる賦形剤および溶媒の中には、これらに限定されないが、水、リンガー液、等張食塩液などが含まれる。活性剤は、水性溶媒または非水性溶媒(例えば、植物性または他の同様の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸エステルまたはプロピレングリコール)中に、必要に応じて、従来の添加剤(例えば、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤および保存剤)を用いて、注射剤を溶解、懸濁または乳化することによって、注入のために調合されてもよい。これらの溶液は滅菌され、一般に、望ましくない物質は含まない。
【0032】
他の実施形態では、活性剤は、細胞膜と融合するかまたは取り込まれるリポソームを利用して(すなわち、リポソームに付着するか、またはオリゴヌクレオチドに直接付着し、最終的にエンドサイトーシスになる細胞の表面膜タンパク質レセプターに付着されるリガンドを使用することによって)、送達されてもよい。リポソームを用いると、特に、リポソーム表面が、標的細胞に特有のリガンドを運搬するか、または、そうでなければ、特定の器官に優先的に誘導される場合は、人体が体内の標的細胞に薬理学的作用剤の送達に集中することができる(例えば、Al-Muhammed, J. Microencapsul. 13: 293-306, 1996(非特許文献1)、Chonn, Curr. Opin. Biotechnol. 6: 698-708, 1995 (非特許文献2)、Ostro, Am. J. Hosp. Pharm. 46: 1576-1587, 1989(非特許文献3)を参照のこと)。リポソーム懸濁物を調製する方法は、当該技術分野では既知であり、したがって本願明細書では極めて詳細には説明しない。
【0033】
また、実施形態には、例えばこれに限定されないが、ポンプなどの活性剤送達デバイス(埋め込み可能または外部デバイスおよび両方の組み合わせ(例えば、埋め込み可能な構成要素の制御部など、特定の構成要素が埋め込み可能であって、残りが本体の外部にあってもよい))、硬膜外注射器、シリンジもしくは他の注入器具、カテーテル、および/またはカテーテルに操作可能に結合された貯蔵体などを用いて活性剤を投与することが含まれる。例えば、特定の実施形態では、被験者に活性剤を送達するのに使用される送達デバイスは、カテーテル、チューブなどの連結用デバイスと操作可能に結合されたポンプ、シリンジ、カテーテルまたは貯蔵体であってもよい。活性剤投与デバイスに活性剤を送出するのに適した容器は、被験者に活性剤を投与するための送達デバイスへ、活性剤を送出、配置、付着および/または挿入するために用いられる収容器具が含まれる。この収容器具には、これらに限定されないが、小瓶、アンプル、チューブ、カプセル、ボトル、シリンジおよびバッグが含まれる。また、実施形態は、生分解性インプラント活性剤送達デバイスを用いた活性剤の投与を含んでもよい。これは、シリンジを用いて、被験者の皮膚の下にこのような生分解性送達デバイスを配置することによって達成されてもよい。インプラントは完全に分解するので、除去する必要はない。
【0034】
実施形態は、被験者に活性剤を送達するために電極を使用することを含んでもよい。例えば、活性剤を収容する貯蔵体またはポンプに接続された小さい管接続口を先端に有する電極が用いられてもよい。活性剤送達電極は、任意の適切な技法(例えば、外科的切開、腹腔鏡手術、内視鏡検査、経皮的処置など)を用いて、埋め込まれてもよい。特定の実施形態では、貯蔵体またはポンプは、被験者の体内に埋め込まれてもよい。活性剤送達電極または他の類似のデバイスが制御可能とされ、これにより、送達される活性剤の量、活性剤が送達される速度、および活性剤が送達される期間などが、例えばユーザおよび/または医療従事者によって制御可能とされ、調節されてもよい。
【0035】
したがって、実施形態は、分析物測定部位を活性剤と接触させることと、分析物の濃度を測定することとが含まれ、接触させることは、分析物センサまたは他の構造体、経皮投与、非経口投与などによってなされてもよい。
前述したように、分析物センサは活性剤を含んでもよい。センサは活性剤を含むか、または任意の適切な方法で活性剤を組み込んでもよい。センサ(および/または他の構造体)のうちの少なくとも一部(例えば、体液接触部分)が活性剤を含み、特定の実施形態では、センサのほぼ全体が活性剤を含んでもよい。活性剤は、センサの表面で固定されてもよく、またはセンサ表面から離れて拡散するように構成されてもよい。
特定の実施形態では、活性剤は、センサの少なくとも一部の上にある被膜である。特定の実施形態では、活性剤は、センサに組み込まれる(例えば、埋め込まれる)か、さもなければ、センサに一体化される。
【0036】
以下により極めて詳細に説明されるように、分析物センサは、膜などのマトリックス成分が含まれてもよい。膜は、例えば、物質移動制限膜であってもよい。特定の実施形態では、膜は活性剤を含んでもよく、この膜が膜の表面(例えば、流体接触面)周辺に位置する薄い被膜として活性剤を組み込むようにして膜の被膜を含んでもよい。含まれる活性剤の量は、例えば、膜の複数の薄い被膜を付着することによって、および、それを被膜間で乾燥可能にすることによって、容易に制御できる。
【0037】
被膜の厚みは、膜の厚みが大幅に増えないように最小限とされる。多くの実施形態では、厚みはほぼ均一である。特定の実施形態における厚みは、約0.1ミクロンから約100ミクロン(例えば、約1ミクロンから約10ミクロン)の範囲であってもよい。
被膜の代わりに、または被膜に加えて、活性剤がセンサの材料に組み込まれ(例えば、センサの膜自体の材料に組み込まれ)てもよい。例えば、膜は、吹付法または浸漬法を用いて、センサに付着されることが多く、膜材料が溶媒に溶解され、結果として得られた溶液がセンサの基板に塗布される。この場合、活性剤は、その溶媒中の膜材料と単に共溶解されてもよい。この結果、活性剤がセンサ膜全体にわたって均一に分散したセンサとなる。
【0038】
また、センサは、制御可能な速度で活性剤を放出または拡散する能力を有してもよく、例えば、放出制御(例えば、持続放出)製剤を含んでもよい。例えば、センサ(例えば、センサの膜)は、時間の経過とともに(例えば、センサを挿入後、センサが低い偽グルコース指示値を示す一定期間とほぼ同じ期間にわたって(例えば、特定の実施形態では、約1時間から約24時間))、徐々に活性剤を放出するように設計された製剤を含んでもよい。放出制御製剤は、活性剤の放出を制御するために、高分子または他の非解糖防止剤材料を使用してもよい。活性剤の放出速度は、高分子を通って拡散することによって遅くなる。あるいは、解糖防止剤または先駆物質は、高分子が体内で分解または崩壊すると、放出される。
【0039】
活性剤は、センサの製造中にセンサに加えられてもよく、および/または、センサが製造された後にセンサに塗布されてもよい。例えば、活性剤を含有する被膜が、センサが製造された後にセンサに塗布されてもよい。
活性剤は、種々の方法のうちのいずれによってセンサに塗布されてもよく、例えば、活性剤をセンサに吹き付けることによって、またはセンサを活性剤に浸漬することによって、穴あきの金型で活性剤を覆うことによって、または、センサを活性剤に浸漬もしくは活性剤を注液することによってなされてもよい。
【0040】
センサに含まれる活性剤の量は、例えば使用される特定の活性剤、センサの詳細などの様々な要因によって変化してもよい。いずれにしても、活性剤の使用有効量は、所望の期間に対して必要な解糖防止結果を与えるのに十分な量である。一例として、L−グリセルアルデヒドを用いた実施形態では、L−グリセルアルデヒドの量は、約1マイクログラムから約1ミリグラム(例えば、10マイクログラムから約100マイクログラム)の範囲であってもよい。
【0041】
活性剤は任意の分析物センサにおいて使用されてもよく、例えば、分析物センサは、分析物の濃度を測定するために、センサの少なくとも一部が患者の皮膚の下に操作可能に取り付けられるように構成されてもよい。重要なことは、約1時間以上(例えば約数時間以上、例えば約数日以上、例えば約3日以上、例えば約5日以上、例えば約7日以上、例えば約数週間または数ヶ月間)、自動的に(連続的、または定期的に)分析物データを提供することができる分析物センサということである。
次に、本発明による活性剤含有分析物センサを含む、代表的な活性剤含有分析物センサおよび分析物モニタリングシステムが説明される。なお、このような説明は単に例示が目的であって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0042】
解糖防止分析物センサおよびセンサシステム
本発明の分析物センサおよび分析物モニタリングシステムは、様々な条件下で利用されてもよい。分析物モニタリングシステム内で用いられる解糖防止センサおよび他のユニットの特定の構成は、センサおよびシステムが意図される用途、並びに、センサおよびシステムが作動する条件に依存してもよい。前述したように、実施形態は、患者またはユーザに埋め込むように構成されたセンサを含む。用語「埋め込み」は、全体的に埋め込み可能なセンサと、センサの一部のみが皮膚の下に埋め込み可能で、センサの一部が、例えば送信機、受信機、送受信機、プロセッサなどと接触するために、皮膚の上に存在するセンサとを含むと広く意味する。例えば、センサの埋め込みは、血液中の分析物レベルを直接検査するために、動脈系または静脈系内に埋め込まれてもよい。あるいは、センサは、間質液中の分析物レベルを測定するために、間質組織内に埋め込まれてもよい。このレベルは、血液中または他の流体中の分析物レベルと相関関係を有するか、および/または分析物レベルに変換されてもよい。埋め込みの部位と深さは、センサの特定の形状、構成要素および構造に影響を与えることがある。場合によって、センサの埋め込みの深さを制限するために、皮下埋め込みが望まれてもよい。また、センサは、他の流体中の分析物レベルを測定するために、身体の他の領域に埋め込まれてもよい。本発明の分析物モニタリングシステムでの使用に適したセンサの例が、米国特許第6,134,461号(特許文献2)および第6,175,752号(特許文献3)に記載されている。
【0043】
埋め込み可能な解糖防止センサ42として使用するための、例えば、皮下埋め込み可能な解糖防止センサとして使用するための分析物モニタリングシステム40の例示的な一実施形態が、図1のブロック図で示されている。分析物モニタリングシステム40は、センサの一部が患者に埋め込まれるように(例えば、皮下埋め込み、静脈埋め込みまたは動脈埋め込み)構成された、解糖防止剤またはその先駆物質を含むセンサ42と、センサ制御ユニット44とを少なくとも含む。解糖防止センサ42は、患者の皮膚に取り付け可能なセンサ制御ユニット44に接続可能である。センサ制御ユニット44は、センサ42を作動させ、例えば、センサ42の電極に電圧を供給することと、センサ42から信号を収集することとを含む。
【0044】
センサ制御ユニット44は、センサ42からの信号を評価し、および/または評価するために、1つまたは複数の任意の受信機/表示ユニット46、48に信号を送信する。センサ制御ユニット44および/または受信機/表示ユニット46、48は、分析物の電流レベルを表示、またはそうでなければ通信してもよい。さらに、センサ制御ユニット44および/または受信機/表示ユニット46、48は、分析物のレベルがしきい値またはその近くになるときを、例えば、可聴警報、可視警報または他の感覚を刺激する警報によって患者に示してもよい。いくつかの実施形態において、電極のうちの1つまたはセンサの任意の温度プローブを介して、電気ショックが、警報として患者に与えられてもよい。例えば、グルコースがモニタされている場合、低血糖または高血糖の血液グルコースレベルについて、および/または切迫低血糖もしくは高血糖について患者に注意を促すために、警報が用いられてもよい。
【0045】
解糖防止/解糖防止の先駆物質を含有するセンサ
センサ42は、本願明細書で説明されるように、解糖防止剤またはその先駆物質を含み、例えば、図2で示されるように、少なくとも1つの作用電極58と基板50とを含む。また、センサ42は、少なくとも1つの対電極60(または対/基準電極)、および/または少なくとも1つの基準電極62を含んでもよい(例えば、図7を参照のこと)。対電極60および/または基準電極62は、基板50上に形成されてもよく、または別個のユニットであってもよい。例えば、対電極および/または基準電極は、患者に埋め込み可能な第2の基板上に形成されてもよく、または、センサのいくつかの実施形態に関して、対電極および/または基準電極は、作用電極(複数可)が患者に埋め込まれた状態で患者の皮膚の上に置かれてもよい。埋め込み可能な作用電極とともに皮膚上の対電極および/または基準電極を用いることが、例えば、米国特許第5,593,852号(特許文献4)に記載されている。
【0046】
作用電極(複数可)58は、導電性材料52を用いて形成される。対電極60および/または基準電極62、並びに、温度プローブ66(例えば、図7を参照のこと)などのセンサ42のうちの任意の他の部分もまた、導電性材料52を用いて形成されてもよい。導電性材料52は、基板50の平滑な表面上、または、例えば型押しするか、窪ませるか、さもなければ基板50に凹部を形成することによって形成されるチャネル54内に形成されてもよい。
【0047】
特に、分析物を裸電極上で所望の速度および/または所望の特異性で電気分解できない場合、サンプル液中で分析物を電気化学的に検出し、そのレベルを測定しやすくするために、センシング層64(例えば、図3、4、5を参照のこと)が、作用電極58のうちの少なくとも1つの近くまたはその上に設けられてもよい。センシング層64は、分析物と作用電極58との間で直接的または間接的に電子を移動させるために、電子移動剤を含んでもよい。また、センシング層64は、分析物の反応を触媒するために触媒を含んでもよい。センシング層の成分は、作用電極58の近くにあるか、もしくはそれと接触する液またはゲル中に存在してもよい。あるいは、センシング層64の構成要素は、作用電極58の近くもしくはその上にある重合体マトリックスまたはゾルゲルマトリックス内に配置されてもよい。特定の実施形態では、センシング層64の構成要素は、非浸出的にセンサ42内に配置され、特定の実施形態では、センサ42の構成要素はセンサ42内で固定される。
【0048】
電極58、60、62およびセンシング層64に加えて、センサ42も以下のうちの1つまたは複数などの随意の構成要素を含んでもよい。すなわち、温度プローブ66(例えば、図5および7を参照のこと)、物質移動制限層74(例えば、膜などのマトリックス)(例えば、図8を参照のこと)、生体適合性層75(例えば、図8を参照のこと)、および/または以下に記載するその他の随意の構成要素を含んでもよい。これらのアイテムはそれぞれ、以下に説明されるように、センサ42の機能を強化しおよび/またはセンサ42からの結果を改善する。
【0049】
基板50は、例えば、ポリマー材料またはプラスチック材料、およびセラミックス材料を含む、様々な非導電性材料を用いて形成されてもよい。特定のセンサ42に適する材料、少なくとも一部は、センサ42の所望の用途と材料特性とに基づいて決定されてもよい。
【0050】
柔軟性について考慮することに加え、センサ42は、非毒性の基板50を有することが望ましいことが多い。好ましくは、基板50は、体内で使用するために、1つまたは複数の該当する行政機関または民間団体によって承認される。少なくともいくつかの実施形態における基板50の寸法は、センサ42の全長に沿って均一であるが、他の実施形態では、基板50は、図2で示されるように、それぞれ異なった幅53、55を有する遠位端67と近位端65とを有する。
【0051】
少なくとも1つの導電性トレース52が、作用電極58を構成する際に用いるために、基板上に形成されてもよい。さらに、他の導電性トレース52を基板50上に形成して、電極(例えば、追加の作用電極、および、対電極、対/基準電極、および/または基準電極)および他の構成要素(例えば、温度プローブ)として利用してもよい。導電性トレース52は、図2で示されるように、センサ50の長さ57に沿った距離の大部分で延びてもよいが、これは必須ではない。導電性トレースは、炭素(例えば、黒鉛)、導電性ポリマー、金属もしくは合金(例えば、金または金合金)、または金属化合物(例えば、二酸化ルテニウムまたは二酸化チタン)などの導電性材料56を用いて形成されてもよい。導電性トレース52(および使用されている場合はチャネル54)は、比較的狭い幅で形成されてもよい。基板50の同一側に2つ以上の導電性トレース52を有する実施形態において、導電性トレース52は、導電性トレース52間の伝導を防ぐのに十分な距離で分離されている。作用電極58と(別個の基準電極が用いられている場合には)対電極60とは、炭素などの導電性材料56を用いて形成されてもよい。
【0052】
基準電極62および/または対/基準電極は、適切な基準材料(例えば、銀/塩化銀)、または導電性材料に結合された非浸出性レドックス対(例えば、炭素結合レドックス対)である導電性材料56を用いて形成されてもよい。電気接点49が、導電性トレース52の導電性材料56と同じ材料を用いて形成されてもよく、あるいは、炭素または導電性ポリマーなどの他の非金属材料から形成されてもよい。
【0053】
多数の例示的な電極構造が以下で説明されるが、他の構成を用いもよいことが理解される。例えば図3Aで示された特定の実施形態では、センサ42は、2つの作用電極58a、58bと、基準電極としても機能する1つの対電極60とを含む。別の実施形態では、センサは、例えば図3Bで示されるように、1つの作用電極58aと1つの対電極60と1つの基準電極62とを含む。これらの実施形態はそれぞれ、全電極が基板50の同じ側に形成された状態で例示されている。代替方法では、電極のうちの1つまたは複数が、基板50の反対側に形成されてもよい。別の実施形態では、例えば図6で示されるように、2つの作用電極58と1つの対電極60とが、基板50の片側に形成され、1つの基準電極62と温度プローブ66とが、基板50の反対側に形成されている。センサ42のこの実施形態の先端部の対向側面が図6および図7に示されている。
【0054】
酸素などのいくつかの分析物は、作用電極58上で直接電解酸化または電解還元されてもよい。グルコースおよび乳酸などの他の分析物は、分析物を電解酸化または電解還元しやすくするために、少なくとも1つの電子移動剤および/または少なくとも1つの触媒の存在を必要とする。また、触媒は、作用電極58上で直接電解酸化または電解還元できる分析物(例えば、酸素)に対して用いられてもよい。これらの分析物に関して、各作用電極58は、作用電極58の作用面近くまたは作用面上に形成されたセンシング層64を有する。多くの実施形態において、このセンシング層64は、作用電極58の近くまたは小部分の上だけ(例えば、センサ42の先端部の近く)に形成される。
【0055】
センシング層64は、分析物の電解を容易にするように設計された1つまたは複数の成分を含む。センシング層64は、所望の成分(例えば、電子移動剤および/または触媒)の固体組成物として形成されてもよい。これらの成分は、センサ42から非浸出的であってもよく、センサ42上に固定されてもよい。固定されたセンシング層の例が、例えば、米国特許第5,262,035号(特許文献5)、第5,264,104号(特許文献6)、第5,264,105号(特許文献7)、第5,320,725号(特許文献8)、第5,593,852号(特許文献4)、および第5,665,222号(特許文献9)、並びに「ダイズペルオキシダーゼ電気化学センサ (Soybean Peroxidase Electrochemical Sensor)」という国際特許出願第PCT/US98/02403号(特許文献10)に記載されている。
【0056】
複数の作用電極58aを有するセンサもまた用いられてもよく、例えば、センサからの信号が平均されてもよく、あるいはこれらの作用電極58aにおいて生成された測定値が平均されてもよい。さらに、単一の作用電極58aまたは複数の作用電極における複数の指示値が平均されてもよい。
【0057】
多くの実施形態において、センシング層64は、図3Aおよび3Bで示されるように、作用電極58の導電性材料56と接する1つまたは複数の電子移動剤を含む。有用な電子移動剤およびその製造方法が、例えば米国特許第5,264,104号(特許文献6)、第5,356,786号(特許文献11)、第5,262,035号(特許文献5)、第5,320,725号(特許文献8)、第6,175,752号(特許文献3)、および第6,329,161号(特許文献12)に記載されている。
また、センシング層64は、分析物の反応を触媒することが可能な触媒を含んでもよい。また、この触媒は、いくつかの実施形態では、電子移動剤として作用してもよい。
【0058】
分析物を電解するために、電位(基準電位に対する)が、作用電極58および対電極60の両端に印加される。電位が作用電極58と対電極60との間に印加されると、電流が流れる。当業者であれば、同じ結果(すなわち、分析物、またはレベルが分析物のレベルに依存する化合物の電解)を達成する多くの種々の反応が存在することを認識しうる。
【0059】
様々な随意のアイテムがセンサに含まれてもよい。1つの随意のアイテムは温度プローブ66(例えば、図5および図7を参照のこと)である。1つの例示的な温度プローブ66は、温度依存特性を有する材料を用いて形成された温度依存性要素72を介して相互に接続された2つのプローブリード線68、70を用いて形成されている。適切な温度依存特性の一例は、温度依存性要素72の抵抗である。
温度プローブ66が作用電極58からの出力に対して温度調整作用を提供して、作用電極58の温度依存性を相殺してもよい。
【0060】
本発明のセンサは、生体適合性がある。生体適合性は、多数の異なる方法で達成されてもよい。例えば、随意の生体適合性層75が、例えば図8で示されるように、センサ42のうちの少なくとも患者に挿入される部分上に形成されてもよい。
【0061】
インターフェラント除去層(図示せず)がセンサ42に含まれてもよい。インターフェラント除去層は重合体マトリックスに組み込まれたイオン成分(例えば、ナフィオン(登録商標)など)を含むことにより、イオン成分と同じ電荷を有するイオンインターフェラントに対するインターフェラント除去層の浸透性を低減してもよい。
物質移動制限層74をセンサに含むことにより、拡散限界バリアとして作用し、作用電極58の周りの領域に分析物(例えば、グルコースまたは乳酸)を物質移動する速度を低減してもよい。
使用されてもよい例示的な層が、例えば、米国特許第6,881,551号(特許文献13)に記載されている。
【0062】
本発明のセンサは、体内分析物モニタ、特に埋め込み可能な分析物モニタにおいて、交換可能な構成要素であるように適応されてもよい。多くの実施形態では、センサは、数日以上の期間(例えば、作動期間は少なくとも約1日、例えば少なくとも約3日、例えば少なくとも約1週間以上)、作動することができる。その後、センサは、取り除かれ、新しいセンサと交換されてもよい。
【0063】
本発明のセンサを患者(例えば、皮下組織内など)に挿入するために、任意の適切なデバイスが用いられてもよい。使用できる例示的な挿入デバイスが、例えば、米国特許第6,175,752号(特許文献3)に記載されている。
【0064】
操作において、センサを挿入デバイス内またはその隣に置き、その後挿入デバイスおよび/またはセンサに力を加えて、センサ42を患者の皮膚内に挿入する。挿入デバイスは随意に皮膚から引き抜かれ、センサは、センサと患者の組織との間の摩擦力のために、皮膚の下(例えば、皮下組織内)に残る。
【0065】
特定の実施形態では、センサは、皮下に埋め込むために、患者の間質組織内に約2〜約12mm挿入される。本発明の他の実施形態は、例えば、動脈、静脈または器官を含む患者の他の部分に埋め込まれるセンサが含まれてもよい。埋め込みの深さは、所望の埋め込み対象によって変化する。
【0066】
本発明のセンサは体内のいずれの箇所に挿入されてもよいが、多くの場合、挿入部位は、皮膚上センサ制御ユニット44が隠れるように取り付けられることが望ましい。さらに、挿入部位は、多くの場合、患者へ苦痛を低減するために、低密度の神経末端を有する体の部分であることが望ましい。センサ42を挿入し、皮膚上センサ制御ユニット44を取り付けるための部位の例として、これらに限定されないが、腹部、大腿部、足、上腕および肩が挙げられる。
【0067】
皮膚上センサ制御ユニット44は、患者の皮膚上に置かれるように構成されている。図9〜11に示されるように、皮膚上センサ制御ユニット44の一実施形態は薄い楕円形を有し、隠すことを容易にしている。しかし、他の形状および大きさが用いられてもよい。皮膚上センサ制御ユニット44は、図9〜11に示されるように、ハウジング45を含む。皮膚上センサ制御ユニット44は、図12に示されるように、一般に、患者の皮膚75に取り付けできる。皮膚上センサ制御ユニット44のハウジング45を皮膚75に取り付ける別の方法は、センサ42を挿入する開口部79を含む取付ユニット77を用いることを含む。皮膚上センサ制御ユニット44と関連する電子構成要素の追加のより詳細な説明が、例えば、米国特許第6,175,752号(特許文献3)に示されている。
【0068】
センサ42および皮膚上センサ制御ユニット44内の電子構成要素は、導電性接点80によって接続されている。1つまたは複数の作用電極58と、対電極60(または対/基準電極)と、随意の基準電極62と、随意の温度プローブ66とが、個々の導電性接点80に取り付けられている。図9〜11に示される実施形態では、導電性接点80は、皮膚上センサ制御ユニット44の内部に設けられている。
【0069】
皮膚上センサ制御ユニット44は、センサ42および分析物モニタリングデバイスシステム40を作動させる電子構成要素の少なくとも一部を含んでもよい。皮膚上制御ユニット44内の電子機器の一実施形態が、図13Aのブロック図として示されている。皮膚上センサ制御ユニット44の電子構成要素は、皮膚上制御ユニット44およびセンサ42を作動させるための電源95と、信号を得るためおよびセンサ42を作動させるためのセンサ回路97と、センサ信号を所望の形に変換する測定回路96と、少なくとも、センサ回路97および/または測定回路96からの信号を得て、その信号を随意の送信機98に送る処理回路109とを含んでもよい。また、いくつかの実施形態では、処理回路109は、センサ42からの信号を一部または完全に評価し、結果として得られたデータを随意の送信機98に送り、および/または、分析物のレベルがしきい値を超える場合、随意の警報システム94(例えば、図13Bを参照のこと)を動作させてもよい。処理回路109は、デジタル論理回路を含むことが多い。
【0070】
皮膚上センサ制御ユニット44は、処理回路109からのセンサ信号または処理データを受信機(または送受信機)/表示ユニット46、48に送信するための送信機または送受信機98と、処理回路109からのデータを一時的または永久的に保存するためのデータ格納ユニット102と、信号を受信し温度プローブ66を作動させるための温度プローブ回路99と、センサが生成した信号と比較するための基準電圧を提供するための基準電圧生成器101、および/または皮膚上センサ制御ユニット44内の電子構成要素の作動をモニタするウォッチドッグ回路103とを随意に含んでもよい。さらに、センサ制御ユニット44は、アナログおよびデジタル半導体デバイスに正確にバイアスを掛けるためのバイアス制御発生器105と、クロック信号を供給するための発振器107と、回路のデジタル部品にタイミング信号と論理演算とを提供するためのデジタル論理およびタイミング構成要素109とを含んでもよい。
【0071】
図13Bは、別の例示的な皮膚上センサ制御ユニット44のブロック図を示し、この皮膚上センサ制御ユニット44は、例えば、較正データを受信するための受信機(または送受信機)99と、例えば工場出荷時の較正データ、受信機99によって得られた較正データ、および/または例えば受信機/表示ユニット46、48または他の外部デバイスから受信された動作信号とを維持するための較正記憶ユニット100と、患者に警報を発するための警報システム104と、警報システムを切るための停止スイッチ111などといった随意の構成要素も含む。
【0072】
分析物モニタリングシステム40およびセンサ制御ユニット44の機能は、ソフトウェアルーチン、ハードウェア構成要素、またはそれらの組み合わせのいずれかを用いて実現されてもよい。ハードウェア構成要素は、例えば、集積回路または個別の電子部品を含む様々な技術を用いて実現されてもよい。集積回路を用いると、一般に、電子回路の大きさが小さくなり、これによって、次に、皮膚上センサ制御ユニット44がより小さくなる可能性がある。
皮膚上センサ制御ユニット44およびセンサ42内の電子回路は、電源95を用いて作動される。また、皮膚上センサ制御ユニット44は、随意に、温度プローブ回路99を含んでもよい。
センサ回路97からの出力と随意の温度プローブ回路とが接続されて、センサ回路97と随意の温度プローブ回路99から信号を得る測定回路96を構成し、少なくともいくつかの実施形態では、例えば、デジタル回路で読み取ることが可能な形の出力データを提供する。
【0073】
いくつかの実施形態では、処理回路109からのデータが分析され、ユーザに警告するために、警報システム94(例えば、図13Bを参照のこと)に向けられる。
いくつかの実施形態では、処理回路109からのデータ(例えば、電流信号、変換された電圧もしくは周波数信号、または完全にもしくは一部分析されたデータ)が、皮膚上センサ制御ユニット44内の送信機98を用いて、1つまたは複数の受信機/表示ユニット46、48に送信される。送信機は、ハウジング45内に形成されたアンテナ93を有する。
【0074】
送信機98に加えて、随意の受信機99が、皮膚上センサ制御ユニット44内または他の場所に含まれてもよい。場合によって、送信機98は、送信機と受信機の両方として作動する送受信機である。受信機99(および/または受信機/表示ユニット46、48)は、センサ42用の較正データを受け取るために用いられてもよい。較正データは、センサ42からの信号を訂正するために、処理回路109によって用いられてもよい。この較正データは、受信機/表示ユニット46、48によって、または診療所内の制御ユニットなどの他の発信源から送信されてもよい。
【0075】
較正データは、様々な方法で得られてもよい。例えば、較正データは、単に、受信機99を用いて皮膚上センサ制御ユニット44に入力できる、工場で決定された較正測定値であってもよい。あるいは、較正データは、皮膚上センサ制御ユニット44自体の内部または他の場所(例えば、受信機/表示ユニット46、48)内の較正データ記憶ユニット100に記憶されてもよい(この場合、受信機99は必要でなくなることもある)。較正データ記憶ユニット100は、例えば、読取可能または読取可能/書込可能なメモリ回路であってもよい。
【0076】
医師もしくは他の専門家、または患者自身によって実行される検査に基づいて、代替または追加の較正データが提供されてもよい。例えば、糖尿病患者が、市販の検査キットを用いて、自分自身の血中グルコース濃度を測定することは一般的である。適切な入力デバイス(例えば、キーパッド、光信号受信機、またはキーパッドもしくはコンピュータに接続するためのポート)が皮膚上センサ制御ユニット44に組み込まれている場合、直接的に、または、較正データを受信機/表示ユニット46、48に入力し、この較正データを皮膚上センサ制御ユニット44に送信することによって間接的に、この検査結果が皮膚上センサ制御ユニット44(および/または受信機/表示ユニット46、48)に入力される。
また、分析物レベルを独立して測定する別の方法を用いて、較正データを得てもよい。この種の較正データは、工場で決定された較正値に取って代わるか、または補足してもよい。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態において、正確な分析物レベルが報告されていることを確認するために、較正データは、定期的に(例えば、約10時間毎、または約8時間、およそ1日に1回、またはおよそ1週間に1回)必要とされる。また、較正は、新しいセンサ42が埋め込まれるたびに、またはセンサがしきい最小値もしくは最大値を超える場合、またはセンサ信号の変化率がしきい値を超える場合に必要とされる。場合によって、センサ42が平衡に達することを許可するように較正する前に、センサ42を埋め込んだ後、一定期間待機する必要があることもある。いくつかの実施形態では、センサ42は、挿入された後にだけ較正される。他の実施形態では、センサ42の較正は必要としない(例えば、工場での較正で十分である場合)。
【0078】
使用される分析物モニタリングシステムの種類に関係なく、一過性の低い指示値が一定期間生じてもよいことが観測されている。これらの異常な低い指示値は、使用する最初の数時間、またはそれ以降のいつの時点に生じてもよい。特定の実施形態では、低い偽指示値が、夜間に生じることがあり、「夜間ドロップアウト」と称されることもある。例えば、ユーザの皮膚下で操作可能に取り付けられた連続モニタリング分析物センサの場合、このような低い偽指示値は、センサを取り付けた後、および/または取り付けた後の最初の夜間に、一定期間生じることがある。多くの場合、一定期間後、低い指示値は解消する。しかし、これらの一過性の低い指示値は、低い指示値の期間中の分析物モニタリングに制約を与える。この問題に対処する試みは変化し、センサを取り付けた後、またはセンサを頻繁に較正した後にこの低い指示値の期間が過ぎるまで、較正および/またはユーザへの指示値の報告を遅らせることを含むが、これらは両方とも不便で、いずれも望ましくない。
【0079】
しかし、前述したように、本発明の実施形態では、実質的に平衡でない期間を含む、低い偽指示値の期間(すなわち、大幅に短くなったセンサ平衡期間)は、たとえあったとしても、少なくとも最小限である。この点に関して、取り付け後の最初の較正が必要な実施形態では、このような較正は、センサを取り付け後、実質的に即時に実行されてもよい。例えば、特定の実施形態では、較正プロトコルは、センサが操作可能に取り付けられた後、約10時間未満(例えば約5時間未満、例えば約3時間未満、例えば約1時間未満、例えば約0.5時間未満)において、取り付け後の最初の較正を含んでもよい。1回または複数回の追加の較正が必要とされないか、またはそれ以降適切な回数実行されてもよい。
【0080】
皮膚上センサ制御ユニット44は、データ(例えば、センサからの測定値または処理済データ)を保持するために使用される、随意のデータ記憶ユニット102を含んでもよい。
本発明のいくつかの実施形態では、分析物モニタリングデバイス40は、皮膚上制御ユニット44およびセンサ42のみを含んでいる。
【0081】
図1を再度参照すると、センサ42によって生成されたデータにアクセスしやすくするために、分析物モニタリングデバイス40に、1つまたは複数の受信機/表示ユニット46、48が設けられてもよく、いくつかの実施形態では、皮膚上センサ制御ユニット44からの信号を処理して皮下組織内の分析物の濃度またはレベルを決定する。図14で示さるように、受信機/表示ユニット46、48は、典型的には、皮膚上センサ制御ユニット44からのデータを受信するための受信機150と、データを評価するための分析器152と、情報を患者に提供するためのディスプレイ154と、ある状態が生じると患者に警報を発するための警報システム156とを含んでいる。また、受信機/表示ユニット46、48は、データ記憶ユニット158、送信機160、および/または入力デバイス162を随意に含んでもよい。
【0082】
次に、受信機150によって受信されたデータが、分析器152に送られる。一般に、分析器152からの出力がディスプレイ154に提供される。また、受信機/表示ユニット46、48は、データを記憶するためのデータ記憶ユニット158、データを送信するのに使用できる送信機160、入力デバイス162(例えば、キーパッドまたはキーボード)などの、多数の随意のアイテムを含んでもよい。受信機/表示ユニット46、48は、小型の携帯ユニットであってもよく、送受信機を含んでもよい。特定の実施形態では、受信機/表示ユニット46、48は、較正ユニット(図示せず)と一体化され、従来の血液グルコース測定器を含んでもよい。
特定の実施形態では、必要に応じて、分析物データ(処理済みまたは未処理)が、診療所などの遠隔地に(例えば、通信によって)転送され、そこで受信されて別の用途(例えば、さらなる処理)に用いられてもよい。
【0083】
薬物投与システムとの統合
また、本発明は、センサベースの薬物送達システムにおいて用いられる解糖防止センサを含む。このシステムは、1つまたは複数のセンサからの信号に応答して、分析物の高レベルまたは低レベルを抑制する薬物を提供してもよい。あるいは、このシステムは薬物濃度をモニタして、薬物が所望の治療範囲内に留まることを保証してもよい。薬物送達システムは、1つまたは複数(例えば、2つ以上)のセンサ、皮膚上センサ制御ユニット、受信機/表示ユニット、データ記憶および制御モジュール、および薬物投与システムを含んでもよい。場合によって、受信機/表示ユニット、データ記憶および制御モジュール、並びに薬物投与システムは、1つのユニット内に統合されてもよい。センサベースの薬物送達システムは1つまたは複数のセンサからのデータを用いて、データ記憶および制御モジュール内の制御アルゴリズム/メカニズムに必要な入力値を提供し、薬物の投与を調節する。一例として、グルコースセンサを用いてインシュリンの投与を制御および調節することができる。
【0084】
最後に、本発明を実施するのに用いられるキットもまた提供される。本発明のキットには、本願明細書で説明されるように、解糖防止剤またはその先駆物質が、任意の適切な形態で含まれてもよい。例えば、キットは、本願明細書に記載されるように、1つまたは複数の解糖防止センサ、および/または解糖防止剤またはその先駆物質を含む他の構造体を含んでもよい。特定の実施形態では、キットは経皮投与または非経口投与に適応する解糖防止剤またはその先駆物質を含んでもよい。また、実施形態は、センサ挿入デバイスおよび/または送信機および/または受信機を含んでもよい。
【0085】
1つまたは複数のセンサに加えて、本発明のキットも、センサを利用するための書面の説明書を含んでもよい。説明書は、紙またはプラスチックなどの基体に印刷されてもよい。したがって、説明書は添付文書としてキット内、またはキットまたはその構成要素の収容体(すなわち、パッケージングまたはサブパッケージングに付属する)のラベル内に、存在してもよい。他の実施形態では、説明書は、適切なコンピュータ読取可能な記憶媒体(例えば、CD−ROM、ディスクなど)上にある電子記憶データファイルとして存在する。さらに別の実施形態では、実際の説明書はキット内には存在しないが、リモートソースから説明書を取得する(例えば、インターネットを介して)ための手段が提供されている。この実施形態の1つの例は、説明書を見ることができるか、および/または説明書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。説明書に関して、説明書を入手するためのこの手段が、適切な基体に記録される。
【0086】
本発明のキットの実施形態の多くにおいて、キットの構成要素がキット収容要素内にまとめて収容され、単一の容易に扱えるユニットを形成している。この場合、キット収容要素(例えば、ボックスまたは同様の構造体)は、例えば、1つまたは複数のセンサ、および存在する場合は追加の試薬(例えば、制御液)を使用するまでさらに保存するために、気密容器であってもよい。
以下の例は、例示を目的として提供されるものであって、限定を目的としたものではない。
【0087】
実験
以下の例は、本発明を実現および利用する方法に関して、当業者に詳細に完全に開示し、説明するために提供するために提示しているのであって、本発明者らが発明と見なす範囲を限定することを意図するものではない。用いられている数(例えば、量、温度など)に関する精度を保証するように配慮されてきたが、若干の実験誤差および偏差は考慮されるべきである。特に指定しない限り、割合は重量比であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【0088】
以下の実験は、血中のグルコース濃度を血液凝固に近くなると実質的に低くできること、および解糖防止剤を含むセンサは、このセンサが解糖防止剤を含まないセンサで観測される低い指示値の期間を示さないように、この低下を遅らせるかおよび/または低下を低減できることを実証している。この方法により、センサ挿入後、実質的に即時に、臨床的に正確な分析物指示値がこのようなセンサから得ることができることが実証される。
【0089】
図15A、15B、15Cおよび15Dは、血小板リッチの血漿、ヘパリン処理済み全血およびヘパリン処理していない全血をそれぞれ用いて、グルコースレベルを測定するための実験装備を示す。
グルコースセンサが、該当する生体液を収容する細いシリコンチューブに挿入される。チューブは、摂氏約37度で維持され、グルコースセンサがモニタされる。図15Dは、センサ周りにおける血液凝固の形成を示す。
【0090】
図15Eに示されるように、血小板リッチの血漿は、グルコース消費赤血球の不足と一致した、ほぼ一定のグルコース反応を示す。ヘパリン処理済み(凝固していない)血液は、凝固防止剤を含む血液中の解糖の速度と一致した、約15時間の期間に及ぶ枯渇を示す。凝固した血液は、センサを取り囲む血栓内の高濃度赤血球による、局所的な枯渇と一致する、さらに速い枯渇(約1.5〜2時間以内)を示す。
【0091】
血栓の場合、不浸透性の血栓によるセンサ表面の単なる妨害は、グルコース枯渇の原因から除外する。というのは、枯渇速度(全電流のパーセントとして)が、グルコース濃度によって変動するからである。高グルコースサンプルは、低グルコースサンプルよりも枯渇に時間がかかる。これは、周辺の血栓によるグルコースの実際の消費と一致する。
【0092】
図16は、適度の量の解糖防止剤がグルコースセンサに含まれているだけであっても、センサを取り囲む血栓によるグルコース消費を、最小限ではないにしても、大幅に遅らせることができることを示す。解糖防止センサは、以下のように、制御センサを改変することによって(FreeStyle Navigator (登録商標))準備された。被膜溶液が、250mg/mLのL−グリセルアルデヒドとD−グリセルアルデヒドのラセミ混合物と、150mg/mLのポリマーPC−1306(生体適合性PLC)とから、ラセミ混合物はエタノールに懸濁され、ポリマーPC−1306はエタノールに溶解されて、調製された。結果として得られた解糖防止センサは、約138マイクログラムのD−およびL−グリセルアルデヒドのラセミ混合物を、薄い外側被膜として有していた。次に、これらのセンサおよび制御センサ(解糖防止剤が添加されていない)が両方とも血栓に挿入され、長時間にわたり電流応答が追跡された。
【0093】
図16のグラフが示すように、制御センサは、先に観測された約2時間のグルコース枯渇期間を示している。この枯渇は、グリセルアルデヒドを含むセンサでは、さらに遅れた(最大約12時間)。これは、グリセルアルデヒドがセンサに隣接する赤血球内に取り込まれていることと、隣接する赤血球によるグルコース消費が減少していることを実証している。
【0094】
解糖防止センサを用いる別の例が、体内環境における使用によって与えられている。この例では、制御センサ(FreeStyle Navigator (登録商標))が、糖尿病でない被験者の腕に、解糖防止剤とL−グリセルアルデヒドを添加することによって改変されてきた同様のセンサと隣接して、挿入された。200mg/mLのL−グリセルアルデヒドと150mg/mLのポリマーPC−1306(生体適合性PLC)とを、両方ともエタノールに溶解させて、被膜溶液が調製された。次に、この被膜溶液に2度浸漬し、約55マイクログラムのL−グリセルアルデヒドを含む保護膜を得ることによって、ナビゲータセンサが改変された。
【0095】
図17は、糖尿病でない被験者の腕に並べて埋め込まれたこれら2つのセンサの性能を示す。制御センサは、夜間、信号に大きな負の偏り(60mg/dLをかなり下回る値まで)を示すが、解糖防剤止で改変されたセンサは示さない。60mg/dLを下回るグルコース指示値は、糖尿病でない被験者では予測されず、したがって、(a)センサの故障、またはより可能性が高い(b)グルコース濃度が全身系の値から大幅に偏る、グルコース濃度の局所的な不均一性(例えば、外傷の近く)、のいずれかを反映する異常であると見なされる。このような偏りは、制御センサでは、ある程度規則的に観測されるが、L−グリセルアルデヒドで改変されたセンサでは観測されない。
【0096】
前の結果と検討から、前述した発明が、連続的に分析物をモニタするデバイスおよび方法を提供することが明らかである。前述した発明は、多くの利点を提供する。利点のうちのいくつかは前に説明している。また、この利点には、これに限定されないが、患者に操作可能にセンサを取り付けた後、または頻繁な較正の後に、実質的な時間遅延なく、臨床的に正確な分析物データを提供する能力が含まれる。したがって、本発明は、当該技術分野に大きな貢献を与える。
【0097】
本発明は、本発明の特定の実施形態に関連して説明されてきたが、当業者には、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、種々の変更が可能であり、均等物に置き換えられてもよいことが理解されるべきである。さらに、多くの改変を実施して、特定の状態、材料、物質組成物、プロセス、プロセスの工程または複数の工程を、本発明の目的、精神および範囲に適応させるようにしてもよい。このような改変の全ては、本願明細書に添付の特許請求の範囲内にあるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物測定部位に取り付けた後、実質的に即時に、正確な分析物レベルを提供することができるグルコースセンサを備えるグルコースモニタリングデバイス。
【請求項2】
請求項1記載のグルコースモニタリングデバイスにおいて、
前記グルコースセンサは、前記センサを分析物測定部位に取り付けた後、30分以内に正確な分析物レベルを提供するグルコースモニタリングデバイス。
【請求項3】
請求項2記載のグルコースモニタリングデバイスにおいて、
前記グルコースセンサは、前記センサを分析物測定部位に取り付けた直後に正確な分析物レベルを提供するグルコースモニタリングデバイス。
【請求項4】
請求項1記載のグルコースモニタリングデバイスにおいて、
前記グルコースセンサは、前記センサを分析物測定部位に取り付けた後、分析物の低い指示値の期間がなくても正確な分析物レベルを提供するグルコースモニタリングデバイス。
【請求項5】
請求項1記載のグルコースモニタリングデバイスにおいて、
前記グルコースセンサは、前記センサを分析物測定部位に取り付けた後、平衡期間を必要としないグルコースモニタリングデバイス。
【請求項6】
請求項1記載のグルコースモニタリングデバイスにおいて、
前記グルコースセンサは、前記センサを分析物測定部位に取り付けた後、さらなる較正を必要としないグルコースモニタリングデバイス。
【請求項7】
請求項1記載のグルコースモニタリングデバイスにおいて、
前記グルコースセンサは、
作用電極であって、
その上に配置されるセンシング層であって、グルコースによって反応を触媒するために触媒を含むセンシング層と、
前記センシング層の少なくとも一部にわたって配置される膜と、を含む作用電極と、
対電極と、を備えるグルコースモニタリングデバイス。
【請求項8】
分析物の濃度を測定するためのシステムであって、
分析物測定部位に分析物センサを取り付けるステップと、
分析物測定部位に分析物センサを取り付けた後、実質的に即時に、臨床的に正確な分析物の濃度を測定するステップと、
を含む方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、
分析物測定部位に分析物センサを取り付けた直後に、臨床的に正確な分析物の濃度を測定する方法。
【請求項10】
請求項8記載の方法において、
分析物測定部位に分析物センサを取り付けた後、臨床的に正確な分析物の濃度を30分以内に測定する方法。
【請求項11】
請求項8記載の方法において、
臨床的に正確な分析物の濃度を定期的に測定するステップを含む方法。
【請求項12】
請求項8記載の方法において、
臨床的に正確な分析物の濃度を連続的に測定するステップを含む方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、
分析物の偽指示値に起因する中断なしに、臨床的に正確な分析物の濃度を連続的に測定するステップを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15E】
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【図16】
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【図17】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【公開番号】特開2012−213640(P2012−213640A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−130411(P2012−130411)
【出願日】平成24年6月8日(2012.6.8)
【分割の表示】特願2008−548831(P2008−548831)の分割
【原出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(503413927)アボット ダイアビーツ ケア インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】