説明

分析用デバイスとこれを使用する分析装置および分析方法

【課題】必要最小限の試料液から分析に必要な量の血漿成分を採取できる分析用デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】分離キャビティ(23)にて分離された溶液成分(18a)を連結流路(37)と計量流路(38)を介して測定キャビティに接続し、連結流路(37)と連通するように分離キャビティ(23)の側面に、分離キャビティ(23)内で分離される試料液の分離界面(18c)よりも外周方向に伸長して形成した第1の毛細管キャビティ(33)を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物などから採取した液体の分析に使用する分析用デバイスと、これを使用する分析装置および分析方法に関するものであり、より詳細には、分析用デバイス内で分離された試料液の溶液成分の採取方法に関し、具体的には血液中の血漿成分を採取する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生物などから採取した液体を分析する方法として、液体流路を形成した分析用デバイスを用いて分析する方法が知られている。分析用デバイスは、回転装置を使って流体の制御をすることが可能であり、遠心力を利用して、試料液の希釈、溶液の計量、固体成分の分離、分離された流体の移送分配、溶液と試薬の混合等を行うことができるため、種々の生物化学的な分析を行うことが可能である。
【0003】
遠心力を利用して溶液を移送する特許文献1に記載の分析用デバイスは、図20(a)に示すように、試料液を注入口55から毛細管作用によって第1のキャビティ56を満たすように採取し、次に、分析用デバイス54の軸心57回りの回転によって第1のキャビティ56内の試料液を分離キャビティ58へ移送して、図20(b)に示すように血漿成分59aと血球成分59bに遠心分離する。分離キャビティ58内の血漿成分59aは、毛細管流路60の一端と接続された毛細管キャビティ61によってキャビティ62に引き込んで、キャビティ62内に担持された試薬と混合された混合物を光度計で分析している。
【特許文献1】特表平4−504758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、血球成分が混入しないようにするために毛細管キャビティ61を分離キャビティ58の底部から安全距離だけ離して血漿成分59aを引き込んでいる。しかしながら、分析用デバイス54の成型のばらつきによって、第1のキャビティ56で採取される試料液の量や、分離キャビティ58に保持される液面高さ、毛細管キャビティ61の吸出し位置などがばらついたり、血液中の血漿成分の比率は個人によって差があるため、試料液中の血漿量がばらついたりするため、血漿成分59aと血球成分59bの分離界面63の位置が大きく変動する。これらのばらつきを考慮して毛細管キャビティ61の吸出し位置を設定すると、分離キャビティ58に残留する血漿成分59aが送液ロス64が発生する。そのため必要以上に試料液を採取する必要があるため、患者への負担が大きくなるという課題を有している。
【0005】
本発明は、従来の課題を解決するもので、必要最小限の試料液から分析に必要な量の血漿成分を採取できる分析用デバイスと、これを使用する分析装置および分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1記載の分析用ディスクは、試料液を遠心力によって測定スポットに向かって移送するマイクロチャネル構造を有し、前記測定スポットにおける反応液にアクセスする読み取りに使用される分析用デバイスであって、前記試料液を溶液成分と固体成分とに前記遠心力を用いて分離する分離キャビティと、前記分離キャビティにて分離された前記溶液成分の一部が移送されこれを保持する計量流路と、前記計量流路と分離キャビティとの間に設けられ前記分離キャビティの試料液を移送する連結流路と、前記連結流路と連通するように前記分離キャビティの側面に設けられた第1の毛細管キャビティとを備え、前記第1の毛細管キャビティが前記分離キャビティ内で分離される試料液の分離界面よりも外周方向に伸長して形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2記載の分析用デバイスは、請求項1において、前記分離キャビティの最外周位置に連通し、前記分離キャビティに保持される試料液の液面よりも内周位置で屈曲するサイフォン構造を有する連結流路と、前記分離キャビティの最外周位置よりも外周に位置し、前記連結流路を介して分離キャビティと連通する溢流キャビティとを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3記載の分析用デバイスは、請求項1において、前記分離キャビティの外周位置に連通して形成される第2の毛細管キャビティを備え、前記第2の毛細管キャビティが分離された固体成分の一部を保持することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4記載の分析用デバイスは、請求項3において、前記第1の毛細管キャビティと前記第2の毛細管キャビティが連通することを特徴とする。
本発明の請求項5記載の分析用デバイスは、請求項3または請求項4において、前記第2の毛細管キャビティの最外周位置に連通し、前記分離キャビティに保持される試料液の液面よりも内周位置で屈曲するサイフォン構造を有する連結流路と、前記分離キャビティの最外周位置よりも外周に位置し、前記連結流路を介して分離キャビティと連通する溢流キャビティとを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項6記載の分析装置は、試料液を採取した請求項1に記載の分析用デバイスがセットされる分析装置であって、前記分析用デバイスを軸心周りに回転させる回転駆動手段と、前記回転駆動手段によって移送された溶液に基づく前記分析用デバイス内の反応物にアクセスして分析する分析手段とを備え前記回転駆動手段の回転と停止によって試料液を溶液成分と固体成分に分離し溶液成分の一部を採取できるよう構成したことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項7記載の分析方法は、請求項1に記載の分析用デバイスを用いた分析方法であって、前記分析用デバイスを回転させて前記分析用デバイスに点着された試料液を前記分離キャビティに移送して遠心分離し、前記回転を停止させて遠心分離された後の試料液の溶液成分を前記第1の毛細管キャビティで優先的に吸い出し、前記連結流路を経由して溶液成分を計量流路に移送するステップと、前記分析用デバイスを回転させて前記計量流路内の溶液成分を移送し試薬と混合するステップと、読み取り位置に前記測定スポットが介在するタイミングに前記測定スポットの反応物にアクセスするステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の分析用デバイスとこれを使用する分析装置および分析方法によれば、必要最小限の試料液から分析に必要な量の血漿成分を採取できるため、患者の負担を軽減できたり、最小限の液量で分析に必要なキャビティを形成できるため、分析用デバイスの小型化ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の分析用デバイスの各実施の形態を図1〜図19に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1〜図6は分析用デバイスを示す。
【0014】
図1(a)(b)は分析用デバイス1の保護キャップ2を閉じた状態と開いた状態を示している。図2は図1(a)における下側を上に向けた状態で分解した状態を示し、図3はその組み立て図を示している。
【0015】
図1と図2に示すようにこの分析用デバイス1は、微細な凹凸形状を表面に有するマイクロチャネル構造が片面に形成されたベース基板3と、ベース基板3の表面を覆うカバー基板4と、希釈液を保持している希釈液容器5と、試料液飛散防止用の保護キャップ2とを合わせた4つの部品で構成されている。
【0016】
ベース基板3とカバー基板4は、希釈液容器5などを内部にセットした状態で接合され、この接合されたものに保護キャップ2が取り付けられている。
ベース基板3の上面に形成されている数個の凹部の開口をカバー基板4で覆うことによって、後述の複数の収容エリア(後述の測定スポットと同じ)とその収容エリアの間を接続するマイクロチャネル構造の流路などが形成されている。収容エリアのうちの必要なものには各種の分析に必要な試薬が予め担持されている。保護キャップ2の片側は、ベース基板3とカバー基板4に形成された軸6a,6bに係合して開閉できるように枢支されている。検査しようとする試料液が血液の場合、毛細管力の作用する前記マイクロチャネル構造の各流路の隙間は、50μm〜300μmに設定されている。
【0017】
この分析用デバイス1を使用した分析工程の概要は、希釈液が予めセットされた分析用デバイス1に試料液を点着し、この試料液の少なくとも一部を前記希釈液で希釈した後に測定しようとするものである。
【0018】
図4は希釈液容器5の形状を示している。
図4(a)は平面図、図4(b)は図4(a)のA−A断面図、図4(c)は側面図、図4(d)は背面図、図4(e)は開口部7から見た正面図である。この開口部7は希釈液容器5の内部5aに、図6(a)に示すように希釈液8を充填した後にシール部材としてのアルミシール9によって密封されている。希釈液容器5の開口部7とは反対側には、ラッチ部10が形成されている。この希釈液容器5は、ベース基板3とカバー基板4の間に形成され希釈液容器収容部11にセットされて図6(a)に示す液保持位置と、図6(c)に示す液放出位置とに移動自在に収容されている。
【0019】
図5は保護キャップ2の形状を示している。
図5(a)は平面図、図5(b)は図5(a)のB−B断面図、図5(c)は側面図、図5(d)は背面図、図5(e)は開口2aから見た正面図である。保護キャップ2の内側には、図1(a)に示した閉塞状態で図6(a)に示すように、希釈液容器5のラッチ部10が係合可能な係止用溝12が形成されている。
【0020】
この図6(a)は使用前の分析用デバイス1を示す。この状態では保護キャップ2が閉塞されており、保護キャップ2の係止用溝12に希釈液容器5のラッチ部10が係合して希釈液容器5が矢印J方向に移動しないように液保持位置に係止されている。この状態で利用者に供給される。
【0021】
試料液の点着に際して保護キャップ2が図6(a)でのラッチ部10との係合に抗して図1(b)に示したように開かれると、保護キャップ2の係止用溝12が形成されている底部2bが弾性変形して図6(b)に示すように保護キャップ2の係止用溝12と希釈液容器5のラッチ部10との係合が解除される。
【0022】
この状態で、分析用デバイス1の露出した注入口13に試料液を点着して保護キャップ2を閉じる。この際、保護キャップ2を閉じることによって、係止用溝12を形成していた壁面14が、希釈液容器5のラッチ部10の保護キャップ2の側の面5bに当接して、希釈液容器5を前記矢印J方向(液放出位置に近づく方向)に押し込む。希釈液容器収容部11には、ベース基板3の側から突出部としての開封リブ14が形成されており、希釈液容器5が保護キャップ2によって押し込まれると、希釈液容器5の斜めに傾斜した開口部7のシール面に張られていたアルミシール9が図6(c)に示すように開封リブ14に衝突して破られる。
【0023】
この分析用デバイス1を図7と図8に示すように、カバー基板4を下側にして分析装置100のロータ101にセットすることで、試料液の成分分析を行うことができる。
ロータ101の上面には溝102が形成されており、分析用デバイス1をロータ101にセットした状態では分析用デバイス1のカバー基板4に形成された回転支持部15と保護キャップ2に形成された回転支持部16が溝102に係合してこれを収容している。
【0024】
ロータ101に分析用デバイス1をセットした後に、ロータ101の回転させる前に分析装置のドア103を閉じると、セットされた分析用デバイス1は、ドア103の側に設けられた可動片104によって、ロータ101の回転軸心上の位置がバネ105の付勢力でロータ101の側に押さえられて、分析用デバイス1は、回転駆動手段106によって回転駆動されるロータ101と一体に回転する。107はロータ101の回転中の軸心を示している。保護キャップ2は注入口13の付近に付着した試料液が、分析中に遠心力によって外部へ飛散を防止するために取り付けられている。
【0025】
分析用デバイス1を構成する部品の材料としては、材料コストが安価で量産性に優れる樹脂材料が望ましい。前記分析装置100は、分析用デバイス1を透過した光を測定する光学的測定方法によって試料液の分析を行うため、ベース基板3およびカバー基板4の材料としては、PC,PMMA,AS,MSなどの透明性が高い合成樹脂が望ましい。
【0026】
また、希釈液容器5の材料としては、希釈液容器5内部に希釈液8を長期間封入しておく必要があるため、PP,PEなどの水分透過率の低い結晶性の合成樹脂が望ましい。保護キャップ2の材料としては、成形性のよい材料であれば特に問題がなく、PP,PEなどの安価な樹脂が望ましい。
【0027】
ベース基板3とカバー基板4との接合は、前記収容エリアに担持された試薬の反応活性に影響を与えにくい方法が望ましく、接合時に反応性のガスや溶剤が発生しにくい超音波溶着やレーザー溶着などが望ましい。
【0028】
また、ベース基板3とカバー基板4との接合によって両基板3,4の間の微小な隙間による毛細管力によって溶液を移送させる部分には、毛細管力を高めるための親水処理がなされている。具体的には、親水性ポリマーや界面活性剤などを用いた親水処理が行われている。ここで、親水性とは水との接触角が90°未満のことをいい、より好ましくは接触角40°未満である。
【0029】
図9は分析装置100の構成を示す。
この分析装置100は、ロータ101を回転させるための回転駆動手段106と、分析用デバイス1内の溶液を光学的に測定するための光学測定手段108と、ロータ101の回転速度や回転方向および光学測定手段の測定タイミングなどを制御する制御手段109と、光学測定手段108によって得られた信号を処理し測定結果を演算するための演算部110と、演算部110で得られた結果を表示するための表示部111とで構成されている。
【0030】
回転駆動手段106は、ロータ101を介して分析用デバイス1を回転軸心107の回りに任意の方向に所定の回転速度で回転させるだけではなく、所定の停止位置で回転軸心107を中心に所定の振幅範囲、周期で左右に往復運動をさせて分析用デバイス1を揺動させることができるように構成されている。
【0031】
光学測定手段108には、分析用デバイス1の測定部にレーザー光を照射するためのレーザー光源112と、レーザー光源105から照射されたレーザー光のうち、分析用デバイス1を通過した透過光の光量を検出するフォトディテクタ113とを備えている。
【0032】
分析用デバイス1をロータ101によって回転駆動して、注入口13から内部に取り込んだ試料液を、注入口13よりも内周にある前記回転軸心107を中心に分析用デバイス1を回転させて発生する遠心力と、分析用デバイス1内に設けられた毛細管流路の毛細管力を用いて、分析用デバイス1の内部で溶液を移送していくよう構成されており、分析用デバイス1のマイクロチャネル構造を分析工程とともに詳しく説明する。
【0033】
図10は分析用デバイス1の注入口13の付近を示している。
図10(a)は注入口13を分析用デバイス1の外側から見た拡大図を示し、図10(b)は前記マイクロチャネル構造をロータ101の側からカバー基板4を透過して見たものである。
【0034】
注入口13は、ベース基板3とカバー基板4との間に形成された微小な隙間δの毛細管力の作用する誘導部17を介して、この誘導部17と同様に毛細管力の作用する隙間で必要量の試料液18を保持できる容積の毛細管キャビティ19と接続されている。誘導部17の流れ方向と直交する断面形状(図10(b)のD−D断面)は、奥側が垂直な矩形形ではなくて、図10(c)に示すように奥端ほどカバー基板4に向かって次第に狭くなる傾斜面20で形成されている。誘導部17と毛細管キャビティ19と接続部にはベース基板3に凹部21を形成して通路の向きを変更する屈曲部22が形成されている。
【0035】
誘導部17から見て毛細管キャビティ19を介してその先には、毛細管力が作用しない隙間の分離キャビティ23が形成されている。毛細管キャビティ19と屈曲部22および誘導部17の一部の側方には、一端が分離キャビティ23に接続され、他端が大気に開放したキャビティー24が形成されている。
【0036】
このように構成したため、注入口13に点着すると、試料液18は誘導部17を介して毛細管キャビティ19まで取り込まれる。図11はこのようにして点着後の分析用デバイス1をロータ101にセットして回転させる前の状態を示している。このとき、図6(c)で説明したように希釈液容器5のアルミシール9が開封リブ14に衝突して破られている。25a,25b,25c,25dはベース基板3に形成された空気孔である。
【0037】
− 工程1 −
分析用デバイス1は、図12(a)に示すように毛細管キャビティ19内に試料液を保持し、希釈液溶液5のアルミシール9が破られた状態でロータ101にセットされる。
【0038】
− 工程2 −
ドア103を閉じた後にロータ101を時計方向(C2方向)に回転駆動すると、保持されている試料液が屈曲部22の位置で破断し、誘導部17内の試料液は保護キャップ2内に排出され、毛細管キャビティ19内の試料液18は図12(b)と図15(a)に示すように分離キャビティ23に流入するとともに、分離キャビティ23で血漿成分18aと血球成分18bとに遠心分離される。希釈液容器5から流出した希釈液8は、排出流路26a,26bを介して保持キャビティ27に流入する。保持キャビティ27に流入した希釈液8が所定量を超えると、越えた希釈液8は溢流流路28を介して溢流キャビティ29に流れ込み、さらに逆流防止用のリブ30を介してリファレンス測定チャンバー31に流れ込む。
【0039】
なお、希釈液容器5は、アルミシール9でシールされている開口部7とは反対側の底部の形状が、図4(a)(b)に示すように円弧面32で形成され、かつ図12(b)に示す状態希釈液容器5の液放出位置においては、図13に示すように円弧面32の中心mが回転軸心107よりも排出流路26b側に近づくよう距離dだけオフセットするように形成されているため、この円弧面32に向かうように流れた希釈液8が円弧面32に沿って外側から開口部7に向かう流れ(矢印n方向)に変更されて、希釈液容器5の開口部7から効率よく希釈液容器収容部11に放出される。
【0040】
− 工程3 −
次に、ロータ101の回転を停止させると、血漿成分18aは分離キャビティ23の壁面に形成された毛細管キャビティ33に吸い上げられ、毛細管キャビティ33と連通する毛細管流路37を介して図14(a)と図15(b)に示すように計量流路38に流れて定量が保持される。図15(c)に毛細管キャビティ33とその周辺の斜視図を示す。図15(c)におけるE−E断面を図19に示す。
【0041】
− 工程4 −
ロータ101を反時計方向(C1方向)に回転駆動すると、図14(b)に示すように、計量流路38に保持されていた血漿成分18aが逆流防止用のリブ39を介して測定チャンバー40に流れ込み、また、保持キャビティ27の希釈液8がサイホン形状の連結流路41と逆流防止用のリブ39を介して測定チャンバー40に流れ込む。また、分離キャビティ23内の試料液はサイホン形状の連結流路34と逆流防止用のリブ35を介して溢流キャビティ36に流れ込む。そして必要に応じてロータ101を反時計方向(C1方向)と時計方向(C2方向)に往復回動させて揺動させて測定チャンバー内に担持された試薬と希釈液8と血漿成分18aからなる測定対象の溶液を攪拌する。
【0042】
− 工程5 −
ロータ101を反時計方向(C1方向)または時計方向(C2方向)に回転させて、リファレンス測定チャンバー31の測定スポットがレーザー光源112とフォトディテクタ113の間を通過するタイミングに、演算部110がフォトディテクタ113の検出値を読み取ってリファレンス値を決定する。更に、測定チャンバー40の測定スポットがレーザー光源112とフォトディテクタ113の間を通過するタイミングに、演算部110がフォトディテクタ113の検出値を読み取って、前記リファレンス値に基づいて特定成分を計算している。
【0043】
このように、利用者が試料液を採取する際の保護キャップ2の開閉操作で希釈液容器5を開封し、希釈液を分析用デバイス1内に移送させることができるため、分析装置の簡略化、コストダウンができ、さらには利用者の操作性も向上させることができる。
【0044】
さらに、シール部材としてのアルミシール9で封止された希釈液容器5を使用し、突出部としての開封リブ14によってアルミシール9を破って希釈液容器5を開封するので、長期間の保存によって希釈液が蒸発して減少することもなく、分析精度の向上を実現できる。
【0045】
また、図6(a)に示した分析用デバイス1の出荷状態では、閉塞された保護キャップ2の係止用溝12に希釈液容器5のラッチ部10が係合して、希釈液容器5が矢印J方向に移動しないように液保持位置に係止されているため、保護キャップ2の開閉操作で希釈液容器5を希釈液容器収容部11において移動自在に構成しているにもかかわらず、利用者が保護キャップ2を開放して使用するまでの期間は、希釈液容器収容部11における希釈液容器5の位置が、液保持位置に係止されるため、利用者が使用前の輸送中に希釈液容器5が誤って開封されて希釈液が零れるようなことがない。
【0046】
図16は分析用デバイス1を図6(a)に示した出荷状態にセットする製造工程を示している。先ず、保護キャップ2を閉じる前に、希釈液容器5の下面に設けた溝42(図2(b)と図4(d)参照)と、カバー基板4に設けた孔43とを位置合わせして、この液保持位置において孔43を通して希釈液容器5の溝42に、ベース基板3またはカバー基板4とは別に設けられた係止治具44の突起44aを係合させて、希釈液容器5を液保持位置に係止した状態にセットする。そして、保護キャップ2の上面に形成されている切り欠き45(図1参照)から、押圧治具46を差し入れて保護キャップ2の底面を押圧して弾性変形させた状態で保護キャップ2を閉じてから押圧治具46を解除することによって、図6(a)の状態にセットできる。
【0047】
なお、この実施の形態では希釈液容器5の下面に溝42を設けた場合を例に挙げて説明したが、希釈液容器5の上面に溝42を設け、この溝42に対応してベース基板3に孔43を設けて係止治具44の突起44aを溝42に係合させるようにも構成できる。
【0048】
上記の実施の形態では、保護キャップ2の係止用溝12が希釈液容器5のラッチ部10に直接に係合して希釈液容器5を液保持位置に係止したが、保護キャップ2の係止用溝12と希釈液容器5のラッチ部10とを間接的に係合させて希釈液容器5を液保持位置に係止することもできる。
【0049】
図15(c)に示した毛細管キャビティ33とその周辺を詳しく説明する。
第1の毛細管キャビティとしての毛細管キャビティ33は、分離キャビティ23の底部23bから内周側に向かって形成されている。換言すると、毛細管キャビティ33の最外周の位置は、図15(a)に示す血漿成分18aと血球成分18bとの分離界面18cよりも外周方向に伸長して形成されている。
【0050】
毛細管キャビティ33の外周側の位置を上記のように設定すると、毛細管キャビティ33の外周端が分離キャビティ23において分離された血漿成分18aと血球成分18bに浸かっており、血漿成分18aは血球成分18bに比べて粘度が低いため、血漿成分18aの方が優先的に毛細管キャビティ33によって吸い出され、毛細管流路37と計量流路38を介して測定チャンバー40に向かって血漿成分18aを移送できる。また、血漿成分18aが吸い出された後、血球成分18bも血漿成分18aの後を追って吸い出されるため、毛細管キャビティ33および毛細管流路37の途中までの経路を血球成分18bで置換することができ、計量流路38が血漿成分18aで満たされると、毛細管流路37および毛細管キャビティ33内の液の移送も止まるため、計量流路38に血球成分18bが混入することはない。したがって、従来の構成よりも送液ロスを最小限に抑えることができるため、測定に必要な試料液の量を低減することができる。
【0051】
(実施の形態2)
図17は実施の形態2の分析用デバイスの毛細管キャビティ33とその周辺を示している。図15に示した実施の形態1では、血球成分18bを溢流キャビティ36へ移送するための連結流路34は、その基端34aが、分離キャビティ23の底部23bで毛細管キャビティ33が形成されていた壁面とは反対側の壁面の隅部だけで開口していた。これに対して図17では、連結流路34の基端34aは、基端34aの場合と隙が同じで分離キャビティ23の底部23bにおける開口幅と奥行きが基端34aよりも大きな第2の毛細管キャビティ34bを介して、分離キャビティ23の底部23bに接続されている。ここでは第2の毛細管キャビティ34bの最外周位置に連結流路34が接続されている。
【0052】
このように構成したため、図15の構成では遠心分離を終えて分析用ディスク1の回転駆動を終了したときに、それまで分離キャビティ23の底部23bに位置していた血球成分18bの一部が底部23bから離れるような粘度であっても、図17の構成では、分離キャビティ23の底部23bに位置していた血球成分18bの一部は第2の毛細管キャビティ34bに流れ込んで毛細管力で保持されているため、分析用ディスク1の回転駆動を終了したときにも、この第2の毛細管キャビティ34bの毛細管力によって底部23bの付近の血球成分18bは底部23bから離れるようなことが無く、分離キャビティ23内に保持される血球成分18bの量を少なくすることで、計量流路38への血球成分18bの混入を防止できる。
【0053】
また、連結流路34は、第2の毛細管キャビティ34bの最外周位置に連通し、分離キャビティ23に保持される試料液の液面よりも内周位置で屈曲するサイフォン構造に形成されているため、分離キャビティ23、毛細管流路37、毛細管キャビティ33、および第2の毛細管キャビティ34b内の液を溢流キャビティ36へ排出することができる。
【0054】
(実施の形態3)
図18は実施の形態3の分析用デバイスの毛細管キャビティ33とその周辺を示している。図17では、第2の毛細管キャビティ34bと第1の毛細管キャビティとしての毛細管キャビティ33とが別々に設けられていたが、図18では毛細管キャビティ33と第2の毛細管キャビティ34bとが底部23bに設けられた開口部によって接続して構成されている。また、連結流路34は、第2の毛細管キャビティ34bの最外周位置に連通し、分離キャビティ23に保持される試料液の液面よりも内周位置で屈曲するサイフォン構造に形成されている。
【0055】
このように構成したため、第2の毛細管キャビティ34bと分離キャビティ23とが接続されている境界位置を試料液の分離界面18cと近い位置に形成することができるため、より血球成分18bが毛細管キャビティ33に吸われにくくなり、計量流路38への血球成分18bの混入をより確実に防止できる。
【0056】
上記の各実施の形態では、分析用デバイス1を回転軸心107の周りに回転させて試料液から遠心分離された成分と希釈液容器5から放出された希釈液8を測定チャンバー40に移送して希釈し、試料液から分離された溶液成分または試料液から分離された溶液成分と試薬との反応物にアクセスして分析する場合を例に挙げて説明したが、試料液から溶液成分を分離しなくても良い場合には、遠心分離の工程は必要でなく、この場合には、分析用デバイス1を回転軸心107の周りに回転させて、点着された試料液のうちの定量の試料液の全部と希釈液容器5から放出された希釈液8を測定チャンバー40に移送して希釈し、希釈液で希釈後の溶液成分または希釈液で希釈後の溶液成分と試薬との反応物にアクセスして分析する。
【0057】
また、分析用デバイス1を回転軸心107の周りに回転させて試料液から分離された固体成分と希釈液容器5から放出された希釈液を測定チャンバーに移送して希釈し、試料液から分離された固体成分または試料液から分離された固体成分と試薬との反応物にアクセスして分析することもできる。
【0058】
上記の実施の形態では、内部に微細な凹凸形状を表面に有するマイクロチャネル構造が形成された分析デバイス本体を、ベース基板3とカバー基板4との2層で構成したが、3層以上の基板を貼り合わせて構成することもできる。具体的には、マイクロチャネル構造に応じて切り欠きが形成された基板を中央にして、その上面と下面を別の基板を貼り合わせて前記切り欠きを閉塞してマイクロチャネル構造を形成する3層構造などを例に挙げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、生物などから採取した液体の成分分析に使用する分析用デバイスの移送制御手段として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態の分析用デバイスの保護キャップを閉じた状態と開いた状態の外観斜視図
【図2】同実施の形態の分析用デバイスの分解斜視図
【図3】保護キャップを閉じた状態の分析用デバイスを背面から見た斜視図
【図4】同実施の形態の希釈液容器の説明図
【図5】同実施の形態の保護キャップの説明図
【図6】同実施の形態の分析用デバイスの使用前と試料液を点着する際ならびに点着後に保護キャップを閉じた状態の断面図
【図7】分析用デバイスを分析装置にセットする直前の斜視図
【図8】分析用デバイスを分析装置にセットした状態の断面図
【図9】同実施の形態の分析装置の構成図
【図10】同実施の形態の分析デバイスの要部の拡大説明図
【図11】分析用デバイスを分析装置にセットして回転開始前の断面図
【図12】分析用デバイスを分析装置にセットして回転後とその後の遠心分離後の断面図
【図13】分析用デバイスの回転軸心と希釈液容器から希釈液が放出されるタイミングの希釈液容器の位置を示す断面図
【図14】遠心分離後の試料液の固体成分を定量採取し希釈するときの断面図
【図15】要部の拡大図と斜視図
【図16】出荷状態にセットする工程の断面図
【図17】実施の形態2の毛細管キャビティ33とその周辺の拡大斜視図
【図18】実施の形態3の毛細管キャビティ33とその周辺の拡大斜視図
【図19】図15(c)のE−E断面図
【図20】特許文献1の分析用デバイスの平面図と分離界面付近の拡大図
【符号の説明】
【0061】
1 分析用デバイス
2 保護キャップ
2a 開口
2b 底部
3 ベース基板
4 カバー基板
5 希釈液容器
5a 内部
5b ラッチ部10の面
6a,6b 軸
7 開口部
8 希釈液
9 アルミシール(シール部材)
10 ラッチ部
11 希釈液容器収容部
12 係止用溝
13 注入口
14 開封リブ(突出部)
15,16 回転支持部
17 誘導部
18 試料液
18a 血漿成分
18b 血球成分
19 毛細管キャビティ
20 傾斜面
21 凹部
22 屈曲部
23 分離キャビティ
24 キャビティー
25a,25b,25c,25d 空気孔
26a,26b 排出流路
27 保持キャビティ
28 溢流流路
29 溢流キャビティ
30 リブ
31 リファレンス測定チャンバー
32 円弧面
33 毛細管キャビティ(第1の毛細管キャビティ)
34 連結流路
34b 第2の毛細管キャビティ
35 リブ
36 溢流キャビティ
37 毛細管流路(連結流路)
38 計量流路
39 逆流防止用のリブ
40 測定チャンバー
41 連結流路
42 溝
43 孔
44 係止治具
44a 突起
45 切り欠き
46 押圧治具
100 分析装置
101 ロータ
102 溝
103 ドア
104 可動片
105 バネ
106 回転駆動手段
107 回転軸心
108 光学測定手段
109 制御手段
110 演算部
111 表示部
112 レーザー光源
113 フォトディテクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料液を遠心力によって測定スポットに向かって移送するマイクロチャネル構造を有し、前記測定スポットにおける反応液にアクセスする読み取りに使用される分析用デバイスであって、
前記試料液を溶液成分と固体成分とに前記遠心力を用いて分離する分離キャビティと、
前記分離キャビティにて分離された前記溶液成分の一部が移送されこれを保持する計量流路と、
前記計量流路と分離キャビティとの間に設けられ前記分離キャビティの試料液を移送する連結流路と、
前記連結流路と連通するように前記分離キャビティの側面に設けられた第1の毛細管キャビティとを備え、
前記第1の毛細管キャビティが前記分離キャビティ内で分離される試料液の分離界面よりも外周方向に伸長して形成されている
分析用デバイス。
【請求項2】
前記分離キャビティの最外周位置に連通し、前記分離キャビティに保持される試料液の液面よりも内周位置で屈曲するサイフォン構造を有する連結流路と、前記分離キャビティの最外周位置よりも外周に位置し、前記連結流路を介して分離キャビティと連通する溢流キャビティと
を備えた請求項1に記載の分析用デバイス。
【請求項3】
前記分離キャビティの外周位置に連通して形成される第2の毛細管キャビティを備え、前記第2の毛細管キャビティが分離された固体成分の一部を保持することを特徴とする
請求項1に記載の分析用デバイス。
【請求項4】
前記第1の毛細管キャビティと前記第2の毛細管キャビティが連通することを特徴とする請求項3に記載の分析用デバイス。
【請求項5】
前記第2の毛細管キャビティの最外周位置に連通し、前記分離キャビティに保持される試料液の液面よりも内周位置で屈曲するサイフォン構造を有する連結流路と、
前記分離キャビティの最外周位置よりも外周に位置し、前記連結流路を介して分離キャビティと連通する溢流キャビティと
を備えた請求項3または請求項4に記載の分析用デバイス。
【請求項6】
試料液を採取した請求項1に記載の分析用デバイスがセットされる分析装置であって、
前記分析用デバイスを軸心周りに回転させる回転駆動手段と、
前記回転駆動手段によって移送された溶液に基づく前記分析用デバイス内の反応物にアクセスして分析する分析手段とを備え、
前記回転駆動手段の回転と停止によって試料液を溶液成分と固体成分に分離し溶液成分の一部を採取できるよう構成した分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の分析用デバイスを用いた分析方法であって、
前記分析用デバイスを回転させて前記分析用デバイスに点着された試料液を前記分離キャビティに移送して遠心分離し、前記回転を停止させて遠心分離された後の試料液の溶液成分を前記第1の毛細管キャビティで優先的に吸い出し、前記連結流路を経由して溶液成分を計量流路に移送するステップと、
前記分析用デバイスを回転させて前記計量流路内の溶液成分を移送し試薬と混合するステップと、
読み取り位置に前記測定スポットが介在するタイミングに前記測定スポットの反応物にアクセスするステップと
を有する分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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