説明

分析用試料の保持方法及び分析装置用試料ホルダー

【課題】複数の試料を複数の開口部に位置ずれなく確実かつスムーズに保持できる、分析用試料の保持方法及び分析装置用試料ホルダーを提供する。
【解決手段】複数の開口部12を有し、試料Sが開口部12を通して露出するように内面側に保持される試料ホルダーを用い、開口部12に合わせて試料Sを保持すべき箇所にマーキングが施され、かつ、試料Sを保持させる粘着層17が形成されたシール部材15を用い、シール部材15のマーキングに合わせて、複数の試料Sを粘着層17によりシール部材15にそれぞれ保持し、このシール部材15を試料ホルダーの内面に、各試料Sが対応する開口部12に整合するように保持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次イオン質量分析やX線分析等の各種分析方法に用いられる、分析用試料の保持方法及び分析装置用試料ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
以前から、試料の組成や濃度、物性等を分析するため、二次イオン質量分析やX線分析等の各種分析方法が広く用いられている。この種の分析にあたっては、分析を正確に行うために、試料をホルダーに保持して分析を行うことが一般的である。
【0003】
例えば、下記特許文献1の従来例には、貫通孔が形成された試料ホルダーが記載されている。そして、この試料ホルダーの裏側に粘着テープを貼って貫通孔の裏側を閉塞して、テープ粘着層を貫通孔内側に向けて配置し、この貫通孔の表側開口から試料を挿入することにより、粘着テープに試料が貼着されて固定されるように構成されている。
【0004】
また、図7,8に示すような試料ホルダーも用いられている。この試料ホルダー1は、略円形状の貫通孔3が形成された枠状の本体部20と、この本体部20の貫通孔3の表側開口に固着されたホルダー板11と、前記貫通孔3の裏側に嵌め込まれる蓋5とを備えている。また、前記ホルダー板11には、複数の開口部12が形成されている。
【0005】
この試料ホルダー1に試料Sを保持する際は、まず、各試料Sをホルダー板11の各開口部12に整合させて下方に移動させ、試料Sを各開口部12の裏面側周縁に係合させてホルダー板11の裏面上に載置する。その後、各試料Sの裏側にスプリング25の一端を当接させて配置し、その状態を維持したまま、本体部20の貫通孔3の裏側に蓋5を嵌め込んで、前記スプリング25の他端に当接させる。それと共に、本体部20の4つの角部から本体部中心に向けて形成されたネジ孔7に図示しないネジを螺入して、その先端部を前記蓋5の裏側に係合させることにより、複数の試料Sが、ホルダー板11の複数の開口部12から露出した状態で装着されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−247969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の場合、貫通孔の表側から試料を挿入して、粘着テープに固定するようになっているので、例えば、試料の厚さにバラツキがあった場合、貫通孔の表側開口から大きく出っ張ったり或いは引っ込んだりして、試料と、二次イオン質量分析のイオンビームやX線分析のX線等の照射源との距離が、一定に保たれないことがあった。そのため、特許文献1では、試料と粘着テープとの間に両面テープを配置して試料の高さを調整しているが、作業が煩雑であった。また、試料ホルダーに複数の貫通孔が形成されていて、複数の試料を保持させる場合には、上記作業を繰り返さなければならないので、時間がかかるというデメリットが生じる。
【0008】
また、図7,8に示す試料ホルダー1の場合、複数の開口部12に1つ1つ試料Sを整合させて配置しなければならない。更に、開口部12に配置された試料Sは、蓋5が貫通孔3に嵌め込まれることにより、その裏側がスプリング25に支持されるようになっており、蓋5を嵌め込むまでは開口部12から位置ずれしやすい不安定な状態となっているので、スプリング25の配置作業や蓋5の嵌め込み作業を慎重に行わなければならない。このように、図7,8に示す試料ホルダー1の場合も、試料Sを保持するまでに多大な労力と時間がかかり、作業性の点で問題があった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、複数の試料を、複数の開口部に位置ずれさせることなく、確実かつスムーズに保持させることができる、分析用試料の保持方法及び分析装置用試料ホルダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の1つは、複数の開口部を有し、分析すべき試料が該開口部を通して露出するように内面側に保持される試料ホルダーを用いて、分析用の試料を保持する方法において、
前記開口部に合わせて前記試料を保持すべき箇所にマーキングが施され、かつ、前記試料を保持させる粘着層が形成されたシール部材を用い、
前記シール部材の前記マーキングに合わせて、複数の試料を前記粘着層により前記シール部材にそれぞれ保持し、
このシール部材を前記試料ホルダーの内面に、前記各試料が対応する開口部に整合するように保持させることを特徴とする分析用試料の保持方法を提供する。
【0011】
本発明のもう1つは、分析すべき複数の試料がそれぞれ保持される複数の開口部を有するホルダー板と、前記開口部に合わせて前記試料を保持すべき箇所にマーキングが施され、かつ、前記試料を保持させる粘着層が形成されたシール部材と、前記ホルダー板が着脱可能に保持される本体部とを備え、
前記シール部材の前記マーキングに合わせて、複数の試料を前記粘着層により前記シール部材にそれぞれ保持し、このシール部材を前記ホルダー板の内面に、前記各試料が対応する開口部に整合するように保持することにより、前記試料が前記開口部から露出するように構成されていることを特徴とする分析装置用試料ホルダーを提供する。
【0012】
上記発明によれば、シール部材のマーキングに合わせて、複数の試料を配置して、粘着層によりシール部材に保持した後、このシール部材を、試料ホルダーの内面に、各試料が対応する開口部に整合するように保持させるだけの簡単な作業で、複数の試料を、複数の開口部に位置ずれさせることなく、一度の作業で確実に且つスムーズに保持させることができ、試料の保持作業性(装着作業性)を向上させることができる。
【0013】
本発明の分析用試料の保持方法においては、前記シール部材を介して前記各試料を前記試料ホルダーの内面に保持した後、更に押圧手段によって各試料の背面側を押圧することが好ましい。これによれば、試料の背面が押圧手段により押圧されるようになっているので、試料がホルダー板の開口部に強く押し当てられて、ホルダー板に対して試料をほぼ平行に保持しつつ、開口部に対して試料を位置ずれなく強固に保持することができる。例えば、分析すべき試料の厚みにバラツキがあり、シール部材の粘着層に対する保持力(接着力)が均等に付与されない場合や、分析時の環境等(真空雰囲気下や高温下など)によってシール部材の粘着層の保持力(接着力)が低下した場合等であっても、各試料を開口部に位置ずれなく確実に保持することができる。
【0014】
本発明の分析用試料の保持方法においては、前記試料ホルダーは、前記試料が配置される複数の開口部を有するホルダー板と、一面が開口された凹状をなし、前記押圧手段が内部に配置され、前記開口された一面に前記ホルダー板が着脱可能に保持される本体部とを有し、前記ホルダー板の内面に、前記複数の試料を保持したシール部材を保持させ、次いで前記ホルダー板を、各試料の背面に前記押圧手段が配置されるように位置合せして、前記本体部に保持させることが好ましい。また、本発明の分析装置用試料ホルダーにおいては、前記本体部は、一面が開口された凹状をなし、前記ホルダー板に保持された各試料の背面を押圧する押圧手段を内部に有し、前記開口された一面に前記ホルダー板が着脱可能に保持されるように構成されていることが好ましい。
【0015】
これによれば、開口部を有するホルダー板が、押圧手段が配置される本体部とは別体とされているので、ホルダー板を本体部から取外して、作業スペースの広い場所に配置することができ、試料の保持作業(装着作業)がより容易になる。その後、ホルダー板を、各試料の背面に押圧手段が配置されるように位置合せして、本体部に保持することにより、各試料が押圧手段に押圧された状態で、開口部の内面側に保持させることができる。
【0016】
本発明の分析用試料の保持方法においては、前記シール部材は、前記ホルダー板の内面に前記粘着層による接着力により保持させ、前記シール部材の前記各試料が保持される部分以外の部分を、梨地様の微細な凹凸面にして、前記試料ホルダーの内面への接着力を弱めることが好ましい。また、本発明の分析装置用試料ホルダーにおいては、前記シール部材は、前記ホルダー板の内面に前記粘着層による接着力により保持され、前記シール部材の前記各試料が保持される部分以外の部分が、梨地様の微細な凹凸面に形成されて、前記試料ホルダーの内面への接着力を弱めるように構成されていることが好ましい。
【0017】
これによれば、シール部材のマーキングが施された箇所に試料を確実に保持させることができると共に、シール部材の試料が保持される部分以外の部分が、梨地様の微細な凹凸面とされ、試料ホルダー内面への接着力が弱められているので、試料の分析終了後、シール部材をホルダーから容易に引き剥がすことができ、試料を開口部からスムーズに取外すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シール部材のマーキングに合わせて、複数の試料を配置して、粘着層によりシール部材に保持した後、同シール部材を、試料ホルダーの内面の開口部に整合して保持させるだけの簡単な作業で、複数の試料を複数の開口部に位置ずれなく、一度の作業で確実に且つスムーズに保持させることができ、作業性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る分析用試料の保持方法の第1工程を示す斜視図である。
【図2】同保持方法の第2工程を示す斜視図である。
【図3】同保持方法の第3工程を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る分析装置用試料ホルダーの一実施形態を示しており、図3のIV−IV矢示線で切断した場合の概略断面図である。
【図5】同分析装置用試料ホルダーを、二次イオン質量分析に用いた場合の概略構成図である。
【図6】本発明に係る分析装置用試料ホルダーの他の実施形態を示しており、(a)はその一例を示す斜視図、(b)は他の例を示す斜視図である。
【図7】従来の試料ホルダーを示す斜視図である。
【図8】同試料ホルダーの組付け工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1〜5を参照して、本発明に係る分析用試料の保持方法及び分析装置用試料ホルダーの一実施形態について説明する。図1は、本発明の分析用試料の保持方法の第1工程を示す斜視図、図2は、同保持方法の第2工程を示す斜視図、図3は、同保持方法の第3工程を示す斜視図、図4は、本発明の分析装置用試料ホルダーにおいて、図3のIV−IV矢示線で切断した場合の概略断面図、図5は、同分析装置用試料ホルダーを、二次イオン質量分析に用いた場合の概略構成図である。
【0021】
まず、この実施形態における分析装置用試料ホルダー10(以下、「ホルダー10」という)について説明する。図3に示すように、このホルダー10は、分析すべき複数の試料Sがそれぞれ装着される複数の開口部12を有するホルダー板11と、前記開口部12に合わせて前記試料Sを載置すべき箇所にマーキング18が施され、かつ、前記試料Sを接着させる粘着層17が形成されたシール部材15と、前記ホルダー板11が着脱可能に装着される本体部20とを備えている。
【0022】
前記ホルダー板11は、本体部20の円形状をなした凹部21(後述する)に対応して円板状をなしている。このホルダー板11には、分析すべき試料Sが装着される開口部12が形成されている。この実施形態での開口部12は、四角形の板状をなす試料Sに対応して四角孔状をなしており、かつ、その大きさは、試料Sよりも小さく形成されている。その結果、試料Sが開口部12の内面側周縁に係合して、開口部12の外面側開口から抜け出ないように抜け止め保持されるようになっている(図4参照)。なお、開口部12は、分析すべき試料Sの形状に対応して、丸孔状や楕円形状等としてもよく、試料Sを抜け止め保持できる形状であればよい。また、ホルダー板11の周縁部には、所定間隔を設けて複数のネジ挿通孔13が形成されている。
【0023】
更に、ホルダー板11には、シール部材15に接着された複数の試料Sを、対応する開口部12に整合させるための、整合手段が設けられている。この実施形態では、ホルダー板11の内面側に、シール部材15の外周形状に適合したシール部材外形線14が罫書きにより施されている(図2参照)。このシール部材外形線14は、略円形状をなすと共に、直線状に横切る位置合わせ線14aを有している。なお、整合手段として、ホルダー板11の内面側に、シール部材15に適合する凹部等を設けてもよく、特に限定されるものではない。
【0024】
上記ホルダー板11に接着されるシール部材15は、この実施形態の場合、略円形状の薄板状をなすと共に、カット部16により外周の一部が直線状に横切るようにカットされた形状となっている(図1参照)。このシール部材15のホルダー板11側の内面全体には、粘着層17が形成されている。
【0025】
また、シール部材15の粘着層17側の内面であって、前記ホルダー板11に形成された複数の開口部12に整合した位置に、マーキング18がそれぞれ施されており、このマーキング18に合わせて試料Sが接着されるようになっている。この実施形態におけるマーキング18は、開口部12に対応して配置され、試料Sとほぼ同じ大きさの四角形状をなしている。なお、マーキング18は、試料Sの形状に適合する形状とすればよく、四角形状に限定されるものではない。また、ホルダー板11の開口部12の中心に整合するように、○印や×印等のマーキング18を施してもよく、試料Sを対応する開口部12に整合させることができればよい。
【0026】
そして、シール部材15外周のカット部16を、ホルダー板11の位置合わせ線14aに合わせた後、シール部材15をホルダー板11に押し付けることにより、複数の開口部12に複数の試料Sがそれぞれ整合して配置され、開口部12から露出した状態で、ホルダー板11にシール部材15が接着されるようになっている。
【0027】
また、シール部材15の材質としては、ポリウレタン、ポリイミド等の合成樹脂を用いることができ、その中でも比較的軟質で伸縮性を有するポリウレタンを用いることが好ましい。伸縮性を有する材質でシール部材15が形成されている場合、試料Sの厚みにバラツキがあっても、その厚さ変化に対応して、シール部材15が適宜変形するようになるので、シール部材15と試料Sとの接着力を保持して、シール部材15から試料Sが剥がれ落ちるのを抑制することができる。
【0028】
また、シール部材内面の粘着層17の材質としては、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂等を用いることができ、真空状態や加圧状態、高温状態等においても十分な接着力を保持できる、シリコン系樹脂を用いることが好ましい。
【0029】
上記ホルダー板11が脱着可能に装着される本体部20は、所定厚さで形成された台座状をなしている(図3参照)。その上面中央には、上方が開口した凹部21が所定深さで形成されている。この凹部21は、円板状をなしたホルダー板11に対応して円形状をなし、かつ、その内径はホルダー板11の外径よりも小さく形成され、本体部20上にホルダー板11を載置したときに、凹部21の上方開口部の周縁に係合して凹部21が閉塞されるようになっている。また、本体部20の上面の凹部21外周には、その周方向に沿って、前記ホルダー板11の複数のネジ挿通孔13に対応する位置に、複数のネジ孔22が形成されている。したがって、ホルダー板11のネジ挿通孔13を通してネジ30を挿入し、本体部20の対応するネジ孔22にそれぞれ螺着することにより、本体部20に対してホルダー板11を着脱可能に装着することができる。
【0030】
また、本体部20の凹部21の内部には、ホルダー板11の複数の開口部12、及び、各開口部12に整合配置される各試料Sに対応した位置に、各試料Sの背面を押圧する押圧手段が配置されている。この実施形態での押圧手段は、スプリング25とされており、その下端が凹部21の底部21aの所定位置に当接支持されていると共に、本体部20上面にホルダー板11がセットされたときに、スプリング25の上端が、シール部材15に弾性的に当接して試料Sの背面を押圧し、試料Sが常時ホルダー板11側へ向けて弾性付勢されるようになっている。なお、押圧手段として、本体部20の底部21aを貫通して凹部21に連通するネジ孔を設け、このネジ孔から図示しないネジを凹部21内に挿入し、その上端部で試料Sの背面を押圧してもよく、特に限定されるものではない。
【0031】
また、凹部21の底部21aには、スプリング25の下端を支持するための突部や、窪み等を形成しておくことが好ましい。この場合、本体部20にホルダー板11を装着するまでの間、スプリング25を立設した状態に安定して支持することができると共に、ホルダー板装着後も、スプリング25の位置ずれを防止して、所定位置の試料Sの背面を確実に押圧することができる。
【0032】
次に、上記構造をなしたホルダー10を用いた、本発明による分析用試料の保持方法について説明する。
【0033】
まず、本体部20からホルダー板11を取外しておくと共に、図1に示すように、シール部材15の各マーキング18に合わせて、各試料Sをそれぞれ載置する。その結果、図2に示すように、シール部材15の複数のマーキング18に、複数の試料Sを整合した状態でそれぞれ接着させることができる。
【0034】
この状態で、同図2に示すように、ホルダー板11内面のシール部材外形線14の位置合わせ線14aに、シール部材15外周のカット部16を位置合わせし、その後、シール部材15をホルダー板11に向けて押し付ける。すると、複数の開口部12に複数の試料Sがそれぞれ整合して配置されると共に、シール部材15の試料Sが接着された箇所以外の粘着層17がホルダー板11の内面に接着されて、各試料Sが開口部12を通して露出するように開口部12の内面側に装着された状態で、ホルダー板11にシール部材15を接着することができる。
【0035】
このとき、この実施形態では、ホルダー板11に、シール部材15に接着された複数の試料Sを、対応する開口部12に整合させるための整合手段(ここではシール部材外形線14)を設けたので、複数の試料Sを、複数の開口部12にスムーズに位置合わせすることができ、試料Sの開口部12への装着作業性を向上させることができる。
【0036】
また、この実施形態においては、ホルダー板11が本体部20とは別体とされているので、ホルダー板11を本体部20から取外して作業スペースの広い場所に配置することができ、上記の試料Sの装着作業を容易かつ短時間で行うことができる。
【0037】
更に、この実施形態では、ホルダー板11に、四角形状の試料Sに対して相似する四角孔状をなすと共に、それよりも小さい開口部12を設けたので、開口部12の内面側の各辺周縁に、試料Sの各辺がそれぞれ係合するので、開口部12に対して試料Sをしっかりと装着できるようになっている。
【0038】
一方、本体部20の凹部21の内部の、開口部12及び試料Sに整合した位置に、スプリング25を配置し、その下端部を底部21aに当接させて立設した状態に保持させる。この状態で、図3に示すようにホルダー板11の各ネジ挿通孔13を、本体部20の各ネジ孔22に整合させて、本体部20上面にホルダー板11を載置する。その後、互いに連通したネジ挿通孔13及びネジ孔22に、ネジ30を挿入して螺着することにより、図4に示すように、凹部21の上方開口が閉塞され、各試料Sの背面がスプリング25に弾性付勢された状態で、本体部20にホルダー板11を装着することができる。
【0039】
以上のように、シール部材15のマーキング18に合わせて、複数の試料Sを配置して、粘着層17によりシール部材15に接着した後、このシール部材15を、ホルダー板11の内面に、各試料Sが対応する開口部12に整合するように接着するだけの簡単な作業で、複数の試料Sを、複数の開口部12に位置ずれさせることなく、一度の作業で確実に且つスムーズに装着させることができ、試料Sの装着作業性を向上させることができる。
【0040】
また、上記の本体部20にホルダー板11が装着された状態では、試料Sの背面がスプリング25により押圧されるようになっているので、試料Sがホルダー板11の開口部12に強く押し当てられることとなり、ホルダー板11に対して試料Sをほぼ平行に保持しつつ、同試料Sを開口部12に対して位置ずれなく強固に装着することができる。
【0041】
例えば、分析すべき試料Sが厚かったり薄かったりして、その厚みにバラツキがあると、同試料Sを覆うシール部材15が伸びたり縮んだりして、粘着層17の接着力が試料Sに均等に付与されない事態が生じることがある。このように試料Sの厚みにバラツキがあるような場合でも、スプリング25により粘着層17が試料Sの背面に押し当てられるため、その接着力を維持することができると共に、各試料Sを開口部12に位置ずれなく確実に装着することができる。
【0042】
上記のようにしてホルダー10に試料Sが装着されるが、このホルダー10は、例えば、二次イオン質量分析による好適に用いることができる。なお、ホルダー10は、二次イオン質量分析のみならず、X線分析等の試料載置用としても用いることができ、特に限定されるものではない。上記二次イオン質量分析法は、ビーム状の一次イオンを試料表面に照射し、そのイオンが試料表面に衝突して、スパッタリングされることにより生じる二次イオンを質量分析することにより、試料の元素又は化合物の同定、及び、濃度の測定を行う分析法である。
【0043】
この二次イオン質量分析を行う二次イオン質量分析装置には、電磁場併用のセクタ型二次イオン分析装置、高周波電界を用いた四重極型二次イオン分析装置、飛行時間型二次イオン分析装置が知られている。図5には、セクタ型二次イオン質量分析装置50の概略構成図が示されている。このセクタ型二次イオン質量分析装置50は、ホルダー10がセットされるケーシング51と、同ホルダー10に装着された試料Sにビーム状の一次イオンを照射する一次イオン源52と、スパッタリングにより発生した二次イオンに電場を付与する電場発生部53と、同二次イオンに磁場を付与する磁場発生部54と、検出器55とを有している。そして、一次イオン源52から生じたビーム状の一次イオンを細束して試料Sに照射し、スパッタリングにより発生した二次イオンを、電場発生部53及び磁場発生部54により、電場及び磁場を付与して偏光させて、検出器55で検出されるようになっている。
【0044】
そして、本発明においては、ホルダー板11の開口部12の内面側に装着された試料Sは、シール部材15により保持されて、開口部12の内面側周縁に係合した状態となっているので、開口部12の外面側(表側)から試料Sまでの距離を所定距離に維持することができるようになっている。そのため、本発明を上記二次イオン質量分析に用いた場合、試料Sの厚さにバラツキ等があっても、試料Sと、上記一次イオン源52との距離を常に一定に保持することができるので、その分析精度を向上させることができる。
【0045】
また、試料Sの背面がスプリング25により押圧されて、試料Sが常時ホルダー板11側へ向けて弾性付勢されるようになっているので、試料Sを開口部12の内面側周縁に試料Sをしっかりと係合させて、開口部12に装着された状態に確実に維持することができる。
【0046】
なお、上記二次イオン分析では、ホルダー1が真空雰囲気化に置かれると共に、イオンビームにより高温になるため、シール部材15が軟質化しやすくなって、粘着層17の試料Sに対する接着力を保持できないことがある。このような場合でも、上記スプリング25により試料Sの背面が押圧されるため、試料Sを開口部12に整合して装着された状態に維持することができるので、上記二次イオン分析装置の一次イオン源52と、試料Sとの距離をより確実に保持することができ、分析精度をより一層高めることができる。
【0047】
図6には、本発明に係る分析用試料の保持方法及び分析装置用試料ホルダーの、他の実施形態が示されている。この実施形態では、前記実施形態と比べてシール部材の構造が異なっている。すなわち、図6(a),(b)に示すシール部材15a,15bは、各試料Sが接着される部分以外の部分が、梨地様の微細な凹凸面に形成されて、ホルダー板11の内面への接着力を弱めるように構成されている。
【0048】
図6(a)に示すシール部材15aは、その粘着層17が、マーキング18が施され試料Sが接着される平滑なフラット面17aと、このフラット面17a以外の部分に設けられ、梨地様の微細な凹凸が無数に形成された凹凸面17bとからなり、フラット面17aの試料Sに対する接着力に対して、凹凸面17bのホルダー板11の内面に対する接着力が弱くなるように構成されている。
【0049】
これによれば、シール部材15aのフラット面17aに試料Sを確実に装着させることができると共に、ホルダー板11の内面への接着力が弱められた凹凸面17bが、ホルダー板11に接着してシール部材15aが装着されるようになっているので、試料Sの分析終了後、シール部材15aをホルダー板11から容易に引き剥がすことができ、試料Sを開口部12からスムーズに取外すことができる。
【0050】
一方、図6(b)に示すシール部材15bは、その粘着層17が、複数のマーキング18を囲むように形成された平滑なフラット面17aと、その外周に環状に設けられ、ホルダー板11内面への接着力が弱められた凹凸面17bとから構成されている。この態様によっても、試料Sを確実に装着することができると共に、試料Sの分析終了後、シール部材15bをホルダー板11から容易に引き剥がして、試料Sを開口部12からスムーズに取外すことができるという効果が得られる。
【0051】
なお、前記実施形態では、前記シール部材15をホルダー板11に粘着層17による接着力で保持させるようにしたが、シール部材15を別の手段でホルダー板11に保持させることもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 試料ホルダー
3 貫通孔
5 蓋
7 ネジ孔
10 分析装置用試料ホルダー(ホルダー)
11 ホルダー板
12 開口部
13 ネジ挿通孔
14 シール部材外形線
14a 位置合わせ線
15,15a,15b シール部材
16 カット部
17 粘着層
17a フラット面
17b 凹凸面
18 マーキング
20 本体部
21 凹部
21a 底部
22 ネジ孔
25 スプリング
30 ネジ
50 セクタ型二次イオン質量分析装置
51 ケーシング
52 一次イオン源
53 電場発生部
54 磁場発生部
55 検出器
S 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口部を有し、分析すべき試料が該開口部を通して露出するように内面側に保持される試料ホルダーを用いて、分析用の試料を保持する方法において、
前記開口部に合わせて前記試料を保持すべき箇所にマーキングが施され、かつ、前記試料を保持させる粘着層が形成されたシール部材を用い、
前記シール部材の前記マーキングに合わせて、複数の試料を前記粘着層により前記シール部材にそれぞれ保持し、
このシール部材を前記試料ホルダーの内面に、前記各試料が対応する開口部に整合するように保持させることを特徴とする分析用試料の保持方法。
【請求項2】
前記シール部材を介して前記各試料を前記試料ホルダーの内面に保持した後、更に押圧手段によって各試料の背面側を押圧する、請求項1記載の分析用試料の保持方法。
【請求項3】
前記試料ホルダーは、前記試料が配置される複数の開口部を有するホルダー板と、一面が開口された凹状をなし、前記押圧手段が内部に配置され、前記開口された一面に前記ホルダー板が着脱可能に保持される本体部とを有し、前記ホルダー板の内面に、前記複数の試料を保持したシール部材を保持させ、次いで前記ホルダー板を、各試料の背面に前記押圧手段が配置されるように位置合せして、前記本体部に保持させる請求項2に記載の分析用試料の保持方法。
【請求項4】
前記シール部材は、前記ホルダー板の内面に前記粘着層による接着力により保持させ、前記シール部材の前記各試料が保持される部分以外の部分を、梨地様の微細な凹凸面にして、前記試料ホルダーの内面への接着力を弱める請求項1〜3のいずれか1つに記載の分析用試料の保持方法。
【請求項5】
分析すべき複数の試料がそれぞれ保持される複数の開口部を有するホルダー板と、前記開口部に合わせて前記試料を保持すべき箇所にマーキングが施され、かつ、前記試料を保持させる粘着層が形成されたシール部材と、前記ホルダー板が着脱可能に保持される本体部とを備え、
前記シール部材の前記マーキングに合わせて、複数の試料を前記粘着層により前記シール部材にそれぞれ保持し、このシール部材を前記ホルダー板の内面に、前記各試料が対応する開口部に整合するように保持することにより、前記試料が前記開口部から露出するように構成されていることを特徴とする分析装置用試料ホルダー。
【請求項6】
前記本体部は、一面が開口された凹状をなし、前記ホルダー板に保持された各試料の背面を押圧する押圧手段を内部に有し、前記開口された一面に前記ホルダー板が着脱可能に装着されるように構成されている請求項5記載の分析装置用試料ホルダー。
【請求項7】
前記シール部材は、前記ホルダー板の内面に前記粘着層による接着力により保持され、前記シール部材の前記各試料が保持される部分以外の部分が、梨地様の微細な凹凸面に形成されて、前記試料ホルダーの内面への接着力を弱めるように構成されている請求項5又は6記載の分析装置用試料ホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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