説明

分析素子チップ、及びこれを用いた分析装置

【課題】装置の小型化を図ることが可能な分析素子チップ、又はこの分析素子チップを用いることで装置の小型化を図った表面プラズモン共鳴蛍光分析装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、分析素子チップ10が光導波路部100と流路22と金属薄膜14とを備え、光導波路部100が、光が内部に入射する入射面102と、前記光を金属薄膜14の一方の面14bに向けて全反条件で折り返す第1反射部110と、前記光を金属薄膜14の一方の面14bでの全反射後に外部に射出する射出面104と、をその表面に有し、入射面102は、当該入射面102への光の入射方向と金属薄膜14の一方の面14bとが同一方向を向いて平行若しくは略平行になるような位置に配置されると共に、第1反射部110は、入射面102及び金属薄膜14の一方の面14bを望むような位置に配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance:SPR)によって生じたエバネッセント波を用い、検体に含まれる蛍光物質を発光させ、この蛍光を検出することで検体を測定する表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表面プラズモン共鳴蛍光分析装置としては、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
この分析装置は、金属薄膜が形成された分析素子ブロックと、この分析素子ブロックに光を照射するための光源と、前記金属薄膜で生じたエバネッセント波によって励起された蛍光を検出するための蛍光検出手段と、を備える。
【0004】
前記分析素子ブロックは三角プリズムで構成されており、頂角に対向する面上に前記金属薄膜が形成されている。この金属薄膜の表面(前記プリズムと接している面と反対側の面)上には検体(試料溶液)が当該金属薄膜の表面(おもて面)と接しつつ流れる流路が設けられている。前記光源は、照射した光が前記プリズムの一方の斜面(入射面)から前記プリズム内に入射し、この入射した光が前記金属薄膜の裏面(反射面)に表面プラズモン共鳴角で入射するように配置されている。前記蛍光検出手段は、前記金属薄膜に対して前記流路を挟んで対向する位置に配置されている。
【0005】
このような装置では、前記流路に蛍光物質を含む検体が流され、前記光源から前記金属薄膜の反射面に光が照射されることで前記金属薄膜に表面プラズモン共鳴が生じ、前記金属薄膜の表面側、即ち、流路側の面にエバネッセント波が発生する。このエバネッセント波によって前記金属薄膜表面近傍にある前記検体中の蛍光物質が励起されて蛍光を発し、この蛍光を前記蛍光検出手段によって検出することにより前記検体の定量分析等が行われる。
【特許文献1】特開2006−208069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の装置では、金属薄膜の裏面に光を照射し、表面側で発生したエバネッセント波で励起される蛍光物質の蛍光を検出しなければならないため、前記分析素子ブロックを挟んでその両側、即ち、前記金属薄膜に対し反射面(裏面)側と流路(表面)側とにそれぞれ光学系(前記光源又は蛍光検出手段)が配置される。そのため、装置が大型化するといった問題が生じていた。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、装置の小型化を図ることが可能な分析素子チップ、又はこの分析素子チップを用いることで装置の小型化を図った表面プラズモン共鳴蛍光分析装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明に係る分析素子チップは、検体に含まれる蛍光物質が金属薄膜で生じたエバネッセント波で励起されて発した蛍光を測定する表面プラズモン共鳴蛍光分析装置で用いられる分析素子チップであって、この分析素子チップは、内部に入射した光を前記金属薄膜に案内する光導波路部と、前記検体が流れる流路と、一方の面が前記光導波路部に面すると共に他方の面が前記流路内に露出するように設けられた前記金属薄膜と、を備え、前記光導波路部は、外部から照射された光が内部に入射する入射面と、前記入射面から入射した光を前記金属薄膜の一方の面に向けて全反射する第1反射部と、前記第1反射部からの光を前記金属薄膜の一方の面での全反射後に外部に射出する射出面と、をその表面に有し、前記入射面は、当該入射面への光の入射方向と前記金属薄膜の一方の面とが同一方向を向いて平行若しくは略平行になるような位置に配置されると共に、前記第1反射部は、前記入射面及び金属薄膜の一方の面を望むような位置に配置されることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、前記入射面に対して光が照射されることで、内部に入射した光が前記入射面を望む位置に配置された第1反射部において全反射条件で折り返され、前記金属薄膜の一方の面に対して表面プラズモン共鳴角で入射するように案内される。
【0010】
このように前記金属薄膜の一方の面に入射した光が案内されることで、前記流路内部に露出した金属薄膜の他方の面で表面プラズモン共鳴が生じ、当該金属薄膜の他方の面近傍にエバネッセント波が発生する。このエバネッセント波により前記金属薄膜の他方の面近傍の検体に含まれる蛍光物質が励起されて蛍光を発する。
【0011】
この蛍光は、前記金属薄膜の他方の面側、即ち、入射面に対して光が入射してくる方向側から検出可能である。そのため、前記構成の分析素子チップを用いることで、表面プラズモン共鳴蛍光分析装置においては、当該分析素子チップの入射面側に設けられる同一基板上に前記光源及び蛍光検出手段といった光学系を全て配置することが可能となる。
【0012】
その結果、前記構成の分析素子チップを用いることで、分析素子チップを挟んで両側に光学系を配置していた従来の表面プラズモン共鳴蛍光分析装置よりも装置の小型化を図ることが可能となる。
【0013】
尚、前記第1反射部は、複数の全反射面を備え、これら複数の全反射面は、前記入射面側から前記金属薄膜側に向かって連続又は間隔をおいて並び、隣り合う前記全反射面同士のなす角が前記入射面からの光を前記金属薄膜側の全反射面に向かって順に全反射し且つ最も金属薄膜側の前記全反射面で全反射された光が前記金属薄膜の一方の面に向かうようにそれぞれ配置されてもよく、また、前記第1反射部は、1つの反射面で構成され、この反射面には光を全反射する反射膜が設けられてもよい。
【0014】
また、反射面に反射膜が設けられる場合には、前記反射膜は、多層膜で構成されることが好ましい。
【0015】
このように構成されることで、前記第1反射部では前記金属薄膜での表面プラズモン共鳴に用いられる所定の波長の光だけを金属薄膜の一方の面に向けて全反射条件で折り返すことができる。即ち、前記入射面から入射した光に含まれる種々の波長のうち、必要な波長の光を選択して折り返すことができる。そのため、当該分析素子チップを用いることで、表面プラズモン共鳴蛍光分析装置においては、光源が照射する光に種々の波長が含まれていてもよく、光源の選択性が向上する。
【0016】
本発明に係る分析素子チップにおいては、前記入射面が前記金属薄膜に対して傾斜すると共に、前記外部から照射される光に対しても傾斜するように配置される構成であってもよい。
【0017】
かかる構成によれば、前記入射面に照射された光のうち、当該入射面で僅かに反射された反射光が光源に入射するのを防ぐことができる。そのため、当該分析素子チップを用いることで、表面プラズモン共鳴蛍光分析装置においては、前記反射光が前記光源に入射することで照射する光が不安定になることを抑制でき、光源が安定して光を照射し続けることが可能となる。
【0018】
また、前記光導波路部は、前記金属薄膜の一方の面で全反射された光を前記射出面に向けて全反射条件で折り返す第2反射部をその表面にさらに有し、前記射出面は、当該射出面からの光の射出方向と前記金属薄膜の他方の面とが同一方向を向いて平行若しくは略平行になるような位置に配置されると共に、前記第2反射部は、前記金属薄膜の一方の面及び射出面を望むような位置に配置される構成であってもよい。
【0019】
かかる構成によれば、前記入射面と金属薄膜と射出面とが平行若しくは略平行となり、且つ前記入射面と射出面とが同一方向を向く。そのため、内部に入射した光は、第1反射部において全反射条件で折り返されて前記金属薄膜に到達し、当該金属薄膜の一方の面で全反射した後、この金属薄膜の一方の面を望む位置に配置された第2反射部において全反射条件で折り返され、射出面から外部に射出される。即ち、入射する光と射出される光とが平行若しくは略平行となる。
【0020】
従って、前記入射面に対して光を照射する光源と前記射出面から射出される光を検出するための射出光検出手段とを当該分析素子チップに対して同一側に配置することができる。そのため、当該分析素子チップを用いることで、表面プラズモン共鳴蛍光分析装置においては、当該分析素子チップの入射面側に設けられる同一基板上に前記光源、蛍光検出手段及び射出光検出手段といった光学系を全て配置することが可能となる。
【0021】
その結果、当該分析素子チップを用いることで、前記3つの光学系を有する表面プラズモン共鳴蛍光分析装置であっても、従来のように分析素子チップを挟んで両側に光学系を配置する装置に比べて小型化を図ることが可能となる。
【0022】
尚、前記第2反射部は、複数の全反射面又は1つの反射面で構成され、前記複数の全反射面は、前記金属薄膜側から前記射出面側に向かって連続又は間隔をおいて並び、隣り合う前記全反射面同士のなす角が前記金属薄膜からの光を前記射出面側の全反射面に向かって順に全反射し且つ最も射出面側の前記全反射面で全反射された光が前記射出面に向かうようにそれぞれ配置され、前記反射面には光を全反射する反射膜が設けられる。
【0023】
また、上記課題を解消すべく、本発明に係る表面プラズモン共鳴蛍光分析装置は、前記のいずれかの分析素子チップと、前記分析素子チップの入射面と対向する位置に配置され、前記入射面に対して光を照射するための光源と、前記分析素子チップの金属薄膜に対して前記流路を挟んで対向する位置に配置され、前記金属薄膜で生じたエバネッセント波によって励起された蛍光を検出するための蛍光検出手段と、を備え、前記光源と蛍光検出手段とが同一基板上に配置されることを特徴とする。
【0024】
かかる構成によれば、前記分析素子チップに対し入射面側の同一基板上に前記光源及び蛍光検出手段の2つの光学系を配置でき、分析素子チップを挟んで両側に光学系を配置する従来の装置に比べて小型化を図ることができる。
【0025】
また、前記分析素子チップに対して前記入射面と反対側に光学系を配置する必要がないため、当該装置において前記分析素子チップに対して入射面と反対側に空間が確保し易くなり、この空間を確保することで分析素子チップを交換する場合の交換作業が行い易くなる。
【0026】
本発明に係る表面プラズモン共鳴蛍光分析装置において、前記の第2反射部を有する分析素子チップを用いる場合、さらに、前記分析素子チップの射出面と対向する位置に配置され、前記射出面から射出される光を検出するための射出光検出手段を備え、前記光源と蛍光検出手段と射出光検出手段とが同一基板上に配置される構成とすることができる。
【0027】
かかる構成によれば、前記射出面から射出される光を検出することで、前記光源から照射されて前記光導波路板の内部に入射し、前記金属薄膜に案内された光が当該金属薄膜に対して表面プラズモン共鳴角で入射しているか否かの検出が容易になる。
【0028】
また、前記光源、蛍光検出手段及び射出光検出手段の3つの光学系が全て前記分析素子チップの入射面側の同一基板上に配置でき、前記同様、従来の分析素子チップを挟んで両側に光学系が配置される表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に比べて装置の小型化が図られる。
【0029】
また、前記同様、前記分析素子チップに対して前記入射面と反対側に光学系を配置する必要がないため、当該装置において前記分析素子チップに対して入射面と反対側に空間が確保し易くなり、この空間を確保することで分析素子チップを交換する場合の交換作業が行い易くなる。
【0030】
また、照射した光が前記分析素子チップの入射面に対して斜めから入射するように光源を前記基板上に配置する構成であってもよい。
【0031】
かかる構成によれば、前記入射面に照射された光のうち、当該入射面で僅かに反射された反射光が光源に入射するのを防ぐことができる。そのため、前記反射光が前記光源に入射することで照射する光が不安定になることを抑制でき、光源が安定して光を照射し続けることができる。
【0032】
また、前記光源と蛍光検出手段との間に遮光部材が配置され、この遮光部材は、前記分析素子チップを当該表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に設置した際の前記分析素子チップと基板との間隔よりも長く、且つ前記間隔方向に弾性変形可能に構成され構成であってもよい。
【0033】
かかる構成によれば、前記光源から前記光導波路部内へ入射せずに前記蛍光検出手段へ侵入する迷光を遮断でき、前記蛍光の検出精度が向上する。また、前記分析素子チップと基板との間隔よりも長く、且つ前記間隔方向に弾性変形可能であるため、前記分析素子チップを表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に設置した際、前記遮光部材と分析素子チップ及び前記遮光部材と基板とがそれぞれ密着し、より前記迷光の遮断効果が向上する。
【発明の効果】
【0034】
以上より、本発明によれば、装置の小型化を図ることが可能な分析素子チップ、及びこの分析素子チップを用いることで装置の小型化を図った表面プラズモン共鳴蛍光分析装置を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の第1実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0036】
本実施形態に係る表面プラズモン共鳴蛍光分析装置(以下、単に「第1蛍光分析装置」とも称する。)は、図1に示されるように、分析素子チップ10と、分析素子チップ10に光を照射するための光源(第1の光学系)30と、エバネッセント波によって励起された蛍光を検出するための蛍光検出手段(第2の光学系)40と、分析素子チップ10から射出される光を検出するための射出光検出手段(第3の光学系)50と、を備える。
【0037】
これら光源30と蛍光検出手段40と射出光検出手段50とは、同一の基板B上に配置され、この基板B上の光源30と蛍光検出手段40との間には遮光部材Sが配置されている。また、蛍光検出手段40と射出光検出手段50には、さらに各検出手段40又は50で検出した検出光を分析するための演算部60が接続され、この演算部60には当該演算部60が演算した結果を示すための表示手段70が接続されている。
【0038】
分析素子チップ10は、図2乃至図3(b)にも示されるように、反射部材12と流路部材20とで構成される。
【0039】
反射部材12は、一対の平行な面(一方の面と他方の面)12a,12bを有する透明な板状に形成され、一方の面(図3(a)においては下側の面)12aに金属薄膜14が設けられている。この反射部材12は、後述する流路22の測定部24を横断する方向において、両端部(図3(a)においては左右両端部)に第1及び第2反射部110,120を有し、これら第1及び第2反射部110,120は、反射部材12の内部に入射した光を全反射する部位である。
【0040】
具体的には、反射部材12は、透明な矩形の板状に形成されている。本実施形態において、反射部材12は、例えば、縦(図2における上下方向の長さ)が12mm、横(図2における左右方向の長さ)が20mm、厚さが2mmの板状に形成されている。また、反射部材12は、透明な樹脂で形成されているがこれに限定されず光学系のガラス等であってもよい。この反射部材12の測定部24を横断する方向の両端部(図2及び図3(a)においては左右両端部)にはそれぞれ斜面112,124が形成され、この斜面112,124は、第1及び第2反射部110,120の一部を構成する。即ち、測定部24を横断する方向に沿った断面(横断面)は、等脚台形となる(図3(a)参照)ように形成されている。また、流路22の両端部に対応する位置には、他方の面12bから一方の面12aに向かって流路に連通する貫通孔18a,18bがそれぞれ形成されている。
【0041】
流路部材20は、反射部材12の一方の面12a側に設けられ、透明な樹脂で形成されており、検体が流れる流路22を有する。具体的には、流路部材20は、矩形の板状に形成され、反射部材12に取り付けられた際、一方の面12aと対向する面にこの一方の面12aと共に流路22を形成する流路用溝22aが形成されている。この流路用溝22aは、反射部材12側から反対側に向けて凹設された溝であり、その一部に測定部用溝24aを含む。
【0042】
詳細には、本実施形態において、流路用溝22aは、流路部材20の中央部で真っ直ぐ延びる測定部用溝24aと、その両端側で互いに逆方向に延び且つ測定部用溝24aと直交する方向に延びる端部用溝26a,28aと、で構成されている。このように形成される流路用溝22aは、例えば、前記横断面においては、幅が500μm、深さが300μmの溝である。
【0043】
この流路用溝22aは、流路部材20が反射部材12に熱融着、接着剤、プラズマ接合等によって接合された際、当該流路用溝22aの上端が一方の面12aによって塞がれることで流路22が形成される。このとき、測定部用溝24aは、一方の面12aの金属薄膜14が設けられた部位で上端を塞がれるため、内部に金属薄膜14の露出面14aが露出した状態で測定部24を形成する。そして、この流路22は、前記のように、両端部が反射部材12に形成された貫通孔18a,18bを介して外部と連通している。
【0044】
このような反射部材12と流路部材20とが前記のように熱融着等で互いに接合されることで、分析素子チップ10が構成される。この分析素子チップ10は、内部に入射した光を金属薄膜14に案内する光導波路部100と、前記の流路22と、一方の面(反射面)14bが光導波路部100に面すると共に他方の面(露出面)14aが流路22内、詳細には流路22の測定部24内に露出するように設けられた金属薄膜14と、を備える。
【0045】
光導波路部100は、外部(光源30)から照射された光が内部に入射する入射面102と、入射面102から入射した光を金属薄膜14の反射面14bに向けて全反射条件で折り返す第1反射部110と、金属薄膜14の反射面14bで全反射した後の光を外部に射出する射出面104と、金属薄膜14の反射面14bで全反射された光を射出面に向けて全反射条件で折り返す第2反射部120と、をその表面に有する。
【0046】
入射面102は、当該入射面102への光の入射方向と金属薄膜14の反射面14bとが同一方向を向いて平行となるような位置に配置されている。具体的には、流路部材20の流路用溝22aが凹設された面と反対側の面、即ち、分析素子チップ10の下面で、測定部24を横断する方向において、一方側端部(図3(a)において右端部)に形成されている。
【0047】
第1反射部110は、入射面102及び金属薄膜14の反射面14bを望むような位置に配置され、複数(2つ以上)の全反射面112,114,…を備えている。これら複数の全反射面112,114,…は、入射面102側から金属薄膜14側、即ち、測定部24を横断する方向において、一方側から他方側に向かって(図3(a)においては右から左に向かって)連続して並び、隣り合う全反射面同士のなす角が入射面102からの光を金属薄膜14側の全反射面に向かって順に全反射し且つ最も金属薄膜14側の全反射面で全反射された光が金属薄膜14の反射面14bに向かうようにそれぞれ配置される。
【0048】
詳細には、本実施形態においては、第1反射部110は、第1及び第2の2つの全反射面112,114で構成されている。第1全反射面112は、反射部材12の一方側端部に形成された斜面で構成され、第2全反射面114は、反射部材12の他方の面12bの端部(一部)で構成されている。この第1全反射面112と第2全反射面114とのなす角は、入射面102から入射した光が第1全反射面112で全反射して第2全反射面114に向かい、この光が第2全反射面114で全反射して金属薄膜14の反射面14bが設けられた部位に対して全反射条件且つ金属薄膜14の反射面14bに対して表面プラズモン共鳴角θで入射するような角度である。即ち、入射面102(流路部材20の下面端部)から入射した光が第1及び第2全反射面112,114で順に全反射されることで折り返され、入射面102と平行に配置されている金属薄膜14の反射面14bに向かう。本実施形態においては、第1全反射面112と第2全反射面114とのなす角は、119°である。
【0049】
尚、表面プラズモン共鳴角θとは、一方の面12aの金属薄膜14が設けられた前記部位で光が全反射した際に生じるエバネッセント波が金属薄膜14で表面プラズモン共鳴を起こすような前記光の入射角である。この共鳴角のとき励起エネルギが強く効率的である。しかしながら角度の精度も要求される。従って、エネルギ効率は落ちるがプラズモン共鳴のピークを外す設定であってもエバネッセント波が出る角度であれば本件の目的は達成できる。また、本実施形態においては、第1反射部110は2つの全反射面112,114が連続して並んでいるが、隣り合う全反射面112,114間に他の面を挟むように、即ち、隣り合う全反射面112,114が間隔をおいて並んでもよい。このように全反射面が連続して並ばなくても、光が全反射面のみで順に全反射されて金属薄膜14に案内されるように配置されていればよい。このように全反射面だけで全反射され金属薄膜14に到達することで、入射光に対して光のエネルギのロスが少なく効率よく金属薄膜14まで案内される。
【0050】
射出面104は、当該射出面104からの光の射出方向と金属薄膜14の露出面14aとが同一方向を向いて平行となるような位置に配置されている。具体的には、流路部材20の流路用溝22aが凹設された面と反対側の面、即ち、分析素子チップ10の下面(入射面102が設けられた面と同一の面)で、測定部24を横断する方向において、他方側端部(図3(a)において左端部)に形成されている。
【0051】
第2反射部120は、金属薄膜14の反射面14b及び射出面104を望むような位置に配置され、第1反射部110同様、複数の全反射面を備えている。これら複数の全反射面は、金属薄膜14側から射出面104側、即ち、測定部24を横断する方向において、一方側から他方側に向かって連続に並び、隣り合う全反射面同士のなす角が金属薄膜14からの光を射出面104側の全反射面に向かって順に全反射し且つ最も射出面104側の全反射面で全反射された光が射出面104に向かうようにそれぞれ配置される。
【0052】
詳細には、本実施形態においては、第2反射部120は、第3及び第4の2つの全反射面122,124で構成されている。第3全反射面122は、反射部材12の他方の面12bの端部で構成され、第4全反射面124は、反射部材12の端部に形成された斜面で構成されている。この第3全反射面122と第4全反射面124とのなす角は、金属薄膜14の反射面14bからの光が第3全反射面122で全反射して第4全反射面124に向かい、この光が第4全反射面124で全反射して射出面104に向かい、射出面104から外部に射出されるような角度である。即ち、金属薄膜14の反射面14bからの光が第3及び第4全反射面122,124で順に全反射されることで折り返され、金属薄膜14と平行に配置された射出面104に向かう。本実施形態においては、第3全反射面122と第4全反射面124とのなす角は、119°である。
【0053】
以上のような第1反射部110及び第2反射部120を光導波路部100が備えることで、当該光導波路部100に入射した光源30からの光は、第1反射部110において全反射条件で折り返され、金属薄膜14の基板Bと反対側の面(反射面)14bで全反射され、さらに第2反射部120において全反射条件で折り返された後、射出面104から射出される。このように光が反射されることで、光導波路部100に入射する光と射出される光とが平行若しくは略平行となる。また、前記入射した光は、金属薄膜14の基板Bと反対側の面14bに入射するため、後述するように金属薄膜14の基板B側に蛍光が励起される。そのため、基板B上に光源30、蛍光検出手段40及び射出光検出手段50を全て配置することが可能となる。
【0054】
金属薄膜14は、本実施形態においては、例えば金で形成されているが、銀、銅、アルミ等の金属(合金を含む)で形成されてもよい。この金属薄膜14は、反射部材12の一方の面12aにおいて、光導波路部100に入射した光が第1反射部110で折り返されて、表面プラズモン共鳴角で到達するような部位で、且つ流路22の測定部24と対応する部位に蒸着等によって形成(成膜)されている。
【0055】
また、この金属薄膜14の流路22側の露出面14aには、特定の抗原を捕捉するための捕捉体が固定されている。この捕捉体は、金属薄膜14の露出面14aに表面処理によって固定されている。
【0056】
尚、本実施形態においては、反射部材12と流路部材20との界面での光の全反射は、測定部24に対応する位置のみである。そのため、一方の面12aに形成される金属薄膜14の位置は、測定部24に対応する位置のみに限定される必要はなく、当該位置を含んでいれば、より広い範囲でもよく、一方の面12a全面(但し、入射面102及び射出面104対応する位置を除く)でもよい。このように、極めて細い流路22の測定部24に対応する位置のみでなく、より広い範囲に金属薄膜14を形成することで、成膜作業が容易になる。
【0057】
光源(第1の光学系)30は、光導波路部100の入射面102に対して光を照射するためのものであり、半導体レーザやLED等の発光素子32と光学系34とで構成されている。本実施形態においては、発光素子32として半導体レーザが用いられ、当該半導体レーザ自身のP偏光の偏光面が光導波路部100内部で反射するように半導体レーザが配置されているため偏光板を設ける必要がない。しかし、P偏光の偏光面を有しない発光素子を用いる場合には、発光素子32と入射面102との間に偏光板36が配置される(図4参照)。この偏光板36は、P偏光の偏光面が光導波路部100の第1反射部110で反射するように発光素子32から照射された光を偏光するものである。
【0058】
光学系34は、発光素子32から照射された光を平行射出又は金属薄膜14の反射面14b上で集光するように構成された1又は複数のレンズやミラー等で構成されている。
【0059】
このように構成される光源30は、光導波路部100の入射面102と対向し、分析素子チップ10と平行に配置された基板B上に設けられている。詳細には、光源30は、分析素子チップ10の下方から光導波路部100の入射面102に対して法線方向から光を照射し、且つ光導波路部100内部に入射した前記光が第1反射部110において全反射条件で折り返され、斜め方向(表面プラズモン共鳴角θ)から金属薄膜14の反射面14bに入射するような位置及び照射角度で基板B上に配置されている。
【0060】
蛍光検出手段(第2の光学系)40は、金属薄膜14の露出面14a側で生じたエバネッセント波によって励起された蛍光を検出するためのものであり、レンズ等の光学系42とCCD等の受光素子44とで構成されている。このように構成される蛍光検出手段40は、分析素子チップ10の金属薄膜14に対して流路22(測定部24)を挟んで対向する位置、即ち、分析素子チップ10の下方に配置された基板B上に配置される。
【0061】
射出光検出手段(第3の光学系)50は、光導波路部100から射出される光を検出するためのものであり、CCDやフォトダイオード等の受光素子52及びレンズ等の光学系54とで構成されている。この射出光検出手段50は、射出された光を受光できるように光導波路部100の射出面104と対向し、光源30や蛍光検出手段40が配置されている共通の基板B上に配置されている。
【0062】
このように本実施形態に係る第1蛍光分析装置では、第1乃至第3の3つの光学系30,40,50は、全て分析素子チップ10に対して入射面102側に設けられる同一基板B上に配置されている。そのため分析素子チップを挟んで両側に光学系を配置する従来の装置に比べて小型化を図ることができる。
【0063】
また、分析素子チップ10に対して入射面102と反対側(本実施形態においては上方)に光学系を配置する必要がないため、当該分析素子チップ10の入射面102と反対側に空間が確保し易くなり、この空間を確保することで分析素子チップ10を交換する場合の作業空間が確保され、交換作業が行い易くなる。
【0064】
遮光部材Sは、分析素子チップ10を第1蛍光分析装置に設置した際の当該分析素子チップ10と基板Bとの間隔よりも長く、且つ前記間隔方向に弾性変形可能に構成された壁であり、蛍光検出手段40の周囲を囲うように形成されている。そのため、分析素子チップ10を第1蛍光分析装置に設置した際、遮光部材Sは、分析素子チップ10と基板Bとで挟まれて弾性変形するため、遮光部材Sの一方の端部と分析素子チップ10及び遮光部材Sの他方の端部と基板Bとがそれぞれ密着し、光源30から蛍光検出手段40に侵入する迷光を遮断することができる。
【0065】
尚、基板Bに、遮光部材Sと共に基板Bから所定距離に当り面を有する位置決め部材(図示せず)、及び押さえ手段(図示せず)を設け、分析素子チップ10を設置する際に、当該分析素子チップ10と基板Bとの距離を、分析素子チップ10を当り面に当接させることで規定し、この状態で押さえ手段によって分析素子チップ10を押えることで位置決めさせてもよい。このとき、当り面と基板Bとの前記所定距離を遮光部材Sの前記長さよりも短くすることで、容易に位置決めできると共に遮光部材Sと分析素子チップ10及び基板Bとを密着させて遮光性を確保することができる。
【0066】
演算部60は、蛍光検出手段40及び射出光検出手段50から送られてきた出力信号を演算して各検出手段40又は50で検出された検出光に関する分析を行うためのものである。具体的には、例えば、蛍光検出手段40で検出した単位面積あたりの蛍光の数のカウントや時間の経過に伴う蛍光の増加量を算出したり、射出光検出手段50で検出した射出光の強度や強度変化を算出したりする。このようにして演算部60で演算された結果は、この演算部60に接続された表示手段70に出力され、当該表示手段70が表示する。尚、演算部60は、本実施形態のように1つである必要はなく、蛍光検出手段40と射出光検出手段50とにそれぞれ設けられてもよい。また、表示手段70は、モニター等のように結果を画面に表示するものだけでなく、プリンター等のように結果をプリントアウトするもの等であってもよい。
【0067】
本実施形態に係る第1蛍光分析装置は、以上の構成からなり、次に、この第1蛍光分析装置の動作及び作用について説明する。
【0068】
第1蛍光分析装置に設置された分析素子チップ10に検体(試料溶液)が流される。この検体には抗原と蛍光標識とが含まれ、これら抗原と蛍光標識とは複合体を形成する。具体的には、分析素子チップ10は、反射部材12の他方の面12bが上側を向いて水平となるよう第1蛍光分析装置に設置される。この分析素子チップ10は、検体毎に交換可能な交換チップとして使用される。
【0069】
交換チップとして使用される場合には、複数の分析素子チップ10を積み重ねることが可能なため持ち運びが容易である。即ち、分析素子チップ10を構成する反射部材12及び流路部材20が共に板状に形成されているため、分析素子チップ10の上面及び下面に凹凸等がなく、複数の分析素子チップ10を容易に積み重ねることが可能となる。
【0070】
次に、反射部材12に形成された一対の貫通孔18a,18bの一方の貫通孔18aから検体が注入され、流路22を経て他方の貫通孔18bから排出される。その際、流路22の測定部24の内部には、表面に捕捉体が固定された金属薄膜14の露出面14aが露出しているため、検体はこの露出面14aに接しつつ流路22(測定部24)を流れる。その際、蛍光標識と複合体を形成している抗原が露出面14aに固定された捕捉体に捉えられて金属薄膜14上に留まる。
【0071】
一方、光源30から分析素子チップ10の光導波路部100の入射面102に対して光が照射される。この光は、入射面102に対して法線方向から光導波路部100の内部に入射し、入射面102と金属薄膜14の反射面14bを望む位置に配置された第1反射部110において全反射条件で折り返され、金属薄膜14の反射面14bに対して表面プラズモン共鳴角θで入射するように案内される。詳細には、前記のように、入射面102から入射した光は、第1全反射面112で隣り合う第2全反射面114に向かって全反射され、この全反射された光が第2全反射面114で全反射された後、金属薄膜14の反射面14bに対して表面プラズモン共鳴角θで入射する。
【0072】
このように金属薄膜14の反射面14bに前記入射した光が案内されることで、流路22(測定部24)内部に露出した金属薄膜14の露出面14aで表面プラズモン共鳴が生じ、当該金属薄膜14の露出面14a近傍にエバネッセント波が発生する。このエバネッセント波により金属薄膜14の露出面14aに固定された捕捉体により捉えられた前記複合体の蛍光標識(蛍光物質)が励起されて蛍光を発する。即ち、金属薄膜14において、光源30からの光が入射した面(反射面14b)と反対の面(露出面14a)側で蛍光が励起される。この蛍光は、流路部材20が透明であるため金属薄膜14に対して流路22(測定部24)を挟んで対向する位置に配置された基板B上の蛍光検出手段40によって検出される。
【0073】
この蛍光を検出する際、検体を流路22に流しながら光源30から光を照射し、時間の経過に伴う蛍光点の数の変化や、検体を流す前後での蛍光点の数の変化を測定してもよい。また、検体を流し終えた後、洗浄剤で流路22内を洗浄し、その後に光源30から光を照射して捕捉体に捉えられた複合体からの蛍光を検出するようにしてもよい。
【0074】
金属薄膜14の反射面14bに表面プラズモン共鳴角θで入射した光は、当該反射面14bで全反射されて第2反射部120に向かい、この光が第2反射部120において全反射条件で折り返され、射出面104から外部に射出される。詳細には、前記のように、金属薄膜14の反射面14bで全反射された光は、第3全反射面122で隣り合う第4全反射面124に向かって全反射され、この光が第4全反射面124で全反射された後、再度光導波路部100の内部側へ全反射されることなく射出面104から外部に射出される。
【0075】
この射出される光は、本実施形態においては射出面104に対して法線方向に射出される。このように、内部に入射した光は、金属薄膜14の反射面14bで全反射した後、射出面104から外部に射出されるため、光導波路部100内部で乱反射して再び金属薄膜14に入射することがない。そのため、乱反射した光による蛍光物質の励起が抑制でき、前記蛍光の検出におけるノイズを抑制することができる。
【0076】
射出面104から光導波路部100の外部に射出された光は、射出光検出手段50で検出される。この検出された射出光を分析することで、入射面102から入射した光が金属薄膜14の反射面14bに表面プラズモン共鳴角θで入射しているか否かが容易に判断される。この判断に基づいて、光源30の光軸や分析素子チップ10の設置角度を調整することで、金属薄膜14の反射面14bでの表面プラズモン共鳴状態を保つことができ、蛍光検出手段40において、検出に十分な蛍光の強度を保つことができる。若しくは、前記判断に基づき、演算部60において蛍光検出手段40からの検出光の情報に対して補正が行われ、検体の分析精度が向上する。
【0077】
このようにして各検出手段40,50で検出された検出光の情報は、演算部60に送られ、各種演算が行われる。そして、その結果が表示手段70に送られ、当該表示手段70によって表示される。
【0078】
次に、本発明の第2実施形態について図4乃至6(b)を参照しつつ説明するが、上記第1実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成ついてのみ詳細に説明する。
【0079】
本実施形態に係る表面プラズモン共鳴蛍光分析装置(以下、単に「第2蛍光分析装置」とも称する。)は、第1蛍光分析装置同様、分析素子チップ10と、分析素子チップ10に光を照射するための光源(第1の光学系)40と、エバネッセント波によって励起された蛍光を検出するための蛍光検出手段(第3の光学系)80と、を備える。
【0080】
分析素子チップ10の第1及び第2反射部110,120は、それぞれ1つの反射面116,126で構成され、各反射面116,126には、光を全反射する反射膜fが設けられている。この反射膜fは、反射部材12の外側の面に形成された膜であり、本実施形態においては、多層膜(具体的には、例えば、アルミニウム、銀のような膜である)で構成されている。このように反射膜fを多層膜とすることで、金属薄膜14での表面プラズモン共鳴に用いられる所定の波長の光だけを全反射条件で折り返すことができる。即ち、第1反射部110において、入射面102から入射した光に含まれる種々の波長のうち、必要な(前記所定の)波長の光を選択して金属薄膜14に向けて全反射条件で折り返すことができる。そのため、第1反射部110に当該多層膜fを用いることで、光源30の照射する光に、表面プラズモン共鳴に必要な波長が含まれていれば他に種々の波長が含まれていてもよいため、第2蛍光分析装置における光源30の選択性が向上する。
【0081】
このように構成される分析素子チップ10に対して、光源30から入射面102に対して光を照射する。この光源30にはP偏光の偏光面が金属薄膜14の反射面14bで反射するように発光素子32から照射された光を偏光する偏光板36が発光素子32と入射面102との間に設けられている。
【0082】
前記照射された光は入射面102から光導波路部100内部に入射し、多層膜fが設けられた第1反射面116に到達する。そして、入射面102と平行に配置された金属薄膜14の反射面14bに向けて全反射条件で折り返され、金属薄膜14の反射面14bで全反射され、多層膜fが設けられた第2反射面126に到達する。さらに、この光は、第2反射面126において全反射条件で折り返され、射出面104から射出される。
【0083】
このように、反射膜fを設けることで、第1又は第2反射部110,120を1つの面で構成することが可能となる。
【0084】
尚、本実施形態及び第1実施形態においては、第1反射部110と第2反射部120とが同じ構成となっているが、これに限定される必要はなく異なっていてもよい。即ち、第1反射部110が複数の全反射面112,114で構成され、第2反射部120が反射膜fを有する1つの反射面126で構成されてもよく、又、その逆であってもよい。
【0085】
この分析素子チップ10は、一方の端部が分岐した流路22を有する(図5参照)。即ち、流路22における一方の端部流路26から支流路27が分岐し、他方の端部流路28は分岐せずに1本の流路を形成している。流路部材20において、これら支流路27及び端部流路26,28の端部に対応する部位には支流路27及び端部流路26,28の内部と連通する貫通孔19b,19a,19cが形成されている。
【0086】
このような流路(分岐した流路)22を有する分析素子チップ10に検体が注入される。その際、貫通孔19a,19bからは異なる検体が注入され、支流路27が端部流路26に合流することでこれら2種類の検体が混合された後、測定部24を経て貫通孔19cから排出される。測定部24の内部には、表面に捕捉体が固定された金属薄膜14の露出面14aが露出しているため、混合された検体はこの露出面14aに接しつつ測定部24を流れる。その際、検体に含まれる特定の抗原が露出面14aに固定された捕捉体に捉えられて金属薄膜14上に留まる。
【0087】
尚、本発明の分析素子チップ及び表面プラズモン共鳴蛍光分析装置は、上記第1及び第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0088】
例えば、図7に示されるように、光導波路部100の入射面106及び射出面108が金属薄膜14に対して傾斜すると共に外部から照射される光及び内部から射出される光に対しても傾斜するように構成されてもよい。このように構成することで、光源30から照射された光のうち、入射面106で僅かに反射された反射光が光源30に入射することを防ぐことができる(図7の光源30側の点線参照)。そのため、光源30において反射光が入射することで照射する光が不安定になることを抑制することができる。一方、射出面108から射出された光のうち、射出光検出手段50の受光部で僅かに反射された反射光が射出面108から再度光導波路部100に入射することを抑制できる(図7の射出光検出手段50側の点線参照)。そのため、前記反射光が光導波路部100に入射して内部で乱反射し、金属薄膜14に再度入射することが抑制され、その結果、蛍光検出手段40において検出ノイズの発生が抑制される。
【0089】
また、図8(a)に示されるように、光軸が入射面102に対して傾斜するように光源30を基板B上で傾斜するように配置し、前記入射面102での反射光が光源30に入射するのを防止してもよい。この場合、光導波路部100が測定部24を中心に対称に形成されていれば射出光検出手段50の受光部には、光源30の傾斜に対応した傾斜角で射出光が入射する。そのため、射出光検出手段50での反射による射出光の光導波路部100への再入射が抑制され、前記同様、光導波路部100内での光の乱反射による検出ノイズも抑制される。
【0090】
また、図8(b)に示されるように、光導波路部100を測定部24を中心に非対称に形成することで、前記光源30への前記反射光の入射、及び射出光検出手段50での反射光の光導波路部100への再入射を防止してもよい。即ち、光導波路部100を、第1反射部110を構成する第1全反射面112と第2全反射面114とのなす角と、第2反射部120を構成する第3全反射面122と第4全反射面124とのなす角と、が異なるように形成してもよい。このように形成されることでも光源30への前記反射光の入射、及び射出光検出手段50での反射光の光導波路部100への射出面104からの再入射を防止することができる。
【0091】
また、図8(c)に示されるように、黒い布等の光を吸収する部材Cを射出光検出手段50の周囲に設けることで、前記射出光検出手段50での反射光による迷光を抑制でき、より検出精度が向上する。尚、光を吸収する部材Cを光源30の周囲にも設けてもよい。このようにすることで入射面102での反射光による迷光を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】第1実施形態に係る表面プラズモン共鳴分析装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態に係る分析素子チップの平面図である。
【図3】同実施形態に係る分析素子チップの(a)は図2におけるA−A断面図であり、(b)は図2におけるB−B断面図である。
【図4】第2実施形態に係る表面プラズモン共鳴分析装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】同実施形態に係る分析素子チップの平面図である。
【図6】同実施形態に係る分析素子チップの(a)は図5におけるC−C断面図であり、(b)は図5におけるD−D断面図である。
【図7】入射面と射出面とが傾斜した他実施形態に係る表面プラズモン共鳴分析装置の概略構成を示すブロック図である。
【図8】他実施形態に係る表面プラズモン共鳴分析装置の概略構成を示すブロック図であって、(a)は光源を傾斜配置した装置であり、(b)は反射部材を非対称に形成した装置であり、(c)は光源を傾斜させ、光吸収部材を配置した装置である。
【符号の説明】
【0093】
10 分析素子チップ
14 金属薄膜
14a 露出面(他方の面)
14b 反射面(一方の面)
22 流路
24 測定部
100 光導波路部
102 入射面
104 射出面
110 第1反射部
120 第2反射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体に含まれる蛍光物質が金属薄膜で生じたエバネッセント波で励起されて発した蛍光を測定する表面プラズモン共鳴蛍光分析装置で用いられる分析素子チップであって、
この分析素子チップは、内部に入射した光を前記金属薄膜に案内する光導波路部と、前記検体が流れる流路と、一方の面が前記光導波路部に面すると共に他方の面が前記流路内に露出するように設けられた前記金属薄膜と、を備え、
前記光導波路部は、外部から照射された光が内部に入射する入射面と、前記入射面から入射した光を前記金属薄膜の一方の面に向けて全反条件で折り返す第1反射部と、前記第1反射部からの光を前記金属薄膜の一方の面での全反射後に外部に射出する射出面と、をその表面に有し、
前記入射面は、当該入射面への光の入射方向と前記金属薄膜の一方の面とが同一方向を向いて平行若しくは略平行になるような位置に配置されると共に、前記第1反射部は、前記入射面及び金属薄膜の一方の面を望むような位置に配置されることを特徴とする分析素子チップ。
【請求項2】
前記第1反射部は、複数の全反射面を備え、
これら複数の全反射面は、前記入射面側から前記金属薄膜側に向かって連続又は間隔をおいて並び、隣り合う前記全反射面同士のなす角が前記入射面からの光を前記金属薄膜側の全反射面に向かって順に全反射し且つ最も金属薄膜側の前記全反射面で全反射された光が前記金属薄膜の一方の面に向かうようにそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1に記載の分析素子チップ。
【請求項3】
前記第1反射部は、1つの反射面で構成され、
この反射面には光を全反射する反射膜が設けられることを特徴とする請求項1に記載の分析素子チップ。
【請求項4】
前記反射膜は、多層膜で構成されることを特徴とする請求項3に記載の分析素子チップ。
【請求項5】
前記入射面が前記金属薄膜に対して傾斜すると共に、前記外部から照射される光に対しても傾斜するように配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の分析素子チップ。
【請求項6】
前記光導波路部は、前記金属薄膜の一方の面で全反射された光を前記射出面に向けて全反射条件で折り返す第2反射部をその表面にさらに有し、
前記射出面は、当該射出面からの光の射出方向と前記金属薄膜の他方の面とが同一方向を向いて平行若しくは略平行になるような位置に配置されると共に、前記第2反射部は、前記金属薄膜の一方の面及び射出面を望むような位置に配置されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の分析素子チップ。
【請求項7】
前記第2反射部は、複数の全反射面又は1つの反射面で構成され、
前記複数の全反射面は、前記金属薄膜側から前記射出面側に向かって連続又は間隔をおいて並び、隣り合う前記全反射面同士のなす角が前記金属薄膜からの光を前記射出面側の全反射面に向かって順に全反射し且つ最も射出面側の前記全反射面で全反射された光が前記射出面に向かうようにそれぞれ配置され、
前記反射面には光を全反射する反射膜が設けられることを特徴とする請求項6に記載の分析素子チップ。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の分析素子チップと、
前記分析素子チップの入射面と対向する位置に配置され、前記入射面に対して光を照射するための光源と、
前記分析素子チップの金属薄膜に対して前記流路を挟んで対向する位置に配置され、前記金属薄膜で生じたエバネッセント波によって励起された蛍光を検出するための蛍光検出手段と、を備え、
前記光源と蛍光検出手段とが同一基板上に配置されることを特徴とする表面プラズモン共鳴蛍光分析装置。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の分析素子チップと、
前記分析素子チップの入射面と対向する位置に配置され、前記入射面に対して光を照射するための光源と、
前記分析素子チップの金属薄膜に対して前記流路を挟んで対向する位置に配置され、前記金属薄膜で生じたエバネッセント波によって励起された蛍光を検出するための蛍光検出手段と、
前記分析素子チップの射出面と対向する位置に配置され、前記射出面から射出される光を検出するための射出光検出手段と、を備え、
前記光源と蛍光検出手段と射出光検出手段とが同一基板上に配置されることを特徴とする表面プラズモン共鳴蛍光分析装置。
【請求項10】
照射した光が前記分析素子チップの入射面に対して斜めから入射するように光源を前記基板上に配置することを特徴とする請求項8又は9に記載の表面プラズモン共鳴蛍光分析装置。
【請求項11】
前記光源と蛍光検出手段との間に遮光部材が配置され、
この遮光部材は、前記分析素子チップを当該表面プラズモン共鳴蛍光分析装置に設置した際の前記分析素子チップと基板との間隔よりも長く、且つ前記間隔方向に弾性変形可能に構成されることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の表面プラズモン共鳴蛍光分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−133677(P2009−133677A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308906(P2007−308906)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】