説明

分析装置、及び、分析制御用プログラム

【課題】測定を実行する過程でオペレータに操作指示のガイダンスを行う処理フローの作成を簡単にするとともに、オペレータの習熟度などに合わせた的確なガイダンスを可能とする。
【解決手段】表示画面上の処理フロー作業領域50に表示された処理フロー54において各工程や作業に対応したタスク53の詳細設定を行う詳細設定作業領域51に、該タスクに対応付けて登録されている複数の表示メッセージ56が表示される。ユーザはこの中から適当なものを選択することで、そのタスクの実行時の表示メッセージを決めることができる。適当なものが登録されていない場合には、ユーザは新規にメッセージを作成したり既存のメッセージを修正したりして、それを選択すればよい。作成・編集されたメッセージ等の指示データは登録され、それ以降の処理フロー作成時に選択肢の1つとして使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オペレータに操作手順を知らせる操作ガイダンス機能を有する分析装置、及び、そうした操作ガイダンスを提供するためにコンピュータ上で動作する分析制御用プログラムに関する。なお、ここでいう分析装置は、化学的分析や物理的分析を実施する分析装置のほか、材料試験、構造物試験などのための試験装置なども含むものとする。
【背景技術】
【0002】
近年、分析装置による測定作業を効率的に進めるために、オペレータが装置を操作して測定を実施し、それとは別の専門の知識を有する担当者が測定結果を評価するといった分業化が進んでいる。オペレータは必ずしも装置の操作に習熟しているとは限らず、簡単な講習を受けただけの未習熟なオペレータが装置の操作を担当することもある。
【0003】
一般に、分析装置の操作手順には複雑なものが多く、上記のような未習熟なオペレータが操作を行う場合、操作手順や作業を間違う可能性がある。また、測定対象に応じて操作手順を変えなければならないこともよくあり、こうした煩雑さも操作手順を間違う要因の1つとなっている。誤った手順で操作を行うと適切な測定が行えないだけでなく、装置の不具合や故障を引き起こすおそれもあり、大きな損失を被る場合さえある。
【0004】
こうした課題に対し、特許文献1に記載の分析装置では、表示部の画面上に処理フローを命令ブロックの形でグラフィック表示するようにして操作の手順をオペレータに示すようにしている。そして、ユーザが表示画面上で命令ブロックの編集を行って処理フローを作成・変更できるようにすることで、所望の処理フローに従って操作が行えるようにしている。これにより、未習熟なオペレータでも事前に作成された手順に則って装置の操作を進めていくことができる。
【0005】
さらにまた、特許文献2に記載の分析装置では、処理フローの各段階において詳細な情報や説明、指示などを処理フローと同時に画面上に表示することで未習熟なオペレータに対して操作の解説や指示を行い、誤操作を軽減できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−101115号公報
【特許文献2】特開2006−71387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術では、オペレータが操作を間違うことがないようにメッセージ文を画面上に表示するようにしているが、熟練したオペレータにとってはこうした過剰な説明や細かすぎる指示は不要であるのみならず、画面が見にくくなって却って操作を誤る要因になるおそれがある。また、不必要なメッセージに対する操作を行う必要が生じ、無駄な手間を増やして効率を落とすおそれもある。一方、未習熟なオペレータと言ってもその習熟レベルには差が大きいため、決まったメッセージ文を表示するだけでは説明不足が生じる場合がある。
【0008】
また例えば測定対象試料の種類が変更される、分析条件が変更される等の場合に、一度作成した処理フローを変更しなければならないことがあるが、その際には、命令ブロックに対応した説明や指示内容も変更を要することが多い。しかしながら、上記従来技術では、ユーザ側においてそうした変更に容易に対応することができない。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、オペレータの操作習熟レベルに合わせて適切な説明や指示を行うことができる処理フローを容易に作成することができる、また、処理フローの変更が生じた場合に簡単に処理フローを組み替えることができる操作ガイダンス機能を有する分析装置、及びそうした分析装置を制御するためのプログラムを提供することである。
【0010】
なお、上記特許文献2では、処理フローの中で操作に関連した情報をオペレータに提供する機能をナビゲーションと呼んでいるが、本明細書では、こうした機能を操作ガイダンスと呼ぶ。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明は、操作部と表示部とが付設された分析動作を制御するためのコンピュータを具備し、前記表示部の画面上で、分析動作の工程や作業に対応したタスクを表すグラフィック要素を組み合わせることにより分析手順を定めた処理フローを予め作成しておき、該表示部の画面上に表示させた前記処理フローに従ってオペレータが操作を行うことにより分析の遂行を可能とした、操作ガイダンス機能を有する分析装置において、
a)文字によるメッセージ、音声、静止画像、又は動画像の少なくともいずれかによる指示情報をオペレータに対し出力する機能を有するタスクに対応付けて、異なる内容の指示情報を複数種類記憶しておく指示情報記憶手段と、
b)前記指示情報記憶手段に記憶される又は記憶されている指示情報の作成やその情報内容の編集を、前記表示部の画面上で前記操作部を用いてユーザが行うための指示情報編集手段と、
c)前記処理フローをユーザが作成又は編集するに際し、指示情報を出力する機能を有するタスクを前記処理フローに組み入れる場合に、前記指示情報記憶手段に記憶されている複数種類の指示情報を前記表示部の画面上に表示し、その中から任意のものをユーザが前記操作部を用いて選択する選択処理手段と、
を備えることを特徴としている。
【0012】
通常、上記コンピュータは汎用のパーソナルコンピュータであり、上記操作部は、キーボードや、マウス、スライドパッドなどのポインティングデバイスであり、上記表示部は、液晶モニタなどのディスプレイモニタである。
【0013】
上記オペレータは、本発明に係る分析装置を用いて何らかの分析、試験、測定などを実行する作業者のことを言う。これに対し、上記ユーザは分析のための処理フローを作成する担当者のことを言う。
【0014】
ユーザは、表示部の画面上で、分析動作の工程や作業に対応したタスクを表すグラフィック要素を組み合わせ、その順序を入れ替えたり一部の削除や追加を行ったりすることにより、分析手順を定めた処理フローを予め作成する。この際に、選択処理手段は、処理フローに組み込まれるタスクが指示情報を出力する機能を持つタスクである場合に、指示情報記憶手段に記憶されている複数の指示情報を表示部の画面上に表示させる。例えば或るタスクに対応してA、B、Cなる異なる3つの指示情報が記憶されているものとすると、そのタスクを新たに処理フローに組み入れようとした場合に、A、B、Cの3つがともに表示部の画面上に表示される。そこでユーザは操作部を操作することにより、このいずれかの指示情報を選択する。
【0015】
タスクに対応付けられる指示情報は、指示情報編集手段により任意にその内容の編集が可能であるほか、新規作成・削除も可能である。新規に作成された指示情報は、削除されない限り、指示情報記憶手段に保存された状態となり、処理フローの作成や編集の際に必要に応じて呼び出される。したがって、ユーザが新たに作成したり或いは編集により内容を変更したりした指示情報は、それ以降に、処理フローを作成したり変更したりする際に利用することができる。しかも情報内容の変更が不要であれば、単にいずれか(例えば上記のA、B、C)の指示情報を選択すればよいだけであるので、処理フローの作成や変更が容易である。また、複数種類の指示情報の内容をオペレータの習熟度に合わせて異なるものとしておくことにより、未習熟のオペレータ向け、熟練したオペレータ向け、など、オペレータの習熟レベルに合わせた処理フローの作成も容易になる。
【0016】
なお、指示情報はオペレータに対して操作のガイダンスを視覚的又は聴覚的に詳細に行うものであるから、処理フローに組み込まれる全てのタスクに指示情報が必要であるとは限らず、オペレータが何らの操作や作業を要しない工程に対応したタスクには指示情報は不要である。
【0017】
決まったオペレータが当該分析装置の操作を行う場合には、そのオペレータの操作の習熟度に合わせた指示情報を出力するように予め処理フローを作成しておけばよいが、操作の習熟度が異なる複数のオペレータが当該分析装置を操作する可能性がある場合には、操作を行うオペレータの習熟度に応じて自動的に適切で的確な指示情報が出力されるようにすると便利である。
【0018】
そこで、本発明に係る分析装置の好ましい一実施態様として、
前記選択処理手段は、前記指示情報をオペレータの操作の習熟度別にそれぞれ選択可能であり、
d)オペレータを識別する識別情報とオペレータの操作の習熟度とを対応付けて記憶しておくオペレータ情報記憶手段と、
e)オペレータが分析に関わる操作を行うに先立って、予め与えられた識別情報を入力する識別情報入力手段と、
f)オペレータが前記識別情報入力手段により識別情報を入力すると、該識別情報を前記オペレータ情報記憶手段の記憶内容に照らして当該オペレータの操作の習熟度を判断し、処理フローに従って分析を遂行する過程で、前記選択処理手段により選択された複数の指示情報の中で前記判断された習熟度に応じた指示情報を選択的に出力する指示情報出力制御手段と、
をさらに備える構成とするとよい。
【0019】
上記識別情報としては、上記コンピュータへのログインに使用されるユーザIDなどを用いることができる。
【0020】
この実施態様では、オペレータが操作開始時に自らのユーザIDを識別情報入力手段から入力すると、指示情報出力制御手段が、その識別情報をオペレータ情報記憶手段の記憶内容に照らして当該オペレータの習熟度を判断する。そして、処理フローに従って分析を遂行する過程で、特定のタスクに対応した工程や作業を実行する際に、そのオペレータの習熟度に応じた指示情報を選択的に出力する。例えば、未習熟のオペレータに対しては細かい操作指示を出したり動画像付きの分かり易い指示を出したりする一方、熟練したオペレータに対しては簡単な操作指示のみを出したり指示なしとしたりする、というように指示内容や指示の有無を自由に設定できる。
【0021】
上記発明に係る分析装置で実現される特徴的な機能は、コンピュータ上で所定のコンピュータプログラムを動作させることにより実現される。即ち、本発明に係る分析制御用プログラムは、分析動作を制御するために操作部と表示部とが付設されたコンピュータ上で動作するコンピュータプログラムであって、前記表示部の画面上で、分析動作の工程や作業に対応したタスクを表すグラフィック要素を組み合わせることにより分析手順を定めた処理フローを予め作成しておき、該表示部の画面上に表示させた前記処理フローに従ってオペレータが操作を行うことにより分析の遂行を可能とした、操作ガイダンス機能を有する分析制御用プログラムにおいて、
a)文字によるメッセージ、音声、静止画像、又は動画像の少なくともいずれかによる指示情報をオペレータに対し出力する機能を有するタスクに対応付けて、異なる内容の指示情報を複数種類記憶手段に記憶させる指示情報記憶制御機能と、
b)前記記憶手段に記憶される又は記憶されている指示情報の作成やその情報内容の編集を、前記表示部の画面上で前記操作部を用いてユーザが行うための指示情報編集機能と、
c)前記処理フローをユーザが作成又は編集するに際し、指示情報を出力する機能を有するタスクを前記処理フローに組み入れる場合に、前記記憶手段に記憶されている複数種類の指示情報を前記表示部の画面上に表示し、その中から任意のものをユーザが前記操作部を用いて選択するための選択処理機能と、
を有することを特徴としている。
【0022】
またこの発明に係る分析制御用プログラムにおいて、好ましくは、
前記選択処理機能は、前記指示情報をオペレータの操作の習熟度別にそれぞれ選択可能であり、
d)オペレータを識別する識別情報とオペレータの操作の習熟度とを対応付けて記憶手段に記憶しておくオペレータ情報記憶制御機能と、
e)オペレータが分析に関わる操作を行うに先立って、予め与えられた識別情報を入力する識別情報入力機能と、
f)オペレータが前記識別情報入力機能を用いて識別情報を入力すると、該識別情報を前記記憶手段の記憶内容に照らして当該オペレータの操作の習熟度を判断し、処理フローに従って分析を遂行する過程で、前記選択処理機能により選択された複数の指示情報の中で前記判断された習熟度に応じた指示情報を選択的に出力する指示情報出力制御機能と、
をさらに有するものとすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る分析装置及び分析制御用プログラムによれば、処理フローを作成したり変更したりする際に、既に登録されている指示情報の中から適当な指示情報を選ぶことで該指示情報を出力するタスクを処理フロー中に追加又は入れ替えできるので、処理フローの作成や変更の作業が容易になる。また、オペレータへの指示として適当な指示情報が未だ登録されていない場合でも、新規作成や編集によって容易に所望の指示情報を作成することができるので、オペレータの習熟度に合わせた多種類の処理フローを作成することも容易である。
【0024】
また本発明の好ましい態様によれば、同じ処理フローを使用して分析を実行しても、オペレータの操作の習熟度に応じて、表示メッセージなどの指示内容が自動的に変更される。したがって、オペレータの習熟度に応じてそれぞれ異なる処理フローを作成しておく必要がなくなり、特に習熟度が多様なオペレータが操作する場合であっても処理フロー作成の負担が軽減される。また、オペレータの習熟度に応じて、適切な形態(例えばメッセージのみの指示、或いは、音声付きや動画付きの指示など)で適切な内容の指示を出すことができるので、どのようなオペレータにおいても装置の誤操作や操作漏れなどを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る分析装置の一実施例の概略構成図。
【図2】図1中のコンピュータで具現化される機能ブロックの構成図。
【図3】本実施例の分析装置における処理フロー編集作業画面の一例を示す図。
【図4】本実施例の分析装置における「指示」タスク(指示情報)の追加作業画面の一例を示す図。
【図5】本実施例の分析装置におけるオペレータのログイン画面の一例を示す図。
【図6】本実施例の分析装置における処理フロー実行時の画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る分析装置の一実施例である粒度分布測定装置について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1は本実施例による粒度分布測定装置の概略構成図である。この装置は、測定装置本体1とコンピュータ2とからなり、コンピュータ2は、キーボード、マウスなどを含む操作部3と、ディスプレイモニタである表示部4と、を含む。この例において、測定装置本体1は例えば特開2008−309746号公報などに開示されているレーザ回折・散乱式の粒度分布測定装置である。
【0028】
測定装置本体1における測定動作を簡単に説明する。まず、洗浄済みの分散槽内にポンプにより媒質が供給され(後述する図3中の「媒質投入」タスクに相当)、その媒質がフローセルに導かれてレーザ回折・散乱測定部によりブランク測定(サンプルを含まない媒質のみの測定)が実行される(同じく図3中の「ブランク測定」タスクに相当)。その後、分散槽の媒質中にサンプルである被測定粒子群が投入され(同じく図3中の「サンプル投入」タスクに相当)、機械的な撹拌や超音波照射による微細振動によって、サンプルの分散が促進される(同じく図3中の「分散」タスクに相当)。そうしてサンプルが略均一に分散した被測定液がフローセルに導かれ、レーザ回折・散乱測定部によりサンプル測定が実行される。こうした測定を実行するための各指令がコンピュータ2から測定装置本体1に送られ、また測定装置本体1からコンピュータ2に対してはブランク測定及びサンプル測定で得られるデータが送られる。
【0029】
コンピュータ2には、測定装置本体1を制御するとともに測定装置本体1で取得されたデータを処理するための専用の制御/処理プログラムが予めインストールされており、このプログラムをコンピュータ2で実行することにより、装置制御やデータ処理が達成される。上記のような測定を遂行するには、その途中の適宜の時点でオペレータが操作部3からキー操作やクリック操作などを行ったり、測定装置本体1上のキー操作、ボタン操作を行ったり、或いは、測定装置本体1にサンプルをセットしたり、するといった様々な人間の手による操作(作業)が必要になる。本実施例の粒度分布測定装置には、そうしたオペレータが行う操作の手順を測定の進行に伴ってオペレータに知らせる操作ガイダンス機能が、制御/処理プログラムの一部として備えられている。
【0030】
次に、この特徴的な操作ガイダンス機能について、図2〜図6により詳細に説明する。図2はコンピュータ2で具現化される機能ブロックの構成図であり、特に操作ガイダンス機能を実現する機能ブロックを中心に示している。
【0031】
図2において、装置制御処理部21は、制御管理部22から測定の進行に伴い具体的な処理内容を示すデータを取得し、その処理内容に応じて測定装置本体1の各部を動作させるための制御指令を出力する。また、装置制御処理部21は測定装置本体1から処理の進行状況などのデータを受け取り、それを制御管理部22へと通知する機能も有する。
【0032】
制御管理部22には、ID/習熟度対応テーブル231、処理手順データ記憶部232、タスク詳細データ記憶部233、指示情報データ記憶部234、などを含む記憶部23が接続されており、外部からの要求に応じ、各記憶部231〜234に保存されているデータの読み出しや書き込みを制御する。また制御管理部22は装置制御処理部21を介して測定装置本体1の実行中の処理やオペレータによる操作・作業を把握し、記憶部23から読み出したデータに基づいて装置制御処理部21や後述する表示画面作成部26などにそれぞれ指示を与える。
【0033】
指示情報編集処理部24は、制御管理部22を介して指示情報データ記憶部234からのデータの読み出しを行い、処理フロー作成時に操作部3を介したユーザ操作に応じて、表示メッセージなどの指示情報の修整、追加、削除などの編集や新規作成を行うとともに、編集や新規作成されて確定した指示情報データを、制御管理部22を介して指示情報データ記憶部234に書き込む。
【0034】
認証部25は、本装置起動時などに操作部3から入力されたユーザIDやパスワードなどに基づいてオペレータの認証を行うものである。
【0035】
表示画面作成部26は、制御管理部22により記憶部23から読み出されたデータを用いて表示部4に表示する画面を作成するものである。音声合成部27はオペレータに対する音声による指示を行う場合に、制御管理部22から与えられるデータを用いて音声を合成してスピーカ5に送出するものである。
【0036】
記憶部23において、ID/習熟度対応テーブル231は、各オペレータに付与されたユーザIDとオペレータ毎の操作の習熟度の情報とを対応付けて保存しておくテーブルである。処理手順データ記憶部232は、処理フローにより規定される処理手順を示すデータを保存しておくものであり、処理フローが変更されるとそのデータが書き換えられる。タスク詳細データ記憶部233は、処理フローを構成する各タスクについて詳細な処理に関するデータを記憶しているものである。指示情報データ記憶部234は、オペレータに対し、文字によるメッセージの表示出力、音声出力、静止画像表示、動画像表示などによる操作の指示(具体的な操作・作業の指示だけでなく単なる注意点の説明なども含む)が必要なタスクについて、各タスク毎にその指示情報を記憶しておくものである。
【0037】
まず、処理フロー作成担当者(以下「担当者」と呼ぶ)が処理フローを作成する際の手順と動作を説明する。担当者が操作部3により所定操作を行うと、表示画面作成部26は制御管理部22の指示を受けて記憶部23から必要なデータを読み出し、図3に示すような処理フロー編集作業画面を表示部4の画面上に表示させる。この処理フロー編集作成画面において、左側は、測定装置本体1において粒径分布測定を進める際の処理手順を示す処理フロー54を表示する処理フロー作業領域50である。処理フロー54は、工程や作業の内容が簡潔に示された矩形状のグラフィック要素で表されているタスク53を並べたものであり、このタスク53の降順が処理フロー54の実行順序である。一方、処理フロー編集作成画面の右側は、1つのタスクの詳細設定を行うための詳細設定作業領域51である。
【0038】
処理フロー作業領域50に表示される処理フロー54は、制御管理部22を介して処理手順データ記憶部232から取得される処理手順データに基づいて構成される。また、表示画面作成部26は、制御管理部22からの指示に基づき、現時点で詳細設定の対象となっているタスク或いは実行中であるタスクなどを認識し、処理フロー54中においてそれらタスクを、それ以外のタスクと識別可能な態様に設定して表示する。例えば図4の例では、詳細設定の対象となっている「指示」タスクの矩形枠を太線としているのに対し、それ以外のタスクの矩形枠を細線としてその内側を塗りつぶしとしている。図4では「指示」タスクが詳細設定の対象となっているが、例えばマウスで任意のタスクをクリック操作することで、任意のタスクを詳細設定の対象とすることができる。
【0039】
処理フロー作業領域50ではタスク53を直接ドラッグアンドドロップ操作することにより、タスクの順序の入れ替えが可能である。上部に配置された各種の編集操作子52を用いてもタスクの追加や削除が可能である。初期状態においては処理フロー作業領域50に、デフォルトとして標準的な処理フローが表示されており、担当者は、測定対象の試料の種類などの業務フローに合わせて、適宜、処理フロー作業領域50上でタスクの順序を入れ替えたり必要なタスクを追加したりして、目的とする処理フロー54を作成する。また必要に応じて、詳細設定作業領域51においてタスクの詳細設定を変更する。このとき、各タスクを実行する際に、オペレータに対する詳細な指示を与えるための詳細設定を行うことができる。また、或るタスクから次のタスクに移行する際の操作や作業などをオペレータに指示するために、指示情報の出力のみを行う「指示」タスクを処理フローに追加することもできる。
【0040】
図3は「ブランク測定」タスクが終了して「超音波照射」タスクに移行する前に「指示」タスクを追加する例である。このとき、表示画面作成部26は制御管理部22を介して指示情報データ記憶部234から「指示」タスクに対応付けられている指示情報データ(この場合には文字によるメッセージ文)を読み出して、それを詳細設定作業領域51に表示する。図3の例では、異なるメッセージ56が表示された2種類の「指示」タスク55が登録されているから、操作部3によりいずれかを選択する(例えば、図3中に矢印で示すように、詳細設定作業領域51から処理フロー作業領域50にドラッグアンドドロップ操作を行う)ことで処理フロー54に「指示」タスクとして追加する。
【0041】
適切な「指示」タスクが登録されていない場合には、担当者は、空欄である最下段のメッセージテキストボックスに任意のメッセージを入力し、新規作成ボタン57を押すことで「指示」タスクを新たに作成する。そして、作成した「指示」タスクを、上記と同様の操作により処理フロー54に追加すればよい。このとき、新たに作成された「指示」タスクは指示情報データ記憶部234に保存されるため、それ以降に処理フローを作成する際には、その「指示」タスクも詳細設定作業領域51に表示され、処理フローに追加できる選択肢の1つとなる。
【0042】
図4は「指示」タスクの詳細設定画面をさらに下層の習熟度別設定画面に切り替えたときの画面の一例である。この習熟度別詳細設定部60では、初心者、中級者、上級者というようなオペレータの習熟度に応じたメッセージの内容の追加、変更と、その表示の有無の切替設定を行うことができる。表示の有無はチェックボックス62で切り替えができ、表示無し(チェックなし)設定では、メッセージ入力ボックス61に入力が不可になる。なお、この場合でも、表示無しであることを視認容易に示すべくメッセージ入力ボックス61内の表示を消すだけであり、設定されているメッセージ自体は残っているから、表示ありに切り替えればすぐに、設定されているメッセージが再び表示される。
【0043】
以上のようにして、担当者は、簡単な操作で所望の処理フローを作成することができる。その処理フローに、オペレータに対する指示情報を出力するタスク(上記「指示」タスク)を追加したり、或いは、オペレータに対する指示情報を出力する機能を伴う工程に対応したタスクを追加したりする場合でも、既に登録されているいわゆる定型の指示情報をそのまま用いることができるので作業は容易である。
【0044】
次に、上記のように作成された処理フローに従ってオペレータが実際に分析を実行する際の手順と動作を説明する。図5は装置起動時の表示画面の一例である。オペレータが装置を起動させるとログインウインドウ70が手前に表示された画面が開く。各オペレータは予め取得しているユーザIDをID入力ボックス71に入力してOKボタン72を押す。なお、ここでは記載していないが、パスワードなどの入力を要求してユーザ認証を行うようにしてもよい。
【0045】
ユーザIDの入力により認証部25が正規のオペレータであることを確認すると、制御管理部22はID/習熟度対応テーブル231を参照して、ログインしたオペレータの習熟度を識別する。この習熟度は、ログオフされるまで内部の一時メモリに格納され、処理フローの実行の過程で習熟度の情報が必要になった場合に、一時メモリ内の情報が参照される。表示画面上の処理フロー作業領域50には、担当者により作成された処理フロー54が表示されているから、オペレータはこれに従って操作や作業を進め、測定の各工程を順次実行する。装置制御処理部21は制御管理部22により得られたデータに基づき制御指令を測定装置本体1へ送り、処理フロー中の各タスクに応じた処理を実行させる。このとき、習熟度が決められた指示情報が設定されている場合には、習熟度を参照してそれに応じた指示を行う。
【0046】
例えば「ブランク測定」タスクが終了して次の「指示タスク」に処理が移行すると、制御管理部22はその指示タスクに対応付けられている指示データを取得し、表示画面作成部26はその指示メッセージが表示されたポップアップウインドウを手前に開く。図6はこのときの画面を示しており、オペレータの習熟度が中級者程度である場合の表示画面である。ここでは、中級者に対する指示タスクに対応した指示情報として「装置の扉を閉めてください。」とのメッセージが登録されているため、ポップアップウインドウ80内にその指示が表示される。仮に他のメッセージであれば、そのメッセージ内容が入れ替わるだけである。さらに、例えば図4に示したように上級者に対しては表示が設定されていなければ、ポップアップウインドウ自体が開かない。
【0047】
ポップアップウインドウ80はOKボタン81のクリック操作がなされないと閉じないため、オペレータはその操作の習熟度に応じた指示を読んで確認を行いながら分析操作を進めていく。これにより、操作に熟練していないオペレータでも誤操作や操作漏れなどを防止できる。一方、操作に熟練したオペレータに対しては不要な指示を出さないようにしておくことで、オペレータに面倒な確認作業を強いることがなく、作業効率が向上する。
【0048】
なお、上記実施例は本発明の一実施例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、追加、を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。例えば上記実施例では、オペレータに対し操作に関わる指示を文字によるメッセージ表示で与えるようにしていたが、特に未習熟のオペレータに対しては静止画像や動画像など、より直感的に理解し易い指示のほうがミスの防止に有効である。そこで、静止画像や動画像で操作指示を行えるようにしてもよい。また、音声による指示を用いるようにしてもよい。さらに、それらを適宜併用してもよい。
【0049】
また、上記実施例では測定装置本体1が粒径分布測定を行うものであったが、他の分析装置、試験装置などにも適用できることは当然である。その分析装置や試験装置に応じて処理フローが変わることも当然である。
【符号の説明】
【0050】
1…測定装置本体
2…コンピュータ
3…操作部
4…表示部
5…スピーカ
21…装置制御処理部
22…制御管理部
23…記憶部
231…ID/習熟度対応テーブル
232…処理手順データ記憶部
233…タスク詳細データ記憶部
234…指示情報データ記憶部
24…指示情報編集処理部
25…認証部
26…表示画面作成部
27…音声合成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部と表示部とが付設された分析動作を制御するためのコンピュータを具備し、前記表示部の画面上で、分析動作の工程や作業に対応したタスクを表すグラフィック要素を組み合わせることにより分析手順を定めた処理フローを予め作成しておき、該表示部の画面上に表示させた前記処理フローに従ってオペレータが操作を行うことにより分析の遂行を可能とした、操作ガイダンス機能を有する分析装置において、
a)文字によるメッセージ、音声、静止画像、又は動画像の少なくともいずれかによる指示情報をオペレータに対し出力する機能を有するタスクに対応付けて、異なる内容の指示情報を複数種類記憶しておく指示情報記憶手段と、
b)前記指示情報記憶手段に記憶される又は記憶されている指示情報の作成やその情報内容の編集を、前記表示部の画面上で前記操作部を用いてユーザが行うための指示情報編集手段と、
c)前記処理フローをユーザが作成又は編集するに際し、指示情報を出力する機能を有するタスクを前記処理フローに組み入れる場合に、前記指示情報記憶手段に記憶されている複数種類の指示情報を前記表示部の画面上に表示し、その中から任意のものをユーザが前記操作部を用いて選択する選択処理手段と、
を備えることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分析装置であって、
前記選択処理手段は、前記指示情報をオペレータの操作の習熟度別にそれぞれ選択可能であり、
d)オペレータを識別する識別情報とオペレータの操作の習熟度とを対応付けて記憶しておくオペレータ情報記憶手段と、
e)オペレータが分析に関わる操作を行うに先立って、予め与えられた識別情報を入力する識別情報入力手段と、
f)オペレータが前記識別情報入力手段により識別情報を入力すると、該識別情報を前記オペレータ情報記憶手段の記憶内容に照らして当該オペレータの操作の習熟度を判断し、処理フローに従って分析を遂行する過程で、前記選択処理手段により選択された複数の指示情報の中で前記判断された習熟度に応じた指示情報を選択的に出力する指示情報出力制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする分析装置。
【請求項3】
分析動作を制御するために操作部と表示部とが付設されたコンピュータ上で動作するコンピュータプログラムであって、前記表示部の画面上で、分析動作の工程や作業に対応したタスクを表すグラフィック要素を組み合わせることにより分析手順を定めた処理フローを予め作成しておき、該表示部の画面上に表示させた前記処理フローに従ってオペレータが操作を行うことにより分析の遂行を可能とした、操作ガイダンス機能を有する分析制御用プログラムにおいて、
a)文字によるメッセージ、音声、静止画像、又は動画像の少なくともいずれかによる指示情報をオペレータに対し出力する機能を有するタスクに対応付けて、異なる内容の指示情報を複数種類記憶手段に記憶させる指示情報記憶制御機能と、
b)前記記憶手段に記憶される又は記憶されている指示情報の作成やその情報内容の編集を、前記表示部の画面上で前記操作部を用いてユーザが行うための指示情報編集機能と、
c)前記処理フローをユーザが作成又は編集するに際し、指示情報を出力する機能を有するタスクを前記処理フローに組み入れる場合に、前記記憶手段に記憶されている複数種類の指示情報を前記表示部の画面上に表示し、その中から任意のものをユーザが前記操作部を用いて選択するための選択処理機能と、
を有することを特徴とする分析制御用プログラム。
【請求項4】
請求項3に記載の分析制御用プログラムであって、
前記選択処理機能は、前記指示情報をオペレータの操作の習熟度別にそれぞれ選択可能であり、
d)オペレータを識別する識別情報とオペレータの操作の習熟度とを対応付けて記憶手段に記憶しておくオペレータ情報記憶制御機能と、
e)オペレータが分析に関わる操作を行うに先立って、予め与えられた識別情報を入力する識別情報入力機能と、
f)オペレータが前記識別情報入力機能を用いて識別情報を入力すると、該識別情報を前記記憶手段の記憶内容に照らして当該オペレータの操作の習熟度を判断し、処理フローに従って分析を遂行する過程で、前記選択処理機能により選択された複数の指示情報の中で前記判断された習熟度に応じた指示情報を選択的に出力する指示情報出力制御機能と、
をさらに有することを特徴とする分析制御用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−197148(P2010−197148A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40926(P2009−40926)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】