説明

分析装置および分析方法

【課題】分析の目的とする物質を含むサンプルを希釈することなく、物質の濃度を定量的に測定することができる分析装置を提供する。
【解決方法】複数の微小流路2のそれぞれに、異なる濃度範囲にて物質を検出することができる検出部5を設ける。検出されるべき物質の濃度を、いずれかの検出部5における検量範囲内に収めることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置および分析方法に関する。本発明は、特に、血液中に含まれている特定の成分(例えば酵素、基質、サイトカイン、抗体など)を検出および分析する装置、および上記成分を検出および分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗原抗体反応を用いた免疫分析法は、医療分野、生化学分野、またはアレルゲン等を測定する分野などにおける分析および計測に使用される方法として有用である。しかし、従来の免疫分析法は、分析に長時間を要する、操作が煩雑であるなどの問題を有している。
【0003】
近年、半導体の微細加工技術などを応用したマイクロ化技術(Micro Electro Mechanical System、MEMS)が開発されている。そして、タンパク質、遺伝子などの生化学分野における分析においては、抗原抗体反応を用いたマイクロ化技術(Micro Total Analytical System、μ−TAS)が急速に発展している。
【0004】
例えば、特許文献1には、幅がマイクロオーダーの長さである微細流路(以下、「マイクロチャネル」ともいう。)が表面上に形成された基板を有するマイクロチャネル型の分析装置が開示されている。特許文献1に記載の分析装置は、マイクロチャネルに固定化された抗体または人工抗体などを用いて、抗原などの検出対象の物質(以下、「対象物質」ともいう。)を分析するというものであり、このような分析装置を用いて分析時間の短縮化または分析操作の簡略化を実現することが提案されている。
【0005】
特許文献1に開示された分析装置の構造を図12に示す。図12に示すように、このマイクロチャネル型分析装置は、ガラス、プラスチックなどの透光性材料からなる基板200の表面に、マイクロチャネル201、溶液をマイクロチャネル201に注入する注入孔202、溶液を溜める液溜め部203、および溶液を分析装置から排出する排出孔204が形成されている。注入孔202および排出孔204は、それぞれマイクロチャネル201の両端に設けられており、排出孔204には液溜め部203が連結されている。マイクロチャネル201内には、抗体固定部205が設けられている。抗体固定部205には、溶液中の対象物質と特異的に結合する抗体が周知の固定化方法(例えば、物理的な吸着を用いて固定する方法、抗体が有するアミノ基と固定部の官能基との間に共有結合を形成して固定する方法など)によって固定化されている。なお、抗体とは、対象物質に対して特異的な親和性を有する物質である。
【0006】
図13は、図12に示す分析装置を使用した、対象物質の分析方法を説明するための図である。図13に示すように、対象物質220を含むサンプルと、標識抗体223を含む溶液とを混合する。標識抗体223は、光学的に検出可能な標識物質221と、対象物質220に結合可能な抗体222とが結合して形成されたものである。この標識抗体223と対象物質220とが結合して、免疫複合体(標識抗体223と対象物質220との反応によって生じた複合体)224が形成される。
【0007】
次いで、この免疫複合体224を含む溶液を、図12に示す注入孔202から外部ポンプを用いて注入し、マイクロチャネル201に流通させる。免疫複合体224を含む溶液が抗体固定部205に到達すると、図13に示すように、溶液中の免疫複合体224と、抗体固定部205に固定化された抗体225とが結合する。これにより、抗体固定部205において、抗体225−対象物質220−標識抗体223から構成される複合体226が形成される。
【0008】
その後、抗体固定部205にて形成された複合体226中の標識抗体223に結合されている標識物質221を光学的に検出することによって、対象物質220を検出する。標識物質221の検出には、例えば、使用する標識物質221の種類に応じて、紫外可視分光分析、蛍光分析、化学発光分析、熱レンズ分析などの所定の分析機器が用いられて、標識物質221の光吸収、蛍光または発光などを検出することによって実施される。
【0009】
濃度既知の対象物質220を含む標準溶液に対して上述の対象物質の分析方法を適用して、対象物質220の濃度についての検量線を作製する。この検量線を用いて、対象物質220の濃度が不明の溶液における、対象物質220の濃度を測定することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2006/054689号パンフレット(2006年5月26日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示されたマイクロチャネル型の分析装置の検量範囲は、抗体固定部205に固定化された抗体225の物性にほぼ依存する。このため、サンプル中の対象物質の濃度が、抗体固定部205に固定化された抗体225に結合し得る濃度よりも高い場合、対象物質の濃度を正確に決定することができない。それ故、上記検量範囲に含まれるように、サンプルを分析装置内にアプライする前にサンプルを希釈する必要がある。
【0012】
さらにサンプルを希釈したとしても、希釈後のサンプル中の対象物質が上記分析装置の検量範囲内ではないこともある。この場合、さらにサンプルを希釈することが必要になる。
【0013】
また、対象物質の濃度が検量範囲内であっても、対象物質の濃度が高すぎると、対象物質の濃度を正確に決定することができないことがある。これは、対象物質の濃度が高くなると、一次近似した検量線から外れるためである。この場合もやはり、対象物質の濃度を正確に決定するには、サンプルを希釈することが必要になる。
【0014】
特許文献1に開示されたマイクロチャネル型の分析装置に適用される溶液の容量は超微量(数μL〜数百μL)である。このような超微量の取扱い時の希釈は、煩雑な作業となりかねない。
【0015】
このように、従来の分析装置では、分析装置に溶液をアプライする前に、面倒かつ煩雑な希釈操作を実施しなければならないことがあるという問題点がある。
【0016】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、微細流路を有する分析装置に溶液をアプライする前に溶液を希釈することなく、サンプル中の対象物質の濃度を定量的に測定することができる分析装置、およびこの分析装置を用いた対象物質の測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る分析装置は、注入すべき流体を受容する注入部と流体を排出する排出部とに連結している、複数の第1の微小流路を備え、複数の第1の微小流路は、単一の注入部に連結されており、複数の第1の微小流路の各々には、該注入部と該排出部との間に、第1の検出部が設けられており、かつ、注入部と第1の検出部との間に、流体中の物質の濃度を低減させる第1の前処理部がさらに設けられており、第1の検出部には、検出すべき物質を捕捉する捕捉物質が配置されており、第1の前処理部には、低減すべき物質を捕捉する捕捉物質が配置されており、複数の第1の微小流路における第1の検出部において検出すべき物質が同一であり、複数の第1の微小流路における第1の検出部では、それぞれ異なる濃度範囲にて物質が検出されることを特徴としている。
【0018】
このような構成によれば、各第1の微小流路には、対象物質を検出する第1の検出部よりも上流側に、対象物質の濃度を低減させる捕捉物質が固定化された第1の前処理部が設置されている。分析装置の注入部にアプライされ、各第1の微小流路へ導入されたサンプルが第1の検出部に到達する前に第1の前処理部を通過するので、第1の前処理部の捕捉物質によってサンプル中の対象物質の一部が捕捉される。これにより、サンプル中の対象物質の濃度を低減することができる。すなわち、分析装置内においてサンプル中の対象物質の濃度が自動的に低減される。
【0019】
第1の検出部は、前処理部を通過した後の、サンプル中の対象物質を検出するものである。各第1の検出部では、それぞれ異なる濃度範囲にて、前処理部を通過した後のサンプル中の対象物質が検出される。すなわち、各第1の検出部における検出可能な濃度範囲がそれぞれ異なる。本明細書において、「検出部における検出可能な濃度範囲」とは、前処理部を通過した後のサンプル中の対象物質の濃度を検出部において定量的に測定することが可能な濃度範囲をいう。
【0020】
このように、各第1の検出部はそれぞれ異なる検出可能な濃度範囲を有しているので、これらの検出可能な濃度範囲のいずれか1つに、第1の前処理部を通過したサンプル中の対象物質の濃度を含ませることができる。サンプル中の対象物質の濃度を含む検出可能な濃度範囲を有する第1の検出部を用いて、対象物質の濃度を測定することによって、対象物質の濃度を正確に決定することができる。
【0021】
例えば、分析に供されるサンプル中の対象物質の濃度がサンプル毎に一定ではなく、a〜b(μg/mL)という濃度範囲に含まれることが分かっている場合、ある第1の検出部における検出可能な濃度範囲をx〜b’(μg/mL)とし、別の第1の検出部における検出可能な濃度範囲をa’〜y(μg/mL)とする(ただし、x≦a<a’≦b’<b≦y)。これによれば、a〜bのうちx〜b’の濃度範囲に含まれる対象物質の濃度を、上記ある第1の検出部によって正確に決定することができ、a〜bのうちa’〜yの濃度範囲に含まれる対象物質の濃度を、上記別の第1の検出部によって正確に決定することができる。よって、このような構成の分析装置を用いることによって、a〜bの濃度範囲に含まれる濃度の対象物質を有するサンプルであれば、どのようなサンプルを用いても、対象物質の濃度を定量的に測定することができる。
【0022】
本明細書において「第1の微小流路」は、前処理部と検出部とが設けられた微小流路をいう。各第1の微小流路の長さまたは形状がそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0023】
本明細書において、用語「サンプル」とは、分析装置の注入部にアプライされる検体(被検物)をいい、検出の対象としている目的物質(対象物質)を含んでいてもいなくてもよい。
【0024】
本明細書において、用語「捕捉物質」とは、対象物質と特異的に相互作用することによって、この対象物質と共有結合または非共有結合を形成する物質をいう。捕捉物質は、具体的に、対象物質との間でホストとゲストとの関係を有する物質であり、捕捉物質としては、例えば、抗原、抗体、酵素、基質、リガンド、レセプター、DNA、糖、ペプチド、合成高分子(例えばモレキュラーインプリントポリマー)などが挙げられる。
【0025】
本明細書において、用語「注入部」は、分析されるべきサンプルや分析に用いる流体を装置内へ注入するための入口であり、注入されるべきサンプルを予め貯留する機能を兼ねてもよい。また、用語「排出部」は、分析されたサンプルや分析に用いられた流体を分析装置内から排出するための出口であり、排出されたサンプルや流体を貯留しておく機能を兼ねてもよい。
【0026】
本明細書において、用語「上流」および「下流」は、微小流路内における流体の流れを基準とした概念であり、特に説明を加えない限り、流路における注入部方向が「上流」であり、排出部方向が「下流」である。
【0027】
本発明の分析装置において、各前処理部は、異なる前処理能力を有することが好ましい。このような前処理部を用いることによって、検出部における検出の濃度範囲をシフトさせることができる。なお、「前処理能力」は、前処理部において低減させる対象物質の量(例えば、モル量)が意図され、具体的には、前処理部に配置された捕捉物質が捕捉する対象物質の量が意図される。異なる前処理能力を有する前処理部を作製するには、例えば、各第1の前処理部に配置させる捕捉物質の量を変更すればよい。すなわち、本発明に係る分析装置において、複数の第1の微小流路における第1の前処理部では、配置されている捕捉物質の量がそれぞれ異なっていることが好ましい。
【0028】
本発明の分析装置において、複数の第1の微小流路における第1の検出部の検出感度が同一であることが好ましい。本明細書において「検出部の検出感度」は、検出部において検出される対象物質の量(例えば、モル量)が意図され、具体的には、検出部に配置された捕捉物質が捕捉する対象物質の量が意図される。このような構成によれば、異なる前処理能力を有する前処理部を用いることによって、検出部における検出の濃度範囲をシフトさせることができる。
【0029】
本発明に係る分析装置において、複数の第1の微小流路が単一の排出部に連結されていることが好ましい。複数の排出部が設けられている構成よりも、単一の排出部が設けられている構成の方が、分析装置の構成はより単純である。このため、分析装置をより容易に作製することができる。複数の第1の微小流路が単一の排出部に連結されている構成としては、例えば、第1の微小流路の各々が検出部と排出部との間で合流する構成を挙げることができる。
【0030】
また、本発明に係る分析装置は、注入すべき流体を受容する注入部と流体を排出する排出部に連結している、第1および第2の微小流路を備え、第1および第2の微小流路は、単一の注入部に連結されており、第1および第2の微小流路には、それぞれ第1および第2の検出部が設けられており、第1の微小流路には、注入部と第1の検出部との間に、流体中の物質の濃度を低減させる第1の前処理部がさらに設けられており、第1の検出部には、検出すべき物質を捕捉する第1の捕捉物質が配置されており、第2の検出部には、検出すべき物質を捕捉する第2の捕捉物質が配置されており、第1の前処理部には、低減すべき物質を捕捉する捕捉物質が配置されており、第1および第2の検出部において検出すべき物質が同一であり、第1および第2の検出部では、それぞれ異なる濃度範囲にて物質が検出されることを特徴としている。
【0031】
このような構成によれば、サンプル中の対象物質の濃度を第1および第2の検出部における検出可能な濃度範囲のいずれか1つを用いて決定することができる。例えば、分析に供されるサンプル中の対象物質の濃度がサンプル毎に一定ではなく、a〜b(μg/mL)という濃度範囲に含まれることが分かっている場合、第1の検出部における検出可能な濃度範囲をa’〜y(μg/mL)とし、第2の検出部における検出可能な濃度範囲をx〜b’(μg/mL)とすることができる(ただし、x≦a<a’≦b’<b≦y)。これによれば、a〜bのうちx〜b’の濃度範囲に含まれる対象物質の濃度を、第2の検出部によって正確に決定することができ、a〜bのうちa’〜yの濃度範囲に含まれる対象物質の濃度を、第1の検出部によって正確に決定することができる。よって、このような構成の分析装置を用いれば、a〜bの濃度範囲に含まれる濃度の対象物質を有するサンプルであれば、どのようなサンプルを用いても、対象物質の濃度を定量的に測定することができる。
【0032】
本明細書において「第2の微小流路」は、前処理部が設けられていないが、検出部が設けられた微小流路をいう。
【0033】
本発明の分析装置において、第1および第2の検出部の検出感度が同一であることが好ましい。このような構成によれば、第1の検出部に送達されるサンプル中に含まれている対象物質の濃度が第1の前処理部によって低減するので、第1の検出部における検出可能な濃度範囲を、第2の検出部における検出可能な濃度範囲よりも高濃度側に設計することができる。
【0034】
本発明の分析装置において、第1の微小流路が複数存在し、複数の第1の微小流路における第1の検出部では、それぞれ異なる濃度範囲にて物質が検出されることが好ましい。このような構成によれば、分析装置の検量範囲を拡張することができる。
【0035】
本発明の分析装置において、各前処理部は、異なる前処理能力を有することが好ましい。このような前処理部を用いることによって、検出部における検出の濃度範囲をシフトさせることができる。異なる前処理能力を有する前処理部を作製するには、例えば、各第1の前処理部に配置させる捕捉物質の量を変更すればよい。すなわち、本発明に係る分析装置において、複数の第1の微小流路における第1の前処理部では、配置されている捕捉物質の量がそれぞれ異なっていることが好ましい。
【0036】
本発明に係る分析装置において、複数の第1の微小流路における第1の検出部の検出感度が同一であることが好ましい。このような構成によれば、異なる前処理能力を有する前処理部を用いることによって、検出部における検出の濃度範囲をシフトさせることができる。
【0037】
本発明に係る分析装置において、第1および第2の微小流路が、単一の排出部に連結されていることが好ましい。複数の排出部が設けられている構成よりも、単一の排出部が設けられている構成の方が、分析装置の構成はより単純である。このため、分析装置をより容易に作製することができる。第1および第2の微小流路が単一の排出部に連結されている構成としては、例えば、第1のおよび第2の微小流路が、検出部と排出部との間で合流する構成を挙げることができる。
【0038】
本発明の分析装置において、各検出部に配置された前記捕捉物質は、同一の物質でありかつ同一の条件で配置されていることが好ましい。このような構成によれば、各検出部の検出感度を同一にすることができる。
【0039】
本発明の分析装置において、各微小流路の内部にバルブ構造が設けられていることが好ましい。本発明の分析装置において、対応する検出部と前処理部の間に、前記バルブ構造が設けられていることが好ましい。このような構成を用いれば、サンプル中の対象物質を前処理部にて捕捉する時間を任意に確保することができる。これにより、検出部にて分析される物質の濃度をより低くすることができる。
【0040】
本明細書において、用語「対応する」は、互いに機能的に関連している2つ以上の構成に対して用いられる。例えば、「対応する検出部と前処理部」は、特定の物質の濃度を低減させる前処理部と、該前処理部によって低減された特定の物質を分析する検出部とをいう。例えば、同一流路上に存在する前処理部と検出部は対応している。また、「対応する注入部と検出部」は、特定の検出部と、該検出部にて分析されるべき物質を含むサンプルが注入(導入に対応)される注入部とをいい、「対応する注入部と前処理部」は、特定の前処理部と、該前処理部にて低減されるべき物質を含むサンプルが注入(導入に対応)される注入部とをいう。
【0041】
本発明の分析装置において、対応する注入部と検出部の間に、対応する前処理部が複数設けられていてもよい。複数の前処理部は、互いに直接に配置されても並列に配置されてもよい。複数の前処理部が並列に配置される場合、各微小流路の少なくとも1つが、対応する注入部と検出部との間にて分岐しかつ再度合流する構成を有しており、形成されている複数の分岐の各々に、対応する前処理部が設けられていることが好ましい。
【0042】
このような構成を用いれば、対象物質を捕捉する捕捉物質が固定化されている前処理部が複数存在するため、効率よく対象物質の濃度を低減することができる。特に、並列の配置を採用する場合は、対象物質を含むサンプルが2つ以上に分配され、分配されたサンプルの各々が独立して前処理部を通ることによって、検出すべき物質の濃度をより短時間で低下させることができる。
【0043】
本発明の分析装置において、各前処理部の少なくとも1つが三次元の構造体を備えていることが好ましい。このような構造体は、前処理部の壁面から伸びる柱状の構造体であっても、多孔質の構造体であっても、複数の粒子状の構造体であってもよい。
【0044】
このような構成を用いれば、前処理部に三次元の構造物が形成されているため、検出すべき物質の濃度をより効率よく低下することができる。これにより、分析時間の短縮や集積化といったメリットにつながる。柱状構造が採用された場合は、前処理部の面積が立体的に増加するので、効率よく検出物質の濃度を低下することが可能となる。多孔質の構造体が採用された場合は、前処理部の面積が立体的に増加するので、効率よく検出物質の濃度を低下することが可能となる。複数の粒子状の構造体が採用された場合は、前処理部の面積が立体的に増加するので、これにより効率よく検出物質の濃度を低下することが可能となる。
【0045】
本発明の分析装置において、検出すべき物質を捕捉する捕捉物質が、該検出すべき物質に対する抗体であることが好ましい。また、低減すべき物質を捕捉する捕捉物質が、該低減すべき物質に対する抗体であることが好ましい。生化学的な分析に用いられるマイクロチャネル型の分析装置の検出対象となる物質は生体内タンパク質が多い。変性しにくい抗体は、捕捉物質として使用するには最適な物質である。
【0046】
本発明の分析装置において、検出部に作用電極および参照電極からなる検出手段が設けられていることが好ましい。このような構成を用いれば、検出部において、対象物質を電気化学的に検出することが可能となる。電気化学的に検出される対象物質は、それ自身が電気化学的に活性なものであってもよいし、電気化学的に活性な物質で修飾されたものであってもよい。対象物質を電気化学的に検出する方法としては、電気化学的に活性な物質から得られる電流値を上記検出手段にて測定すればよい。
【0047】
本発明の分析装置において、検出部が透過性の材料からなることが好ましい。このような構成を用いれば、検出部において対象物質を光学的に検出することが可能となる。光学的に検出される対象物質は、自身が光学特性を有しているものであってもよいし、光学特性を有する物質で修飾されたものであってもよい。光学特性としては、例えば、吸光特性、発光特性および発色特性が挙げられる。なお、発光には蛍光が包含される。光学特性を有する物質としては、例えば、吸光色素、発光色素および発色色素が挙げられる。対象物質を光学的に検出する方法としては、上述の光学特性を検出する方法であればよい。このような方法としては、例えば、紫外可視分光分析法、蛍光分析法、化学発光分析法、または熱レンズ分析法などの従来公知の方法が挙げられる。光学特性を有している対象物質を用いれば、その光学特性を測定(化学発光量変化や蛍光変化、吸光度変化を測定)することによって定量的な測定が可能となる。
【0048】
本発明の分析装置において、前処理部にさらなる検出手段が設けられていることが好ましい。このような構成を用いれば、前処理部にて、対象物質を検出することができる。例えば、この検出手段が、作用極並びに参照電極からなるものであれば、これらの検出手段によって電気化学的に活性な物質を検出することが可能となる。
【0049】
本発明の分析装置において、前処理部が透過性の材料からなることが好ましい。このような構成を用いれば、前処理部において光学的な検出が可能となるため、蛍光変化や吸光度変化を測定することによって定量的な測定が可能となる。
【0050】
本発明に係る分析装置にアプライされるサンプルは血液が好ましく、上記検出すべき物質が血液成分であることが好ましい。血液成分としては、血漿タンパク、リポタンパク、分泌タンパク、ホルモン、補体または糖が挙げられる。このような構成を用いれば、血液中の成分(例えば、血液中の血漿タンパク、リポタンパク、分泌タンパク、ホルモン、補体、または糖)を検出対象物質として分析することが可能となる。
【0051】
本発明の分析方法は、本発明の分析装置を用いて、分析に供されるサンプルを希釈することなくサンプル中の対象物質の濃度を定量的に測定することを特徴としている。マイクロ化技術に用いられるサンプルの容量は極微量である。微量のサンプルを調製する際に煩雑な希釈操作が含まれていると、調製毎に誤差が生じ、正確な分析を行うことが困難となり、分析の再現性および/または信頼性が低減する。本構成を用いれば、サンプルの希釈操作を省略することができるため、分析の再現性および/または信頼性を向上させることができる。また、使用者が希釈操作を行うことなく定量的な測定が可能になる。
【0052】
本発明に係る分析方法において、上記対象物質が血液成分であることが好ましい。特に、血液を操作する際には、使用者が感染症に罹患する等の危険性を伴うため、その取扱いに細心の注意が必要である。サンプルの調製工程を簡略化することによって、このような危険性を低減することができる。本構成を用いれば、サンプルの希釈操作を省略することができるため、使用者は血液サンプルをより安全かつ容易に取り扱うことができる。
【0053】
本発明の分析方法において、各検出部にて検出した物質の濃度と、各検出部における検出可能な濃度範囲とに基づいて、物質の濃度を決定することが好ましい。このように、各検出部にて検出した対象物質の濃度と、各検出部における検出可能な濃度範囲とを参酌することによって、検出部における検出可能な濃度範囲外にて検出された対象物質の濃度を「誤り」と判定し、検出部における検出可能な濃度範囲内において検出された対象物質の濃度を「正しい濃度である」と判定することができる。このような判定を行うことによって、サンプル中の対象物質の正確な濃度を決定することができる。
【0054】
本発明の分析方法において、各検出部にて検出した物質の濃度と、各検出部における検出可能な濃度範囲とに基づいて、分析エラーの有無を判定することが好ましい。このような構成によれば、検出部における検出可能な濃度範囲内において対象物質の濃度を検出することができず、検出部における検出可能な濃度範囲外にて対象物質の濃度が検出された場合、検出失敗であると判定することができる。また、検出部における検出可能な濃度範囲内において対象物質の濃度を検出することができた場合、検出成功であると判定することができる。
【0055】
本発明の分析方法において、各前処理部において対象物質が捕捉されているか否かを測定してもよく、上記前処理部において対象物質が一定量捕捉されていない場合に分析エラーと判定することが好ましい。このような構成を用いれば、検出部で定量的な測定を行うだけではなく、前処理部でも同様に定量的な測定を行うことが可能となる。前処理部にて所望のモル量を捕捉しなかった場合には、検出失敗であることを判定することが可能となる。これは、例えば、捕捉物質の活性が低下していることを知るに有効である。
【発明の効果】
【0056】
本発明を用いれば、検出部での分析可能な範囲を大きく超えた濃度の物質を含んだサンプルを用いた場合であっても、いずれかの検出部にてその物質を分析し得る。これにより、使用者がサンプルの希釈を行うことなく、サンプルを分析装置内に直接導入することが可能となり、その上で定量的な測定が実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)および(b)は、本発明の実施の形態1に係るマイクロチャネル型分析装置の平面図である。
【図2】(a)および(b)は、本発明の実施の形態1に係るマイクロチャネル型分析装置の一構成要素の一態様を示す図である。
【図3】(a)および(b)は、本発明の実施の形態1に係るマイクロチャネル型分析装置の一構成要素の一態様を示す図である。
【図4】(a)および(b)は、本発明の実施の形態1に係るマイクロチャネル型分析装置の一構成要素の一態様を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る他のマイクロチャネル型分析装置の平面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るマイクロチャネル型分析装置の平面図である。
【図7】(a)および(b)は、本発明の実施の形態3に係るマイクロチャネル型分析装置の平面図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る他のマイクロチャネル型分析装置の平面図である。
【図9】本発明の実施の形態4に係るマイクロチャネル型分析装置の平面図である。
【図10】本発明のマイクロチャネル型の分析装置を示す平面図である。
【図11】本発明のマイクロチャネル型の分析装置を用いて行った分析結果を示すグラフである。
【図12】従来のマイクロチャネル型の分析装置を示す概略図である。
【図13】従来のマイクロチャネル型の分析装置に設けられた抗体の固定部での反応を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明に係る分析装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、マイクロチャネル型の分析装置を用いて本発明を説明しているが、本発明に係る分析装置はマイクロチャネル型に限定されず、例えば、マイクロキャピラリ型の分析装置もまた本発明の範囲に含まれる。
【0059】
〔実施の形態1〕
図1〜4に基づいて、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るマイクロチャネル型分析装置の平面図である。図2および図3は、本発明の実施の形態1に係るマイクロチャネル型分析装置の一構成要素の平面図である。図4は、本発明の実施の形態1に係るマイクロチャネル型分析装置の一構成要素の平面図(左図)および側方からの断面図(右図)である。
【0060】
<1.マイクロチャネル型分析装置>
本実施形態に係るマイクロチャネル型分析装置(マイクロチャネルチップ)は、基板100、および基板100と重ね合わせる蓋101を備えており、基板100の表面には、凹面の微細溝(マイクロチャネル)2および2’が形成されている。なお、本明細書中において、「微細」は、μmオーダーの径を有していることが意図され、具体的には、半導体の微細加工技術を用いて形成され得る程度のサイズが意図される。
【0061】
マイクロチャネル2および2’は本実施形態に係る分析装置の流路を規定する。マイクロチャネル2および2’は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。具体的には、マイクロチャネル2および2’の長さまたは形状がそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0062】
基板100の表面には、注入すべき流体を受容する注入部1、および流路から流体を排出する排出部10がさらに形成されており、それぞれマイクロチャネル2の両端と連結している。すなわち、マイクロチャネル2は注入部1と排出部10とを基板100の表面上にて接続している。注入部1は、マイクロチャネル2へ注入する流体を貯留する部位であり得、排出部10は、マイクロチャネル2から排出される流体を貯留する部位であり得る。なお、本明細書中において、必要に応じて、マイクロチャネル2と注入部1または排出部10との境界部を注入孔および排出孔(図示せず)と称する。
【0063】
マイクロチャネル2’は、マイクロチャネル2が注入部1と排出部10との間にて分岐しかつ再度合流するバイパスチャネルである。マイクロチャネル2’は、マイクロチャネル2を介して注入部1および排出部10と連結している。
【0064】
このような基板100に蓋101を重ね合わせることによってマイクロチャネル2および2’は基板外部から隔離される。ただし、基板100または蓋101を貫通する第1および第2の貫通孔(図示せず)が、それぞれ注入部1および排出部10と基板外部とを連通する。これにより、基板外部からマイクロチャネル2および2’へ流体を供給したり、マイクロチャネル2から基板外部へ流体を排出したりすることができる。
【0065】
マイクロチャネル2および2’内には、マイクロチャネル2および2’を流れる流体中の物質を検出する検出部5および5’が、設けられている。検出部5および5’には、検出および分析の対象となる同一の物質を捕捉する捕捉物質8および8’が固定化されている。その結果、注入部1から導入された分析に供されるサンプル中の同一の対象物質をそれぞれ検出部5および検出部5’によって検出することができる。
【0066】
さらに、マイクロチャネル2内には、流体中の対象物質(検出部5にて検出されるべき物質)の濃度を低減させる前処理部6が、注入部1と検出部5との間に設けられている。この前処理部6には、上記対象物質を捕捉する捕捉物質3が固定化されている。同様に、マイクロチャネル2’内には、流体中の対象物質(検出部5’にて検出されるべき物質)の濃度を低減させる前処理部6’が、注入部1と検出部5’との間に設けられている。前処理部6’には、上記対象物質を捕捉する捕捉物質3’が固定化されている。
【0067】
検出部5および5’では、それぞれ異なる濃度範囲にて対象物質が検出される。これは、例えば、検出部5および5’の検出感度を同一にし、前処理部6に配置されている捕捉物質3の量(例えば、モル量)と、前処理部6’に配置されている捕捉物質3’の量(例えば、モル量)とを異ならせることによって実現することができる。検出部5および5’の検出感度を同一にするには、例えば、同一のモル量の対象物質を捕捉することができる捕捉物質を検出部5および5’に固定化すればよい。この場合、同一の捕捉物質を同一の条件(例えば同じモル量)で検出部5および5’に固定化することが好ましい。
【0068】
検出部5および5’における上記濃度範囲は、少なくとも一部が重複していることが好ましい。これにより、種々のサンプル中の対象物質の濃度を漏れなく測定することができる。
【0069】
また、図1の(b)に示すように、注入部1から排出部10への流れ方向を規定したり、流体の流れを時間制御したりするためのバルブ18および18’が、マイクロチャネル2内に設けられていてもよい。バルブ18および18’は、前処理部6と検出部5との間、および前処理部6’と検出部5’との間に設けられていることが好ましい。バルブ18および18’の両方が設けられている必要はなく、バルブ18および18’のどちらか1つが設けられていてもよい。
【0070】
なお、図示していないが、本実施形態に係る分析装置は、マイクロチャネル2および2’内の流体の、注入部1から排出部10への移動を促進する駆動手段が、注入部および排出部の少なくとも一方に連結されていてもよい。このような駆動手段としては、例えば、押出しポンプおよび吸引ポンプが挙げられる。押出しポンプを用いて流体をマイクロチャネル2および2’内へ送り込む場合は、押出しポンプを注入部1に連結すればよく、吸引ポンプを用いて流体をマイクロチャネル2および2’内から引き出す場合は、吸引ポンプを排出部10に連結すればよい。また、上述したようなポンプを用いる以外に、従来公知の方法で毛管現象または吸水物質を用いて溶液を流すこともできる。
【0071】
本実施形態に係る分析装置に提供される流体は、気体であっても液体であってもよいが、マイクロ化技術による生化学的な分析に用いられる場合は、液体であることが好ましい。
【0072】
以下、本実施形態に係る分析装置が備えている部材について詳細に説明する。
【0073】
<1.1 基板>
基板100および蓋101として、例えば、絶縁性を有する基板を用いることができる。絶縁性を有する基板としては、例えば、表面に酸化膜などの絶縁性材料が形成されたシリコン基板、石英基板、酸化アルミニウム基板、ガラス基板又はプラスチック基板などが挙げられる。物質を光学的に検出する場合、光透過性の基板を基板100または蓋101として用いることができる。光透過性の基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板、および光透過性樹脂から作成された基板などが挙げられる。また、化学発光を利用して物質を検出する場合、自発蛍光が小さく且つ透明性のあるガラスまたはプラスチック材料(例えば、例えば、ポリイミド、ポリベンツイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイトなど)を、基板100または蓋101として用いることもできる。なお、マイクロチャネル型分析装置に用いるに好ましい、基板100の厚みは0.1〜5mm程度である。なお、蓋101は、基板100と同一の厚みを有していてもよいし、基板100よりも薄くてもよいし、基板100よりも厚くてもよい。
【0074】
<1.2 マイクロチャネル、注入部、排出部>
基板100の表面上に形成されるマイクロチャネル2および2’の深さは0.1〜1000μm程度であることが好ましく、幅は0.1〜1000μm程度であることが好ましいが、これらに限定されない。また、マイクロチャネル2および2’の長さは、基板100の大きさに従って適宜設計可能であり、50〜800μm程度であることが好ましいが、これに限定されない。なお、マイクロチャネル2の深さ、幅および長さは、それぞれマイクロチャネル2’の深さ、幅および長さと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0075】
マイクロチャネル2および2’の流路は、流体の流れ方向に沿って角柱形状であっても円柱形状であってもよい。すなわち、マイクロチャネル2および2’の、流体の流れ方向に対して垂直な断面の形状は、矩形、台形、円形(半円形)であり得る。マイクロチャネル2の形状は、それぞれマイクロチャネル2’の形状と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0076】
マイクロチャネル2および2’は、例えば基板100上に凹凸を形成することによって作製することができる。例えば、基板100上に凹部を形成し、この凹部をマイクロチャネル2および2’としてもよいし、基板100上に複数の凸部を形成し、これらの凸部で囲まれた領域をマイクロチャネル2および2’としてもよい。また、凹部と凸部と形成し、凹部と凸部との組合せからマイクロチャネル2および2’を作製してもよい。
【0077】
基板100上に凹凸を形成する方法としては、例えば、直接加工する方法としての機械加工による方法、レーザー加工による方法、金型を用いた射出成型、プレス成型、および鋳造による方法などが挙げられる。金型を用いた射出成型は、量産性に優れ、形状の再現性が高いので、特に好適に利用される。また、基板100の材料がシリコンまたはガラス等である場合、基板100上のマイクロチャネル2のパターンを、フォトリソグラフィ法またはエッチング法により形成することができる。
【0078】
なお、注入部1および排出部10は、予め基板100上に形成されている態様を図示したが、注入部1および排出部10を介してマイクロチャネル2および2’と基板外部とを連絡する構成であれば限定されず、例えば、第1および第2の貫通孔として形成されてもよい。注入部1および排出部10の大きさは、マイクロチャネル2および2’の大きさおよび形状に従って適宜変更可能であるが、本実施形態に係る分析装置をマイクロチャネル型分析装置として用いるためには、径が10μm以上であることが好ましい。なお、基板100と別の部材として形成した注入部1および排出部10を基板外部に配置して、それぞれ第1および第2の貫通孔を介して注入孔および排出孔に連結された態様であってもよい。
【0079】
図1に示す構成では、注入部1と排出部10とは、マイクロチャネル2の両端に連結さされているが、注入部1と排出部10とが連結されるマイクロチャネル2の部位は両端に限定されない。具体的には、注入部1は、マイクロチャネル2’がマイクロチャネル2から分岐する分岐部よりも下流にてマイクロチャネル2に連結されていてもよい。また、排出部10は、マイクロチャネル2’がマイクロチャネル2に合流する合流部よりも上流にてマイクロチャネル2に連結されていてもよいし、注入部1とマイクロチャネル2’がマイクロチャネル2から分岐する分岐部との間にてマイクロチャネル2に連結されていてもよい。
【0080】
例えば、図2の(a)および(b)に示すように、注入部1(図示しない)がマイクロチャネル2の一端に連結されており、排出部10が注入部1とマイクロチャネル2の他端との間で、マイクロチャネル2に連結されていてもよい。この場合、マイクロチャネル2の他端は、図2の(a)に示すような行き止まりになっていてもよいし、図2の(b)に示すようなマイクロチャネル2および2’中の気体を排出するための空気穴4に連結されていてもよい。なお、図2の(a)および(b)における矢印は、流体の流れる方向を示す。
【0081】
図2の(a)に示す構成の分析装置では、流体を排出部10に向かって移動させると、流体は、排出部10へ直接到達する流体とマイクロチャネル2の他端に到達する流体とに分かれる。排出部10へ直接到達した流体は、排出部から排出される。マイクロチャネル2の他端に到達した流体は、行き止まりのため、逆流して排出部10へ向かい、排出部10から排出される。
【0082】
図2の(b)に示す構成の分析装置では、排出部10が注入部1(図示しない)と上記分岐部との間にてマイクロチャネル2に連結し、マイクロチャネル2の他端に空気穴4が連結されている。分析に供されるサンプルを注入部1に注入し、このサンプルを、マイクロチャネル2および2’(図示しない)内を空気穴4に向かって移動させる。そして、サンプルが検出部5および5’(図示しない)を通過する間に、サンプル中の対象物質が検出部5および5’の捕捉物質8および8’(図示しない)に捕捉される。サンプルが検出部5および5’を通過した後に、検出部5および5’の捕捉物質8および8’に捕捉された対象物質を検出するための標識化合物を注入部1に注入し、標識化合物を、マイクロチャネル2および2’内を空気穴4に向かって移動させる。標識化合物が検出部5および5’を通過する際に、検出部5および5’の捕捉物質8および8’に捕捉された対象物質と標識化合物とが反応する。反応後に、マイクロチャネル2および2’内に存在するサンプルおよび標識化合物を排出部10から排出する。さらに、標識化合物を検出するための基質を注入部1に注入し、マイクロチャネル2および2’内を空気穴4に向かって移動させる。これによって、基質と上記標識化合物とを反応させ、対象物質を検出する。なお、対象物質を検出する手順の詳細は、後述する「1.7 測定方法」を参照のこと。
【0083】
サンプルおよび試薬を、マイクロチャネル2および2’内を空気穴4に向かって移動させる方法には、公知の方法を用いることができる。例えば、空気穴4に上述した吸引ポンプを連結し、吸引ポンプによって空気穴4から気体を吸引することによって、サンプルおよび試薬を、マイクロチャネル2および2’内を空気穴4に向かって移動させてもよい。また、注入部1に上述した押出しポンプを連結し、押出しポンプによって注入部1から空気穴4に向かってサンプルおよび試薬を押出してもよい。この場合、サンプルおよび試薬の押出しに伴い、空気穴4からマイクロチャネル2および2’内の気体が排出される。
【0084】
マイクロチャネル2および2’内のサンプルおよび試薬を排出部10から排出する方法には、公知の方法を用いることができる。例えば、排出部10に吸引ポンプを連結し、吸引ポンプを用いて排出部10からサンプルおよび試薬を吸引することによって、サンプルおよび試薬を排出部10から排出してもよい。また、空気穴4に押出しポンプを連結し、押出しポンプによって空気穴から気体をマイクロチャネル内に注入することによって、サンプルおよび試薬を排出部10から排出してもよい。
【0085】
注入部1からマイクロチャネル2および2’内を通り空気穴4へ向かうサンプルおよび試薬が、排出部10へ向かうことを防ぐために、排出部10がマイクロチャネル2と連結する部位に上述したバルブを設けておくことが好ましい。サンプルおよび試薬が注入部1からマイクロチャネル2および2’内を通り空気穴4へ向かう間、バルブを閉じることによって、サンプルおよび試薬が排出部10へ向かうことを防止することができる。対象物質の検出が終了した後に、バルブを開き、上述した排出方法を用いることによって、排出部10からサンプルおよび試薬を排出することができる。
【0086】
<1.3 検出部>
検出部5および5’は、上述したように、マイクロチャネル2および2’を流れる流体中の物質を検出する部位である。図1に示すように、検出部5および5’には、検出および分析の対象となる同一の物質(以下、対象物質とも称する。)を捕捉する捕捉物質8および8’がそれぞれ固定化されている。捕捉物質8および8’は、対象物質とホスト−ゲストの関係がある物質(例えば、抗原、抗体、酵素、基質、リガンド、レセプター、DNA、糖、ペプチド、合成高分子(例えばモレキュラーインプリントポリマー)など)であればよく、特に、抗体または合成高分子は、活性が安定しているので好ましい。また、捕捉物質8および8’を固定化する方法としては、物理的吸着法、化学結合法、共有結合法などの公知の方法が適宜採用され得る。捕捉物質8および8’は、同一の対象物質を捕捉することができれば、同一の物質であってもよいし、異なる物質であってもよい。
【0087】
検出部5および5’の構成は、特に限定されず、対象物質の検出方法によって適宜決定され得る。吸光度または発光(蛍光を含む。)などに基づいて、対象物質を光学的に検出する場合、マイクロチャネル2および2’の光透過性の部分をそれぞれ検出部5および5’とすればよい。分析装置の製造を簡便にするために、基板100全体または蓋101全体を、例えば、ガラス、石英および光透過性樹脂などの光透過性の材料にすることが好ましい。このような場合は、図示するように、検出部5のマイクロチャネル2の内壁面上に捕捉物質8を固定化し、検出部5’のマイクロチャネル2’の内壁面上に捕捉物質8’を固定化すればよい。
【0088】
また、対象物質を電気化学的に検出する場合、検出部5および5’は、マイクロチャネル内に形成した検出電極からなる検出手段を備えていればよい。検出電極は、少なくとも参照電極および作用電極の2電極から構成されていればよいが、参照電極および作用電極に加えて対向電極を備えている3電極から構成されていることが好ましい。図1には、検出部5におけるマイクロチャネル2内部壁面に捕捉物質8が固定化され、検出部5’におけるマイクロチャネル2’内部壁面に捕捉物質8’が固定化されている構成を示しているが、検出電極を用いる場合には、捕捉物質8および8’が少なくとも作用電極上に固定化されていればよい。
【0089】
参照電極、作用電極および対向電極は、従来のフォトリソグラフィ技術を利用した微細加工技術によってマイクロチャネル2および2’に形成することができる。電極の導電性材料として、例えば金、白金、銀、クロム、チタン、イリジウム、銅またはカーボンなどを用いることができる。参照電極には、基準電位の安定性の観点から、銀/塩化銀電極を用いることが好ましい。
【0090】
検出部5および5’は、対象物質を検出するための構成として同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。すなわち、検出部5および5’が対象物質を光学的に検出するための上述した構成、または対象物質を電気化学的に検出するための上述した構成であってもよい。検出部5が対象物質を光学的に検出するための構成であり、検出部5’が対象物質を電気化学的に検出するための構成であってもよい。検出部5が対象物質を電気化学的に検出するための構成であり、検出部5’が対象物質を光学的に検出するための構成であってもよい。また、検出部5および5’の少なくとも1つは、対象物質を電気化学的に検出するための構成と対象物質および光学的に検出するための構成の両方を採用していてもよい。
【0091】
<1.4 前処理部>
前処理部6は、上述したように、流体中の物質(検出部5にて検出されるべき物質)の濃度を低減させる部位である。図1に示すように、注入部1と検出部5との間に設けられた前処理部6には、対象物質を捕捉する捕捉物質3が固定化されている。同様に、前処理部6’は、流体中の物質(検出部5’にて検出されるべき物質)の濃度を低減させる部位である。注入部1と検出部5’との間に設けられた前処理部6には、対象物質を捕捉する捕捉物質3’が固定化されている。
【0092】
捕捉物質3および3’は、捕捉物質8および8’と同様に、対象物質とホスト−ゲストの関係がある物質(例えば、抗原、抗体、酵素、基質、リガンド、レセプター、DNA、糖、ペプチド、合成高分子(例えばモレキュラーインプリントポリマー)など)であればよく、特に、抗体または合成高分子は、活性が安定しているので好ましい。捕捉物質3および3’は、同一の対象物質を捕捉することができれば、同一の物質であってもよいし、異なる物質であってもよい。なお、捕捉物質3および3’ならびに捕捉物質8および8’は、同一の物質であることが好ましい。同じ特性の捕捉物質を使用することによって、本実施形態に係る分析装置の生産性を向上させたり製造コストを低減させたりするだけでなく、開発効率を向上させることができる。捕捉物質3および3’を固定化する方法もまた、物理的吸着法、化学結合法、共有結合法などの公知の方法が適宜採用され得る。
【0093】
図3に示すように、本実施形態に係る分析装置において、前処理部6は、マイクロチャネル2内に複数設けられてもよい。具体的には、図3の(a)に示すように、2つ以上の前処理部6および16が単一流路内に直列に配置されてもよく、図3の(b)に示すように、単一流路から分配されかつ再度合流する複数の流路のそれぞれに前処理部6および16が配置されてもよい。前処理部16には、捕捉物質13が固定化されている。捕捉物質13は、捕捉物質3と同一であることが好ましい。また、前処理部6’も同様に、マイクロチャネル2’内に複数設けられてもよい。
【0094】
前処理部6の構成は、特に限定されず、例えば、図1に示すように、前処理部6のマイクロチャネル2内壁面上に捕捉物質3を固定化してもよい。同様に、前処理部6’の構成も、特に限定されず、例えば、前処理部6’のマイクロチャネル2’内壁面上に捕捉物質3’を固定化してもよい。また、捕捉物質3および3’を固定化する面積を拡大するために、前処理部6のマイクロチャネル2内、および前処理部6’のマイクロチャネル2’内に三次元の構造物を配置してもよい。このような三次元の構造物を設けることによって前処理部6および6’に固定化される捕捉物質3および3’のモル量が増加し、その結果、対象物質と捕捉物質3および3’との反応効率が向上し、対象物質の濃度を非常に効率よく低減させることができる。
【0095】
このような構造物としては、例えば、柱状構造物6a(図4の(a))や多孔質構造体(図示せず)、図4の(b)に示す微粒子6bが挙げられる。図4の(b)に示すように、微粒子6bの移動を妨げる堰止め部9を、注入部1と検出部5との間のマイクロチャネル2内または注入部1と検出部5’との間のマイクロチャネル2’内に設けることによって、注入部1から微粒子6bを含む溶液を導入した際に、微粒子6bを堰止め部9によって留めておくことができる。そして、堰止め部9によって留められた微粒子6bの集合が前処理部6および6’をそれぞれ形成する。堰止め部9は、流体の流れを妨げずに微粒子6bの通過を阻止し得る構造であれば特に限定されない。
【0096】
前処理部6および6’の少なくとも1つは、さらなる検出手段を備えていることが好ましい。すなわち、検出部5および5’にて対象物質を検出する前に前処理部6および6’にて対象物質を検出することが好ましい。このような検出手段を前処理部6および6’が備えていることにより、前処理部6および6’において対象物質が捕捉されているか否かを確認することが可能となる。この場合、捕捉物質3および3’の劣化、またはその他の異常によって前処理部6および6’での一定量の対象物質の捕捉を確認し得なかった際に、分析が失敗である(分析エラー)と判定することが可能となる。すなわち、本実施形態に係る分析装置は、前処理部6および6’における対象物質の有無を判定する判定部をさらに備えていてもよい。分析が失敗であると判定するための、前処理部6および6’に捕捉される対象物質の量は、特に限定されず、当業者であれば、適宜設定することができる。
【0097】
なお、前処理部6および6’に備えられる検出手段は、検出部5および5’に備えられる検出手段と同一のものが好ましいが、異なっていてもよい。検出手段の詳細については、上記「1.3 検出部」の項を参照のこと。
【0098】
<1.5 バルブ構造>
バルブ18および18’は、それぞれマイクロチャネル2および2’内の流体の流れ方向を規定する構造、マイクロチャネル2および2’内の流体の流れを物理的に停止させる構造、マイクロチャネル2および2’内の流体を切断する構造、マイクロチャネル2および2’内の流体を分離する構造などを有し得、必要に応じて全ての機能を備えていてもよい。好ましいバルブ18および18’の例としては、回転ねじ式バルブ、出し入れ自在の堰板、圧力による閉鎖、気体制御による液体の切断などが挙げられる。バルブを設けることで、前処理部6および6’、検出部5および5’での反応時間を延長することができる。
【0099】
<1.6 捕捉物質の調整方法>
検出部において対象物質の濃度を定量的に測定するためには、検出部において検出し得る濃度範囲内に対象物質の濃度を収めるように、捕捉物質3および3’の量(モル量)を調整する必要がある。つまり、対象物質の濃度にあわせて、捕捉物質3および3’の量を調整する。捕捉物質3および3’の量は、捕捉物質3および3’ならびに捕捉物質8および8’の特性だけではなく、マイクロチャネルの形状にも依存するため、分析装置の構成に応じて適宜調整を行う必要がある。固定化濃度による調整方法の一例を、以下に記載する。
(1)検出可能な濃度範囲の確認
前処理部6および6’が設けられていない以外は本実施形態と同一の構成を有する分析装置Xにおいて、濃度が既知である対象物質(標準物質)を用いて、検出部5および5’における検出可能な濃度範囲を調べる。このような濃度範囲にて、検出部5および5’における対象物質の検出結果と対象物質の濃度とが直線性を有することが好ましい。
【0100】
このような操作によって、検出部5および5’に固定化する捕捉物質8および8’のモル量を決定することができる。
(2)前処理部6および6’の条件検討
種々の濃度の捕捉物質(100、10、1、0.1、0.01μg/mL)を調製し、本実施形態の分析装置のマイクロチャネル2の前処理部6、およびマイクロチャネル2’の前処理部6’に固定化する。次いで、標準物質を用いて、検出可能な濃度範囲を調べる。このような濃度範囲にて、検出部5および5’における対象物質の検出結果と対象物質の濃度とが直線性を有することが好ましい。
(3)前処理部6および6’の条件決定
所望の濃度範囲と近い条件を示す捕捉物質3および3’の濃度を、操作(2)の結果に基づいて選択する。このとき、捕捉物質3の濃度が、捕捉物質3’の濃度と異なるように選択する。これにより、検出部5および5’が、それぞれ異なる濃度範囲にて対象物質を検出できるようになる。選択した濃度付近の濃度の捕捉物質を用いて操作(2)を再度実行し、前処理部の固定化条件を決定する。
【0101】
例えば、分析に供されるサンプル中の対象物質の濃度がa〜b(μg/mL)の濃度範囲に含まれている場合、検出部5における検出可能な濃度範囲がx〜b’(μg/mL)となり、検出部5’における検出可能な濃度範囲がa’〜y(μg/mL)となるように、前処理部の固定化条件を選択する(ただし、x≦a<a’≦b’<b≦y)。なお、x=aでもよいが、x<aで有ることがより好ましい。a’=b’でもよいが、a’<b’であることがより好ましい。b=yでもよいが、b<yであることがより好ましい。このような濃度範囲を実現するには、例えば、同一の捕捉物質を用いて、前処理部6に固定化する捕捉物質の量が、前処理部6’に固定化する捕捉物質の量よりも少なくなるように、各前処理部に捕捉物質を固定化すればよい。すなわち、各前処理部上に配置された捕捉物質の量が、前処理部6の捕捉物質の量<前処理部6’の捕捉物質の量となる。
【0102】
以上の手順によって、捕捉物質3および3’の固定化条件および捕捉物質8および8’の固定化条件を決定する。なお、検出部5および5’における検出可能な濃度範囲(すなわち、検出部5および5’の検出感度)を同一にしておくことによって、操作(3)をより簡便に行うことができる。検出部5および5’の検出感度を同一にするには、同一のモル量の対象物質を捕捉することができる捕捉物質を検出部5および5’に固定化すればよい(例えば、各検出部の捕捉物質および固定化条件(モル量)を同一にすればよい)。検出部5および5’の検出感度が同一であるか否かは、操作(1)によって確認することができる。
【0103】
また、前処理部の面積を拡大することによって、種々の濃度の捕捉物質3および3’を調製することなく、検出に好適な濃度範囲を調整することができる。例えば、図3の(a)に示すように前処理部を複数個設けてもよい。対象物質を含んだ分析に供されるサンプルが前処理部を複数回通過することによって、より低濃度まで効率よく濃度を低下させることができる。また、図3の(b)に示すように、マイクロチャネル2および2’の少なくとも1つを分岐させ、分岐によって生じたマイクロチャネルに複数の前処理部を並列に設けてもよい。なお、複数の前処理部を並列に設ける場合は、対象物質を含んだ分析に供されるサンプルの濃度をより短時間に効率よく低下させることができるので、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0104】
このように、前処理部における捕捉物質3および3’のモル量、分析に供されるサンプル中の対象物質のモル量、および、検出部における捕捉物質8および8’のモル量を、当業者は適宜調整し得る。
【0105】
<1.7 測定方法>
本実施形態に係る分析装置を用いた分析方法の一例を、以下に示す。なお、マイクロチャネル2および2’内にて流体を流す駆動手段は、注入部1に連結した押出ポンプを用いる方法、排出部10に連結した吸引ポンプを用いる方法、毛管力および/または吸水物質を用いる方法のいずれでもよい。
【0106】
(1)ブロッキング
分析に供されるサンプル中の、検出対象でない物質(非対象物質)が、マイクロチャネル2および2’、前処理部6および6’、ならびに検出部5および5’に非特異的に吸着することを防ぐために、非特異吸着防止剤を注入部1から導入して、マイクロチャネル2および2’内を満たす。次いで、この非特異吸着防止剤を排出部10から排出する。洗浄溶液を注入部1から導入し、マイクロチャネル2および2’内を通過させて排出部10から排出する。これにより、マイクロチャネル2および2’内に残留する余分な非特異吸着防止剤を取り除く。好適な非特異的吸着防止剤としては、例えば、プロテインフリー(Thermo社)が挙げられる。
【0107】
(2)分析に供されるサンプルの導入
分析に供されるサンプルを注入部1からマイクロチャネル2および2’内に導入する。分析に供されるサンプルは、マイクロチャネル2および2’内を移動して前処理部6および6’へ送達される。分析に供されるサンプルが前処理部6および6’を通過する間に、分析に供されるサンプル中の対象物質が前処理部6および6’の捕捉物質3および3’と結合して、前処理部6および6’にて捕捉される。これにより、前処理部6および6’を通過した分析に供されるサンプル中の対象物質の濃度が低減する。この際、分析に供されるサンプル中の対象物質と、前処理部6および6’の捕捉物質3および3’との結合を十分進行させるために、バルブ18および18’を閉じておくことが好ましい。
【0108】
次いで、必要に応じてバルブ18および18’を開放し、分析に供されるサンプルを、マイクロチャネル2および2’内をさらに移動させて検出部5および5’へ送達する。分析に供されるサンプルが検出部5および5’を通過する間に、分析に供されるサンプル中の対象物質は検出部5および5’の捕捉物質8および8’と結合して検出部5および5’にて捕捉される。次いで、洗浄溶液を注入部1から導入し、マイクロチャネル2および2’内を移動させて排出部10から排出する。これにより、マイクロチャネル2および2’内に残留する余分な分析に供されるサンプルを取り除く。
【0109】
マイクロチャネル2および2’内での注入部1から排出部10への分析に供されるサンプルの移動は連続的に行われてもよいし、断続的に行われてもよい。分析に供されるサンプルを断続的に移動させる場合、例えば、分析に供されるサンプルを前処理部6および6’ならびに/または検出部5および5’の領域内にて所定の時間にわたって保持(インキュベート)してもよい。これにより、分析に供されるサンプル中の対象物質と捕捉物質3および3’ならびに/または捕捉物質8および8’との反応時間を最適化することができる。
【0110】
(3)検出部にて捕捉された対象物質の標識化
対象物質に結合し得る標識化合物を、注入部1からマイクロチャネル2および2’内に導入して、検出部5および5’へ送達する。標識化合物が検出部5および5’を通過する間に、標識化合物は検出部5および5’に捕捉されている対象物質と結合する。この操作によって、検出部5および5’内に捕捉された対象物質が標識される。
【0111】
(4)対象物質の検出
検出手段を用いて標識化合物を検出することによって、検出部5および5’での対象物質を検出することが可能となる。標識化合物としては、例えば、蛍光標識抗体または酵素標識抗体を用いることができるが、捕捉物質8および8’と異なる抗体が好ましい。
【0112】
(4−1)蛍光標識抗体を用いた対象物質の検出
上記(3)において蛍光標識抗体を用いた場合、検出部5および5’の蛍光を直接観察することによって、対象物質を検出することができる。
【0113】
(4−2)酵素標識抗体を用いた対象物質の検出
上記(3)において酵素標識抗体を用いた場合、酵素標識抗体を対象物質に結合させた後に、この酵素に対する基質溶液を注入部1からマイクロチャネル2および2’内に導入する。基質溶液が検出部5および5’を通過する間に、対象物質に結合した酵素標識抗体と基質溶液とが反応する。この反応の結果によって得られるシグナルを公知の方法を用いて検出することによって対象物質を検出することができる。当業者は、このような方法を、使用する基質の種類に応じて、適宜選択することができる。
【0114】
例えば、上記反応によって蛍光を発する基質を用いた場合は、検出部5および5’の蛍光を直接観察することによって対象物質を検出することができる。また、上記反応によって吸光度が変化する基質を用いた場合は、検出部5および5’の吸光度を測定することによって対象物質を検出することができる。上記反応によって電気化学活性が変化する基質を用いた場合は、電極を用いた電気化学的な手段によって対象物質を検出することができる。
【0115】
本実施形態に係る測定方法は、生化学的な分析に好適であり、用いられるサンプルとしては、特に限定されないが、生化学的な分析に利用される頻度を考慮すると、血液が好ましい。上記測定方法に血液を供することによって、例えば、免疫グロブリン、アルブミン、GOT、GTP、γ−GPT、HDL、LDL、中性脂肪、ヘモグロビンA1C、尿酸、グルコース、アディポネクチン、レプチン、レジスチンおよびTNF−αなどの血液成分を、対象物質として分析することができる。
【0116】
マイクロ化技術に用いられるサンプルの容量は極微量である。微量のサンプルを調製する際に煩雑な希釈操作が含まれていると、調製毎に誤差が生じ、正確な分析を行うことが困難となり、分析の再現性および/または信頼性が低減する。本実施形態に係る分析装置を用いれば、サンプルの希釈操作を省略することができるため、分析の再現性および/または信頼性を向上させることができる。
【0117】
特に、血液を操作する際には、感染症への罹患等の危険性を伴うため、その取扱いに細心の注意が必要である。サンプルの調製工程を簡略化することによって、このような危険性を低減することができる。本実施形態に係る分析装置を用いれば、サンプルの希釈操作を省略することができるため、使用者は血液サンプルをより安全かつ容易に取り扱うことができる。
【0118】
なお、標識化合物および基質溶液を注入部1からマイクロチャネル2および2’内に導入する場合、標識化合物および基質溶液は、検出部5および5’に到達する前に前処理部6および6’を通過する。標識化合物および基質溶液は、前処理部6および6’を通過する間に、前処理部6および6’に捕捉されている対象物質と結合および/または反応し得、この反応によってシグナルが生成し得る。このシグナルが検出部における対象物質の検出に支障をきたす可能性は十分あり得る。このような可能性を回避するためには、検出部5および5’での捕捉物質8および8’と標識化合物との結合を生じさせた後に、マイクロチャネル2および2’内の流れ方向を変更して、基質溶液を排出部10から注入すればよい。
【0119】
<1.8 測定結果>
例えば、分析に供されるサンプル中の対象物質の濃度がa〜b(μg/mL)の濃度範囲に含まれており、検出部5における検出可能な濃度範囲がx〜b’(μg/mL)、検出部5’の定量的に検出可能な濃度範囲がa’〜y(μg/mL)であった場合(x≦a<a’≦b’<b≦y)について説明する。
【0120】
(1)分析に供されるサンプル中の対象物質の濃度がa以上a’未満(μg/mL)の濃度範囲に含まれている場合、このような濃度範囲は検出部5における検出可能な濃度範囲内であるので、上記対象物質の検出部5における検出結果が検出部5の検量範囲内である。一方、a以上a’未満(μg/mL)の濃度範囲の上限値は検出部5’における検出可能な濃度範囲の下限値よりも小さいので、上記対象物質の検出部5’における検出結果が検出部5’の検量範囲の下限値よりも小さくなる。
【0121】
(2)分析に供されるサンプル中の対象物質の濃度がb’よりも大きくb以下(μg/mL)の濃度範囲に含まれている場合、このような濃度範囲の下限値は検出部5における検出可能な濃度範囲の上限値よりも大きいので、上記対象物質の検出部5における検出結果が検出部5の検量範囲よりも大きくなる。一方、b’よりも大きくb以下(μg/mL)の濃度範囲は検出部5’における検出可能な濃度範囲内であるので、上記対象物質の検出部5’における検出結果が検出部5’の検量範囲内である。
【0122】
(3)分析に供されるサンプル中の対象物質の濃度がa’以上b’以下(μg/mL)の濃度範囲に含まれている場合、このような濃度範囲は検出部5および5’における検出可能な濃度範囲内であるので、上記対象物質の検出部5および5’における検出結果が検出部5および5’の検量範囲内である。
【0123】
以上のように、(1)、(2)では、対象物質の検出結果が、一方の検出部において検量範囲内となり、他方の検出部において検量範囲外となる。この場合、検量範囲外の検出結果を用いて決定された対象物質の濃度を誤りと判定することができ、検量範囲内の検出結果を用いて決定された対象物質の濃度を正しい濃度であると判定することができる。このように、各検出部における検出結果と各検出部における検量範囲とに基づいて、分析に供されるサンプル中の対象物質の濃度を正確に決定することができる。(3)では、対象物質の検出結果が両方の検出部において検量範囲内となる。この場合、少なくとも一方の検出結果を用いて、分析に供されるサンプル中の対象物質の濃度を正確に決定することができる。
【0124】
また、(1)〜(3)において、全ての検出部における検出結果を比較することによって分析エラーの有無を確認することも可能となる。つまり、上述したように(1)、(2)では、対象物質の検出結果が、一方の検出部において検量範囲内となり、他方の検出部において検量範囲外となる。よって、(1)、(2)において、両方の検出部における検出結果が検量範囲内となる場合、または両方の検出部における検出結果が検量範囲外となる場合、少なくともどちらかの検出部における検出が失敗している(分析エラーが有る)と確認することができる。このような検出が失敗していると考えられる事態としては、(1)では、検出部5における検出結果が検出部5の検量範囲であっても、検出部5’における検出結果が検出部5’の検量範囲の下限値よりも小さくなっていない場合が挙げられ、(2)では、検出部5’における検出結果が検出部5’の検量範囲であっても、検出部5における検出結果が検出部5の検量範囲の上限値よりも大きくなっていない場合が挙げられ、
また、(3)では、両方の検出部における検出結果が異なる場合、または両方の検出部における検出結果から算出した濃度が異なっていれば、少なくともどちらかの検出部における検出が失敗している(分析エラーが有る)と確認することができる。
【0125】
単一の排出部を、複数のマイクロチャネルが共有する構成が図1に示されているが、図5に示すように、複数のマイクロチャネルがそれぞれ独立した排出部と連結されていてもよい。すなわち、本実施形態にかかるマイクロチャネル型分析装置はまた、図5に示すように、基板100の表面上に形成された注入部1と排出部10とを接続するマイクロチャネル2、および注入部1と排出部10’とを接続するマイクロチャネル2’が、基板100の表面に形成されているものであってもよい。
【0126】
マイクロチャネル2’は、マイクロチャネル2が注入部1と排出部10との間にて分岐して形成された流路である。マイクロチャネル2および2’内には、マイクロチャネル2および2’を流れる流体中の物質を検出する検出部5および5’が、設けられている。検出部5および5’には、検出および分析の対象となる物質を捕捉する捕捉物質8および8’’がそれぞれ固定化されている。その結果、注入部1から導入された分析に供されるサンプル中の対象物質をそれぞれ検出部5および検出部5’によって検出することができる。
【0127】
また、マイクロチャネル2からマイクロチャネル2’が分岐する分岐部と検出部5との間のマイクロチャネル2内に、前処理部6が設けられている。上記分岐部と検出部5’との間のマイクロチャネル2’内に、前処理部6’が設けられている。前処理部6および6’には、目的の物質を捕捉する捕捉物質3および3’がそれぞれ固定化されている。
【0128】
図5に示すマイクロチャネル型分析装置に駆動手段を適用する場合、駆動手段は、注入部1、排出部10および10’の少なくとも1つに連結すればよい。
【0129】
このように、本実施形態に係る分析装置は、分析に供されるサンプル中の対象物質の濃度を正確に決定するためのものであり、本実施形態の構成を用いれば、分析に供されるサンプルを希釈することなく対象物質を測定することができる。
【0130】
〔実施の形態2〕
実施の形態1に係る分析装置の具体的な構成として、主流路であるマイクロチャネル2から単一のバイパスチャネル(マイクロチャネル2’)が分岐した構成が図1および図5に示されているが、バイパスチャネルの数は特に限定されない。各バイパスチャネルは異なる検出範囲を有するので、バイパスチャネルの数が増加すれば、分析装置の検出範囲を拡張することができる。
【0131】
このような実施の形態2に係るマイクロチャネル型分析装置としては、例えば、図6に示すような、3本のマイクロチャネルを有する分析装置が挙げられる。図6に示すように、この分析装置において、基板100の表面には、3つのマイクロチャネル2、2’、2’’が形成されている。マイクロチャネル2は注入部1と排出部10とを基板100の表面上にて接続している。マイクロチャネル2’および2’’は、マイクロチャネル2が注入部1と排出部10との間にて分岐しかつ再度合流するバイパスチャネルである。図6に示すように、マイクロチャネル2’および2’’は、マイクロチャネル2内の同一の分岐部から分岐し、同一の合流部にて合流している。
【0132】
マイクロチャネル2、2’および2’’内には、検出部5、5’および5’’が、それぞれ設けられている。検出部5、5’および5’には、同一の対象物質を捕捉する捕捉物質8および8’が固定化されている。マイクロチャネル2、2’および2’’内には、前処理部6、6’および6’’が、注入部1と、検出部5、5’および5’’との間に設けられている。これらの前処理部6、6’および6’’には、同一の対象物質を捕捉する捕捉物質3、3’および3’’が固定化されている。
【0133】
なお、図示していないが、本実施形態に係る分析装置は、マイクロチャネル2、2’および2’’内の流体の、注入部1から排出部10への流れ方向を規定したり、流体の流れを制御したりするためのバルブが各マイクロチャネル内に設けられていてもよい。
【0134】
また、図示していないが、本実施形態に係る分析装置において、マイクロチャネル2、2’および2’’内の流体の、注入部1から排出部10への移動を促進する駆動手段が、注入部および排出部の少なくとも一方に連結されていてもよい。
【0135】
上記実施の形態1における捕捉物質の調整方法の説明を適宜改変して、本実施の形態における捕捉物質の調整方法に適用することができる。なお、例えば、分析に供されるサンプル中の対象物質の濃度がa〜b(μg/mL)の濃度範囲に含まれている場合、検出部5における検出可能な濃度範囲がa〜b(μg/mL)となり、検出部5’における検出可能な濃度範囲がa〜b(μg/mL)となり、検出部5’’における検出可能な濃度範囲がa〜b(μg/mL)となるように、前処理部の固定化条件を選択すればよい(ただし、a≦a<a≦b<a≦b<b≦b)。なお、a=aでもよいが、a<aであることがより好ましい。a=bでもよいが、a<aであることがより好ましい。a=bでもよいが、a<bであることがより好ましい。a=bでもよいが、a<bであることがより好ましい。b=bでもよいが、b<bであることがより好ましい。
【0136】
このような濃度範囲を実現するには、例えば、同一の捕捉物質を用いて、前処理部6に固定化する捕捉物質の量が、前処理部6’に固定化する捕捉物質の量よりも少なく、前処理部6’に固定化する捕捉物質の量が、前処理部6’’に固定化する捕捉物質の量よりも少なくなるように、各前処理部に捕捉物質を固定化すればよい。すなわち、各前処理部上に配置された捕捉物質の量が、前処理部6の捕捉物質の量<前処理部6’の捕捉物質の量<前処理部6’’の捕捉物質の量となる。
【0137】
また、マイクロチャネルの数が3ではなく、nである場合、一本目のマイクロチャネルにおける検出部5における検出可能な濃度範囲がa〜b(μg/mL)となり、m本目のマイクロチャネルにおける検出部5における検出可能な濃度範囲がa〜b(μg/mL)となり、n本目の検出部5における検出可能な濃度範囲がa〜b(μg/mL)となるように、前処理部の固定化条件を選択すればよい(ただし、a≦a<a≦b<a≦b<b≦b)。
【0138】
このような濃度範囲を実現するには、例えば、同一の捕捉物質を用いて、一本目のマイクロチャネルにおける前処理部6に固定化する捕捉物質の量が、m本目のマイクロチャネルにおける前処理部6に固定化する捕捉物質の量よりも少なく、m本目のマイクロチャネルにおける前処理部6に固定化する捕捉物質の量が、n本目のマイクロチャネルにおける前処理部6に固定化する捕捉物質の量よりも少なくなるように、各前処理部に捕捉物質を固定化すればよい。すなわち、各前処理部上に配置された捕捉物質の量が、一本目のマイクロチャネルにおける前処理部6の捕捉物質の量<m本目のマイクロチャネルにおける前処理部6’の捕捉物質の量<n本目のマイクロチャネルにおける前処理部6’’の捕捉物質の量となる。
【0139】
なお、本実施の形態に係る分析装置における、基板、マイクロチャネル、注入部、排出部、前処理部、検出部、バルブ構造、駆動手段などの要部構成は、前述した実施の形態1と同じである。また、測定方法および測定結果についても、本明細書を読んだ当業者は、実施の形態1の構成を適宜改変して本実施形態に適用することができる。
【0140】
〔実施の形態3〕
図7に基づいて、本発明の実施の形態3について説明する。図7は、本発明の実施の形態3に係るマイクロチャネル型分析装置の平面図である。
【0141】
本実施形態にかかるマイクロチャネル型分析装置は、図7に示すように、基板100の表面上に形成された注入部1と排出部10とを接続するマイクロチャネル2および2’が、基板100の表面に形成されている。マイクロチャネル2’は、マイクロチャネル2が注入部1と排出部10との間にて分岐しかつ再度合流するバイパスチャネルである。マイクロチャネル2および2’には、検出部5および5’が設けられている。検出部5および5’には、捕捉物質8および8’がそれぞれ固定化されている。さらに、マイクロチャネル2’には、前処理部6’が注入部1と検出部10との間に設けられている。前処理部6’には、捕捉物質3’が固定化されている。
【0142】
このように、本実施形態の分析装置は、前処理部と検出部とが設けられたマイクロチャネルと、前処理部が設けられておらず、検出部が設けられたマイクロチャネルとを備えている。
【0143】
本実施形態の分析装置では、捕捉物質の調整方法を例えば以下のように実施すればよい。
【0144】
(1)検出可能な濃度範囲の確認
前処理部6’が設けられていない以外は本実施形態と同一の構成を有する分析装置Xにおいて、濃度が既知である対象物質(標準物質)を用いて、検出部5および5’における検出可能な濃度範囲を調べる。このような濃度範囲にて、検出部5および5’における対象物質の検出結果と対象物質の濃度とが直線性を有することが好ましい。このような操作によって、検出部5および5’に固定化する捕捉物質8および8’のモル量を決定することができる。
【0145】
(2)前処理部6’の条件検討
種々の濃度の捕捉物質(100、10、1、0.1、0.01μg/mL)を調製し、本実施形態の分析装置のマイクロチャネル2’の前処理部6’に固定化する。次いで、標準物質を用いて、検出部5’の濃度範囲を調べる。このような濃度範囲にて、検出部5’における対象物質の検出結果と対象物質の濃度とが直線性を有することが好ましい。
【0146】
(3)前処理部6’の条件決定
所望の測定範囲と近い条件を示す捕捉物質3’の濃度を、操作(2)の結果に基づいて選択する。具体的には、検出部5’における検出可能な濃度範囲が、操作(1)において確認した検出部5における検出可能な濃度範囲の少なくとも1部を含み、かつ検出部5における検出可能な濃度範囲が含まないより高濃度の範囲を含むように、前処理部6’に固定化する捕捉物質の濃度を選択する。選択した濃度付近の濃度の捕捉物質を用いて操作(2)を再度実行し、前処理部6’の固定化条件を決定する。
【0147】
例えば、分析に供されるサンプル中の対象物質の濃度がa〜b(μg/mL)の濃度範囲に含まれている場合、検出部5における検出可能な濃度範囲がx〜b’(μg/mL)となり、検出部5’における検出可能な濃度範囲がa’〜y(μg/mL)となるように、前処理部の固定化条件を選択する(ただし、x≦a<a’≦b’<b≦y)。なお、x=aでもよいが、x<aであることがより好ましい。a’=b’でもよいが、a’<b’であることがより好ましい。b=yでもよいが、b<yであることがより好ましい。また、x≪aの場合、前処理部6をマイクロチャネル2内に設け、検出部5における検出可能な濃度範囲をより高濃度側へ移動させてもよい。この場合、xがaを超えないような捕捉物質が固定化されている必要がある。
【0148】
また、図7の(b)に示すように、本実施形態に係る分析装置は、マイクロチャネル2および2’内の流体の、注入部1から排出部10への流れ方向を規定したり、流体の流れを制御したりするためのバルブが各マイクロチャネル内に設けられていてもよい。例えば、バルブ18が、注入部1と検出部5との間のマイクロチャネル2内に設けられていてもよいし、バルブ18’が、前処理部6’と検出部5’との間のマイクロチャネル2’内に設けられていてもよい。また、図示していないが、本実施形態に係る分析装置は、マイクロチャネル2および2’内の流体の、注入部1から排出部10への移動を促進する駆動手段が、注入部1および排出部10の少なくとも一方に連結されていてもよい。
【0149】
単一の排出部を、複数のマイクロチャネルが共有する構成が図7に示されているが、図8に示すように、複数のマイクロチャネルがそれぞれ独立した排出部と連結されていてもよい。すなわち、本実施形態にかかるマイクロチャネル型分析装置はまた、図8に示すように、基板100の表面上に形成された注入部1と排出部10とを接続するマイクロチャネル2、および注入部1と排出部10’とを接続するマイクロチャネル2’が、基板100の表面に形成されているものであってもよい。
【0150】
なお、本実施の形態に係る分析装置における、基板、マイクロチャネル、注入部、排出部、前処理部、検出部、バルブ構造、駆動手段などの要部構成は、前述した実施の形態1または2と同じである。また、捕捉物質の調製方法、測定方法および測定結果についても、本明細書を読んだ当業者は、実施の形態1または2の構成を適宜改変して本実施形態に適用することができる。
【0151】
〔実施の形態4〕
実施の形態3に係る分析装置の具体的な構成として、主流路であるマイクロチャネル2から単一のバイパスチャネル(マイクロチャネル2’)が分岐した構成が図7および図8に示されているが、バイパスチャネルの数は特に限定されない。各バイパスチャネルは異なる検出範囲を有するので、バイパスチャネルの数が増加すれば、分析装置の検出範囲を拡張することができる。
【0152】
このような実施の形態2に係るマイクロチャネル型分析装置としては、例えば、図9に示すような、3本のマイクロチャネルを有する分析装置が挙げられる。図9に示すように、この分析装置において、基板100の表面には、3つのマイクロチャネル2、2’、2’’が形成されている。マイクロチャネル2は注入部1と排出部10とを基板100の表面上にて接続している。マイクロチャネル2’および2’’は、マイクロチャネル2が注入部1と排出部10との間にて分岐しかつ再度合流するバイパスチャネルである。図9に示すように、マイクロチャネル2’および2’’は、マイクロチャネル2内の同一の分岐部から分岐し、同一の合流部にて合流している。
【0153】
マイクロチャネル2、2’および2’’内には、検出部5、5’および5’’が、それぞれ設けられている。検出部5、5’および5’には、捕捉物質8および8’が固定化されている。マイクロチャネル2’および2’’内には、前処理部6’および6’’が、注入部1と、検出部5’および5’’との間に設けられている。これらの前処理部6’および6’’には、捕捉物質3’および3’’が固定化されている。
【0154】
なお、図示していないが、本実施形態に係る分析装置は、マイクロチャネル2、2’および2’’内の流体の、注入部1から排出部10への流れ方向を規定したり、流体の流れを制御したりするためのバルブが各マイクロチャネル内に設けられていてもよい。
【0155】
また、図示していないが、本実施形態に係る分析装置において、マイクロチャネル2、2’および2’’内の流体の、注入部1から排出部10への移動を促進する駆動手段が、注入部および排出部の少なくとも一方に連結されていてもよい。
【0156】
なお、本実施の形態に係る分析装置における、基板、マイクロチャネル、注入部、排出部、前処理部、検出部、バルブ構造、駆動手段などの要部構成は、前述した実施の形態1と同じである。また、捕捉物質の調製方法、測定方法および測定結果についても、本明細書を読んだ当業者は、実施の形態1〜3の構成を適宜改変して本実施形態に適用することができる。
【0157】
以下実施例を示し、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0158】
(実施例1)
実施例1において、図10に示すマイクロチャネル型分析装置(マイクロチャネルチップ)を以下のとおりに作製した。すなわち、PDMS(POLYDIMETHYLSILOXANE、東レダウコーニング社)の基板100上に、マイクロチャネル2を形成した。このマイクロチャネル2の両端に連結するように、注入部1および排出部10を形成した。マイクロチャネル1内に、検出部5を設けた。注入部1と検出部5との間のマイクロチャネル1内に前処理部6を設けた。
【0159】
次いで、マイクロチャネル2’を基板100上に形成した。具体的には、マイクロチャネル2’が、注入部1と前処理部6との間の分岐部にてマイクロチャネル2から分岐し、検出部5と排出部10との間の合流部にてマイクロチャネル2に合流するように形成した。そして、分岐部と合流部との間のマイクロチャネル2’内に検出部5’を設けた。また、分岐部と検出部5’との間のマイクロチャネル2’内に前処理部6’を設けた。
【0160】
この基板100を貫く2つの貫通孔(図示しない。)をそれぞれ注入部1および排出部10と連絡させた。さらに、前処理部6および6’内に堰き止め部(図示しない)を設けた。
【0161】
作用電極、参照電極および対向電極から構成された検出電極(図示しない。)を、フォトリソグラフィ法を用いて検出部5および5’に作製した。具体的には、マイクロチャネル2および2’上にレジストパターンを形成し、チタン次いで金をスパッタリングすることによって金電極(作用電極、対向電極)を作製した。また、チタン次いで銀をスパッタリングし、さらに塩化処理をすることによって銀/塩化銀電極(参照電極)を作製した。
【0162】
マイクロチャネル2に関し、幅は600μmであり、長さは2000μmであり、深さは50μmであった。マイクロチャネル2’に関し、幅は600μmであり、長さは2000μmであり、深さは50μmであった。作用電極は、長さ200μm×幅600μmであった。対向電極は長さ200μm×幅600μmであった。参照電極は長さ50μm×幅50μmであった。
【0163】
次いで、10mMのチオールSAM溶液(11-Mercaptoundecanoic acid(同仁化学社):6-Hydroxy-1-hexanethiol(同仁化学社)=1:9)を用いて検出電極上の金の表面にカルボキシル基を導入した。その後、100mg/mLの1‐Ethyl‐3−[(3−dimethylamino)propyl]carbodiimide hydrochloride(EDC)と100mg/mLのN−Hydroxysulfosuccinimideとを用いてカルボキシル基を活性化させ、100ng/mLのアディポネクチン抗体(R&Dシステム社)の溶液をこのカルボキシル基と30分間反応させた。これにより、アディポネクチン抗体を検出電極上に固定化した。そして、未反応のアディポネクチン抗体を含む溶液を除去した。アディポネクチン抗体の固定化後に、マイクロチャネル2および2’が形成されたPDMSの基板に、蓋としての役割を果たすPDMSの基板(図示しない。)をマイクロチャネル2および2’が覆われるように張り合わせた。
【0164】
直径15μmの磁性微粒子と10μg/mLのアディポネクチン抗体(R&Dシステム社)とを混合し、37℃にて1時間インキュベートした。これにより、アディポネクチン抗体を磁性微粒子上に固定化した。この磁性微粒子を0.05%のツイーン20を含むPBSで十分に洗浄した。洗浄後の1%(w/v)の磁性微粒子を含む溶液5μLを、注入部1からマイクロチャネル2内に注入し、磁石を用いて前処理部6の位置まで運搬した。さらに、上記磁性微粒子を含む溶液50μLを、注入部1からマイクロチャネル2’内に注入し、磁石を用いて前処理部6’の位置まで運搬した。排出部10に吸引ポンプを連結し、吸引ポンプを用いて、この磁性微粒子を含む溶液をマイクロチャネル2および2’’内を移動させ、磁性微粒子を堰き止め部において堰き止めた。このようにして、磁性微粒子から形成された前処理部6および6’を作製した。
【0165】
さらに、非特異的な吸着の防止剤であるプロテインフリー(Thermo社)を用いてマイクロチャネル2および2’内のブロッキングを行った。
【0166】
以上のようにして、アディポネクチンを分析するためのマイクロチャネル型の分析装置を作成した。
【0167】
アディポネクチンの濃度が4.6μg/mL、10.8μg/mL、16.9μg/mL、23.0μg/mL、29.2μg/mL、29.6μg/mL、35.3μg/mL、35.8μg/mL、41.4μg/mL、41.9μg/mL、47.5μg/mL、48.0μg/mL、53.7μg/mL、54.2μg/mL、59.8μg/mL、60.3μg/mL、66.4μg/mL、72.5μg/mL、78.7μg/mL、または84.8μg/mLである標準アディポネクチン溶液を調製した。調製した標準アディポネクチン溶液を1種類づつ上述の分析装置にアプライして、標準アディポネクチン溶液中のアディポネクチンの検出を実施した。
【0168】
具体的には、以下のとおりに実施した。5μLの標準アディポネクチン溶液を注入部1からマイクロチャネル2および2’内に注入した。吸引ポンプを用いて検出部5および5’までこの溶液を移動させ、検出部5および5’上で3分間停止させた。これにより、この溶液中のアディポネクチンを検出部5および5’上のアディポネクチン抗体に結合させた。その後、吸引ポンプを用いて標準アディポネクチン溶液をマイクロチャネル2および2’から排出した。
【0169】
次いで、PBSを注入部1からマイクロチャネル2および2’内に注入し、マイクロチャネル2および2’内を十分に洗浄した。アルカリフォスファターゼ(ALP)ラベリングキット(同仁化学社)を用いて作製した1μg/mLのALP修飾アディポネクチン抗体を含む溶液を、注入部1からマイクロチャネル2および2’内に注入した。吸引ポンプを用いて、検出部5および5’までALP修飾アディポネクチン抗体を含む溶液を移動させ、検出部5および5’上で3分間停止させた。これにより、この溶液中のALP修飾アディポネクチン抗体を検出部5および5’上に捕捉されたアディポネクチンに結合させた。その後、吸引ポンプを用いて、未反応のALP修飾アディポネクチン抗体を含む溶液をマイクロチャネル2および2’から排出した。グリシンNaOHバッファー(pH9.0)を注入部1から注入し、マイクロチャネル2および2’内を十分に洗浄した。
【0170】
次いで、1mMのパラアミノフェニルリン酸の溶液を注入部1からマイクロチャネル2および2’内に注入し、吸引ポンプを用いて検出部5および5’まで移動させ、検出部5および5’上で3分間停止させた。これにより、パラアミノフェニルリン酸とALPとを反応させて電流を発生させた。発生した電流ピーク電流値(nA)を検出部5および5’によって検出した。
【0171】
図11に示すように、検出部5では、標準アディポネクチン溶液のアディポネクチンの濃度が4.6μg/mL、10.8μg/mL、16.9μg/mL、23.0μg/mL、29.2μg/mL、35.3μg/mL、41.4μg/mL、47.5μg/mL、53.7μg/mL、および59.8μg/mLであるとき、それぞれ144nA、189nA、227nA、264nA、312nA、336nA、355nA、364nA、358nA、および372nAの電流が検出された。検出部5’では、標準アディポネクチン溶液のアディポネクチンの濃度が29.6μg/mL、35.8μg/mL、41.9μg/mL、48.0μg/mL、54.2μg/mL、60.3μg/mL、66.4μg/mL、72.5μg/mL、78.7μg/mL、84.8μg/mLであるとき、それぞれ129nA、170nA、204nA、238nA、275nA、300nA、320nA、328nA、332nA、および330nAの電流が検出された。検出された電流の値から検量線を作製した。
【0172】
検量線のグラフを図11に示す。図11によれば、検出部5では、1〜35μg/mLの濃度のアディポネクチンを定量的に測定することができ、検出部5’では、30〜65μg/mLの濃度のアディポネクチンを定量的に測定することができる。つまり、検出部5のアディポネクチンの検量範囲が1〜35μg/mLであり、検出部5’のアディポネクチンの検量範囲が30〜65μg/mLである。よって、本実施例にて作製した分析装置のアディポネクチンの検量範囲は1〜65μg/mLである。例えば、サンプルに含まれるアディポネクチンの濃度が1〜65μg/mLであれば、どのようなサンプルであっても、このような分析装置を用いてアディポネクチンの濃度を測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明の分析装置を用いれば、希釈操作を実施すること無く微量なサンプルの濃度を測定することができる。このため、本発明は、微小な化学物質などの検出に用いる化学マイクロデバイス(例えば、マイクロチャネルチップおよびマイクロリアクター)、およびバイオセンサー(例えば、アレルゲンセンサー)などの、μ−TAS技術を用いたマイクロチャネルチップを利用する分野に適用することができる。
【符号の説明】
【0174】
1 注入部
2 マイクロチャネル
3 捕捉物質
4 空気穴
5 検出部
6 前処理部
6a 柱状構造物
6b 微粒子
8 捕捉物質
9 堰止め部
10 排出部
18 バルブ
100 基板
101 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入すべき流体を受容する注入部と流体を排出する排出部とに連結している、複数の第1の微小流路を備え、
複数の第1の微小流路は、単一の注入部に連結されており、
複数の第1の微小流路の各々には、該注入部と該排出部との間に、第1の検出部が設けられており、かつ、該注入部と第1の検出部との間に、流体中の物質の濃度を低減させる第1の前処理部がさらに設けられており、
第1の検出部には、検出すべき物質を捕捉する捕捉物質が配置されており、
第1の前処理部には、低減すべき物質を捕捉する捕捉物質が配置されており、
複数の第1の微小流路における第1の検出部において検出すべき物質が同一であり、
複数の第1の微小流路における第1の検出部では、それぞれ異なる濃度範囲にて物質が検出される
ことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
複数の第1の微小流路における第1の前処理部では、配置されている捕捉物質の量がそれぞれ異なっている、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
複数の第1の微小流路における第1の検出部の検出感度が同一である、請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
複数の第1の微小流路が、単一の排出部に連結されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項5】
第1の微小流路の各々が、第1の検出部と排出部との間で合流する、請求項4に記載の分析装置。
【請求項6】
注入すべき流体を受容する注入部と流体を排出する排出部に連結している、第1および第2の微小流路を備え、
第1および第2の微小流路は、単一の注入部に連結されており、
第1および第2の微小流路には、それぞれ第1および第2の検出部が設けられており、
第1の微小流路には、注入部と第1の検出部との間に、流体中の物質の濃度を低減させる第1の前処理部がさらに設けられており、
第1の検出部には、検出すべき物質を捕捉する第1の捕捉物質が配置されており、
第2の検出部には、検出すべき物質を捕捉する第2の捕捉物質が配置されており、
第1の前処理部には、低減すべき物質を捕捉する捕捉物質が配置されており、
第1および第2の検出部において検出すべき物質が同一であり、
第1および第2の検出部では、それぞれ異なる濃度範囲にて物質が検出される
ことを特徴とする分析装置。
【請求項7】
第1および第2の検出部の検出感度が同一である、請求項6に記載の分析装置。
【請求項8】
第1の微小流路が複数存在し、複数の第1の微小流路における第1の検出部では、それぞれ異なる濃度範囲にて物質が検出される、請求項6または7に記載の分析装置。
【請求項9】
複数の第1の微小流路における第1の前処理部では、配置されている捕捉物質の量がそれぞれ異なっている、請求項8に記載の分析装置。
【請求項10】
複数の第1の微小流路における第1の検出部の検出感度が同一である、請求項8に記載の分析装置。
【請求項11】
第1および第2の微小流路が、単一の排出部に連結されている、請求項6〜10のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項12】
第1のおよび第2の微小流路が、検出部と排出部との間で合流する、請求項11に記載の分析装置。
【請求項13】
各検出部に配置された前記捕捉物質は、同一の物質でありかつ同一の条件で配置されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項14】
各微小流路の内部にバルブ構造が設けられていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項15】
対応する検出部と前処理部の間に、前記バルブ構造が設けられている、請求項14に記載の分析装置。
【請求項16】
前記前処理部にさらなる検出手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項17】
前記検出手段が作用極並びに参照電極からなるものであることを特徴とする請求項16に記載の分析装置。
【請求項18】
前記前処理部が透過性の材料からなることを特徴とする1〜17のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項19】
対応する注入部と検出部の間に、対応する前処理部が複数設けられていることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項20】
各微小流路の少なくとも1つが、対応する注入部と検出部との間にて分岐しかつ再度合流する構成を有しており、形成されている複数の分岐の各々に、対応する前処理部が設けられていることを特徴とする請求項19に記載の分析装置。
【請求項21】
各前処理部の少なくとも1つが三次元の構造体を備えていることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項22】
前記構造体が、前記前処理部の壁面から伸びる柱状の構造体であることを特徴とする請求項21記載の分析装置。
【請求項23】
前記構造体が多孔質の構造体であることを特徴とする請求項21に記載の分析装置。
【請求項24】
前記構造体が複数の粒子状の構造体であることを特徴とする請求項21に記載の分析装置。
【請求項25】
前記検出すべき物質を捕捉する捕捉物質が、該検出すべき物質に対する抗体であることを特徴とする請求項1〜24のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項26】
前記低減すべき物質を捕捉する捕捉物質が、該低減すべき物質に対する抗体であることを特徴とする請求項1〜25のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項27】
前記検出部に作用電極および参照電極からなる検出手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜26のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項28】
前記検出部が透過性の材料からなることを特徴とする請求項1〜27のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項29】
前記検出すべき物質が血液成分であることを特徴とする請求項1〜28のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項30】
前記血液成分が、血漿タンパク、リポタンパク、分泌タンパク、ホルモン、補体または糖であることを特徴とする請求項29に記載の分析装置。
【請求項31】
請求項1〜30のいずれか1項に記載の分析装置を用いて、分析に供されるサンプルを希釈することなくサンプル中の対象物質の濃度を定量的に測定することを特徴とする分析方法。
【請求項32】
各検出部にて検出した物質の濃度と、各検出部における検出可能な濃度範囲とに基づいて、物質の濃度を決定することを特徴とする請求項31に記載の分析方法。
【請求項33】
各検出部にて検出した物質の濃度と、各検出部における検出可能な濃度範囲とに基づいて、分析エラーの有無を判定することを特徴とする請求項31または32に記載の分析方法。
【請求項34】
各前処理部において対象物質が捕捉されているか否か測定することを特徴とする請求項31〜33のいずれか1項に記載の分析方法。
【請求項35】
前記前処理部において対象物質が一定量捕捉されていない場合、分析エラーと判定することを特徴とする請求項34に記載の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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