説明

分析装置

【課題】空気の影響を除いて蛍光Fの分析精度を向上でき、排気の時間を短くできる分析装置を提供する。
【解決手段】パルスレーザ光Lを分析対象物12に照射し、パレスレーザ光Lの照射にて分析対象物12から放出される蛍光Fを蛍光伝送用光ファイバ15で伝送する。光学系ユニット13の先端に気密ポット36を設ける。分析対象物12から放出される蛍光Fが蛍光伝送用光ファイバ15に入射するまでの気密ポット36から光学系ユニット13の内部の領域の空気を排気し、空気の影響を除く。空気を排気する体積が気密ポット36および光学系ユニット13の内部だけで少ないため、排気の時間が短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光の照射によって発生するプラズマから得られる蛍光に基づいて元素を定量する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光を分析対象物に照射し、レーザ光の照射によって発生した蛍光を定量することにより、分析対象物の元素を分析でき、しかも、元素分析に前処理が不要で、分析時間も100msec程度と短時間のためにリアルタイムで分析できる分析装置が知られている。
【0003】
この分析装置では、レーザ光をレーザ光集光光学系で集光して分析対象物の表面に照射することにより、分析対象物の表面の元素をプラズマ化させる。このプラズマはレーザ光の照射終了とともに再結合を始め、数μ秒ないし数十μ秒の間は分析対象物の構成元素が励起状態の原子となり、この励起状態の原子が下準位に遷移するときに、原子特有の波長で原子数に比例した量の蛍光を放出する。そして、分析対象物から放出された蛍光の一部をレーザ光集光光学系の横方向から蛍光集光光学系によって集光し、その蛍光を蛍光測定器によりスペクトル分光分析し、蛍光を放出した物質に含まれる元素を分析する。
【0004】
また、レーザ光は、波長200nm以上の赤外光または可視光であれば、空気中での減衰が少なく、複数枚のミラーを用いるミラー伝送などの空気中での伝送が可能である。
【0005】
しかし、蛍光は、元素によって測定する蛍光波長が異なり、特に、金属中の炭素、硫黄等を測定する場合は波長200nm以下の紫外光を測定する必要がある場合があり、この場合、空気中での減衰が著しく、蛍光の分析が困難になる。
【0006】
そこで、分析対象物から蛍光測定器(分光器)までの蛍光の光路をチャンバで覆うとともに蛍光測定器の周囲をチャンバで覆い、これらチャンバ内を真空ポンプで排気したりチャンバ内にガスを充填して空気と置換することにより、蛍光の光路中の空気を排除し、蛍光の分析を可能としている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−206330号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のように、分析対象物から蛍光測定器までの蛍光の光路および蛍光測定器の周囲を含めて広い範囲をチャンバで覆う構造では、分析装置が大形になる問題がある。しかも、チャンバが大形であるため、チャンバ内を排気する場合には、排気時間がかかり、また、ガス置換の場合には、使用するガス量が多く、ガスと空気との置換に時間がかかる問題がある。
【0008】
また、分析対象物から蛍光測定器までの蛍光の光路および蛍光測定器の周囲を含めて広い範囲をチャンバで覆う構造であるため、分析対象物の形状、状態に制限を生じ、分析の自由度が低下する問題がある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、空気の影響を除いて蛍光の分析精度を向上でき、そのうえで、小形にでき、排気またはガス置換に時間がかからず、分析の自由度も高い分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、レーザ光を透過するとともにこのレーザ光の分析対象物への照射にて放出される蛍光を反射する分配手段、およびこの分配手段を透過したレーザ光を集光して前記分析対象物に照射させるとともにこの分析対象物からの前記蛍光を集光して前記分配手段に導光させる集光手段を有する光学系ユニットと、前記光学系ユニットに一端が接続され、前記分配手段で反射された蛍光を入射して伝送する蛍光伝送用光ファイバと、前記光学系ユニットの先端に設けられ、少なくとも前記分析対象物から前記集光手段までの領域を排気状態およびガス置換状態のいずれか一方に保つ気密カバーと、前記蛍光伝送用光ファイバの他端に伝送される蛍光に基づいて前記分析対象物に含まれている元素を定量する分析手段とを具備しているものである。
【0011】
また、本発明は、レーザ光を集光して分析対象物に照射するレーザ光集光手段、および前記レーザ光の照射によって分析対象物から放出される蛍光を集光する蛍光集光手段を有する光学系ユニットと、前記光学系ユニットに一端が接続され、前記蛍光集光手段で集光された蛍光を入射して伝送する蛍光伝送用光ファイバと、前記光学系ユニットの先端に設けられ、少なくとも前記分析対象物から前記蛍光集光手段までの領域を排気状態およびガス置換状態のいずれか一方に保つ気密カバーと、前記蛍光伝送用光ファイバの他端に伝送される蛍光に基づいて前記分析対象物に含まれている元素を定量する分析手段とを具備しているものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学系ユニットの集光手段で集光されて分配手段で反射された蛍光を蛍光伝送用光ファイバによって伝送する構造であるとともに、この光学系ユニットの先端には少なくとも分析対象物から集光手段までの領域を排気状態またはガス置換状態に保つ気密カバーを設けた構造であるため、空気の影響を除いて蛍光の分析精度を向上でき、そのうえで、光学系ユニットを小形にでき、排気またはガス置換には時間がかからず、分析の自由度も高くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1および図2に第1の実施の形態を示す。
【0015】
図2に示すように、分析装置11は、分析対象物12に対して光学系ユニット13からレーザ光としてのパルスレーザ光Lを照射し、この分析対象物12の表面がプラズマ化して発生する蛍光F(図1参照)を同一の光学系ユニット13で集光し、この蛍光Fの波長および強度から分析対象物12に含有する元素を定量する。
【0016】
分析装置11には、例えばYAG(Yttrium・Aluminium・Garnet:イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザ光であるパルスレーザ光Lを発振させるレーザ発振器としてのYAGレーザ発振器14を備えている。このYAGレーザ発振器14は、図示しない制御手段としての主制御装置により所定のタイミングで発生する駆動パルスに基づいて、所定パルス幅のパルスレーザ光Lを出力する。
【0017】
YAGレーザ発振器14が発信したパルスレーザ光Lは、例えば、複数枚のミラーを用いてパルスレーザ光Lを伝送するミラー伝送手段や、パルスレーザ光Lを入射して伝送するレーザ光伝送用光ファイバを用いて、光学系ユニット13に伝送される。
【0018】
光学系ユニット13には、光学系ユニット13で集光した蛍光Fを入射して伝送する蛍光伝送用光ファイバ15の一端が接続されている。
【0019】
蛍光伝送用光ファイバ15の他端は、この蛍光伝送用光ファイバ15で伝送される蛍光Fに基づいて分析対象物12に含まれている元素を定量する分析手段16が接続されている。この分析手段16は、蛍光伝送用光ファイバ15で伝送される蛍光Fを分光して全ての波長と強度を測定する蛍光測定器17、およびこの蛍光測定器17で測定された測定値から分析対象物12に含まれている元素とその量を割り出す計算機18が接続されている。この計算機18には分析結果などを表示する表示装置19が接続されている。蛍光測定器17と計算機18とは、図示しないタイミング調整機構により各動作タイミングが制御される。
【0020】
また、図1に示すように、光学系ユニット13は、円筒状の本体筒部21、およびこの本体筒部21の側部から突出する蛍光導光筒部22が設けられたケース23を有している。本体筒部21はパルスレーザ光Lの光軸を軸線とし、蛍光導光筒部22はパルスレーザ光Lの光軸に対して交差する方向であって具体的には直交する方向を軸線とし、これら本体筒部21と蛍光導光筒部22とが連通されている。
【0021】
本体筒部21の一端である基端から本体筒部21の内部にパルスレーザ光Lが伝送される。このパルスレーザ光Lの光軸と本体筒部21の軸線とは同一とされている。
【0022】
本体筒部21の内部には、パルスレーザ光Lの光路上で蛍光導光筒部22に臨む位置に、パルスレーザ光Lを本体筒部21の他端である先端へ向けて透過するとともに本体筒部21の先端側から集光されてくる蛍光Fを蛍光導光筒部22に向けて反射する分配手段としての分配反射ミラー24が配置されている。この分配反射ミラー24は、平板状に形成され、パルスレーザ光Lの光軸に対して例えば45゜の角度で傾斜する状態で配設されており、本体筒部21の先端に臨む面に可視光および紫外光を含む蛍光Fを蛍光導光筒部22に向けて反射する蛍光反射面25が形成されている。分配反射ミラー24の周縁部は本体筒部21の内周面に対して環状のパッキング26により気密に取り付けられ、これら分配反射ミラー24およびパッキング26によって本体筒部21の基端側の開口を気密に閉塞している。
【0023】
本体筒部21内には、分配反射ミラー24を透過したパルスレーザ光Lを集光して分析対象物12に照射させるとともに、分析対象物12の表面に含まれている原子から放出される蛍光Fを集光して分配反射ミラー24に導光させる集光手段27が配置されている。この集光手段27は、本体筒部21の先端寄りで、分配反射ミラー24を透過したパルスレーザ光Lの光軸上に配置され、パルスレーザ光Lを集光させてから分析対象物12へと照射させるレーザ光集光手段としてのレーザ光集光光学系である集光レンズ群28を備えている。この集光レンズ群28は、レーザ光入射面が平坦でレーザ光出射面が凸弧面状に突出した凸レンズである第1のレンズ29、レーザ光入射面が凸弧面状に突出しレーザ光出射面が凹弧面状に凹んだ凹レンズである第2のレンズ30、レーザ光入射面およびレーザ光出射面のそれぞれが凸弧面状に突出した凸レンズである第3のレンズ31、およびレーザ光入射面が凸弧面状に突出しレーザ光出射面が平坦な凸レンズである第4のレンズ32を有している。
【0024】
集光レンズ群28は、分析対象物12へのパルスレーザ光Lの照射にて放出される蛍光Fが入射され、この蛍光Fを集光してから分配反射ミラー24の蛍光反射面25に導光して蛍光導光筒部22へと反射させる。したがって、この集光レンズ群28は、パルスレーザ光Lが照射された分析対象物12の表面に含まれている原子から放出される蛍光Fを集光する蛍光集光手段としての蛍光集光光学系でもある。
【0025】
本体筒部21内の集光レンズ群28より先端側には、パルスレーザ光Lおよび蛍光Fが透過する透過窓33が配置されている。
【0026】
また、蛍光導光筒部22の先端には蛍光伝送用光ファイバ15の一端が接続され、この蛍光伝送用光ファイバ15の一端の蛍光入射面15aが蛍光導光筒部22の軸線である蛍光Fの光軸の位置に対応して配置されている。蛍光伝送用光ファイバ15は蛍光導光筒部22の内周面に対して環状のパッキング34により気密に取り付けられ、これら蛍光伝送用光ファイバ15およびパッキング34によって蛍光導光筒部22の先端側の開口を気密に閉塞している。蛍光導光筒部22内には、分配反射ミラー24の蛍光反射面25で反射して蛍光導光筒部22内へと導光された蛍光Fを集光して蛍光伝送用光ファイバ15の蛍光入射面15aに導光させる導光手段としての蛍光集光レンズ35が配置されている。
【0027】
また、分析対象物12に対してパルスレーザ光Lを照射および蛍光Fを取り入れる光学系ユニット13の先端であって本体筒部21の先端には、分析対象物12から集光手段27までの領域を気密に保つための円筒状の気密カバーとしての気密ポット36が設けられている。この気密ポット36は、本体筒部21に一体に形成され、先端面37にはパルスレーザ光Lを分析対象物12に照射する開口部38が形成され、この開口部38の周囲に分析対象物12に気密に密着可能とする環状のパッキング39が取り付けられている。
【0028】
気密ポット36の周面には気密ポット36内に連通する配管40が突設され、この配管40には図示しない真空ポンプとの間に排気チューブなどの可撓性を有する排気管が接続されている。
【0029】
気密ポット36の内部と、本体筒部21の基端および蛍光導光筒部22の先端がそれぞれ閉塞された光学系ユニット13の内部とは連通されている。すなわち、分析対象物12から放出された蛍光Fが蛍光伝送用光ファイバ15の一端の蛍光入射面15aに入射するまでの気密ポット36から光学系ユニット13の内部の領域は連通され、同一の気密環境となっている。
【0030】
次に、第1の実施の形態の分析装置11による分析対象物12の元素を分析する検査手法について説明する。
【0031】
分析対象物12の表面と光学系ユニット13の気密ポット36のパッキング39とを密着させ、真空ポンプの作動により配管40を通じて気密ポット36および光学系ユニット13の内部を4kPa以下まで真空排気する。4kPaより高いと、気密ポット36および光学系ユニット13の内部に残る空気によって蛍光Fが減衰する影響が発生する。
【0032】
YAGレーザ発振器14によりパルスレーザ光Lを出力する。出力したパルスレーザ光Lは、光学系ユニット13へと伝送される。
【0033】
光学系ユニット13へと伝送されたパルスレーザ光Lは、分配反射ミラー24を透過し、集光レンズ群28で集光されて分析対象物12の表面に照射される。
【0034】
パルスレーザ光Lの照射により分析対象物12の表面は高温度に瞬時に加熱されてプラズマ化され、分析対象物12の表面からプラズマが発生する。
【0035】
その後、YAGレーザ発振器14からのパルスレーザ光Lの照射を停止させる。
【0036】
パルスレーザ光Lの照射停止とともに、分析対象物12の表面で発生したプラズマが再結合を始め、数μ秒ないし数十μ秒の間は分析対象物12中の元素は励起状態のまま原子となる。そして、この励起状態の原子が下準位に遷移するとき、原子は原子数に比例した蛍光Fを放出する。
【0037】
放出された蛍光Fは、集光レンズ群28に入射し、この集光レンズ群28で集光してから分配反射ミラー24の蛍光反射面25で反射させて蛍光導光筒部22内へと導光する。蛍光導光筒部22内へと導光された蛍光Fは、蛍光集光レンズ35で集光して蛍光伝送用光ファイバ15の蛍光入射面15aに導光させる。このとき、気密ポット36および光学系ユニット13の内部は排気状態にあるため、蛍光Fは空気の影響によって減衰することなく蛍光伝送用光ファイバ15に入射する。
【0038】
蛍光伝送用光ファイバ15により導光された蛍光Fを蛍光測定器17内に伝送し、蛍光測定器17で蛍光Fを分光して全ての波長と強度を測定し、この蛍光測定器17で測定された測定値から計算機18により分析対象物12に含まれている元素とその量を割り出し、分析結果などを表示装置19で表示する。
【0039】
ところで、プラズマからの蛍光Fは、元素によって測定する蛍光波長が異なり、例えば、図4には真空中の炭素の蛍光波長と強度分布とのグラフを、図5には真空中の硫黄の蛍光波長と強度分布とのグラフをそれぞれ示すように、波長が200nm以下の紫外光を測定する必要がある場合がある。しかし、図3にアルゴン(Ar)ガス雰囲気を基準とした空気(Air)雰囲気および窒素(N2)雰囲気における波長と伝送率とのグラフを示すように、空気雰囲気では波長が200nm以下の蛍光Fの伝送が著しく減衰し、蛍光Fの測定を困難にする。
【0040】
そこで、光学系ユニット13の先端に気密ポット36を設け、分析対象物12から放出された蛍光Fが蛍光伝送用光ファイバ15の一端の蛍光入射面15aに入射するまでの気密ポット36から光学系ユニット13の内部の領域を真空排気することにより、空気の影響を除いて蛍光Fの減衰を低減でき、蛍光Fの分析精度を向上できる。
【0041】
しかも、光学系ユニット13から蛍光Fを蛍光伝送用光ファイバ15によって分析手段16の蛍光測定器17に伝送する構造であるため、分析の自由度も高くできるうえに、光学系ユニット13を小形にでき、真空排気する体積が気密ポット36および光学系ユニット13の内部だけで少なく、真空排気に時間がかからず、分析を迅速にできる。
【0042】
また、集光手段27の集光レンズ群28により、分配反射ミラー24を透過したパルスレーザ光Lを集光して分析対象物12に照射するとともに、パルスレーザ光Lの照射によって分析対象物12の表面に含まれている原子から放出される蛍光Fを集光して分配反射ミラー24に導光して蛍光伝送用光ファイバ15に伝送することができるので、例えば分析対象物12から放出された蛍光をレーザ光集光光学系の横方向から蛍光集光光学系によって集光する場合に比べて、分析対象物12の形状の影響による感度低下が少なく、分析精度を向上できる。
【0043】
さらに、パルスレーザ光Lと蛍光Fとの集光で集光レンズ群28を共用することにより光学系ユニット13を一体化できて小形化でき、しかも、パルスレーザ光Lの集光点位置を調整することにより、蛍光Fの集光調整も自動的にでき、分析時の調整を容易にできる。
【0044】
次に、図6に第2の実施の形態を示す。
【0045】
気密ポット36は、例えば、パッキングの機能を有するゴム製で、光学系ユニット13とは別体に形成されており、光学系ユニット13の本体筒部21の先端に取り付けられる取付部51を備えている。
【0046】
本体筒部21の集光手段27および透過窓33より先端側の側部には本体筒部21の内側を通じて気密ポット36内に連通する配管52が突設され、この配管52には気密ポット36内などに例えばアルゴンガスや窒素ガスなどのガスを導入して空気と置換するガス導入手段が接続される。
【0047】
この場合も、気密ポット36の内部と、本体筒部21の基端および蛍光導光筒部22の先端がそれぞれ閉塞された光学系ユニット13の内部とは連通されている。したがって、分析対象物12から放出された蛍光Fが蛍光伝送用光ファイバ15の一端の蛍光入射面15aに入射するまでの気密ポット36から光学系ユニット13の内部の領域は連通され、同一の気密環境となっている。
【0048】
そして、検査時には、分析対象物12の表面と気密ポット36の先端とを密着させ、ガス導入手段から配管52を通じて気密ポット36および光学系ユニット13の内部にガスを導入し、気密ポット36および光学系ユニット13の内部の空気が50%以下になるようにガス置換する。気密ポット36および光学系ユニット13の内部の空気が50%より多いと、その空気によって蛍光Fが減衰する影響が大きい。
【0049】
このように、気密ポット36および光学系ユニット13の内部をガス置換した場合も、上述した第1の実施の形態のように真空排気した場合と同様の作用効果が得られる。特に、ガスを導入する体積が気密ポット36および光学系ユニット13の内部だけで少なく、ガスの使用量を低減でき、ガス置換に時間がかからず、分析を迅速にできる。
【0050】
なお、配管52は、気密ポット36に設けてもよい。また、気密ポット36は、光学系ユニット13の本体筒部21と一体に設けてもよく、この場合には、分析対象物12に密着するパッキング39を気密ポット36に設けることが好ましい。
【0051】
次に、図7は第3の実施の形態を示す。
【0052】
分配反射ミラー24にパルスレーザ光Lが通過可能とする最小限の大きさの貫通孔55を形成し、分配反射ミラー24の透過によるパルスレーザ光Lへの影響を低減できる。
【0053】
この場合、光学系ユニット13の本体筒部21の基端側に別の気密構造を設ける。
【0054】
次に、図8は第4の実施の形態を示す。
【0055】
光学系ユニット13は、パルスレーザ光Lを集光して分析対象物12に照射するレーザ光集光手段61と、パルスレーザ光Lの照射によって分析対象物12から放出される蛍光Fを集光する蛍光集光手段62とを個別に備えている。
【0056】
本体筒部21の先端に対して蛍光導光筒部22が斜め方向に接続され、本体筒部21にレーザ光集光手段61が配置され、蛍光導光筒部22に蛍光集光手段62が配置されている。これら本体筒部21および蛍光導光筒部22の接続部分に、分析対象物12から蛍光集光手段62までの領域を気密に保つための気密ポット36が一体に形成されている。
【0057】
レーザ光集光手段61は、パルスレーザ光Lを集光して分析対象物12に照射する複数のレーザ光集光レンズ63,64を備えている。本体筒部21内のレーザ光集光レンズ63,64より先端側である気密ポット36側には、パルスレーザ光Lが透過する透過窓66が配置されている。本体筒部21の基端側には気密を保つための気密構造が設けられている。
【0058】
蛍光集光手段62は、蛍光Fを集光して蛍光伝送用光ファイバ15の蛍光入射面15aに導光させる蛍光集光レンズ65を備えている。蛍光導光筒部22内の蛍光集光レンズ65より気密ポット36側には、蛍光Fが透過する透過窓66が配置されている。蛍光導光筒部22の先端には蛍光伝送用光ファイバ15が環状のパッキング34により気密に取り付けられ、これら蛍光伝送用光ファイバ15およびパッキング34によって蛍光導光筒部22の先端側の開口を気密に閉塞している。
【0059】
気密ポット36の先端面37にはパルスレーザ光Lを分析対象物12に照射する開口部38が形成され、この開口部38の周囲に分析対象物12に気密に密着可能とする環状のパッキング39が取り付けられている。気密ポット36の周面には気密ポット36内に連通する配管40が突設され、この配管40に気密ポット36内に例えばアルゴンガスや窒素ガスなどのガスを導入して空気と置換するガス導入手段が接続される。
【0060】
そして、検査時には、分析対象物12の表面と気密ポット36のパッキング39とを密着させ、ガス導入手段から配管40を通じて気密ポット36および光学系ユニット13の内部にガスを導入し、気密ポット36および光学系ユニット13の内部の空気が50%以下になるようにガス置換する。気密ポット36および光学系ユニット13の内部の空気が50%より多いと、その空気によって蛍光Fが減衰する影響が大きい。
【0061】
このように、気密ポット36および光学系ユニット13の内部をガス置換した場合も、上述した第1の実施の形態のように真空排気した場合と同様の作用効果が得られる。特に、ガスを導入する体積が気密ポット36および光学系ユニット13の内部だけで少なく、ガスの使用量を低減でき、ガス置換に時間がかからず、分析を迅速にできる。
【0062】
なお、前記各実施の形態では、気密ポット36の内部と光学系ユニット13の内部とを連通したが、気密ポット36の内部である分析対象物12から集光手段27または蛍光集光手段62までの領域と光学系ユニット13の内部とを隔離し、光学系ユニット13の内部における蛍光Fの光路は光学系ユニット13の内部で真空排気またはガス置換してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す分析装置の光学系ユニットの断面図である。
【図2】同上分析装置の構成図である。
【図3】アルゴンガス雰囲気を基準とした空気雰囲気および窒素雰囲気における波長と伝送率とのグラフである。
【図4】真空中の炭素の蛍光波長と強度分布とのグラフである。
【図5】真空中の硫黄の蛍光波長と強度分布とのグラフである。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す分析装置の光学系ユニットの断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態を示す分析装置の光学系ユニットの断面図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態を示す分析装置の光学系ユニットの断面図である。
【符号の説明】
【0064】
11 分析装置
12 分析対象物
13 光学系ユニット
15 蛍光伝送用光ファイバ
16 分析手段
24 分配手段としての分配反射ミラー
27 集光手段
36 気密カバーとしての気密ポット
38 開口部
39 パッキング
61 レーザ光集光手段
62 蛍光集光手段
F 蛍光
L レーザ光としてのパルスレーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を透過するとともにこのレーザ光の分析対象物への照射にて放出される蛍光を反射する分配手段、およびこの分配手段を透過したレーザ光を集光して前記分析対象物に照射させるとともにこの分析対象物からの前記蛍光を集光して前記分配手段に導光させる集光手段を有する光学系ユニットと、
前記光学系ユニットに一端が接続され、前記分配手段で反射された蛍光を入射して伝送する蛍光伝送用光ファイバと、
前記光学系ユニットの先端に設けられ、少なくとも前記分析対象物から前記集光手段までの領域を排気状態およびガス置換状態のいずれか一方に保つ気密カバーと、
前記蛍光伝送用光ファイバの他端に伝送される蛍光に基づいて前記分析対象物に含まれている元素を定量する分析手段と
を具備していることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
レーザ光を集光して分析対象物に照射するレーザ光集光手段、および前記レーザ光の照射によって分析対象物から放出される蛍光を集光する蛍光集光手段を有する光学系ユニットと、
前記光学系ユニットに一端が接続され、前記蛍光集光手段で集光された蛍光を入射して伝送する蛍光伝送用光ファイバと、
前記光学系ユニットの先端に設けられ、少なくとも前記分析対象物から前記蛍光集光手段までの領域を排気状態およびガス置換状態のいずれか一方に保つ気密カバーと、
前記蛍光伝送用光ファイバの他端に伝送される蛍光に基づいて前記分析対象物に含まれている元素を定量する分析手段と
を具備していることを特徴とする分析装置。
【請求項3】
分析対象物から放出された蛍光が蛍光伝送用光ファイバの一端に入射するまでの気密カバーから光学系ユニットの内部の領域が排気状態およびガス置換状態のいずれか一方に保たれる
ことを特徴とする請求項1または2記載の分析装置。
【請求項4】
気密カバーは、分析対象物にレーザ光を照射する開口部、およびこの開口部の周囲で分析対象物に密着するパッキングを備えている
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の分析装置。
【請求項5】
気密カバー内を排気状態とするときには4kPa以下に排気される
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の分析装置。
【請求項6】
気密カバー内をガス置換状態とするときには空気が50%以下にガス置換される
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−147305(P2007−147305A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338334(P2005−338334)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)
【Fターム(参考)】