説明

分析装置

【課題】分析用デバイスの回転停止位置を大まかに制御した場合であっても、分析用デバイスの開封ボタンを確実に操作できる分析装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ロータ(103)の停止位置に対応して固定側に配置された操作体(60)とを備え、操作体(60)の周方向の大きさが分析用デバイス開封ボタン(6)よりも大きいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物などから採取した液体の分析に使用する分析用デバイスを使用する分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生物などから採取した液体を分析する方法として、液体流路を形成した分析用デバイスを用いて分析する方法が知られている。分析用デバイスは、回転装置を使って流体の制御をすることが可能であり、遠心力を利用して溶液の計量、固体成分の分離、分離された流体の移送分配、溶液と試薬の混合等を行うことができるため、種々の生物化学的な分析を行うことが可能である。
【0003】
遠心力を利用して溶液を移送する従来の分析用デバイス246は、図10に示すように、入口ポート250を有する試料室248と、試料室248に隣接して形成された希釈剤室252と、試料室248および希釈剤室252の両者の半径方向外方に配置されている混合室254と、混合室254で混合された溶液をこの混合室254の溶液に接する位置に接続されている流れ制限通路262を介して受け取る分離室260を有している。分析室268は分離室260に接続された流路266に接続されている。
【0004】
移送動作は、試験される試料が入口ポート250を介して試料室248に導入され、試料を希釈する希釈剤が希釈室252に導入された後で、試料および希釈剤の両者は分析用デバイス246の回転によって混合室254内に移送される。ここで、混合室254に移送された試料および希釈剤は、毛細管通路としての流れ制限通路262によって分離室260に直ちに移送されることが阻止されており、試料および希釈剤が混合室254にある間に、分析用デバイス246を逆に回転させるか、またこれと異なり、同じ方向の回転速度を加速し、また減速することによって試料および希釈剤が混合される。
【特許文献1】特許3061414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、混合室254内で回転の逆転や回転速度の加減速などによる試料と希釈剤の攪拌を行った際に、流れ制限通路262を介して分離室260へ攪拌不足の溶液が流出するため、完全な攪拌ができていないまま分析が行われてしまい、分析結果がばらついてしまうという課題を有している。
【0006】
しかしながら、分析用デバイス246の使用に際しては、入口ポート250を介して試料室248への試料の導入と、希釈室252に希釈剤を導入することが必要である。
また、分析用デバイス246に希釈剤を予めセットした状態で供給しておき、分析に際して前記希釈剤が混合室254に流れ出すように開封ボタンを自動操作するように設計したとしても、分析用デバイス246に設けられた前記開封ボタンを操作する操作体と、分析用デバイス246との関係は、前記開封ボタンを前記操作体が自動操作するためには、分析用デバイス246の回転停止位置を正確に制御できるように、正確な停止位置検出センサを備えることが必要である。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、分析用デバイスを回転駆動する駆動源としてブラシレスモータを使用した場合に、ブラシレスモータの回転磁界を切り換えるように内蔵している磁気センサの検出出力を使用して分析用デバイスの回転停止位置を大まかに制御した場合であっても、分析用デバイスの前記開封ボタンを確実に操作できる分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1記載の分析装置は、遠心力によって溶液の移送を行うマイクロチャネル構造を有し、試料液を希釈液保持部から排出した希釈液で希釈し、希釈溶液を測定スポットへ移送するよう構成された分析用デバイスがセットされる分析装置であって、セットされた前記分析用デバイスを回転駆動するロータと、前記分析用デバイスの希釈液保持部の前記排出を実行する開封ボタンを操作するように前記ロータの停止位置に対応して固定側に配置された操作体とを備え、前記操作体の大きさが前記開封ボタンよりも大きいことを特徴とする。
【0009】
また、前記ロータの下面側に前記操作体を配置し、前記ロータに形成された開口を通して前記操作体が前記開封ボタンを操作するよう構成したことを特徴とする。
また、前記ロータの下面側に形状が前記ロータの回転方向に延びる円弧状の前記操作体を配置し、前記ロータに形成された開口を通して前記操作体が前記開封ボタンを操作するよう構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分析用デバイスの回転停止位置を大まかに制御した場合であっても、分析用デバイスの前記開封ボタンを確実に操作できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の分析用デバイスとこれを使用する分析装置および分析方法の実施の形態を図1〜図9に基づいて説明する。
図1は分析用デバイス1を本発明の分析装置のロータ103の上にセットした状態を示し、図2は分析用デバイス1の前記ロータ103と接触している面を上側にして分解した状態を示している。
【0012】
分析用デバイス1は、試料液飛散防止用の保護キャップ2と、微細な凹凸形状を表面に有するマイクロチャネル構造が形成されたベース基板3と、ベース基板3の表面を覆うカバー基板4と、希釈液を保持している希釈ユニット5と、ベース基板3の上面に形成されている数個の凹部のうちの一つの凹部50にセットされた希釈ユニット5内の希釈液を排出するための開封ボタン6とを合わせた5つの部品で構成されている。
【0013】
ベース基板3とカバー基板4は、希釈ユニット5などを内部にセットした状態で接合され、この接合された状態のものに保護キャップ2が取り付けられている。また、開封ボタン6は、カバー基板4に形成された開封孔7の位置を中心に接合される。
【0014】
ベース基板3の上面に形成されている数個の凹部の開口をカバー基板4で覆うことによって、後述の複数の収容エリア(後述の測定スポットと同じ)とその収容エリアの間を接続する流路などが形成されている(図2を参照)。収容エリアのうちの必要なものには各種の分析に必要な試薬が予め担持されている。
【0015】
この分析用デバイス1は、注入口11から試料液、例えば血液などの溶液を採取することができ、保護キャップ2を閉めて分析装置の前記ロータ103にセットすることで、試料液の成分分析を行うことができる。102はロータ103の回転中の軸心を示している。
【0016】
分析用デバイス1は、注入口11から内部に取り込んだ試料液を、注入口11よりも内周にある前記軸心102を中心に分析用デバイス1を回転させて発生する遠心力と、分析用デバイス1内に設けられた毛細管流路の毛細管力を用いて、分析用デバイス1の内部で溶液を移送していくよう構成されており、保護キャップ2は注入口11の付近に付着した試料液が、分析中に遠心力によって外部へ飛散するのを防止するために取り付けられている。
【0017】
本発明の分析用デバイス1を構成する部品の材料としては、材料コストが安価で量産性に優れる樹脂材料が望ましい。前記分析装置は、分析用デバイス1を透過した光を測定する光学的測定方法によって試料液の分析を行うため、ベース基板3およびカバー基板4の材料としては、PC、PMMA、AS、MSなどの透明性が高い樹脂が望ましい。
【0018】
また、希釈ユニット5の材料としては、希釈ユニット5内部に希釈液を長期間封入しておく必要があるため、PP、PEなどの水分透過率の低い結晶性樹脂が望ましい。開封ボタン6については、希釈ユニット5の開封時に変形させて用いるため、弾性率の高いPPなどの結晶性樹脂が望ましい。保護キャップ2の材料としては、成形性のよい材料であれば特に問題がなく、PP、PEなどの安価な樹脂が望ましい。
【0019】
ベース基板3とカバー基板4との接合は、前記収容エリアに担持された試薬の反応活性に影響を与えにくい方法が望ましく、接合時に反応性のガスや溶剤が出にくい超音波溶着やレーザー溶着などが望ましい。
【0020】
また、ベース基板3とカバー基板4との接合によって両基板3,4の間の微小な隙間による毛細管力によって溶液を移送させる部分には、毛細管力を高めるための親水処理がなされている。具体的には、親水性ポリマーや界面活性剤などを用いた親水処理が行われている。ここで、親水性とは水との接触角が90度未満のことをいい、より好ましくは接触角40度未満である。
【0021】
分析用デバイス1は、図3に示すように分析装置100の前記軸心102を中心に回転するロータ103の上に、ベース基板3とカバー基板4のうちのカバー基板4の側を下にして装着され、蓋101を閉じた状態で分析が行われる。
【0022】
この分析装置100は、図4と図5に示すように、ロータ103を回転させるための回転駆動手段107と、分析用デバイス1内の溶液を光学的に測定するための光学測定手段109と、ロータ103の回転速度や回転方向、および光学測定手段の測定タイミングなどを制御する制御手段108と、光学測定手段109によって得られた信号を処理し測定結果を演算するための演算部110と、演算部110で得られた結果を表示するための表示部111とで構成される。
【0023】
回転駆動手段107は、ロータ103を介して分析用デバイス1を軸心102の回りに任意の方向に所定の回転速度で回転させるだけではなく、所定の停止位置で軸心102を中心に所定の振幅範囲、周期で左右に往復運動をさせて分析用デバイス1を揺動させることができるように構成されている。ここでは回転駆動手段107としてモータ104を使用してロータ103を軸心102の回りに回転させている。軸心102は、この軸心102上の所定位置を中心に傾斜角度θ°だけ傾斜して回転自在に取り付けられている。
【0024】
なお、ここでは分析用デバイス1の回転動作と揺動動作を1つの回転駆動手段107で行う構成としているが、回転駆動手段107の負荷を軽減させるために、揺動動作用の駆動手段を別に設けてもかまわない。具体的には、ロータ103の上にセットした分析用デバイス1に対して、前記モータ104とは別に用意したバイブレーションモータなどの加震手段を、直接または間接的に接触させることによって分析用デバイス1を揺動させて分析用デバイス1内の溶液に慣性力を付与する。
【0025】
光学測定手段109には、分析用デバイス1の測定部に光を照射するための光源105と、光源105から照射された光のうち、分析用デバイス1を通過した透過光の光量を検出するフォトディテクタ106とを備えている。ロータ103が透光性に劣る材料または透光性でない材料の場合には、ロータ103の分析用デバイス1の装着位置には、孔51,52が穿設されている。
【0026】
ここでは光源105は出射光の波長を切り換え可能なものを使用し、フォトディテクタ106は光源105の出射光の何れの波長の光も検出できるものを使用している。
なお、光源105とフォトディテクタ106は、測定に必要な波長の種類に応じた複数対だけ設けることもできる。
【0027】
また、分析装置100には、分析用デバイス1内の希釈ユニット5を自動で開封するための開封手段、具体的には、ロータ103にセットされた分析用デバイス1の開封ボタン6を操作できるように、ロータ103に上下運動ができるアームを設け、開封ボタン6を前記アームによって押し上げる機構を設けてもかまわない。
【0028】
ロータ103は、図5に示すように傾斜した軸心102に取り付けられて水平線に対して傾斜角度θ°だけ傾斜しており、分析用デバイス1の回転停止位置に応じて、分析用デバイス1内の溶液にかかる重力の方向を制御できる。
【0029】
このように、軸心102に傾斜を設け、任意の位置に分析用デバイス1を停止させることで、分析用デバイス1内の溶液を所定の方向に移送させるための駆動力の1つとして利用できる。
【0030】
分析用デバイス1内の溶液にかかる重力の大きさは、軸心102の傾斜角度θを調整することで設定することができ、移送する液量と、分析用デバイス1内の壁面に付着する力との関係に応じて設定することが望ましい。
【0031】
傾斜角度θは、傾斜角度θが10°より小さいと溶液にかかる重力が小さすぎて移送に必要な駆動力が得られないおそれがあり、傾斜角度θが45°より大きくなると軸心102への負荷が増大したり、遠心力で移送させた溶液が自重で勝手に動いて制御できなくなるおそれがある。
【0032】
この実施の形態の分析装置100では、傾斜角度θを10°〜45°の範囲の任意の角度に固定しており、回転駆動手段107であるモータ104や、光源105、フォトディテクタ106も傾斜を持つ軸心102と平行に取り付けられているが、傾斜角度θを任意の角度に調整でき、モータ104や、光源105、フォトディテクタ106も追従して角度が変更される構成にすることで、分析用デバイス1の仕様や、分析用デバイス1内の移送プロセスに応じて、最適な傾斜角度を設定することができる。ここで、傾斜角度θを任意の角度に調整できる構成の場合は、傾斜角度θの範囲は0°〜45°が望ましく、重力の影響を受けたくない場合には傾斜角度を0°、すなわちロータ103を水平にして回転させることができる。
【0033】
図6〜図8は分析用デバイス1の詳細を示している。
図6は開封ボタン6の取り付け位置を示す平面図、図7は図6のA−A断面図を示す。
図9は分析用デバイスのマイクロチャネル構成を示している。
【0034】
希釈ユニット5の開封および排出は、図6に示すようにカバー基板4に接合された開封ボタン6の中心部を下方向から押し上げることで、ピン8が希釈ユニット5の表面に貼られているアルミシール10を突き破り、希釈ユニット5が開封される。さらに、希釈ユニット5が開封された状態で分析用デバイス1を回転させると、希釈ユニット5内の希釈液は、開封孔7と排出孔9の間に形成された空間(ベース基板3とカバー基板4の間に形成された排出溝、およびカバー基板4と開封ボタン6の間に形成された空間)を経由して保持キャビティ14に排出される。
【0035】
分析用デバイス1は、注入口11に試料液を付着させることで、試料液を内部に形成された毛細管キャビティ17の毛細管力によって吸引させることができるため、指先などから血液を直接採取することができる。ここで、注入口11は、分析用デバイス1本体の一側面より軸心102の方向に突出した形状をしているため、注入口11以外の場所に指などが接触して血液が付着しにくい。
【0036】
必要量の血液を採取した分析用デバイス1は、分析装置100のロータ103上に装着され、希釈ユニット5の開封手段によって次のように開封動作が行われる。
分析用デバイス1が装着される際のロータ103は、図3に示すように分析装置100の蓋101を開いた状態で分析用デバイス1の装着位置が手前側で停止(奥側の停止位置を0°(=360°)として表現した場合に180°の停止位置)するように構成されている。具体的には、前記モータ104としてブラシレスモータを使用し、ブラシレスモータの回転磁界を切り換えるように内蔵している複数の磁気センサのうちの適当な磁気センサの検出出力を使用して運転開始時のロータ103の回転停止位置が前記手前側で停止するように構成されている。
【0037】
ロータ103の分析用デバイス1の装着場所の一部には、図6と図7に示すように、装着される分析用デバイス1の開封ボタン6に対応して前記ロータ103の回転方向に延びる円弧状の開口61が形成されている。さらに、運転開始時のロータ103の回転停止位置に対応して固定側には、図7と図8に示すように出退可能な操作体60が設けられている。この操作体60は適当な時期に電磁ソレノイド(図示せず)によって前記出退が駆動される。
【0038】
希釈ユニット5の開封動作は次のように実施される。
分析用デバイス1をロータ103に装着して制御手段108に分析開始を指示すると、電磁ソレノイドが励磁されて操作体60が図7(a)から図7(b)に示すようロータ103の開口61に進入して操作体60の先端部60aが開封ボタン6を押し込む。その後、電磁ソレノイドの励磁が解除されて操作体60が図7(b)から図7(c)に示すように開口61から後退し、次にロータ103が前記モータ104によって駆動される。
【0039】
このようにして開封ボタン6によってアルミシール10が突き破られることで、孔10aから希釈液が流れ出る。ここで、操作体60の先端部60aの形状が開封ボタン6よりも大きく、具体的には周方向に長く構成されているため、ロータ103の停止位置が多少前後しても、アルミシール10を確実に開封することができる。
【0040】
希釈ユニット5の開封が終了した後、ロータ103を回転(C2で示す右回転・3000rpm)させることで、孔10aから流れ出た希釈液は希釈ユニット5内の希釈液は保持キャビティ14へ移送され、毛細管キャビティ17の内の血液と希釈液は分離キャビティ18へ移送され、ここで、血液を希釈して血球中の測定成分を取り出す際に、個人差を有するヘマトクリット値(血液中に含まれる血球成分の比率)の影響による希釈のばらつきを低減させるために、分離キャビティ18へ移送された血液を遠心力によって血漿成分と血球成分とに分離し、外周部の高ヘマトクリット血液を採取して希釈することで、希釈のばらつきを低減している。
【0041】
また、この回転中に保持キャビティ14に移送されて規定量を越えた希釈液は、溢流流路16と、溢流キャビティ27と、毛細管部28を介して測定スポット29内に流れ込んで保持される。
【0042】
分離キャビティ18の底部に溜まった血液は、遠心力によって血漿成分と血球成分に分離される。回転が停止して遠心力が無くなると、分離キャビティ18における血漿成分は毛細管キャビティ19に毛細管移送され、連結流路21の血漿成分と血球成分は、大気に連通した空気孔20aを有するキャビティ58に接続されている溢流流路22に向かって毛細管移送される。
【0043】
連結流路24の血漿成分と血球成分は大気に連通した空気孔20dを有する溢流キャビティ26に向かって毛細管移送される。ここで、連結流路21から必要量の血球成分だけが計量流路23の毛細管力によって移送される。
【0044】
保持キャビティ14へ移送された希釈液は、保持される液面高さが溢流流路16と溢流キャビティ27の連結位置を超えると、溢流流路16を経由して溢流キャビティ27へ排出されるため、保持キャビティ14内に規定量だけ保持される。
【0045】
ロータ103の前記回転(C2で示す右回転・3000rpm)を停止させて静止した後に、ロータ103を回転(C2で示す右回転・2000rpm)させることによって、計量流路23で保持されていた必要量の血球成分と保持キャビティ14の希釈液が操作キャビティ30に流れ込んで混合されて希釈され、余分な血球成分は溢流キャビティ26に保持される。そして光学測定手段109は、分析用デバイス1の測定スポット29の希釈液が、光源105とフォトディテクタ106の間に介在するタイミングで読み取りを行うリファレンス測定を実施する。このときには、光源105の波長を535nmと625nmに切り換えてリファレンス測定している。
【0046】
次に、分析用デバイス1の回転停止位置を60°付近の位置にして、±1mm程度の揺動を分析用デバイス1に与えるようにモータ104を1000rpmの周波数で制御して希釈液を攪拌する。
【0047】
その後に、分析用デバイス1の回転停止位置を180°付近の位置にして、±1mm程度の揺動を分析用デバイス1に与えるようにモータ104を1000rpmの周波数で制御して希釈液を攪拌する。
【0048】
ここで、操作キャビティ30と保持キャビティ32の間は連結部59で連通されており、攪拌時におけるこの連結部59の位置が、遠心力を発生させる回転の軸心102について操作キャビティ30に保持された希釈溶液の液面よりも内周側に位置させたため、攪拌混合中の希釈液が保持キャビティ32へ流出することがない。
【0049】
次に、分析用デバイス1の回転停止位置を300°付近の位置にして、±1mm程度の揺動を分析用デバイス1に与えるようにモータ104を1000rpmの周波数で制御して、操作キャビティ30の希釈後の血球成分(希釈溶液)を、連結部59を介して保持キャビティ32に揺動移送する。
【0050】
ここで、操作キャビティ30に保持された希釈溶液は、分析用デバイス1の回転停止位置を300°付近の位置に移動させても、操作キャビティ30の壁面に働く表面張力によって保持されており(表面張力が希釈溶液に働く重力よりも大きいため)、分析用デバイス1を揺動させて希釈溶液に慣性力を与えることで、操作キャビティ30の壁面に働く表面張力を打ち破り、希釈溶液に働く慣性力と重力によって希釈溶液を保持キャビティ32に移送可能としている。
【0051】
次に、分析用デバイス1をロータ103を回転(C2で示す右回転・2000rpm)させることによって、保持キャビティ32から連結流路34を介して保持キャビティ35に規定量の希釈溶液が移送される。保持キャビティ35へ移送される希釈溶液が所定量を越えた分は溢流流路36を介して溢流キャビティ27へ溢流し、保持キャビティ35には規定量の希釈溶液だけが保持される。
【0052】
ロータ103の前記回転(C2で示す右回転・2000rpm)を停止させて静止することによって保持キャビティ35の希釈溶液が連結流路37に呼び水され、さらにロータ103を回転(C1で示す左回転・2000rpm)させることによって、保持キャビティ35に保持された規定量の希釈溶液が、連結流路37を介して測定スポット38に移送され、測定スポット38に予め担持されている変性試薬を溶解する。
【0053】
その後、180°付近の位置において、±1mm程度の揺動を分析用デバイス1に与えるようにモータ104を1000rpmの周波数で制御して、分析用デバイス1の測定スポット38の第1反応液を攪拌する。
【0054】
ここで、測定スポット38と測定スポット43の側との間は、毛細管キャビティ40と毛細管キャビティ39を介して連通されている。ここで毛細管キャビティ40が第2の連結部として作用しており、攪拌時におけるこの毛細管キャビティ40の位置が、遠心力を発生させる回転の軸心102について測定スポット38に保持された希釈溶液の液面よりも内周側に位置させたため、攪拌混合中の希釈溶液が測定スポット43の側の毛細管キャビティ39へ流出することがない。
【0055】
次に、分析用デバイス1を静止させて第1反応液を変性反応させた後に、ロータ103を回転(C1で示す左回転・1500rpm)させて第1測定を実施する。
第1測定は、光源105の波長を535nmに切り換えた発光状態において、分析用デバイス1の測定スポット38の変性反応させた第1反応液を、光源105とフォトディテクタ106の間に介在するタイミングで読み取りを行う。演算部110は、第1測定によって得られた測定値を、予め測定スポット29を光源105の波長を535nmにして読み取った基準値に基づいて処理して数値化した変性ヘモグロビン濃度を表示部111に表示する。
【0056】
ここで“変性”とは、たんぱく質の構造内から特異的な箇所を構造外へ出す(露出させる)ことをいい、後述する抗原抗体反応は、そのたんぱく質の構造内から露出された部位である“変性された部位”と特異的に反応するラテックス試薬によって行われる。
【0057】
次に、分析用デバイス1の位置を60°付近の位置にして、±1mm程度の揺動を分析用デバイス1に与えるようにモータ104を1500rpmの周波数で制御することによって、測定スポット38に保持された第1反応液が毛細管キャビティ39に毛細管移送されて、毛細管キャビティ39には規定量の第1反応液が保持される。
【0058】
次に、ロータ103を回転(C1で示す左回転・2000rpm)させることによって、毛細管キャビティ39から連結流路41を介して測定スポット43に第1反応液が流入し、測定スポット43に予め担持されているラテックス試薬を溶解する。
【0059】
その後、180°付近の位置において、±1mm程度の揺動を分析用デバイス1に与えるようにモータ104を1000rpmの周波数で制御して、分析用デバイス1の測定スポット43の第2反応液を攪拌する。
【0060】
ここで、測定スポット43と測定スポット46の側との間は毛細管キャビティ44を介して連通されており、測定スポット43と毛細管キャビティ44とを接続する毛細管キャビティ64の攪拌時における位置を、遠心力を発生させる回転の軸心102について測定スポット43に保持された希釈溶液の液面よりも内周側に位置させたため、攪拌混合中の希釈溶液が測定スポット46の側の毛細管キャビティ44へ流出することがない。
【0061】
次に、分析用デバイス1を静止させて第2反応液を抗原抗体反応させた後に、ロータ103を回転(C1で示す左回転・1500rpm)させて第2測定を実施する。
第2測定は、光源105の波長を625nmに切り換えた発光状態において、分析用デバイス1の測定スポット43の抗原抗体反応した第2反応液が、光源105とフォトディテクタ106の間に介在するタイミングで読み取りを行う。
【0062】
次に、分析用デバイス1の位置を60°付近にして、±1mm程度の揺動を分析用デバイス1に与えるようにモータ104を1500rpmの周波数で制御して第2反応液を毛細管キャビティ44に毛細管移送する。
【0063】
その後、ロータ103を回転(C1で示す左回転・2000rpm)させることによって、毛細管キャビティ44に保持された規定量の第2反応液が、連結流路45を介して測定スポット46に流入し、測定スポット46に担持されている凝集試薬を溶解する。
【0064】
その後、180°付近の位置において、±1mm程度の揺動を分析用デバイス1に与えるようにモータ104を1000rpmの周波数で制御して、分析用デバイス1の測定スポット46の第3反応液を攪拌する。
【0065】
次に、分析用デバイス1を静止させて第3反応液を凝集反応させた後に、ロータ103を回転(C1で示す左回転・1500rpm)させて第3測定を実施する。
第3測定は、光源105の波長を625nmに切り換えた発光状態において、分析用デバイス1の測定スポット46の凝集反応した第3反応液が、光源105とフォトディテクタ106の間に介在するタイミングで読み取りを行う。演算部110は、第2測定と第3測定によって得られた測定値を、測定スポット29を光源105の波長を625nmにして予め読み取ってある基準値に基づいて処理して数値化したHbA1c濃度と、前記変性ヘモグロビン濃度を基に算出されるHbA1c%値を表示部111に表示する。
【0066】
その後、制御手段108が前記モータ104に内蔵さている複数の磁気センサのうちの予め決められた適当な磁気センサの検出出力に基づいてロータ103を図3に示した回転停止位置で停止させて分析動作を終了する。
【0067】
なお、上記の実施の形態では分析用デバイス1をロータ103に装着した状態で開封ボタン6がロータ103の側の面に形成されていたために、ロータ103に開口61を形成し、ロータ103の下方位置に操作体60を配置したが、分析用デバイス1をロータ103に装着した状態で開封ボタン6が分析用デバイス1の上面に位置する場合には、その場合の開封ボタン6の位置に対応して、ロータ103の上方位置に操作体60を配置する。この場合にも、操作体60の先端部60aの形状を開封ボタン6よりも大きく構成することによって、ロータ103の停止位置が多少前後しても、アルミシール10を確実に開封することができる。
【0068】
上記の各実施の形態では、ロータ103に対して操作体60の先端部60aが開封ボタン6に接近離間するように移動したが、操作体60の先端部60aに対してロータ103が接近離間するように移動しても同様であって、操作体60の先端がロータにセットされた分析用デバイス1の開封ボタン6に相対的に接近離間するように駆動することによって開封動作を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、生物などから採取した試料あるいは汚水などの中の各種の成分の濃度を測定する分析装置の構成の簡潔化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態において分析用デバイスを分析装置にセットした状態の要部斜視図
【図2】同実施の形態の分析用デバイスの分解斜視図
【図3】同実施の形態の分析装置の外観図
【図4】同実施の形態の分析装置の構成図
【図5】同実施の形態の分析装置の断面図
【図6】同実施の形態における分析用デバイスの希釈ユニット開封部の平面図とA−A断面図
【図7】同実施の形態における開封工程を示す断面図
【図8】同実施の形態のロータ付近を下方から見た要部の斜視図
【図9】同実施の形態における分析用デバイスのマイクロチャネル構成を示す平面図
【図10】従来の分析用デバイスの平面図
【符号の説明】
【0071】
1 分析用デバイス
2 保護キャップ
3 ベース基板
4 カバー基板
5 希釈ユニット
6 開封ボタン
7 開封孔
8 ピン
9 排出孔
10 アルミシール
11 注入口
14 保持キャビティ
15 連結流路
16 溢流流路
17 毛細管キャビティ
18 分離キャビティ
19 毛細管キャビティ
21,24 連結流路
22 溢流流路
23 計量流路
27 溢流キャビティ
28 毛細管部
29 測定スポット
30 操作キャビティ
32 保持キャビティ
34 連結流路
35 保持キャビティ
36 溢流流路
37 連結流路
38 測定スポット
39 毛細管キャビテ
40 毛細管キャビティ
41 連結流路
43 測定スポット
44 毛細管キャビティ
45 連結流路
46 測定スポット
60 操作体
60a 操作体60の先端部
61 ロータ103に形成された開口
100 分析装置
101 蓋
102 軸心
103 ロータ
104 モータ
105 光源
106 フォトディテクタ
107 回転駆動手段
108 制御手段
109 光学測定手段
110 演算部
111 表示部
C1 左回転
C2 右回転
θ 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心力によって溶液の移送を行うマイクロチャネル構造を有し、試料液を希釈液保持部から排出した希釈液で希釈し、希釈溶液を測定スポットへ移送するよう構成された分析用デバイスがセットされる分析装置であって、
セットされた前記分析用デバイスを回転駆動するロータと、
前記分析用デバイスの希釈液保持部の前記排出を実行する開封ボタンを操作するように前記ロータの停止位置に対応して固定側に配置された操作体とを備え、
前記操作体の大きさが前記開封ボタンよりも大きい
分析装置。
【請求項2】
前記ロータの下面側に前記操作体を配置し、
前記ロータに形成された開口を通して前記操作体が前記開封ボタンを操作するよう構成した
請求項1記載の分析装置。
【請求項3】
前記ロータの下面側に形状が前記ロータの回転方向に延びる円弧状の前記操作体を配置し、
前記ロータに形成された開口を通して前記操作体が前記開封ボタンを操作するよう構成した
請求項1記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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