説明

分析試料内に含まれる少なくとも1つのリガンドを検出する装置

分析試料内に含まれる少なくとも1つのリガンド(2)を検出する装置(1)は、表面にリガンド(2)を特定するレセプター(5)が直接的又は間接的に固定される光ウエーブガイド(4)を有する。リガンド(2)はレセプター(5)へ接触した場合、レセプターに結合する。この装置(1)はウエーブガイド(4)内に励起ビーム(9)を接続するために少なくとも1つのビーム源(8)を有する。ビーム(9)はレセプター(5)でのリガンド(2)の結合に依存して発光ビーム(10)の放射の励起に役立つ。発光ビーム(10)の検出のため、半導体チップ(3)の半導体基板内で、少なくとも1つのビーム受信器(12)が一体化される。ウエーブガイド(4)は半導体基板とモノリシックに積層され、又はウエーブガイド層として半導体基板上に載置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リガンドの接触の場合にリガンドと特異的結合する少なくとも1つのレセプターが、表面に直接的又は間接的に固定される光ウエーブガイド(opitical waveguide)と、レセプターでのリガンドの結合に依存して発光ビームの放射を励起するため、ウエーブガイド内へ励起ビームを接続する少なくとも1つの光ビーム源と、発光ビームの検出のために半導体基板上に配置される少なくとも1つのビーム受信器を有する半導体チップとを備え、分析試料内に含まれる少なくとも1つのリガンドを検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置はドイツ国特許公開公報第10002566号から周知である。この装置は平坦な光ウエーブガイドの表面に複数の測定部分を有し、測定部分にはレセプターとして特定されるヌクレイン酸が固定される。レセプターに対して補足するヌクレイン酸を含む分析液状試料はレセプターと接触される。分析液状試料は、それぞれ、それに適合する特定レセプターと結合する。そのように形成され、相互に補足するヌクレイン酸を有するレセプター−リガンド錯体は発光物質で標識を付される。例えば、レーザダイオードにより、励起ビームが発生され、光ウエーブガイド内に接続される。ウエーブガイドの境界面での全反射により、境界層に隣接する試料の層内には、電磁フィールドが発生され、電磁フィールドは、いわゆるエバネッセントフィールドである。電磁フィールドは液状試料内で境界面から数百ナノメータだけ侵入する。エバネッセントフィールドにより、ウエーブガイドの表面に結合される発光物質は発光ビームの放射のためにだけ、ほぼ励起される。試料内に含まれるヌクレイン酸の検出のため、発光ビームはCCDカメラにより局部分析されて検出される。CCDカメラはレセプターと対向するウエーブガイドの裏側に配置される。CCDカメラは、ウエーブガイドの表面にある個々の測定個所を、それぞれ、CCDセンサの検出要素で結像する結像光学系を有する。この装置は、なお比較的に多数のシステムコンポーネントを有し、それで、それに応じて高価である欠点がある。更に、この装置は比較的に大きいサイズを有し不都合である。結局、装置の測定感度も改良の必要がある。
【特許文献1】ドイツ国特許公開公報第10002566号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それで、この課題は、簡単で安価な構造でコンパクトな構造寸法を可能にする最初に述べた種類の装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題の解決策は、ウエーブガイドが半導体基板とモノリシック集積されるか、ウエーブガイド層として半導体チップ上に配置されることにある。
【0005】
それから、少なくとも1つのビーム受信器がレセプターに対向するウエーブガイドの裏側に直接に配置され、それで、少なくとも1つのレセプターに対して対応するわずかな間隔で配置される。それで、例えば、薄板形状を備えることができる非常にコンパクトで平坦な装置が生じる。レセプターとビーム受信器との間のわずかな間隔に基づき、レセプターとビーム受信器との間の高価な結像光学系が節約できる。レセプターに積み重ねられる発光物質から放射される発光ビームは、大きい空間角度部分で検出できる。つまり、大きい測定感度で簡単に構成され、安価に製造できる装置が生じる。発光の下では、ビーム量子の全放射、とりわけ、量子に関係する励起に材料を表示する蛍光又はリン光のような光現象が理解される。
【0006】
この発明の有利な実施例では、ウエーブガイドは少なくとも1つのビーム受信器を越えて延び、特に少なくとも1つのレセプターが、特にビーム受信器に直接に対向してウエーブガイドの表面に配置される。レセプターに結合されるリガンド又はレセプターに配置される発光物質から放射される発光ビームは、ウエーブガイドの延長方向に対してほぼ直角に走り、それにより、ウエーブガイドを通過してビーム受信器内への発光ビームの良好な伝送が達成される。つまり、発光ビームは迂回することなくビーム受信器に直接に導かれ、それにより、装置の高い検出感度が可能にされる。
【0007】
ウエーブガイド層が半導体チップに直接に隣接し、半導体チップの地形がウエーブガイドに隣接する半導体チップ範囲内で、少なくとも1つのレセプターに対向する境界面が半導体チップとウエーブガイドとの間で、半導体チップの延長面と平行に配置される2つの面の間で走るように構成され、2つの面の間隔が励起ビームの波長より小さく、特に半分より小さく、特に1/4であり、場合により励起ビームの波長の1/8であると都合がよい。つまり、ウエーブガイドの範囲では、半導体チップの地形は本質的に平坦に構成され、このことは、ウエーブガイド内への損失のない案内を可能にする。対応する仕方では、レセプターに向くウエーブガイドの境界面が半導体チップの延長面と平行に配置される2つの面間で走ることもでき、2つの面の間隔は励起ビームの波長より小さく、特に半分より小さく、特に1/4であり、場合により励起ビームの波長の1/8である。ウエーブガイドに対する境界面では、半導体チップは酸化物層を有することができる。
【0008】
この発明の有利な実施例では、半導体チップとウエーブガイドとの間には中間層が配置され、中間層の光屈折率はウエーブガイドの屈折率より小さく、中間層は、半導体チップに向き、半導体チップに当接する裏側には、半導体チップの表面構造の負形成部を有し、境界面はウエーブガイドに対して形成される中間層の前側が本質的に平坦に構成される。その際、更にウエーブガイドは、少なくとも1つのビーム受信器及び/又は電子回路の構造部を越えて均一に延び、又は途切れなく延びることができる。この装置の製造の場合、特に中間層は、最初に少なくとも1つのビーム受信器と、場合により、ウエハ上に電子回路のための構造部とで仕上げられ、その後、中間層のための材料を含む液状媒体がウエハ上に遠心法で仕上げられる。媒体が遠心力によりウエハ上に均一に分配された後、中間層に固定される。それから、中間層上にウエーブガイドが載置される。媒体は、例えば、トルエンのような液体溶剤、例えば、PMMAを含むような重合体を含むことができる。しかし、液状媒体としてスピン−オン−ガラスも使用できる。
【0009】
この発明の有利な実施例では、中間層は接着剤層として構成され、特に重合体層として構成される。それから、ウエーブガイドはプラスチック射出部品として大きい個数で原価を安く製造できる。ウエーブガイドは薄いプラスチック片又はガラス片にでき、それは、装置の製造の場合に半導体基板上に接着できる。その際、ウエーブガイドは半導体チップの保護カバーの機能も満たすことができる。ウエーブガイドは、場合により、全半導体チップに亘って延長できる。
【0010】
この発明の別の実施例では、ウエーブガイドは少なくとも1つの結合個所を介して半導体チップと連結される。また、この実施例では、ウエーブガイドは特に1mm以下の厚さを有する薄いプラスチック片にできる。
【0011】
この発明の有利な構成では、ウエーブガイドは、特に透明重合体層から成り、特にポリスチロールから成る薄膜層として構成される。その際、少なくとも1つのレセプターが、特に薄膜層上に直接配置される。しかし、ウエーブガイドは別の材料、例えば、スピン−オン−ガラスからも構成できる。薄膜技術により、ウエーブガイドは100マイクロメータ以下の厚さで製造できる。それから、ビーム受信器では、レセプターに結合する発光物質から放射される発光ビームの大部分が発生する。それで、試料内リガンドの検出のため、わずかな試料量だけが必要とされる。装置の製造の場合に、ウエーブガイドは浸漬被覆又は遠心法により簡単な仕方で半導体チップ上に載置できる。
【0012】
この発明の特別に有利な実施例では、ウエーブガイドは金属酸化物層、特に二酸化ケイ素層(SiO)又は五酸化タンタル層(Ta)により形成される。それから、ウエーブガイドは、例えば、プラズマ酸化又は化学蒸気析出(CVD)による半導体製造の標準処理により安価に製造できる。その際、ウエーブガイドの厚さは10マイクロメータ以下であり、ウエーブガイドの表面に結合される発光物質から放射される発光ビームのほぼ半分がビーム受信器に生じる。つまり、対応する高度な測定感度が生じ、それで、試料の分析にとって、最少の量の試料で十分である。酸化物層は少なくとも1つのレセプターが直接付着できる表面構造を持つことができる。それにより、接着中間層はウエーブガイドと少なくとも1つのレセプターとの間で節約できる。しかし、ウエーブガイドはケイ素−窒化物層(Si)として構成することもできる。
【0013】
特に光ビーム源が半導体ビーム源として構成され、半導体チップ内で一体化されると有利である。それから、この装置は、なおコンパクトで安価な構造にできる。半導体ビーム源はレーザダイオード又は発光ダイオードででき、それらは、励起ビームを、特に少なくとも1つのビーム受信器を不感にする狭い波長帯域範囲で放射する。
【0014】
この発明の特別な構成では、光ビーム源の放射範囲での励起ビームの接続のため、接続光学系が設けられ、接続光学系は、特にウエーブガイドと一体に構成され、特に少なくとも1つのプリズム、光格子及び転向ミラー或いはそれらの内の一方を有する。ビーム源はレセプターと対向するウエーブガイドの裏側でウエーブガイドの接続光学系放射側に向いて配置できる。その際、接続側では、ビーム源から放射される励起ビームは角度を成してウエーブガイドに入るように転向され、この角度は全反射を利用してビームがウエーブガイド内に案内されるように選択される。それで、少なくとも1つのレセプターに対して励起ビームの損失の少ない案内が生じる。
【0015】
複数のビーム受信器が、特にセル形状又はマトリックス形状で半導体チップ内で並列して一体化され、個々のビーム受信器の検出範囲内で、それぞれ、少なくとも1つのレセプターを有する検出フィールドが配置されると有利である。それから、この装置はウエーブガイドの表面にあるレセプター−リガンド錯体の局部分解され、検出が可能である。その際、個々の検出フィールドは異なるレセプターを有し、試料は複数の異なるリガンドの存在に基づき同時に分析できる。しかし、検出フィールドの少なくとも1つのグループが同じレセプターを有することも考慮できる。それから、グループの個々についてのビーム受信器の測定値は伝送でき、濾過でき、及び/又は、制御目的のため相互に比較できる。この装置により、試料内のリガンドの濃度を決定しなければならない時には、少なくとも2つの検出フィールドのレセプターがリガンドに対して異なる親和性を有すると有利である。それから、リガンドの濃度は幅広い濃度範囲で測定でき、測定のための試料を薄くしたり、又は、濃縮したりしなくてもよい。ウエーブガイドは途切れることなくビーム受信器を越えて延長できる。それにより、ウエーブガイドの製造の場合に標識化ステップを節約できる。
【0016】
検出フィールドは、個々の受信器が本質的に他のビーム受信器の検出フィールドからの発光ビームを受信しないように相互に離間され、ビーム受信器に関して配置されると都合がよい。それで、個々の検出フィールドと検出フィールドに付設されるビーム受信器とから成る測定配置の間で高度な誘導妨害緩衝が達成される。
【0017】
この発明の有利な実施例では、少なくとも1つの入口と出口を有する貫流測定室の内部空洞内に少なくとも1つのレセプターが配置され、その際、半導体基板は、特に貫流測定室の壁範囲を形成する。それから、貫流測定室内ではバイオ分子又はバイオ成分を分析でき、入口及び出口を介して培養液を供給できる。バイオ分子はヌクレイン酸又は、その誘導体(DNA、RNA、PNA、LNA、オリゴヌクレオチド、プラズミド、染色体)、ペプチド、プロテイン(酵素、プロテイン、オリゴペプチド、細胞質レセプタープロテイン、その錯体、ペプチドホルモン、抗体、そのフラグメント)、炭水化物、その誘導体、特に解糖プロテイン、グリコシド、脂肪及び脂質或いはそれらの内の一方を含むことができる。
【0018】
貫流測定室の温度調節のために、特にペルチェ素子を有する加熱装置及び冷却装置或いはそれらの内の一方を設けることができる。加熱装置は、特に薄膜加熱体として構成される。それから、この装置は多重で使用でき、測定の実行後、レセプターに結合される全てのリガンドがレセプターから分離するまで、貫流測定室内での温度は上昇される。それから、リガンドは洗浄媒体の供給により、出口を経て貫流測定室から洗い流すことができる。その際、洗浄工程は、ビーム受信器が、最早発光ビームを検出しなくなるまで維持される。その後、入口を経て新しい試料が貫流測定室内に取り入れられ、分析される。しかし、この装置は、例えば、DNA配列のようなリガンドの溶融点の決定及び結合濃度の決定或いはそれらの内の一方にも使用できる。その際、レセプターでのリガンドの結合は温度及び時間或いはそれらの内の一方の関数として測定される。そのようにして得られる溶融曲線から、DNA配列の溶融点、つまり、当初の2重螺線DNA配列の半分が個々の螺線で存在する温度を検出できる。溶融点に基づき、例えば、遺伝病で起こるDNA配列内の突然変異を識別できる。
【0019】
この発明の有利な構成では、貫流測定室内で少なくとも1つのレセプターでの少なくとも1つのリガンドの結合を検出するため、少なくとも1つの試薬及び反応体或いはそれらの内の一方を貯留できる。それから、貫流測定室には、使用、即ち、測定に必要な分析試料だけが入口を経て測定室内へ準備して充填される。試薬及び反応体或いはそれらの内の一方は、特に親和性があり、例えば、測定室の内壁にプリントできる。特にその際、例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル)メタアクリル酸(pHEMA)又はウシ血清アルブミン(BSA)のような安定性試薬が設けられる。
【実施例】
【0020】
続いて、この発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。部分的に強調して図式化して示す。
【0021】
分析され主に液状試料内に含まれる少なくとも1つのリガンド2を検出する全体が1で示される装置は、半導体技術の方法で光ウエーブガイド4と一体化される半導体チップ3を有する(図1)。ウエーブガイドは、例えば、重合体材料から構成できる。
【0022】
図2において、ウエーブガイド4の表面には、リガンド2へ接触した場合に結合するレセプター5が結合することが分かる。レセプター5の固定は、例えば、上にレセプター5を付着するシラン化合物又はウエーブガイド4上に配置されるポリイミド層により達成できる。レセプター5はウエーブガイド4上又は、ウエーブガイド上にあるポリイミド層上にプリントできる。図2の実施例では、レセプター5はリガンド2の所定のエピトープに対する抗体である。レセプター5でのエピトープの結合後、エピトープとレセプター5から成る抗体マトリックスが、第1エピトープに結合する第2抗体6により標識を付されるように形成される。この抗体6は発光物質7と直接的又は間接的に標識を付される。
【0023】
図1において、半導体チップ3内には、例えば、レーザダイオード又は発光ダイオードのような光半導体ビーム源8が一体化されるのが分かる。ビーム源8から放射されるビーム9のスペクトルは、発光物質7が発光ビーム10を放射するために励起される少なくとも、1つの励起波長を有する。ウエーブガイド4内での励起ビーム9の接続のため、ビーム源8の放射範囲で接続光学系11が設けられ、接続光学系は図面で詳細に示されないマイクロプリズムを有し、マイクロプリズムは、励起ビームが全反射を利用してウエーブガイド4に案内されるようにビーム源8から放射される励起ビームを転向する。ウエーブガイド4の境界面での全反射により、光学的に薄い媒体、即ち、試料内で、電磁エバネッセントフィールドが発生し、それにより、ウエーブガイド4の表面に結合される発光物質7は、発光ビーム10を放射するために励起される。エバネッセントフィールドは数百ナノメータ深さだけが試料内に入り込むので、ウエーブガイドの表面に結合される発光物質7は発光ビーム10を放射するために専ら励起され、他方、試料内に含まれる結合されない発光物質7は実際には、発光ビームに貢献しない。
【0024】
発光ビーム10の検出のため、それぞれ、半導体素子として構成される複数の光ビーム受信器12が半導体チップ3内に一体化される。ビーム受信器12は、発光ビーム10に対して通過するウエーブガイド4のレセプター5と離れた裏側に配置される。つまり、発光ビーム10は結像光学系の中間接続なしに、ビーム受信器12に直接に生じる。それにより、この装置は簡単で安価な構造を有する。
【0025】
発光物質7では、上向き変換発光物質が重要である。この種の発光物質は欧州特許公開公報第0723146号から周知である。上向き変換発光物質の例として、Dyornics GmbH,イエナ在の色素BND及びIR-140が言及されている。他方、下向き変換発光物質より、上向き変換発光物質は、わずかな量子効果ではなくて多くの量子効果からなる量子放射に必要とされるエネルギーに関連し、それで、下向き変換発光物質に比較して本質的に大きいストークス変位を有し、励起ビームの波長は、例えば、発光ビームの波長と同じ約2倍の大きさにできる。それにより、コンパクトなサイズの場合に高いビーム強度を可能にする赤外線半導体ビーム源8をビーム源として設けることができる。更に、この種の半導体ビーム源8の赤外線光は、短波光ビームに対してわずかな漂遊効果を生じる長所を持つ。上向き変換発光物質7により、ビーム源8から放射される光ビームは可視光線又は近似赤外光線に変換でき、ビーム受信器12のために高い検出受信性能を有する。励起ビーム9にとって、ビーム受信器12は不感である。
【0026】
図2、図3において、ウエーブガイド4はビーム受信器12を越えて延び、レセプター5はビーム受信器12に直接に対向してウエーブガイド4の表面に配置されるのが分かる。それで、発光ビーム10は発光物質7からビーム受信器12へ直接経路で到達できる。
【0027】
図4、図5で示される実施例では、ウエーブガイド4は半導体チップ3に直接に隣接するのが分かる。ウエーブガイド4は、内部に電子回路のための構造部13が配置される遮断部を有する。電子回路はビーム受信器12と接続される導体路を有する。ウエーブガイド4に隣接する半導体チップ範囲で半導体チップの地形は、レセプター5に対向する境界面14が半導体チップ3とウエーブガイド4との間において半導体チップ3の延長面に対して平行にそれぞれ配置される2つの仮想面14a、14bの間で延び、仮想面の間隔Xは励起ビーム9の波長の1/8より小さい。それにより、境界面14でのウエーブガイド4からの望ましくない光断絶が著しく回避される。一方の面からずれる半導体チップ3の表面地形を必要とする構造は、例えば、アルミニュウムから成る導体路のように、本質的にウエーブガイド4に並んで横に配置される。図5の実施例では、ウエーブガイド4は半金属酸化物層により形成され、半金属酸化物層は半導体チップ3の半導体基板3上で表面近傍範囲において平坦に延び、半導体基板の延長面とほぼ平行に走る。半導体基板は、例えばシリコンから構成できる。
【0028】
図6の実施例では、半導体チップ3とウエーブガイド4との間に中間層15が配置され、中間層は半導体チップ3の延長面に対してほぼ平行に走り、その光屈折率はウエーブガイド4の光屈折率より小さい。中間層15は半導体チップ3に直接に隣接し、半導体チップ3の負形成部を有する。負形成部は、例えば、中間層15の材料が装置1の製造の場合に遠心法での液化形状で半導体チップ3上に載置され、半導体チップ3の表面上に均一に分配された後で硬化されることにより達成できる。半導体チップ3と離れた側では、中間層15は平坦に構成される。中間層15上には別の層としてウエーブガイド4が載置される。つまり、中間層15とウエーブガイド4と間に平坦な境界面が生じ、この境界面はウエーブガイド4への励起ビーム9の著しく障害のない案内を可能にする。その際、ウエーブガイド4は半導体チップ3上で均一に延長できる。
【0029】
図1において、ビーム受信器12は導体路を介して半導体チップ3内で一体化される制御装置及び判別装置17と接続されることが分かる。判別装置17は、上位に配置される表示ユニット及び判別ユニット或いはそれらの内の一方と接続するため、図面において概要で示すインターフェース装置、例えば、マイクロコンピュータを持つ。
【0030】
図7において、複数のビーム受信器12がマトリックス状に並列して半導体基板内にある。個々のビーム受信器12の検出範囲内には、それぞれ、複数のレセプター5を備えた検出フィールドが配置される。個々の検出フィールドは、それぞれ、所定のリガンド2と結合できる、異なるレセプター5を有する。
【0031】
図2〜図4において、レセプターはビーム受信器12に対して拡大して図示されている。一方では、相互に隣接する検出フィールドの間の間隔及び他方では、レセプター5に結合される発光物質7と、発光物質とそれぞれに関連するビーム受信器12との間の間隔は、個々のビーム受信器12が本質的に隣接するビーム受信器の検出フィールドからの発光ビームを受信できないように選択される。
【0032】
図1において、半導体チップ3は、内部空洞17内にレセプター5が配置される貫流測定室の壁範囲を形成するのが分かる。貫流測定室は入口19と出口19とを持つ。入口19は試料のための図面で詳細に示さない供給路と接続され、出口19は排出路と接続される。
【0033】
更に、ビーム源8は励起ビーム9を変調するため、半導体チップ3内で一体化される変調装置20と接続されることを言及する。変調装置20により、励起ビーム9は、例えば、ビーム受信器12の測定信号内で場合により含まれ、漂遊光線又は不特定の光線励起により引き起こされる信号部分を信号判別で考慮できるため、タイミングでオン・オフできる。変調装置20は、このために、接続ラインを介して判別装置16と接続される。
【0034】
分析試料内に含まれる少なくとも1つのリガンド2を検出する装置1は、つまり、光ウエーブガイド4を有し、光ウエーブガイドの表面にはリガンドを特定するレセプター5が直接的又は間接的に固定される。リガンド2はレセプター5の接触の場合にリガンドに結合する。装置1はウエーブガイド4内への励起ビーム9の接続のために少なくとも1つの光ビーム源8を持つ。ビーム9はレセプター5でのリガンド2の結合に依存して発光ビーム10の放射を励起するために役立つ。発光ビーム10の検出のため、半導体チップ3の半導体基板は少なくとも1つのビーム受信器12と一体化される。ウエーブガイド4は半導体基板と一体化され、又は、ウエーブガイド層として半導体基板上に装着される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は貫流測定室を備え、分析試料内に含まれるリガンドを検出する装置の断面を示す。
【図2】図2及び図7は発光物質により間接的に標識を付されるリガンドが結合されるレセプターがウエーブガイドに固定され、光ウエーブガイドを有する貫流測定室の壁範囲を断面で示す。
【図3】図3は図2と類似し、発光ビームの放射のため、発光物質が励起ビームにより励起され、励起ビーム及び発光ビームがビームの形状であり、概要で表される図を示す。
【図5】図5は半導体チップの部分範囲の平面を示す。
【図6】図6は半導体チップの部分範囲と、半導体チップ上に配置されるウエーブガイドの断面を示す。
【図7】図7は図6に類似するが、ウエーブガイドと半導体チップとの間に中間層が配置されている図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析試料に含まれる少なくとも1つのリガンド(2)を検出する装置(1)において、リガンド(2)と接触した場合にリガンド(2)と特異的結合する少なくとも1つのレセプター(5)が、表面に直接的又は間接的に固定される光ウエーブガイド(4)と、レセプター(5)でのリガンド(2)の結合に依存して発光ビーム(10)の放射を励起するため、ウエーブガイド(4)内へ励起ビーム(9)を接続する少なくとも1つの光ビーム源(8)と、発光ビーム(10)の検出のために半導体基板上に配置される少なくとも1つのビーム受信器(12)を有する半導体チップ(3)とを備え、ウエーブガイド(4)は半導体基板とモノリシックに集積されるか、ウエーブガイド層として半導体チップ(3)上に配置されることを特徴とする分析試料に含まれる少なくとも1つのリガンドを検出する装置。
【請求項2】
ウエーブガイド(4)は少なくとも1つのビーム受信器(12)を越えて延び、少なくとも1つのレセプター(5)は、特にビーム受信器(12)と直接に対向してウエーブガイド(4)の表面に配置されることを特徴とする請求項1記載の装置(1)。
【請求項3】
ウエーブガイド層は半導体チップ(3)に直接隣接し、半導体チップ(3)の地形は、ウエーブガイド(4)に隣接する半導体チップ範囲内で、少なくとも1つのレセプター(5)に対向する境界面(14)が半導体チップ(3)とウエーブガイド(4)との間において、半導体チップ(3)の延長平面に対して平行に配置される2つの平面(14a, 14b)の間で走り、2つの平面の間隔(x)は励起ビーム(9)の波長より小さく、特に半分より小さく、特に1/4であり、場合により励起ビーム(9)の波長の1/8であることを特徴とする請求項1又は2記載の装置(1)。
【請求項4】
半導体チップ(3)は、電子回路のためにウエーブガイド(4)と横に並んだ構造部(13)を有することを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項5】
半導体チップ(3)とウエーブガイド(4)との間に中間層(15)が配置され、中間層の光屈折率はウエーブガイド(4)の光屈折率より小さく、中間層(15)は半導体チップ(3)の負形成部を有し、負形成部は半導体チップ(3)に直接的に隣接し、半導体チップ(3)と離れウエーブガイド(4)に直接的に隣接する中間層(15)の前側が本質的に平坦に構成されることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項6】
中間層は接着剤層として構成され、特に重合体層として構成されることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項7】
ウエーブガイド(4)は少なくとも1つの結合個所を介して半導体チップ(3)と接続されることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項8】
ウエーブガイド(4)は、特に透明な重合体材料、特にポリスチロールから成る薄膜層として構成されることを特徴とする請求項1ないし7いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項9】
ウエーブガイド(4)は、金属酸化物層、特に二酸化ケイ素層又は五酸化タンタル層により形成されることを特徴とする請求項1ないし8いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項10】
光ビーム源(8)は半導体ビーム源として構成され、半導体チップ(3)内に一体化されることを特徴とする請求項1ないし9いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項11】
ウエーブガイド(4)内への励起ビーム(9)の接続のため、光ビーム源(8)の放射範囲内で接続光学系(11)が設けられ、接続光学系は、特にウエーブガイド(4)と一体に構成され、特に少なくとも1つのプリズム、光格子及び転向ミラー或いはそれらの内の一方を有することを特徴とする請求項1ないし10いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項12】
複数のビーム受信器(12)が、特にセル状又はマトリックス状に並列して半導体基板内で一体化され、個々のビーム受信器(12)の検出範囲内で、それぞれ、少なくとも1つのレセプター(5)を有する検出フィールドが配置されることを特徴とする請求項1ないし11いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項13】
個々のビーム受信器(12)が本質的に他のビーム受信器(12)の検出範囲の発光ビームを受信しないように、検出フィールドは相互に離間し、ビーム受信器(12)に関して配置されることを特徴とする請求項1ないし12いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項14】
少なくとも1つのレセプター(5)は、少なくとも入口(19)と出口(19)とを有する貫流測定室の内部空洞(17)内に配置され、半導体チップ(3)は、特に貫流測定室の壁範囲を形成することを請求項1ないし13いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項15】
貫流測定室の温度調節のため、特にペルチェ素子を有する加熱装置及び冷却装置或いはそれらの内の一方が設けられることを特徴とする請求項1ないし14いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項16】
貫流測定室内には、少なくとも1つのレセプター(5)での少なくとも1つのリガンド(2)の結合の検出のため、少なくとも1つの試薬及び反応体或いはそれらの内の一方が貯留されることを特徴とする請求項1ないし15いずれか1項に記載の装置(1)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析試料に含まれる少なくとも1つのリガンド(2)を検出する装置(1)において、リガンド(2)と接触した場合にリガンド(2)と特異的結合する、異なるレセプターが直接的又は間接的に固定される複数の検出フィールドが表面に配置される光導波管(4)と、レセプター(5)でのリガンド(2)の結合に依存して発光物質(10)のエバネッセント励起のため、光導波管(4)内への励起ビーム(9)を接続する少なくとも1つの光ビーム源(8)と、個々の検出フィールドのために、それぞれ、発光物質(10)の局部分解の検出のため、半導体チップ上に配置される少なくとも1つのビーム受信器(12)を有する半導体チップ(3)とを備え、導波管(4)は半導体基板とモノリシックに集積され、又は導波管層として半導体チップ(3)上に配置され、検出フィールドに付設されるビーム受信器(12)は検出フィールドに対向する導波管の裏側において半導体基板内で並列して直接に配置されることを特徴とする分析試料に含まれる少なくとも1つのリガンドを検出する装置。
【請求項2】
半導体チップ(3)の地形は望ましくない光離脱を避けるため、少なくとも1つのレセプター(5)に対向する境界面(14)が半導体チップ(3)と導波管(4)との間で、半導体チップ(3)の延長面に対して平行に配置される2つの平面(14a, 14b)間で走り、2つの平面の間隔(x)は励起ビーム(9)の波長より小さく、特に半分より小さく、特に1/4であり、場合により励起ビーム(9)の波長の1/8であることを特徴とする請求項1記載の装置(1)。
【請求項3】
半導体チップ(3)は、電子回路のために導波管(4)と横に並んだ構造部(13)を有することを特徴とする請求項1又は2記載の装置(1)。
【請求項4】
半導体チップ(3)と導波管(4)との間には中間層(15)が配置され、中間層の光屈折率は導波管(4)の屈折率より小さく、中間層(15)は半導体チップ(3)に直接隣接する半導体チップ(3)の負形成部を有し、半導体チップ(3)と対向して導波管(4)に隣接する中間層(15)の前側で直接に本質的に平坦に構成されることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項5】
中間層は接着剤層として構成され、特に重合体層として構成される構成されることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項6】
導波管(4)は少なくとも1つの結合個所を介して半導体チップ(3)と接続されることを特徴とする請求項1ないし7いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項7】
導波管(4)は、特に透明な重合体材料、特にポリスチロールから成る薄膜層として構成されることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項8】
導波管(4)は金属酸化物により形成され、特に二酸化ケイ素層又は五酸化タンタル層として形成されることを特徴とする請求項1ないし7いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項9】
光ビーム源(8)は半導体ビーム源として構成され、半導体チップ(3)内で一体化されることを特徴とする請求項1ないし8いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項10】
導波管(4)内への励起ビーム(9)の接続のため、光ビーム源(8)の放射範囲内で接続光学系(11)が設けられ、接続光学系は、特に導波管(4)と一体に構成され、特にプリズム、光格子及び転向ミラー或いはそれらの内の一方を有することを特徴とする請求項1ないし9いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項11】
個々のビーム受信器(12)が、本質的に他のビーム受信器(12)の検出フィールドの発光ビームを受信しないように、検出フィールドは相互に離間され、ビーム受信器(12)に関して配置されることを特徴とする請求項1ないし10いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項12】
少なくとも1つのレセプター(5)は、少なくとも入口(19)と出口(19)とを有する貫流測定室の内部空洞(17)内に配置され、半導体チップ(3)は、特に貫流測定室の壁範囲を形成することを請求項1ないし11いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項13】
貫流測定室の温度調節のため、特にペルチェ素子を有する加熱装置及び冷却装置或いはそれらの内の一方が設けられることを請求項1ないし12いずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項14】
貫流測定室内には、少なくとも1つのレセプター(5)での少なくとも1つのリガンド(2)の結合の検出のため、少なくとも1つの試薬及び反応体或いはそれらの内の一方が貯留されることを特徴とする請求項1ないし13いずれか1項に記載の装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−502379(P2006−502379A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−540719(P2004−540719)
【出願日】平成15年9月26日(2003.9.26)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010736
【国際公開番号】WO2004/031750
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(305051211)ミクロナス ゲーエムベーハー (16)
【Fターム(参考)】