説明

分注装置、自動分析装置、および開閉体

【課題】液体の分注を正確に行うことができる分注装置、自動分析装置、および開閉体を提供する。
【解決手段】液体を保持するシリンジ4と液体を吐出するノズル2をつなげる管路5(第1の管路)と、この管路5と管路5内の圧力を測定する圧力センサ61とをつなげる管路7(第2の管路)と、管路5と管路7との接続部に設けられ、管路5を開状態に維持するとともに、管路5と管路7との間の開閉を行う弁8(開閉手段)と、を備える。弁8は、ノズル2が液体を外部へ吐出するときに管路5と管路7との間を閉じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を分注する分注装置、当該分注装置を備えて検体試料の分析を行う自動分析装置、および開閉体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定量の液体を吸引、吐出する分注装置においては、分注時の異常を検知するための技術として、液体を保持するシリンジと液体を吐出するノズルとをつなげる主管路から分岐した管路上に圧力センサを設ける技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
上述した技術では、圧電素子型の圧力センサを適用する場合、分注時の圧力変動に応じて圧電素子の変形による容量変化が生じ、分注される液量が変動してしまうという問題があった。この問題を解決するための技術として、主管路から分岐した管路と圧力センサとの間に電磁バルブを設ける技術が知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−333449号公報
【特許文献2】特許第3339177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、吐出する液体が微量である場合などにおいて、圧力センサ部分がデッドボリュームとなり、正確な量が吐出できないという問題があった。また、主管路から分岐した管路部分が変形して容積変動を生じる可能性があり、このような容積変動も、液体を正確に吐出する上での妨げとなっていた。
【0006】
これに対して、上記特許文献2に記載の技術では、液体を吐出する際に電磁バルブを閉じるため、圧力センサ部分のデッドボリュームの問題は解消されるが、主管路から分岐して電磁バルブにつながる部分の容積変動の問題は依然として解消されておらず、液体を正確に吐出する上での妨げとなっていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、液体の分注を正確に行うことができる分注装置、自動分析装置、および開閉体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る分注装置は、微量の液体を分注する分注装置において、液体を保持するシリンジに接続される第1の管路と、前記第1の管路と管路内の圧力を測定する圧力センサとをつなげる第2の管路と、前記第1の管路上または当該第1の管路と前記第2の管路との接続部に設けられ、当該第1の管路を開状態に維持するとともに、当該第1の管路と当該第2の管路との間の開閉を行う開閉手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明における「微量」とは、好ましくは1μLより少ない量である。
【0010】
また、本発明に係る分注装置は、上記発明において、前記第1の管路は、前記シリンジと液体を吐出するノズルとをつなげる管路であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る分注装置は、上記発明において、前記第1の管路は、液体を吐出するノズルを洗浄する洗浄液を前記シリンジへ供給する管路であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る分注装置は、上記発明において、前記開閉手段は、前記ノズルが所定量の液体を外部へ吐出するとき、前記第1の管路と前記第2の管路との間を閉じることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る分注装置は、上記発明において、前記開閉手段は、前記ノズル内部を洗浄するとき、または当該ノズルから液体を吸引するとき、前記第1の管路と前記第2の管路との間を開くことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る自動分析装置は、検体を分注する検体分注部と、試薬を分注する試薬分注部とを有し、前記検体と前記試薬とを反応させることによって前記検体の成分を分析する自動分析装置であって、前記検体分注部または前記試薬分注部は、上記いずれかの発明に記載した分注装置を用いて構成されたことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る開閉体は、第1の管路と、当該第1の管路とは異なる管路との接続部に設けられ、当該第1の管路を開状態に維持するとともに、当該第1の管路と当該第2の管路との間の開閉を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、液体を保持するシリンジに接続される第1の管路と、この第1の管路と管路内の圧力を測定する圧力センサとをつなげる第2の管路と、第1の管路上または第1および第2の管路の接続部に設けられ、第1の管路を開状態に維持するとともに当該第1の管路と第2の管路との間の開閉を行う開閉手段と、を備えたことにより、圧力センサ部分のデッドボリュームや圧力伝達用液体を充填する管路部分の変形の影響を受けることなく、正確な量の液体の吐出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。なお、以下の説明で参照する図面はあくまでも模式的なものであって、同じ物体を異なる図面で示す場合には、寸法や縮尺等が異なる場合もある。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る分注装置の構成を示す図である。同図に示す分注装置1は、分注対象の液体を直接吸引または吐出する細管状のノズル2と、ノズル2に鉛直方向の昇降動作や水平方向の回転動作を行わせることによってノズル2を移送するノズル移送部3と、ノズル2から分注対象の液体を吸引または吐出させ、ノズル2に圧力を伝達する圧力伝達用液体であるとともにノズル2の洗浄用液体である洗浄液Waの吸排動作を行うシリンジ4と、を備える。ノズル2とシリンジ4は、洗浄液Waの流路をなす管路5(第1の管路)を介して接続される。
【0019】
また、分注装置1は、管路5の内部の圧力を検出する圧力検出部6を備える。圧力検出部6は、管路5から分岐して設けられる管路7(第2の管路)に接続される。管路5上の管路7との接続部には、管路5の開状態を維持するとともに、管路5と管路7との間の開閉を行う弁8が設けられている。
【0020】
図2は、本実施の形態1に係る開閉体である弁8の断面形状を示すとともに、弁8の近傍の構成を示す部分拡大図である。弁8は、球殻状をなす接続部81と、接続部81の内部に設けられ、所定の軸を回転軸として回転可能な回転部82とを有する。回転部82は、接続部81の球殻と同心状に配置された球状をなし、その球の中心を通る一つの軸を回転軸とする。
【0021】
接続部81は、回転部82の回転軸方向に貫通された二つの開口部811と、回転部82の中心を通り、回転部82の回転軸と交わる方向に貫通された開口部812とを有する。開口部811は管路5に接続される一方、開口部812は管路7に接続される。なお、接続部81と管路5または管路7との接続態様については、従来の弁と管路との接続態様と同様であるため、図1や図2では簡略化して記載している。この点については、他の図面も同様である。
【0022】
回転部82は、回転軸に沿って貫通された貫通路821と、貫通路821の中心部から貫通路821と交わる方向に分岐し、回転部82の表面まで延出する分岐路822とを有し、CPU等を用いて構成される制御部9によって回転制御される。貫通路821は、開口部811と常に連通している。また、分岐路822は、回転部82の静止位置に応じて開口部812と連通可能である。
【0023】
図2において、管路5と管路7は、開口部811,貫通路821,分岐路822,開口部812を順次介すことによって連通している。この意味で、図2に示す状態は、弁8を開いた状態である。
【0024】
図3は、図2に示す状態から回転部82を回転することによって弁8を閉じた状態を示す図である。図3において、接続部81の開口部812は、回転部82の表面によって遮蔽されており、管路5と管路7とは連通していない。
【0025】
引き続き、分注装置1の構成を説明する。シリンジ4は、シリンダー4aとプランジャー4bとを有し、プランジャー駆動部10によってプランジャー4bがシリンダー4aの内部を図1における上下方向に摺動することにより、洗浄液Waを介してノズル2に伝達すべき圧力を発生させる。
【0026】
プランジャー駆動部10は、例えばリニアモーターを用いて構成され、プランジャー4bを高速で駆動する機能を有する。本実施の形態1においては、分注装置1が、1μLよりも少ない微量の液体を分注することを想定している。
【0027】
プランジャー4bの移動距離が微小であるような微量の分注において、分注対象の液体を確実に吐出させるためには、ノズル2の開口端から離脱する液体の速度が重要である。すなわち、分注対象の液体を、ノズル2の開口端の液面の表面張力やノズル2の内壁の粘性抵抗に抗して吐出するためには、特に、吐出開始時の液体の初速が重要であるとともに、液体の吐出に必要なプランジャー4bのシリンダー4aへの進入動作を40msec以内に完了させる必要があることが、実験によって明らかになっている。したがって、プランジャー駆動部10は、プランジャー4bのシリンダー4aへの進入動作を40msec以内で完了可能な駆動を行う機能を有していることが望ましい。
【0028】
シリンジ4は、管路5とは異なる管路11にも接続されている。この管路11は、洗浄液Waを貯留するタンク12に達しており、その途上には、シリンジ4に近い側から、洗浄液Waの流量を調整する電磁弁13と、洗浄液Waを吸引するポンプ14とが順次設けられている。タンク12に貯留される圧力伝達用の洗浄液Waとしては、イオン交換水、蒸留水、脱気水、逆浸透膜投下水などの非圧縮性流体が適用される。
【0029】
圧力検出部6は、弁8を介して管路5に接続され、管路5の内部に充填された洗浄液Waの圧力変化を検出して電気信号に変換する圧力センサ61と、圧力センサ61から出力された電気信号に対して増幅やA/D変換などの信号処理を施す信号処理回路62とを有する。なお、圧力検出部6の管路5上での設置位置は、圧力センサ61の感度などの条件によって適宜変更可能である。
【0030】
以上の構成を有する分注装置1が分注対象の液体(液体中にわずかな固体成分を含有する場合も含む)を吸引する際には、管路5,7,11に洗浄液Waを充填した後、弁8を開くとともに電磁弁13を閉じた状態でプランジャー4bを退避させ、液体を吸引する。この際、圧力センサ61は、管路5内の圧力変動を検知する。その後、弁8を閉じてプランジャー4bを前進させることにより、ノズル2から外部へ所定量の液体を吐出する。なお、プランジャー4bの移動量は、液体の吸引量および吐出量に応じて定められる。
【0031】
以上説明した分注装置1によれば、液体を吐出する時、弁8の回転部82を回転させて管路7を遮蔽することにより、圧力センサ61や管路7のデッドボリュームの影響を受けずに済み、正確な量の液体を分注することができる。また、弁8を管路5上の管路5と管路7との接続部に設けるので、液体の吐出時にノズル2とつながる管路7の長さを最小にすることができ、管路7の変形による吐出量への影響を最小限に抑えることができる。
【0032】
本実施の形態1に係る分注装置1は、検体と試薬とを反応させることによって検体の成分の分析を行う自動分析装置に適用することができる。図4は、分注装置1を備えた自動分析装置要部の構成を示す説明図である。同図に示す自動分析装置100は、血液や体液等の検体(試料)とその検体の検査項目に応じた試薬とを所定の反応容器にそれぞれ分注し、その反応容器内で反応した液体に対して光学的な測定を行う測定ユニット101と、測定ユニット101を含む自動分析装置100の制御を行うとともに測定ユニット101における測定結果の分析を行うデータ処理ユニット201とを有し、これら二つのユニットが連携することによって複数の検体の生化学的な分析を自動的かつ連続的に行う装置である。
【0033】
測定ユニット101は、検体が収容された検体容器111を保持する複数のラック112を順次移送する検体移送部102と、試薬容器121を保持する試薬容器保持部103と、検体と試薬とを反応させる反応容器131を保持する反応容器保持部104とを備える。また、測定ユニット101は、検体移送部102上の検体容器111に収容された検体を反応容器131に分注する検体分注部105と、試薬容器保持部103上の試薬容器121に収容された試薬を反応容器131に分注する試薬分注部106と、反応容器131の内部に収容された液体を攪拌する攪拌部107と、光源から照射されて反応容器131内を通過した光を受光して所定の波長成分の強度等を測定する測光部108と、洗浄液を用いて反応容器保持部104上の反応容器131の洗浄を行う反応容器洗浄部109と、を備える。
【0034】
試薬容器保持部103および反応容器保持部104は、試薬容器121および反応容器131をそれぞれ収容保持するホイールと、このホイールの底面中心に取り付けられ、その中心を通る鉛直線を回転軸としてホイールを回転させる駆動手段とを有する(図示せず)。各容器保持部の内部は予め設定された温度に保たれている。なお、生化学的な分析を行う際には、一つの検体に対して2種類の試薬を用いることが多いため、第1試薬用の試薬容器保持部103と第2試薬用の試薬容器保持部103とを別個に設けるとともに、各試薬容器保持部103に対応する試薬分注部106を別個に設けてもよい。
【0035】
検体分注部105および試薬分注部106は、本実施の形態1に係る分注装置1によって構成される。このうち、検体の方がより少ない量の分注を行うことが多いため、少なくとも検体分注部105は、分注装置1によって構成されることが望ましい。
【0036】
ところで、図4では、測定ユニット101の主要な構成要素を模式的に示すことを主眼としているため、構成要素間の位置関係は必ずしも正確ではない。測定ユニット101の正確な構成要素間の位置関係は、試薬容器保持部103の数や分注動作のインターバルにおける反応容器保持部104のホイールの回転態様などの各種条件に応じて定められる。
【0037】
次に、データ処理ユニット201の構成を説明する。データ処理ユニット201は、CPU,ROM,RAM等を具備したコンピュータによって実現される。データ処理ユニット201は、棒状部材ボードやマウスなどを有し、検体の分析に必要な情報や自動分析装置100の動作指示信号などを含む情報等の入力を受ける入力部202と、液晶等のディスプレイ装置を有し、検体の分析に関する情報等を表示出力する出力部203と、自動分析装置100が有する各機能または各手段の制御を行う制御部204と、検体の分析に関する各種情報を記憶する記憶部205と、を備える。
【0038】
制御部204は、測定ユニット101の測定結果に基づいた分析演算を行い、検体の分析データを生成する演算部241を有する。演算部241は、具体的な分析演算として、記憶部205で記憶する検量線を用いることにより、測光部108で測定した吸光度を濃度に変換する演算を行う。また、制御部204は、検体分注部105や試薬分注部106として適用される分注装置1の制御部9の機能を兼備している。
【0039】
以上の構成を有する自動分析装置100によれば、本実施の形態に係る分注装置1を検体分注部105および試薬分注部106として備えたため、微量の検体や試薬に対する高精度の分注を実現することができる。
【0040】
以上説明した本発明の実施の形態1によれば、液体を保持するシリンジに接続される第1の管路と、この第1の管路と管路内の圧力を測定する圧力センサとをつなげる第2の管路と、第1の管路上または第1の管路と第2の管路との接続部に設けられ、第1の管路を開状態に維持するとともに当該第1の管路と第2の管路との間の開閉を行う弁(開閉手段)と、を備えたことにより、液体の分注を正確に行うことができる。特に、本実施の形態1は、微量の液体の分注を行う際に大きな効果を奏する。
【0041】
また、本実施の形態1によれば、弁を第1の管路と第2の管路との接続部に設けたことにより、液体を吐出する際にノズルとつながる管路の長さを最小にすることができ、管路の変形による影響を最小限に抑えることができる。
【0042】
図5は、本実施の形態1の変形例に係る分注装置の構成を示す図である。同図に示す分注装置20は、弁8が、電磁弁13とシリンジ4をつなぐ管路16(第1の管路)に設けられる。ノズル2とシリンジ4をつなぐ管路15には、弁8は介在していない。この点を除く分注装置20の構成は、上述した分注装置1の構成と同じであり、得られる効果も同様である。
【0043】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2に係る分注装置が備える弁の構成を示す斜視図である。また、図7は、図6のA−A線断面図である。これらの図に示す弁31(開閉体)は、円筒形状をなす接続部32と、接続部32の側面の一部を被覆する中空円筒状をなし、制御部9の制御のもと、接続部32の長手方向に対して上下動可能な可動部33とを有する。
【0044】
接続部32は、回転軸の中心軸に沿って貫通する貫通路321と、貫通路321から分岐し、可動部33と対向する側面に開口面を有する分岐路322と有する。貫通路321の両端は、管路5と連通するように接続される。
【0045】
可動部33は、移動方向と直交する方向すなわち貫通路321と直交する方向に貫通された開口部331を有し、管路7と連通可能に接続される。
【0046】
図7において、管路5と管路7は、貫通路321,分岐路322,開口部331を順次介すことによって連通している。この意味で、図7に示す状態は、弁31を開いた状態である。
【0047】
図8は、図7に示す状態から可動部33を管路5の長手方向に沿って移動させることにより、弁31を閉じた状態を示す断面図である。図8において、可動部33の開口部331は、接続部32の側面によって遮蔽されており、管路5と管路7とは連通していない。図8に示す状態では、管路5と管路7とを接続していた分岐路322がデッドボリュームとなるが、この部分の体積は極めて小さいため、微量分注を行う際にもその影響をほとんど生じずに済む。
【0048】
なお、可動部33を接続部32の長手方向に沿って移動させる代わりに、可動部33を接続部32の周りに回転させる構成としてもよい。
【0049】
本実施の形態2に係る分注装置は、開閉手段である弁31の構成を除いて、上記実施の形態1に係る分注装置1と同じ構成を有している。したがって、本実施の形態2に係る分注装置によれば、実施の形態1と同様、圧力センサ部分のデッドボリュームや圧力伝達用液体を充填する管路部分の変形の影響を受けることなく、液体の分注を正確に行うことができる。
【0050】
なお、本実施の形態2に係る分注装置を、自動分析装置の検体分注部や試薬分注部に適用することも可能である。
【0051】
(実施の形態3)
図9は、本発明の実施の形態3に係る分注装置が備える弁の構成を示す断面図である。同図に示す弁41(開閉体)は、電磁石によって金属製の棒状部材(キー)の進退動作を行わせることにより、管路5と管路7との間を開閉自在とする構成を有している。具体的には、弁41は、管路5と管路7とを接続する接続部42と、先端が接続部42に嵌合可能であり、自身の進退動作によって管路5と管路7との開閉状態を定める棒状部材43と、接続部42に取り付けられて棒状部材43の基端側を保持し、内蔵する電磁石によって棒状部材43の進退動作を制御する保持部44と、を備える。
【0052】
接続部42は、管路5と管路7とを連通する孔部421を有し、この孔部421の端部のうち、保持部44に面して棒状部材43が摺動する端部近傍には、管路5,7からの液漏れを防止するシール部材45が設けられている。
【0053】
棒状部材43の長手方向略中央部には、半径方向に突出したフランジ部43aが形成されている。また、棒状部材43の孔部421内で進退する管路5の開口面に当接する先端部は、先細形状をなしている。棒状部材43の先端部が先細形状をなすことにより、管路5の側面に形成される開口の面積を小さくし、管路5の耐久性を確保することができる。
【0054】
保持部44は、棒状部材43の基端部に当接し、棒状部材43をその長手方向に付勢するバネ46と、通電の切換によって棒状部材43に進退動作を行わせる電磁石47とを有する。また、保持部44には、棒状部材43を保持部44内で進退させるための孔部441が形成されている。孔部441は、フランジ部43aと略同径の大径部分と、この大径部分と同軸をなし、棒状部材43の他の部分と略同径の小径部分とからなる段付き孔形状をなしており、接続部42の孔部421に連通している。また、孔部441の大径部分は、フランジ部43aの抜け止め機能を有している。電磁石47は、鉄等の磁性材料からなる芯にコイルを巻き付けることによって構成される。
【0055】
図9は、電磁石47に電流が流れていない非通電状態を示している。この非通電状態において、棒状部材43の先端は、管路5と接続部42との境界面まで達している。このため、図9に示す非通電状態では、管路5と管路7との間が遮蔽され、弁41が閉じている。図9からも明らかなように、弁41が閉じた状態で、管路5からの分岐部分にはデッドボリュームが存在しないため、分注対象の液体を正確に吐出することができる。
【0056】
電磁石47に電流を流すと、棒状部材43は電磁石47によって引き寄せられ、図9に示す位置から基端側(図の右側)へ移動していき、図10に示す状態となる。したがって、図10に示す通電状態では、管路5と管路7が連通し、弁41が開いた状態となる。
【0057】
本実施の形態3に係る分注装置は、開閉手段である弁41の構成を除いて、上記実施の形態1に係る分注装置1と同じ構成を有している。したがって、本実施の形態3に係る分注装置によれば、実施の形態1と同様、圧力センサ部分のデッドボリュームや圧力伝達用液体を充填する管路部分の変形の影響を受けることなく、液体の分注を正確に行うことができる。
【0058】
なお、本実施の形態3においても、上述した開閉手段を備えた分注装置を、自動分析装置の検体分注部や試薬分注部に適用することが可能である。
【0059】
また、本実施の形態3では、保持部内での電磁石、バネ、および棒状部材のフランジ部の位置関係を変更することにより、通電状態で弁を閉じる構成とすることもできる。
【0060】
図11は、本実施の形態3の変形例に係る分注装置が備える弁の構成を示す図である。同図に示す弁51(開閉体)は、管路5と管路7とを接続する接続部52と、先端が接続部52に嵌合可能であり、進退動作によって管路5と管路7との開閉状態を定める棒状部材53と、接続部52に取り付けられて棒状部材53の基端側を保持し、内蔵する電磁石によって棒状部材の進退動作を制御する保持部(図示せず)と、を備える。
【0061】
棒状部材53の基端部の構成(フランジ部を含む)および保持部の構成は、上述した弁41の棒状部材43の構成および保持部44の構成とそれぞれ同じである。この意味で、図11は、通電状態を示している。
【0062】
本変形例では、棒状部材53の進退方向が、管路5と平行である一方、管路7と直交している。このため、棒状部材53の先端部を先細形状とする必要はなく、棒状部材53は、フランジ部を除いて円筒形状をなしている。
【0063】
ここまで、本発明を実施するための最良の形態として、実施の形態1〜3を詳述してきたが、本発明はそれらの実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。すなわち、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態1に係る分注装置の構成を示す図である。
【図2】弁を開いた状態の拡大図である。
【図3】弁を閉じた状態の拡大図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置要部の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1の変形例に係る分注装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る分注装置が備える弁の構成を示す斜視図である。
【図7】図6のA−A線断面図である。
【図8】図7の状態から可動部を移動させた状態を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る分注装置が備える弁の構成(非通電時)を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係る分注装置が備える弁の構成(通電時)を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態3の変形例に係る分注装置が備える弁の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1,20 分注装置
2 ノズル
3 ノズル移送部
4 シリンジ
4a シリンダー
4b プランジャー
5,7,11,15,16 管路
6 圧力検出部
8,31,41,51 弁(開閉体)
9,204 制御部
10 プランジャー駆動部
12 タンク
13 電磁弁
14 ポンプ
32,42,52,81 接続部
33 可動部
43,53 棒状部材
43a フランジ部
44 保持部
45 シール部材
46 バネ
47 電磁石
61 圧力センサ
62 信号処理回路
82 回転部
100 自動分析装置
101 測定ユニット
102 検体移送部
103 検体容器保持部
104 反応容器保持部
105 検体分注部
106 試薬分注部
201 データ処理ユニット
321,821 貫通路
322,822 分岐路
331,811,812 開口部
421,441 孔部
Wa 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微量の液体を分注する分注装置において、
液体を保持するシリンジに接続される第1の管路と、
前記第1の管路と管路内の圧力を測定する圧力センサとをつなげる第2の管路と、
前記第1の管路上または当該第1の管路と前記第2の管路との接続部に設けられ、当該第1の管路を開状態に維持するとともに、当該第1の管路と当該第2の管路との間の開閉を行う開閉手段と、
を備えたことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記第1の管路は、
前記シリンジと液体を吐出するノズルとをつなげる管路であることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記第1の管路は、
液体を吐出するノズルを洗浄する洗浄液を前記シリンジへ供給する管路であることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項4】
前記開閉手段は、
前記ノズルが所定量の液体を外部へ吐出するとき、前記第1の管路と前記第2の管路との間を閉じることを特徴とする請求項2または3に記載の分注装置。
【請求項5】
前記開閉手段は、
前記ノズル内部を洗浄するとき、または当該ノズルから液体を吸引するとき、前記第1の管路と前記第2の管路との間を開くことを特徴とする請求項2または3に記載の分注装置。
【請求項6】
検体を分注する検体分注部と、試薬を分注する試薬分注部とを有し、前記検体と前記試薬とを反応させることによって前記検体の成分を分析する自動分析装置であって、
前記検体分注部または前記試薬分注部は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の分注装置を用いて構成されたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
第1の管路と、当該第1の管路とは異なる第2の管路との接続部に設けられ、当該第1の管路を開状態に維持するとともに、当該第1の管路と当該第2の管路との間の開閉を行うことを特徴とする開閉体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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