説明

分注装置

【課題】分注ノズルにより吸引した液体の吸引量を常に正確に検出することができるようにする。
【解決手段】分注ノズルの吸引部(チップ)12により液体Lを吸引した後、該液体を吐出させて分注する分注装置において、液体を吸引した前記吸引部12を所定位置で撮像するCCDカメラ14と、撮像して入力した画像からエッジを検出する画像処理部26と、検出された下端エッジと上端エッジとから液体の吸引量の正異常を判定する液面状態判定部28とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置、特に液体の分注量に過不足等の不具合が発生することを防止し、検査精度を向上する際に適用して好適な分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液状の検体の検査には分注装置が用いられている。この分注装置では、高精度な検査を実現するために、所定量の検体や薬液を正確に分注することが要求される。そして、その際には、一般に容器から液体を吸引するための吸引部を有する分注ノズルが用いられている。
【0003】
このような分注ノズルにより液体を分注する分注装置において、分注量(吸引量)をチェックする機能としては、例えば特許文献1には、分注ノズルに設置された圧力センサと演算機能を使って、上方から液体表面に向かって吸引部を下降させた際の圧力変化から液体との接触を検出した後、シリンジを所定長さ移動させることにより、予め計算してある目標の吸引量とする方法が開示されている。
【0004】
又、特許文献2には、プローブ(吸引部)と容器中の液面との接触を静電容量変化により検出した後、吸引動作を行なうことにより所定量の液体を分注する方法が開示されている。
【0005】
更に、特許文献3には、管内を通る流体の種類を光学的に識別する流体センサを設け、該流体センサの出力信号に基づいてセンサ設置箇所の通過量を積分解析して分注量、吸引量を求める演算手段を有するものが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−20320号公報
【特許文献2】特開2003−90754号公報
【特許文献3】特開2002−303633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献に開示されている分注装置は、いずれもセンサによる検出値を基に演算により吸引量を求める間接的な検出であるため、センサによる検出のばらつきや精度低下等があったとしても、それに起因する吸引量の過不足を検出することができないという問題があった。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、センサによる検出精度等の如何に拘わらず、分注ノズルにより吸引した液体の吸引量を常に正確に検出することができる分注装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、分注ノズルの吸引部により液体を吸引した後、該液体を吐出させて分注する分注装置において、液体を吸引した前記吸引部を所定位置で撮像する撮像手段と、撮像して入力した画像からエッジを検出するエッジ検出手段と、検出された下端エッジと上端エッジとから液体の吸引量の正異常を判定する吸引量判定手段とを備えたことにより、前記課題を解決したものである。
【0010】
本発明は、又、前記エッジ検出手段によりエッジが検出された吸引部の画像を、上下方向にサーチしてエッジを計数するエッジカウント手段と、計数されたエッジの数から液体の吸引状態の正異常を判定する状態判定手段とを備えているようにしてもよい。
【0011】
本発明は、更に、前記撮像手段により撮像された吸引部の画像から、該吸引部の傾斜角度を検出する傾斜検出手段と、検出された傾斜角度を考慮して、前記下端エッジと上端エッジの間の長さを算出するエッジ間算出手段とを備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液体を吸引した吸引部を撮像手段で撮像し、吸引された液体を画像入力すると共に、入力された画像からエッジを検出し、検出された下端エッジと上端エッジの差から吸引量を検出するようにしたので、液体の吸引量を直接的に検出することが可能となる。加うるに、吸引部を装着した時の高さ方向のばらつきや撮像位置での停止誤差もオミットすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明に係る第1実施形態の分注装置の要部を模式的に示す、ブロック図を含む概略側面図である。
【0014】
本実施形態の分注装置は、分注ヘッドユニット10を備えている。この分注ヘッドユニット10には、先端にチップ(吸引部)12が装着され、該チップ12内を負圧にすると共に、一体で上下動可能な複数の分注ノズル(明示せず)が内蔵され、図2に8本の例を示すように、各チップ12には、図示しない所定位置で検体等の液体Lを吸引することが可能になっている。
【0015】
又、上記分注ヘッドユニット10には、CCDカメラ(撮像手段)14がその側面に取付けられ、該カメラ14により、図示されている位置に位置決めされたチップ12を、バックライト16による照明の下で傾斜ミラー18により反射させて撮像可能になっている。
【0016】
又、本実施形態の分注装置は演算部20を有しており、該演算部20には前記CCDカメラ14により撮像するタイミング信号を出力する撮像タイミング生成部22と、該カメラ14により撮像する際にバックライト16を点灯させるバックライト点灯部24と、カメラ14で撮像して入力した画像データからエッジを検出するエッジ検出手段等として機能する画像処理部26と、検出されたエッジの中の下端エッジと上端エッジの差から液体の吸引量を求め、予め設定してある基準量と比較してその正異常を判定する全量判定手段等として機能する液面状態判定部28と、この判定結果からアラームを出力するか否かを判定するアラーム判定部30とが備えられ、該アラーム判定部30による判定の結果に基づいてアラームが表示されるようになっている。
【0017】
又、前記画像処理部26は、エッジが検出された吸引部の画像を、上下方向にサーチしてエッジを計数するエッジカウント手段としても機能し、又、前記液面状態判定部28は計数されたエッジの数から吸引状態の正異常を判定する状態判定手段としても機能するようになっている。
【0018】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0019】
まず、所定位置の容器(図示せず)から液体を吸引したチップ12を、図1に示す撮像位置に位置決めする。
【0020】
位置決め完了と同時に撮像タイミング生成部22にて制御されるタイミングで、バックライト照明16を点灯し(ステップ1)、同様に撮像タイミング生成部22にて制御されるタイミングで、CCDカメラ14の電子シャッタを切る(ステップ2)。なお、照明の明るさ及びシャッタスピード等の光学的な条件は、以下の処理に適した画像が得られるように予め調整してある。
【0021】
上記シャッタ動作に連動して出力される画像処理部26からCCDカメラ14への取込信号に従って、該処理部26にCCDカメラ14から画像を取り込む。
【0022】
この画像処理部26において、取り込んだ画像中の各チップについて、予め記憶してあるチップ形状とのパターンマッチングにより各チップの位置を検出する(ステップ4)。
【0023】
具体的には、入力された画像を微分フィルタ等で処理し、画素値が所定値以上異なる位置を境界として抽出することにより、チップ12及び吸引された液体Lの境界線がエッジとして抽出された、前記図2にイメージを示したようなエッジ抽出画像を作成し、抽出された各チップに対してパターンマッチングを行なう。この位置検出結果に基づいて、各チップの画像上の位置補正を行なうと共に、チップ12の有無の検査をも行なうこともできる。
【0024】
次いで、上記エッジ抽出画像について、画像検査処理を行なう対象のチップをn番とし、n=1とする(ステップ5)。例えば、図2に括弧付数字を付したように、右端を1番とする。
【0025】
前記ステップ4において検出したn番目のチップ形状について、Y座標の一番下のエッジを検出する。即ち、図5に1チップについてXY座標上のイメージを示すように、チップ先端(下端エッジ)のY座標を検出し、Y0として記憶すると共に、このn番目のチップについてのエッジ数カウンタを0にする(ステップ6)。
【0026】
上記エッジ抽出画像についてステップ6で検出したチップ先端のY座標から、Y方向に向かってエッジサーチを行なう(ステップ7)。エッジが検出された場合はステップ9へ進み、エッジが検出されない場合はステップ10へ進む(ステップ8)。
【0027】
ステップ9では、エッジカウンタを+1し、下からp番目のエッジのY座標(図5の例ではY1又はY2)を記憶する。
【0028】
次のステップ10では、予め設定してある上端までのサーチが完了したかどうかを判断し、完了したならばステップ11へ進み、完了していない場合にはステップ7へ戻り、エッジサーチを続ける。
【0029】
以上のエッジ検出処理が全てのチップについて終了したかどうかを判断し(ステップ11)、終了したならばステップ13へ進み、終了していない場合には次のステップ12で、検査するチップの番号を+1し、ステップ6へ戻り次のチップについて同様のエッジ検出を行なう。以上の動作を繰り返すことにより、全てのチップについてエッジ数及びそのY座標の検出を完了する。
【0030】
その後、各チップについて、(下端エッジのY座標)−(上端エッジのY座標)を計算し(ステップ13)、求められた値(長さ)を基準値と比較して、その差が許容値(画素数)以下かどうかを判定する(ステップ14)。
【0031】
判定した結果、許容値以内であれば各チップについて、エッジ数は液の表面だけの1個であるかどうかを判定し、1個であれば正常と判断して終了する(ステップ15)。即ち、例えば先端部に気泡が入っていると、図5に示される液表面の第2エッジY2以外に、Y1で示す第1エッジが存在するため、チップ内に気泡が入っていることを判定していることになる。
【0032】
前記ステップ14で許容値以内でなかった、例えば図2に示した4番、6番のチップのように不足している場合や、ステップ15で1個以外であった3番のチップの場合は、アラーム判定部30において、表示部にアラームを表示する(ステップ16)。なお、ステップ15の1個以内には、チップ内が空で液面が存在しないためにエッジ数が0である場合も含まれる。
【0033】
以上詳述した本実施形態によれば、設定した吸引量の基準値に対して、実際の吸引量には何らかの原因で過不足が生じていた場合には、分注前にその事実を検出することができ、作業者に知らせることができる。従って、その後に実行される検査工程では、分注量の過不足に起因する検体と薬品との反応の異常等の不具合の発生を有効に防止することができる。
【0034】
図6は、本発明に係る第2実施形態の分注装置の概要を示す、前記図1に相当する概略側面図である。
【0035】
本実施形態の分注装置は、画像処理部26を後述する構成とした以外は、前記第1実施形態の場合と実質的に同一であるので、同一部分には同一の符号を使用し、その詳細な説明を省略する。
【0036】
本実施形態の画像処理部26には、前記第1実施形態と同様にCCDカメラ(撮像手段)により撮像した画像から作成したエッジ抽出画像に、パターンマッチングを適用してチップ(吸引部)の配置位置を含む形状を特定するパターンマッチング処理部26Aと、特定されたチップの配置形状を基準形状と比較して傾斜角度を検出するチップ傾き検出部26Bと、検出された傾斜角度を考慮して、液面に対応する下端と上端の各エッジを検出してエッジ間長さを算出するエッジ検出処理部(エッジ間算出手段)26Cとが含まれている。
【0037】
通常の分注動作においては、ディスポーザブルチップ(使い捨てチップ)を分注ノズルに装着する。この時、チップはノズルに対して真直ぐに垂直方向に連結されることが望ましいが、傾いて装着されることもあり、この場合には前記第1実施形態のようにY方向のみにサーチを行なう画像処理によっては、液面に対応するエッジ検出の安定性や精度に問題が発生することが考えられる。この問題は、分注動作中に液体の入っているプレートや試験管等から検体等を吸引する際に、チップがそれらに触れて傾いてしまった場合も同様に発生する。
【0038】
即ち、図7に、垂直方向に真直ぐにノズルに装着された正常状態のチップのエッジ抽出画像のイメージを示す。この場合は、前記第1実施形態の画像処理のように、Y方向に真直ぐエッジサーチすることにより、正確にエッジ検出ができる。
【0039】
ところが、図8のようにチップが傾いてしまった場合には、同様にY方向に真直ぐエッジサーチをする方法では、液面位置のエッジ検出精度に問題があり、最悪の場合にはエッジ検出すらできない恐れもある。
【0040】
そこで、本実施形態においては、上記のようにチップが傾いてしまった場合でも、確実に画像処理によりエッジ検出を行ない、液量の正異常を判定できるように、前記画像処理部26により以下のような処理を行なう。
【0041】
図9には、基準となるチップの登録画像のイメージを破線で示す。これは、チップを真直ぐ装着した状態で撮像した前記図7に相当する画像であり、画像処理部26内のメモリ(図示せず)に予め登録されている。同図には、傾いてしまっているチップを実際に撮像した画像のイメージを、登録画像に対比させて実線で示してある。
【0042】
本実施形態では、前記画像処理部26のパターンマッチング処理部26Aにおいて、2つの画像をチップ外形形状に関する周知のパターンマッチング技術により比較する。具体的には、チップ傾き検出部26Bにより、各画像の濃淡部分から得られるチップの外形に相当するエッジ抽出画像について、それぞれ一点鎖線で示す中心線を算出し、両者の傾きの差を算出する。これにより、図示したように登録画像と実際に撮像した画像との傾きの差θを得ることができる。
【0043】
このように基準の登録画像と撮像画像との間に傾斜角度θが検出された場合には、それ以降、エッジ検出処理部26Cにおいては、図10にイメージを示すように、エッジサーチを垂直方向からθだけ傾けて行なう。即ち、チップの撮像画像を、中心線に沿って下から上に向かってエッジをサーチする。これによりエッジとして得られたチップ先端位置の座標(X0,Y0)及び液面位置の座標(X1,Y1)から、例えば三平方の定理により、チップ先端(下端エッジ)から液面(上端エッジ)までの正確な距離(長さ)を計測することが可能となる。
【0044】
以上のような画像処理を行なうことにより、傾きθが大きいために、前記第1実施形態の方法ではエッジ検出すらできないという最悪のケースが発生したとしても対処することができる。但し、傾きθが大きい場合には、チップ装着異常等のアラームを発生させて、オペレータに知らせることも可能であることは言うまでもない。
【0045】
以上詳述した本実施形態によれば、チップが傾いてしまった場合にも、正確な液面検知が可能となり、液体の吸引量の正異常を確実に判定することが可能となる。
【0046】
又、チップの傾きが大きい場合には、アラーム等を発生させ、オペレータに異常発生を知らせることが可能となる。
【0047】
なお、前記実施形態では撮像手段としてCCDカメラを示したが、これに限定されずCMOSカメラであってもよい。又、撮像系の具体的な構成は、前記実施形態に示したものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る第1実施形態の分注装置の要部を示すブロック図を含む概略側面図
【図2】複数の吸着ノズルの下端に装着されているチップを示す模式図
【図3】実施形態の作用を示すフローチャート
【図4】実施形態の作用の続きを示すフローチャート
【図5】画像入力したチップのXY画像を模式的に示す説明図
【図6】本発明に係る第2実施形態の分注装置の要部を示すブロック図を含む概略側面図
【図7】正常チップのエッジ検出の様子を示す説明図
【図8】傾斜チップをエッジ検出する場合の問題点を示す説明図
【図9】チップの傾斜角度検出方法のイメージを示す説明図
【図10】第2実施形態の傾斜チップに対するエッジサーチ方法を示す説明図
【符号の説明】
【0049】
10…分注ヘッドユニット
12…チップ(吸引部)
14…CCDカメラ(撮像手段)
16…バックライト
18…傾斜ミラー
26…画像処理部
26A…パターンマッチング処理部
26B…チップ傾き検出部
26C…エッジ検出処理部
28…液面状態判定部
L…液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分注ノズルの吸引部により液体を吸引した後、該液体を吐出させて分注する分注装置において、
液体を吸引した前記吸引部を所定位置で撮像する撮像手段と、
撮像して入力した画像からエッジを検出するエッジ検出手段と、
検出された下端エッジと上端エッジとから液体の吸引量の正異常を判定する吸引量判定手段とを備えたことを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記エッジ検出手段によりエッジが検出された吸引部の画像を、上下方向にサーチしてエッジを計数するエッジカウント手段と、
計数されたエッジの数から液体の吸引状態の正異常を判定する状態判定手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記撮像手段により撮像された吸引部の画像から、該吸引部の傾斜角度を検出する傾斜検出手段と、
検出された傾斜角度を考慮して、前記下端エッジと上端エッジの間の長さを算出するエッジ間算出手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−276003(P2006−276003A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18086(P2006−18086)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】