説明

分注装置

【課題】検出レンジを超える流量の測定が可能な分注装置を提供する。
【解決手段】上流から下流に液体を送る送液管3と、送液管3の一部の区間に設けられた測定用流路10と、測定用流路10を流れる液体の流量を検出する流量センサ11と、測定用流路10の上流側で送液管3から分岐し下流側で連結する分岐管15と、分岐管15に設けられた開閉バルブ16と、送液管15の下流に設けられた分注ヘッド6を備え、送液管3を流れる流量に応じて開閉バルブ16の開閉を制御し、一部を分岐管15に分流させることで、測定用流路10への流入量が流量センサ11の検出レンジに収まるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を複数のウェルに分注する分注装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分注装置は、上流側に収容されている液状の液体を送液管により下流側に圧送し、送液管から分岐した複数のノズルから液体を吐出してウェルに供給する装置である(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平5−126690号公報
【特許文献2】特開平7−103986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ノズルの目詰まりによる分注量の精度低下を未然に防止するためには、定期的にノズル毎の吐出量を測定し、測定結果を比較することで目詰まりの傾向を把握することが重要である。この場合、各ノズルに流量センサを取り付けて吐出量を測定することが考えられるが、ノズルを備える分注ヘッドの重量化と大型化の弊害を招くとともに大幅なコスト増にもつながる。これに対し、複数のノズルに分岐する前の段階、すなわち送液管に流量センサを取り付け、各ノズルで順番に吐出することでノズル毎の吐出量を測定することが可能である。
【0004】
しかし、流量センサで高精度の流量測定を実現するためには、検出レンジに収まるように流量を絞る必要があるため、単数のノズルのみで吐出する場合には有効であるが、通常の分注作業時のように複数のノズルで同時に吐出する場合には、流量が検出レンジを超えてしまい、流量測定を行うことができないという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、検出レンジを超える流量の測定が可能な分注装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の分注装置は、上流から下流に液体を送る送液管と、送液管の一部の区間に設けられた測定用流路と、測定用流路を流れる液体の流量を検出する流量検出手段と、測定用流路の上流側で送液管から分岐し下流側で連結する分岐管と、分岐管に設けられた開閉バルブと、送液管の下流に設けられた分注ヘッド、を備え、流量センサの検出レンジを超える流量を測定する場合には、開閉バルブを開いて所定比率の液体の分岐管に分流し、測定用流路への流入量を検出レンジに収める。
【0007】
請求項2に記載の分注装置は、請求項1に記載の分注装置であって、前記分注ヘッドが前記送液管から分岐した複数のノズルを備え、複数のノズルで同時に液体を吐出する場合には前記開閉バルブを開き、単数のノズルで液体を吐出する場合には前記バルブを閉じた状態で流量を測定する。
【0008】
請求項3に記載の分注装置は、請求項1または2に記載の分注装置であって、前記分岐管が、流路断面積がそれぞれ異なる複数の分岐管からなり、それぞれの分岐管に設けられた開閉バルブを開閉する組み合わせを変えることで、前記測定用流路への流入量を検出レンジに収める。
【0009】
請求項4に記載の分注装置は、請求項1乃至3の何れに記載の分注装置であって、前記
流量検出手段が、測定用流路を流れる液体の流量に応じた電圧を出力する電圧出力部と、出力された電圧を流量に変換する電圧/流量変換部を備えた。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、送液管の一部区間に設けられた測定用流路をバイパスする分岐管に所定比率の液体を分流させることで、測定用流路に流入する液体の量を検出レンジに収めることができるので、検出レンジを超える液体の流量の測定が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態の分注装置の構成を示す図、図2は本発明の実施の形態の流量センサの検出レンジを説明する図、図3は本発明の実施の形態の分注装置における流量検出方法を説明する図、図4は本発明の他の実施の形態の分注装置における分岐管の構成を示す図、図5は本発明の他の実施の形態の流量センサの検出レンジを説明する図である。
【0012】
最初に図1を参照して分注装置について説明する。容器1に収納された液体等の液体は、加圧ポンプ2によって送液管3に供給され、マニホールド4で複数の管5(ここでは5本の管を例示)に分岐された後に分注ヘッド6に装着されたノズル7から吐出される。各ノズル7からの吐出量は、それぞれに設けられたバルブ8の開閉時間によって調整される。送液管3の一部の区間には測定用流路10が設けられている。測定用流路10には流量センサ11が取り付けられており、流量に応じた電圧を出力する。出力された電圧は、増幅器12で増幅された後に電圧/流量変換部13で流量に変換され、制御装置14に入力される。この区間には、測定用流路10の上流側(容器1側)で送液管3から分岐した後に下流側(分注ヘッド6側)で送液管3と連結する分岐管15が設けられている。分岐管15には開閉バルブ16が設けられており、開閉バルブ16が閉じた状態では、容器1から送液管3に供給された液体の全量が測定用流路10に流入する。これに対し開閉バルブ16を開いた状態では、液体の一部が分岐管15に分流し、測定用流路10をバイパスする。バルブコントローラ17は、制御装置14から制御指令を受けて、複数のバルブ8の開閉時間をそれぞれ独立して調整し、さらに開閉バルブ16の開閉を行う。
【0013】
次に図2を参照して流量センサの検出レンジについて説明する。流量センサ11の流量検出特性において、ある流量Xまでは流量と出力電圧は正比例するが、流量が一定値を超えると、出力電圧は流量に関係なく一定値(最高電圧)Vmaxを示したままとなる。流量は電圧/流量変換部13で電圧を変換することで求められるので、最高電圧Vmaxが出力された場合は正確な流量を求めることができないという問題が発生する。このため、流量センサ11において流量を検出することが可能なレンジは、流量が0からXの間であって微量領域となる0に近い部分と比例限界であるXに近い部分を排除した範囲となる。
【0014】
図2(a)に示す流量Aは検出レンジに収まっているので、流量センサ11は流量Aに一対一で対応した電圧Vaを出力することが可能である。ところが、図2(b)に示す流量Bは検出レンジを超えているので、出力電圧は最高電圧Vmaxとなり、流量を検出することができない。分注ヘッド6には複数のノズル7と独立して開閉動作の制御が可能なバルブ8が装着されているので、例えば全てのバルブ8を開にし、全てのノズル7から液体を吐出した場合には流量Bとなり、一つのバルブ8のみを開いた場合には流量Aとなる。このように、一つの送液管3において流量Aと流量Bと広いレンジの流量変化が起きるので、検出レンジを超える流量Bの場合には、分岐管15に設けられた開閉バルブ16を開き、一定比率の液体を分岐管15に分流させて測定用流路10をバイパスさせ、測定用流路10への流入量を検出レンジに収まる程度の流量bまで減少させる。分岐管15に分流する液体の比率は、測定用流路10と分岐管15の断面積の比率や、分岐管15の取り付け角度等の様々な要素に影響を受けるので、それぞれの個体に対して予め求めておくべ
きものである。
【0015】
この比率が例えば0.8である場合は、図3に示すように全流量Bのうちの4/5が分岐管15に流れ、残りの1/5が測定用流路10に流れる。流量センサ11は、全流量Bの1/5の量である流量bに対応する電圧Vbを出力し、これを電圧/流量変換部13で流量bに変換した後に制御装置14に入力する。制御装置14は、バルブコントローラ17に開閉バルブ16を開く指令を送信している場合には、入力された流量bを5倍にすることで全流量Bを算出する。流量Aの場合のように単数のノズル7からのみ吐出するような場合には、開閉バルブ16を開く指令は送信していないので、入力された流量Aを5倍にすることなくそのままの流量Aを全流量Aとする。なお、開閉バルブ16を開いた場合と閉じた場合のそれぞれに出力電圧と流量との相関を示した2つのデータテーブルを予め作成し、開閉バルブ16の開閉に対応する何れかのデータテーブルを用いて全流量を求めるようにしてもよい。
【0016】
分岐管15は一つに限らず複数の分岐管で構成することも可能である。図4は分岐管15を流路断面積の異なる2つの分岐管15a、15bに分岐したものを示している。分岐管15a、15bはそれぞれ管径がd1、d2であり、断面積比でd1:d2である。分岐管15a、15bにはそれぞれ開閉バルブ16a、16bが設けられている。この2つの開閉バルブ16a、16bの開閉の組み合わせは、両方とも閉じる第1のパターンと、両方とも開く第2のパターンと、何れか一方のみを開く第3、第4のパターンの合計4つのパターンがあり、パターン毎に測定用流路10に流入する液体の量が変化する。
【0017】
両開閉バルブ16a、16bとも閉じる第1のパターンでは、上流から送液管3に供給された液体の全量が計測用流路10に流入するので、第1のパターンは液体が比較的少量であるときに適したパターンである。これに対し、両開閉バルブ16a、16bとも開く第2のパターンでは、上流から送液管3に供給された液体の大部分が分岐管15a、15bに分流されるため、計測用流路10に流入する量は4つのパターンのうち最低となるので、第2のパターンは液体が比較的多量であるときに適したパターンである。これらの中間的な量の液体の場合には第3、第4のパターンが適し、より多量の場合には開閉バルブ16aを閉じて流路断面積の大きい方の分岐管15bに分流させ、より少量の場合には開閉バルブ16bを閉じて流路断面積の小さい方の分岐管15aに分流させ、適量の液体が測定用流路10に流入するようにする。
【0018】
図1に示した分注ヘッド6に装着された全てのノズル7から液体を吐出するような場合には、図4に示すように全流量C4が流量センサ11の検出レンジを大きく超えてしまうので、制御装置14は、全てのバルブ8を開いた状態で流量の検出を行うときには、両開閉バルブ16a、16bとも開くようにバルブコントローラ17に指令を送信する。これに対し、単数のノズル7からのみ吐出するような場合には、全流量C1は流量センサ11の検出レンジに納まるので、制御装置14は、一つのバルブ8のみを開いた状態で流量の検出を行うときには、両開閉バルブ16a、16bとも閉じるようにバルブコントローラ17に指令を送信する。また、例えば3つのノズル7から液体を吐出するような場合にも全流量C3は流量センサ11の検出レンジを超えてしまうが、この場合に両開閉バルブ16a、16bとも開くと、測定用流路10に流入する液体の量が極端に減少することになるので、一方の開閉バルブ16aのみを閉じることで、測定用流路10への流入量を検出レンジに収めつつ一定の流入量を確保する。同じく、2つのノズル7から液体を吐出するような場合にも全流量C2は流量センサ11の検出レンジを超えてしまうが、この場合は、開閉バルブ16bのみを閉じ、流路断面積がより小さい分岐管15aに分流させることで、測定用流路10への流入量を検出レンジに収めつつ一定の流入量を確保する。
【0019】
分岐管15a、15bに分流される比率は、測定用流路10と分岐管15a、15bの
断面積の比率や、分岐管15a、15bの取り付け角度等の様々な要素によって確定するものであり、それぞれの個体に対して予め求めておく必要がある。測定用流路10に流入した液体の流量から、送液管3に供給された液体の全流量を求めるときには、これらの比率から算出することもできるし、開閉バルブ16a、16bの開閉の組み合わせパターン毎に出力電圧と流量との相関を示した4つのデータテーブルを予め記憶しておき、開閉パターンに対応する何れかのデータテーブルを用いて全流量を検出するようにしてもよい。
【0020】
このように、複数の分岐管に設けられた開閉バルブを開閉する組み合わせを供給量に応じて変えることで、測定用流路10への流入量を検出レンジに収めつつ、安定した検出が可能な一定の流入量を確保することができる。また、測定用流路10への流入量を大きく変動させることなく略一定にし、検出レンジの幅のうち略同じ部分を検出に用いることで、繰り返し精度の高い検出を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明によれば、送液管の一部区間に設けられた測定用流路をバイパスする分岐管に所定比率の液体を分流させることで、測定用流路に流入する液体の量を検出レンジに収めることができるので、検出レンジを超える液体の流量の測定が可能になるという利点があり、送液管における流量の変化が大きい分注装置を使用する場合に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態の分注装置の構成を示す図
【図2】本発明の実施の形態の流量センサの検出レンジを説明する図
【図3】本発明の実施の形態の分注装置における流量検出方法を説明する図
【図4】本発明の他の実施の形態の分注装置における分岐管の構成を示す図
【図5】本発明の他の実施の形態の流量センサの検出レンジを説明する図
【符号の説明】
【0023】
3 送液管
6 分注ヘッド
7 ノズル
10 測定用流路
11 流量センサ
13 電圧/流量変換部
15、15a、15b 分岐管
16、16a、16b 開閉バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流から下流に液体を送る送液管と、送液管の一部の区間に設けられた測定用流路と、測定用流路を流れる液体の流量を検出する流量検出手段と、測定用流路の上流側で送液管から分岐し下流側で連結する分岐管と、分岐管に設けられた開閉バルブと、送液管の下流に設けられた分注ヘッド、を備え、
流量センサの検出レンジを超える流量を測定する場合には、開閉バルブを開いて所定比率の液体の分岐管に分流し、測定用流路への流入量を検出レンジに収めることを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記分注ヘッドが前記送液管から分岐した複数のノズルを備え、
複数のノズルで同時に液体を吐出する場合には前記開閉バルブを開き、単数のノズルで液体を吐出する場合には前記バルブを閉じた状態で流量を測定することを特徴とする請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記分岐管が、流路断面積がそれぞれ異なる複数の分岐管からなり、それぞれの分岐管に設けられた開閉バルブを開閉する組み合わせを変えることで、前記測定用流路への流入量を検出レンジに収めることを特徴とする請求項1または2に記載の分注装置。
【請求項4】
前記流量検出手段が、測定用流路を流れる液体の流量に応じた電圧を出力する電圧出力部と、出力された電圧を流量に変換する電圧/流量変換部、を備えた請求項1乃至3の何れに記載の分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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