説明

分解装置

【課題】超臨界又は亜臨界状態でのプラスチック成形品等の分解において、流量調整開閉弁の閉塞を防止し、分解槽から分解液を効率的に取り出して回収することのできる、新しい分解装置を提供する。
【解決手段】超臨界又は亜臨界の状態において被分解物を水熱分解する分解槽1と、この分解槽1内から取り出された高温高圧状態の分解液40を冷却する冷却器20と、分解槽1内から分解液40を取り出す、分解槽1と冷却器20とを接続する排出配管2と、を備え、排出配管2は、分解液40の排出流量を調整する流量調整開閉弁3と、分解液40中の固形分による流量調整開閉弁3の閉塞を防止する詰まり防止手段4とを有し、詰まり防止手段4は、分解液40の排出流量を検出する流量検出手段21と、この流量検出手段21で検出した流量に応じて流量調整開閉弁3の開度を調整し分解液40の排出流量を調整する流量制御手段6とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物プラスチック等を超臨界又は亜臨界の状態で反応させて水熱分解する分解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、有害物を無害化分解することや、食品廃棄物等を分解して再資源化することや、プラスチック廃棄物を分解して有機酸、アルコール等のプラスチックの合成原料やFRP(繊維強化プラスチック)中の補強繊維等を回収して再利用できるようにするために、超臨界又は亜臨界状態の水熱反応によって分解する方法(例えば、特許文献1参照)や様々な装置の構成が提案されている。
【0003】
しかしながら、超臨界又は亜臨界の状態でのプラスチックの分解においては、FRPからのガラス繊維や炭素繊維等の補強繊維の回収を伴う場合をはじめ、破砕した粒状のプラスチックを含む被処理混合液は固液混合のスラリー状となるため、連続的に分解槽内に原料を供給し、連続的に分解槽内から分解液を取り出すことは、必ずしも容易ではないという問題がある。その理由は、第1には、スラリー液を高温高圧で送液するポンプが高価であり、固形物による部品の磨耗等の耐久性に問題が生じやすいことであり、第2には、反応性を確保しつつ、分解槽に残留した未反応固形物の全量排出が困難であることによる。特にプラスチックがFRPの場合、比重の重いガラス繊維や炭酸カルシウム等の無機物成分が未反応のまま残り、沈降性の高いこれらの成分を伴う分解液の排出は難しい。
【0004】
したがって、このような場合には、回分式の分解装置が採用される。回分式の分解装置はバッチ処理であり、投入した原料は1バッチの反応後そのまま全量抜き出される操作となる。反応生成物を含む分解液を分解槽から取り出すにあたっては、分解槽内は液体を超臨界又は亜臨界状態にしているために高温・高圧の状態にあることから、分解槽内を常温にまで冷却する必要がある。また、分解液を取り出すために分解槽内を常圧にまで減圧する必要がある。
【0005】
しかしながら、常温常圧まで分解液を冷却するには長時間必要であり、1バッチの処理時間を長引かせる主要因となっていた。そこで、従来、分解槽内の圧力が常圧まで下がるのを待たずに、分解液液温100℃以上の高温高圧状態で分解液を分解槽に接続された排出配管から排出させ、次いで冷却器にて冷却して取り出していた。この場合、冷却器に所定流量の分解液を流すために流量調整開閉弁を排出配管に配設する必要があるが、この流量調整開閉弁に分解液中の固形分が進入して閉塞を引き起こすおそれがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/041917号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のとおりの背景から、従来の問題点を解消し、超臨界又は亜臨界状態でのプラスチック成形品等の分解において、流量調整開閉弁の閉塞を防止し、分解槽から分解液を効率的に取り出して回収することのできる、新しい分解装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の分解装置は、超臨界又は亜臨界の状態において被分解物を水熱分解する分解槽と、この分解槽内から取り出された高温高圧状態の分解液を冷却する冷却器と、前記分解槽内から前記分解液を取り出す、前記分解槽と前記冷却器とを接続する排出配管と、を備え、前記排出配管は、前記分解液の排出流量を調整する流量調整開閉弁と、分解液中の固形分による流量調整開閉弁の閉塞を防止する詰まり防止手段とを有し、前記詰まり防止手段は、前記分解液の排出流量を検出する流量検出手段と、この流量検出手段で検出した流量に応じて前記流量調整開閉弁の開度を調整し前記分解液の排出流量を調整する流量制御手段とで構成されており、前記流量調整開閉弁の開度が所定の開度に開いている状態を開度Aとしこの開度Aよりも大きく開いている状態を開度Bとすると、前記流量制御手段は、前記流量調整開閉弁の開度を開度Aの状態で保持する開動作と、前記流量調整開閉弁の開度が開度Aの状態で保持されている状態において基準排出流量を下回る流量を前記流量検出手段で検出したときには前記流量調整開閉弁の開度を開度Bの状態で所定の時間保持する開動作とを交互に繰り返すことを特徴とする。
【0009】
この分解装置においては、前記流量制御手段では、前記流量調整開閉弁の開度を開度Bの状態としたときの前記排出配管からの前記分解液の排出流量が前記冷却器での前記分解液の冷却が可能な設計上の最大流量未満とされていることが好ましい。
【0010】
また、この分解装置においては、前記排出配管には、前記流量調整開閉弁の上流側にフィルターが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、流量調整開閉弁の閉塞を防止し、分解槽から分解液を効率的に取り出して回収することができる。
【0012】
また、流量調整開閉弁の閉塞による分解液の流量の低下を効果的に抑えることができるため、分解液を効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1の分解装置の概要構成図である。
【図2】実施形態1における流量調整開閉弁の開閉パターンの一例と、これに対応する排出配管における分解液の排出流量の推移を示した図である。
【図3】実施形態2の分解装置の概要構成図である。
【図4】実施形態2における流量調整開閉弁の開閉パターンの一例と、これに対応する排出配管における分解液の排出流量の推移を示した図である。
【図5】実施形態3の分解装置の概要構成図である。
【図6】固形分分離手段の別の実施形態(実施形態4)を示した図である。
【図7】実施形態5の分解装置の概要構成図である。
【図8】実施形態6の分解装置の概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の分解装置は、超臨界又は亜臨界の状態でFRP等の被分解物を水熱分解する分解槽に高温高圧状態の分解液を取り出す排出配管が接続されており、排出配管には分解液の排出流量を調整する流量調整開閉弁が設けられ、さらに分解液中の固形分による流量調整開閉弁の閉塞を防止する詰まり防止手段が設けられている。ここで「高温高圧状態」とは、反応液の沸点よりも高い温度またはその近傍の温度で、かつ常圧よりも高い圧力にある状態をいう。
【0015】
この分解装置でFRPを水熱分解する場合、分解効率向上及び分解液の排出性向上を図るため、まず、前処理としてFRPを粒径2〜20mm程度に粉砕する。次いで、粉砕FRP及び流体を分解槽に投入し、粉砕FRPの樹脂分が超臨界又は亜臨界の状態の流体で分解された後、分解液として分解槽から排出配管より排出する。分解液の排出に際しては、流量調整開閉弁で分解液の流量を調整しつつ排出している。分解液にはFRP中のガラス繊維や炭酸カルシウム等の無機物がそのまま固形分として含まれている。分解液中の無機物は細かい繊維状であり、分解液の排出時に流量調整開閉弁に一旦詰まり出すと折り重なって閉塞を助長する性状を有しているが、本発明では、上記詰まり防止手段によって分解液中の固形分による流量調整開閉弁の閉塞を防止しているため、分解槽から分解液を効率的に取り出して回収することができる。
【0016】
本発明の分解装置は、上記のとおりの特徴を有するものであって、プラスチック成形品の分解による有機酸、アルコール等のプラスチック原料の回収、FRP中の補強繊維等の無機物の回収、ダイオキシン、PCB等の有機物の分解、木質材の分解によるリグニン、エタノールの回収、魚類、肉類等の食品タンパク質廃棄物の分解による有機酸、アミノ酸、アルコール等の回収等のために適用され、顕著な効果を奏することになる。
【0017】
以下に本発明の分解装置の実施形態について説明する。もちろん、本発明は以下の実施形態によって限定されるものではない。
<実施形態1>
図1は、本発明に係る分解装置の一実施形態を示した概要構成図である。
【0018】
この実施形態の分解装置は、超臨界状態又は亜臨界状態の流体で被分解物としてのプラスチック成形品を水熱分解する分解槽1が円筒形で耐圧製に形成されている。分解槽1の底部には排出配管2の一端が接続され、他端は分解液40の回収槽19に接続されており、排出配管2には排出用開閉弁5が設けられている。ここで、分解槽1内の高温高圧状態の分解液40(被分解物を水熱分解した後の分解物を含む流体)は排出用開閉弁5を開くことによって排出され、排出配管2を通じて回収槽19に回収される。排出配管2の途中には分解液40を冷却するための円筒多管式熱交換器等の冷却器20が設けられており、この冷却器20によって分解液40が冷却され、冷却した分解液40が回収槽19に蓄えられるようになっている。また、排出配管2には分解液40の流量を調整するための流量調整開閉弁3が、排出用開閉弁5よりも下流側に位置する冷却器20の入口側に設けられている。この流量調整開閉弁3は、電磁弁等で形成されて連続的に開度を調整できるようになっており、開度に応じて分解液40の流量の調整ができるようになっている。流量調整開閉弁3は冷却器20の出口側に設けてもよいが、この場合冷却器20を耐圧製の圧力容器にする必要がある。さらに排出配管2には、分解液40の流量を検出する流量検出手段21が排出用開閉弁5と流量調整開閉弁3との間の位置に設けられている。
【0019】
分解槽1の外周にはヒーターや熱媒ジャケット等で形成される加熱手段22が設けてあり、温度センサー等で形成される温度検出器23が分解槽1内に差し込んで設けてある。また、分解槽1の上部には分解槽1の上部内の圧力を測定する圧力ゲージなどで形成される圧力検出手段24が設けてある。この温度検出器23及び圧力検出手段24で分解槽1内の温度、圧力をそれぞれ検出しながら、加熱手段22で分解槽1内を加熱することによって、検出される温度と圧力に基づいて加熱手段22を制御して最適温度での加熱をおこなうことができる。
【0020】
分解槽1には、分解槽1内に投入されるプラスチック成形品と流体とを混合する攪拌手段25が設けてある。本実施形態において分解するプラスチック成形品としては、特に制限されるものではないが、不飽和ポリエステル樹脂成形品等の熱硬化性樹脂成形品を用いることができる。そしてプラスチック成形品は分解反応がし易くなるように粉砕して粉粒状にし、水等の流体と共に分解槽1に投入するが、プラスチック成形品は通常疎水性であるため水等の流体と馴染みにくく、しかも粉砕したプラスチック成形品の粉粒体は空気を噛んでいるために液面に浮き易い。このようにプラスチック成形品と流体との混合が不十分であると、プラスチック成形品の分解の効率が悪くなる。
【0021】
このために本実施形態では、プラスチック成形品と流体との混合を十分なものとするために、攪拌装置27を備えた前処理槽26が原料供給配管28を介して分解槽1に接続されている。そしてプラスチック成形品の粉粒体と水等の流体とを前処理槽26に投入し、攪拌装置27で十分に攪拌して流体中にプラスチック成形品を混合して、流体中にプラスチック成形品が馴染んだスラリー状にした後、液送ポンプ29で原料供給配管28を通してプラスチック成形品と流体のスラリーを分解槽1に供給するようにしており、プラスチック成形品の分解が効率良くおこなわれるようにしている。
【0022】
また、分解槽1に供給されたプラスチック成形品の粉粒体が流体中を分解槽1下部に沈降して分解反応が受け難くなることを防止したり、また加熱時にプラスチック成形品の粉粒体が分解槽1内面に固着したりすることを防止するなど、プラスチック成形品の粉粒体の流体に対する攪拌混合性を高めて流体との反応効率を向上させるために、プラスチック成形品は粒径が2〜20mm程度、好ましくは最大粒子径が5mm以下になるように粉砕して使用するのが好ましい。プラスチックの最大粒子径は小さいほど望ましいものであり、粉砕可能であればいくら小さくてもよい。
【0023】
プラスチック成形品を分解して回収するにあたっては、まずプラスチック成形品と水等の流体とを前処理槽26に投入して十分に攪拌し、分解槽1に供給する。このようにプラスチック成形品と流体とを分解槽1に供給した後、分解槽1を密閉状態にし、プラスチック成形品と流体を攪拌手段25で攪拌しながら加熱手段22で加熱する。
【0024】
そして、温度検出器23で分解槽1内の温度を、圧力検出手段24で分解槽1内の圧力を、それぞれ検出しながら加熱手段22による加熱をおこない、検出された温度と圧力に応じて加熱を制御することによって、分解槽1内の流体が超臨界状態又は亜臨界状態になる温度・圧力を維持し、この超臨界状態又は亜臨界状態の流体を反応触媒としてプラスチック成形品を分解することができるものである。例えばプラスチック成形品として不飽和ポリエステル樹脂成形品を、流体として水を用いる場合、プラスチック成形品濃度10〜15wt%、分解温度180〜250℃、圧力1.0〜4.0MPaに調整し、水を超臨界状態又は亜臨界状態に維持して1〜4時間反応させることによって、不飽和ポリエステル樹脂をエステル交換反応させ、スチレンマレイン酸共重合体や多価アルコール等のモノマーに加水分解することができる。
【0025】
所定の分解時間経過後、排出用開閉弁5及び流量調整開閉弁3を操作することにより、排出配管2から分解液40を排出する。分解槽1内圧は大気圧以上であるため、排出用開閉弁5及び流量調整開閉弁3を開くだけで分解液40は分解槽1から排出される。高温高圧状態で排出された分解液40は、冷却器20によりその液体の常圧での飽和温度(水では100℃)以下まで冷却され、回収槽19に貯留される。
【0026】
本実施形態では、流量調整開閉弁3の詰まり防止手段4として、予め設定した時間毎に流量調整開閉弁3の開度を調整する流量制御手段6が設けられている。この流量制御手段6は、例えば、タイマー等で所定の周期で流量調整開閉弁3の開度を調整できるようになっており、流量調整開閉弁3の開度に応じて分解液40の排出流量を調整できるようになっている。また、排出用開閉弁5の開閉もできるようになっており、流量調整開閉弁3及び排出用開閉弁5と電気的に接続されている。
【0027】
さらに、本実施形態では、流量調整開閉弁3に咬み込む原因となるような大きい異物を除去するためのフィルター30が流量調整開閉弁3の上流側に設けられている。このフィルター30で大きい異物が回収されることにより、流量制御手段6によって流量調整開閉弁3の開度を大きく開いた際に異物の存在によって分解液40が流れなくなるような状態を防ぐことができる。
【0028】
図2は、流量調整開閉弁3の開閉パターンの一例と、これに対応する排出配管2における分解液40の排出流量の推移を示した図である。図2の流量調整開閉弁3の開閉パターンは、流量調整開閉弁3を所定の開度Aに保持する時間的な区間Tと、開度Aよりもさらに大きく開いた開度Bの状態で保持する時間的な区間Tの開動作を交互に繰り返すようにしている。図2の分解液40の排出流量は、各区間Tの区間当初は流量調整開閉弁3の開度Aに応じた略一定の流量で推移しているが、区間の途中からは分解液40中の固形分による流量調整開閉弁3の閉塞によって徐々に流量が低下している。各区間Tでは、流量調整開閉弁3の開度を大きく開いたことに伴い分解液40の流量が増大する。これによって流量調整開閉弁3の閉塞物(分解液中の固形分)が除去される。そして開度Aに戻した区間Tの区間当初では、再び開度Aに応じた流量で推移することになる。
【0029】
ここで流量調整開閉弁3の開度Aは、冷却器20で分解液40を冷却する最適な流量(基準排出流量)とするための開度であり、従来の分解装置で設定されてきた開度である。図2の排出流量の破線aは冷却器20で分解液40の冷却が可能な設計上の最大流量を示し、これを超える流量の分解液は冷却器20で十分に冷却することができない。破線bは分解液40を効率よく回収するための排出流量の下限値を示し、これを下回る流量になった場合には分解液40の排出に時間がかかり、生産性が著しく低下してしまう。本実施形態では、流量調整開閉弁3を開度Aの状態で試運転等をおこない分解液40の排出流量が下限値になる時間を区間Tとして予め求めておくとともに、上限値になる流量調整開閉弁3の開度B、さらに開度Bの状態を保持する時間を区間Tとして予め求めておき、排出完了時間とともに流量制御手段6に登録しておく。そして、分解が終了し、分解槽1の分解物を排出する際には、流量制御手段6により排出用開閉弁5を開け、次いで流量調整開閉弁3を所定の開度にして上記開動作を繰り返すようにし、分解液40を排出する。排出完了後は、排出用開閉弁5及び流量調整開閉弁3を閉止して終了する。なお、本実施形態では、上記開動作において流量調整開閉弁3を急開しているが、徐々に流量調整開閉弁3を開けるようにしてもよい。流量調整開閉弁3を急開すると分解液40の排出流量が急激に増大し、これによって、分解槽1内の分解液40の液面が急激に低下して分解槽1内の液相と気相の飽和状態が崩れて突沸が生じ、分解槽1に原料を供給するための原料供給配管28等に分解液40中の固形分が進入して配管閉塞等を引き起こす場合があるからである。
【0030】
このように本実施形態では、流量調整開閉弁3を所定の周期で一時的に開度を大きくし、分解液40を大流量にして流量調整開閉弁3の閉塞物を流すことができ、流量調整開閉弁3の閉塞を防止することができる。したがって、分解液40の排出の全期間中、分解液40の排出流量が下限値bを下回ることがないため、分解槽1から分解液40を効率的に取り出して回収することができる。
<実施形態2>
図3は、本発明に係る分解装置の別の一実施形態を示した概要構成図である。なお、図1に示した部分と同一の部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0031】
本実施形態は上記実施形態1と同様、流量制御手段6で流量調整開閉弁3の開度を調整し、分解液40の排出流量を調整するものであるが、実施形態1では予め設定した時間毎に流量調整開閉弁3の開度を調整していたのに対し、本実施形態では流量検出手段21によって検出した分解液40の排出流量に応じて流量調整開閉弁3の開度を調整しており、図3に示すように、流量調整開閉弁3、排出用開閉弁5及び流量検出手段21と電気的に接続されている。
【0032】
図4は、流量調整開閉弁3の開閉パターンの一例と、これに対応する排出配管2における分解液40の排出流量の推移を示した図である。図4の流量調整開閉弁3の開閉パターンは、流量調整開閉弁3を所定の開度Aに保持する時間的な区間T、T、T、T・・・と、開度Aよりもさらに大きく開いた開度Cの状態で保持する時間的な区間Tの開動作を交互に繰り返すようにしている。図4の分解液40の排出流量は、区間T、T、T、T・・・の各区間中、流量調整開閉弁3の開度Aに応じた略一定の流量で推移している。区間Tでは、流量調整開閉弁3を開度が大きく開いたことに伴い分解液40の流量が増大するが、開度Aに戻す(区間T、T、T・・・)ことで、再び開度Aに応じた流量で推移することになる。ここで流量調整開閉弁3の開度Aは、上記実施形態1と同様、冷却器で分解液を冷却する最適な流量(基準排出流量)とするための開度であり、従来の分解装置で設定されてきた開度である。開度Cは、上記実施形態1において設定した開度Bよりも開度が小さく設定される。
【0033】
本実施形態における流量調整開閉弁3の開閉パターンは、上述したように、分解液40の排出流量に応じて流量調整開閉弁3の開度を調整することによって実現される。すなわち、本実施形態では、流量検出手段21にて分解液40の流量を検出し、その流量が基準排出流量を下回ったとき、つまり分解液40中の固形分によって流量調整開閉弁3が閉塞し始めたときに、流量調整開閉弁3を開いて開度Cの状態で所定期間保持するようにしている。したがって、各区間T、T、T、T・・・は流量調整開閉弁3を開度Aの状態で保持し、そのときの流量が基準排出流量を下回るまでの時間であり、各区間の時間は異なっていてもよい。流量調整開閉弁3の開度C及び区間Tは試運転等により予め求めておき、排出完了時間とともに流量制御手段6に登録しておく。そして、分解が終了し、分解槽1の分解物を排出する際には、流量制御手段6により排出用開閉弁5を開け、次いで流量調整開閉弁3を所定の開度にして上記開動作を繰り返すようにし、分解液40を排出する。排出完了後は、排出用開閉弁5及び流量調整開閉弁3を閉止して終了する。なお、本実施形態では、上記開動作において流量調整開閉弁3を急開しているが、徐々に流量調整開閉弁3を開けるようにしてもよい。流量調整開閉弁3を急開すると分解液40の排出流量が急激に増大し、これによって、分解槽1内の分解液40の液面が急激に低下して分解槽1内の液相と気相の飽和状態が崩れて突沸が生じ、分解槽1に原料を供給するための原料供給配管28等に分解液40中の固形分が進入して配管閉塞等を引き起こす場合があるからである。
【0034】
本実施形態では、上記実施形態1のときよりも流量調整開閉弁3の閉塞度合いが小さい段階で流量調整開閉弁3を開けるため、流量調整開閉弁3の閉塞物を流すためには開度Bに応じた流量までは必要ではなく、それよりも小さい流量で十分である。結果として、分解液40中の固形分による流量調整開閉弁3の閉塞に伴う流量の減少と、流量調整開閉弁3の開度を大きくしたことによる分解液40の排出流量の増大を小さくすることができ、分解槽1から分解液40を効率的に取り出して回収することができる。
<実施形態3>
図5は、本発明に係る分解装置の別の一実施形態を示した概要構成図である。なお、図1に示した部分と同一の部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0035】
本実施形態では、詰まり防止手段4が、分解液40中の固形分を沈降させるための分解液40の貯留部71を備えた固形分分離手段7で構成されており、流量調整開閉弁3の入口側に設けられている。この固形分分離手段7における貯留部71は円筒形状であり、その口径は排出配管2の口径よりも大きなものとし、排出配管2から導入される分解液40の流速を貯留部71内で低下させている。貯留部71に分解液40を導入する排出配管2は貯留部71の上方から挿通され、その先端が貯留部71の下方に位置するように接続されており、分解液40を排出する排出配管2は貯留部71の上方の位置に接続されている。したがって、貯留部71の下方に導入された分解液40は貯留部71の上方に向かう流れとなって流れることになる。
【0036】
ここで、貯留部71の口径は、貯留部71における分解液40の流速が同貯留部71での分解液40中の大型固形分(流量調整開閉弁3を詰まらせるような大きな固形分)の沈降速度よりも小さくなるような大口径のものに設定される。これによって、分解液40が導入された貯留部71内では、分解液40の流速よりも分解液40中の大型固形分の沈降速度が勝ることになり、大型固形分が貯留部71の下方に溜まる。このため、貯留部71の下方の分解液40は固形分濃度が高く、貯留部71の上方の分解液40は大型固形分がほとんど含まない状態になっている。そして、図5に示すように、貯留部71の上方に接続された排出配管2にて分解液40を排出させることにより、大型固形分をほとんど含まない分解液40を流量調整開閉弁3に通すことができるため、本実施形態では分解液40中の固形分による流量調整開閉弁3の閉塞が生じない。
【0037】
なお、貯留部71の底部は中心に向かって下り傾斜を有しており、沈降した固形分が底部の略中央部に溜まるようになっている。貯留部71の底部の略中央には開閉弁81を備えた配管8が接続されており、開閉弁81を開けることによって貯留部71の下方の固形分濃度の高い分解液40を取り出すことができる。したがって、本実施形態では分解液40中の固形分を効果的に分離することができる。さらに、流量調整開閉弁3の閉塞に対する制御が不要であるため、簡易な運転が可能である。
<実施形態4>
図6は、固形分分離手段7の別の実施形態を示している。この実施形態の固形分分離手段7も、図5の分解装置における固形分分離手段7と同様、貯留部71は円筒形状であり、その底部は中心に向かって下り傾斜を有している。この実施形態では、貯留部71に分解液40を導入する排出配管2の先端が貯留部71下方に接続され、分解液40を排出する排出配管2が貯留部71の頂部の略中央に接続されている。この実施形態における固形分分離手段も図5の分解装置における固形分分離手段7と同様の効果を奏するものである。
<実施形態5>
図7は、本発明に係る分解装置の別の一実施形態を示した概要構成図である。なお、図1に示した部分と同一の部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0038】
本実施形態は、詰まり防止手段4が、流量調整開閉弁3が設けられた排出配管2に流体を分解槽1側に向けて供給する手段で構成され、図7に示すように、第1配管9及び第2配管10がそれぞれ排出配管2に接続され、分解液40が分解槽1側に向けて流れる流路が形成されているものである。
【0039】
より具体的に説明すると、図7に示すように、排出配管2には流量調整開閉弁3を介してその前後に分解液40の流路を切替えるための第1切替弁11と第2切替弁12が設けられている。第1配管9には第3切替弁13が設けられ、その配管の一端が第1切替弁11の分解槽1側の位置で排出配管2と接続され、他端は流量調整開閉弁3と第2切替弁12の間の位置で接続されている。第2配管10には第4切替弁14が設けられ、その配管の一端が第1切替弁11と流量調整開閉弁3との間の位置で排出配管2と接続され、他端が第2切替弁12の回収槽19側の位置で接続されている。ここで、第1切替弁11、第2切替弁12、第3切替弁13、第4切替弁14はそれぞれ電磁弁等で形成され、流量検出手段21とともに図示しない制御手段と電気的に接続されている。
【0040】
次に上記流路による分解液の流れ方向の変更操作について説明する。
【0041】
所定の分解時間経過後、上記実施形態1のように、排出用開閉弁5及び流量調整開閉弁3を操作して排出配管2から分解液40を排出する。このとき本実施形態では、図7(a)に示すように、第1切替弁11及び第2切替弁12を開け、第3切替弁13及び第4切替弁14を閉じることによって、分解液40が流量調整開閉弁3に対して分解槽1側から回収槽19側に流れる流路を形成して分解液40を排出している。
【0042】
所定時間経過後、分解液40中の固形分による流量調整開閉弁3の閉塞に伴う分解液40の排出流量の減少を流量検出手段21で検出したときには、図7(b)に示すように、制御手段により第3切替弁13及び第4切替弁14を開け第1切替弁11及び第2切替弁12を閉じ、分解液40が流量調整開閉弁3に対して回収槽19側から分解槽1側に流れる流路を形成するようにして分解液40の流路を変更する。この流路変更により、流量調整開閉弁3に対して分解槽1側から回収槽19側に流れていた分解液40の流れ方向が、流量調整開閉弁3に対して回収槽19側から分解槽1側への流れ方向に変わる。流量調整開閉弁3の閉塞物は、分解槽1側から回収槽19側への分解液40の流れで加圧されていたが、流路変更に伴い分解液40の流れ方向が流量調整開閉弁3に対して逆方向に切り替わり、流量調整開閉弁3の閉塞物は逆側から加圧されることになるため、閉塞物は容易に取り除かれる。取り除かれた閉塞物は分解液40とともに回収槽19に排出される。
【0043】
流路変更して所定時間経過後、分解液40中の固形分による流量調整開閉弁3の閉塞に伴う分解液40の排出流量の減少を流量検出手段21で検出したときには、再度、制御手段により図7(a)に示すように、分解液40が流量調整開閉弁3に対して分解槽1側から回収槽19側に流れる流路に切り替えて流量調整開閉弁3の閉塞物を取り除くようにする。このような流路の切り替え操作は、分解液40の排出が終了するまで行うようにする。したがって、本実施形態では、分解液40の排出の全期間中、流量調整開閉弁3の閉塞を効果的に防止でき、分解液40の排出流量を低下させることなく効率的に取り出して回収することができる。
【0044】
なお、この実施形態では、詰まり防止手段4が冷却器20の入口側に設けられているが、詰まり防止手段4を冷却器20の出口側に設けるようにしてもよいし、詰まり防止手段4に冷却器20を介在させるようにしてもよい。
<実施形態6>
図8は、詰まり防止手段4が、流量調整開閉弁3が設けられた排出配管2に流体を分解槽1側に向けて供給する手段で構成される別の実施形態を示したものであり、洗浄水供給管15及び洗浄水排出管16がそれぞれ排出配管2に接続され、洗浄水が分解槽1側に向けて流れる流路が形成されている。
なお、図1及び図6に示した部分と同一の部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0045】
本実施形態では、洗浄水供給管15には供給弁17が設けられており、洗浄水供給管15の一端が流量調整開閉弁3と第2切替弁12の間の位置で排出配管2と接続され、供給弁17を開けることにより他端から洗浄水が供給されるようになっている。また、洗浄水排出管16には排出弁18が設けられており、洗浄水排出管16の一端が第1切替弁11と流量調整開閉弁3との間の位置で排出配管2と接続され、排出弁18を開けることにより洗浄水が外部に排出されるようになっている。ここで、供給弁17と排出弁18は、第1切替弁11と第2切替弁12と同様、それぞれ電磁弁等で形成され、流量検出手段21とともに図示しない制御手段と電気的に接続されている。
【0046】
次に上記流路による洗浄水の供給操作について説明する。
【0047】
所定の分解時間経過後、排出用開閉弁5、流量調整開閉弁3、第1切替弁11、第2切替弁12を操作して排出配管2から分解液40を回収槽19に排出する(図8(a))。所定時間経過後、分解液40中の固形分による流量調整開閉弁3の閉塞に伴う分解液40の排出流量の減少を流量検出手段21で検出したときには、図8(b)に示すように、制御手段により第1切替弁11及び第2切替弁12を閉じ、供給弁17及び排出弁18を開け、所定時間、洗浄水が流量調整開閉弁3に対して回収槽19側から分解槽1側に流れる流路を形成する。これによって、分解槽1側から回収槽19側への分解液40の流れで加圧されていた流量調整開閉弁3の閉塞物が、洗浄水によって逆側から加圧されることになるため、閉塞物は容易に取り除かれる。取り除かれた閉塞物は洗浄水とともに外部に排出され、詰まりのリスクがより一層軽減される。所定時間経過した後は、再度、制御手段により図8(a)に示すように、分解液40が流量調整開閉弁3に対して分解槽1側から回収槽19側に流れる流路に切り替えて、分解液40を回収槽19に排出するようにする。このような流路の切り替え操作は、分解液40の排出が終了するまで行うようにする。したがって、本実施形態においても、分解液40の排出の全期間中、流量調整開閉弁3の閉塞を効果的に防止でき、効率的に分解液40を取り出して回収することができる。
【0048】
なお、この実施形態では、詰まり防止手段4が冷却器20の入口側に設けられているが、詰まり防止手段4を冷却器20の出口側に設けるようにしてもよいし、詰まり防止手段4に冷却器20を介在させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 分解槽
2 排出配管
3 流量調整開閉弁
4 詰まり防止手段
5 排出用開閉弁
6 流量制御手段
7 固形分分離手段
71 貯留部
8 配管
81 開閉弁
9 第1配管
10 第2配管
11 第1切替弁
12 第2切替弁
13 第3切替弁
14 第4切替弁
15 洗浄水供給管
16 洗浄水排出管
17 供給弁
18 排出弁
21 流量検出手段
40 分解液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界又は亜臨界の状態において被分解物を水熱分解する分解槽と、この分解槽内から取り出された高温高圧状態の分解液を冷却する冷却器と、前記分解槽内から前記分解液を取り出す、前記分解槽と前記冷却器とを接続する排出配管と、を備え、
前記排出配管は、前記分解液の排出流量を調整する流量調整開閉弁と、分解液中の固形分による流量調整開閉弁の閉塞を防止する詰まり防止手段とを有し、
前記詰まり防止手段は、前記分解液の排出流量を検出する流量検出手段と、この流量検出手段で検出した流量に応じて前記流量調整開閉弁の開度を調整し前記分解液の排出流量を調整する流量制御手段とで構成されており、前記流量調整開閉弁の開度が所定の開度に開いている状態を開度Aとしこの開度Aよりも大きく開いている状態を開度Bとすると、前記流量制御手段は、前記流量調整開閉弁の開度を開度Aの状態で保持する開動作と、前記流量調整開閉弁の開度が開度Aの状態で保持されている状態において基準排出流量を下回る流量を前記流量検出手段で検出したときには前記流量調整開閉弁の開度を開度Bの状態で所定の時間保持する開動作とを交互に繰り返すことを特徴とする分解装置。
【請求項2】
前記流量制御手段では、前記流量調整開閉弁の開度を開度Bの状態としたときの前記排出配管からの前記分解液の排出流量が前記冷却器での前記分解液の冷却が可能な設計上の最大流量未満とされていることを特徴とする請求項1に記載の分解装置。
【請求項3】
前記排出配管には、前記流量調整開閉弁の上流側にフィルターが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の分解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−106244(P2012−106244A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−17101(P2012−17101)
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【分割の表示】特願2007−306058(P2007−306058)の分割
【原出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】