説明

分路要素を有する磁性流体封止装置

磁性流体封止装置は、シャフトと、磁極片と、底面を有しており、前記シャフト又は前記磁極片によって画定される少なくとも一つの環状溝部と、強磁性流体を含んでおり、前記シャフトと前記磁極片との間に位置している複数の封止流体円環と、厚みを有しており、前記溝部の底面に直接隣接して位置している分路壁と、前記少なくとも一つの溝部内に位置している少なくとも一個の磁石とを備える。前記分路壁の厚みは、流体が前記封止流体円環の一面から他面へと移動されるときの前記複数の封止流体円環におけるエネルギー差に基づいている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、磁性流体封止装置に関する。
【0002】
磁性流体封止装置は、一般に、回転シャフトと、円環状磁石及び磁極円環からなる統合サブアセンブリとを含む。寸法は、磁極円環先端とシャフト表面との間に小環状間隙を形成するように制御される。強磁界は、これらの間隙内に存在する。少量の磁性流体が各間隙に添加され、隣接する円環間に閉じ込められたガス充填空間により、間隙内に液体円環として磁界によって保持される。磁石及び環状間隙の数は変化してもよく、磁極円環は、実際に、単一磁極片として形成されてもよい。詳細な設計は何でもよく、そのような全ての装置は、次の段落において説明されるようにそれらの封止機能を果たす。
【0003】
圧力が流体円環の両面において同一である場合には、流体は、局所磁界の強度及び配置によって決定される平衡位置であると仮定する。流体円環の一面から他面へのいかなる圧力差も、流体をその平衡位置から軸方向に移動させる傾向がある。その平衡位置からの円環の移動は、移動を生み出す圧力差に対抗する正味の軸力をもたらす。圧力差が十分に大きくなる場合には、液体円環ははじけ開き、ガスが間隙の一面から他面へと流れる。円環がはじける圧力は、円環の「耐圧強度」と称される。多段装置(すなわち、同一シャフトにおいて直列に配置された多数の流体円環)の耐圧強度は、個々の段の耐圧強度の合計である。大幅な圧力差の環境において流体シールが利用されるのにつれて、磁性流体封止装置の耐圧強度を高めることが非常に望ましい。
【発明の概要】
【0004】
先行技術の欠点を克服するために、磁性流体封止装置は、シャフトと、磁極片と、シャフトと磁極片との間に位置している複数の封止流体円環とを含む。封止流体円環は、シャフト及び/又は磁極片によって画定されてもよく、強磁性流体を含んでもよい。底面を有する少なくとも一つの溝部は、シャフト又は磁極片のいずれかによって画定される。分路は、溝部の底面に直接隣接して位置している。分路の厚みは、流体が封止流体円環の一面から他面へと移動されるときの複数の封止流体円環におけるエネルギー差に基づく。
【0005】
本発明のさらなる目的、特徴、及び、利点は、この明細書に添付されてその一部を形成する図面及び特許請求の範囲を参照しながら以下の説明の検討後に当業者にとって容易に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、磁性流体封止装置のSat壁(Satwall)構造を示している。
【0007】
【図2】図2は、図1の磁性流体封止装置のより詳細な図を示している。
【0008】
【図3】図3は、磁性流体封止装置のスーパーシール(Superseal)構造を示している。
【0009】
【図4A】図4Aは、分路壁を有する磁性流体封止装置の異なる実施形態を示している。
【図4B】図4Bは、分路壁を有する磁性流体封止装置の異なる実施形態を示している。
【図4C】図4Cは、分路壁を有する磁性流体封止装置の異なる実施形態を示している。
【図4D】図4Dは、分路壁を有する磁性流体封止装置の異なる実施形態を示している。
【0010】
【図5】図5は、図4Dの磁性流体封止装置のより詳細な図を示している。
【図6】図6は、図4Dの磁性流体封止装置のより詳細な図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照すると、「Sat壁(Satwall)」構造における本発明の第1の実施形態が示されている。ここで、この実施形態にかかる磁性流体封止装置10は、一般にアルミニウム筐体本体12と、アルミニウム端部キャップ34とから構成される円筒状筐体内に収納されている。回転シャフト16は、端部キャップ34の中央開口を介して挿入されている。シャフト16の左端部は、フランジ20における開口を挿通して延在し、該フランジ20は、高温真空雰囲気において磁性流体封止装置10に装着するように構成されている。その右端部は、図1に示すように、室温の通常雰囲気下で配設されるように構成されている。ここで留意すべきは、装置が径方向に対称であることから、上半分部分のみが図1において詳細に示されているということである。アルミニウムベアリングナット36によって固定されている一個のクロスローラベアリング(cross-roller bearing)32は、シャフト16を回転可能に支持し、回転シャフト16を傾斜させる傾向がある力モーメントに対する大きな抵抗をもたらす。
【0012】
筐体内には、環状の磁極片30によって離隔された少なくとも一対の永久磁石24,26が軸方向に沿って直列に交互に配設されている。
【0013】
磁極片30は、磁性ステンレス鋼材から形成されている。その外径において、磁極片は、二個の溝部38,40を含み、これら溝部は、磁石24,26を完全に収容するのに十分な深さを有し、これらの磁石からの磁束を効率的に捕捉する。溝部38,40内に挿入されてセグメントに分割された又はボタン形状とされた磁石24,26を有する単一の磁極片は、好ましい構造であるが、組み立て構造の磁極片(それに摺接する外方リングを有する中央管状部)と完全な円環状磁石とを使用することも可能である。(a)一個の機械加工片しか要求されず、(2)多くの異なる磁石組立部品において一個の標準磁石部品(ボタンもしくはセグメント)が使用可能であるため、製造コストがより低減することから、単一構造は好適である。
【0014】
磁極片30は、回転シャフト16の外径よりも若干程度大きい直径をもつ第一の円筒形空洞部30A(「封止空洞部」)と、第二の空洞部(「ベアリング設置空洞部」)30Bとを含む。これらの空洞部は、同軸状に配置されており、それにより、回転シャフト16、ベアリング領域30B及び封止領域30Aを全体に一直線上に位置整合させている。
【0015】
磁石24,26は、磁極片30の他端側での磁石の極性が該磁極片について対称配置であるように、すなわち、二個の隣接した磁石の対向面上の極性が互いに同一であるように配置されている。
【0016】
図2において、磁極片の分路壁部42が示されている。単一磁極片構造が使用される場合、これらの部分は、磁極片の一体化構成要素として形成される。磁石支持用溝部又は間隙38,40は、以下の段落において後述される深さに加工される。
【0017】
これらの分路壁42は、装置を横断する圧力差、すなわち、外気雰囲気と真空と間での圧力差を支持するのに十分に強固でありながら、二個の円環状磁石24,26によって磁気的に飽和されるようになるのに十分に薄い。壁42の極めて高い飽和が得られれば、残存磁気エネルギーは、封止間隙50に対して十分に高いレベルの磁束を生成するのに十分である。
【0018】
封止間隙内の強磁界をさらにもたらしながら分路壁に使用可能である設計パラメータの組み合わせを見出すために磁気システムのコンピュータシュミレーションが使用された。設計パラメータの範囲は、必要とされる程度の機械的強度及び真空保全性をもたらすのに十分な大きさの分路壁厚をさらに保持しながら、封止間隙内において十分に強い磁界を実現可能であることが見出された。より具体的には、以下のパラメータ及び範囲が使用されればよい。すなわち、
a)使用される磁石24,26は、18MGOeもしくはそれ以上のエネルギー積を有し、9.0mm径×2.0mm厚のボタン形状に成型された希土類磁石(例えば、SmCoやNdBFe等)である。
b)推奨される磁極片30の材料は、例えば、17−4PHもしくは任意の400シリーズステンレス鋼等の磁性ステンレス鋼材である。
c)シャフト溝44の形成数は、四個を最小とし、好ましくは8個ないし15個とすべきである。溝深さを0.5mm、溝幅を0.5mmとし、各溝間隔を0.5mmとするのが好ましい。この溝深さは、シャフトと磁極片との間の径方向の間隙の少なくとも四倍とすべきである。
【0019】
装置が組み立てられて端部キャップ34がエポキシ樹脂もしくは他の接着剤によって筐体本体12に結合されると、(限られた数の封止間隙50を充填するのに十分な)予め定められた量の強磁性流体が「二次封止領域」46においてシャフト上に配設され、シャフト16が磁極片30の内部に挿入される。流体で覆われた部分が磁極片に入ると、該流体は、間隙群を満たしてシャフトの封止間隙群もしくは溝部50にトラップされた空気の隔離されたポケット(isolated pockets of trapped air)を形成するように、シャフト16の周囲に均等に拡散する。圧力差が組立体(フランジ端での真空ポンプ部)を横切って加えられ、流体の一部は、さらに「一次封止領域」28の内部にも引き込まれる。「一次封止領域」内に十分に高い強度の磁界が与えられたとすると、全圧力差(1気圧)を支持するのに数段(例えば四段)のみが必要とされるように決定される。「二次封止領域」内の封止間隙群44はまた、これらの間隙内の磁界強度がより小さいことから、これらの段が「一次封止領域」におけるものよりは弱いものの、ある程度の封止効果を奏する。
【0020】
図面の図3を参照すると、それらに関連して、長手方向半分部分が示された磁性流体封止装置110の第2の実施形態が表されている。当然のことながら、同等の参照符号が、これらの参照符号に数字「1」が前に置かれるのを除いて、同等の構成要素を表すのに利用される。さらに当然のことながら、装置は対称であり、したがって、上半分部分のみが示される必要がある。この種の構造は、一般に、「Sat壁(Satwall)」構造と称される。
【0021】
一般に円筒状筐体本体112は、バリア壁129を介して延在して取り付けられている。筐体本体112は、軸方向において筐体本体の中央部分を介して挿入された回転シャフト116を取り囲んでいる。
【0022】
シャフト116の中央部分117は、磁石124,126をそれぞれ含むために二つの溝部138,140によって形成されている。中央部分117はまた、それに対してベアリング132が装着される磁極円環129及び肩部1232を画定する5つのシャフト溝144を含む。好ましくは、ベアリング132は、肩部123間において軸方向に延在している封止領域をまたぐように配設されている。基本的に、磁極片130は、シャフト116によって画定されている。
【0023】
好ましくは、シャフト116は、シャフトの一端が外気雰囲気に触れ且つ他端がバリア129を介して真空環境に延在する目的の処理(真空)環境での使用に適している強磁性材料から形成されている。
【0024】
溝の機能は、軸方向に互いに離隔された、いくつかの異なる磁極間隙127(この場合は8個)を画定することである。磁石124,126は、シャフト116の溝部138,140の内部に挿入される。磁石124,126は、円環磁石の半分区域であってもよく、又は、小円筒であるか、いかなるいくつかの区域形状からなっていてもよい。単一の溝部内の全ての磁石は、同一方向を向いたそれらの磁極を有する。好ましくは、第2の溝部内の磁石は、第1の溝部内の磁石とは対極の磁極を有して向けられる。この対極状態は、以下に説明されるように、封止間隙内での改善された磁束を有する完成組立体及び最小の外部磁界をもたらす。
【0025】
磁石124,126は、相互の磁石の斥力又は遠心力の結果としてそれらが滑り出るのを防止するために、溝部内に確実に保持される必要がある。保持手段は、ここでは示されていない。典型的な保持方法は、(1)溝部内に磁石を固定するためのエポキシ樹脂、(2)磁石の周囲に輪状に設置された細線もしくは細紐、又は、(3)磁石溝部上で巻かれた端部である。いずれの場合でも、保持手段は、溝境界を越えて径方向に延在してはならず、又は、回転中に筐体内面に接触する。
【0026】
さらに本発明の他の実施形態を図示するために、図4A〜図4Dが与えられる。図4A〜図4Dは、異なる変形例に対する注意を喚起するように磁性流体封止装置の簡略化した実施形態を示している。当然のことながら、同等の参照符号が、これらの参照符号に数字「2」が前に置かれ且つ後に文字「A〜D」が続くのを除いて、同等の構成要素を表すのに利用される。文字「A〜D」は、それぞれ、図4A〜図4Dにおいて示される構成要素に関連している。他の図と同様に、さらに当然のことながら、装置は対称であり、したがって、上半分部分のみが示される必要がある。
【0027】
磁性流体封止装置210A〜210Dは、それぞれ、シャフト216A〜216Dと、磁極片230A〜230Dとを含む。しかしながら、図4A及び図4Bにおいて、溝部238A,238B,240A,240Bは、シャフト216A,216Bの内部に形成されている。これとは逆に、図4C及び図4Dにおいて、溝部238C,238C,240D,240Dは、磁極片230C,230Dの内部に形成されている。
【0028】
また、図4A及び図4Cは、それぞれ、シャフト216A,216Cによって形成されて画定される溝244A,244Cを含む。これとは逆に、図4B及び図4Dは、それぞれ、磁極片230B,230Dによって形成されて画定される溝244B,244Dを含む。したがって、図4A〜図4Dの描写から、溝及び/又は溝部が磁極片又はシャフトのいずれかに形成可能であることは明らかなはずである。
【0029】
さらに図4A〜図4Dを参照すると、分路壁242A〜242Dがシャフト216A,216B又は磁極片230C,230Dのいずれかに形成されている。より具体的には、溝部238A〜238D及び240A〜240Dは、それぞれ、底面248A〜248D及び上面249A〜249Dを有する。上述したように、溝部238A〜238D及び240A〜240Dは、シャフト216A,216B又は磁極片230C,230Dのいずれかによって画定されている。
【0030】
分路壁242A〜242Dは、それぞれ、厚みを有する。分路壁242A,242Bがシャフト216A,216Bによって画定されている場合には、分路壁242A,242Bの厚みは、それぞれ、溝部224A,226A,224B,226Bの底面248A,248Bと、線252A,252Bによって表されるシャフト216A,216Bの中央線(軸)との間の距離によって画定される。分路壁242C,242Dが磁極片230C,230Dによって画定されている場合には、分路壁242C,242Dの厚みは、それぞれ、溝部224C,226C,224D,226Dの底面248C,248Dと、磁極片230C,230Dの内径227C,227Dとの間の距離によって画定される。
【0031】
磁性流体封止装置の耐圧強度は、分路壁242A〜242Dの厚みを調整することによって高められることができる。この設計手法のいくつかの利益及び効果は、以下のとおりである。すなわち、(1)磁石及び分路要素についての最良の寸法を選択することにより、耐圧強度がSat壁及びスーパーシール(Superseal)装置の双方について最大化可能であること、(2)磁性流体円環における粘性抵抗に打ち勝つのに必要とされる力が低減されること、(3)分路壁が可能な限り薄くすべきである旨を述べる従来の設計基準と比較して、Sat壁磁極片についての壁厚及び製造公差が非常に緩和されること、(4)分路壁に機械的負荷(ねじりや曲げ)を与えるSat壁装置において、強度が極めて非常に薄壁装置にわたって増加すること、(5)スーパーシール装置において、より小さい磁石が使用可能であり、それにより、封止流体円環の径が低減されること。
【0032】
これは、装置をより小型化し、シャフトが回転するときの摩擦及び自己発熱を低減する。(6)同軸装置(共通軸上の二つ以上の同心シャフト)において、項目3,4に記載された利益は、双方とも効力があり、非常に高いシャフト強度を有する非常に小型の装置をもたらす。
【0033】
この創作の開発の過程での大きな問題の克服は、非常に簡便な構造以外における磁界及び力の計算の複雑性に関係がある。簡便な設計方法は、実システムの複雑性を扱うのに妥当ではない。有限要素解析(「FEA」)は、磁性流体封止装置にわたって磁界を求めるのを可能とする。この創作を見出して実証するのに使用されるFEAモデリング及び解析手順は、(1)周知のモデリングアイデア、(2)市販ソフトウェア、及び、(3)市販ツールの権利実施、の組み合わせである。FEAの解からのデータの後処理は、同様に非常に重要であり、独自方法によって行われる。
【0034】
図5を参照すると、図4Dに示された実施形態のより詳細な図が示されている。図5は、任意の封止段階にわたって圧力差がないときの流体円環の近似位置を示している。各円環の各側面における自由表面の正確な形状が、この領域における磁界の形状に依存するものの、流体は、磁極先端の各側面においておおよそ等しく分布する。
【0035】
封止段階にわたって圧力差があるとき、分布は、おおよそ図6に示されるようになり、高圧側は右に向かっている。流体の一部は、各流体円環の高圧側から低圧側に向かって移動する。
【0036】
流体領域内の磁界は、もはや対称ではなく、各流体円環の両面において平衡を保っていない。間隙に最も近い位置は、間隙からより離れている位置よりも大きい磁界の大きさ及び勾配を有している。これは、間隙に向かって流体円環の左側を引き戻す傾向がある正味の力をもたらす。この力は、第1の場所において流体を移動させる圧力差に対抗する方向である。この復元力は、封止段階にわたって一部の圧力差を支持するものである。
【0037】
初級物理学から、任意の物体が対抗力に対して移動されるときはいつでも、物理学上の仕事が(仕事=力×距離)で行われることは公知である。したがって、一部の仕事がここで図示される流体移動を生じさせるように行われる必要がある。仕事−エネルギー等価の法則によれば、この仕事は、流体円環についての変化したエネルギー状態をもたらす。移動前後における流体領域にわたる磁界が知られている場合、移動前後におけるエネルギーを計算するために周知の手順を適用することができる。いったんエネルギー変化(ΔE)及び移動の双方が知られると、エネルギー変化を生み出すのに必要とされるべき力を計算することができる。流体の形状を考慮に入れると、この力に対応する圧力を計算することができる。完全な移動の状態について、この力は「耐圧強度」である。
【0038】
ここで留意すべきは、エネルギーの変化ΔEが重要であり、エネルギー自身ΔEは、(1)磁界の強度、及び、(2)磁界の勾配(どの程度急激に変化するか)の双方に依存しないということである。強磁性の物体は、完全に一様(勾配ゼロ)である強磁界内で動き回るとき、ゼロ力を受ける。物体における磁気エネルギーは大きいにもかかわらず、位置の変化に起因するエネルギーの変化はない。したがって、力は存在しない。位置の変化によるいくらかの磁界強度の変化(すなわち、磁界の勾配)は、エネルギーの変化を有するために存在する必要がある。
【0039】
これは、耐圧強度を最大化する方法が、流体円環の移動の範囲にわたって流体円環内のΔEを最大化する磁界構造を形成することである旨を暗示している。強磁界が望ましいながらも、同様に強勾配を形成することも望ましい。エネルギーの一部を流体領域から離れて迂回させる磁性分路領域により、非常に強い磁性材料を使用することが可能であり、流体領域におけるΔEを最大化するために磁界の形状及び強度並びに勾配を変えることが可能である。磁界強度は低減されるが、分路の寸法が増加するのにともないある程度までのみであるが勾配は増加する。過剰なエネルギーが分路を介して迂回される場合には、(流体内の磁界が小さすぎることから)ΔEは下降し、耐圧強度は減少する。したがって、分路領域についてのいくつかの最適な一連の寸法が存在する。この最適条件において、ΔEは最大化され、したがって、耐圧強度も最大化される。
【0040】
当業者が容易に理解するように、上記の説明は本発明の原理を実現する例としての意味である。この説明は、以下の請求項に記載の本発明の精神から逸脱することなく、本発明が修正、変異及び変更に影響されやすい点で、本発明の範囲又は用途を制限することを目的としていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性流体封止装置において、
シャフトと、
磁極片と、
底面を有しており、前記シャフト又は前記磁極片によって画定される少なくとも一つの環状溝部と、
強磁性流体を含んでおり、前記シャフトと前記磁極片との間に位置している複数の封止流体円環と、
厚みを有しており、前記溝部の底面に直接隣接して位置している分路壁と、
前記少なくとも一つの溝部内に位置している少なくとも一個の磁石とを備え、
前記分路壁の厚みは、流体が前記封止流体円環の一面から他面へと移動されるときの前記複数の封止流体円環におけるエネルギー差に基づいている、磁性流体封止装置。
【請求項2】
前記分路壁の厚みは、流体が前記封止流体円環の一面から他面へと移動されるときの前記複数の封止流体円環におけるエネルギー差の最大化に基づいている、請求項1記載の磁性流体封止装置。
【請求項3】
前記封止流体円環は、前記シャフトによって画定されている、請求項1に記載の磁性流体封止装置。
【請求項4】
前記封止流体円環は、前記磁極片によって画定されている、請求項1に記載の磁性流体封止装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つの溝部は、前記シャフトによって画定されている、請求項1に記載の磁性流体封止装置。
【請求項6】
前記分路壁の厚みは、前記溝部の底面と前記シャフトの中央線との間の距離として画定されている、請求項5記載の磁性流体封止装置。
【請求項7】
前記少なくとも一つの溝部は、前記磁極片によって画定されている、請求項1に記載の磁性流体封止装置。
【請求項8】
前記分路壁の厚みは、前記溝部の底面と前記磁極片の内径との間の距離として画定されている、請求項7に記載の磁性流体封止装置。
【請求項9】
前記少なくとも一個の磁石は、異極性の少なくとも二個の磁石を備える、請求項1に記載の磁性流体封止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−530048(P2011−530048A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521226(P2011−521226)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/051888
【国際公開番号】WO2010/014563
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(509241889)リガク イノベイティブ テクノロジーズ インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】