説明

分配混合器

【課題】複数の入出力ポートを有し分配器あるいは混合器として利用でき、かつ、ノイズや反射波の影響を受けにくい分配混合器を提供する。
【解決手段】3つ以上のN個の信号入出力端子(ポート1〜6)と、ポート1〜6の何れか一に一端が接続され、他端同士が共通接続されているN本の信号伝送線路12−1〜12−6と、信号伝送線路12−1〜12−6の各々に1つずつ直列に挿入されているN個の直列抵抗14−1〜14−6と、共通接続点(分岐点13)と基準電位(GND電位)間に接続されている共通の帯域通過フィルタBPF0と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3つ以上のN個の信号入出力端子の何れかから入力される信号を他の(N−1)個の信号入出力端子から電力を均等配分して出力可能な分配器の機能と、複数の信号入出力端子からの信号を混合して、他の信号入出力端子から出力可能な混合器の機能とを併せ持つ分配混合器に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス通信装置またはワイヤレス通信装置用ソフトウエアの評価・開発を行う場合、外部からノイズや反射波の影響を受けずに安定して通信できる状態を作り出すため、ワイヤレス通信装置同士を同軸ケーブル等の有線で接続することがある。
この場合、すべてのポート間で等しく信号を分配する必要がある。
【0003】
1つの入力ポートから入力された信号を2つの出力ポートに分配する分配器が提案されているが(例えば、特許文献1参照)、この分配器は主に平衡、非平衡変換を目的としたものであり、ワイヤレス通信装置同士を同軸ケーブル等の有線で接続する用途に適していない。
【0004】
ところで、ワイヤレス通信装置同士を同軸ケーブル等の有線で接続する用途では、ワイヤレス通信装置を評価するために、低損失のマイクロ波電力分配器を用いると、信号強度が強すぎると受信側で信号が歪む。そのため安定したワイヤレス通信を行うために、ある程度減衰した信号を受信側に送る必要がある。
【0005】
そこで、1つの入力ポートから入力された信号を複数の出力ポートに分配する分配器において、複数の出力ポートに各々1本ずつ接続されている信号伝送線路にそれぞれ直列に抵抗を接続して、信号をある程度減衰することで、すべてのポートでインピーダンスの整合を取り、かつ、各ポート間で挿入損を一定にする分配器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−307313号公報(第2,3頁、第1図)
【特許文献2】特開2006−5656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ワイヤレス通信装置またはワイヤレス通信装置用ソフトウエアの評価・開発を行う場合、外部からノイズや反射波の影響を受けずに安定して通信できる状況にする必要がある。
しかし、上述した特許文献2に記載されている分配器は、ノイズや反射波が直接波に影響し、その結果、完全に複数の出力ポートのインピーダンスを揃えることが難しい。また、各ポートでの挿入損もノイズや反射波の影響を受けた場合は一定にならない。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、複数の入出力ポートを有し分配器あるいは混合器として利用でき、かつ、ノイズや反射波の影響を受けにくい分配混合器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る分配混合器は、3つ以上のN個の信号入出力端子と、前記信号入出力端子の何れか一に一端が接続され、他端同士が共通接続されているN本の信号伝送線路と、前記N本の信号伝送線路の各々に1つずつ直列に挿入されているN個の直列抵抗と、前記信号伝送線路の共通接続点と基準電位間に接続されている共通の帯域通過フィルタと、を有する。
本発明では好適に、前記N本の信号伝送線路の各々に1つずつ直列に接続されているN個の帯域通過フィルタを、さらに有する。
前記共通帯域通過フィルタは、好適に、前記共通接続点と前記基準電位との間に並列接続されている第1キャパシタと第1インダクタを含む。
前記信号伝送線路に直列接続されている各帯域通過フィルタは、互いに直列に接続されている第2キャパシタと第2インダクタを含む。
【0009】
本発明では好適に、前記共通接続点と基準電位間に接続され、前記N本の信号伝送線路に対して並列な並列抵抗を、さらに有する。
本発明では好適に、前記N本の信号伝送線路に直列接続される前記N個の直列抵抗は、各信号入出力端子から前記共通接続点までの抵抗値が等しくなるように、それぞれの抵抗値が決められている。
本発明では好適に、それぞれ前記直列抵抗が接続されている前記N本の信号伝送線路は、対応する信号入出力端子から前記共通接続点までの高周波特性が同じに設定されている。
【0010】
以上の構成によれば、例えば前記N個の信号入出力端子の何れかに高周波信号を印加すると、他の(N−1)個の信号入出力端子から電力がほぼ均等配分された高周波信号が出力され、当該分配混合器が分配器として働く。このとき、共通通過帯域フィルタにより、所望の帯域に通過信号が限定され、よってノイズ成分が除去される。また、入力される信号電力が大きい場合でも直列抵抗の働きによって信号電力が減衰され、出力される高周波信号を利用する機器において信号歪みが抑圧される。
また、例えば(N−1)個の信号入出力端子に高周波信号を印加すると、残りの1つの信号入力端子から、上記(N−1)個の信号入力端子に印加された高周波信号の合成信号が得られ、当該分配混合器が混合器として働く。この場合も、上記共通通過帯域フィルタによるノイズ除去と前記直列抵抗による信号減衰の作用がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の入出力ポートを有し分配器あるいは混合器として利用でき、かつ、ノイズや反射波の影響を受けにくい分配混合器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
《第1実施形態》
【0014】
図1は、本実施形態に関わる分配混合器の構成を示す図である。
図1に図解する分配混合器10は、6つの信号入出力端子としてのポート(Port)1〜6を備える配線ボード11を有する。配線ボード11は、シールドボックス16に覆われ、外部から飛び込む電磁ノイズ等に対して保護されている。
【0015】
配線ボード11のポート1に信号伝送線路12−1が接続され、同様に、ポート2〜6に対しても信号伝送線路12−2〜12−6が、それぞれ接続されている。ポート1から信号伝送線路12−1を経由して共通接続点としての分岐点13に至る信号経路に、直列抵抗14−1が挿入されている。同様に、ポート2〜6から信号伝送線路12−2〜12−6を経由して分岐点13に至る各信号経路に1つずつ直列抵抗14−2〜14−6が挿入されている。
直列抵抗14−1〜14−6は、望ましくは、各ポート1〜6から分岐点13までの抵抗値が等しくなるように、それぞれの抵抗値が決められている。以下、直列抵抗14−1〜14−6は同一の抵抗値Rsを有すると仮定する。
【0016】
各ポート1〜6は、例えば同軸ケーブルによりワイヤレス通信装置等の外部機器と接続するための端子である。本分配混合器10は、このポートを通じて6つの外部機器とケーブル接続することができる。
各信号伝送線路12−1〜12−6は、特性インピーダンスが例えば50[Ω]の配線であり、対応するポート1〜6で信号の反射が極力抑制されている。
分岐点13は、6つの信号伝送線路12−1〜12−6を共通接続するノードである。分岐点13を介して単一の信号が複数の経路に分配され、あるいは逆に、分岐点13で複数の信号が混合されて他の経路に出力される。
【0017】
本実施形態の分配混合器10は、分岐点13と共通電位(たとえばGND電位)との間に、信号伝送線路12−1〜12−6に共通の通過帯域フィルタBPF0が接続されている。
通過帯域フィルタBPF0は、互いに並列なインダクタ18とキャパシタ19を備える。
【0018】
また、本実施形態の分配混合器10は、分岐点13と共通電位(例えばGND電位)との間に、信号伝送線路12−1〜12−6のそれぞれに対し分岐点13を介して並列接続される並列抵抗R0が接続されている。並列抵抗R0は、後述する他の実施形態に示すように省略することも可能であるが、並列抵抗R0を省略すると、各信号伝送線路12−1〜12−6の直列抵抗14−1〜14−6の値が大きくなることがある。本実施形態では、そのような場合、分岐点13に抵抗値Rpを有する並列抵抗R0を図示のように接続させることによって、直列抵抗14−1〜14−6の値を比較的小さくできる利点がある。
本実施形態では、直列抵抗14−1〜14−6の各々と、共通な並列抵抗R0とによって、信号伝送線路12−1〜12−6を通る各ポートの信号減衰量を所望の一定値(入力信号電力が一定の場合)に揃えることが可能である。
【0019】
シールドボックス16は、外部からのノイズの影響を低減するためのものである。
信号伝送線路12−1〜12−6は、マイクロストリップ線路またはコプレーナ線路によって構成され、配線ボード11は、これらの線路にグランド電位を与えるグランド面17を有する。
シールドボックス16は、例えば金属材料からなり、グランド面17をシールド下面として、配線ボード11を含む分配混合器10全体を覆うように形成されている。
【0020】
つぎに、直列抵抗14−1〜14−6の抵抗値Rs、並列抵抗R0の抵抗値Rpについて、それらの算出方法の一例を説明する。
ここでポート数をN個、各ポート間の減衰量をK(Ratio)、信号伝送線路の特性伝送路の特性インピーダンスを50[Ω]とする。
直列抵抗14−1〜14−6の抵抗値Rs[Ω]は、次式(1)で与えられる。
【0021】
[数1]
Rs=50*(1−K)/(1+K)…(1)
【0022】
また、並列抵抗R0の抵抗値Rp[Ω]は、次式(2)式により与えられる。
【0023】
[数2]
Rp=100*K/((1+K)*(1−(N−1)*K))…(2)
【0024】
また、通過帯域フィルタBPF0の信号通過帯域は、分岐点13に接続されるインダクタ18(インダクタンスLp)とキャパシタ19(キャパシタンスCp)の時定数によって算出される。各インダクタ18とキャパシタ19のインピーダンスを特性インピーダンス(50[Ω])に対してスケーリングすることにより信号の通過帯域の幅を制御することができる。
【0025】
以上説明した構成の分配混合器10は、全てのポート1〜6の通過帯域にて、インピーダンスの整合が取れ、各ポート1〜6間で挿入損が一定で各ワイヤレス通信装置が同じ状態で通信を行うことができると共に安価で小型化を図ることができるようにした分配器または混合器の機能を持つ。
以下、この機能および特徴について説明する。
【0026】
本分配混合器10は、分岐点13からポート1〜6のそれぞれに至る信号経路が点対称に配置され、また、各信号経路の特性が揃えられている。
そして、減衰機能を有する直列抵抗14−1〜14−6がパッシブ素子からなる。これに対し、減衰機能をアクティブ素子、例えばトランジスタを含む回路から構成すると、トランジスタのゲート側が入力となる制約があり、信号入力側と出力側が回路構成上決まってしまう。減衰機能をパッシブ素子で実現することは、信号入力側と信号出力側の区別をなくすことができることを意味する。よって、6つのポート1〜6を信号入力端子として用いることと、信号出力端子として用いることの何れも可能である。
以上より、本実施形態の分配混合器10は、直列抵抗14−1〜14−6と並列抵抗R0の抵抗値を適切に選択することにより、信号の減衰機能を有し、かつ、入力ポートと出力ポートの区別をなくし、すべてのポートでインピーダンスの整合が取れる分配器と混合器の機能を兼ね備えた分配混合器10が実現されている。
【0027】
また、本実施形態の分配混合器10は、仮にあるポートと信号伝送線路との間、あるいはその他の信号経路途中にインピーダンスの不整合があり、信号が反射してこれがノイズ成分となっても、分岐点13に接続された通過帯域フィルタBPF0の働きによってノイズ成分を除去できる。また、グランド面17とシールドボックス16によって一応シールドがなされているが、仮に、強いノイズ源により外部からのノイズが信号経路に重畳されても通過帯域フィルタBPF0の働きによって、このノイズ成分も除去される。よって、各ポート間で挿入損が一定となるため、各ポートに接続されている外部機器が同じ状態で通信を行うことができる。
さらに、分配器と混合器が一体となって形成され、分岐点13に接続されている並列抵抗R0の存在により信号伝送線路の直列抵抗14−1〜14−6に要求される抵抗値Rsが小さくて済む。このため、当該分配混合器10は小型化が図られている。
【0028】
本実施形態の分配混合器10の用途、すなわちポート1〜6に接続される通信機器(外部機器)は任意である。
ただし、特に減衰器の機能を持ち合わせていることから、分配混合器10は通常使用時を超える信号電力のやり取りをする通信機器の評価・開発の用途に適している。
このような通信機器としては、ワイヤレス通信装置を代表例として挙げることができる。以下、ワイヤレス通信装置の評価・開発を例として、本分配混合器10の用途を説明する。
【0029】
図2に、ワイヤレス通信装置の通信状態例を示す図である。
図では4つのワイヤレス通信装置WLAN1〜WLAN4を示している。ワイヤレス通信装置WLAN1〜WLAN4は、相互に無線通信が可能であり、その通信距離や能力に応じて信号減衰量(伝送損失)もさまざまである。図2では、一例として同じ通信能力の4つのワイヤレス通信装置WLAN1〜WLAN4が相互に通信を行う場合を示し、互いの伝送損失が−50[dB]で一定としている。
このようにワイヤレス通信装置は、本来はワイヤレスで通信を行うため空間伝播時の信号減衰がある程度予定されている。
【0030】
一方、ワイヤレス通信装置またはワイヤレス通信用のソフトウエアの評価・開発においては、信号伝送線路の条件を複数のワイヤレス通信装置で一定とし、安定した評価・開発環境を作り出す必要がある。また、外来のノイズを避け各ワイヤレス通信装置が発信する電波のみを受け取る状況にする必要がある。さらに、直接波と反射波の干渉の影響を避ける必要もある。
以上の要請から、ワイヤレス通信装置またはワイヤレス通信用のソフトウエアの評価・開発においては、ワイヤレス通信装置を相互に接続し、そのときノイズの影響の不均一を排除する必要がある。分配器や混合器は、このような目的で使用されるが、分配器と混合器を別々に用意し、ケーブルをつなぎなおして用いるのでは不便である。また、各ワイヤレス通信装置の出力に市販のノイズフィルタを接続するとした場合、コスト高になり、また、接続も煩雑化する。さらに、全てのワイヤレス通信装置の各通信経路でインピーダンスの整合がとれ、挿入損が一定となる保証はない。
また、複数のワイヤレス通信装置をケーブル接続すると、ケーブルにおける信号減衰は空間伝播時の信号減衰量より小さいため、信号電力が大きすぎるという事態が発生する。この事態を避けるために各ワイヤレス通信装置で送信パワーを絞ったのでは、正確な評価ができない。
【0031】
図3は、本実施形態の分配混合器10を用いる評価時の一接続例を示す。
図3において、全てのポートでインピーダンスの整合が取れ、各ポート間で挿入損が一定となるために前述した構成の分配混合器10が使用される。分配混合器10のポート1,2,4および6に、図2に示すワイヤレス通信装置WLAN1〜WLAN4が1台ずつ、そのRF端子がケーブルを解して接続されている。また、分配混合器10のポート3には測定器20が接続されている。
【0032】
一般に、ワイヤレス通信装置等が接続されていないポート、例えばポート5は50[Ω]のターミネータで終端されることが望ましい。
しかし、本実施形態の分配混合器10では、各ポート間の減衰量が大きいとき、例えば減衰量が−50[dB]のとき、ポート1からポート5を通ってポート4に抜ける信号は、ポート1から直接にポート4に抜ける信号よりも50[dB]小さく、無視することができるので、ターミネータを接続しなくとも評価・開発に十分なシステムを構築することができる。
【0033】
ワイヤレス通信装置WLAN1〜WLAN4のうち1つ、例えばワイヤレス通信装置WLAN1から通信信号を送信する。すると、通信信号は各信号伝送線路12−1を経由して分岐点13に至り、分岐点13を介して均等に減衰されて他のポート2,4,6に分配される。これにより、各ワイヤレス通信装置WLAN2〜WLAN4が同じ状態で通信信号を受信する。
なお、他のワイヤレス通信装置WLAN2,3,4が通信信号を送信する場合も同様である。また、複数のワイヤレス通信装置から同時に通信信号を送信する場合も同様である。
【0034】
このように本実施形態においては、ポート1〜6を有し、配線ボード11に6本の信号伝送線路12−1〜12−6を配線され、各信号伝送線路12−1〜12−6の一端は分岐点13に接続される。また、各信号伝送線路12−1〜12−6には、直列抵抗14−1〜14−6が1つずつ挿入されている。配線ボード11はシールドボックス16により囲われている。各信号伝送線路に配置される直列抵抗14−1〜14−6は、各ポートから分岐点13までの信号経路の特性を同じにするように各抵抗値が決められている。また、並列抵抗R0は分岐点13とグランド面17との間に接続されている。また、信号伝送線路12−1〜12−6は、コプレーナ線路またはマイクロストリップ線路によって構成され、各信号伝送線路12に共通なグランド面17を基準電位として用いる。
【0035】
このように分配混合器10が構成されていることから、そのポート3に接続されている測定器20で信号電界強度を測定すると、その値は、ワイヤレス通信装置WLAN1〜WLAN4の受信信号の電界強度として検出される。
この受信電界強度下で、ワイヤレス通信装置WLAN1〜WLAN4の機能チェック、あるいは、内蔵またはインストールされたプログラムの評価を行う。
【0036】
なお、信号合成の場合は、これとは逆に、例えばワイヤレス通信装置WLAN2,WLAN3,WLAN4から同じ電界強度で信号を送信し、例えばポート1に接続されているワイヤレス通信装置WLAN1で、合成信号を受信し、その機能チェックやプログラム評価を行う。
このときの合成信号の電界強度は、測定器20により測定できる。
【0037】
以上より本実施形態によれば、分配または混合と、減衰の機能を共に有し、入力ポートと出力ポートの区別をなくし、すべてのポートでインピーダンスの整合が取れ、各ポート間で挿入損が一定となるため、各ワイヤレス通信装置が同じ状態で通信を行うことができると共に、小型な混合分配装置を実現できる。
そのため、従来のように分配器、混合器、減衰器、終端器等高周波部品を複雑に組み合わせる必要がなく、評価したいワイヤレス通信装置を分配混合器10に接続するだけでマルチ端末ワイヤレス通信の評価・開発システムを構築することができるので、直感的且つ容易に評価・開発を行うことができる。
【0038】
《第2実施形態》
図4は、本発明の第2実施形態に関わる分配混合器10Aの構成図である。
図解する分配混合器10Aは、第1実施形態の分配混合器10(図1)と比較すると、並列抵抗R0が省略されている。
例えば直列抵抗14−1〜14−6の抵抗値が比較的小さい場合、このように並列抵抗R0を省略して、各々の直列抵抗14−1〜14−6の抵抗値のみで減衰量を規定しても、図1とほぼ同じ面積で配線ボード11を実現できる。
分配混合器10の並列抵抗R0が省略されると、即ち並列抵抗Rs[Ω]の値が無限大になり、この条件下で、直列抵抗14の抵抗値Rp[Ω]は、上述した計算式(式(1))を用いて求めることができる。
【0039】
本実施形態においても、第1実施形態と同様、分配または混合と、減衰の機能を共に有し、入力ポートと出力ポートの区別をなくし、すべてのポートでインピーダンスの整合が取れ、各ポート間で挿入損が一定となるため、各ワイヤレス通信装置が同じ状態で通信を行うことができると共に、小型な混合分配装置を実現できる。
そのため、従来のように分配器、混合器、減衰器、終端器等高周波部品を複雑に組み合わせる必要がなく、評価したいワイヤレス通信装置を分配混合器10に接続するだけでマルチ端末ワイヤレス通信の評価・開発システムを構築することができるので、直感的且つ容易に評価・開発を行うことができる。
【0040】
《第3実施形態》
図5は、本発明の第3実施形態に関わる分配混合器10B構成図である。なお、この図では4ポートの例を示すが、ポート数の違いは本質的でない。
図解する分配混合器10Bは、第1実施形態の分配混合器10(図1)と比較すると、信号伝送線路12−1〜12−4に直列に、それぞれインダクタ21とキャパシタ22からなる通過帯域フィルタBPF1が接続されていることが異なる。
その他の基本構成は同じであり、その詳細説明は省略する。
【0041】
通過帯域フィルタBPF1の追加により、信号の通過帯域フィルタの次数が2次から4次となり、フィルタ特性により急峻な減衰特性を持たせることが可能となる。そのためノイズの除去能力が向上している。
各信号伝送線路に挿入される通過帯域フィルタBPF1のキャパシタの値及び/又はインダクタの値を変えてもよいが、ここでは同じ値に設定されている。
【0042】
図6に、図5の分配混合器10Bにおいて信号電力P[dB]の周波数依存性を示す。
この図より、通過帯域フィルタの次数を2次から4次にすることで急峻なフィルタ特性が得られていることが分かる。また、このフィルタの通過帯域で、信号の減衰量は−10[dB]と一定に保たれている。
【0043】
本実施形態においても、第1実施形態と同様、分配または混合と、減衰の機能を共に有し、入力ポートと出力ポートの区別をなくし、すべてのポートでインピーダンスの整合が取れ、各ポート間で挿入損が一定となるため、各ワイヤレス通信装置が同じ状態で通信を行うことができると共に、小型な混合分配装置を実現できる。
そのため、従来のように分配器、混合器、減衰器、終端器等高周波部品を複雑に組み合わせる必要がなく、評価したいワイヤレス通信装置を分配混合器10に接続するだけでマルチ端末ワイヤレス通信の評価・開発システムを構築することができるので、直感的且つ容易に評価・開発を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1実施形態に関わる分配混合器の構成図である。
【図2】ワイヤレス通信装置の通信状態例を示す図である。
【図3】分配混合器を用いる評価時の一接続例を示す図である。
【図4】第2実施形態に関わる分配混合器の構成図である。
【図5】第3実施形態に関わる分配混合器の構成図である。
【図6】図5の分配混合器において信号電力P[dB]の周波数依存性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0045】
10,10A,10B…配混合器、11…配線ボード、12−1〜12−6…信号伝送線路、13…分岐点、14−1〜14−6…直列抵抗、16…シールドボックス、17…グランド面、20…測定器、WLAN1〜WLAN4…ワイヤレス通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つ以上のN個の信号入出力端子と、
前記信号入出力端子の何れか一に一端が接続され、他端同士が共通接続されているN本の信号伝送線路と、
前記N本の信号伝送線路の各々に1つずつ直列に挿入されているN個の直列抵抗と、
前記信号伝送線路の共通接続点と基準電位間に接続されている共通の帯域通過フィルタと、
を有する分配混合器。
【請求項2】
前記N本の信号伝送線路の各々に1つずつ直列に接続されているN個の帯域通過フィルタを、さらに有する
請求項1に記載の分配混合器。
【請求項3】
前記共通帯域通過フィルタは、前記共通接続点と前記基準電位との間に並列接続されている第1キャパシタと第1インダクタを含む
請求項1に記載の分配混合器。
【請求項4】
前記信号伝送線路に直列接続されている各帯域通過フィルタは、互いに直列に接続されている第2キャパシタと第2インダクタを含む
請求項2に記載の分配混合器。
【請求項5】
前記共通接続点と基準電位間に接続され、前記N本の信号伝送線路に対して並列な並列抵抗を、
さらに有する請求項1〜4の何れかに記載の分配混合器。
【請求項6】
前記N本の信号伝送線路に直列接続される前記N個の直列抵抗は、各信号入出力端子から前記共通接続点までの抵抗値が等しくなるように、それぞれの抵抗値が決められている
請求項1に記載の分配混合器。
【請求項7】
それぞれ前記直列抵抗が接続されている前記N本の信号伝送線路は、対応する信号入出力端子から前記共通接続点までの高周波特性が同じに設定されている
請求項1に記載の分配混合器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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