説明

分離マトリックス

本発明は、ベースマトリックスを含有し、上記ベースマトリックスに疎水性官能基を有する第1リガンドが共有結合し、かつ上記ベースマトリックスにエクステンダーが共有結合し、上記エクステンダーが第2イオン交換リガンドを有する、分離マトリックスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子の分離に有用な分離マトリックス、分離マトリックスの製造方法及び分離マトリックスを用いて生体分子を分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある化合物、例えば不純物又は所望分子を液体又は他の固体材料から分離することが必要な多くの事例がある。多くの分野では、電荷間相互作用を用いて荷電化合物又は荷電性化合物を捕獲して分離する。
【0003】
化学及びバイオテクノロジーの分野では、薬剤、薬剤候補などの標的化合物は通常、生産プロセスで生じた夾雑化学種から分離する必要がある。例えば、組換え宿主細胞の発現によって生産されるタンパク質薬剤又は薬剤候補は、宿主細胞及びおそらく細胞片、他の宿主細胞タンパク質、DNA、RNA、発酵ブロスからの残留物、例えば塩などから分離する必要がある。汎用性及び標的化合物に対して高感度であるために、クロマトグラフィーは、現在用いられている多くのバイオテクノロジー精製法の1以上の工程として取り入れられている。クロマトグラフィーという用語は、一群の密接に関連した分離方法を包含し、分離法はすべて2つの互いに不混和性の相を接触させる原理に基づく。さらに特定すると、標的化合物を移動相に導入し、移動相を固定相と接触させる。その後、標的化合物が移動相によって系中に運ばれるにつれて標的化合物は固定相と移動相間の一連の相互作用を受ける。相互作用はサンプル成分の物理的又は化学的特性の差を利用する。
【0004】
クロマトグラフィーの固定相は、ベースマトリックスに、標的化合物と相互作用できる官能基であるリガンドをカップリングして構成される。その結果、リガンドは対象分子の分離、同定及び/又は精製を行う能力を担体に付与する。液体クロマトグラフィー法は普通、化合物を分離するのに用いる相互作用原理にちなんで名付けられる。例えば、イオン交換クロマトグラフィーは電荷間相互作用に基づき、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は疎水性相互作用を利用し、アフィニティークロマトグラフィーは特異的な生物学的アフィニティーに基づく。2以上の相互作用原理を同時に用いることもできる、具体的には、通常、イオン交換官能基をもう1つの官能基(例えば、疎水性)とともに有するリガンドを用いるマルチモードクロマトグラフィーなどにおいてである。
【0005】
周知のように、イオン交換は、荷電標的化合物と反対の電荷もつクロマトグラフィーマトリックス間の可逆的相互作用に基づく。溶出は通常、塩濃度を増加することにより行うが、pHを変化させることによっても同様に可能である。イオン交換体は、負荷電クロマトグラフィーマトリックスを用いて正荷電標的化合物を吸着するカチオン交換体と、正荷電クロマトグラフィーマトリックスを用いて負荷電標的化合物を吸着するアニオン交換体とに分類される。用語「強」イオン交換体は広いpH幅で荷電するイオン交換体に用いる、一方、「弱」イオン交換体は特定のpH値で荷電することが可能である。通常用いる強カチオン交換体の1つはS基と称されるスルホン酸リガンドを有する。場合によっては、このようなカチオン交換体は官能基及びその担体へのリンカーによって形成される基により名付けられる、例えばSPカチオン交換体はS基が担体にプロピル(P)によってリンクされている。
【0006】
ベースマトリックスの特性もクロマトグラフィーマトリックスの分離特性に影響を与える。親水性ベースマトリックス(例えば、多糖類)の固有タンパク質吸着は非常に少ないが、一方スチレン又はメタクレートポリマーなどの疎水性ベースマトリックスはほとんどの分離技術でタンパク質吸着を抑制するのに親水性表面変性を必要とする。表面変性は、複雑にする要因であり、製造でのバッチ間変動の原因となるおそれがある。ベースマトリックスについてさらに検討すべき事項は官能化の容易さである。リガンドをカップリングするのに用いる化学に応じて、ベースマトリックスを活性化、即ちより反応性の形態に変えることができる。このような活性化方法はこの分野で周知であり、具体的には多糖類などの親水性ベースマトリックスのヒドロキシル基のアリル化がある。共有結合性リガンドの結合は通常、ベースマトリックスの反応性官能基、例えばヒドロキシル、カルボキシル、チオール、アミノ基などを用いて実現する。リガンドは普通、単にリンカーとして知られているリンクアームを介してベースマトリックスに結合する。このリンカーは、使用したカップリング化学の結果又はリガンドの立体的近づき易さを向上するのに意図的に導入した構造のどちらかである。どちらの場合でも、リンカーの長さは普通、約10原子未満である。
【0007】
分離マトリックス、特にイオン交換マトリックスにエクステンダーを取り入れることも既知である。エクステンダーは、ベースマトリックスに結合したポリマー種であり、ポリマー鎖のイオン交換リガンドは、鎖全体に均等に又はランダムに広がっているか特定の位置に存在する。エクステンダーを用いるとタンパク質及び他の生体分子の動的結合能が、おそらく固体拡散現象の関与のために増加することもわかっている。
【0008】
WO2007027139(GE Healthcare)に、デキストランエクステンダーをアガロースベースマトリックスにカップリングし、その後、マトリックスをビニルスルホン酸ナトリウムと反応させてエクステンダー上にスルホン酸カチオン交換リガンドをカップリングすることにより製造した分離マトリックスが記載されている。この構成は、高剛性であり、高い動的タンパク質結合能を示す。しかし、ある用途、例えばモノクローナル抗体分離では、イオン交換工程後に一層高純度にするために、特定の生体分子をさらに特異的に結合することが必要とされている。
【0009】
WO2008145270(Merck)に、荷電モノマーと疎水性モノマーの混合物をポリメタクリレートベースマトリックスにグラフト重合することにより製造した分離マトリックスが記載されている。この構成は、荷電基と疎水性基の両方を有するエクステンダーを提供し、モノクローナル抗体に対する特異性を向上するが、高い動的結合能を示さない。高い動的結合能は高いプロセス処理量を実現するので望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2007027139
【特許文献2】WO2008145270
【特許文献3】カナダ特許第2,687,930号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、高純度及びハイスループットを実現し、再現性のある製造に適した新規なマトリックスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様によれば、本発明は、ハイスループットプロセスで高純度を実現することができる新規な分離マトリックスを提供する。これは、ベースマトリックスを含有し、上記ベースマトリックスに疎水性官能基を有する第1リガンドが共有結合し、かつ上記ベースマトリックスにエクステンダーが共有結合し、上記エクステンダーが第2イオン交換リガンドを有する、分離マトリックスで達成される。
【0013】
特定の態様によれば、本発明は、ハイスループットプロセスで高純度を実現することができる新規な分離マトリックスの製造方法である。これは、a)疎水性官能基を有するリガンドをベースマトリックスにカップリングする工程と、b)イオン交換リガンドを有するエクステンダーを上記ベースマトリックスにカップリングする工程を含む方法で達成される。これらの工程は任意の順序で行うことができる。
【0014】
別の態様によれば、本発明は、ハイスループットプロセスで高純度を実現することができる新規な分離マトリックスの別の製造方法である。これは、任意の順序で、a)疎水性官能基を有するリガンドをベースマトリックスにカップリングする工程と、b)エクステンダーを上記ベースマトリックスにカップリングし、c)イオン交換リガンドを上記エクステンダーにカップリングする工程を含む方法で達成される。
【0015】
他の態様によれば、本発明は、ハイスループットプロセスで高純度を実現することができる新規な分離マトリックスの他の製造方法である。これは、任意の順序で、a)疎水性官能基を有するリガンドをベースマトリックスにカップリングする工程と、b)荷電モノマーを含むモノマーを上記ベースマトリックスにグラフト重合する工程を含む方法で達成される。
【0016】
特定の態様によれば、本発明は、1種以上の標的生体分子を液体製剤から高純度、ハイスループットで分離する方法である。これは、ベースマトリックスに共有結合した疎水性官能基を有する第1リガンドと第2イオン交換リガンドを有するエクステンダーとを含有する分離マトリックスに液体製剤を接触させる工程を含む方法で達成される。
【0017】
上記態様はいずれも、特許請求の範囲によって規定された本発明によって達成することができる。本発明のさらなる態様、詳細及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】n−ブチルリガンドの含量が動的IgG結合能及び本発明の分離マトリックスでの処理後の抗体フィードの残留宿主細胞タンパク質レベルに与える影響を示すグラフである。
【図2】n−ブチルリガンドの含量が本発明の分離マトリックスでの処理後の抗体フィード中の残留ゲンタマイシンレベルに与える影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本明細書では、用語「標的化合物」は水溶液から単離したい化合物、分子又は他の要素を意味する。標的化合物は、所望の生成物でも、液状生成物の不要な不純物でもよい。標的化合物が生体分子である場合、それを標的生体分子と呼ぶことができる。
【0020】
ここで、用語「不純物」は液体又は固体材料中に存在する不要な化合物、分子又は他の要素を意味する。
【0021】
ここで、用語「ポリヒドロキシポリマー」は多数のヒドロキシル基を有するポリマーを意味する。
【0022】
ここで、用語「多糖類」は、天然多糖類、合成多糖類、多糖類誘導体、変性多糖類及びこれらの混合物を含む。
【0023】
ここで、用語「リガンド」は、クロマトグラフィーでの普通の意味で、標的化合物と相互作用することができる官能基を有する要素に対して用いる。リガンドの基の例には、正荷電又は正荷電性基(アニオン交換リガンド)、負荷電又は負荷電性基(カチオン交換リガンド)、疎水性基、抗体に対する抗原の親和性(アフィニティー)などの標的化合物に対して特異な生物学的な親和性をもつ基(アフィニティーリガンド)などがある。
【0024】
ここで、用語「エクステンダー」は、ベースマトリックスの1以上の位置に共有結合するポリマーを意味する。イオン交換リガンドは、エクステンダーに共有結合しているか、エクステンダーポリマーの一体部分を形成している。エクステンダーは、「柔軟アーム(flexible arm)」、「触手(tentacle)」及び時には「けば(fluff)」としても知られている。本発明の文脈では、エクステンダーは、ポリマー種であるが、リンカーはポリマー種でないという点でエクステンダーをリンカーと区別する。
【0025】
ここで、用語「ベースマトリックス」は、クロマトグラフィー、バッチ吸着、膜分離などの分離方法で用いるのに適した支持体又は担体としても知られている固体材料を意味する。
【0026】
ここで、用語「疎水官能基」は、リガンドが疎水性相互作用により溶質と相互作用することができる部分をもつことを意味する。疎水性官能基を有するリガンドの例には、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)に用いるリガンドがある。
【0027】
ここで、用語「生体分子」は、生物有機体が産生しうる物質の任意の分類の成分(合成、半合成成分など)を意味する。このような分類の例には、ペプチド、タンパク質、炭水化物、核酸、プラスミド、ウィルス及び細胞がある。
【0028】
「タンパク質」は、任意の種類のタンパク質、糖タンパク質、リンタンパク質、タンパク質複合体、タンパク質集合体又はタンパク質小片をさす。抗体は商業的に重要な分類のタンパク質である。商業的に有益な他のタンパク質は、ペプチド、インシュリン、エリスロポエチン、インターフェロン、酵素、プラズマタンパク質、細菌タンパク質、ウイルス様粒子などである。
【0029】
「抗体」は、ヒト又は他の動物細胞株由来の天然形態又は遺伝子改変形態の、免疫グロブリン分子、抗原結合免疫グロブリン小片又は免疫グロブリン融合タンパク質、モノクローナル又はポリクローナル、例えばヒト化、ヒト、キメラ、合成、組換、ハイブリッド、突然変異、移植及び試験管内で発生した抗体などをさす。周知の天然免疫グロブリン抗体にはIgA、IgG、IgE、IgG及びIgMがある。
【0030】
ここで用いる用語「脱着用液体」は、分離マトリックスから標的生体分子を脱着させるような組成(pH、イオン強度、他の成分の濃度)の液体(通常、緩衝液)を意味する。液体クロマトグラフィー分離では、脱着用緩衝液を一般に溶出用緩衝液又は溶離剤と呼ぶ。
【0031】
ここで用いる用語「動的結合能」(DBC=dynamic binding capacity、動的結合容量ともいう)は、破過試験で分離マトリックスが結合することができる試験種、例えばタンパク質の量を意味する。
【0032】
発明の詳細な説明
本発明の一態様は、ベースマトリックスを含有し、上記ベースマトリックスに疎水性官能基を有する第1リガンドが共有結合し、かつ上記ベースマトリックスにエクステンダーが共有結合し、上記エクステンダーが第2イオン交換リガンドを有する、分離マトリックスを提供する。本発明の1つの利点は、ベースマトリックス上のエクステンダー及び疎水性リガンドの組み合わせが、モノクローナル抗体などのタンパク質に対して驚くほど高い選択性を示し、高い動的タンパク質結合能も兼ね備えることである。疎水性官能基を有するリガンドの量及び/又は種類を変化させることにより、選択性を微調整することも可能である。
【0033】
一実施形態では、疎水性官能基を有するリガンドは、1以上のC2〜C18炭化水素鎖(直鎖状又は分枝状)、例えばC4〜C18炭化水素鎖又は1以上の炭化水素環を有する。炭化水素鎖及び炭化水素環の両方は、末端とする、即ち残りのリガンド構造又はリンカーに1点だけで結合することができる。炭化水素鎖及び炭化水素環は、非置換とする、即ち残りのリガンド構造/リンカーへの結合以外に非炭化水素置換基をもたないことも可能である。特に、炭化水素鎖及び炭化水素環は、ブチル、ヘキシル、オクチル又はフェニル基の形態とすることができる。一実施形態では、疎水性官能基を有するリガンドは疎水官能基のみを有する。炭化水素鎖及び炭化水素環は、飽和炭化水素鎖及び/又は芳香環で構成され、所望によりエーテル及び/又はヒドロキシル基で置換することができる。
【0034】
別の実施形態では、エクステンダーは、平均分子量1,000Da以上、例えば10,000Da超、さらに30,000Da超のポリマーを含む。これらのポリマーは、直鎖状又は分枝状、置換又は非置換、天然又は合成いずれでもよい。これらのポリマーがイオン交換リガンドのカップリングに対して反応性の基を有するか、これらのポリマーが本来、置換基又は主鎖の成分としてイオン交換リガンドを有するか、その両方である。エクステンダーポリマーの例には、ポリビニルエーテル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドなどの群がある。一実施形態では、エクステンダーはポリヒドロキシポリマーを含み、考えられるポリヒドロキシポリマーの1群には、多糖類、例えばデキストラン、プルラン、デンプン、セルロース誘導体などがある。ポリヒドロキシポリマーの別の群には、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシアルキルビニルエーテル、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリグリセリルメタクリレート及びジオール又はポリオールと反応させたグリシジルメタクリレートポリマーなどの合成ポリマーがある。
【0035】
一実施形態では、ベースマトリックスは架橋ポリヒドロキシポリマーを含む。これらのポリヒドロキシポリマーは合成でも天然由来でもよい。考えられる天然ポリヒドロキシポリマーの1群には、多糖類、例えばセルロース、デキストラン又は熱ゲル化多糖類、具体的にはアガロース又は寒天がある。合成ポリヒドロキシポリマーの例には、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシアルキルビニルエーテル、ポリヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリグリセリルメタクリレート及びジオール又はポリオールと反応させたグリシジルメタクリレートポリマーの群がある。多糖類及び他のポリヒドロキシポリマーから製造したベースマトリックスの利点の1つは、これらが本質的に親水性である、即ちこれらが非置換形態でタンパク質を全く又は微量しか吸着しないことである。これにより、良好な制御及びリガンド官能化マトリックスの再現性が可能となる。生体分子との相互作用が本質的に、的確にカップリングできるリガンドによってのみ影響を受けるからである。
【0036】
別の実施形態では、イオン交換リガンドは、カチオン交換リガンド、例えばスルホン酸、硫酸、カルボキシル又はリン酸基を含む。他の実施形態では、イオン交換リガンドはアニオン交換リガンド、例えば四級アンモニウム基又は三級アミンを含む。
【0037】
一実施形態では、分離マトリックス上のイオン交換リガンドの総量は、マトリックス1ml当たり25〜250マイクロモル、例えばマトリックス1ml当たり50〜150マイクロモル又はマトリックス1ml当たり75〜125マイクロモルである。
【0038】
別の実施形態では、エクステンダーは、疎水性官能基を有するリガンドを全く又は少量しか含有しない。この量(エクステンダー1g当たりで計算)は疎水性リガンド5マイクロモル/g未満であり、さらに実質的にゼロとすることもできる。製造方法がエクステンダー上に全く疎水性リガンドを結合しないように設定されていても、擬似の疎水性リガンドがエクステンダーに結合することがあることは当業者には明らかである。ただし、それらの量が少ない、例えばエクステンダー1g当たり5又は2マイクロモル以下であるならば、これらの少ないリガンドがタンパク質結合能又は他のクロマトグラフィー特性に悪影響を及ぼすことはない。エクステンダー上の疎水性リガンドの量が少量又は本質的にゼロであることが分離マトリックスのタンパク質結合能にとって有利である。
【0039】
一実施形態では、分離マトリックス上の疎水性官能基を有するリガンドの量は、分離マトリックス1ml当たり10〜100マイクロモル、例えば分離マトリックス1ml当たり20〜70マイクロモルである。これは、当業界で既知の方法、例えばNMR、振動分光法、熱分解GCなどにより測定することができる。
【0040】
別の実施形態では、疎水性官能基を有するリガンドはベースマトリックスにエーテル及びヒドロキシル基を有するリンカーを介して結合する。このようなリンカーは、加水分解に安定であり、エポキシ又はハロヒドリン化学によるカップリングによって製造でき好都合である。考えられるリンカーの例には、グリセリルエーテル、ジグリセリルエーテル及びグリセリルブチレングリセリルエーテルがある。
【0041】
一実施形態では、分離マトリックスの動的IgG結合能(QB10%)は、マトリックス1ml当たり100mg以上である。これは、マトリックスをカラム又は膜吸着装置に閉じ込めた以下の破過試験で測定することができる。緩衝IgG溶液をカラム/吸着剤に圧送し、流出液中のタンパク質濃度をUV吸光度に対してモニターする。流出液のタンパク質濃度がフィード中の濃度の10%に達したとき、カラム/吸着剤に供給したIgGの総量を計算し、マトリックスの体積で除して、10%破過容量として報告する。QB10%測定に適した実験の詳細を実施例2に示す。
【0042】
ある実施形態では、分離マトリックスは特定な形状をもつ。分離マトリックスは、例えば粒子、膜又はモノリス多孔質材料の形態とすることができる。分離マトリックスが粒子の形態の場合、これらの粒子は球形、ほぼ球形又は不規則な形状でも、また多孔質でも非多孔質でもよい。これらの粒子は、種々の形態を有し、磁力(超常磁力)などの外力場と相互作用することができる材料又は高密度材料を含有することができる。一実施形態では、分離マトリックスは、平均孔径>50nm及び/又は気孔率>80%の多孔質であり、これはマトリックス中のタンパク質などの物質輸送に有利である。
【0043】
本発明の一態様は、分離マトリックスの製造方法を提供する。一実施形態では、本方法は、a)疎水性官能基を有する第1リガンドをベースマトリックスにカップリングする工程と、b)第2イオン交換リガンドを有するエクステンダーを上記ベースマトリックスにカップリングする工程を含む。本方法の利点は、イオン交換リガンドがエクステンダー上のみに位置することである。これらの工程は任意の順序で行うことができるが、一実施形態では、工程a)の後に工程b)を行って、エクステンダー上に疎水性リガンドが付加するのを回避する。工程a)では、リガンド試薬をベースマトリックス上のヒドロキシル、カルボキシル、アミン、アルデヒドなどの反応基と直接反応させるか、ベースマトリックス上の反応性基を活性化試薬で活性化し、その後リガンド試薬と反応させるかのどちらかが可能である。リガンド試薬の例には、疎水性官能基を有するエポキシド、ハロヒドリン、アミン、カルボキシル及びカルボキシハロゲンがある。当業界で既知の活性化試薬の例には、ハロゲン、トシル、トレシル又は他の脱着基と結合させたエピクロロヒドリン、ビスエポキシド、クロロトリアジン、ハロゲン化シアン、アリル化又はビニル化試薬(例えば、アリルハライド又はアリルグリシジルエーテル)がある。工程b)では、反応性エクステンダー(エポキシド、ハロヒドリン、アミン、アルデヒドなどの官能基を有する)をベースマトリックス上の反応性基にカップリングするか、ベースマトリックスをまず活性化し、その後エクステンダーポリマーと反応させるかのどちらかが可能である。
【0044】
別の実施形態では、本製造方法は、a’)疎水性官能基を有する第1リガンドをベースマトリックスにカップリングする工程と、b’)エクステンダーを上記ベースマトリックスにカップリングし、c’)第2イオン交換リガンドを上記エクステンダーにカップリングする工程を含む。これらの工程は任意の順序で行うことができるが、一実施形態では、工程a’)の後に工程b’)又はc’)を行う。特定の実施形態では、工程a’)の後に工程b’)を行い、工程b’)の後に工程c’)を行って、エクステンダー上に疎水性リガンドが付加するのを回避する。工程a’)及びb’)は上記のa)及びb)のように行うことができるが、工程c’)では、荷電試薬をエクステンダーポリマー上の反応性基と反応させる。荷電試薬の例には、亜硫酸イオン、ビニルスルホン酸、アミン(例えば、トリメチルアミン)、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、ジエチルアミノエチルクロリド、クロロ酢酸、ブロモ酢酸などがあり、エクステンダー上の反応性基の例には、エポキシド、ハロヒドリン、二重結合、ヒドロキシル、アミンなどがある。
【0045】
一実施形態では、本製造方法は、a'')疎水性官能基を有するリガンドをベースマトリックスにカップリングする工程と、b'')荷電モノマーを含むモノマーを上記ベースマトリックスにグラフト重合する工程を含む。これらの工程は任意の順序で行うことができるが、一実施形態では、工程a'')の後に工程b'')を行って、エクステンダー上に疎水性リガンドが付加するのを回避する。工程a'')は上記のa)又はa’)のように行うことができる。グラフト重合は周知の技法であり、いくつか異なる技法が知られている。「grafting from」法では、例えばセリウム(IV)塩、Fe2+/H22、銅(I)塩、UV照射ベンゾフェノン、電離放射線などを用いて、ベースマトリックス上に開始部位をつくる。その後、モノマーが開始部位と反応し、生長し、これによりベースマトリックスに共有結合したポリマー鎖を形成する。「grafting through」法では、ビニル、アリル、アクリル、メタクリル基などの共重合性基をベースマトリックスにカップリングする。その後、マトリックスをモノマーと接触させ、重合を開始し、これによりモノマーをカップリングした重合性基と共重合する。
【0046】
一実施形態では、疎水性官能基を有するリガンドをベースマトリックスにカップリングするのに、ベースマトリックスをアルキル又はアルキルアリールグリシジルエーテルと反応させる。アルキルグリシジルエーテルの例には、エチルグリシジルエーテル、n−プロピルグリシジルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、イソブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、ペンチルグリシジルエーテル(異性体すべて)、ヘキシルグリシジルエーテル(異性体すべて)、シクロヘキシルグリシジルエーテル、ヘプチルグリシジルエーテル(異性体すべて)、オクチルグリシジルエーテル(異性体すべて)、デシルグリシジルエーテルなどがある。アルキルアリールグリシジルエーテルの例には、フェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテルなどがある。
【0047】
本発明の一態様は、1種以上の標的生体分子を液体製剤から分離する方法を提供し、本方法は、ベースマトリックスに共有結合した疎水性官能基を有する第1リガンドと第2イオン交換リガンドを有するエクステンダーとを含有する分離マトリックスに上記液体製剤を接触させる工程を含む。一実施形態では、ベースマトリックスはアガロースを含み、別の実施形態では、エクステンダーはデキストランを含む。他の実施形態では、イオン交換リガンドはカチオン交換リガンドを含む。
【0048】
一実施形態では、標的生体分子は抗体などのタンパク質である。抗体は工業的に重要なタンパク質であり、本発明のマトリックスは抗体に対する驚くほど高い選択性及び結合能を示す。
【0049】
一実施形態では、標的生体分子が分離マトリックスに結合し、一方、結合していない、或いはそれほど強く結合していない不純物をマトリックスから洗浄するか、脱着した後、マトリックスを脱着用液体と接触させて標的生体分子を脱着する。カラムで行う場合、この方式は結合・溶出クロマトグラフィーとも呼ばれ、これにより、異なる緩衝液(結合用緩衝液、洗浄用緩衝液及び脱着用緩衝液)を選ぶこと、所望により脱着に緩衝液勾配を用いることによって分離工程の選択性を最適化することが十分に可能である。別の実施形態では、標的生体分子及び不純物の両方が分離マトリックスに結合し、その後、マトリックスを、標的生体分子を選択的に脱着する脱着用液体と接触させる。続いて、マトリックス上の残留不純物を再生液で脱着することができ、その後、分離マトリックスを再利用することができる。0.1M〜2MのNaOHなどのアルカリ溶液を再生液として用いることができるが、別の液体を用いることも可能である。
【0050】
一実施形態では、脱着用液体は、結合用緩衝液及び洗浄用緩衝液と異なる導電率及び/又はpHをもち、例えば結合用緩衝液及び洗浄用緩衝液より高い導電率をもつ。
【0051】
別の実施形態では、液体製剤は宿主細胞タンパク質を含有する。生体分子が細胞内で発現されるときは常に、細胞もそれ自体のタンパク質を発現し、これを普通宿主細胞タンパク質(HCP=host cell protein)と呼ぶ。宿主細胞タンパク質は、細胞の種類に依存する多種多様のタンパク質であり、残留HCPは不純物類であり、下流処理で除去することが困難である。CHO細胞をタンパク質(例えば、モノクローナル抗体)の発現に用いる場合、宿主細胞タンパク質をCHO細胞タンパク質(CHOP)と呼ぶことがある。HCP/CHOPの効率的な除去は、望ましい特徴である。一実施形態では、宿主細胞タンパク質濃度は、分離工程で1/5以下、さらに1/10以下に低減される。分離工程前後のHCP/CHOPレベルの測定方法は、周知であり、例えば免疫検定法がある。
【0052】
他の実施形態では、分離マトリックスをカラムに充填する。多種多様なカラム構成が市販されており、粒子の形態の分離マトリックスでカラムを充填する方法は当業界で周知である。
【0053】
さらに他の実施形態では、不純物が分離マトリックスに結合し、一方、標的生体分子がカラムのフロースルー中に回収される。この方法は、しばしばフロースルークロマトグラフィーと呼ばれ、特に不純物レベルが比較的低い(例えば、10,000ppm未満)の場合、処理量が大きい。
【0054】
一実施形態では、分離マトリックス粒子の懸濁液を液体製剤と接触させ、その後、分離マトリックス粒子を液体製剤から除去する。本方法は、しばしばバッチ方式で用いるが、連続方式で用いることもできる。一実施形態では、分離マトリックス粒子の除去を外力場によって促進(達成)する。外力場は通常、重力場(密度に応じてマトリックス粒子が沈澱又は浮遊する)、遠心力場、磁場、電場又は流体力学的流動場(例えば、ろ過によるマトリックス粒子の除去)とすることができる。重力場及び遠心力場の場合、分離マトリックス粒子と周囲の液体間の固有密度差を用いることができるが、高密度又は低密度充填剤を分離マトリックス粒子に含有させて密度差を増加させることも可能である。磁場の場合、磁性(例えば、超常磁性)充填剤を分離マトリックス粒子に含有させるのが好都合である。
【0055】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の実施例及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0056】
本明細書では、具体例を挙げて、最良の形態を含む本発明を開示するとともに、当業者が装置又はシステムの製造及び使用並びに方法の実行を含めて本発明を実施できるようにしている。本発明の要旨は、特許請求の範囲に規定された通りで、当業者が想起できる他の例を含むことができる。このような他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有するか、特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない均等な構造要素を含むならば、特許請求の範囲に含まれる。
【0057】
図面の詳細な説明
図1はベースマトリックスに付加したn−ブチル量の関数としてモノクローナル抗体の動的結合能及びカチオン交換プールのHCPレベルを示す。
【0058】
図2はベースマトリックスに付加したn−ブチルリガンド量の関数としてゲンタマイシン(細胞培養の添加剤)の排除を示す。
【実施例】
【0059】
フィードサンプル
フィードは、CHO細胞で発現させた、等電点pH9.2のIgGモノクローナル抗体のタンパク質Aカラム溶出液であった。抗体濃度は約5g/Lであり、宿主細胞タンパク質の濃度は16,000ppmであり、ゲンタマイシン(細胞培養の添加剤)の濃度は約175ng/mlであった。フィード導電率は、約4mS/cmに調整した。
【0060】
実施例1:ベースマトリックス上にn−ブチルリガンドを有するカチオン交換体プロトタイプ
Bergの米国特許第6,602,990号に記載されている通りに製造したアガロースゲルビーズ、即ちフロー/圧力特性を向上したアガロースを以下の合成例1a)に記載する条件を用いてn−ブチルグリシジルエーテルと反応させて、制御された疎水性をマトリックスに導入した。その後、以下の合成例1b)に記載する条件を用いてアガロースビーズのエポキシ活性化及び所定レベルのデキストランカップリングによりエクステンダーを導入した。最後に、合成例1c)にしたがってゲルをビニルスルホン酸ナトリウムと反応させてカチオン交換リガンドを所望レベルに導入した。
【0061】
合成例1a)疎水性リガンドの導入
125gのゲル(沈降物)を37.5mLの水に懸濁させ、20.6gの硫酸ナトリウムを添加し、その後、室温で30分間攪拌した。攪拌したスラリーに37.5gの50重量%水酸化ナトリウム溶液及び0.52gの水素化ホウ素ナトリウムを添加した。混合物を1時間室温で攪拌し、その後、31.25mLのブチルグリシジルエーテルを添加し、続いて50℃でさらに20時間攪拌した。反応が完了した後、100mLの水を添加し、反応懸濁液を酢酸で中性pHに中和した。
【0062】
最後に、ゲルを水、エタノール、その後に再び水を用いてガラスフィルター上で洗浄した。
【0063】
これらの特定の条件で導入したリガンドのレベルを分析したところ、リガンドレベルは沈降ゲル1mL当たり50μmolであった。
【0064】
合成例1b)エポキシ活性化及びデキストランカップリング
疎水性リガンドを導入したゲル(沈降物)120gに32.8mLの水及び36mLの50重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、続いて、スラリーを室温で20分間攪拌した。その後、ドシメーターポンプ(dosimeter pump)を用いて、総量40mLのエピクロロヒドリンを0.33mL/分で添加し、その後、室温でさらに2時間攪拌した。最後に、水を用いてゲルをガラスフィルター上で洗浄した。これらの反応条件により、沈降ゲル1mL当たり11μmolのエポキシ活性化レベルが得られた。
【0065】
275mLの水に溶解した240gのデキストラン(平均分子量40kD)を110gの上記のように製造したゲル(沈降物)に添加し、続いて、30℃で1時間攪拌した。その後、10.45mLの50重量%水酸化ナトリウム溶液及び0.05gの水素化ホウ素ナトリウムを添加し、続いて、30℃で終夜(17時間)攪拌した。
【0066】
これらの反応条件により、沈降ゲル1mL当たり約29gのデキストランとなった。
【0067】
合成例1c)スルホン酸リガンドの導入
60gの上記のように製造したゲル(沈降物)をガラスフィルター上で120mLの30%ビニルスルホン酸ナトリウム塩(VSA)で4回洗浄し、最後の洗浄によりゲルとVSAの合計重量が120gになった。75mLの50重量%水酸化ナトリウム溶液を添加し、続いて、52℃で3.75時間攪拌した。その後、ゲルをガラスフィルター上で水で洗浄した。これらの条件により、沈降ゲル1mL当たり99μmolのイオンリガンド密度をもつゲルが得られた。
【0068】
反応条件を調整することによって、n−ブチルリガンドの導入量を下記表1に示すように厳密に制御することができる。
【0069】
【表1】

実施例2:動的IgG結合能
20cmベット高のカラム及び20分間のサンプル滞留時間を用いて、IgGモノクローナル抗体に対する10%破過(QB10%)での動的結合能を測定した。カラムを25mMの酢酸ナトリウム(pH5.0)で平衡化した後にサンプルを添加した。添加が完了したら、カラムを平衡緩衝液で洗浄し、移動相で溶出した。条件はpH5及び4mS/cmであった。
【0070】
実施例3:カチオン交換プロトタイプでの不純物除去
モノクローナル抗体の添加量を1mlのゲルに対して130mgに低減した、即ちプロセス条件下での現実的な観点の不純物排除を示すために動的破過容量よりかなり少なくした以外は、動的結合能の測定で記載したのと同様な方法で不純物の除去を試験した。結合したモノクローナル抗体は、酢酸ナトリウムを500mMまで増加させて導電率勾配よって溶出させた。溶出相を280nmでのUV吸光度でモニターし、光学濃度(OD)0.5のピークフロントとOD0.5のピークテール間で溶出プールを回収し、残留HCP及びゲンタマイシンの分析をした。
【0071】
【表2】

図1にベースマトリックスにカップリングしたn−ブチルリガンド量の関数として動的IgG結合能及びカチオン交換プールのHCPレベルを示す。
【0072】
図2にベースマトリックスにカップリングしたn−ブチルリガンド量の関数としてゲンタマイシン(細胞培養の添加剤)の排除を示す。
【0073】
表2及び図1で認められるように、疎水性(n−ブチルリガンド)を高レベルに導入すると高い結合能を失わずに溶出材料中のHCP汚染のレベルを低減する。しかし、図2のデータは、疎水性レベルが高すぎると他の不純物の除去は悪影響を受けるおそれがあることを示す。
【0074】
上述した特許及び非特許文献は、それぞれの特定事項を個別に本発明の先行技術として援用するとして、すべてその全文を本発明の先行技術として援用する。本発明を好ましい実施形態について説明したが、このような実施形態以外でも本発明を実施することができ、記載した実施形態は、本発明の具体例にすぎず、本発明を限定するためのものではないことは当業者には明らかである。本発明は特許請求の範囲のみに限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマトリックスを含有し、前記ベースマトリックスに疎水性官能基を有する第1リガンドが共有結合し、かつ前記ベースマトリックスにエクステンダーが共有結合し、前記エクステンダーが第2イオン交換リガンドを有する、分離マトリックス。
【請求項2】
疎水性官能基を有するリガンドが1以上のC2〜C18炭化水素鎖又は1以上の炭化水素環を有する、請求項1記載の分離マトリックス。
【請求項3】
エクステンダーが平均分子量1000Da以上、例えば10,000Da超のポリマーを含む、請求項1記載の分離マトリックス。
【請求項4】
エクステンダーがデキストランなどのポリヒドロキシポリマーを含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の分離マトリックス。
【請求項5】
ベースマトリックスが多糖類などの架橋ポリヒドロキシポリマーを含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の分離マトリックス。
【請求項6】
ベースマトリックスがアガロース又は寒天を含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の分離マトリックス。
【請求項7】
イオン交換リガンドがスルホン酸基などのカチオン交換リガンドを含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の分離マトリックス。
【請求項8】
疎水性官能基を有するリガンドが1以上の末端C2・C18炭化水素鎖及び/又は1以上の末端炭化水素環を有する、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の分離マトリックス。
【請求項9】
疎水性官能基を有するリガンドがブチル、ヘキシル、オクチル又はフェニル基を有する、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の分離マトリックス。
【請求項10】
エクステンダーが疎水性リガンドを5マイクロモル/g未満含む、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の分離マトリックス。
【請求項11】
疎水性官能基を有するリガンドの量が分離マトリックス1ml当たり10〜100マイクロモル、例えば分離マトリックス1ml当たり20〜70マイクロモルである、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の分離マトリックス。
【請求項12】
疎水性官能基を有するリガンドがエーテル及びヒドロキシル基を有するリンカーを介してベースマトリックスに結合する、請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の分離マトリックス。
【請求項13】
分離マトリックスの動的IgG結合能(QB10%)が100mg/ml以上である、請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載の分離マトリックス。
【請求項14】
分離マトリックスが球状粒子などの粒子の形態である、請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載の分離マトリックス。
【請求項15】
分離マトリックスが膜の形態である、請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載の分離マトリックス。
【請求項16】
a)疎水性官能基を有する第1リガンドをベースマトリックスにカップリングする工程と、b)第2イオン交換リガンドを有するエクステンダーを前記ベースマトリックスにカップリングする工程とを任意の順序で含む、分離マトリックスの製造方法。
【請求項17】
a’)疎水性官能基を有する第1リガンドをベースマトリックスにカップリングする工程と、b’)エクステンダーを前記ベースマトリックスにカップリングし、c’)第2イオン交換リガンドを前記エクステンダーにカップリングする工程とを任意の順序で含む、分離マトリックスの製造方法。
【請求項18】
疎水性官能基を有するリガンドをベースマトリックスにカップリングした後にエクステンダーをカップリングする、請求項16又は請求項17記載の方法。
【請求項19】
a'')疎水性官能基を有するリガンドをベースマトリックスにカップリングする工程と、b'')荷電モノマーを含むモノマーを前記ベースマトリックスにグラフト重合する工程とを任意の順序で含む、分離マトリックスの製造方法。
【請求項20】
ベースマトリックスをアルキル又はアルキルアリールグリシジルエーテルと反応させることにより疎水性官能基を有するリガンドをベースマトリックスにカップリングする、請求項16乃至請求項19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
液体製剤から1種以上の標的生体分子を分離する方法であって、
ベースマトリックスに共有結合した疎水性官能基を有する第1リガンドと第2イオン交換リガンドを有するエクステンダーとを含有する分離マトリックスに液体製剤を接触させる工程を含む、分離方法。
【請求項22】
ベースマトリックスがアガロースを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
エクステンダーがデキストランを含む、請求項21又は請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記イオン交換リガンドがカチオン交換リガンドを含む、請求項21乃至請求項23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
標的生体分子が抗体などのタンパク質である、請求項21乃至請求項24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記タンパク質がモノクローナルIgG抗体である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
標的生体分子が分離マトリックスに結合し、一方、結合していないかそれほど強く結合していない不純物をマトリックスから洗浄するか、脱着した後、マトリックスを脱着用液体と接触させて標的生体分子を脱着する、請求項21乃至請求項26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
脱着用液体が結合用緩衝液及び洗浄用緩衝液とは異なる導電率及び/又はpHをもつ、請求項27記載の方法。
【請求項29】
脱着用液体が結合用緩衝液及び洗浄用緩衝液より高い導電率をもつ、請求項28記載の方法。
【請求項30】
液体製剤が宿主細胞タンパク質を含有する、請求項21乃至請求項29のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
宿主細胞タンパク質濃度を1/5以下に低減する、請求項30記載の方法。
【請求項32】
分離マトリックスをカラムに充填する、請求項21乃至請求項31のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
不純物が分離マトリックスに結合し、一方、標的生体分子がカラムのフロースルー中に回収される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
分離マトリックス粒子の懸濁液を液体製剤と接触させ、その後、分離マトリックス粒子を液体製剤から除去する、請求項21乃至請求項32のいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
分離マトリックス粒子の除去を外力場によって促進する、請求項34記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−507237(P2013−507237A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533117(P2012−533117)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/SE2010/051088
【国際公開番号】WO2011/046494
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(597064713)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ (109)
【Fターム(参考)】