説明

分離膜ユニット及びこれを備えた分離膜エレメント

【課題】簡単な構成でクロスフロー濾過方式による濾過を良好に行うことができる分離膜ユニット及びこれを備えた分離膜エレメントを提供する。
【解決手段】分離膜1の積層方向A1及び原水の供給方向B1に対して直交方向C1に複数枚の分離膜1を挟んで両側(図4Cにおける上側及び下側)に、透過側流路7を設ける。これにより、各分離膜1の前記直交方向C1の両側において各分離膜1に近接して透過側流路7を形成することができる。したがって、各分離膜1において生成された透過水を簡単な構成で透過側流路7に導くことができるので、クロスフロー濾過方式による濾過を良好に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過対象物を濾過することにより透過物を生成するための分離膜ユニット及びこれを備えた分離膜エレメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水や海水などの原水(濾過対象物)を逆浸透法などを用いて濾過する方法としては、全濾過方式及びクロスフロー濾過方式が一般的に知られている。全濾過方式は、供給される原水の全量を濾過する方式であり、例えば分離膜に対して直交方向に原水が供給されるようになっている。一方、クロスフロー濾過方式は、分離膜に対して平行方向に原水を供給し、その原水の一部を分離膜で濾過しつつ、必要に応じて原水を循環させることにより、分離膜の目詰まりを抑制しながら濾過を行うことができる方式である。
【0003】
クロスフロー濾過方式で原水を濾過する場合に使用可能な分離膜ユニットの一例として、下記特許文献1に開示されているように、一側方及び他側方に交互に折り返し部が形成されるようにプリーツ状に複数回折り返された分離膜を備えるプリーツ型の分離膜ユニットが知られている。この特許文献1に開示された構成では、プリーツ状に折り返された分離膜の中央部を貫通するように集水管4が設けられており、原水を分離膜で濾過することにより生成された透過水が、当該集水管4を介して分離膜ユニットの外部に導かれるようになっている。
【0004】
また、クロスフロー濾過方式で原水を濾過する場合に使用可能な分離膜ユニットの他の例として、下記特許文献2に開示されているように、一定の積層方向に複数枚の分離膜が積層された構成を有する積層型の分離膜ユニットが知られている。この特許文献2に開示された構成では、積層された複数枚の分離膜を積層方向に貫通するように2つのパイプ12が設けられており、当該パイプ12を介して透過水が分離膜の積層方向の両側に導かれるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭54−17378号公報
【特許文献2】特開2008−183561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のように、分離膜の中央部を集水管4が貫通する構成では、集水管4が配置される部分に分離膜を設けることができないため、分離膜の設置スペースを最大限確保することができず、その分だけ濾過効率が低下するといった問題がある。
【0007】
また、上記特許文献2のように、複数枚の分離膜を積層方向に貫通するパイプを設けた構成では、構造が複雑になり、製造コストが高くなるといった問題がある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成でクロスフロー濾過方式による濾過を良好に行うことができる分離膜ユニット及びこれを備えた分離膜エレメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る分離膜ユニットは、濾過対象物を濾過することにより透過物を生成するための分離膜ユニットであって、複数枚の分離膜が積層されることにより、隣接する分離膜間に、供給される濾過対象物の流路としての供給側流路が形成され、前記分離膜の端部側から前記供給側流路内に、前記分離膜の積層方向に対して直交方向に濾過対象物が供給されるようになっており、生成された透過物の流路としての透過側流路が、それぞれ濾過対象物の供給方向に対して平行に延びるように、前記積層方向に対して直交方向かつ前記供給方向に対して直交方向に前記複数枚の分離膜を挟んで両側に形成されていることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、透過側流路が、分離膜の積層方向に対して直交方向かつ濾過対象物の供給方向に対して直交方向に複数枚の分離膜を挟んで両側に配置されることにより、各分離膜の前記直交方向の両側において各分離膜に近接して透過側流路を形成することができる。これにより、各分離膜において生成された透過物を簡単な構成で透過側流路に導くことができるので、クロスフロー濾過方式による濾過を良好に行うことができる。
【0011】
また、例えば円筒状の断面からなる外装材の内部に当該分離膜ユニットを収容する場合などには、各分離膜の前記直交方向の両側にそれぞれ形成された外装材の内周面との間の空きスペースに、透過側流路を設けることができる。したがって、分離膜の設置スペースを最大限確保することができ、より効率よく濾過を行うことができる。
【0012】
また、分離膜を挟んで両側に透過側流路を対称配置した場合には、偏流が起こりにくく、クロスフロー濾過方式による濾過をさらに良好に行うことができる。
【0013】
本発明に係る分離膜ユニットは、前記分離膜は、一定の積層方向に3枚以上積層されており、前記分離膜における前記積層方向に対して直交方向かつ前記供給方向に対して直交方向の両端部側に、それぞれ前記透過側流路が形成されていることを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、各分離膜における前記積層方向に対して直交方向かつ前記供給方向に対して直交方向の両端部側に、それぞれ前記透過側流路が形成されることにより、各分離膜の前記直交方向の両端部に近接して透過側流路を形成することができる。したがって、それらの両端部から各分離膜において生成された透過物を透過側流路に容易に導くことができる。
【0015】
本発明に係る分離膜ユニットは、前記分離膜は、2枚積層された状態でプリーツ状に複数回折り返されることにより、当該2枚の分離膜の一側方及び他側方に交互に折り返し部が形成されており、前記分離膜を挟んで前記一方側及び他方側に、それぞれ前記透過側流路が形成されていることを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、分離膜を挟んで一方側及び他方側に、それぞれ透過側流路が形成されることにより、分離膜の各折り返し部に近接して透過側流路を形成することができる。したがって、それらの折り返し部から各分離膜において生成された透過物を透過側流路に容易に導くことができる。
【0017】
本発明に係る分離膜ユニットは、前記複数枚の分離膜は、それぞれシート状の多孔質基材における一方の表面に分離活性層が形成され、隣接する前記分離膜の前記分離活性層が互いに対向するように積層されていることを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、それぞれシート状の多孔質基材における一方の表面に分離活性層が形成された隣接する分離膜が、分離活性層が互いに対向するように重ね合せられているので、分離活性層が外側に露出することがなく、分離活性層の損傷を防止することができる。
【0019】
本発明に係る分離膜ユニットは、隣接する前記分離膜間には、前記供給側流路を形成するための供給側流路材が設けられていることを特徴とする。
【0020】
このような構成によれば、隣接する分離膜間に設けられた供給側流路材によって供給側流路を確実に形成することができるので、より良好に濾過対象物を濾過することができる。
【0021】
本発明に係る分離膜エレメントは、前記分離膜ユニットと、前記分離膜ユニットの外側を覆う外装材とを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る分離膜ユニットを構成する分離膜の積層態様の一例を示した分解断面図である。
【図2A】分離膜ユニットの構成例を示した概略斜視図である。
【図2B】分離膜ユニットの構成例を示した概略斜視図である。
【図3A】図2Bのように分離膜を折り返す際の態様を示した概略断面図である。
【図3B】図2Bのように分離膜を折り返す際の態様を示した概略断面図である。
【図3C】図2Bのように分離膜を折り返す際の態様を示した概略断面図である。
【図4A】分離膜エレメントの構成例を示した概略斜視図である。
【図4B】分離膜エレメントの構成例を示した概略斜視図である。
【図4C】分離膜エレメントの構成例を示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る分離膜ユニットを構成する分離膜1の積層態様の一例を示した分解断面図である。この例では、隣接する分離膜1の間にスペーサとしての流路材2が挟み込まれている。分離膜1は、限外濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜、透析膜などいずれでもよいが、原水の圧力と透過水の流量などの関係から、逆浸透膜又は限外濾過膜である場合に有効である。
【0024】
各分離膜1は、互いに同一の構成からなり、それぞれシート状の多孔質基材3と、当該多孔質基材3の一方の表面に形成された分離活性層(スキン層)4とを有する。分離膜1は、多孔質基材3及び分離活性層4だけでなく、他の層をさらに含んでいてもよい。分離膜1の厚さは、一般に、20〜2000μm程度である。隣接する分離膜1は、分離活性層4が互いに対向するように、流路材2を挟んで両側に重ね合せられる。これにより、各分離膜1の分離活性層4が対向する流路材2の表面に当接した状態で、2枚の分離膜1と流路材2とが積層されることが好ましい。
【0025】
多孔質基材3は、例えばポリスルホン、ポリエーテルスルホン、PVDF、ポリエチレン、ポリイミド、エポキシなどを用いて形成することができる。当該多孔質基材3は、上記材料に加え、例えば不織布、織布、編み物、ネットなどの補強材を用いて補強された構成であってもよい。分離活性層4は、緻密で非多孔質の薄膜からなり、その形成材料は特に制限されず、例えば、酢酸セルロール、エチルセルロース、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド及びシリコンなどが挙げられる。多孔質基材3上に形成した分離活性層4の厚みは特に制限されないが、通常0.05〜2μm程度であり、好ましくは、0.1〜1μmである。流路材2は、例えば編み物、ネットなどを用いて形成することができる。
【0026】
図1に示すように、それぞれシート状の多孔質基材3における一方の表面に分離活性層4が形成された隣接する分離膜1が、分離活性層4が互いに対向するように重ね合せられているので、分離活性層4が外側に露出することがなく、分離活性層4の損傷を防止することができる。
【0027】
図2A及び図2Bは、分離膜ユニット10の構成例を示した概略斜視図である。この分離膜ユニット10は、原水(濾過対象物)を濾過することにより透過水(透過物)を生成するためのものであり、図2Aの例では、分離膜1が一定の積層方向に3枚以上積層されており、図2Bの例では、分離膜1が2枚積層された状態でプリーツ状に複数回折り返されている。
【0028】
図2Aの例では、図1に示した態様で互いに重ね合わせられた2枚の分離膜1及び流路材2の組が、積層方向A1に複数組積層されている。この分離膜ユニット10には、積層方向A1に対して直交方向、すなわち分離膜1に対して平行な方向B1に沿って、排水や海水などの原水が供給されるクロスフロー濾過方式が採用されており、積層された複数枚の分離膜1及び流路材2における供給方向B1の上流側の一端から原水が供給される。供給された原水は、流路材2により隣接する分離膜1間に形成される原水の流路(供給側流路)を通って、隣接する分離膜1間に進入し、分離膜1に対して平行方向(供給方向B1)に流れる過程で当該分離膜1によって濾過される。このとき流路材2は、供給側流路を形成するための供給側流路材として機能し、この供給側流路材によって供給側流路を確実に形成することができる。
【0029】
分離膜1における積層方向A1及び供給方向B1に対して直交方向C1の両端部側(図2Aにおける上側及び下側)には、原水の流通方向である供給方向B1に対して平行に延びる集水管6が設けられている。これらの集水管6は、その内部に透過水の流路としての透過側流路7が形成されている。
【0030】
供給側流路内を供給方向B1に流れる原水が分離膜1で濾過されることによって生成された透過水は、各組の分離膜1の外部、より具体的には隣接する組の分離膜1間に形成された透過側流路(図示せず)へと流れ出て、当該透過側流路を通って図2Aにおける上側及び下側へと導かれ、図示しない集水構造を介して集水管6内に集水される。このようにして集水された透過水は、集水管6内を通って分離膜ユニット10の外部へと導かれる。隣接する組の分離膜1間には、透過側流路を形成するための透過側流路材が設けられていてもよい。
【0031】
この例では、積層された複数枚の分離膜1及び流路材2と、その直交方向C1の両端部側に設けられた集水管6との間に、それぞれ封止部8が形成されている。この封止部8は、隣接する分離膜1の間を通る原水と、当該隣接する分離膜1の外部に生成される透過水とを分離するためのものであり、透過水のみが封止部8を通って集水管6へと導かれる。上記集水機構は、当該封止部8に形成されていてもよいし、当該封止部8とは別に形成されていてもよい。
【0032】
以上のような図2Aの例では、各分離膜1における積層方向A1及び供給方向B1に対して直交方向C1の両端部側(図2Aにおける上側及び下側)に、それぞれ透過側流路7が形成されることにより、各分離膜1の直交方向C1の両端部に近接して透過側流路7を形成することができる。したがって、それらの両端部から各分離膜1において生成された透過水を透過側流路7に容易に導くことができる。
【0033】
図2Bの例では、図1に示した態様で互いに重ね合わせられた2枚の分離膜1及び流路材2が、プリーツ状(蛇腹状)に複数回折り返されることにより、2枚の分離膜1の一側方及び他側方(図2Bにおける上方及び下方)に交互に折り返し部5が形成されている。そのため、2枚の分離膜1及び流路材2は、いずれも可撓性を有していることが好ましい。プリーツ状に複数回折り返された2枚の分離膜1及び流路材2は、折り返された部分が互いに隣接して一定の方向A2に積層された状態となる。各折り返し部5は、上記のような分離膜1及び流路材2の積層方向A2に対して直交する方向B2に延びており、隣接する折り返し部5同士が上記積層方向A2に並んでいる。
【0034】
この分離膜ユニット10には、積層方向A2に対して直交方向、すなわち分離膜1に対して平行な方向B2に沿って、排水や海水などの原水が供給されるクロスフロー濾過方式が採用されており、プリーツ状に複数回折り返された2枚の分離膜1及び流路材2における供給方向B2の上流側の一端から原水が供給される。供給された原水は、流路材2により2枚の分離膜1間に形成される原水の流路(供給側流路)を通って、2枚の分離膜1間に進入し、分離膜1に対して平行方向(供給方向B2)に流れる過程で当該分離膜1によって濾過される。このとき流路材2は、供給側流路を形成するための供給側流路材として機能し、この供給側流路材によって供給側流路を確実に形成することができるので、折り返し部5などにおいても良好に原水を濾過することができる。
【0035】
プリーツ状に複数回折り返された2枚の分離膜1及び流路材2における積層方向A2及び供給方向B2に対して直交方向C2の両側(図2Bにおける上側及び下側)には、原水の流通方向である供給方向B2に対して平行に延びる集水管6が設けられている。これらの集水管6は、プリーツ状に複数回折り返された2枚の分離膜1及び流路材2に対して、折り返し部5が形成されている一側方及び他側方に設けられており、その内部に透過水の流路としての透過側流路7が形成されている。
【0036】
供給側流路内を供給方向B2に流れる原水が分離膜1で濾過されることによって生成された透過水は、2枚の分離膜1の外部、より具体的には折り返されることにより隣接する分離膜1間に形成された透過側流路(図示せず)へと流れ出て、当該透過側流路を通って図2Bにおける上側及び下側へと導かれ、図示しない集水構造を介して集水管6内に集水される。このようにして集水された透過水は、集水管6内を通って分離膜ユニット10の外部へと導かれる。折り返されることにより隣接する分離膜1間には、透過側流路を形成するための透過側流路材が設けられていてもよい。
【0037】
この例では、プリーツ状に複数回折り返された2枚の分離膜1及び流路材2と、その一側方及び他側方に設けられた集水管6との間に、それぞれ封止部8が形成されている。この封止部8は、2枚の分離膜1の間を通る原水と、当該2枚の分離膜1の外部に生成される透過水とを分離するためのものであり、透過水のみが封止部8を通って集水管6へと導かれる。上記集水機構は、当該封止部8に形成されていてもよいし、当該封止部8とは別に形成されていてもよい。
【0038】
以上のような図2Bの例では、分離膜1を挟んで一方側及び他方側(図2Bにおける上側及び下側)に、それぞれ透過側流路7が形成されることにより、分離膜1の各折り返し部5に近接して透過側流路7を形成することができる。したがって、それらの折り返し部5から各分離膜1において生成された透過水を透過側流路7に容易に導くことができる。
【0039】
本実施形態では、透過側流路7が、分離膜1の積層方向A1,A2及び原水の供給方向B1,B2に対して直交方向C1,C2に複数枚の分離膜1を挟んで両側(図2A及び図2Bにおける上側及び下側)に配置されることにより、各分離膜1の前記直交方向C1,C2の両側において各分離膜1に近接して透過側流路7を形成することができる。これにより、各分離膜1において生成された透過水を簡単な構成で透過側流路7に導くことができるので、クロスフロー濾過方式による濾過を良好に行うことができる。
【0040】
また、図2A及び図2Bの例のように、分離膜1を挟んで両側に透過側流路7を対称配置した場合には、偏流が起こりにくく、クロスフロー濾過方式による濾過をさらに良好に行うことができる。
【0041】
図3A〜図3Cは、図2Bのように分離膜1を折り返す際の態様を示した概略断面図である。図3Aは、互いに重ね合わせられた2枚の分離膜1及び流路材2がプリーツ状に複数回折り返される途中の状態を示した例であり、折り返し部5が鋭角となるようにV字状に屈曲されている。図3Bは、図3Aと同様、互いに重ね合わせられた2枚の分離膜1及び流路材2がプリーツ状に複数回折り返される途中の状態を示した例であるが、折り返し部5がU字状に湾曲した形状となっている。
【0042】
図2Bの例では、2枚の分離膜1間に流路材2が挟み込まれた構成について説明したが、2枚の分離膜1間に原水の流路を確保することができれば、流路材2を省略することも可能である。例えば、図3Cに示す例のように、2枚の分離膜1における各分離活性層4を、平坦面ではなく凹凸を有する面とすれば、それらの分離活性層4が当接するように2枚の分離膜1を重ね合せた場合に、各分離活性層4の凸部同士が当接し、凹部間に原水の流路を形成することができる。上記凸部の形状としては、原水の流路を確保することができるような形状であれば、菱形、平行四辺形、楕円形、長円形、円形、正方形、三角形などの各種形状を採用することができる。この図3Cの例では、分離膜1の折り返し部5がV字状に屈曲されているが、このような形状に限らず、例えば折り返し部5がU字状に湾曲した形状などであってもよい。
【0043】
図3A〜図3Cは、図2Bのように分離膜1を折り返す際の態様の単なる一例を示したものであり、2枚の分離膜1が複数回折り返された形状であれば、他の各種形状を採用することができる。2枚の分離膜1を折り返す方法としては、例えば2枚の分離膜1を重ね合せた状態で折り返す方法と、各分離膜1を折り返した後に重ね合せる方法とがある。これらのいずれの方法においても、例えばギロチン刃などの部材を分離膜1に押し当てて、その押し当てた部分で分離膜1を折り返すことにより、上記部材に対応する形状の折り返し部5を形成することができる。その他にも、ピンチロール又はピンチバーを用いて分離膜1を折り返す方法なども考えられる。
【0044】
また、図2Aのように複数枚の分離膜1を積層する場合にも、隣接する分離膜1間に原水の流路を確保することができれば、図2Aに示したような隣接する分離膜1間に流路材2が挟み込まれた構成に限らず、流路材2を省略することも可能である。この場合、図3Cに示す例と同様に、隣接する分離膜1における各分離活性層4を、平坦面ではなく凹凸を有する面とすれば、それらの分離活性層4が当接するように隣接する分離膜1を重ね合せた場合に、各分離活性層4の凸部同士が当接し、凹部間に原水の流路を形成することができる。
【0045】
図4A〜図4Cは、分離膜エレメント100の構成例を示した概略斜視図である。図4A〜図4Cでは、図2Bの分離膜1を用いた例を示すが、図2Aの分離膜1に例示されるような他の分離膜1にも同様の構成を採用することができる。
【0046】
分離膜ユニット10は、その外側を必要に応じて外装材9などで覆った状態で使用することができる。この例では、円筒状の外装材9内に分離膜ユニット10が設けられることにより、分離膜エレメント100が構成されている。必要に応じて、軸方向端部に原水や透過水の流路を設定するための端部材を設けてもよい。
【0047】
図4Aは、図2Bの分離膜ユニット10が外装材9内に設けられた分離膜エレメント100の一例を示している。プリーツ状に複数回折り返された2枚の分離膜1及び流路材2は、断面が矩形状となるため、その対角線の長さよりも若干大きい内径を有する外装材9を用いることが好ましい。
【0048】
この例では、プリーツ状に複数回折り返された2枚の分離膜1及び流路材2の一側方及び他側方(図4Aにおける上方及び下方)に、それぞれ封止部8が設けられることにより、これらの封止部8間に原水を流通させるための空間101が形成されるとともに、各封止部8と対向する外装材9の内周面との間に透過水を流通させるための空間102が形成されている。上記空間101及び空間102を水密に分離するためには、各封止部8の縁と外装材9の内周面とが密着していることが好ましく、そのために各封止部8の縁にシール部材が設けられていてもよい。
【0049】
図4B及び図4Cの例では、上記空間102が、透過側流路7を除いて封止部8により埋められており、そのために、封止部8の外周面は外装材9の内周面に対応する形状となっている。このような構成によれば、図4B及び図4Cに示すように、封止部8の内部に形成する孔の形状に応じて、任意の断面積からなる透過側流路7を形成することができる。
【0050】
図4A〜図4Cに例示されるように、円筒状の断面からなる外装材9の内部に分離膜ユニット10を収容する場合などには、2枚の分離膜1の一側方及び他側方(図4A〜図4Cにおける上方及び下方)にそれぞれ形成された外装材9の内周面との間の空きスペース(空間102)に、透過側流路7を設けることができる。したがって、2枚の分離膜1の設置スペースを最大限確保することができ、より効率よく濾過を行うことができる。
【0051】
ただし、外装材9は、その断面が円形状のものに限らず、例えば矩形状などの他の形状のものであってもよいし、外装材9を省略することも可能である。外装材9を省略した場合であっても、本実施形態では、分離活性層4が互いに対向するように隣接する分離膜1が重ね合せられており、分離活性層4が露出することがないので、分離活性層4が損傷するおそれはない。
【0052】
以上の実施形態では、濾過対象物が原水である場合について説明したが、水ではなく油などの他の原液であってもよいし、気体などであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 分離膜
2 流路材
3 多孔質基材
4 分離活性層
5 折り返し部
6 集水管
7 透過側流路
8 封止部
9 外装材
10 分離膜ユニット
100 分離膜エレメント
101 空間
102 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過対象物を濾過することにより透過物を生成するための分離膜ユニットであって、
複数枚の分離膜が積層されることにより、隣接する分離膜間に、供給される濾過対象物の流路としての供給側流路が形成され、前記分離膜の端部側から前記供給側流路内に、前記分離膜の積層方向に対して直交方向に濾過対象物が供給されるようになっており、
生成された透過物の流路としての透過側流路が、それぞれ濾過対象物の供給方向に対して平行に延びるように、前記積層方向に対して直交方向かつ前記供給方向に対して直交方向に前記複数枚の分離膜を挟んで両側に形成されていることを特徴とする分離膜ユニット。
【請求項2】
前記分離膜は、一定の積層方向に3枚以上積層されており、
前記分離膜における前記積層方向に対して直交方向かつ前記供給方向に対して直交方向の両端部側に、それぞれ前記透過側流路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の分離膜ユニット。
【請求項3】
前記分離膜は、2枚積層された状態でプリーツ状に複数回折り返されることにより、当該2枚の分離膜の一側方及び他側方に交互に折り返し部が形成されており、
前記分離膜を挟んで前記一方側及び他方側に、それぞれ前記透過側流路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の分離膜ユニット。
【請求項4】
前記複数枚の分離膜は、それぞれシート状の多孔質基材における一方の表面に分離活性層が形成され、隣接する前記分離膜の前記分離活性層が互いに対向するように積層されていることを特徴とする請求項1に記載の分離膜ユニット。
【請求項5】
隣接する前記分離膜間には、前記供給側流路を形成するための供給側流路材が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の分離膜ユニット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の分離膜ユニットと、
前記分離膜ユニットの外側を覆う外装材とを備えたことを特徴とする分離膜エレメント。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate


【公開番号】特開2011−101866(P2011−101866A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258338(P2009−258338)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】