分類されたカーボンナノチューブから調整される透明導電体およびその調整方法
強化された光学的特性および電気的特性を有するカーボンナノチューブに基づく透明導電体の調製に関する種々の方法が開示される。いくつかの実施形態では、本方法は、透明導電体において使用するために、電子タイプおよび/または光吸収度に従って事前分類されたカーボンナノチューブを用いることを含む。他の実施形態は、束密度に従って事前分類されたカーボンナノチューブ束の使用を含む。より具体的には、一局面では、本教示は、着色透明導電膜を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年8月29日に出願された米国仮特許出願第60/966,592号の優先権および利益を主張し、その開示全体が本明細書に参考として援用される。
【0002】
(連邦政府支援の研究または開発に関する陳述)
米国政府は、ともにNorthwestern大学への認可である、全米科学財団からの認可番号第DMR−0520513号、第EEC−0647560号、および第DMR−0706067号、ならびに米国陸軍遠隔医療先端技術研究センター(U.S.Army Telemedicine and Advanced Technology Research Center)からの認可番号第DAMD17−05−1−0381号に従って、本発明に対して一定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
【背景技術】
【0004】
透明導電体は、発光ダイオード、太陽光発電、フラットパネルディスプレイ、およびエレクトロクロミック素子を含む多くの電子機器における重要な構成要素である。したがって、広い波長域における高導電性および透過性だけでなく、優れた機械的可撓性、環境安定性、および望ましい表面形態等の一連の他の特性も提供する低価格の透明導電体の需要が高まっている。現在、電子機器に最も広く使用される透明導電体は、インジウムスズ酸化物(ITO)である。しかしながら、ITOは、可撓性基板上においてその性能を劣化するその相対脆弱性や、インジウムの制限された有用性により妨げられ、また、他の要素の採掘の副産物として得られる希少かつ高価な要素である。
【0005】
近年、カーボンナノチューブが、透明導電のためのITOの前途有望な代替として出現している。これらのナノ材料は、その全体が地球上に最も豊富にある要素の1つである炭素から成り、極めて高い導電性や、高引張強度および弾力性を含む並外れた機械的特性を呈する。単層カーボンナノチューブ(SWNT)は、グラフェンシートを継ぎ目の無い円柱に巻き付けることによって形成されるナノスケール管と考えられ得る。本構造により、多数の異なるキラリティ、つまり、直径および巻付角度の組み合わせのSWNTが入手可能である。ナノチューブのキラリティは、その電子特性および光学的特性の両方を規定するため、ナノチューブを機器応用に組み込む際の重要なパラメータとなる。例えば、SWNTのキラリティの約3分の2は半導体であるが、残りは金属である。さらに、金属SWNTの光吸収度の1次ピークは、SWNTの直径が〜0.7nmから1.4nmまで増加するにつれて約450nmから700nmまで大幅に変動し得る。SWNTの原子構造と挙動との間のこの著しい依存は、SWNTが多くの方式で用いられることを可能にするが、それは、均一のキラリティのSWNTを合成する方法が存在しないというその主な欠点のうちの1つとしても見なされる。代わりに、合成したままのSWNTは、様々な直径の半導体および金属ナノチューブの混合物を有する。
【0006】
カーボンナノチューブの透明導電性膜は、エアブラッシング(例えば、特許文献1;および非特許文献1参照)、液滴乾燥(例えば、特許文献2参照)、および真空ろ過(例えば、特許文献3;非特許文献2;および非特許文献3参照)等の多数の異なる方法を使用して、溶媒の懸濁液から作製されており、これらの各々の開示全体は、参考として本明細書に援用される。しかしながら、従来技術は、比率が約2:1の半導体カーボンナノチューブおよび金属カーボンナノチューブを含む非分類混合物を用いており、SWNTの3分の2が半導体であることにより導電性が劣るため、機器の性能が制限される。膜導電性を増加させるために、SWNTは、硝酸還流等の強力な酸化状態において化学的にドープ可能である(例えば、非特許文献4参照)。しかしながら、このような処理は、ナノチューブに不具合をもたらし、その長さを低減させる可能性がある。さらに、このような処理によって、電磁波スペクトルの赤外線部分の膜透過率が低下する。調製済みの膜も、硝酸、硫酸、および塩化チオニル等の薬剤の中での浸漬によって(例えば、非特許文献5;および非特許文献6参照)、またはハロゲンもしくはアルカリ金属等の要素に対する暴露(特許文献3参照)によってドープ可能である。しかしながら、このような処理は、分子のインターカレーションおよび吸着に依存し、概して、水中で逆洗浄され得る。また、従来技術は、透明導電の改善のためにナノチューブ間の有益な接触を達成するためにいくつかの技法も用いている。例えば、洗浄および浴内超音波処理を試行して、調製済みのナノチューブ膜におけるSWNTの再束状化を誘起している(特許文献1)。Hechtらは、透明導電体の性能改善を目的として、超音波処理時間の関数としてのSWNT束の寸法について研究した(非特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0221016号明細書
【特許文献2】米国特許第5,853,877号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0197546号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M.Kaempgenら,Appl.Surf.Sci.252,425(2005)
【非特許文献2】Z.Wuら,Science 305,1273(2004)
【非特許文献3】Y.Zhouら,Appl.Phys.Lett.88,123109(2006)
【非特許文献4】A.G.Rinzlerら,Appl.Phys.A,67,29−37(1998)
【非特許文献5】R.Graupnerら,Phys.Chem.Chem.Phys.5,5472(2003)
【非特許文献6】D.Zhangら,Nano Lett.6,1880(2006)
【非特許文献7】D.Hechtら,Appl.Phys.Lett.89,133112(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の説明を考慮すると、本教示の目的は、電気的特性および光学的特性が改善されたカーボンナノチューブベースの透明導電体に関する1つ以上の方法および/または組成物を提供することによって、従来技術の種々の欠陥および欠点を克服することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(概要)
一部分において、本教示は、透明導電体(例えば、光透過性導電性膜)における使用のために、大部分が金属であるカーボンナノチューブの分類集団を用いることを対象とすることが可能である。従来技術とは対照的に、このような材料を含む透明導電体の実施形態は、化学ドーピングに関連する悪影響を受けずに、電気導電に寄与するカーボンナノチューブの多くの集団を有する。したがって、本教示の透明導電膜は、通常は、同一の透過率における非分類ナノチューブから生成された膜に比べて、改善された導電性を呈する。
【0011】
一部分において、本教示は、透明導電体における使用のために、光吸収度に従って分類されたカーボンナノチューブを用いることを対象とすることが可能である。このような実施形態では、所望の波長における透過率は、その波長におけるファンホーベ遷移を含まずに、分類ナノチューブの組み合わせを用いることによって増加する。さらに、透過率は、分類工程中の吸収性不純物の同時除去によって強化される。
【0012】
一部分において、本教示は、透明導電体における使用のために、所望の波長において光学遷移を有するカーボナノチューブを用いることを対象とすることが可能である。このような実施形態では、導電体は、半透明であることが可能であり、可視色を有することが可能である。例えば、色は、特定の光学的フィルタリング適用のために調節可能である。
【0013】
一部分において、本教示は、透明導電体における使用のために、浮遊密度に従って選択されたカーボンナノチューブを用いることを対象とすることが可能である。特定の浮遊密度の束は、ナノチューブの透明導電網に組み込むための最適形状(例えば、長くて薄い)を有することが可能である。このような束は、ナノチューブ間接触の改善をもたらし、導電性膜における電荷輸送のためのナノチューブ間接合の数を減少させることが可能である。束浮遊密度は、1つ以上の界面活性剤、密度勾配媒体、および/または溶媒の使用によって操作可能である。
【0014】
一部分において、本教示は、1つ以上の他の界面活性剤および/または異なる溶媒を含有する第2の溶液への希釈によって、溶液中に分散するカーボンナノチューブを再束状化することを対象とすることが可能である。経時的に、ナノチューブ側壁を含有する第2の溶液からの界面活性剤および/または溶媒の割合は増加し、希釈成分の慎重な選択によって、透明導電のために最適化されたナノチューブ束を形成することが可能である。束状化におけるさらなる制御は、膜に組み込む前にSWNTが希釈剤中にある時間を制限することによって達成可能である。SWNTの再束状化に関するこのような技法は、導電性膜において分類カーボンナノチューブを用いる場合に特に重要である。分類後、SWNTは、通常は、界面活性剤によって個々にカプセル化され、それ自体では、膜への加工時に最適なナノチューブ間接触を生成し得ない。SWNTの沈殿および再懸濁を必要としない再束状化技法によって、時間が節約され、繰り返しの処理によるナノチューブ分解の可能性が低減される。
【0015】
より具体的には、一局面では、本教示は、着色透明導電膜を提供する。着色透明導電膜は、可視スペクトルにおいて約75%を上回る平均透過率(例えば、可視スペクトルにおいて約80%を上回る平均透過率を有する、可視スペクトルにおいて約90%を上回る平均透過率を有する、または可視スペクトル内の〜550nm等の特定の波長において約80%を上回る透過率を有する)と、約1.0x103Ω/平方未満(例えば、約600Ω/平方未満、約500Ω/平方未満、約400Ω/平方未満、約300Ω/平方未満、約200Ω/平方未満、または約100Ω/平方未満)のシート抵抗と、可視色とを含むことが可能であり、膜は、単層カーボンナノチューブ(例えば、分離または再束化)を含む。膜の色は、膜における単層カーボンナノチューブの光学的特性に直接起因することが可能であり、つまり、染料もしくは発色団または他の外部薬剤を使用せずに、膜の色を形成することが可能である。加えて、膜における単層カーボンナノチューブは、大部分が金属であることが可能である。これらの金属単層カーボンナノチューブは、膜の可視色を提供するために、可視スペクトル内における波長を特異的に吸収することが可能である。例えば、膜の色は、膜における単層カーボンナノチューブの直径によって制御可能である。したがって、膜における単層カーボンナノチューブは、概して、極めて狭い直径変動、例えば、約±0.1nm以下(例えば、約±0.05nm以下)の直径変動を有する。いくつかの実施形態では、単層カーボンナノチューブは、0.9nm(±0.1nm)、1.0nm(±0.1nm)、1.05nm(±0.1nm)、1.1nm(±0.1nm)、1.4nm(±0.1nm)、および1.6nm(±0.1nm)から選択される平均直径を有することが可能である。特定の実施形態では、膜の可視色は、赤色(約508nmにおいて吸収ピークを有する)、マゼンダ(約561nmにおいて吸収ピークを有する)、紫色(約562nmおよび約606nmにおいて吸収ピークを有する)、シアン(約612nmにおいて吸収ピークを有する)、黄色(約397nmおよび約721nmにおいて吸収ピークを有する)、緑色(約400nmおよび約780nmにおいて吸収ピークを有する)から選択可能である。膜における単層カーボンナノチューブは、レーザーブレーション、アーク放電、または高圧一酸化炭素変成を含む種々の方法によって合成可能である。種々の実施形態では、膜は、約100nm未満の厚さを有することが可能である。
【0016】
一局面では、本教示は、事前選択された可視色を有する透明導電膜を調製する方法を提供する。本方法は、半導体単層カーボンナノチューブおよび金属単層カーボンナノチューブの混合物から分離画分を単離するステップを含むことが可能であり、分離画分は、分離された単層カーボンナノチューブを含み、分離画分における約50%を上回る(例えば、約80%を上回る)分離された単層カーボンナノチューブは金属である。分離された単層カーボンナノチューブは、約±1.0nm以下の直径変動を有することが可能である。次いで、このような分離画分は、事前選択された可視色を有する透明導電膜に加工可能である。本方法は、所定の体積を含む1つ以上の分離画分を加工するステップをさらに含むことが可能であり、1つ以上の分離画分全体は、事前選択された量の分離された単層カーボンナノチューブを含むことが可能である。1つ以上の分離された画分を濃縮(および/または純化)して、濃縮された分離画分を提供することが可能である(例えば、フィルタ膜によりろ過することによって)。その後、濃縮された分離画分は、真空ろ過、エアブラッシング、液滴乾燥、回転成形、印刷(例えば、インクジェット印刷)、およびスタンピングを含む当該分野において既知である1つ以上の技法を使用して、透明導電膜に加工することが可能である。
【0017】
特定の実施形態では、混合物における単層カーボンナノチューブは、約1.0nmから約1.2nmの範囲の直径寸法を有することが可能である。このような実施形態では、透明導電膜は、可視スペクトルにおいて約80%を上回る平均透過率と、約1.0x103Ω/平方未満のシート抵抗とを有し、近赤外スペクトルにおいて約90%を上回る平均透過率と、約1.0x103Ω/平方未満のシート抵抗とを有することが可能である。他の実施形態では、混合物における単層カーボンナノチューブは、約1.2nmから約1.7nmの範囲の直径寸法を有することが可能である。このような実施形態では、透明導電膜は、550nmの波長において約80%を上回る平均透過率と、約600Ω/平方未満のシート抵抗とを有することが可能である。
【0018】
本教示の別の局面は、複数の束の単層カーボンナノチューブを含む透明導電膜を調製する方法を提供する。本方法は、密度勾配を含む流体媒体と、1つ以上の界面活性成分および複数の束の単層カーボンナノチューブを含む組成物とを遠心分離して、密度勾配に沿って2つ以上の分離画分を提供するステップを伴うことが可能であり、分離画分の各々は、固有の浮遊密度を有し、複数の束の単層カーボンナノチューブを含む。本方法は、分離画分のうちの少なくとも1つを流体媒体から単離して、単離された分離画分を提供するステップと、単離された分離画分を透明導電膜に加工するステップとをさらに伴うことが可能である。例えば、単離された分離画分は、真空ろ過によって透明導電膜に加工可能である。特定の実施形態では、組成物における単層カーボンナノチューブの束は、約1.1nmから約1.6nmの範囲の直径寸法を有する単層カーボンナノチューブを含むことが可能である。特定の実施形態では、透明導電膜は、可視スペクトルにおいて約70%を上回る平均透過率と、約180Ω/平方未満のシート抵抗とを有することが可能である。
【0019】
別の局面では、本教示は、単層カーボンナノチューブを含む透明導電膜を調製する方法を提供する。1つ以上のイオン性界面活性成分を含む第1の組成物と、非イオン性界面活性成分を含む第2の組成物における分離された単層カーボンナノチューブとを希釈して、希釈された組成物を提供するステップを伴うことが可能であり、約50%を上回る分離された単層カーボンナノチューブは金属である。本方法は、希釈された組成物における分離された単層カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブの束を形成することを可能にするステップと、希釈された組成物を透明導電膜に加工するステップとをさらに伴うことが可能である。例えば、希釈された組成物は、真空ろ過によって透明導電膜に加工されることが可能である。特定の実施形態では、分離された単層カーボンナノチューブは、約1.0nmから約1.2nmの範囲の直径寸法を有することが可能である。特定の実施形態では、透明導電膜は、可視スペクトルにおいて約80%を上回る平均透過率と、約1.0x103Ω/平方未満のシート抵抗とを有することが可能である。
【0020】
さらなる局面では、本教示は、事前選択された可視色を有する導電性膜を調製する方法を提供する。本方法は、単離された分離画分を提供するために、広範なナノチューブ直径を含む単層カーボンナノチューブの混合物から、分離画分を単離するステップを伴うことが可能であり、単離された分離画分は、分離された単層カーボンナノチューブ含む。本方法は、単離された分離画分を透明導電膜に加工するステップをさらに伴うことが可能であり、透明導電膜は、可視スペクトルにおける事前選択された波長域において吸収するとともに、可視スペクトルにおいて約50%を上回る平均透過率を有する。特定の実施形態では、事前選択された可視色は、分離画分を単離することによって提供可能であり、約75%を上回る分離された単層カーボンナノチューブは、分離画分における分離された全単層カーボンナノチューブの平均直径の約0.1nm未満(例えば、約0.05nm)内の直径を有する(すなわち、直径分類は、オングストロームレベルまで狭化することが可能である)。
【0021】
また、本方法により調製される、ならびに/あるいは本明細書に説明する電気的特性および/または光学的特性を有する全体的および部分的に光透過性かつ導電性の膜も、本教示の範囲内に包含される。
【0022】
本教示の前述のおよび他の特徴および利点は、以下の図面、説明、および請求項によって、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
特定の図面が必ずしも縮尺通りではなく、本教示の原理を例示することに重点が置かれていることを理解されたい。図面は、決して本教示の範囲を限定することを意図しない。
【図1】図1Aは、本教示のある実施形態による2つの分類金属HiPco SWNT溶液(溶液AおよびB)の光吸収度スペクトルを示す。曲線は、明確にするためにオフセットされている。図1Bは、〜260nmにおいて正規化される透過率スペクトルであって、非分類および分類金属HiPco SWNTの膜から得られた透過率スペクトルを示す。
【図2】図2A−Dは、非分類(塗りつぶした3角形)および分類金属HiPco SWNT(溶液A−空白の4角形、溶液B−空白の円形)から生成された透明導電体の性能を示し、具体的には、シート抵抗の関数として特定の波長域におけるその透過率を示す:(A)400nmから700nmの可視波長、(B)2000nmから2600nmの近赤外線、(C)470nm、および(D)650nm。
【図3】図3A−Bは、非分類および分類金属アーク放電P2 SWNTから生成された透明導電体の性能を示す。図3Aは、分類金属(曲線132および134)ならびに320nmの波長で正規化される非分類P2膜(曲線136)の透過率を示す。図3Bは、シート抵抗の関数としての、透明導電体の約550nmにおけるパーセント透過率のグラフ図である(非分類−塗りつぶした3角形、分類−空白の4角形および空白の円形)。
【図4】図4A−Cは、HiPco(A)、レーザーアブレーション(B)、およびアーク放電(C)により生成された合成したままのSWNTを使用して、本教示に従う分類手順の後の遠心分離管の略図を示す。
【図5】図5A−Cは、図4A〜図4Cに示すそれぞれの選択分類浮遊画分の光吸収度スペクトルを提供する。曲線は、明確にするためにオフセットされている。
【図6】図6は、HiPco SWNT透明導電膜の吸光度(実線)とその生成に使用するSWNT分散(点線)の吸光度とを比較する。曲線602および604は、直径が1.0nmの金属SWNTに対応する。曲線606および608は、非分類SWNTに対応する。曲線は、明確にするためにオフセットされている。
【図7】図7Aは、約270nmにおいてπ−プラズモンに正規化される分類金属SWNT膜の透過率を示す(明確な曲線オフセット)。膜は、以下の優勢直径のSWNTを使用して生成された:0.9nm(702)、1.0nm(704)、1.1nm(706)、1.3nm(708)、1.4nm(710)、および1.6nm(712)。図7Bは、光学的同調性を示す同一のSWNT膜のスペクトルの可視部分の拡大グラフ(同一単位)を示す。
【図8】図8は、550nm(A)および1600nm(B)波長における、HiPco SWNTから生成された一連の透明導電膜の透過率とシート抵抗とをグラフで示す。使用した材料は、主要直径が0.9nm(ダイヤモンド形)、1.0nm(4角形)の金属SWNT、および非分類材料(3角形)の金属SWNTであった。
【図9】図9は、単分散SWNT導電層または塗膜のシート抵抗/透過率/波長のマップを示す。概略マップは、いくつかの一連の膜:(A)0.9nmHiPco SWNT、(B)1.0nmSWNT、(C)1.1nmレーザーアブレーション成長SWNT、および(D)1.4nmアーク放電生成SWNTに数式1を適合することによって生成された。
【図10】図10A−Bは、透明導電のための最適形状のSWNT束の分離を示す。図10Aは、分類束状のLA SWNTと比較して非分類 LA SWNTの正規化光吸収度スペクトルを示す。図10Bは、シート抵抗の関数としての、透明導電の400nmから700nmの波長域における本透過率のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本説明において、組成が、特定の構成要素を有する、含む、または備えるように説明される、あるいは工程が、特定の工程ステップを有する、含む、または備えるように記載される場合、本教示の組成が、列挙される構成要素から実質上成るか、またはその構成要素から成ること、ならびに本教示の工程が、列挙される処理ステップから実質上成るか、またはその構成要素から成ることも意図される。
【0025】
本出願では、要素または構成要素が、列挙される要素または構成要素のリスト内に含まれる、および/またはリストから選択されるように記述される場合、要素または構成要素が、列挙される要素または構成要素のうちのいずれか1つであることが可能であり、また、列挙される要素または構成要素のうちの2つ以上から成る群から選択可能であることを理解されたい。さらに、本明細書に説明する組成、装置、または方法の要素および/または特徴が、本明細書において明示的または暗示的であるかにかかわらず、本教示の精神および範囲から逸脱することなく、多種多様の方法で組み合わせ可能であることを理解されたい。
【0026】
用語の「含む」または「有する」の使用は、概して、別段に明示的に記載されない限り、非制約的かつ非限定的であると理解されたい。
【0027】
別段に明示的に記載されない限り、本明細書における単数形の使用は、複数形も含む(逆も同様)。加えて、用語「約」の使用が定量値の前である場合、別段に明示的に記載されない限り、本教示は、特定の定量値自体も含む。
【0028】
ステップの順番または一定の作用を実行するための順番は、本教示が動作可能である限り、重要ではないことを理解されたい。さらに、2つ以上のステップまたは作用を同時に行なってもよい。
【0029】
本教示は、透明導電体、具体的には、連続的に光透過性かつ導電性の膜であって、非分類SWNTおよびSWNT束を使用して生成された従来技術の膜に比べて強化された導電性および透過率を示す分類単層カーボンナノチューブ(SWNT)および/またはSWNT束を含む膜を提供することが可能である。本透明導電体の特性の改善は、SWNTおよび/またはSWNT束の純度の改善に部分的に起因し得る。より具体的には、本教示は、電子タイプ、直径、および/または束密度に従って事前分類されたSWNTおよびSWNT束を用い、その結果、これらのSWNTおよびSWNT束は、非分類SWNTおよびSWNT束に比べて均一な光学的特徴および電気的特徴ならびに/あるいは最適形状を有することになる。
【0030】
その光学的特徴および電気的特徴を改善するために、多数の異なるキラリティを含む合成したままのSWNTを、個々のSWNTの1つ以上の物理的特性および/または化学的特性(直径寸法および/または電子タイプを含む)に従って分類することが可能である。より具体的には、密度勾配超遠心(DGU)に基づく分類方法を、同時係属中の米国特許出願第11/368,581号および第11/897,125号に説明するように使用することが可能であり、これらの出願の各々の開示全体は、本明細書に参考として援用される。
【0031】
合成したままのSWNTを、分類前に光学的に純化および/または濃縮することが可能である。事前分類処理技法の例として、酸化、酸処理、エッチング、および脱ドーピングが挙げられる。分類工程では、合成したままのSWNTは、概して、1つ以上の界面活性成分を使用して水溶液中で分散される。SWNTをカプセル化する界面活性成分の種類および量を制御することによって、例えば、複数の界面活性成分を使用する場合、界面活性成分の相対比率を制御することによって、その直径および電子タイプに従って、ナノチューブの浮遊密度の微妙な差異を操作することが可能になる。次いで、流体媒体により提供される密度勾配内にナノチューブ溶液を遠心分離することによって、これらの密度差を利用することが可能である。超遠心分離中、異なるキラリティのSWNTは、そのそれぞれの等密度点、すなわち、SWNTの浮遊密度の流体媒体の浮遊密度との一致に起因して沈降が停止する勾配内の点に個々に移動する。その後、ナノチューブを、密度勾配から層毎に除去することが可能である。この一般方法によって、ナノチューブを化学的または構造的に不可逆的に修正することなく、構造および/または1つ以上の他の特性の関数としてSWNTを分類することが可能になり、直径およびキラリティ、直径および電子タイプ、電子タイプおよびキラリティの同時選択、または直径、電子タイプ、もしくはキラリティの個々の選択を達成することが可能になる。
【0032】
流体媒体中のSWNTの浮遊密度は、カーボンナノチューブ自体の質量および体積、その表面機能化、および静電的に結合した水和層を含む複数の要因に依存することが可能である。例えば、カーボンナノチューブの表面機能化は、非共有であることが可能であり、1つ以上の界面活性成分(例えば、界面活性剤)によるカーボンナノチューブのカプセル化によって達成可能である。したがって、上述の一般方法は、可変構造および/または特性の単層カーボンナノチューブを、少なくとも1つの界面活性成分(例えば、界面活性剤)に接触させて、界面活性成分およびSWNTにより形成される複合体が、密度勾配を含む流体媒体に配置される際に、SWNT間の差分浮遊密度を提供するステップを含むことが可能である。差分浮遊密度は、ナノチューブ直径、バンドギャップ、電子タイプ、および/またはキラリティの関数であることが可能であるため、直径、バンドギャップ、電子タイプ、および/またはキラリティによる単層カーボンナノチューブの分離が可能になる。
【0033】
概して、密度勾配遠心分離は、遠心分離管または区画内における位置(すなわち、密度勾配)の関数としてその密度の既定の変動を有する流体媒体を使用する。本教示で有用である流体媒体は、その中のカーボンナノチューブ凝集だけによって、少なくとも部分的な分離を除外する程度に限定されない。したがって、本明細書に説明する分離技法における使用のために媒体に密度勾配をもたらすように、広範囲の濃度において、その中で可溶性または分散性の任意の物質とともに、水溶液および非水溶液を使用することが可能である。このような物質は、イオン性または非イオン性であることが可能であり、その非限定的な例として、それぞれ無機塩類およびアルコールが挙げられる。このような媒体には、広範な水性イオジキサノール濃度と、対応する濃度密度勾配とが含まれることが可能である。当業者が理解するように、水性イオジキサノールは一般的に広く使用される非イオン密度勾配媒体である。しかしながら、良好な効果を有する他の媒体を使用することが可能であり、これも当業者の各々によって理解される。
【0034】
より一般的には、最適な流体または溶媒において安定性、可溶性、または分散性の任意の材料または化合物を、密度勾配媒体として使用することが可能である。広範な密度は、このような材料または化合物を異なる濃度で流体中に溶解することによって形成可能であり、密度勾配は、例えば、遠心分離管または区画において形成可能である。より実用的には、媒体の選択に関し、カーボンナノチューブは、機能化されるか否かにかかわらず、流体/溶媒または得られた密度勾配内において可溶性、安定性、または分散性であるべきである。同様に、実用的観点から、最適な溶媒または流体中のこのような材料または化合物の溶解限度によって特定される勾配媒体の最大密度は、特定の媒体に関する特定のカーボンナノチューブ(および/または1つ以上の界面活性成分、例えば、界面活性剤を含む組成物)と少なくとも同じ大きさの浮遊密度であるべきである。したがって、任意の水性または非水性密度勾配媒体を使用することが可能であるが、単層カーボンナノチューブが安定している、すなわち、有用な分離を除去しない程度に凝集しないことを前提とする。イオジキサノールの代替には、無機塩類(例えば、CsCl、Cs2SO4、KBr等)、多価アルコール(例えば、スクロース、グリセロール、ソルビトール等)、多糖(例えば、ポリスクロース、デキストラン等)、イオジキサノール(例えば、ジアトリゾ酸、ナイコデンツ等)に添加する他のヨード化合物、およびコロイド物質(例えば、Percoll(登録商標))が含まれる。適切な密度勾配媒体の選択時に考察可能である他のパラメータには、拡散係数および沈降係数が含まれ、両係数は、遠心分離中に勾配が再分配する速さを特定することが可能である。概して、浅い勾配では、拡散係数が大きくなり、沈降係数が小さくなることが望ましい。
【0035】
媒体同一性または密度勾配にかかわらず、合成したままのSWNTを、遠心分離前に、勾配内の任意の点における流体媒体に導入することが可能である。例えば、遠心分離中に密度勾配が急になる場合であっても、経時的に密度がほぼ一定である勾配に沿った空間点において、合成したままのSWNTを導入することが可能である。このような不動点は、そこに導入されるナノチューブ組成の浮遊密度にほぼ対応する密度を有するように有利に特定可能である。
【0036】
密度勾配媒体への導入前に、1つ以上の界面活性成分、2つ以上の界面活性成分、または3つ以上の界面活性成分を含む組成物にSWNTを提供することが可能である。いくつかの実施形態では、組成物における1つ以上の界面活性成分の装填は、異なる電気的特性および/または直径のカーボンナノチューブ間の浮遊密度差を増加させるように選択可能である。加えて、2つ以上の界面活性成分を使用する実施形態では、2つ以上の界面活性成分の相対比率は、金属カーボンナノチューブが半導体カーボンナノチューブよりも高い浮遊密度を有するように選択可能である。加えて、界面活性成分は、流体媒体と併用して、ナノチューブ凝集を低減するように機能することが可能である。
【0037】
1つ以上の界面活性成分には、広範な非イオン性またはイオン性(陽イオン、陰イオン、または両イオン)両親媒性物質から選択される1つ以上の界面活性剤が含まれることが可能である。いくつかの実施形態では、1つ以上の界面活性成分には、陰イオン界面活性剤が含まれることが可能である。例えば、1つ以上の界面活性成分には、1つ以上の硫酸塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、およびそれらの組み合わせが含まれることが可能である。特定の実施形態では、1つ以上の界面活性成分には、1つ以上の胆汁塩(コール酸塩、デオキシコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、およびそれらの組み合わせを含む)、陰イオン頭部基および可撓性アルキル尾部を含む1つ以上の両親媒性物質(本明細書において交換可能に以下に陰イオンアルキル両親媒性物質と呼ばれ、その例として、硫酸ドデシルおよびドデシルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる)、ならびに/あるいは陽イオン頭部基(例えば、第4級アンモニウム塩)および可撓性もしくは剛性アルキル尾部を含む1つ以上の両親媒性物質が含まれることが可能である。胆汁塩の例として、コール酸ナトリウム(SC)、デオキシコール酸塩ナトリウム、およびタウロデオキシコール酸塩ナトリウムが挙げられる。陰イオン頭部基および可撓性アルキル尾部を含む両親媒性物質の例として、硫酸ドデシルナトリウム(SDS)およびドデシルベンゼンスルホン酸塩ナトリウム(SDBS)が挙げられる。より一般的には、上記胆汁塩は、その平面および合成分子構造により平面界面活性成分としてより広義に説明可能である。これらの平面両親媒性物質は、疎水面に対向する荷電面を有することが可能である。任意の特定の理論によって拘束されたくはないが、これらの胆汁塩(または、これらの胆汁塩に類似の特徴を有する他の界面活性成分)は、カーボンナノチューブとの相互作用に関して、および相互作用時に平面構造および/または剛性構成を提供することが可能であり、これにより、差分ナノチューブ浮遊密度を誘起することが可能であると考えられている。線形(可撓性または剛性)脂肪族末端基(陰イオンまたは陽イオン頭部基のいずれかと結合される)を有する上述の両親媒性物質は、概して、本明細書において線形界面活性成分と呼ばれることが可能である。いくつかの実施形態では、DNA(例えば、一本鎖DNA)またはDNA断片も、米国特許出願第11/368,581号に説明するように、界面活性成分として使用可能である。
【0038】
いくつかの実施形態では、合成したままのSWNTを、少なくとも2つの界面活性成分を含む組成物に提供することが可能であり、この場合、少なくとも2つの界面活性成分は、同一の種類または異なる種類であることが可能である。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの界面活性成分は、SWNT表面に吸着することが可能である。すなわち、少なくとも2つの界面活性成分は、2つの異なる界面活性剤であることが可能である。このような共界面活性剤系を使用して、金属単層カーボンナノチューブと半導体単層カーボンナノチューブとの最適な分離を達成することが可能である。例えば、少なくとも2つの界面活性成分は、2つの胆汁塩、つまり界面活性剤を含む胆汁塩、または界面活性剤を含む2つの胆汁塩を含むことが可能である。特定の実施形態では、2つ以上の界面活性成分は、1つ以上の平面界面活性成分(例えば、コール酸ナトリウム(SC)、デオキシコール酸塩ナトリウム、およびタウロデオキシコール酸塩ナトリウム)、ならびに線形界面活性成分(例えば、硫酸ドデシルナトリウム(SDS))を含むことが可能である。特定の実施形態では、可変量の硫酸ドデシルナトリウムおよびコール酸ナトリウムを含む共界面活性剤系の使用を観測し、電子タイプによるSWNTの良好な選択的分離を可能にした。観測された金属/半導体選択性は、一定の程度の界面活性剤の結合および/または下部のSWNTの電子的性質とのその水和を示すように考えられる。さらに、界面活性剤の充填密度およびその水和は、下部のSWNTによる静電遮蔽に対して感受性を有する可能性があり得る。
【0039】
広範な界面活性剤によりカプセル化されたSWNTの分離について同等効果を有する密度勾配遠心分離を使用することが可能である。動作のいずれか1つの理論または形態に限定されることなく、密度勾配遠心分離を介する界面活性剤ベースの分離は、界面活性成分、例えば、界面活性剤が、異なる構造および電子タイプのSWNTの周囲に組織化する方法によって促進されることが多いと考えられている。ナノチューブ/界面活性剤、水/界面活性剤、および界面活性剤/界面活性剤の相互作用間のエネルギーバランスならびにこれらの界面活性剤のその充填密度、配向、イオン化、および得られる水和の全ては、浮遊密度ならびに分離および純化の質に影響を及ぼすパラメータであることが可能である。
【0040】
十分な遠心分離の後(すなわち、選択時間の間および/または媒体勾配に沿ったカーボンナノチューブの分離に少なくとも部分的に十分な選択回転速度で)、分離された単層カーボンナノチューブを含む少なくとも1つの分離画分を媒体から分離することが可能である。このような画分は、勾配に沿った位置において等密度であることが可能である。単離された画分は、例えば、ナノチューブの直径寸法、キラリティ、および電子タイプから選択される少なくとも1つの特徴の観点から、実質的に単分散の単層カーボンナノチューブを含むことが可能である。上方変位、吸引(メニスカスまたは密度端優先から)、管穿刺、管スライス、勾配および後続の抽出の交差結合、ピストン分画、および当技術分野において既知の任意の他の分画技法を含む種々の分画技法を使用することが可能である。
【0041】
1回の分離の後に回収される媒体画分および/またはナノチューブ画分は、少なくとも1つの選択された特性(例えば、電子タイプ)によってカーボンナノチューブを分離するという観点から十分選択的であることが可能である。しかしながら、その選択性を改善するために画分をさらに浄化することが望ましい。具体的には、単離された画分を、同一の界面活性成分系または異なる界面活性成分系を含む組成物に提供し、組成物を、同一の流体媒体または異なる流体媒体に接触させることが可能であり、この場合、流体媒体は、単離された画分が得られた流体媒体と同一または流体媒体とは異なる密度勾配を有することが可能である。特定の実施形態では、流体媒体条件またはパラメータを分離毎に維持することが可能である。特定の他の実施形態では、少なくとも1つの繰り返し分離は、先行する1つ以上の分離に対して、界面活性成分の同一性、媒体同一性、媒体密度勾配および/または媒体pH、ならびに遠心分離工程の持続時間および回転速度を変更することを含むことが可能である。特定の実施形態では、SWNTをカプセル化する界面活性剤を、繰り返し間で修正または変更することが可能であり、これによって密度と物理的構造および電子構造との間の関係が、任意の得られた界面活性剤/カプセル化層の関数として変動するため、分離をさらに精製すすることが可能になる。分離毎に単離される分離画分を、さらなる錯体形成および遠心分離ステップの実行前に洗浄することが可能である。
【0042】
回収された画分の選択性を、種々の分析方法によって確認することが可能である。例えば、分光光度分析および蛍光分析等の分光法を含む光学技術を使用することが可能である。このような技法は、概して、1つ以上の吸光度および/または発光スペクトルを、対応する参照スペクトルと比較するステップを含む。単離されたナノチューブ画分は、概して、少なくとも1つの選択特性の変動においてより狭い分布を有する。例えば、通常は3分の2の半導体SWNTおよび3分の1の金属SWNTを含有する合成したままのSWNTと比べると、上述の一般方法を使用して事前分類されたSWNTは、50%を上回る金属SWNTを含有することが可能である。したがって、電子タイプにより事前分類され、かつ大部分が金属であるSWNTから調製された膜は、非分類SWNTから調製された膜に比べて金属ナノチューブの割合が大きいため、改善された導電性を提供することが可能である。同様に、光吸収度に従って事前分類されたSWNTから調製された膜は、その波長においてファンホーベ遷移を含まない分類ナノチューブの慎重な使用と、分類工程中の吸収性不純物の同時除去とにより、所望の波長域において強化された透過率を提供することが可能である。ゆえに、本教示は、透明導電体加工後の後処理(例えば、化学ドーピング)とは対照的に、SWNT出発材料の質を改善することによって、透明導電体の光学的性能および電気的性能を強化可能にする。
【0043】
このような分類ナノチューブから得られた膜の性能改善を実証するために、合成したままのSWNTを、電子タイプと直径の両方による分類に最適化された密度勾配に通した。イオジキサノールを密度勾配媒体として用い、勾配は、通常は特定の比率および装填で2つの界面活性成分の混合を含有した。遠心分離後、分類ナノチューブの密に着色された帯が、遠心分離管における異なる密度において認められた。これらの着色帯は、特定のキラリティのSWNTの精製回収に対応することが分かり、直径および電子タイプに従った富化に関する証拠を提供する。その後、分類ナノチューブを、光吸収度による特徴化のために分画した。
【0044】
特徴化の後、真空ろ過を使用してナノチューブ溶液を膜に加工し、Rinzlerらにより開発された方法に従ってガラス基板および石英基板に移した。各々が本明細書に参考として援用される、米国特許出願公報第2004/0197546号およびZ.Wuら(2004),Science 305:1273−1276を参照されたい。一般方法論は、単離された画分を含有するナノチューブ溶液を界面活性剤と混合してSWNT懸濁液を提供するステップと、SWNT懸濁液を水溶液(例えば、SWNT懸濁液と同一の界面活性剤を含む水溶液)中で希釈するステップと、希釈されたSWNT懸濁液を、フィルタ膜を通してろ過するステップと、SWNTのみが残留して薄膜を形成するように真空ろ過によって溶液を除去するステップとを伴う。その後、安定剤を洗い流すことが可能であり、膜を乾燥することが可能になる。
【0045】
一実施形態では、高圧一酸化炭素変成(HiPco;Carbon Nanotechnologies,Inc.)によって生成された合成したままのSWNTを、3対2のSDS対SCの比率(3:2のSDS/SC重量比)を含み、かつ界面活性剤濃度全体が1.5%w/vになるように充填された密度勾配に通した。遠心分離後、SWNT分散は、多数の帯の材料に分離した。材料のこれらの帯のうち、浮遊シアン帯および浮遊マゼンダ帯が、半導体ナノチューブ、炭素質不純物、および束状ナノチューブを含む厚い黒色帯の上に見られた。図1Aは、シアン帯に対応する分類画分(曲線112、溶液A)、マゼンダ帯に対応する分類画分(曲線114、溶液B)、および非分類HiPco材料(曲線116)の光吸収度スペクトルを示す。図1Aにおける曲線112および114を参照すると、約700nmより長い波長の吸光度ピークの抑制(半導体遷移に関連する)は、両分類画分の金属性質が優勢であるという証拠を提供する。さらに、これらの画分は、光吸収度スペクトルのピークが強い急な直径分布を呈し、分布は、〜0.98Åの直径SWNTに対応する約553nmに中心があり(溶液A)、〜1.14nmの直径SWNTに対応する約605nmに中心があった(溶液B)。これらの両溶液の金属純度は、約94%を上回った。
【0046】
図1Bは、溶液Aおよび溶液Bのそれぞれから調製された分類ナノチューブ膜の透過率測定122および124と、〜270nmにおけるπ−プラズモン共鳴によって正規化された石英上の非分類材料から生成された制御膜の透過率測定126とを含む。図示するように、分類金属ナノチューブから調製された膜は、近赤外において大幅に高い透過率を有する(曲線122および124)。任意の特定の理論によって拘束されたくはないが、この効果は、半導体ナノチューブ、損傷または欠陥ナノチューブ、および非晶質炭素不純物の除去の結果であると考えられている。さらに、透過率は、金属SWNT光学遷移に関連する波長付近で中心となる低透過率領域を犠牲にして、可視スペクトルの大部分において増加するようにも認められた。
【0047】
透明導電体性能に対するナノチューブ分類の効果を特定するために、分類および非分類HiPco溶液から生成された一連の膜のシート抵抗および透過率を測定した。図2A〜図2Dは、シート抵抗の関数として、特定の波長域におけるこれらの膜(分類溶液Aから調製された膜−空白の4角形、分類溶液Bから調製された膜−空白の円形、非分類−塗りつぶした3角形)の透過率を提示する。可視透過率(約400nmから約700nm)では、分類金属SWNTから得られた膜は、非分類材料に比べて約20分の1に減少したシート抵抗を示し(図2A)、一方、シート抵抗は、約2000から約2600nmの波長の近赤外領域においてさらに約30分の1に減少した(図2B)。分類SWNTの光吸収度における最小値に対応する選択可視波長(約470nmおよび約650nm)において、シート抵抗の減少がさらに強化されることが認められ、金属SWNT膜の導電性は、同一の透過性の非分類膜に比べて約25倍改善可能である(図2C〜図2D)。これらのデータが示すように、透明導電膜における金属SWNTの割合の増加(導電性に寄与する網におけるナノチューブの割合増加をもたらす)によって、シート抵抗の減少をもたらすことが可能である。さらに、分類工程中の半導体SWNTおよび追加の炭素質不純物によっても、得られる膜の透過率を改善することが可能である。
【0048】
認められた改善および上述の改善は、特定のSWNT源に限定されない。本教示の一般的適用性を実証するために、追加の膜が、種々の源の分類金属SWNTから調製され、特徴化され、非分類材料から調製された制御膜と比較された。より具体的には、約1.2nmから約1.7nmの範囲の合成したままの直径を有する電気アーク放電(AD)により合成されたP2 SWNT(Carbon Solutions,Inc.)を、約1.4nmから約1.6nmの間の直径を有する金属SWNTの分離に最適化された密度勾配において分類した。本勾配では、全界面活性剤装填は、1%w/vであり、7:3のSDS/SCの重量比であった。遠心分離後、分画および光学的特徴化によって、2つの分類金属SWNT溶液を産生した。溶液Cは、平均直径が約1.6nmの約95%を上回る金属SWNTを含有し、溶液Dは、平均直径が約1.4nmの約88%を上回る金属SWNTを含有した。
【0049】
これらの分類SWNTが透明導電膜に組み込まれると、分類SWNTは、その直径により、可視スペクトルの中央付近を中心とする高い透明性窓を呈した。図3Aは、溶液C(曲線122)、溶液D(曲線124)、およびアーク放電により合成された非分類SWNT(曲線126)から調製された膜の正規化透過率スペクトルを示す。分類金属膜は、550nm付近で局所的透過率最大値を呈する。シート抵抗測定は、550nm波長における類似の透過率では、溶液Cからの純度の高い金属SWNT(>95%金属、空白の4角形)が、非分類P2 SWNT(塗りつぶした3角形)に比べて約4分の1に減少したシート抵抗を呈したことを示す(図3B)。純度の低い溶液Dから生成された膜(>88%金属、空白の円形)では、シート抵抗は約2.5分の1に減少した。
【0050】
本教示をさらに実証するために、HiPco(直径〜0.7〜1.3nm;Carbon Nanotechnologies Inc.,TX)、レーザーアブレーション(LA;直径〜1.1〜1.4nm;Carbon Nanotechnologies Inc.,TX)、および電気アーク放電(AD;直径〜1.3〜1.7nm;Carbon Solutions Inc.,CA)によって生成されたSWNTの追加試料を分類し、本教示に従う分類画分から透明導電膜を調製した。これらの出発材料毎に、界面活性剤に分散したSWNTを濃縮させて、次いで、3:2のSDS/SC比率で混合した界面活性剤コール酸ナトリウム(SC)および硫酸ドデシルナトリウム(SDS)が装填された密度勾配において超遠心分離した。分離後、高度に精製された金属SWNTであって、比較的低い浮遊密度を有するSWNTは、直径が約0.7nmから約1.7nmの範囲であるSWNTに対応する密度勾配の上部付近の複数の着色帯に集中した(図4A〜図4C)。界面活性成分およびその相対比率の選択に加え、部分的には、勾配内の界面活性剤の装填全体の変動によって、大直径範囲(約0.7nmから約1.7nm)の高分解能分類が達成された。分離の形態(金属または半導体)は、界面活性剤の装填の変化に主に感受性を有するが、本パラメータの修正は、SWNTの周囲の界面活性剤のシェルの厚さに影響を及ぼし得る。SWNTの浮遊密度がこの界面活性剤のシェルによって強く影響を受け得るため、界面活性剤装填を制御することによって特定の直径範囲におけるSWNTの浮遊密度に関するより大きな差分を操作し、次いで、DGUにより提供される直径精製を改善することが可能である。界面活性剤レベルに依存せず、3:2のSDS/SC環境における金属SWNTの浮遊密度は、その直径と反比例し、最大直径のSWNTは勾配の上部で帯になり、直径が小さい材料では、徐々に低い領域に集中する。
【0051】
HiPco SWNTの分離のために、界面活性剤の装填を約1.5%(w/v)に設定して、約1.0nmを中心とする直径を有する金属ナノチューブを単離した(図4A)。この勾配から除去された帯(帯402(黄色)、404(緑色)、406(青色)、408(紫色)、および410(マゼンダ))の光吸収度スペクトルは、直径および電子タイプによる分類に関して明白な証拠を提供する(図5A)。出発HiPco材料(曲線 512)と比較すると、分類金属SWNT(曲線502、504、506、508、510)は、半導体SWNTに関連する600nmを上回る遷移の強力な抑制(例えば、S11およびS22遷移)と、金属SWNTに起因する400nmから700nmの遷移の強化(M11遷移)とを示す。さらに、直径が約0.7nmから約1.3nmの範囲である金属SWNTの単離は、約450nmから約680nmのその1次光学遷移における移行によって証明される。
【0052】
それぞれ約1.25%および約1.0%の界面活性剤装填におけるレーザーアブレーション成長SWNTおよびアーク放電生成SWNTのDGUによって、それぞれ約1.2nmおよび約1.5nmの直径について最適化された金属分類がもたらされる。図4Bを参照すると、明確な着色帯(帯422(シアン)、424(透明)、426(シアン)、428(シアン)、および430(マゼンダ))が、レーザーアブレーション成長SWNTの遠心分離後に認められた。図4Cを参照すると、アーク放電生成SWNTでは、明確な着色帯(帯422(緑色)、444(茶色)、446(緑色)、および448(茶色))が認められた。HiPco材料と同様に、電子タイプおよび直径による分離は、近赤外における半導体光学遷移と、約550nmから約810nmの間の1次金属遷移の移行とによって証明される。レーザーアブレーション生成SWNTは、電子タイプおよび直径による特に精製された分類を提供する。密度勾配(図4B)の上部領域(帯422)は、98%を上回る金属SWNT含有物を含む材料を産生する(図5B)。アーク放電材料では、金属SWNTの1次光学遷移(M11)のいくつかが、その大直径に起因して近赤外において出現する(図5C)。加えて、約1.5nmから約1.7nmの直径材料の2次(M22)は、425nm付近の可視において出現する。アーク放電SWNTの光吸収度スペクトルの分析により、初めに密度勾配に挿入される金属SWNTの〜7.8%が、約86%を上回る金属純度を有する画分に再生することが示される。
【0053】
光学的特徴化の後、単分散金属SWNT溶液を、真空ろ過によって薄膜に組み込み、ガラス、石英、およびポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明基板に移した。ろ過中、SWNTをカプセル化する界面活性剤を、多量の水で洗浄することによって除去した。界面活性剤の除去によって、SWNTは、強力な内部ナノチューブのファンデルワールス相互作用によって凝集して束になることが可能である。透明導電性SWNT膜の吸光度とSWNT分散の吸光度との比較によって、膜において高度に束状である場合の金属SWNTおよび半導体SWNTの光学的挙動の間に大幅な差異が示される(図6)。透明導電性SWNT膜では、半導体種の1次および2次遷移(曲線606を曲線608と比較する)は、約40meVおよび30meVのそれぞれによって赤方偏移され、また、大幅に広げられる。対照的に、優勢金属SWNTに関連する遷移(曲線602を曲線604と比較する)は、〜10meVの青方偏移を受け、比較的限定されたピーク広がりを呈する。金属SWNTの束状化に対する感受性の低下が、界面活性剤によりカプセル化された束の溶液において認められた。任意の特定の理論によって拘束されたくはないが、この効果は、外部誘電環境の変化に対するその感受性を低減し得る金属SWNTの電荷遮断能力の増加に起因し得ると考えられる。膜形成後にその光吸収度特徴を保持する金属SWNTの能力は、分類材料から生成された膜が明確な色を有することを確実にするため、透明導電性塗膜に有益であり得る。
【0054】
再び図1Bを参照すると、溶液Aおよび溶液Bの各々が分類金属ナノチューブを含むが、溶液Aの650nm付近の透過率最小値(約553nmにおける)が、溶液Bの最小値(約605nmにおける)よりも若干移行することが分かる。これらの最小値は、可視スペクトルにおいて発生するため、溶液Aから調製されて得られた膜は、溶液Bから調製された膜とは異なる色を有すると予測することが可能である。したがって、本教示のある局面は、透明であり(または薄い色によって部分的に透明もしくは半透明である)、かつ可視色を有する透明導電体に関する。より具体的には、直径と、次に光吸収度とに従って分類された金属カーボンナノチューブを用いることによって、スペクトルの可視部分において色同調性特性を有する導電性膜を調製することが可能である。この固有の特徴は、透明導電体の調製に使用する現在既知の任意の材料には存在しないと考えられている。
【0055】
この能力を例示するために、優勢直径が約0.9nmから約1.6nmの範囲である一連の金属SWNT膜の透過率スペクトルを測定した(図7Aおよび図7B)。これらの膜では、1次遷移は、約509nmから約778nmに変動し、吸収ピークの両側における波長において高透過率窓をもたらす。具体的には、約1.4nmから約1.6nmの直径の金属SWNTが、汎用透明導電に最適なキラリティであると考えられる。可視におけるその透過率は、550nm付近でピークとなり、その波長域において、ヒトの目は最も感受性を有し、太陽放射は最も強烈である。金属ナノチューブの束状化に対する感受性を考慮すると、複数の単分散金属SWNT試料を結合して、高透過率の小領域を確立し、かつ残りのスペクトルに吸収性SWNTキラリティで効果的に充填して、膜導電性を最大化することが可能である。図7Aおよび図7Bに示すように、透明導電体の色を規定する高透過率領域は、膜に導入される金属SWNT直径の制御によって、大部分の可視スペクトルから近赤外に調節可能である。したがって、最適化膜の高透過率領域を用いて、フラットパネルディスプレイ、発光ダイオード、および太陽電池等の機器の効率を高めることが可能である。反対に、膜の急激にピークを迎える低透過率領域を使用して、機器の性能を損なう光学スペクトルの不要な部分をろ過して除去することが可能である。
【0056】
膜の光学的特性および透過率同調性における改善に加え、非分類SWNTから形成される類似の透過性の材料に比べ、金属SWNTを富化する材料から生成された膜の導電性において強化が認められた。有効な比較を確実にするために、分類および非分類の両方のHiPco SWNTを同一の超音波処理バッチで加工し、ろ過するまで数日間、全てのSWNT分散を1%SDS水溶液に透析した。透析前に、288,000gで32分間超遠心分離によって、SWNTの大きな凝集体を非分類材料から除去した。SWNTを同一超音波処理条件下に置くことによって、SWNT浮遊密度がナノチューブの長さに鈍感であり、かつ超音波処理が、ナノチューブを切断することによってナノチューブを短くすることで知られているため、分類および非分類の両方のナノチューブが同一長さ分布を有することを確実にすることが可能である。非分類材料の遠心分離ならびに両SWNT種類の透析は、分類および非分類ナノチューブが、膜形成前に同一の界面活性剤環境にあることを確実にし、この環境は、膜内部の束状化の度合いに影響を及ぼし得る。加工完了後、3つの組の膜が生成され、1つは非分類SWNTから成り、2つは単分散金属SWNTを含み、それぞれの優勢直径はそれぞれ約0.9nmおよび約1.0nmであった。
【0057】
透明導電性SWNT膜は、可視および赤外における光学的波長よりも大幅に短い約100nm未満の厚さを有するため、これらの膜のシート抵抗Rsは、以下の数式により、所与の波長おけるその透過率に関連することが可能である。
【0058】
T=(1+1/(2Rs)*(μ0/ε0)1/2*σop/σdc)^(−2)
式中、σopは、波長の関数として変動する光学導電度であり、σdcは、直流導電度であり、μ0およびε0は、それぞれ自由空間の浸透性および誘電率である。数式1を使用して、HiPco SWNTから生成された透明導電膜の測定透過率データを、図8に示すように適合した。金属SWNTを富化する膜は、非分類材料に比べてシート抵抗の明らかな低下を示した。改善は、適合から得られたσop/σdc比率を抽出することによって定量化可能である。所与のSWNT材料から生成された一連の膜では、この比率は、膜の透過率とシート抵抗との関係を特定する。数式1においてσop/σdcをシート抵抗で乗算するため、所与の透過率レベルにおける非分類および分類SWNT材料のシート抵抗の低下は、対応する一連の膜のσop/σdcを比較することによって計算可能である。
【0059】
非分類HiPco SWNT膜では、約400nmから約700nmの可視波長におけるσop/σdcの平均は1.1であり、文献で過去に報告された結果に一致している。反対に、可視において金属SWNT膜のσop/σdcは0.19であるため、5.6を上回る導電性強化が示される。したがって、非分類HiPco SWNTの膜は、同一の透過率の分類金属HiPco SWNTの膜の〜231Ω/平方のシート抵抗に比べて、可視における75%透過率において〜1340Ω/平方のシート抵抗を呈した。800nmから2200nmの赤外では、導電性改善は、1.0nm直径の金属SWNTでは10を上回り、0.9nmのナノチューブでは8.6を上回る。任意の特定の理論によって拘束されたくはないが、0.9nm直径のSWNTの導電性の強化が小さいのは、赤外において膜透過率を減少させる半導体SWNT含有物の増加に起因し得る。
【0060】
DGUにより生成された単分散直径の金属SWNTであって、その電気的特性および光学的特性が強化されたSWNTは、所望の性能レベルを達成するために選択および組み合わせ可能である透明導電体材料のライブラリを効果的に形成する。本概念を例示するために、数式1は、紫外線から赤外までの波長において種々の金属SWNT直径から得られた透明導電体データに適用された。得られたシート抵抗/透過率/波長のマップは、金属SWNT透明導電体の特性を簡潔に説明する(図9)。波長のある範囲において特定の透過率レベルを必要とする用途では、可能な膜のシート抵抗をこれらのマップから迅速に得ることが可能であるため、最適な金属SWNT直径の選択が容易になる。
【0061】
また、図9におけるマップは、可視および近赤外において70%を上回る透明性における下位140Ω/平方シート抵抗であって、多くの用途に十分であるシート抵抗を分類SWNTが生成可能であることも実証する。しかしながら、これらのマップは、透明導電体性能全体が出発SWNT材料に関連可能であることも示す。分類および非分類の両方のナノチューブでは、レーザーアブレーション成長SWNTは、最良の性能を提供すると考えられ、その後にアーク放電材料が続き、最後はHiPco SWNTである。透明導電体性能におけるこのような差異によって、SWNT薄膜の導電性が、単に金属SWNTの割合だけでなく、SWNT長さおよびナノチューブ間の接触等の多種多様の異なる要因によって特定可能であることが強調される。その導電性を改善するためにSWNTのドープにかなりの努力が費やされてきたが、このようなドーピングスキームは、概して、ドープ状SWNTの熱安定性および化学安定性の結果として短命である。対照的に、本教示に従う本質的に導電性の金属SWNTから形成される透明導電体は、本来のカーボンナノチューブの優れた機械的特性、熱的特性、および化学的特性を永久に保持することが可能である。
【0062】
個々にカプセル化されたSWNTの分類における密度勾配超遠心分離(DGU)の有効性について前述の説明において強調したが、本教示のDGU工程の追加の便益は、ファンデルワールス相互作用によりまとめて結合されたナノチューブの集合が、密度によっても単離可能であることにある。より具体的には、本教示のさらなる局面では、溶液中に分散し、かつその浮遊密度に従って選択されるSWNTの束を用いて、透明導電性ナノチューブ膜の性能を強化することが可能である。
【0063】
例示するために、直径が約1.1nmから約1.6nmであるレーザーアブレーション成長LA SWNT(Carbon Nanotechnologies,Inc.)を、界面活性剤装填が2%w/vであり、かつ重量比が3:2のSDS/SCの密度勾配において分類した。分類後、浮遊密度が約1.14〜1.16g/mLのSWNTの束を遠心分離管から抽出した。
【0064】
光吸収度測定(分類−曲線902、非分類−曲線904)によって、これらのSWNTが、非分類材料の半導体ナノチューブ対金属ナノチューブの約2:1の比率を維持したことが示された(図10A)。具体的には、斜線波長範囲910は、金属SWNTからの吸収に対応するが、非斜線範囲は、半導体SWNT遷移に関連する。スペクトルによって、SWNTの分類束が、非分類材料とほぼ同一の比率の半導体SWNT対金属SWNTを有することが示される。DGUにより加工された材料について、スペクトルの背景雑音においてある低下が認められ、この低下は、炭素質不純物の除去によると考えられる。
【0065】
分類束状材料(空白の4角形)から得られた膜のシート抵抗および透過率測定によって、非分類出発材料(塗りつぶした3角形)における同等の透過率において、導電性が約2倍増加することが示された(図10B)。この改善は、金属SWNTに比例する増加に起因し得ないため、任意の特定の理論によって拘束されたくはないが、導電のいかなる改善も、膜におけるより効果的なナノチューブ間接触に起因すると考えられる。また、このような分類束を含有する溶液を使用して、着色透明導電膜を調製することも可能である。任意の特定の理論によって拘束されたくはないが、可視色は、DGU中に吸収性不純物を除去することにより生成されたと考えられる。
【0066】
本教示のさらなる局面によると、個々にカプセル化されたSWNTを、希釈により再束状化することが可能であり、その後、電気的特性が改善した透明導電体を提供するために使用することが可能である。例示するために、全界面活性剤装填が2%w/vであり、かつ比率が1:2のSDS/SCである分類金属SWNTを含有する水溶液を、20倍に希釈してTriton X−100の1wt%水溶液にした。Triton X−100は、非イオン性界面活性剤である(イオン性SDSおよびSC薬剤に比べて)ため、分散SWNTの凝集を防止するために、電荷反発に依存することが不可能である。したがって、任意の特定の理論によって拘束されたくはないが、希釈SWNT溶液中のTriton X−100の経時的優勢によって、非イオン薬剤がSWNT側壁においてイオン性界面活性剤を置換することが可能になり、透明導電に最適化された形状のSWNT束の形成を誘起することが可能になることが考えられる。
【0067】
同一体積の一連の分類金属SWNT溶液を上述のように希釈して、所与の時間、室温で進化するように放置した。割り当て時間の経過後、溶液を使用して透明導電膜を作製し、その後、その透過率およびシート抵抗を測定した。異なる希釈時間のこれらの膜の可視スペクトルにおけるシート抵抗および平均透過率について以下の表Iに提示する。
【0068】
【表1】
表Iに示すように、再束状化工程によって、経時的な膜導電性の単調増加、つまり、膜透過率の小変動だけでは説明不可能な増加がもたらされた。上に提示されたデータは、界面活性剤および溶媒の特定の組み合わせで得られたが、任意の特定の理論によって拘束されたくはないが、希釈による再束化は、界面活性剤の多数の他の組み合わせで作用可能であり、異なる溶媒に希釈しても作用可能であると考えられる。このように希釈を使用する再束状化スキームは、当業者に容易に明らかになるはずである。
【0069】
以下の実施例は、さらなる例示および本教示の理解の促進のために提供され、本発明を限定するように決して意図されない。
【0070】
(実施例1:SWNT分散工程)
通常の実験では、SWNT粉末を1〜2%w/vコール酸ナトリウム水溶液と混合して、SWNTの1〜2mg/mL装填を確実にした。次いで、混合液をFisher Scientific Model 500 Sonic Dismembratorを使用して超音波処理した。大量の溶液(例えば、約150mL)では、超音波処理を最大出力の40%(400W)で1時間実行した。少量の溶液(例えば、約30mL未満)では、超音波処理器のマイクロチップ拡張を用い、超音波処理は、最大出力の20%まで低下して1時間実行した。ナノチューブ溶液のバイアルまたはビーカーを、過熱防止のために、超音波処理中、氷浴において冷却した。例えば、HiPco SWNT分散を、ステンレス製ビーカー内において145mgの未加工HiPco SWNT粉末を140 mLの1%コール酸ナトリウム水溶液に添加することによって調製した。混合液は、直径プローブが13mmの Fisher Scientific Model 500 Sonic Dismembratorを使用して160Wで1時間ホーン超音波処理を受けた。他の源(例えば、レーザーアブレーション(LA)SWNTおよび電気アーク放電(AD)SWNT)からの合成したままのSWNTの分散を、120mLの体積で40分間、160Wの出力で類似の超音波処理条件下で調製した。
【0071】
超音波処理の後、遠心分離によって大きいSWNT束および不純物を懸濁液から除去した。溶液を〜12mLのSW41Ti遠心分離管に移し、Optima L−90K超遠心分離機(Beckman Coulter)を使用して、SW41 Tiロータ(Beckman Coulter)において32分間41krpmで遠心分離した。最後に、Piston Gradient Fractionatorシステム(Biocomp Instruments,Inc.,Canada)を使用して、遠心分離管毎の溶液の上部7cmを慎重に回収した。
【0072】
(実施例2:SWNT溶液濃縮工程)
密度勾配において分類する前に、SWNT溶液を、任意によりSW41Ti遠心分離管内において2層から成るステップ勾配において濃縮した。下層は、濃縮されるナノチューブ溶液と同一の界面活性剤装填の2〜4mLの60%イオジキサノールであった。上層は、全体が、通常はイオジキサノール含有量がゼロであるSWNT溶液から成った。次いで、41krpmで12〜15時間遠心分離することによって、Optima L−90K 超遠心分離機(Beckman Coulter)を使用してSW41 Tiロータ(Beckman Coulter)において溶液を濃縮した。遠心分離後、濃縮されたSWNT溶液を、Piston Gradient Fractionatorシステム(Biocomp Instruments,Inc.,Canada)を使用して回収した。
【0073】
(実施例3:密度勾配超遠心分離による分類)
密度勾配を用いて直径、電子タイプによりSWNTを分類し、束形状は、共通の構造を有した。まず、SW41 Ti遠心分離管を、60%イオジキサノール含有量を含む1.5mL下層で整えた。次に、形成された5mL線形勾配を、SG15線形勾配形成器(Hoefer Inc.)を使用して下層の上に形成した。次いで、所望の体積の0.880mLの体積のSWNT溶液を、注射器ポンプ(Harvard Apparatus Model 11)を使用して、線形勾配に直接融合した。SWNT融合の後、0%イオジキサノール含有物を含む上層を、線形勾配の上部に添加した。表IIおよび表IIIは、密度勾配における層毎の界面活性剤レベルおよびイオジキサノール含有物について詳述する。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
次いで、Optima L−90K 超遠心分離機(Beckman Coulter)を使用して、SW41 Tiロータ(Beckman Coulter)において、41krpmで12時間密度勾配を遠心分離した。次いで、Piston Gradient Fractionatorシステム(Biocomp Instruments,Inc.,Canada)を使用して、分類ナノチューブ材料を、0.5〜1.0mm画分で遠心分離管から除去した。
【0076】
(実施例4:膜形成およびガラスへの移し替え)
真空ろ過を使用してナノチューブ溶液を膜に加工し、Rinzlerらにより開発された方法に従ってガラス基板および石英基板に移し替えた。その各々が参考として本明細書に援用される米国特許出願公開第2004/0197546号およびZ.Wuら(2004),Science 305:1273−1276を参照されたい。簡潔に言うと、ナノチューブ溶液を、50nm孔サイズの混合セルロースエステル(MCE)膜(Millipore)を通してろ過し、10〜20分間に設定した。その後、15〜25mLの脱イオン水を使用して、膜における任意の残留界面活性剤を洗い流した。
【0077】
膜の移し替え前に、ガラス基板または石英基板を、アセトン、イソプロピルアルコール、および脱イオン水において連続して洗浄することによって浄化し、窒素流で乾燥した。次に、SWNT膜を含むMCE膜をイソプロピルアルコール中に約5秒間浸漬した。場合により、浸漬前に膜を〜6x10mmの断片に切断した。次いで、ナノチューブ側を下にして膜を基板上に配置し、基板に堅く押圧するとともに、定性濾紙で乾燥した。次いで、基板/MCE/SWNT膜組立体を、アセトン浴から繰り返し挿入および除去した。基板への強力なSWNT膜付着が確認されると、連続溶媒浴(3つのアセトンおよび1つのメタノール)において、各々について少なくとも15分間MCEを溶解した。膜の溶解後、アセトン、イソプロピルアルコール、および脱イオン水で洗浄することによって基板を浄化し、次いで窒素中で乾燥した。
【0078】
(実施例5:SWNT膜および溶液特徴化)
対象の膜/溶液と参照基板/溶液の両方に照明光源が向けられる2つのビーム形態で動作するCary 500分光光度計(Varian,Inc.)を使用して、光学的特徴化を実行した。参照試料の吸収を対象試料の吸収から減算し、試料の光学的特性のみを測定するようにした。また、基準値補正を適用して、2つのビームの光路差を説明した。膜透過率測定では、1〜5mm直径の円形開口部を用いて、特徴化のために試料の所望の範囲を単離した。開口部のサイズに応じた1.00〜1.66秒の積分時間を使用して、1nmの分解能で250nmから3300nmにおいて、通常の走査を実行した。1.00〜1.33秒の積分時間を使用して、1nmの分解能で400nmから1340nmにおいてSWNT溶液を通常通り測定した。SWNT溶液と類似のレベルの水、イオジキサノール、および界面活性剤を含有する参照試料を背景減算に用いた。ファンデルポー4点プローブ方法(Biorad Hall System HL5500)を使用して、またはインライン4点プローブを使用して、膜に直接接触することによってシート抵抗測定を実行した。
【0079】
(実施例6:金属SWNT直径特定)
その光吸収度を共鳴ラマン分光法(RRS)から得た遷移エネルギーに相関させることによって、分類金属SWNTの直径を特定した。文献で報告されたRRSデータに線形適合を適用することによって、分類金属SWNTの直径を〜0.1nm内に計算し得る。
【0080】
(実施例7:金属SWNT純度の評価)
分類金属SWNTの純度レベルを光吸収度スペクトルによって推定した。使用する方法は、以下の3つの前提に依存する:生成されたままの材料が、金属キラリティ対半導体キラリティの比率が1:2のSWNTを含有することと、所与の遷移のSWNTの吸収強度が、その電子タイプのみに依存し、直径、長さ、および束状化等の他の要因は無視できることと、ならびに炭素質不純物に関連する吸光度背景は、エネルギーによって線形変化することである。手順の第1のステップにおいて、非分類および分類材料の試料におけるエネルギー領域であって、金属SWNTまたは半導体SWNTのいずれかの光学遷移にほぼ排他的に関連するエネルギー領域が規定された。適切なエネルギー範囲を発見した後、吸収度のみをSWNTに関連させる遷移組毎に線形背景吸光度を除去することが可能である。次いで、背景補正スペクトルを使用して、各遷移に関連する吸光度におけるエネルギーに対して積分することによって、金属純度を推定することが可能である。純度は、分類材料における金属遷移および半導体遷移下の範囲の比率を、非分類材料の同比率と比較することによって評価され、金属種対半導体種が1:2の混合を有することを前提とする。金属純度についてより保守的な推定値を求めるためには、背景補正遷移の各々に関連する最大吸光度を代わりに使用して、純度を評価することが可能である(すなわち、非分類および分類の両方の材料に存在する直径分布がSWNT電子タイプに依存しないことをさらに前提とする)。
【0081】
(実施例8:金属SWNT産出の推定)
DGUから得られた金属SWNTの産出を、分類工程の各ステップで使用する材料の光吸収度を分類することによって推定した。金属SWNT純度推定の章において記述した前提に従って、溶液体積で乗算される1次金属遷移下の範囲は、分散における金属SWNTの質量に比例すると解釈された。
【0082】
本教示は、本教示の精神または本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形式における実施形態も包含する。ゆえに、上述の実施形態は、本明細書に説明する本教示を限定するのではなく、あらゆる点において例示的であると解釈されるべきである。したがって、本発明の範囲は、上述の説明ではなく添付の請求項によって示され、請求項の均等物の意味および範囲内で生じるあらゆる変更は、本明細書に含有されるものと意図される。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年8月29日に出願された米国仮特許出願第60/966,592号の優先権および利益を主張し、その開示全体が本明細書に参考として援用される。
【0002】
(連邦政府支援の研究または開発に関する陳述)
米国政府は、ともにNorthwestern大学への認可である、全米科学財団からの認可番号第DMR−0520513号、第EEC−0647560号、および第DMR−0706067号、ならびに米国陸軍遠隔医療先端技術研究センター(U.S.Army Telemedicine and Advanced Technology Research Center)からの認可番号第DAMD17−05−1−0381号に従って、本発明に対して一定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
【背景技術】
【0004】
透明導電体は、発光ダイオード、太陽光発電、フラットパネルディスプレイ、およびエレクトロクロミック素子を含む多くの電子機器における重要な構成要素である。したがって、広い波長域における高導電性および透過性だけでなく、優れた機械的可撓性、環境安定性、および望ましい表面形態等の一連の他の特性も提供する低価格の透明導電体の需要が高まっている。現在、電子機器に最も広く使用される透明導電体は、インジウムスズ酸化物(ITO)である。しかしながら、ITOは、可撓性基板上においてその性能を劣化するその相対脆弱性や、インジウムの制限された有用性により妨げられ、また、他の要素の採掘の副産物として得られる希少かつ高価な要素である。
【0005】
近年、カーボンナノチューブが、透明導電のためのITOの前途有望な代替として出現している。これらのナノ材料は、その全体が地球上に最も豊富にある要素の1つである炭素から成り、極めて高い導電性や、高引張強度および弾力性を含む並外れた機械的特性を呈する。単層カーボンナノチューブ(SWNT)は、グラフェンシートを継ぎ目の無い円柱に巻き付けることによって形成されるナノスケール管と考えられ得る。本構造により、多数の異なるキラリティ、つまり、直径および巻付角度の組み合わせのSWNTが入手可能である。ナノチューブのキラリティは、その電子特性および光学的特性の両方を規定するため、ナノチューブを機器応用に組み込む際の重要なパラメータとなる。例えば、SWNTのキラリティの約3分の2は半導体であるが、残りは金属である。さらに、金属SWNTの光吸収度の1次ピークは、SWNTの直径が〜0.7nmから1.4nmまで増加するにつれて約450nmから700nmまで大幅に変動し得る。SWNTの原子構造と挙動との間のこの著しい依存は、SWNTが多くの方式で用いられることを可能にするが、それは、均一のキラリティのSWNTを合成する方法が存在しないというその主な欠点のうちの1つとしても見なされる。代わりに、合成したままのSWNTは、様々な直径の半導体および金属ナノチューブの混合物を有する。
【0006】
カーボンナノチューブの透明導電性膜は、エアブラッシング(例えば、特許文献1;および非特許文献1参照)、液滴乾燥(例えば、特許文献2参照)、および真空ろ過(例えば、特許文献3;非特許文献2;および非特許文献3参照)等の多数の異なる方法を使用して、溶媒の懸濁液から作製されており、これらの各々の開示全体は、参考として本明細書に援用される。しかしながら、従来技術は、比率が約2:1の半導体カーボンナノチューブおよび金属カーボンナノチューブを含む非分類混合物を用いており、SWNTの3分の2が半導体であることにより導電性が劣るため、機器の性能が制限される。膜導電性を増加させるために、SWNTは、硝酸還流等の強力な酸化状態において化学的にドープ可能である(例えば、非特許文献4参照)。しかしながら、このような処理は、ナノチューブに不具合をもたらし、その長さを低減させる可能性がある。さらに、このような処理によって、電磁波スペクトルの赤外線部分の膜透過率が低下する。調製済みの膜も、硝酸、硫酸、および塩化チオニル等の薬剤の中での浸漬によって(例えば、非特許文献5;および非特許文献6参照)、またはハロゲンもしくはアルカリ金属等の要素に対する暴露(特許文献3参照)によってドープ可能である。しかしながら、このような処理は、分子のインターカレーションおよび吸着に依存し、概して、水中で逆洗浄され得る。また、従来技術は、透明導電の改善のためにナノチューブ間の有益な接触を達成するためにいくつかの技法も用いている。例えば、洗浄および浴内超音波処理を試行して、調製済みのナノチューブ膜におけるSWNTの再束状化を誘起している(特許文献1)。Hechtらは、透明導電体の性能改善を目的として、超音波処理時間の関数としてのSWNT束の寸法について研究した(非特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0221016号明細書
【特許文献2】米国特許第5,853,877号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0197546号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M.Kaempgenら,Appl.Surf.Sci.252,425(2005)
【非特許文献2】Z.Wuら,Science 305,1273(2004)
【非特許文献3】Y.Zhouら,Appl.Phys.Lett.88,123109(2006)
【非特許文献4】A.G.Rinzlerら,Appl.Phys.A,67,29−37(1998)
【非特許文献5】R.Graupnerら,Phys.Chem.Chem.Phys.5,5472(2003)
【非特許文献6】D.Zhangら,Nano Lett.6,1880(2006)
【非特許文献7】D.Hechtら,Appl.Phys.Lett.89,133112(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の説明を考慮すると、本教示の目的は、電気的特性および光学的特性が改善されたカーボンナノチューブベースの透明導電体に関する1つ以上の方法および/または組成物を提供することによって、従来技術の種々の欠陥および欠点を克服することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(概要)
一部分において、本教示は、透明導電体(例えば、光透過性導電性膜)における使用のために、大部分が金属であるカーボンナノチューブの分類集団を用いることを対象とすることが可能である。従来技術とは対照的に、このような材料を含む透明導電体の実施形態は、化学ドーピングに関連する悪影響を受けずに、電気導電に寄与するカーボンナノチューブの多くの集団を有する。したがって、本教示の透明導電膜は、通常は、同一の透過率における非分類ナノチューブから生成された膜に比べて、改善された導電性を呈する。
【0011】
一部分において、本教示は、透明導電体における使用のために、光吸収度に従って分類されたカーボンナノチューブを用いることを対象とすることが可能である。このような実施形態では、所望の波長における透過率は、その波長におけるファンホーベ遷移を含まずに、分類ナノチューブの組み合わせを用いることによって増加する。さらに、透過率は、分類工程中の吸収性不純物の同時除去によって強化される。
【0012】
一部分において、本教示は、透明導電体における使用のために、所望の波長において光学遷移を有するカーボナノチューブを用いることを対象とすることが可能である。このような実施形態では、導電体は、半透明であることが可能であり、可視色を有することが可能である。例えば、色は、特定の光学的フィルタリング適用のために調節可能である。
【0013】
一部分において、本教示は、透明導電体における使用のために、浮遊密度に従って選択されたカーボンナノチューブを用いることを対象とすることが可能である。特定の浮遊密度の束は、ナノチューブの透明導電網に組み込むための最適形状(例えば、長くて薄い)を有することが可能である。このような束は、ナノチューブ間接触の改善をもたらし、導電性膜における電荷輸送のためのナノチューブ間接合の数を減少させることが可能である。束浮遊密度は、1つ以上の界面活性剤、密度勾配媒体、および/または溶媒の使用によって操作可能である。
【0014】
一部分において、本教示は、1つ以上の他の界面活性剤および/または異なる溶媒を含有する第2の溶液への希釈によって、溶液中に分散するカーボンナノチューブを再束状化することを対象とすることが可能である。経時的に、ナノチューブ側壁を含有する第2の溶液からの界面活性剤および/または溶媒の割合は増加し、希釈成分の慎重な選択によって、透明導電のために最適化されたナノチューブ束を形成することが可能である。束状化におけるさらなる制御は、膜に組み込む前にSWNTが希釈剤中にある時間を制限することによって達成可能である。SWNTの再束状化に関するこのような技法は、導電性膜において分類カーボンナノチューブを用いる場合に特に重要である。分類後、SWNTは、通常は、界面活性剤によって個々にカプセル化され、それ自体では、膜への加工時に最適なナノチューブ間接触を生成し得ない。SWNTの沈殿および再懸濁を必要としない再束状化技法によって、時間が節約され、繰り返しの処理によるナノチューブ分解の可能性が低減される。
【0015】
より具体的には、一局面では、本教示は、着色透明導電膜を提供する。着色透明導電膜は、可視スペクトルにおいて約75%を上回る平均透過率(例えば、可視スペクトルにおいて約80%を上回る平均透過率を有する、可視スペクトルにおいて約90%を上回る平均透過率を有する、または可視スペクトル内の〜550nm等の特定の波長において約80%を上回る透過率を有する)と、約1.0x103Ω/平方未満(例えば、約600Ω/平方未満、約500Ω/平方未満、約400Ω/平方未満、約300Ω/平方未満、約200Ω/平方未満、または約100Ω/平方未満)のシート抵抗と、可視色とを含むことが可能であり、膜は、単層カーボンナノチューブ(例えば、分離または再束化)を含む。膜の色は、膜における単層カーボンナノチューブの光学的特性に直接起因することが可能であり、つまり、染料もしくは発色団または他の外部薬剤を使用せずに、膜の色を形成することが可能である。加えて、膜における単層カーボンナノチューブは、大部分が金属であることが可能である。これらの金属単層カーボンナノチューブは、膜の可視色を提供するために、可視スペクトル内における波長を特異的に吸収することが可能である。例えば、膜の色は、膜における単層カーボンナノチューブの直径によって制御可能である。したがって、膜における単層カーボンナノチューブは、概して、極めて狭い直径変動、例えば、約±0.1nm以下(例えば、約±0.05nm以下)の直径変動を有する。いくつかの実施形態では、単層カーボンナノチューブは、0.9nm(±0.1nm)、1.0nm(±0.1nm)、1.05nm(±0.1nm)、1.1nm(±0.1nm)、1.4nm(±0.1nm)、および1.6nm(±0.1nm)から選択される平均直径を有することが可能である。特定の実施形態では、膜の可視色は、赤色(約508nmにおいて吸収ピークを有する)、マゼンダ(約561nmにおいて吸収ピークを有する)、紫色(約562nmおよび約606nmにおいて吸収ピークを有する)、シアン(約612nmにおいて吸収ピークを有する)、黄色(約397nmおよび約721nmにおいて吸収ピークを有する)、緑色(約400nmおよび約780nmにおいて吸収ピークを有する)から選択可能である。膜における単層カーボンナノチューブは、レーザーブレーション、アーク放電、または高圧一酸化炭素変成を含む種々の方法によって合成可能である。種々の実施形態では、膜は、約100nm未満の厚さを有することが可能である。
【0016】
一局面では、本教示は、事前選択された可視色を有する透明導電膜を調製する方法を提供する。本方法は、半導体単層カーボンナノチューブおよび金属単層カーボンナノチューブの混合物から分離画分を単離するステップを含むことが可能であり、分離画分は、分離された単層カーボンナノチューブを含み、分離画分における約50%を上回る(例えば、約80%を上回る)分離された単層カーボンナノチューブは金属である。分離された単層カーボンナノチューブは、約±1.0nm以下の直径変動を有することが可能である。次いで、このような分離画分は、事前選択された可視色を有する透明導電膜に加工可能である。本方法は、所定の体積を含む1つ以上の分離画分を加工するステップをさらに含むことが可能であり、1つ以上の分離画分全体は、事前選択された量の分離された単層カーボンナノチューブを含むことが可能である。1つ以上の分離された画分を濃縮(および/または純化)して、濃縮された分離画分を提供することが可能である(例えば、フィルタ膜によりろ過することによって)。その後、濃縮された分離画分は、真空ろ過、エアブラッシング、液滴乾燥、回転成形、印刷(例えば、インクジェット印刷)、およびスタンピングを含む当該分野において既知である1つ以上の技法を使用して、透明導電膜に加工することが可能である。
【0017】
特定の実施形態では、混合物における単層カーボンナノチューブは、約1.0nmから約1.2nmの範囲の直径寸法を有することが可能である。このような実施形態では、透明導電膜は、可視スペクトルにおいて約80%を上回る平均透過率と、約1.0x103Ω/平方未満のシート抵抗とを有し、近赤外スペクトルにおいて約90%を上回る平均透過率と、約1.0x103Ω/平方未満のシート抵抗とを有することが可能である。他の実施形態では、混合物における単層カーボンナノチューブは、約1.2nmから約1.7nmの範囲の直径寸法を有することが可能である。このような実施形態では、透明導電膜は、550nmの波長において約80%を上回る平均透過率と、約600Ω/平方未満のシート抵抗とを有することが可能である。
【0018】
本教示の別の局面は、複数の束の単層カーボンナノチューブを含む透明導電膜を調製する方法を提供する。本方法は、密度勾配を含む流体媒体と、1つ以上の界面活性成分および複数の束の単層カーボンナノチューブを含む組成物とを遠心分離して、密度勾配に沿って2つ以上の分離画分を提供するステップを伴うことが可能であり、分離画分の各々は、固有の浮遊密度を有し、複数の束の単層カーボンナノチューブを含む。本方法は、分離画分のうちの少なくとも1つを流体媒体から単離して、単離された分離画分を提供するステップと、単離された分離画分を透明導電膜に加工するステップとをさらに伴うことが可能である。例えば、単離された分離画分は、真空ろ過によって透明導電膜に加工可能である。特定の実施形態では、組成物における単層カーボンナノチューブの束は、約1.1nmから約1.6nmの範囲の直径寸法を有する単層カーボンナノチューブを含むことが可能である。特定の実施形態では、透明導電膜は、可視スペクトルにおいて約70%を上回る平均透過率と、約180Ω/平方未満のシート抵抗とを有することが可能である。
【0019】
別の局面では、本教示は、単層カーボンナノチューブを含む透明導電膜を調製する方法を提供する。1つ以上のイオン性界面活性成分を含む第1の組成物と、非イオン性界面活性成分を含む第2の組成物における分離された単層カーボンナノチューブとを希釈して、希釈された組成物を提供するステップを伴うことが可能であり、約50%を上回る分離された単層カーボンナノチューブは金属である。本方法は、希釈された組成物における分離された単層カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブの束を形成することを可能にするステップと、希釈された組成物を透明導電膜に加工するステップとをさらに伴うことが可能である。例えば、希釈された組成物は、真空ろ過によって透明導電膜に加工されることが可能である。特定の実施形態では、分離された単層カーボンナノチューブは、約1.0nmから約1.2nmの範囲の直径寸法を有することが可能である。特定の実施形態では、透明導電膜は、可視スペクトルにおいて約80%を上回る平均透過率と、約1.0x103Ω/平方未満のシート抵抗とを有することが可能である。
【0020】
さらなる局面では、本教示は、事前選択された可視色を有する導電性膜を調製する方法を提供する。本方法は、単離された分離画分を提供するために、広範なナノチューブ直径を含む単層カーボンナノチューブの混合物から、分離画分を単離するステップを伴うことが可能であり、単離された分離画分は、分離された単層カーボンナノチューブ含む。本方法は、単離された分離画分を透明導電膜に加工するステップをさらに伴うことが可能であり、透明導電膜は、可視スペクトルにおける事前選択された波長域において吸収するとともに、可視スペクトルにおいて約50%を上回る平均透過率を有する。特定の実施形態では、事前選択された可視色は、分離画分を単離することによって提供可能であり、約75%を上回る分離された単層カーボンナノチューブは、分離画分における分離された全単層カーボンナノチューブの平均直径の約0.1nm未満(例えば、約0.05nm)内の直径を有する(すなわち、直径分類は、オングストロームレベルまで狭化することが可能である)。
【0021】
また、本方法により調製される、ならびに/あるいは本明細書に説明する電気的特性および/または光学的特性を有する全体的および部分的に光透過性かつ導電性の膜も、本教示の範囲内に包含される。
【0022】
本教示の前述のおよび他の特徴および利点は、以下の図面、説明、および請求項によって、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
特定の図面が必ずしも縮尺通りではなく、本教示の原理を例示することに重点が置かれていることを理解されたい。図面は、決して本教示の範囲を限定することを意図しない。
【図1】図1Aは、本教示のある実施形態による2つの分類金属HiPco SWNT溶液(溶液AおよびB)の光吸収度スペクトルを示す。曲線は、明確にするためにオフセットされている。図1Bは、〜260nmにおいて正規化される透過率スペクトルであって、非分類および分類金属HiPco SWNTの膜から得られた透過率スペクトルを示す。
【図2】図2A−Dは、非分類(塗りつぶした3角形)および分類金属HiPco SWNT(溶液A−空白の4角形、溶液B−空白の円形)から生成された透明導電体の性能を示し、具体的には、シート抵抗の関数として特定の波長域におけるその透過率を示す:(A)400nmから700nmの可視波長、(B)2000nmから2600nmの近赤外線、(C)470nm、および(D)650nm。
【図3】図3A−Bは、非分類および分類金属アーク放電P2 SWNTから生成された透明導電体の性能を示す。図3Aは、分類金属(曲線132および134)ならびに320nmの波長で正規化される非分類P2膜(曲線136)の透過率を示す。図3Bは、シート抵抗の関数としての、透明導電体の約550nmにおけるパーセント透過率のグラフ図である(非分類−塗りつぶした3角形、分類−空白の4角形および空白の円形)。
【図4】図4A−Cは、HiPco(A)、レーザーアブレーション(B)、およびアーク放電(C)により生成された合成したままのSWNTを使用して、本教示に従う分類手順の後の遠心分離管の略図を示す。
【図5】図5A−Cは、図4A〜図4Cに示すそれぞれの選択分類浮遊画分の光吸収度スペクトルを提供する。曲線は、明確にするためにオフセットされている。
【図6】図6は、HiPco SWNT透明導電膜の吸光度(実線)とその生成に使用するSWNT分散(点線)の吸光度とを比較する。曲線602および604は、直径が1.0nmの金属SWNTに対応する。曲線606および608は、非分類SWNTに対応する。曲線は、明確にするためにオフセットされている。
【図7】図7Aは、約270nmにおいてπ−プラズモンに正規化される分類金属SWNT膜の透過率を示す(明確な曲線オフセット)。膜は、以下の優勢直径のSWNTを使用して生成された:0.9nm(702)、1.0nm(704)、1.1nm(706)、1.3nm(708)、1.4nm(710)、および1.6nm(712)。図7Bは、光学的同調性を示す同一のSWNT膜のスペクトルの可視部分の拡大グラフ(同一単位)を示す。
【図8】図8は、550nm(A)および1600nm(B)波長における、HiPco SWNTから生成された一連の透明導電膜の透過率とシート抵抗とをグラフで示す。使用した材料は、主要直径が0.9nm(ダイヤモンド形)、1.0nm(4角形)の金属SWNT、および非分類材料(3角形)の金属SWNTであった。
【図9】図9は、単分散SWNT導電層または塗膜のシート抵抗/透過率/波長のマップを示す。概略マップは、いくつかの一連の膜:(A)0.9nmHiPco SWNT、(B)1.0nmSWNT、(C)1.1nmレーザーアブレーション成長SWNT、および(D)1.4nmアーク放電生成SWNTに数式1を適合することによって生成された。
【図10】図10A−Bは、透明導電のための最適形状のSWNT束の分離を示す。図10Aは、分類束状のLA SWNTと比較して非分類 LA SWNTの正規化光吸収度スペクトルを示す。図10Bは、シート抵抗の関数としての、透明導電の400nmから700nmの波長域における本透過率のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本説明において、組成が、特定の構成要素を有する、含む、または備えるように説明される、あるいは工程が、特定の工程ステップを有する、含む、または備えるように記載される場合、本教示の組成が、列挙される構成要素から実質上成るか、またはその構成要素から成ること、ならびに本教示の工程が、列挙される処理ステップから実質上成るか、またはその構成要素から成ることも意図される。
【0025】
本出願では、要素または構成要素が、列挙される要素または構成要素のリスト内に含まれる、および/またはリストから選択されるように記述される場合、要素または構成要素が、列挙される要素または構成要素のうちのいずれか1つであることが可能であり、また、列挙される要素または構成要素のうちの2つ以上から成る群から選択可能であることを理解されたい。さらに、本明細書に説明する組成、装置、または方法の要素および/または特徴が、本明細書において明示的または暗示的であるかにかかわらず、本教示の精神および範囲から逸脱することなく、多種多様の方法で組み合わせ可能であることを理解されたい。
【0026】
用語の「含む」または「有する」の使用は、概して、別段に明示的に記載されない限り、非制約的かつ非限定的であると理解されたい。
【0027】
別段に明示的に記載されない限り、本明細書における単数形の使用は、複数形も含む(逆も同様)。加えて、用語「約」の使用が定量値の前である場合、別段に明示的に記載されない限り、本教示は、特定の定量値自体も含む。
【0028】
ステップの順番または一定の作用を実行するための順番は、本教示が動作可能である限り、重要ではないことを理解されたい。さらに、2つ以上のステップまたは作用を同時に行なってもよい。
【0029】
本教示は、透明導電体、具体的には、連続的に光透過性かつ導電性の膜であって、非分類SWNTおよびSWNT束を使用して生成された従来技術の膜に比べて強化された導電性および透過率を示す分類単層カーボンナノチューブ(SWNT)および/またはSWNT束を含む膜を提供することが可能である。本透明導電体の特性の改善は、SWNTおよび/またはSWNT束の純度の改善に部分的に起因し得る。より具体的には、本教示は、電子タイプ、直径、および/または束密度に従って事前分類されたSWNTおよびSWNT束を用い、その結果、これらのSWNTおよびSWNT束は、非分類SWNTおよびSWNT束に比べて均一な光学的特徴および電気的特徴ならびに/あるいは最適形状を有することになる。
【0030】
その光学的特徴および電気的特徴を改善するために、多数の異なるキラリティを含む合成したままのSWNTを、個々のSWNTの1つ以上の物理的特性および/または化学的特性(直径寸法および/または電子タイプを含む)に従って分類することが可能である。より具体的には、密度勾配超遠心(DGU)に基づく分類方法を、同時係属中の米国特許出願第11/368,581号および第11/897,125号に説明するように使用することが可能であり、これらの出願の各々の開示全体は、本明細書に参考として援用される。
【0031】
合成したままのSWNTを、分類前に光学的に純化および/または濃縮することが可能である。事前分類処理技法の例として、酸化、酸処理、エッチング、および脱ドーピングが挙げられる。分類工程では、合成したままのSWNTは、概して、1つ以上の界面活性成分を使用して水溶液中で分散される。SWNTをカプセル化する界面活性成分の種類および量を制御することによって、例えば、複数の界面活性成分を使用する場合、界面活性成分の相対比率を制御することによって、その直径および電子タイプに従って、ナノチューブの浮遊密度の微妙な差異を操作することが可能になる。次いで、流体媒体により提供される密度勾配内にナノチューブ溶液を遠心分離することによって、これらの密度差を利用することが可能である。超遠心分離中、異なるキラリティのSWNTは、そのそれぞれの等密度点、すなわち、SWNTの浮遊密度の流体媒体の浮遊密度との一致に起因して沈降が停止する勾配内の点に個々に移動する。その後、ナノチューブを、密度勾配から層毎に除去することが可能である。この一般方法によって、ナノチューブを化学的または構造的に不可逆的に修正することなく、構造および/または1つ以上の他の特性の関数としてSWNTを分類することが可能になり、直径およびキラリティ、直径および電子タイプ、電子タイプおよびキラリティの同時選択、または直径、電子タイプ、もしくはキラリティの個々の選択を達成することが可能になる。
【0032】
流体媒体中のSWNTの浮遊密度は、カーボンナノチューブ自体の質量および体積、その表面機能化、および静電的に結合した水和層を含む複数の要因に依存することが可能である。例えば、カーボンナノチューブの表面機能化は、非共有であることが可能であり、1つ以上の界面活性成分(例えば、界面活性剤)によるカーボンナノチューブのカプセル化によって達成可能である。したがって、上述の一般方法は、可変構造および/または特性の単層カーボンナノチューブを、少なくとも1つの界面活性成分(例えば、界面活性剤)に接触させて、界面活性成分およびSWNTにより形成される複合体が、密度勾配を含む流体媒体に配置される際に、SWNT間の差分浮遊密度を提供するステップを含むことが可能である。差分浮遊密度は、ナノチューブ直径、バンドギャップ、電子タイプ、および/またはキラリティの関数であることが可能であるため、直径、バンドギャップ、電子タイプ、および/またはキラリティによる単層カーボンナノチューブの分離が可能になる。
【0033】
概して、密度勾配遠心分離は、遠心分離管または区画内における位置(すなわち、密度勾配)の関数としてその密度の既定の変動を有する流体媒体を使用する。本教示で有用である流体媒体は、その中のカーボンナノチューブ凝集だけによって、少なくとも部分的な分離を除外する程度に限定されない。したがって、本明細書に説明する分離技法における使用のために媒体に密度勾配をもたらすように、広範囲の濃度において、その中で可溶性または分散性の任意の物質とともに、水溶液および非水溶液を使用することが可能である。このような物質は、イオン性または非イオン性であることが可能であり、その非限定的な例として、それぞれ無機塩類およびアルコールが挙げられる。このような媒体には、広範な水性イオジキサノール濃度と、対応する濃度密度勾配とが含まれることが可能である。当業者が理解するように、水性イオジキサノールは一般的に広く使用される非イオン密度勾配媒体である。しかしながら、良好な効果を有する他の媒体を使用することが可能であり、これも当業者の各々によって理解される。
【0034】
より一般的には、最適な流体または溶媒において安定性、可溶性、または分散性の任意の材料または化合物を、密度勾配媒体として使用することが可能である。広範な密度は、このような材料または化合物を異なる濃度で流体中に溶解することによって形成可能であり、密度勾配は、例えば、遠心分離管または区画において形成可能である。より実用的には、媒体の選択に関し、カーボンナノチューブは、機能化されるか否かにかかわらず、流体/溶媒または得られた密度勾配内において可溶性、安定性、または分散性であるべきである。同様に、実用的観点から、最適な溶媒または流体中のこのような材料または化合物の溶解限度によって特定される勾配媒体の最大密度は、特定の媒体に関する特定のカーボンナノチューブ(および/または1つ以上の界面活性成分、例えば、界面活性剤を含む組成物)と少なくとも同じ大きさの浮遊密度であるべきである。したがって、任意の水性または非水性密度勾配媒体を使用することが可能であるが、単層カーボンナノチューブが安定している、すなわち、有用な分離を除去しない程度に凝集しないことを前提とする。イオジキサノールの代替には、無機塩類(例えば、CsCl、Cs2SO4、KBr等)、多価アルコール(例えば、スクロース、グリセロール、ソルビトール等)、多糖(例えば、ポリスクロース、デキストラン等)、イオジキサノール(例えば、ジアトリゾ酸、ナイコデンツ等)に添加する他のヨード化合物、およびコロイド物質(例えば、Percoll(登録商標))が含まれる。適切な密度勾配媒体の選択時に考察可能である他のパラメータには、拡散係数および沈降係数が含まれ、両係数は、遠心分離中に勾配が再分配する速さを特定することが可能である。概して、浅い勾配では、拡散係数が大きくなり、沈降係数が小さくなることが望ましい。
【0035】
媒体同一性または密度勾配にかかわらず、合成したままのSWNTを、遠心分離前に、勾配内の任意の点における流体媒体に導入することが可能である。例えば、遠心分離中に密度勾配が急になる場合であっても、経時的に密度がほぼ一定である勾配に沿った空間点において、合成したままのSWNTを導入することが可能である。このような不動点は、そこに導入されるナノチューブ組成の浮遊密度にほぼ対応する密度を有するように有利に特定可能である。
【0036】
密度勾配媒体への導入前に、1つ以上の界面活性成分、2つ以上の界面活性成分、または3つ以上の界面活性成分を含む組成物にSWNTを提供することが可能である。いくつかの実施形態では、組成物における1つ以上の界面活性成分の装填は、異なる電気的特性および/または直径のカーボンナノチューブ間の浮遊密度差を増加させるように選択可能である。加えて、2つ以上の界面活性成分を使用する実施形態では、2つ以上の界面活性成分の相対比率は、金属カーボンナノチューブが半導体カーボンナノチューブよりも高い浮遊密度を有するように選択可能である。加えて、界面活性成分は、流体媒体と併用して、ナノチューブ凝集を低減するように機能することが可能である。
【0037】
1つ以上の界面活性成分には、広範な非イオン性またはイオン性(陽イオン、陰イオン、または両イオン)両親媒性物質から選択される1つ以上の界面活性剤が含まれることが可能である。いくつかの実施形態では、1つ以上の界面活性成分には、陰イオン界面活性剤が含まれることが可能である。例えば、1つ以上の界面活性成分には、1つ以上の硫酸塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、およびそれらの組み合わせが含まれることが可能である。特定の実施形態では、1つ以上の界面活性成分には、1つ以上の胆汁塩(コール酸塩、デオキシコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、およびそれらの組み合わせを含む)、陰イオン頭部基および可撓性アルキル尾部を含む1つ以上の両親媒性物質(本明細書において交換可能に以下に陰イオンアルキル両親媒性物質と呼ばれ、その例として、硫酸ドデシルおよびドデシルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる)、ならびに/あるいは陽イオン頭部基(例えば、第4級アンモニウム塩)および可撓性もしくは剛性アルキル尾部を含む1つ以上の両親媒性物質が含まれることが可能である。胆汁塩の例として、コール酸ナトリウム(SC)、デオキシコール酸塩ナトリウム、およびタウロデオキシコール酸塩ナトリウムが挙げられる。陰イオン頭部基および可撓性アルキル尾部を含む両親媒性物質の例として、硫酸ドデシルナトリウム(SDS)およびドデシルベンゼンスルホン酸塩ナトリウム(SDBS)が挙げられる。より一般的には、上記胆汁塩は、その平面および合成分子構造により平面界面活性成分としてより広義に説明可能である。これらの平面両親媒性物質は、疎水面に対向する荷電面を有することが可能である。任意の特定の理論によって拘束されたくはないが、これらの胆汁塩(または、これらの胆汁塩に類似の特徴を有する他の界面活性成分)は、カーボンナノチューブとの相互作用に関して、および相互作用時に平面構造および/または剛性構成を提供することが可能であり、これにより、差分ナノチューブ浮遊密度を誘起することが可能であると考えられている。線形(可撓性または剛性)脂肪族末端基(陰イオンまたは陽イオン頭部基のいずれかと結合される)を有する上述の両親媒性物質は、概して、本明細書において線形界面活性成分と呼ばれることが可能である。いくつかの実施形態では、DNA(例えば、一本鎖DNA)またはDNA断片も、米国特許出願第11/368,581号に説明するように、界面活性成分として使用可能である。
【0038】
いくつかの実施形態では、合成したままのSWNTを、少なくとも2つの界面活性成分を含む組成物に提供することが可能であり、この場合、少なくとも2つの界面活性成分は、同一の種類または異なる種類であることが可能である。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの界面活性成分は、SWNT表面に吸着することが可能である。すなわち、少なくとも2つの界面活性成分は、2つの異なる界面活性剤であることが可能である。このような共界面活性剤系を使用して、金属単層カーボンナノチューブと半導体単層カーボンナノチューブとの最適な分離を達成することが可能である。例えば、少なくとも2つの界面活性成分は、2つの胆汁塩、つまり界面活性剤を含む胆汁塩、または界面活性剤を含む2つの胆汁塩を含むことが可能である。特定の実施形態では、2つ以上の界面活性成分は、1つ以上の平面界面活性成分(例えば、コール酸ナトリウム(SC)、デオキシコール酸塩ナトリウム、およびタウロデオキシコール酸塩ナトリウム)、ならびに線形界面活性成分(例えば、硫酸ドデシルナトリウム(SDS))を含むことが可能である。特定の実施形態では、可変量の硫酸ドデシルナトリウムおよびコール酸ナトリウムを含む共界面活性剤系の使用を観測し、電子タイプによるSWNTの良好な選択的分離を可能にした。観測された金属/半導体選択性は、一定の程度の界面活性剤の結合および/または下部のSWNTの電子的性質とのその水和を示すように考えられる。さらに、界面活性剤の充填密度およびその水和は、下部のSWNTによる静電遮蔽に対して感受性を有する可能性があり得る。
【0039】
広範な界面活性剤によりカプセル化されたSWNTの分離について同等効果を有する密度勾配遠心分離を使用することが可能である。動作のいずれか1つの理論または形態に限定されることなく、密度勾配遠心分離を介する界面活性剤ベースの分離は、界面活性成分、例えば、界面活性剤が、異なる構造および電子タイプのSWNTの周囲に組織化する方法によって促進されることが多いと考えられている。ナノチューブ/界面活性剤、水/界面活性剤、および界面活性剤/界面活性剤の相互作用間のエネルギーバランスならびにこれらの界面活性剤のその充填密度、配向、イオン化、および得られる水和の全ては、浮遊密度ならびに分離および純化の質に影響を及ぼすパラメータであることが可能である。
【0040】
十分な遠心分離の後(すなわち、選択時間の間および/または媒体勾配に沿ったカーボンナノチューブの分離に少なくとも部分的に十分な選択回転速度で)、分離された単層カーボンナノチューブを含む少なくとも1つの分離画分を媒体から分離することが可能である。このような画分は、勾配に沿った位置において等密度であることが可能である。単離された画分は、例えば、ナノチューブの直径寸法、キラリティ、および電子タイプから選択される少なくとも1つの特徴の観点から、実質的に単分散の単層カーボンナノチューブを含むことが可能である。上方変位、吸引(メニスカスまたは密度端優先から)、管穿刺、管スライス、勾配および後続の抽出の交差結合、ピストン分画、および当技術分野において既知の任意の他の分画技法を含む種々の分画技法を使用することが可能である。
【0041】
1回の分離の後に回収される媒体画分および/またはナノチューブ画分は、少なくとも1つの選択された特性(例えば、電子タイプ)によってカーボンナノチューブを分離するという観点から十分選択的であることが可能である。しかしながら、その選択性を改善するために画分をさらに浄化することが望ましい。具体的には、単離された画分を、同一の界面活性成分系または異なる界面活性成分系を含む組成物に提供し、組成物を、同一の流体媒体または異なる流体媒体に接触させることが可能であり、この場合、流体媒体は、単離された画分が得られた流体媒体と同一または流体媒体とは異なる密度勾配を有することが可能である。特定の実施形態では、流体媒体条件またはパラメータを分離毎に維持することが可能である。特定の他の実施形態では、少なくとも1つの繰り返し分離は、先行する1つ以上の分離に対して、界面活性成分の同一性、媒体同一性、媒体密度勾配および/または媒体pH、ならびに遠心分離工程の持続時間および回転速度を変更することを含むことが可能である。特定の実施形態では、SWNTをカプセル化する界面活性剤を、繰り返し間で修正または変更することが可能であり、これによって密度と物理的構造および電子構造との間の関係が、任意の得られた界面活性剤/カプセル化層の関数として変動するため、分離をさらに精製すすることが可能になる。分離毎に単離される分離画分を、さらなる錯体形成および遠心分離ステップの実行前に洗浄することが可能である。
【0042】
回収された画分の選択性を、種々の分析方法によって確認することが可能である。例えば、分光光度分析および蛍光分析等の分光法を含む光学技術を使用することが可能である。このような技法は、概して、1つ以上の吸光度および/または発光スペクトルを、対応する参照スペクトルと比較するステップを含む。単離されたナノチューブ画分は、概して、少なくとも1つの選択特性の変動においてより狭い分布を有する。例えば、通常は3分の2の半導体SWNTおよび3分の1の金属SWNTを含有する合成したままのSWNTと比べると、上述の一般方法を使用して事前分類されたSWNTは、50%を上回る金属SWNTを含有することが可能である。したがって、電子タイプにより事前分類され、かつ大部分が金属であるSWNTから調製された膜は、非分類SWNTから調製された膜に比べて金属ナノチューブの割合が大きいため、改善された導電性を提供することが可能である。同様に、光吸収度に従って事前分類されたSWNTから調製された膜は、その波長においてファンホーベ遷移を含まない分類ナノチューブの慎重な使用と、分類工程中の吸収性不純物の同時除去とにより、所望の波長域において強化された透過率を提供することが可能である。ゆえに、本教示は、透明導電体加工後の後処理(例えば、化学ドーピング)とは対照的に、SWNT出発材料の質を改善することによって、透明導電体の光学的性能および電気的性能を強化可能にする。
【0043】
このような分類ナノチューブから得られた膜の性能改善を実証するために、合成したままのSWNTを、電子タイプと直径の両方による分類に最適化された密度勾配に通した。イオジキサノールを密度勾配媒体として用い、勾配は、通常は特定の比率および装填で2つの界面活性成分の混合を含有した。遠心分離後、分類ナノチューブの密に着色された帯が、遠心分離管における異なる密度において認められた。これらの着色帯は、特定のキラリティのSWNTの精製回収に対応することが分かり、直径および電子タイプに従った富化に関する証拠を提供する。その後、分類ナノチューブを、光吸収度による特徴化のために分画した。
【0044】
特徴化の後、真空ろ過を使用してナノチューブ溶液を膜に加工し、Rinzlerらにより開発された方法に従ってガラス基板および石英基板に移した。各々が本明細書に参考として援用される、米国特許出願公報第2004/0197546号およびZ.Wuら(2004),Science 305:1273−1276を参照されたい。一般方法論は、単離された画分を含有するナノチューブ溶液を界面活性剤と混合してSWNT懸濁液を提供するステップと、SWNT懸濁液を水溶液(例えば、SWNT懸濁液と同一の界面活性剤を含む水溶液)中で希釈するステップと、希釈されたSWNT懸濁液を、フィルタ膜を通してろ過するステップと、SWNTのみが残留して薄膜を形成するように真空ろ過によって溶液を除去するステップとを伴う。その後、安定剤を洗い流すことが可能であり、膜を乾燥することが可能になる。
【0045】
一実施形態では、高圧一酸化炭素変成(HiPco;Carbon Nanotechnologies,Inc.)によって生成された合成したままのSWNTを、3対2のSDS対SCの比率(3:2のSDS/SC重量比)を含み、かつ界面活性剤濃度全体が1.5%w/vになるように充填された密度勾配に通した。遠心分離後、SWNT分散は、多数の帯の材料に分離した。材料のこれらの帯のうち、浮遊シアン帯および浮遊マゼンダ帯が、半導体ナノチューブ、炭素質不純物、および束状ナノチューブを含む厚い黒色帯の上に見られた。図1Aは、シアン帯に対応する分類画分(曲線112、溶液A)、マゼンダ帯に対応する分類画分(曲線114、溶液B)、および非分類HiPco材料(曲線116)の光吸収度スペクトルを示す。図1Aにおける曲線112および114を参照すると、約700nmより長い波長の吸光度ピークの抑制(半導体遷移に関連する)は、両分類画分の金属性質が優勢であるという証拠を提供する。さらに、これらの画分は、光吸収度スペクトルのピークが強い急な直径分布を呈し、分布は、〜0.98Åの直径SWNTに対応する約553nmに中心があり(溶液A)、〜1.14nmの直径SWNTに対応する約605nmに中心があった(溶液B)。これらの両溶液の金属純度は、約94%を上回った。
【0046】
図1Bは、溶液Aおよび溶液Bのそれぞれから調製された分類ナノチューブ膜の透過率測定122および124と、〜270nmにおけるπ−プラズモン共鳴によって正規化された石英上の非分類材料から生成された制御膜の透過率測定126とを含む。図示するように、分類金属ナノチューブから調製された膜は、近赤外において大幅に高い透過率を有する(曲線122および124)。任意の特定の理論によって拘束されたくはないが、この効果は、半導体ナノチューブ、損傷または欠陥ナノチューブ、および非晶質炭素不純物の除去の結果であると考えられている。さらに、透過率は、金属SWNT光学遷移に関連する波長付近で中心となる低透過率領域を犠牲にして、可視スペクトルの大部分において増加するようにも認められた。
【0047】
透明導電体性能に対するナノチューブ分類の効果を特定するために、分類および非分類HiPco溶液から生成された一連の膜のシート抵抗および透過率を測定した。図2A〜図2Dは、シート抵抗の関数として、特定の波長域におけるこれらの膜(分類溶液Aから調製された膜−空白の4角形、分類溶液Bから調製された膜−空白の円形、非分類−塗りつぶした3角形)の透過率を提示する。可視透過率(約400nmから約700nm)では、分類金属SWNTから得られた膜は、非分類材料に比べて約20分の1に減少したシート抵抗を示し(図2A)、一方、シート抵抗は、約2000から約2600nmの波長の近赤外領域においてさらに約30分の1に減少した(図2B)。分類SWNTの光吸収度における最小値に対応する選択可視波長(約470nmおよび約650nm)において、シート抵抗の減少がさらに強化されることが認められ、金属SWNT膜の導電性は、同一の透過性の非分類膜に比べて約25倍改善可能である(図2C〜図2D)。これらのデータが示すように、透明導電膜における金属SWNTの割合の増加(導電性に寄与する網におけるナノチューブの割合増加をもたらす)によって、シート抵抗の減少をもたらすことが可能である。さらに、分類工程中の半導体SWNTおよび追加の炭素質不純物によっても、得られる膜の透過率を改善することが可能である。
【0048】
認められた改善および上述の改善は、特定のSWNT源に限定されない。本教示の一般的適用性を実証するために、追加の膜が、種々の源の分類金属SWNTから調製され、特徴化され、非分類材料から調製された制御膜と比較された。より具体的には、約1.2nmから約1.7nmの範囲の合成したままの直径を有する電気アーク放電(AD)により合成されたP2 SWNT(Carbon Solutions,Inc.)を、約1.4nmから約1.6nmの間の直径を有する金属SWNTの分離に最適化された密度勾配において分類した。本勾配では、全界面活性剤装填は、1%w/vであり、7:3のSDS/SCの重量比であった。遠心分離後、分画および光学的特徴化によって、2つの分類金属SWNT溶液を産生した。溶液Cは、平均直径が約1.6nmの約95%を上回る金属SWNTを含有し、溶液Dは、平均直径が約1.4nmの約88%を上回る金属SWNTを含有した。
【0049】
これらの分類SWNTが透明導電膜に組み込まれると、分類SWNTは、その直径により、可視スペクトルの中央付近を中心とする高い透明性窓を呈した。図3Aは、溶液C(曲線122)、溶液D(曲線124)、およびアーク放電により合成された非分類SWNT(曲線126)から調製された膜の正規化透過率スペクトルを示す。分類金属膜は、550nm付近で局所的透過率最大値を呈する。シート抵抗測定は、550nm波長における類似の透過率では、溶液Cからの純度の高い金属SWNT(>95%金属、空白の4角形)が、非分類P2 SWNT(塗りつぶした3角形)に比べて約4分の1に減少したシート抵抗を呈したことを示す(図3B)。純度の低い溶液Dから生成された膜(>88%金属、空白の円形)では、シート抵抗は約2.5分の1に減少した。
【0050】
本教示をさらに実証するために、HiPco(直径〜0.7〜1.3nm;Carbon Nanotechnologies Inc.,TX)、レーザーアブレーション(LA;直径〜1.1〜1.4nm;Carbon Nanotechnologies Inc.,TX)、および電気アーク放電(AD;直径〜1.3〜1.7nm;Carbon Solutions Inc.,CA)によって生成されたSWNTの追加試料を分類し、本教示に従う分類画分から透明導電膜を調製した。これらの出発材料毎に、界面活性剤に分散したSWNTを濃縮させて、次いで、3:2のSDS/SC比率で混合した界面活性剤コール酸ナトリウム(SC)および硫酸ドデシルナトリウム(SDS)が装填された密度勾配において超遠心分離した。分離後、高度に精製された金属SWNTであって、比較的低い浮遊密度を有するSWNTは、直径が約0.7nmから約1.7nmの範囲であるSWNTに対応する密度勾配の上部付近の複数の着色帯に集中した(図4A〜図4C)。界面活性成分およびその相対比率の選択に加え、部分的には、勾配内の界面活性剤の装填全体の変動によって、大直径範囲(約0.7nmから約1.7nm)の高分解能分類が達成された。分離の形態(金属または半導体)は、界面活性剤の装填の変化に主に感受性を有するが、本パラメータの修正は、SWNTの周囲の界面活性剤のシェルの厚さに影響を及ぼし得る。SWNTの浮遊密度がこの界面活性剤のシェルによって強く影響を受け得るため、界面活性剤装填を制御することによって特定の直径範囲におけるSWNTの浮遊密度に関するより大きな差分を操作し、次いで、DGUにより提供される直径精製を改善することが可能である。界面活性剤レベルに依存せず、3:2のSDS/SC環境における金属SWNTの浮遊密度は、その直径と反比例し、最大直径のSWNTは勾配の上部で帯になり、直径が小さい材料では、徐々に低い領域に集中する。
【0051】
HiPco SWNTの分離のために、界面活性剤の装填を約1.5%(w/v)に設定して、約1.0nmを中心とする直径を有する金属ナノチューブを単離した(図4A)。この勾配から除去された帯(帯402(黄色)、404(緑色)、406(青色)、408(紫色)、および410(マゼンダ))の光吸収度スペクトルは、直径および電子タイプによる分類に関して明白な証拠を提供する(図5A)。出発HiPco材料(曲線 512)と比較すると、分類金属SWNT(曲線502、504、506、508、510)は、半導体SWNTに関連する600nmを上回る遷移の強力な抑制(例えば、S11およびS22遷移)と、金属SWNTに起因する400nmから700nmの遷移の強化(M11遷移)とを示す。さらに、直径が約0.7nmから約1.3nmの範囲である金属SWNTの単離は、約450nmから約680nmのその1次光学遷移における移行によって証明される。
【0052】
それぞれ約1.25%および約1.0%の界面活性剤装填におけるレーザーアブレーション成長SWNTおよびアーク放電生成SWNTのDGUによって、それぞれ約1.2nmおよび約1.5nmの直径について最適化された金属分類がもたらされる。図4Bを参照すると、明確な着色帯(帯422(シアン)、424(透明)、426(シアン)、428(シアン)、および430(マゼンダ))が、レーザーアブレーション成長SWNTの遠心分離後に認められた。図4Cを参照すると、アーク放電生成SWNTでは、明確な着色帯(帯422(緑色)、444(茶色)、446(緑色)、および448(茶色))が認められた。HiPco材料と同様に、電子タイプおよび直径による分離は、近赤外における半導体光学遷移と、約550nmから約810nmの間の1次金属遷移の移行とによって証明される。レーザーアブレーション生成SWNTは、電子タイプおよび直径による特に精製された分類を提供する。密度勾配(図4B)の上部領域(帯422)は、98%を上回る金属SWNT含有物を含む材料を産生する(図5B)。アーク放電材料では、金属SWNTの1次光学遷移(M11)のいくつかが、その大直径に起因して近赤外において出現する(図5C)。加えて、約1.5nmから約1.7nmの直径材料の2次(M22)は、425nm付近の可視において出現する。アーク放電SWNTの光吸収度スペクトルの分析により、初めに密度勾配に挿入される金属SWNTの〜7.8%が、約86%を上回る金属純度を有する画分に再生することが示される。
【0053】
光学的特徴化の後、単分散金属SWNT溶液を、真空ろ過によって薄膜に組み込み、ガラス、石英、およびポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明基板に移した。ろ過中、SWNTをカプセル化する界面活性剤を、多量の水で洗浄することによって除去した。界面活性剤の除去によって、SWNTは、強力な内部ナノチューブのファンデルワールス相互作用によって凝集して束になることが可能である。透明導電性SWNT膜の吸光度とSWNT分散の吸光度との比較によって、膜において高度に束状である場合の金属SWNTおよび半導体SWNTの光学的挙動の間に大幅な差異が示される(図6)。透明導電性SWNT膜では、半導体種の1次および2次遷移(曲線606を曲線608と比較する)は、約40meVおよび30meVのそれぞれによって赤方偏移され、また、大幅に広げられる。対照的に、優勢金属SWNTに関連する遷移(曲線602を曲線604と比較する)は、〜10meVの青方偏移を受け、比較的限定されたピーク広がりを呈する。金属SWNTの束状化に対する感受性の低下が、界面活性剤によりカプセル化された束の溶液において認められた。任意の特定の理論によって拘束されたくはないが、この効果は、外部誘電環境の変化に対するその感受性を低減し得る金属SWNTの電荷遮断能力の増加に起因し得ると考えられる。膜形成後にその光吸収度特徴を保持する金属SWNTの能力は、分類材料から生成された膜が明確な色を有することを確実にするため、透明導電性塗膜に有益であり得る。
【0054】
再び図1Bを参照すると、溶液Aおよび溶液Bの各々が分類金属ナノチューブを含むが、溶液Aの650nm付近の透過率最小値(約553nmにおける)が、溶液Bの最小値(約605nmにおける)よりも若干移行することが分かる。これらの最小値は、可視スペクトルにおいて発生するため、溶液Aから調製されて得られた膜は、溶液Bから調製された膜とは異なる色を有すると予測することが可能である。したがって、本教示のある局面は、透明であり(または薄い色によって部分的に透明もしくは半透明である)、かつ可視色を有する透明導電体に関する。より具体的には、直径と、次に光吸収度とに従って分類された金属カーボンナノチューブを用いることによって、スペクトルの可視部分において色同調性特性を有する導電性膜を調製することが可能である。この固有の特徴は、透明導電体の調製に使用する現在既知の任意の材料には存在しないと考えられている。
【0055】
この能力を例示するために、優勢直径が約0.9nmから約1.6nmの範囲である一連の金属SWNT膜の透過率スペクトルを測定した(図7Aおよび図7B)。これらの膜では、1次遷移は、約509nmから約778nmに変動し、吸収ピークの両側における波長において高透過率窓をもたらす。具体的には、約1.4nmから約1.6nmの直径の金属SWNTが、汎用透明導電に最適なキラリティであると考えられる。可視におけるその透過率は、550nm付近でピークとなり、その波長域において、ヒトの目は最も感受性を有し、太陽放射は最も強烈である。金属ナノチューブの束状化に対する感受性を考慮すると、複数の単分散金属SWNT試料を結合して、高透過率の小領域を確立し、かつ残りのスペクトルに吸収性SWNTキラリティで効果的に充填して、膜導電性を最大化することが可能である。図7Aおよび図7Bに示すように、透明導電体の色を規定する高透過率領域は、膜に導入される金属SWNT直径の制御によって、大部分の可視スペクトルから近赤外に調節可能である。したがって、最適化膜の高透過率領域を用いて、フラットパネルディスプレイ、発光ダイオード、および太陽電池等の機器の効率を高めることが可能である。反対に、膜の急激にピークを迎える低透過率領域を使用して、機器の性能を損なう光学スペクトルの不要な部分をろ過して除去することが可能である。
【0056】
膜の光学的特性および透過率同調性における改善に加え、非分類SWNTから形成される類似の透過性の材料に比べ、金属SWNTを富化する材料から生成された膜の導電性において強化が認められた。有効な比較を確実にするために、分類および非分類の両方のHiPco SWNTを同一の超音波処理バッチで加工し、ろ過するまで数日間、全てのSWNT分散を1%SDS水溶液に透析した。透析前に、288,000gで32分間超遠心分離によって、SWNTの大きな凝集体を非分類材料から除去した。SWNTを同一超音波処理条件下に置くことによって、SWNT浮遊密度がナノチューブの長さに鈍感であり、かつ超音波処理が、ナノチューブを切断することによってナノチューブを短くすることで知られているため、分類および非分類の両方のナノチューブが同一長さ分布を有することを確実にすることが可能である。非分類材料の遠心分離ならびに両SWNT種類の透析は、分類および非分類ナノチューブが、膜形成前に同一の界面活性剤環境にあることを確実にし、この環境は、膜内部の束状化の度合いに影響を及ぼし得る。加工完了後、3つの組の膜が生成され、1つは非分類SWNTから成り、2つは単分散金属SWNTを含み、それぞれの優勢直径はそれぞれ約0.9nmおよび約1.0nmであった。
【0057】
透明導電性SWNT膜は、可視および赤外における光学的波長よりも大幅に短い約100nm未満の厚さを有するため、これらの膜のシート抵抗Rsは、以下の数式により、所与の波長おけるその透過率に関連することが可能である。
【0058】
T=(1+1/(2Rs)*(μ0/ε0)1/2*σop/σdc)^(−2)
式中、σopは、波長の関数として変動する光学導電度であり、σdcは、直流導電度であり、μ0およびε0は、それぞれ自由空間の浸透性および誘電率である。数式1を使用して、HiPco SWNTから生成された透明導電膜の測定透過率データを、図8に示すように適合した。金属SWNTを富化する膜は、非分類材料に比べてシート抵抗の明らかな低下を示した。改善は、適合から得られたσop/σdc比率を抽出することによって定量化可能である。所与のSWNT材料から生成された一連の膜では、この比率は、膜の透過率とシート抵抗との関係を特定する。数式1においてσop/σdcをシート抵抗で乗算するため、所与の透過率レベルにおける非分類および分類SWNT材料のシート抵抗の低下は、対応する一連の膜のσop/σdcを比較することによって計算可能である。
【0059】
非分類HiPco SWNT膜では、約400nmから約700nmの可視波長におけるσop/σdcの平均は1.1であり、文献で過去に報告された結果に一致している。反対に、可視において金属SWNT膜のσop/σdcは0.19であるため、5.6を上回る導電性強化が示される。したがって、非分類HiPco SWNTの膜は、同一の透過率の分類金属HiPco SWNTの膜の〜231Ω/平方のシート抵抗に比べて、可視における75%透過率において〜1340Ω/平方のシート抵抗を呈した。800nmから2200nmの赤外では、導電性改善は、1.0nm直径の金属SWNTでは10を上回り、0.9nmのナノチューブでは8.6を上回る。任意の特定の理論によって拘束されたくはないが、0.9nm直径のSWNTの導電性の強化が小さいのは、赤外において膜透過率を減少させる半導体SWNT含有物の増加に起因し得る。
【0060】
DGUにより生成された単分散直径の金属SWNTであって、その電気的特性および光学的特性が強化されたSWNTは、所望の性能レベルを達成するために選択および組み合わせ可能である透明導電体材料のライブラリを効果的に形成する。本概念を例示するために、数式1は、紫外線から赤外までの波長において種々の金属SWNT直径から得られた透明導電体データに適用された。得られたシート抵抗/透過率/波長のマップは、金属SWNT透明導電体の特性を簡潔に説明する(図9)。波長のある範囲において特定の透過率レベルを必要とする用途では、可能な膜のシート抵抗をこれらのマップから迅速に得ることが可能であるため、最適な金属SWNT直径の選択が容易になる。
【0061】
また、図9におけるマップは、可視および近赤外において70%を上回る透明性における下位140Ω/平方シート抵抗であって、多くの用途に十分であるシート抵抗を分類SWNTが生成可能であることも実証する。しかしながら、これらのマップは、透明導電体性能全体が出発SWNT材料に関連可能であることも示す。分類および非分類の両方のナノチューブでは、レーザーアブレーション成長SWNTは、最良の性能を提供すると考えられ、その後にアーク放電材料が続き、最後はHiPco SWNTである。透明導電体性能におけるこのような差異によって、SWNT薄膜の導電性が、単に金属SWNTの割合だけでなく、SWNT長さおよびナノチューブ間の接触等の多種多様の異なる要因によって特定可能であることが強調される。その導電性を改善するためにSWNTのドープにかなりの努力が費やされてきたが、このようなドーピングスキームは、概して、ドープ状SWNTの熱安定性および化学安定性の結果として短命である。対照的に、本教示に従う本質的に導電性の金属SWNTから形成される透明導電体は、本来のカーボンナノチューブの優れた機械的特性、熱的特性、および化学的特性を永久に保持することが可能である。
【0062】
個々にカプセル化されたSWNTの分類における密度勾配超遠心分離(DGU)の有効性について前述の説明において強調したが、本教示のDGU工程の追加の便益は、ファンデルワールス相互作用によりまとめて結合されたナノチューブの集合が、密度によっても単離可能であることにある。より具体的には、本教示のさらなる局面では、溶液中に分散し、かつその浮遊密度に従って選択されるSWNTの束を用いて、透明導電性ナノチューブ膜の性能を強化することが可能である。
【0063】
例示するために、直径が約1.1nmから約1.6nmであるレーザーアブレーション成長LA SWNT(Carbon Nanotechnologies,Inc.)を、界面活性剤装填が2%w/vであり、かつ重量比が3:2のSDS/SCの密度勾配において分類した。分類後、浮遊密度が約1.14〜1.16g/mLのSWNTの束を遠心分離管から抽出した。
【0064】
光吸収度測定(分類−曲線902、非分類−曲線904)によって、これらのSWNTが、非分類材料の半導体ナノチューブ対金属ナノチューブの約2:1の比率を維持したことが示された(図10A)。具体的には、斜線波長範囲910は、金属SWNTからの吸収に対応するが、非斜線範囲は、半導体SWNT遷移に関連する。スペクトルによって、SWNTの分類束が、非分類材料とほぼ同一の比率の半導体SWNT対金属SWNTを有することが示される。DGUにより加工された材料について、スペクトルの背景雑音においてある低下が認められ、この低下は、炭素質不純物の除去によると考えられる。
【0065】
分類束状材料(空白の4角形)から得られた膜のシート抵抗および透過率測定によって、非分類出発材料(塗りつぶした3角形)における同等の透過率において、導電性が約2倍増加することが示された(図10B)。この改善は、金属SWNTに比例する増加に起因し得ないため、任意の特定の理論によって拘束されたくはないが、導電のいかなる改善も、膜におけるより効果的なナノチューブ間接触に起因すると考えられる。また、このような分類束を含有する溶液を使用して、着色透明導電膜を調製することも可能である。任意の特定の理論によって拘束されたくはないが、可視色は、DGU中に吸収性不純物を除去することにより生成されたと考えられる。
【0066】
本教示のさらなる局面によると、個々にカプセル化されたSWNTを、希釈により再束状化することが可能であり、その後、電気的特性が改善した透明導電体を提供するために使用することが可能である。例示するために、全界面活性剤装填が2%w/vであり、かつ比率が1:2のSDS/SCである分類金属SWNTを含有する水溶液を、20倍に希釈してTriton X−100の1wt%水溶液にした。Triton X−100は、非イオン性界面活性剤である(イオン性SDSおよびSC薬剤に比べて)ため、分散SWNTの凝集を防止するために、電荷反発に依存することが不可能である。したがって、任意の特定の理論によって拘束されたくはないが、希釈SWNT溶液中のTriton X−100の経時的優勢によって、非イオン薬剤がSWNT側壁においてイオン性界面活性剤を置換することが可能になり、透明導電に最適化された形状のSWNT束の形成を誘起することが可能になることが考えられる。
【0067】
同一体積の一連の分類金属SWNT溶液を上述のように希釈して、所与の時間、室温で進化するように放置した。割り当て時間の経過後、溶液を使用して透明導電膜を作製し、その後、その透過率およびシート抵抗を測定した。異なる希釈時間のこれらの膜の可視スペクトルにおけるシート抵抗および平均透過率について以下の表Iに提示する。
【0068】
【表1】
表Iに示すように、再束状化工程によって、経時的な膜導電性の単調増加、つまり、膜透過率の小変動だけでは説明不可能な増加がもたらされた。上に提示されたデータは、界面活性剤および溶媒の特定の組み合わせで得られたが、任意の特定の理論によって拘束されたくはないが、希釈による再束化は、界面活性剤の多数の他の組み合わせで作用可能であり、異なる溶媒に希釈しても作用可能であると考えられる。このように希釈を使用する再束状化スキームは、当業者に容易に明らかになるはずである。
【0069】
以下の実施例は、さらなる例示および本教示の理解の促進のために提供され、本発明を限定するように決して意図されない。
【0070】
(実施例1:SWNT分散工程)
通常の実験では、SWNT粉末を1〜2%w/vコール酸ナトリウム水溶液と混合して、SWNTの1〜2mg/mL装填を確実にした。次いで、混合液をFisher Scientific Model 500 Sonic Dismembratorを使用して超音波処理した。大量の溶液(例えば、約150mL)では、超音波処理を最大出力の40%(400W)で1時間実行した。少量の溶液(例えば、約30mL未満)では、超音波処理器のマイクロチップ拡張を用い、超音波処理は、最大出力の20%まで低下して1時間実行した。ナノチューブ溶液のバイアルまたはビーカーを、過熱防止のために、超音波処理中、氷浴において冷却した。例えば、HiPco SWNT分散を、ステンレス製ビーカー内において145mgの未加工HiPco SWNT粉末を140 mLの1%コール酸ナトリウム水溶液に添加することによって調製した。混合液は、直径プローブが13mmの Fisher Scientific Model 500 Sonic Dismembratorを使用して160Wで1時間ホーン超音波処理を受けた。他の源(例えば、レーザーアブレーション(LA)SWNTおよび電気アーク放電(AD)SWNT)からの合成したままのSWNTの分散を、120mLの体積で40分間、160Wの出力で類似の超音波処理条件下で調製した。
【0071】
超音波処理の後、遠心分離によって大きいSWNT束および不純物を懸濁液から除去した。溶液を〜12mLのSW41Ti遠心分離管に移し、Optima L−90K超遠心分離機(Beckman Coulter)を使用して、SW41 Tiロータ(Beckman Coulter)において32分間41krpmで遠心分離した。最後に、Piston Gradient Fractionatorシステム(Biocomp Instruments,Inc.,Canada)を使用して、遠心分離管毎の溶液の上部7cmを慎重に回収した。
【0072】
(実施例2:SWNT溶液濃縮工程)
密度勾配において分類する前に、SWNT溶液を、任意によりSW41Ti遠心分離管内において2層から成るステップ勾配において濃縮した。下層は、濃縮されるナノチューブ溶液と同一の界面活性剤装填の2〜4mLの60%イオジキサノールであった。上層は、全体が、通常はイオジキサノール含有量がゼロであるSWNT溶液から成った。次いで、41krpmで12〜15時間遠心分離することによって、Optima L−90K 超遠心分離機(Beckman Coulter)を使用してSW41 Tiロータ(Beckman Coulter)において溶液を濃縮した。遠心分離後、濃縮されたSWNT溶液を、Piston Gradient Fractionatorシステム(Biocomp Instruments,Inc.,Canada)を使用して回収した。
【0073】
(実施例3:密度勾配超遠心分離による分類)
密度勾配を用いて直径、電子タイプによりSWNTを分類し、束形状は、共通の構造を有した。まず、SW41 Ti遠心分離管を、60%イオジキサノール含有量を含む1.5mL下層で整えた。次に、形成された5mL線形勾配を、SG15線形勾配形成器(Hoefer Inc.)を使用して下層の上に形成した。次いで、所望の体積の0.880mLの体積のSWNT溶液を、注射器ポンプ(Harvard Apparatus Model 11)を使用して、線形勾配に直接融合した。SWNT融合の後、0%イオジキサノール含有物を含む上層を、線形勾配の上部に添加した。表IIおよび表IIIは、密度勾配における層毎の界面活性剤レベルおよびイオジキサノール含有物について詳述する。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
次いで、Optima L−90K 超遠心分離機(Beckman Coulter)を使用して、SW41 Tiロータ(Beckman Coulter)において、41krpmで12時間密度勾配を遠心分離した。次いで、Piston Gradient Fractionatorシステム(Biocomp Instruments,Inc.,Canada)を使用して、分類ナノチューブ材料を、0.5〜1.0mm画分で遠心分離管から除去した。
【0076】
(実施例4:膜形成およびガラスへの移し替え)
真空ろ過を使用してナノチューブ溶液を膜に加工し、Rinzlerらにより開発された方法に従ってガラス基板および石英基板に移し替えた。その各々が参考として本明細書に援用される米国特許出願公開第2004/0197546号およびZ.Wuら(2004),Science 305:1273−1276を参照されたい。簡潔に言うと、ナノチューブ溶液を、50nm孔サイズの混合セルロースエステル(MCE)膜(Millipore)を通してろ過し、10〜20分間に設定した。その後、15〜25mLの脱イオン水を使用して、膜における任意の残留界面活性剤を洗い流した。
【0077】
膜の移し替え前に、ガラス基板または石英基板を、アセトン、イソプロピルアルコール、および脱イオン水において連続して洗浄することによって浄化し、窒素流で乾燥した。次に、SWNT膜を含むMCE膜をイソプロピルアルコール中に約5秒間浸漬した。場合により、浸漬前に膜を〜6x10mmの断片に切断した。次いで、ナノチューブ側を下にして膜を基板上に配置し、基板に堅く押圧するとともに、定性濾紙で乾燥した。次いで、基板/MCE/SWNT膜組立体を、アセトン浴から繰り返し挿入および除去した。基板への強力なSWNT膜付着が確認されると、連続溶媒浴(3つのアセトンおよび1つのメタノール)において、各々について少なくとも15分間MCEを溶解した。膜の溶解後、アセトン、イソプロピルアルコール、および脱イオン水で洗浄することによって基板を浄化し、次いで窒素中で乾燥した。
【0078】
(実施例5:SWNT膜および溶液特徴化)
対象の膜/溶液と参照基板/溶液の両方に照明光源が向けられる2つのビーム形態で動作するCary 500分光光度計(Varian,Inc.)を使用して、光学的特徴化を実行した。参照試料の吸収を対象試料の吸収から減算し、試料の光学的特性のみを測定するようにした。また、基準値補正を適用して、2つのビームの光路差を説明した。膜透過率測定では、1〜5mm直径の円形開口部を用いて、特徴化のために試料の所望の範囲を単離した。開口部のサイズに応じた1.00〜1.66秒の積分時間を使用して、1nmの分解能で250nmから3300nmにおいて、通常の走査を実行した。1.00〜1.33秒の積分時間を使用して、1nmの分解能で400nmから1340nmにおいてSWNT溶液を通常通り測定した。SWNT溶液と類似のレベルの水、イオジキサノール、および界面活性剤を含有する参照試料を背景減算に用いた。ファンデルポー4点プローブ方法(Biorad Hall System HL5500)を使用して、またはインライン4点プローブを使用して、膜に直接接触することによってシート抵抗測定を実行した。
【0079】
(実施例6:金属SWNT直径特定)
その光吸収度を共鳴ラマン分光法(RRS)から得た遷移エネルギーに相関させることによって、分類金属SWNTの直径を特定した。文献で報告されたRRSデータに線形適合を適用することによって、分類金属SWNTの直径を〜0.1nm内に計算し得る。
【0080】
(実施例7:金属SWNT純度の評価)
分類金属SWNTの純度レベルを光吸収度スペクトルによって推定した。使用する方法は、以下の3つの前提に依存する:生成されたままの材料が、金属キラリティ対半導体キラリティの比率が1:2のSWNTを含有することと、所与の遷移のSWNTの吸収強度が、その電子タイプのみに依存し、直径、長さ、および束状化等の他の要因は無視できることと、ならびに炭素質不純物に関連する吸光度背景は、エネルギーによって線形変化することである。手順の第1のステップにおいて、非分類および分類材料の試料におけるエネルギー領域であって、金属SWNTまたは半導体SWNTのいずれかの光学遷移にほぼ排他的に関連するエネルギー領域が規定された。適切なエネルギー範囲を発見した後、吸収度のみをSWNTに関連させる遷移組毎に線形背景吸光度を除去することが可能である。次いで、背景補正スペクトルを使用して、各遷移に関連する吸光度におけるエネルギーに対して積分することによって、金属純度を推定することが可能である。純度は、分類材料における金属遷移および半導体遷移下の範囲の比率を、非分類材料の同比率と比較することによって評価され、金属種対半導体種が1:2の混合を有することを前提とする。金属純度についてより保守的な推定値を求めるためには、背景補正遷移の各々に関連する最大吸光度を代わりに使用して、純度を評価することが可能である(すなわち、非分類および分類の両方の材料に存在する直径分布がSWNT電子タイプに依存しないことをさらに前提とする)。
【0081】
(実施例8:金属SWNT産出の推定)
DGUから得られた金属SWNTの産出を、分類工程の各ステップで使用する材料の光吸収度を分類することによって推定した。金属SWNT純度推定の章において記述した前提に従って、溶液体積で乗算される1次金属遷移下の範囲は、分散における金属SWNTの質量に比例すると解釈された。
【0082】
本教示は、本教示の精神または本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形式における実施形態も包含する。ゆえに、上述の実施形態は、本明細書に説明する本教示を限定するのではなく、あらゆる点において例示的であると解釈されるべきである。したがって、本発明の範囲は、上述の説明ではなく添付の請求項によって示され、請求項の均等物の意味および範囲内で生じるあらゆる変更は、本明細書に含有されるものと意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視スペクトルにおいて約75%を上回る平均透過率と、
約1.0x103Ω/平方未満のシート抵抗と、
可視色と
を含む着色透明導電膜であって、
該膜は、単層カーボンナノチューブを含む、着色透明導電膜。
【請求項2】
前記膜は、本質的に金属単層カーボンナノチューブから成る、請求項1に記載の着色透明導電膜。
【請求項3】
前記金属単層カーボンナノチューブは、前記可視スペクトル内の波長を特異的に吸収して、前記着色透明導電膜の該可視色を提供する、請求項2に記載の着色透明導電膜。
【請求項4】
前記単層カーボンナノチューブは、約±0.1nm以下の直径変動を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の着色透明導電膜。
【請求項5】
前記単層カーボンナノチューブは、約0.9nm、約1.0nm、約1.1nm、約1.3nm、約1.4nm、および約1.6nmから選択される平均直径を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の着色透明導電膜。
【請求項6】
前記可視色は、シアン、マゼンダ、黄色、紫色、および緑色から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の着色透明導電膜。
【請求項7】
前記単層カーボンナノチューブは、レーザーアブレーション、アーク放電、または高圧一酸化炭素変成によって生成される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の着色透明導電膜。
【請求項8】
前記膜は、約600Ω/平方未満のシート抵抗を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の着色透明導電膜。
【請求項9】
前記膜は、550nmにおいて約80%を上回る透過率を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の着色透明導電膜。
【請求項10】
前記膜は、約100nm未満の厚さを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の着色透明導電膜。
【請求項11】
事前選択された可視色を有する透明導電膜を調製する方法であって、該方法は、
半導体単層カーボンナノチューブおよび金属単層カーボンナノチューブの混合物から分離画分を単離することであって、該分離画分は、分離された単層カーボンナノチューブを含み、該分離画分における約50%を上回る該分離された単層カーボンナノチューブは金属であり、該分離された単層カーボンナノチューブは、約±1.0nm以下の直径変動を有する、ことと、
該分離画分を事前選択された可視色を有する透明導電膜に加工することと
を含む、方法。
【請求項12】
事前選択された体積を含む1つ以上の分離画分を加工することを含み、該1つ以上の分離画分全体は、事前選択された量の分離された単層カーボンナノチューブを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
濃縮された分離画分を提供するために、前記1つ以上の分離画分を濃縮することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記分離画分または前記濃縮された分離画分は、真空ろ過によって透明導電膜に加工される、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記混合物における前記単層カーボンナノチューブは、約1.0nmから約1.2nmの範囲の直径寸法を有する、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物における前記単層カーボンナノチューブは、約1.2nmから約1.7nmの範囲の直径寸法を有する、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記分離画分における約80%を上回る前記分解された単層カーボンナノチューブは、金属である、請求項11〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記透明導電膜は、可視スペクトルにおいて約80%を上回る平均透過率と、約1.0x103Ω/平方未満のシート抵抗とを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記透明導電膜は、近赤外スペクトルにおいて約90%を上回る平均透過率と、約1.0x103Ω/平方未満のシート抵抗とを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記透明導電膜は、550nmの波長において約80%を上回る平均透過率と、約600Ω/平方未満のシート抵抗とを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
複数の束の単層カーボンナノチューブを含む透明導電膜を調製する方法であって、該方法は、
密度勾配を含む流体媒体と、1つ以上の界面活性成分および複数の束の単層カーボンナノチューブを含む組成物とを遠心分離することであって、該密度勾配に沿って2つ以上の分離画分を提供して、該分離画分の各々は、固有の浮遊密度を有し、複数の束の単層カーボンナノチューブを含む、ことと、
単離された分離画分を提供するために、該分離画分のうちの少なくとも1つを該流体媒体から単離することと、
該単離された分離画分を透明導電膜に加工することと
を含む、方法。
【請求項22】
前記単離された分離画分は、真空ろ過によって透明導電膜に加工される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物における前記単層カーボンナノチューブの束は、約1.1nmから約1.6nmの範囲の直径寸法を有する単層カーボンナノチューブを含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記透明導電膜は、可視スペクトルにおいて約70%を上回る平均透過率と、約180Ω/平方未満のシート抵抗とを有する、請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
単層カーボンナノチューブを含む透明導電膜を調製する方法であって、該方法は、
希釈された組成物を提供するために、1つ以上のイオン性界面活性成分を含む第1の組成物と、非イオン性界面活性成分を含む第2の組成物において分離された単層カーボンナノチューブとを希釈することであって、約50%を上回る該分離された単層カーボンナノチューブは金属である、ことと、
該希釈された組成物における該分離された単層カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブの束を形成することを可能にすることと、
該希釈された組成物を透明導電膜に加工することと
を含む、方法。
【請求項26】
前記希釈された組成物は、真空ろ過によって透明導電膜に加工される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記分離された単層カーボンナノチューブは、約1.0nmから約1.2nmの範囲の直径寸法を有する、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記透明導電膜は、可視スペクトルにおいて約80%を上回る平均透過率と、約1.0x103Ω/平方未満のシート抵抗とを有する、請求項25〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
約1.0nmから約1.2nmの範囲の直径寸法を有する単層カーボンナノチューブを備える透明導電膜であって、該透明導電膜は、可視スペクトルにおいて約85%を上回る平均透過率と、約1.0x103Ω/平方未満のシート抵抗とを有する、透明導電膜。
【請求項30】
分離された単層カーボンナノチューブを含む、請求項29に記載の透明導電膜。
【請求項31】
前記分離された単層カーボンナノチューブのうちの約50%を上回るものは、金属である、請求項30に記載の透明導電膜。
【請求項32】
単層カーボンナノチューブの束を含む、請求項29に記載の透明導電膜。
【請求項33】
約1.0nmから約1.2nmの範囲の直径寸法を有する単層カーボンナノチューブを含む透明導電膜であって、近赤外スペクトルにおいて約90%を上回る平均透過率と、約1.0x103Ω/平方未満のシート抵抗とを有する、透明導電膜。
【請求項34】
分離された単層カーボンナノチューブを含む、請求項33に記載の透明導電膜。
【請求項35】
前記分離された単層カーボンナノチューブのうちの約50%を上回るものは、金属である、請求項34に記載の透明導電膜。
【請求項36】
単層カーボンナノチューブの束を含む、請求項33に記載の透明導電膜。
【請求項1】
可視スペクトルにおいて約75%を上回る平均透過率と、
約1.0x103Ω/平方未満のシート抵抗と、
可視色と
を含む着色透明導電膜であって、
該膜は、単層カーボンナノチューブを含む、着色透明導電膜。
【請求項2】
前記膜は、本質的に金属単層カーボンナノチューブから成る、請求項1に記載の着色透明導電膜。
【請求項3】
前記金属単層カーボンナノチューブは、前記可視スペクトル内の波長を特異的に吸収して、前記着色透明導電膜の該可視色を提供する、請求項2に記載の着色透明導電膜。
【請求項4】
前記単層カーボンナノチューブは、約±0.1nm以下の直径変動を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の着色透明導電膜。
【請求項5】
前記単層カーボンナノチューブは、約0.9nm、約1.0nm、約1.1nm、約1.3nm、約1.4nm、および約1.6nmから選択される平均直径を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の着色透明導電膜。
【請求項6】
前記可視色は、シアン、マゼンダ、黄色、紫色、および緑色から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の着色透明導電膜。
【請求項7】
前記単層カーボンナノチューブは、レーザーアブレーション、アーク放電、または高圧一酸化炭素変成によって生成される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の着色透明導電膜。
【請求項8】
前記膜は、約600Ω/平方未満のシート抵抗を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の着色透明導電膜。
【請求項9】
前記膜は、550nmにおいて約80%を上回る透過率を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の着色透明導電膜。
【請求項10】
前記膜は、約100nm未満の厚さを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の着色透明導電膜。
【請求項11】
事前選択された可視色を有する透明導電膜を調製する方法であって、該方法は、
半導体単層カーボンナノチューブおよび金属単層カーボンナノチューブの混合物から分離画分を単離することであって、該分離画分は、分離された単層カーボンナノチューブを含み、該分離画分における約50%を上回る該分離された単層カーボンナノチューブは金属であり、該分離された単層カーボンナノチューブは、約±1.0nm以下の直径変動を有する、ことと、
該分離画分を事前選択された可視色を有する透明導電膜に加工することと
を含む、方法。
【請求項12】
事前選択された体積を含む1つ以上の分離画分を加工することを含み、該1つ以上の分離画分全体は、事前選択された量の分離された単層カーボンナノチューブを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
濃縮された分離画分を提供するために、前記1つ以上の分離画分を濃縮することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記分離画分または前記濃縮された分離画分は、真空ろ過によって透明導電膜に加工される、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記混合物における前記単層カーボンナノチューブは、約1.0nmから約1.2nmの範囲の直径寸法を有する、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物における前記単層カーボンナノチューブは、約1.2nmから約1.7nmの範囲の直径寸法を有する、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記分離画分における約80%を上回る前記分解された単層カーボンナノチューブは、金属である、請求項11〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記透明導電膜は、可視スペクトルにおいて約80%を上回る平均透過率と、約1.0x103Ω/平方未満のシート抵抗とを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記透明導電膜は、近赤外スペクトルにおいて約90%を上回る平均透過率と、約1.0x103Ω/平方未満のシート抵抗とを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記透明導電膜は、550nmの波長において約80%を上回る平均透過率と、約600Ω/平方未満のシート抵抗とを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
複数の束の単層カーボンナノチューブを含む透明導電膜を調製する方法であって、該方法は、
密度勾配を含む流体媒体と、1つ以上の界面活性成分および複数の束の単層カーボンナノチューブを含む組成物とを遠心分離することであって、該密度勾配に沿って2つ以上の分離画分を提供して、該分離画分の各々は、固有の浮遊密度を有し、複数の束の単層カーボンナノチューブを含む、ことと、
単離された分離画分を提供するために、該分離画分のうちの少なくとも1つを該流体媒体から単離することと、
該単離された分離画分を透明導電膜に加工することと
を含む、方法。
【請求項22】
前記単離された分離画分は、真空ろ過によって透明導電膜に加工される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物における前記単層カーボンナノチューブの束は、約1.1nmから約1.6nmの範囲の直径寸法を有する単層カーボンナノチューブを含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記透明導電膜は、可視スペクトルにおいて約70%を上回る平均透過率と、約180Ω/平方未満のシート抵抗とを有する、請求項21〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
単層カーボンナノチューブを含む透明導電膜を調製する方法であって、該方法は、
希釈された組成物を提供するために、1つ以上のイオン性界面活性成分を含む第1の組成物と、非イオン性界面活性成分を含む第2の組成物において分離された単層カーボンナノチューブとを希釈することであって、約50%を上回る該分離された単層カーボンナノチューブは金属である、ことと、
該希釈された組成物における該分離された単層カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブの束を形成することを可能にすることと、
該希釈された組成物を透明導電膜に加工することと
を含む、方法。
【請求項26】
前記希釈された組成物は、真空ろ過によって透明導電膜に加工される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記分離された単層カーボンナノチューブは、約1.0nmから約1.2nmの範囲の直径寸法を有する、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記透明導電膜は、可視スペクトルにおいて約80%を上回る平均透過率と、約1.0x103Ω/平方未満のシート抵抗とを有する、請求項25〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
約1.0nmから約1.2nmの範囲の直径寸法を有する単層カーボンナノチューブを備える透明導電膜であって、該透明導電膜は、可視スペクトルにおいて約85%を上回る平均透過率と、約1.0x103Ω/平方未満のシート抵抗とを有する、透明導電膜。
【請求項30】
分離された単層カーボンナノチューブを含む、請求項29に記載の透明導電膜。
【請求項31】
前記分離された単層カーボンナノチューブのうちの約50%を上回るものは、金属である、請求項30に記載の透明導電膜。
【請求項32】
単層カーボンナノチューブの束を含む、請求項29に記載の透明導電膜。
【請求項33】
約1.0nmから約1.2nmの範囲の直径寸法を有する単層カーボンナノチューブを含む透明導電膜であって、近赤外スペクトルにおいて約90%を上回る平均透過率と、約1.0x103Ω/平方未満のシート抵抗とを有する、透明導電膜。
【請求項34】
分離された単層カーボンナノチューブを含む、請求項33に記載の透明導電膜。
【請求項35】
前記分離された単層カーボンナノチューブのうちの約50%を上回るものは、金属である、請求項34に記載の透明導電膜。
【請求項36】
単層カーボンナノチューブの束を含む、請求項33に記載の透明導電膜。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−538422(P2010−538422A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522916(P2010−522916)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/010046
【国際公開番号】WO2009/032090
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(500041019)ノースウェスタン ユニバーシティ (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/010046
【国際公開番号】WO2009/032090
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(500041019)ノースウェスタン ユニバーシティ (24)
【Fターム(参考)】
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