説明

切り粉回収機構付き電動丸ノコ

【課題】廉価で効率良く切り粉を回収可能な切り粉回収機構を備えた電動丸ノコを提案すること。
【解決手段】電動丸ノコ1は、丸ノコ本体2と切り粉回収機構3とを有している。切り粉回収機構3は、鋸刃カバー25のカバー部分25bの前端部分25cに充填した紙粘土からなる封鎖部材4と、丸鋸刃24の右側面における前側部分を覆っているダストフード5を備えている。封鎖部材4は丸鋸刃24の刃先が通過可能な開口部を備えており、丸鋸刃24によって鋸刃カバーのカバー部分25bに巻き込まれる切り粉を掻き落とす。ダストフード5は丸鋸刃24の右側に切り粉が飛散することを阻止する。封鎖部材4およびダストフード5により、発生した切り粉が周囲に飛散することなく効率良くダストフード5の内側に溜まる。既存の電動丸ノコにも封鎖部材4およびダストフード5を取り付けて切り粉回収機能を持たせることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸鋸刃の切断部位から発生して周囲に飛散する切り粉を簡単な構成により効率良く回収可能な切り粉回収機能付き電動丸ノコに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動丸ノコを用いた切断作業で問題なのは、切断により発生する切り粉が周囲に飛散するので、粉塵対策が必要であるという点である。すなわち、発生する切り粉によって作業環境が悪化し、また、周囲に飛散した切り粉を回収する作業も必要になる。この弊害を解消するために、手持ち式の電動丸ノコに切り粉回収機構が取り付けられたものが、特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平6−190628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような切り粉回収機構付きの電動丸ノコは高価であり、普及していないのが現状である。
【0004】
本発明の課題は、効率良く切り粉を回収可能な廉価な機構を備えた電動丸ノコを提案することにある。
【0005】
また、本発明の課題は、既存の電動丸ノコに切り粉回収機能を付与するための切り粉回収用キットを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の電動丸ノコの切り粉回収方法では、電動丸ノコの丸鋸刃における上半外周部分を覆っている鋸刃カバーのU字状断面のカバー部分の前端部分に封鎖部材を取り付け、当該前端部分を、前記丸鋸刃の刃先部分のみが通過可能な状態で封鎖し、切断対象物の切断位置から前記丸鋸刃によって前記鋸刃カバーに巻き込まれる切り粉を、前記封鎖部材によって前記丸鋸刃から掻き落とすことにより、前記丸鋸刃によって前記鋸刃カバーに巻き込まれて当該鋸刃カバーの後端部分から後方に飛散する切り粉の発生を防止することを特徴としている。
【0007】
回転する丸鋸刃によって鋸刃カバーに巻き込まれる切り粉は、その前端部に取り付けられている封鎖部材によって掻き落とされる。よって、鋸刃カバーに巻き込まれてその後端部分から後方に飛散する切り粉の発生を確実に防止できる。
【0008】
ここで、本発明では、前記封鎖部材を、前記鋸カバーのカバー部分の前端部分に充填した保形性のある軟質素材としている。例えば、紙粘土を用いている。このような封鎖部材を用いれば、封鎖部材に丸鋸刃の刃先が当たっても問題はなく、また、丸鋸刃の刃先が通過する部分が開口した形状に保持される。したがって、丸鋸刃から切り粉を確実に掻き落とすことができる。
【0009】
次に、本発明では、前記丸鋸刃の右側面における前側寄りの部分を、ダストフードによって覆うことを特徴としている。電動丸ノコにおいては、丸鋸刃における開放状態となっている前側部分の右側方向に切り粉が多量に飛散する。したがって、この部分をダストフードで覆うことにより、切り粉の飛散を効果的に阻止することができる。
【0010】
また、本発明では、前記ダストフードの内側に回収された切り粉を、前記鋸刃カバーに取り付けた吸引ホースを介して吸引することを特徴としている。ダストフードの内側に回収された切り粉を既存の集塵機などを用いて効率良く吸引することができる。
【0011】
次に、本発明の切り粉回収機構付き電動丸ノコは、丸鋸刃と、この丸鋸刃の上半外周部分を覆っているコの字状断面のカバー部分を備えた鋸刃カバーと、前記丸鋸刃による切断深さを規制している枠状ベースと、前記鋸刃カバーの前記カバー部分の前端部分を、前記丸鋸刃のみが通過可能な状態に封鎖している封鎖部材と、前記丸鋸刃の右側面における前記枠状ベースより上の前側部分を覆っているダストフードとを有していることを特徴としている。
【0012】
本発明の切り粉回収機構付き電動丸ノコによれば、封鎖部材によって、鋸刃カバーに巻き込まれる切り粉を丸鋸刃から掻き落としてダストフードの内側に集めることができる。また、ダストフードによって、切断対象物の切断位置(丸鋸刃の前側部分)から周囲(主として右方向)に飛散する切り粉をダストフードの内側に留めることができる。したがって、切断時に発生する切り粉の殆どをダストフードの内側に回収することができ、作業環境の悪化を防止でき、また、飛散した切り粉を切断作業後に回収する手間も省くことができる。
【0013】
ここで、前記封鎖部材は、前記鋸カバーの前端部分に充填した保形性のある軟質素材であることが望ましい。例えば紙粘土を用いることができる。
【0014】
次に、前記ダストフードの内側に回収された切り粉を吸引して回収するための吸引ホースを有していることが望ましい。このように構成すると、吸引ホースにおいて後端側の端部を、例えば一般的な家庭用あるいは業務用のクリーナの吸引口に繋ぐことにより、ダストフード内の切り粉を、吸引ホースを介して、クリーナの側に強制吸引する切り粉回収システムを構築できる。
【0015】
本発明において、前記ダストフードは前記枠状ベースに対して磁力により着脱可能な状態で取り付けられていることが望ましい。このようにすると、ダストフードの着脱が簡単になる。
【0016】
一方、本発明は、丸鋸刃と、この丸鋸刃の上半外周部分を覆っているU字状断面のカバー部分を備えた鋸刃カバーと、前記丸鋸刃による切断深さを規制している枠状ベースとを備えた電動丸ノコに取り付けて用いる切り粉回収用キットであって、前記鋸刃カバーの前記カバー部分の前端部分に充填して、当該前端部分を前記丸鋸刃のみが通過可能な状態に封鎖するために用いる保形性のある軟質充填材と、前記丸鋸刃の右側面における前記枠状ベースより上の前側部分を覆うことができるように、前記枠状ベースに取り付け可能なダストフードとを有していることを特徴としている。
【0017】
本発明の切り粉回収用キットでは、鋸刃カバーの前記カバー部分の前端部分に保形性のある軟質充填材を充填して、当該前端部分を丸鋸刃のみが通過可能な封鎖状態にするとともに、枠状ベースにダストフードを取り付けて、丸鋸刃の右側面の前側部分を覆うことにより、切断対象物の切断位置(丸鋸刃の前側部分)から外周に飛散する全ての切り粉の発生を防止できるようになる。
【0018】
保形性のある軟質充填材を用いれば、それを鋸刃カバーの前記カバー部分の前端部分に詰め込むだけで、丸鋸刃から切り粉を掻き落とすのに適した形状にすることができる。したがって、本発明によれば、軟質充填剤を充填し、ダストフードを枠状ベースに取り付けるという簡単な作業によって、既存の電動丸ノコに切り粉回収機能を付与できる。
【0019】
ここで、各種の形状あるいは構造の枠状ベースの前面部分に簡単に取り付けることができるように、ダストフードは磁力によって枠状ベースに取り付けるようにすればよい。ダストフードの一部を磁石としてもよいし、ダストフードに磁石を取り付けておいてもよい。
【0020】
また、前記ダストフードの内側に回収された切り粉を吸引して回収するための吸引ホースを有している場合には、一般的なクリーナを用いてダストフード内側に回収された切り粉を簡単に外部に吸引して回収することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、電動丸ノコから発生する切り粉の殆どが、丸鋸カバーの後方、および、丸鋸刃の前側部分から周囲(特に右側)に飛散することに着目し、前者については、鋸刃カバーの前端部分に取り付けた封鎖部材によって鋸刃カバーに巻き込まれる切り粉を丸鋸刃から掻き落とすことにより対応し、後者については、ダストカバーを取り付けることにより対応している。したがって、極めて簡単かつ、廉価な構成により、切り粉の飛散を防止することができる。
【0022】
また、封鎖部材およびダストカバーを既存の電動丸ノコに取り付けるという簡単な操作によって、切り粉回収機能を既存の電動丸ノコに付与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した実施の形態を説明する。
【0024】
図1(a)および(b)は、本発明を適用した切り粉回収機構付きの電動丸ノコの斜視図および鋸刃カバーの前端部分を示す部分断面図である。図2は電動丸ノコからダストフードを取り外した状態を示す斜視図である。本例の切り粉回収機構付きの電動丸ノコ1は、電動丸ノコ本体2と、この電動丸ノコ本体2から巻き上げられる切り粉を回収するための切り粉回収機構3とを有している。
【0025】
電動丸ノコ本体2は、一般の手持ち式のものと同一構成であり、本体ケース21を備え、この本体ケース21には電動モータ22が内蔵されていると共に、ハンドル23が一体形成されている。電動モータ22の回転軸(図示せず)には丸鋸刃24が同軸状態で固着されている。丸鋸刃24は、本体ケース21に取り付けた鋸刃カバー25の左側板部分25aによって、その左側部分が覆われている。また、丸鋸刃24の上半外周部分は、鋸刃カバー25のU字状断面をした円弧状のカバー部分25bによって覆われている。丸鋸刃24の下側部分は、本体ケース21に取り付けた長方形の枠状ベース26の開口部から下方に突出しており、当該枠状ベース26によって丸鋸刃24の切り込み深さが規制される。枠状ケース26の両側縁には上方に直角に折り曲げた補強リブ26a、26bが形成されている。
【0026】
切り粉回収機構3は、鋸刃カバー25の前端部分を封鎖している封鎖部材4と、丸鋸刃24の右側面における枠状ベース26より上の前側部分を覆っているダストカバー5を備えている。
【0027】
封鎖部材4は、鋸刃カバー25の前側部分に保形性のある軟質素材を充填したものである。本例では、軟質素材として、紙粘土を用いている。勿論、それ以外に、例えば樹脂などを用いることも可能である。本例では、鋸刃カバー25のU字状断面のカバー部分25bの前端部分25cに紙粘土が詰め込まれている。図1(b)に示すように、紙粘土は、丸鋸刃24に当たる部分が当該丸鋸刃24によって押し込まれて、丸鋸刃24のみが通過可能な形状に変形し、その状態を保持したままで鋸刃カバー25の前側部分を封鎖した封鎖部材4となる。
【0028】
ダストフード5は、例えば透明なプラスチック板からなり、横長の長方形の側板部分51と、側板部分51の後側の縁から内側に直角に折れ曲がっている一定幅の後板部分52と、側板部分51の上縁における後側の部位から内側に直角に折れ曲がっている一定幅の天板部分53と、側板部分51の下縁における後側の部位から外側に直角に折れ曲がっている一定幅の底板部分54とを備えている。底板部分54の裏面には薄い磁石板55が接着固定されている。天板部分53は、これら側板部分51および後板部分52の上端縁に連続している。
【0029】
図3を参照して、電動丸ノコ1を用いた切断作業を説明する。切断作業においては、クリーナ7の吸引ホース6の先端を、丸鋸刃24の前端側部分に向く状態で、丸鋸刃カバー25の左側板部分25aの部位に固定し、クリーナ7をオンにする。
【0030】
丸鋸刃24の切断位置から発生する切り粉は、丸鋸刃24によって鋸刃カバー25のカバー部分25bに巻き込まれて、当該カバー部分25bの後端から後方に飛散する。また、丸鋸刃24の前側部分の周囲、特に右方向に飛散する。本例では、封鎖部材4によって丸鋸刃4から鋸刃カバー25のカバー部分25bに巻き込まれる切り粉が掻き落とされて、ダストフード5の内側の枠状ベース26の部分に落下して、そこに溜まる。また、丸鋸刃24の前側部分から右側に飛散する切り粉は、ここを覆っているダストフード5によって周囲に飛散することなく、当該ダストフード5の内側に溜まる。ダストフード5の内側の部位には吸引ホース6の先端が向いているので、ここに溜まった切り粉が吸引ホース6からクリーナ7に吸引されて回収される。
【0031】
なお、切り粉発生量が少ない場合には、吸引ホースを取り付けることなく、図1(a)に示す状態で切断作業が行われる。発生した切り粉の殆どは、ダストフード5の内側に溜まり、周囲に飛散することがない。切断作業の終了後に、ダストフード5を枠状ベース26から外して、溜まった切り粉を処分すればよい。
【0032】
(切り粉回収用キット)
次に、上記構成の切り粉回収機構3の構成部品を切り粉回収用キットとして用意しておき、既存の電動丸ノコに取り付けて用いるようにすることができる。切り粉回収用キットには、上記の封鎖部材4として用いている紙粘土などの充填材料と、上記のダストフード5が含まれる。また、鋸刃カバー25に取り付けるための吸引ホース27を含めるようにしてもよい。
【0033】
この構成のキットを用いれば、既存の電動丸ノコに対して簡単に切り粉回収機能を持たせることができ、極めて便利である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)および(b)は、本発明を適用した切り粉回収機構付きの電動丸ノコの斜視図および、鋸刃カバーの前端部分の部分断面図である。
【図2】図1に示す切り粉回収機構付きの電動丸ノコのダストフードを取り外した状態での斜視図である。
【図3】切り粉回収機構付きの電動丸ノコの切断作業時の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 切り粉回収機構付きの電動丸ノコ
2 電動丸ノコ本体
21 本体ケース
22 電動モータ
23 ハンドル
24 丸鋸刃
25 鋸刃カバー
25a 左側板部分
25b U字状断面のカバー部分
25c カバー部分25bの前端部分
26 枠状ベース
3 切り粉回収機構
4 封鎖部材
5 ダストフード
51 側板部分
52 後板部分
53 天板部分
54 底板部分
55 磁石
6 吸引ホース
7 クリーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動丸ノコの丸鋸刃における上半外周部分を覆っているU字状断面の鋸刃カバーの前端部分に封鎖部材を取り付け、当該前端部分を、前記丸鋸刃の刃先部分のみが通過可能な状態で封鎖し、
切断対象物の切断位置から前記丸鋸刃によって前記鋸刃カバーに巻き込まれる切り粉を、前記封鎖部材によって前記丸鋸刃から掻き落とすことにより、
前記丸鋸刃によって前記鋸刃カバーに巻き込まれて当該鋸刃カバーの後端部分から後方に飛散する切り粉の発生を防止することを特徴とする電動丸ノコの切り粉回収方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記封鎖部材は、前記鋸カバーの前端部分に充填した保形性のある軟質素材であることを特徴とする電動丸ノコの切り粉回収方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記軟質素材は紙粘土であることを特徴とする電動丸ノコの切り粉回収方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項において、
前記丸鋸刃の右側面の前側寄りの部分をダストフードによって覆い、
当該丸鋸刃の右側から外周に飛散する切り粉の発生を防止することを特徴とする電動丸ノコの切り粉回収方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記ダストフードの内側に回収された切り粉を、前記鋸刃カバーの前側部分の左側の部位に取り付けた吸引ホースを介して吸引することを特徴とする電動丸ノコの切り粉回収方法。
【請求項6】
丸鋸刃と、
この丸鋸刃の上半外周部分を覆うU字状断面のカバー部分を備えた鋸刃カバーと、
前記丸鋸刃による切断深さを規制している枠状ベースと、
前記鋸刃カバーの前記カバー部分の前端部分を、前記丸鋸刃のみが通過可能な状態に封鎖している封鎖部材と、
前記丸鋸刃の右側面における前記枠状ベースより上の前側部分を覆っているダストフードとを有していることを特徴とする切り粉回収機構付き電動丸ノコ。
【請求項7】
請求項6において、
前記封鎖部材は、前記鋸カバーの前記カバー部分の前端部分に充填した保形性のある軟質素材であることを特徴とする切り粉回収機構付き電動丸ノコ。
【請求項8】
請求項7において、
前記軟質素材は紙粘土であることを特徴とする切り粉回収機構付き電動丸ノコ。
【請求項9】
請求項6において、
前記ダストフードの内側に回収された切り粉を吸引して回収するための吸引ホースを有していることを特徴とする切り粉回収機構付き電動丸ノコ。
【請求項10】
請求項6において、
前記ダストフードは前記枠状ベースに対して、磁力によって着脱可能な状態で取り付けられていることを特徴とする切り粉回収機構付き電動丸ノコ。
【請求項11】
丸鋸刃と、この丸鋸刃の上半外周部分を覆っているUの字状断面のカバー部分を備えた鋸刃カバーと、前記丸鋸刃による切断深さを規制している枠状ベースとを備えた電動丸ノコに取り付けて用いる切り粉回収用キットであって、
前記鋸刃カバーの前記カバー部分の前端部分に充填して、当該前端部分を前記丸鋸刃のみが通過可能な状態に封鎖するために用いる保形性のある軟質充填材と、
前記丸鋸刃の右側面における、前記枠状ベースより上の前側部分を覆うことができるように、前記枠状ベースに取り付け可能なダストフードとを有していることを特徴とする電動丸ノコの切り粉回収用キット。
【請求項12】
請求項11において、
前記ダストフードは磁力によって前記枠状ベースの前側部分に着脱可能であることを特徴とする電動丸ノコの切り粉回収用キット。
【請求項13】
請求項11または12において、
前記ダストフードの内側に回収された切り粉を吸引して回収するための吸引ホースを有していることを特徴とする電動丸ノコの切り粉回収用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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