説明

切削ツール

【課題】仕上げ加工が必要なく、製造が容易である切削機械加工用ツールを提供する。
【解決手段】ツールは、一次ツール部(1)と二次ツール部(2)とシャフト部(3)とを備える。一次ツール部は、一次接続表面(5)と反対側表面(6)と共に、一次接続表面から反対側表面に向けて延伸している凹部(7)を有し、凹部の底部表面(9)と反対側表面の間に壁部(8)を有する。二次ツール部は、二次接続表面(11)と、二次接続表面から延伸し、搭載された状態においては凹部内に延伸している突起部(12)とを有する。突起部は、底部表面に面している端部表面(13)を有する。固定要素(20)は、収縮力により壁部を突起部に接続する。一次と二次ツール部は、各切削インサートのための座部(15)を備える。壁部は弾性的に柔軟であり、搭載された状態における収縮力により端部表面に向けて屈曲される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には切削機械加工用ツールに関し、より正確には、金属のチップ除去機械加工用ツールに関する。本発明は、いわゆるLong Edge Milling Cutter(ロングエッジフライス盤)、Helical End Mill(ヘリカルエンドミル)、Extended Flute End Mill(伸張式フルートエンドミル)を含むフライス加工ツールのような回転式ツールに特に適用可能である。より正確には、本発明は、例えば、米国特許第5、551、811号を参照すると、請求項1の序文に従うツールに関する。
【背景技術】
【0002】
特に複数の切削インサートがツールの周辺部に沿って配置され、ツールの縦方向の中心軸に沿って配置されて設けられているようなツールは、高価で製造も複雑である。これらのツールは、切削インサート用の多数の座部を備えている。最悪の場合としてそのような座部が破壊すると、ツール全体を交換しなくてはならない。特に、ツールの前方端部に位置しているそれらの切削インサートと座部は、ツールの使用中に大きな応力に晒される。
【0003】
この問題は、少なくとも2つの接合されたツール部にツールを分割することにより、つまり、ツールのシャフトに接続されている本体と、取外し可能に本体に相互接続されている端部体の2つにツールを分割することにより解決できる。ツール部の座部が破壊しても、このツール部を交換すれば十分である。そのような分割可能ツールは、米国特許第5、800、098号と、上記の米国特許第5、551、811号に示されている。
【0004】
米国特許第5、551、811号は、切削機械加工用ツールを示しており、一次ツール部と、二次ツール部と、機械加工ツールに固定されるように形成されているシャフト部を備えている。一次ツール部は、一次接続表面と、シャフト部に向かう反対側表面とを有し、同時に、一次接続表面から反対側表面に向かって延伸する凹部を有している。一次ツール部は、凹部の底部表面と反対側表面の間に壁部を有している。二次ツール部は、二次接続表面と、二次接続表面から軸方向に延伸する突起部を有しており、搭載された状態では、凹部内まで延伸する。突起部は、搭載された状態では、底部表面に面している端部表面を有している。相対的に長い固定ネジは、収縮力によって、壁部を、搭載された状態で突起部に接続している。中心軸は、ツールの縦方向に、シャフト部分を通してと共に、一次ツール部とその凹部と、二次ツール部とその突起部を通して延伸している。一次および二次ツール部は、切削インサートそれぞれを収容するために形成されている個々の座部を備えている。
【0005】
米国特許第5,607,263号は、取外し可能なツールヘッドを有する別の切削ツールを示しており、この切削インサートは、切削ヘッドに統合された部分となっている。
【0006】
しかし、分割可能ツールにはいくつかの問題があり、特に、一次ツール部を二次ツール部に接続する結合器に問題がある。ツールの使用中に、ツール部の間で起こる温度差は、寸法の変化をもたらし、二次ツール部に関して一次ツール部が動くことになる可能性がある。ツールを使用しているときに起こる応力と振動は、固定ネジのような利用している結合器要素に伝わり、緩む可能性がある。ツール部間の結合器はしばしば嵩張ることがあり、例えば、減衰機構のような他のツール要素をツール上またはツール内に配置する可能性の支障となる。ツール部の搭載と取外しは、複雑で時間のかかる作業である。ツールの製造は、それぞれがツール部と相互接続するための特別な設計を必要とする2つのツール部を備えている、またはそれらから構成されているという事実のために複雑となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、紹介することにより示されたタイプのツールを提供することであり、それにより、上記の問題または、少なくとも上記の問題のいくつかは削除または減少できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、紹介することにより示され、壁部が弾性的に柔軟であり、収縮力により、搭載された状態で端部表面に向けて屈曲しているという特徴があるツールにより達成される。
【0009】
そのような弾性壁部により、収縮力が適切に提供され、その力により、固定要素にプリストレスが加えられ、固定要素が信頼性を持って固定されることに貢献する。このプリストレスにより、使用中にツールが振動しても固定要素が緩むことが防止される。弾性壁部により、相対的に短い固定要素、例えば、短い長さを有する相対的に短い固定ネジを、固定要素が何ら固有の弾性を有する必要がないので使用することができる。このため、ツールの縦方向の空間が節約できる。ツールの使用中の温度差は、有利な方法で克服できる。弾性壁部により、ツール部はすべての動作条件において、つまり、使用中に起こるすべての温度においてお互いに押し付けられる。それにより、温度の変動によりツール部における材料の膨張や収縮の結果として固定要素が緩むことや、固定が不十分になることが回避される。
【0010】
一次および二次ツール部は、例えば、壁部を通して突起部のネジ切り部内まで延伸する固定ネジであってよい固定要素により、簡単な方法で搭載および取外しができる。このため、ツール部の1つは、破壊したときに迅速かつ簡単に交換でき、他の損傷を受けていないツール部はそのまま保つことができる。
【0011】
本発明の1つの実施の形態によれば、一次ツール部と二次ツール部は、搭載された状態で、端部表面と底部表面の間に第1ギャップが形成されるように寸法が決められる。そのようにすれば、弾性壁部が、突起部の端部表面に向けて、またそこから移動することが保証される。
【0012】
本発明の1つの実施の形態によれば、突起部は、端部表面と凹部に向けて細くなっている外周表面と、底部表面に向けて細くなっている対応する内部表面を有しており、外周表面と内部表面は、中心軸と角度αを形成している。外周表面と内部表面のそのような先細りする設計、または円錐状の設計は、2つのツール部の信頼性のあるお互いの搭載にも貢献している。角度αは、10°以下であると有利であり、好ましくは2°以上7°以下であり、更に好ましくは、3°以上6°以下である。
【0013】
本発明の1つの実施の形態によれば、一次接続表面は、搭載された状態においては、二次接続表面に面しており、一次ツール部と二次ツール部は、搭載された状態において、一次接続表面と二次接続表面の間に第2ギャップが形成されるように寸法が決められる。この第1ギャップと第2ギャップのある設計により、2つのツール部は、突起部の先細りする、または円錐状の外周表面と、凹部の先細りする、または円錐状の内部表面のみによりお互いに対して接することになる。このため、第2ギャップは、2つのツール部の信頼性のある相互接続に貢献している。更に、弾性壁部と協働している第2ギャップは、ツール部の、より正確には、2つの接続表面と、突起部の外周表面と、凹部の内部表面の許容誤差(公差)条件をある程度緩和することに貢献している。このより緩和された許容誤差条件のため、製造を容易にすることが可能となり、1つのそして同じ装置において、1つ以上の機械加工操作で行うことが可能になる。ツール部およびその表面を完成するために、研磨のような形状の仕上げ処理は必要ない。
【0014】
本発明の1つの実施の形態によれば、突起部と凹部は、中心軸に関する断面において非円形状を有している。そのようにして、ツールの使用中に、二次ツール部に関して、外周方向における一次ツール部の位置を決め且つ確保できる。非円形状は、例えば、三角形のような多角形状を含んでいると有利である。
【0015】
本発明の1つの実施の形態によれば、固定要素は、壁部の開口部を通して延伸し、突起部のネジを切られた穴に係合されるネジを備えている。そのようなネジは、2つのツール部の簡単な搭載および取外しを保証する。ネジは、上述したように、例えば1/1から4/1の長さと径の比を有して相対的に短いと有利である。
【0016】
本発明の1つの実施の形態によれば、壁部の開口部には、内部ネジ切り部が設けられ、ネジを切られた穴の径よりも大きな径を有し、プーラーネジを収容するために形成されている。このように、ツール部を取り外す場合、固定ネジは第1ステップで取り除くことができる。第2ステップにおいては、プーラーネジは、壁部の内部ネジ切り部にねじ込まれ、突起物に対して接するようになり、プーラーネジを締め付ける結果として、2つのツール部はお互いに変位され、従って、取り外される。突起物は、ネジを切られた穴の周りに配置され、プーラーネジの隣接表面を形成するように形成されている隣接表面を有すると有利である。
【0017】
本発明の1つの実施の形態によれば、シャフト部は、二次ツール部と一体的に、または接続されて形成されると有利である。
【0018】
本発明の1つの実施の形態によれば、二次ツール部は、減衰機構を収容するために形成されている中央キャビティを備えている。減衰機構を、ツールにおいて可能な限り前方に、つまり、可能な限り一次ツール部の反対側表面の近くに適用できれば、技術的に有利である。この実施の形態においては、この表面が、ツールの使用中に最大のたわみが起こる場所に位置しているツールの末端表面を形成している。一次ツール部は、相対的に薄い壁部を有しており、固定ネジは相対的に短くできるので、中央キャビティは、ツール内でかなり前方まで延伸でき、それにより、減衰機構を、末端表面の近くに位置させることが可能になる。
【0019】
本発明の1つの実施の形態によれば、ツールは、少なくともキャビティを通って延伸し、端部表面を通る開口部を通して外に延伸している冷媒ダクトを備えている。このように、この開口部は第1ギャップに開口しており、そこから、冷却されるべき領域または切削インサートにまで延伸させることができる。
【0020】
本発明の1つの実施の形態によれば、一次ツール部は、切削ツールそれぞれを収容するために形成され、一次ツール部の外周表面の周りに配置されている少なくとも1組の座部を備えている。
【0021】
本発明の追加的な実施の形態によれば、二次ツール部は、切削ツールそれぞれを収容するために形成され、二次ツール部の外周表面の周りに配置されている少なくとも1組の座部を備えている。
本発明は、ここで、異なる実施の形態の記述により、および添付されている図を参照して、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の第1実施の形態によるツールの模式透視図である。
【図1a】図1aは、図1のツールの模式側面図である。
【図2】図2は、図1のツールの一次ツール部の背後からの模式図である。
【図3】図3は、図2の線III−IIIに沿う模式縦断面図である。
【図4】図4は、図1のツールの二次ツール部の前部からの模式図である。
【図5】図5は、図4の線V−Vに沿う模式縦断面図である。
【図6】図6は、ツール部を一緒にした、図1のツールを通しての模式縦断面図である。
【図6a】図6aは、図6のツールと類似している模式縦断面図であるが、ツール部は搭載された状態である。
【図7】図7は、ツールの取外しにおける、図1のツールを通しての模式縦断面図である。
【図8】図8は、本発明の第2実施の形態によるツールの前部からの模式図である。
【図9】図9は、図8のツールの模式縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1−7は、第1実施の形態による、金属のチップ除去機械加工用の切削ツールを示している。ツールは、一次ツール部1と、二次ツール部2と、シャフト部3とを備えている。示されている第1実施の形態においては、一次ツール部は端部体を形成し、一方、二次ツール部2は、端部体とシャフト部3の間に中間ツール体を形成している。シャフト部3は、機械加工ツール(図示しない)内に直接固定、または延伸部要素(図示しない)を介して固定されるように形成されている。シャフト部3は、二次ツール部2と一体化された部分であってもよく、または二次ツール部に取外し可能に接続されていてもよい。
【0024】
中心軸Xは、一次ツール部1と、二次ツール部2と、シャフト部3とを通してツールの縦方向に延伸している。示されている第1実施の形態においては、中心軸Xは、ツールの回転軸も形成している。
【0025】
示されている実施の形態においては、ツールは、機械加工ツールに固定されるように意図されている回転式ツールである。図1−7に示されているツールは、フライス加工ツールであり、より正確には、いわゆるLong Edge Milling Cutter、Helical End Mill、またはExtended Flute End Millである。しかし、本発明は、いかなる意味においてもこのタイプのツールに制限されるわけではなく、異なるフライス加工ツールや穿孔ツールを含むすべての可能なタイプの回転式ツールに適用可能であることに留意されたい。本発明を、例えば、旋盤ツールのような固定ツールに適用することも可能である。
【0026】
図2と3を参照すると、一次ツール部1は、一次接続表面5と、示されている第1実施の形態においてはツールの末端表面を形成している反対側表面6を有している。一次ツール部1はまた、一次接続表面5から反対側表面6に向けて軸方向に延伸している凹部7も有している。従って、一次ツール部1は凹部7の底部表面9と反対側表面6の間に壁部8を有している。
【0027】
図4と5を参照すると、二次ツール部2は、二次接続表面11と、二次接続表面11から軸方向前方に突起している突起部12を有している。突起部12は、一次ツール部1の凹部7内に延伸するように形成されている(図6参照)。突起部12は、二次ツール部2の径よりも小さい最大径を有している。突起部12は、凹部7の底部表面9に面している端部表面13を有している(図6参照)。
【0028】
本発明は、突起部12を含む二次ツール部2がツールの端部体を形成し、凹部7を含む一次ツール部1が中間ツール体を形成しているツールにも適用可能であることに留意されたい。
【0029】
従って、中心軸Xもまた、一次ツール部1の凹部7と、二次ツール部2の突起部12を通して延伸している。
【0030】
示されている第1実施の形態においては、一次ツール部1と二次ツール部2の両者は、切削インサート16それぞれを収容するために形成されている複数の座部15を備えている。一次ツール部1と二次ツール部2は鋼鉄から製造してもよく、切削インサート16は通常は、例えば、超硬合金のような、より硬い材料から製造されている。示されている第1実施の形態においては、一次ツール部1は、一次ツール部1の外周の周りに配置されている少なくとも1組の座部15を備えている。座部15はまた、中心軸Xに平行な縦方向にも配置されている。二次ツール部2もまた、切削インサート16それぞれを収容するために形成され、二次ツール部2の外周表面の周りに配置されている少なくとも1組の座部15を備えている。この場合、中心軸Xに平行な二次ツール部2の縦方向に配置されている座部5の数組がある。
【0031】
ツールはまた、ツールの周辺、つまり、一次ツール部1の周辺と二次ツール部2の周辺に沿う螺旋形状の進路において延伸している多数のチップ縦溝(フルート)17も備えている。座部15は、そして切削インサート16は、前記チップ縦溝17に隣接して配置されている。
【0032】
一次ツール部1は、二次ツール部2に取外し可能に接続できる。ツールは、搭載された状態における収縮力により、壁部8を突起部12に接続する固定要素20を備えている(図6a参照)。示されている第1実施の形態においては、固定要素20は、壁部8の開口部22を通して延伸しているネジ21を備えている、またはネジ21から構成されている。ネジ21は、突起部12のネジを切られた穴23と係合している。
【0033】
壁部8は、弾性的に柔軟であり、または弾性的に変形可能である。弾性は、壁部8が相対的に薄いことにより提供される。壁部8は、厚さtと内接径または最大横方向径dを有してよく、ここでt/d=0.05から0.2であり、好ましくは、0.08から0.18である。示されている第1実施の形態においては、壁部8は、均一かつ一様な厚さを有している。しかし、壁部8の厚さは変化してもよいということに留意されたい。特に、厚さは、固定要素20の周りの壁部8の中心部において最大であって、壁部8の半径方向外部の部分において、より薄くなってよい。本発明は、異なる寸法を有するツールにも適用可能であることにも留意されたい。第1実施の形態において示されているツールの寸法の、例としての目的だけのための例においては、一次ツール部1と二次ツール部2の径は、60から70mm、例えば、64、または約64mmであってよい。横方向の径dは、25から30mm、例えば、28、または約28mmであってよく、厚さtは、2から5mm、例えば、3、または約3mmであってよい。凹部は、9から13mmの深さ、例えば、11、または約11mmを有してよい。
【0034】
二次ツール部2の突起部12は、端部表面13に向けて先細りしている外周表面25を有している。一次ツール部1の凹部7は、底部表面9に向けて先細りしている対応する内部表面26を有している。従って、外周表面と内部表面は中心軸Xと角度αを形成している(図6参照)。角度αは10°以下であり、好ましくは、2°以上7°以下であり、より好ましくは、3°以上6°以下である。
【0035】
3から10kNであってよく、好ましくは、4から8kNであってよい収縮力をネジ21が加えると、壁部8は弾性的に変形して、突起部12の端部表面13に向けて屈曲する(図6a参照)。一次ツール部1と壁部8を、この収縮力により塑性変形が起きないように形成することは重要である。壁部8の湾曲b、またはアーチまたはふくらみは、端部表面13と底部表面9の間の第1ギャップX1が搭載された状態で形成される程度よりも大きくはない。第1ギャップX1は、壁部8の表面上で変化し、湾曲bが最大となるところで最小値を有する。最大湾曲bは、壁部8の中心部、つまり、固定要素20の周りの最も近いところで得られる。壁部8の湾曲bは、0.015から0.15mmであってよく、好ましくは0.02から0.1mmである。
【0036】
搭載された状態においては、一次接続表面5は二次接続表面11に面しており、一次接続表面5と二次接続表面11の間には、第2ギャップX2が形成されている。第1ギャップX1は、常に第2ギャップX2がよりも大きいと、つまり、X1>X2であると有利であり、それは、第1ギャップX1の最小値が、第2ギャップX2よりも大きいことを意味する。そのようにすれば、ギャップX2がゼロに近づいても、固定要素20上のプリストレスが確保される。
【0037】
弾性壁部により、すべての動作条件において、つまり、使用中に起こるすべての温度において、ツール部がお互いに押し付けられる。それにより、温度の変動によりツール部の材料が膨張または収縮する結果として、固定要素が緩んだり、固定が不十分になったりすることが回避される。ここで、第1ギャップX1と第2ギャップX2を有する示されているデザインは、搭載された状態における一次ツール部1と二次ツール部2(図6a参照)が、突起部12の先細りしている、または円錐状の外周表面25と、凹部7の先細りしている、または円錐状の内部表面26のみより、お互いに接しているという事実という結果になるということにも留意されたい。
【0038】
ツールの使用中は、一次ツール部1は通常は二次ツール部2よりも暖かくなる。これは、一次ツール部1と凹部7は、二次ツール部2と突起部12よりも膨張するということを意味している。凹部7と突起部12の先細りする形状、または円錐形状により、一次ツール部1が二次ツール部2と信頼性を持って固定的に接続されると同時に、ある小さな相対的な軸方向の動きが許容される。従って、ギャップX2は使用中に若干減少する可能性がある。壁部8は、そのような弾性変形を許容するように形成されており、それにより、十分なプリストレスが、ツールのすべての使用中に固定要素20に加えられる。
【0039】
更に、突起部12と凹部7は、中心軸Xに関する断面において、非円形状を有している。非円形状は、多角形状を含んでも、多角形状であってもよく、示されている第1実施の形態においては、断面形状は三角形状である(図2と4参照)。このため、一次および二次ツール部は、搭載された状態においては、お互いに関して回転できない。
【0040】
二次ツール部2は中心キャビティ30を備えており、これは、減衰機構31、例えば、国際公開WO/2008/002145に示されているタイプの減衰機構31を収容するために形成されている。相対的に短い固定要素20のため、減衰機構31は、ツールにおいて相対的にかなり前方に、つまり、ツールの末端表面の相対的に近くに配置できる。
【0041】
ツールは更に、キャビティ30を通り、端部表面13を通る1つ以上の開口部32を出て延伸する冷媒ダクトを備えている。開口部32は、端部表面13と底部表面9の間の第1ギャップX1に開口している。冷却ダクトを通して第1ギャップX1内に運ばれる冷媒は更に、適切な通路33を通り、冷却される切削インサートまたは領域に運ぶことも可能である(図2参照)。図5において分かるように、減衰機構31は、2つの螺旋形状の溝34が設けられている外周表面を有している。従って、冷媒ダクトを通して供給される冷媒は、開口部32と通路33まで、前記螺旋形状の溝34内のキャビティ30において運ばれる。図5から図7において分かるように、冷媒が、螺旋形状の溝34から二次ツール部2を通り、二次ツール部2の外周において冷却されるべき領域及び切削インサート16へ出る通路33もまたある。減衰機構31は、1つ以上の溝34を備えることができるということに留意されたい。溝34は螺旋形状である必要はなく、軸方向に直線的に延伸してもよい。
【0042】
ツール部1、2の取外しを容易にするために、つまり、一次ツール部1の二次ツール部2からの引き離しを容易にするために、壁部8の開口部22には、突起部12のネジを切られた穴23の径よりも大きな径を有する内部ネジ切り部37が設けられている。従って、壁部8の開口部22は、プーラー(引っ張り)ネジ35を収容するために形成されている(図7参照)。突起部12はまた、ネジを切られた穴23の周りに配置され且つプーラーネジ35用の隣接表面を形成するために形成されている、隣接表面36もまた有している。プーラーネジ35が開口部22内にねじ込まれて、隣接表面36に対して接するという事実により、一次ツール部1は、二次ツール部2から離れるように外に向けて押され、ツールは、簡単に取り外すことができる。上記の、壁部8の中心部の、より大きな厚さは、内部ネジ切り部37の十分な長さを確実にするために有利であり得る。
【0043】
図8と図9は、第1実施の形態と、別の、若干変形されたタイプの、相当に長い軸方向の延伸部を有しているフライス加工ツールがあることのみが異なる第2実施の形態を示している。同じまたは対応する機能を有している要素は、示されている実施の形態においては、同じ参照符号を与えている。第2実施の形態の二次ツール部2は、図8と9に示されているよりも相当に多くの座部15と切削インサート16を有してもよいということに留意されたい。
【0044】
本発明は、示された実施の形態には制限されず、後に続く請求項の範囲内で変更および変形が可能である。
【0045】
例えば、代替実施の形態によれば、ギャップX2は非常に小さくてもよく、ゼロに近づいても、ゼロに等しくてもよい。この場合もまた、弾性変形可能な壁部8と、X1>0のため、十分に剛性のある接合が達成できる。
【0046】
別の代替実施の形態によれば、ツールは、示されているツール部以上を備えてもよく、例えば、1つ以上の追加的な一次ツール部を備えてもよい。そして、固定要素20は、すべての一次ツール部を通って延伸してもよいが、最も外側の末端一次ツール部のみが弾性変形可能な壁部8を備える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削機械加工用に形成されているツールであって、
一次ツール部(1)であって、一次接続表面(5)と反対側表面(6)と共に、前記一次接続表面(5)から前記反対側表面(6)に向けて延伸している凹部(7)を有し、前記凹部(7)の底部表面(9)と前記反対側表面(6)の間に壁部(8)を有する一次ツール部(1)と、
二次接続表面(11)と、前記二次接続表面(11)から延伸し、搭載された状態においては、前記凹部(7)内に延伸している突起部(12)とを有する二次ツール部(2)であって、前記突起部(12)が、前記搭載された状態においては、前記底部表面(9)に面している端部表面(13)を有している二次ツール部(2)と、
機械加工ツールにおいて固定用に形成されているシャフト部(3)と、
前記搭載された状態における収縮力により、前記壁部を前記突起部に接続する固定要素(20)と、を備えるツールであって、
中心軸(X)は、前記一次ツール部(1)と、その前記凹部(7)を通して、および前記シャフト部(3)と共に、前記二次接続表面(11)と、その前記突起部(12)を通して、前記ツールの縦方向に延伸しており、
前記一次ツール部(1)と前記二次ツール部(2)の少なくとも1つは、切削インサート(16)それぞれを収容するために形成されている座部(15)を備える、ツールにおいて、
前記壁部(8)は弾性的に柔軟であり、前記搭載された状態における前記収縮力により、前記端部表面(13)に向けて屈曲されることを特徴とするツール。
【請求項2】
前記一次ツール部(1)と前記二次ツール部(2)は、前記搭載された状態において、前記端部表面(13)と前記底部表面(9)の間に第1ギャップ(X1)が形成されるように寸法が決められていることを特徴とする請求項1に記載のツール。
【請求項3】
前記突起部(12)は、前記端部表面(13)と前記凹部(7)に向けて先細りしている外周表面(25)と、前記底部表面(9)に向けて先細りしている対応する内部表面(26)とを有しており、前記外周表面(25)と前記内部表面(26)は、前記中心軸(X)に関して角度αを形成していることを特徴とする請求項1又は2に記載のツール。
【請求項4】
前記角度αは、2°と7°の間にあることを特徴とする請求項3に記載のツール。
【請求項5】
前記一次接続表面(5)は、前記搭載された状態においては、前記二次接続表面(11)に面しており、前記一次ツール部(1)と前記二次ツール部(2)は、前記搭載された状態において、前記一次接続表面(5)と前記二次接続表面(11)の間に第2ギャップ(X2)が形成されるように寸法を決められていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のツール。
【請求項6】
前記突起部(12)と前記凹部(7)は、前記中心軸(X)に関する断面において、非円形状を有していることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のツール。
【請求項7】
前記非円形状は、多角形状を含むことを特徴とする請求項6に記載のツール。
【請求項8】
前記固定要素(20)は、前記壁部(8)の開口部(22)を通して延伸し且つ前記突起部(12)のネジを切られた穴(23)に係合する、ネジ(21)を備えることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載のツール。
【請求項9】
前記壁部(8)の前記開口部(22)には、前記ネジを切られた穴(23)の径よりも大きな径を有し、プーラーネジ(35)を収容するために形成されている内部ネジ切り部(37)が設けられていることを特徴とする請求項8に記載のツール。
【請求項10】
前記突起部は、前記ネジを切られた穴(23)の周りに配置され、前記プーラーネジ(35)用の隣接表面を形成するために形成されている隣接表面(36)を有することを特徴とする請求項9に記載のツール。
【請求項11】
前記シャフト部(3)は、前記二次ツール部(2)と一体的に、または接続されて形成されていることを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載のツール。
【請求項12】
前記二次ツール部(2)は、減衰機構(31)を収容するために形成されている中心キャビティ(30)を備えていることを特徴とする請求項11に記載のツール。
【請求項13】
前記ツールは、少なくとも前記キャビティ(30)を通る冷媒ダクトであって、前記端部表面(13)を通る開口部(32)を通って外に延伸している冷媒ダクトを備えていることを特徴とする請求項12に記載のツール。
【請求項14】
前記一次ツール部(1)は、切削インサート(11)それぞれを収容するように形成され、前記一次ツール部(1)の外周表面の周りに配置されている少なくとも1組の座部(15)を備えていることを特徴とする請求項1から13の何れか1項に記載のツール。
【請求項15】
前記二次ツール部(2)は、切削インサート(16)それぞれを収容するように形成され且つ前記二次ツール部(2)の外周表面の周りに配置されている、少なくとも1組の座部(15)を備えていることを特徴とする請求項1から14の何れか1項に記載のツール。

【図1】
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【図1a】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図6a】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−93089(P2011−93089A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242453(P2010−242453)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(505277521)サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ (284)
【Fターム(参考)】