説明

切削工具

【課題】小径の孔のバリ取りも可能な工具を構成する。
【解決手段】ホルダ2の先端側に半径方向に貫通する切削刃支持孔6を形成し、ホルダ2の先端に回転軸芯に沿ってネジ孔2Sを形成し、切削刃支持孔6に装着される切削刃3にV溝状の係合凹部3Cを形成し、ネジ孔2Sに螺合するロックネジ4の先端に係合凹部3Cに入り込む円錐状の係合部4Aを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸芯周りで駆動回転するホルダに対して、このホルダの外周面より半径方向で外方に突出する切削刃を備えている切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された切削工具として特許文献1、特許文献2に記載されるものが存在する。特許文献1では、シャンク1に一体形成された本体2の先端側に刃ケース3を備え、この刃ケース3の先端に半径方向に貫通する孔部を穿設し、この孔部に対して一対のバリ取り刃12が互いに逆方向に突出する形態で挿入された構成が示されている。更に、この特許文献1では、刃ケース3の内部に軸芯方向に沿って収容した中間体4の先端の一対のピン15を夫々のバリ取り刃12に係合させることでバリ取り刃12を固定する構成が示されている。
【0003】
特許文献2では、回転軸1の先端に収納凹部3が形成され、これに切削刃2が収納され、回転軸1の丸孔1bに挿通するピン4を、切削刃2の長孔2Cに挿通して連結することによって、この切削刃2を半径方向に移動自在に支持する構成が示されている。更に、この特許文献1では、回転軸1の内部に送られる切削油の圧力を切削刃2に作用させることで、この切削刃2を突出作動させる点も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5‐16005号公報 (段落番号〔0008〜0011〕、図1〜図4)
【特許文献2】特開平7‐51931号公報 (段落番号〔0005〜0011〕、図1、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、特許文献2に記載されるものは、鋼板等に孔を形成する加工時に鋼板の表面や裏面において孔の周囲に作り出される突出物(所謂、バリ)の除去を行うために使用される。この種の工具は比較的小径の孔加工にも対応することが必要なため、小径の軸状のホルダの先端に切削刃を備えることも必要となる。
【0006】
小径の孔のバリを除去するための工具の構造を考えると、例えば、特許文献1に記載される構成のものでは、一対のバリ取り刃(本発明の切削刃)を重ねた形態でシャンク(本発明のホルダ)の先端に備える構造であるため、シャンクの小径化に限界があり、改善の余地がある。
【0007】
また、特許文献2に記載される構成では、回転軸(本発明のホルダ)の先端に形成された溝に切削刃を挿入し、ピンを介して連結する構造であるため、比較的小さい切削刃に孔を形成し、また、これに対応する孔を回転軸に形成する加工が必要となる。しかしながら、小径の回転軸に加工を行うことや、小さい切削刃に加工を行うには加工上困難な面があり、また、強度を考えると、回転軸の小径化には限界があり、改善の余地がある。
【0008】
特に、切削刃をホルダに備える場合には、ホルダに対する切削刃の突出量を適正に設定する必要があるものの、特許文献1ではバリ取り刃にピンを係合させて固定する構成であるため、ガタツキを招きやすいものとなる。
【0009】
また、切削工具としてエンドミルのようにホルダの先端部で切削を行うものを小型に構成する場合にも、前述した特許文献1に示されるバリ取り刃の取付構造や、特許文献2に記載されるようにピンを介して連結するものでは小型化に限界があり、この点にも改善の余地がある。
【0010】
本発明の目的は、小径の孔のバリ取りや切削加工を無理なく行える工具を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴は、回転軸芯周りで駆動回転するホルダに対して、このホルダの外周面より半径方向で外方に突出する切削刃を備えている切削工具であって、
前記ホルダに対して、外周面から半径方向に向かう姿勢の切削刃支持孔が穿設されると共に、前記回転軸芯に沿う姿勢のネジ孔が前記ホルダの先端から前記切削刃支持孔に連通する位置に亘って穿設され、
前記切削刃が、前記切削刃支持孔に挿入される切削刃本体と、この切削刃本体に形成された係合凹部と、前記ホルダの外部に露出するように切削刃本体の端部に形成された刃部とを一体的に形成した構造を有しており、
前記切削刃本体を前記切削刃支持孔に挿入し、前記ネジ孔に螺合させたロックネジの先端の係合部を前記係合凹部に係合させて前記切削刃が固定されている点にある。
【0012】
この構成により、ホルダの切削刃支持孔に切削刃を装着し、ネジ孔にロックネジを螺合させて締付操作を行うことにより、このロックネジの先端の係合部が切削刃の係合凹部に係入し、切削刃を抜け止め状態でロックできる。つまり、ホルダの端部から回転軸芯に沿う方向にネジ孔を形成することにより、例えば、ホルダの外面から切削刃に貫通するピンを用いて切削刃を固定する構成と比較すると、切削刃に貫通孔形成しなくて済み、小型化を図っても強度低下を招くことがなく、しかも、切削刃を固定した状態で切削刃がホルダの半径方向に移動する不都合を確実に阻止できる。
従って、小径の孔のバリ取りや切削加工を無理なく行える切削工具が構成できた。
【0013】
本発明は、前記切削刃の刃部が、前記回転軸芯に沿う方向でホルダの先端方向に露出する部位と、ホルダの基端方向に露出する部位とに形成されても良い。
この構成によると、加工対象の孔の表面側のバリを一方の刃部で切削でき、加工対象の裏面側のバリを他方の刃部で切削できる。
【0014】
本発明は、前記切削刃支持孔が、前記ホルダの外周面から前記ホルダの先端部に亘る領域に形成され、
前記切削刃本体が、前記切削刃支持孔から前記ホルダの先端に達する形状を有すると共に、先端側に刃部を形成した構造を有しても良い。
この構成によると、エンドミルと同様にホルダの先端側の切削も可能となる。
【0015】
本発明は、前記回転軸芯を基準にして前記ホルダの半径方向に変位した位置に前記ネジ孔が穿設されている点にある。
この構成によると、回転軸芯からホルダの半径方向に変位した位置に切削刃が配置されても、ロックネジから適正に圧力を作用させてロックすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施の形態の切削工具の先端部分の分解斜視図
【図2】第1実施の形態の切削工具の先端部分の拡大分解斜視図及び先端部分の拡大図
【図3】第1実施の形態の切削時の切削工具の位置関係を示す断面図
【図4】第1実施の形態の本体軸芯とネジ軸芯との位置関係を示す断面図
【図5】第1実施の形態のホルダとロックネジとの位置関係を示す図
【図6】第1実施の形態のロックを実現する領域を示す図
【図7】第2実施の形態の切削工具の先端部分の拡大分解斜視図及び先端部分の拡大図
【図8】第2実施の形態の切削工具の先端部分の拡大図
【図9】第2実施の形態の切削刃の平面図
【図10】第2実施の形態の切削刃のロック状態と切削刃の取り外し状態の断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施の形態〕
図1及び図2に示すように、シャンク1と、このシャンク1の先端側にシャンク1より小径となるホルダ2とを一体的に形成して工具本体Bが構成され、ホルダ2の先端部に切削刃3をロックネジ4で固定する切削工具が構成されている。
【0018】
この切削工具は、ホルダ2の外周面より半径方向で外方に突出する形態で切削刃3を備える構造を有し、切削刃3には回転軸芯Xの方向でホルダ2の先端側と基端側とに刃部3Aが形成されている。このような構造から、シャンク1を工作機械の駆動軸等に装着して駆動回転する状態で、図3に示す如く、例えば、鋼板10に形成された加工孔11に切削刃3を送り込み、この加工孔11の表面側に形成されたバリ12に切削刃3を接触させて、そのバリ12を切削によって除去できる性能を有している。また、切削刃3にはホルダ2の先端側と基端側とに刃部3Aが形成されているので、加工孔11の表面側の開口縁と、裏面側の開口縁との何れのバリ12も切削が可能である。尚、このような切削を実現するために、切削刃3の突出端から切削刃の反対側のホルダ外面までの距離D1より、加工孔11の直径D2が大きく設定される。また、切削工具は、図4に示す回転方向Rに駆動回転することで切削が行われる。
【0019】
図1〜図5に示す如く、この切削工具は、シャンク1とホルダ2とが回転軸芯Xを中心とした円柱状に成形され、ホルダ2の先端側にはホルダ2を半径方向に貫通する切削刃支持孔6が穿設され、このホルダ2の先端から切削刃支持孔6に連通する位置までネジ孔2Sが穿設されている。ネジ孔2Sの軸芯(こに螺合するロックネジ4の軸芯と一致する)をネジ軸芯Yと称し、このネジ孔2Sは、回転軸芯Xと平行する姿勢で回転軸芯Xからホルダ2の半径方向に変位した位置に配置されている。尚、ホルダ2の断面形状は円形でなくても良く、楕円形であっても良い。
【0020】
切削刃3は、超硬合金、サーメット、セラミックス、CBN等の硬質材料が用いられ、全体的に長さL、幅W、厚さTのブロック状に成形されている。この切削刃3は、その長さLの方向の一方の端部に刃部3Aが形成され、長さLの方向の他方の端部に切削刃本体3Bが形成されている。更に、この切削刃本体3Bのうち幅Wの方向での一方の端部にV溝状の係合凹部3Cが形成されている。尚、この係合凹部3Cは厚さTの方向に沿う方向視でV溝状に形成されているが、形状はこれに限るものではなく、円弧状や台形状であっても良い。また、図1、図2に示すように切削刃3の上側を上面3Sと称する。
【0021】
前述したように、刃部3Aは、回転軸芯Xの方向での両端側、つまり、ホルダ2の先端方向に露出する部位と、ホルダ2の基端方向に露出する部位とに形成され、加工孔11の表面と裏面との両面に形成されるバリ12を対応する刃部3Aで切削できるようにしている。
【0022】
切削刃支持孔6は、切削刃本体3Bの厚さTの方向の両面に対応する一対の側部内壁6Aと、ネジ孔2Sに対向する端部内壁6Bと、開口縁を切り欠いた開放壁6Cとで構成されている。切削刃本体3Bが殆ど隙間のない状態で嵌り込むように、前記切削刃支持孔6の側部内壁6Aの間隔が設定されると共に、端部内壁6Bの位置が設定されている。また、ロックネジ4の外周面には、ネジ孔2Sに螺合する雄ネジ部4Sが形成され、このロックネジ4の先端には円錐状の係合部4Aが形成され、基端側にはレンチ嵌合部4Bが形成されている。
【0023】
この切削工具では、図4、図5に示すように、ホルダ2の円形状の外周の中心位置を回転軸芯Xとしている。この回転軸芯Xを通過し、互いに直交する姿勢の仮想直線P、Qを想定すると、切削刃支持孔6の側部内壁6Aの形成方向が仮想直線Qに向かうものとして説明できる。更に、この切削刃支持孔6に切削刃3を挿入した状態では、仮想直線Pの方向に切削刃3の厚さTの方向が一致し、仮想直線Qの方向に切削刃3の長さLの方向が一致する。仮想直線Pにおいて回転軸芯Xからホルダ2の半径方向に変位した位置にネジ軸芯Yが設定されている。
【0024】
この切削工具では、切削刃3の上面3Sを仮想直線Qと一致させて配置し、この仮想直線Qの位置の刃部3Aにおいて切削を行うことが理想である。しかしながら、この位置に切削刃3を配置するように切削刃支持孔6を形成した場合には、切削刃支持孔6が仮想直線Pに沿ってホルダ2の外方側に変位することからホルダ2の強度低下を招くことも考えられる。このような理由から、図4に示す如く、切削刃支持孔6を外方に大きく変位させることのないように、切削刃3の厚さT方向での中央位置を回転軸芯Xに少し接近させる位置に切削刃支持孔6を穿設している。これにより、ホルダ2の直径が比較的小さいものでも大きい強度低下を招くことがない。
【0025】
また、この切削工具では、切削刃支持孔6において仮想軸芯P方向の幅の中央位置(切削刃3の厚さTの方向での中央位置)にネジ軸芯Yの位置が設定されている。特に、回転軸芯Xの位置から離間した位置にネジ孔2Sを形成した場合に、ネジ軸芯Yと同軸芯に形成されるネジ孔2Sの内面がホルダ2の外周に接近し過ぎることにより強度低下を招くこともある。この不都合を解消するため、ネジ軸芯Yを理想の位置よる回転軸芯Xの方向に少し変位した位置に配置することも考えられる。
【0026】
図6に示す如く、切削刃3の上面3Sと直交する方向を基準にして斜め姿勢で係合凹部3Cが形成されている。このため同図に示す領域Sにネジ軸芯Yが存在すれば確実なロックを実現する。従って、この領域Sに含まれる位置にネジ軸芯Yの位置を設定することでホルダ2の強度低下を回避できるのである。
【0027】
このような構成から、工具を組み立てる際には、ホルダ2の切削刃支持孔6に対して切削刃3の切削刃本体3Bを挿入し、ロックネジ4の雄ネジ部4Sをホルダ2のネジ孔2Sに螺合させ、レンチ(図示せず)により締め付ける操作が行われる。このような操作を行うことにより、ロックネジ4の円錐状の係合部4Aが切削刃3のV溝状の係合凹部3Cに嵌り込み、圧力が作用することで切削刃3は端部内壁6Bに押しつけられる状態に達し、また、係合凹部3Cにロックネジ4の係合部4Aが係入することで長さL方向での位置が決まり、抜け止め状態で固定状態に達する。
【0028】
特に、ロックネジ4が右ネジである場合には、切削刃3をロックする際に切削刃3に対し図4において時計回り方向に回転力が作用し、この回転力の作用によって切削刃3が僅かに回転する結果、切削刃支持孔6の側部内壁6Aの開口縁2Pに切削刃3が接触すると同時に、切削刃3の上面3Sのうち刃部3Aの反対の端部3Pが切削刃支持孔6の側部内壁6Aに接触する。このように接触状態に達した姿勢は、切削加工時の切削抵抗によって切削刃3が回転した際の姿勢と同じであるため、このロック時において切削刃3を安定姿勢に設定することになる。
【0029】
このように本発明の第1実施の形態によると、ホルダ2の端部側に半径方向に貫通する切削刃支持孔6が穿設されると共に、ホルダ2の端部に回転軸芯Xから半径方向に変位した位置にネジ孔2Sが穿設される構成であるので、ホルダ2が小型のものであっても強度低下を招くことがない。また、切削刃3にV溝状の係合凹部3Cを形成し、この切削刃3を固定するロックネジ4の先端を円錐状に成形した係合部4Aを形成したことにより、簡単な構造でありながら工具の組み立て状態では切削刃3の突出量を適正に設定しながら抜け止め状態で切削刃3のロックを行える。
【0030】
また、切削刃3は以下のように製造されている。つまり、超硬合金、サーメット、セラミックス、CBN等の硬質材料を用い、図2(a)に示す如く、断面の一辺が長さLに等しく、断面の他の一辺が幅Wに等しく、外面に係合凹部3Cに対応する溝部を長手方向に形成した棒状体を製造する。次に、棒状体を厚さTに等しい間隔で切削によって切り分け、切り分けた材料で刃部3Aを形成する。このように厚さTに等しい間隔で棒状体を切り分ける際には、刃部3Aに「にげ角」が作り出されるように、棒状体の軸芯に対して傾斜する平面で切削が行われる。
【0031】
このように棒状体を切り分けることで切削刃3を製造するものでは、同じ形状の切削刃3を容易かつ低廉に得ることができる。
【0032】
特に、本発明の切削工具に使用される切削刃3として、V溝状の係合凹部3Cを、その形成方向(ホルダ2に装着した状態で回転軸芯Xに沿う方向)の一端側を他端側より幅広で深い形状となるように形成する。
【0033】
このように係合凹部3Cの形状を設定することにより、ロックネジ4を締め付ける操作を行った場合には、この係合凹部3Cにロックネジ4の円錐状の係合部4Aが嵌り込み、この係合部4AがV溝状の係合凹部3Cの、より深い部位に入り込む方向の力が切削刃3に力が作用する。このような力の作用により、切削刃3は切削刃支持孔6の回転軸芯Xと直交する内壁面に圧接し切削刃3の姿勢が安定する。
【0034】
〔第2実施の形態〕
この第2実施の形態の切削工具では、第1実施の形態と同様にシャンクとホルダ2とを一体的に形成した工具本体Bを有し、ホルダ2に備えた切削刃3をロックネジ4で固定する構造は共通するものであるが、切削刃3の形状と切削刃支持孔6の形状とが第1実施の形態と異なる。
【0035】
この第2実施の形態の切削刃3は、超硬合金、サーメット、セラミックス、CBN等の硬質材料が用いられ、図7〜図10に示す如く長さL、第1幅W1、この第1幅W1より長寸となる第2幅W2、厚さTで示されるL字状に成形されている。第1幅W1で長さLの方向に形成される部位が切削刃本体3Bであり、この切削刃本体3Bからホルダ2の前端側に張り出すアーム部3Dが形成されている。このアーム部3Dの長さが第2幅W2の寸法と一致し、このアーム部3Dの突出側の端部に刃部3Aが形成されている。また、切削刃本体3BにはV溝状の係合凹部3Cが形成されている。
【0036】
切削刃支持孔6は、切削刃本体3Bの厚さTの方向の両面に対応する一対の側部内壁6Aと、ネジ孔2Sに対向する端部内壁6Bと、端部内壁6Bと対向する位置において端部内壁6Bに対して傾斜する姿勢の傾斜壁6Dとで構成されている。この傾斜壁6Dのうちホルダ2の先端に対応する部位は、ホルダ2の先端部の一部を切り開く形態で形成され、この傾斜壁6Dに対してネジ孔2Sが連通する開口が形成されている。尚、切削刃支持孔6は、先端部まで開口を形成する際の加工の容易性から傾斜壁6Dを有するものであるが、この傾斜壁6Dは必ずしも形成する必要はなく、傾斜壁6Dに代えて、例えば、第1実施の形態と同様の形状の孔部と、この孔部に連なるようにホルダ2の外周に形成した溝とで構成される形状でも良い。
【0037】
この切削工具では、ホルダ2の円形状の外周の中心位置を回転軸芯Xとしている。また、切削刃支持孔6の傾斜壁6Dがホルダ2の先端部を切り開く位置に形成されていることから、ネジ孔2Sのネジ軸芯Yは、回転軸芯Xを基準にして傾斜壁6Dが形成された位置から離間する方向に変位した位置に設定されている。
【0038】
このような構成から、工具を組み立てる際には、ホルダ2の切削刃支持孔6に対して切削刃3の切削刃本体3Bを挿入し、ロックネジ4の雄ネジ部4Sをホルダ2のネジ孔2Sに螺合させ、レンチ(図示せず)により締め付ける操作が行われる。この操作を行うことにより、ロックネジ4の円錐状の係合部4Aが切削刃3のV溝状の係合凹部3Cに嵌り込み、圧力が作用することで切削刃3は端部内壁6Bに押しつけられる状態に達し、また、係合凹部3Cにロックネジ4の係合部4Aが係入することで長さL方向での位置が決まり、抜け止め状態で固定状態に達する。
【0039】
特に、ロックネジ4の係合部4Aが切削刃3の係合溝3Cに嵌り込む際には、図9に示す如く、係合溝3Cの一対の面のうち、アーム部3Dが配置される部位と逆側の面に接当させても良い。このように接当させることにより、切削刃3を切削刃支持孔6の内方にシフトさせる力を作用させ、アーム部3Dの先端側の接当面3Tを、ホルダ2に形成された傾斜面6Dのうち、先端側の接当面6T(図8等を参照)に接当させることで切削刃3の姿勢を安定させることも可能となる。
【0040】
このようにホルダ2に対して切削刃3を取り付けた状態では、切削刃3のアーム部3Dがホルダ2の側面に張り出す形態となり、また、このアーム部3Dに形成された刃部3Aがホルダ2の先端側に突出する形態となる。これにより、切削工具を回転軸芯Xを中心として回転方向Rに回転させて切削加工を行うことにより、ホルダ2の先端に対向する領域の切削が実現するのである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、ホルダに形成した孔部に切削刃を挿入しロックネジで固定する構造の切削工具全般に利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
2 ホルダ
2S ネジ孔
3 切削刃
3A 刃部
3B 切削刃本体
3C 係合凹部
4 ロックネジ
4A 係合部
6 切削刃支持孔
X 回転軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸芯周りで駆動回転するホルダに対して、このホルダの外周面より半径方向で外方に突出する切削刃を備えている切削工具であって、
前記ホルダに対して、外周面から半径方向に向かう姿勢の切削刃支持孔が穿設されると共に、前記回転軸芯に沿う姿勢のネジ孔が前記ホルダの先端から前記切削刃支持孔に連通する位置に亘って穿設され、
前記切削刃が、前記切削刃支持孔に挿入される切削刃本体と、この切削刃本体に形成された係合凹部と、前記ホルダの外部に露出するように切削刃本体の端部に形成された刃部とを一体的に形成した構造を有しており、
前記切削刃本体を前記切削刃支持孔に挿入し、前記ネジ孔に螺合させたロックネジの先端の係合部を前記係合凹部に係合させて前記切削刃が固定される切削工具。
【請求項2】
前記切削刃の刃部が、前記回転軸芯に沿う方向でホルダの先端方向に露出する部位と、ホルダの基端方向に露出する部位とに形成されている請求項1記載の切削工具。
【請求項3】
前記切削刃支持孔が、前記ホルダの外周面から前記ホルダの先端部に亘る領域に形成され、
前記切削刃本体が、前記切削刃支持孔から前記ホルダの先端に達する形状を有すると共に、先端側に刃部を形成した構造を有している請求項1記載の切削工具。
【請求項4】
前記回転軸芯を基準にして前記ホルダの半径方向に変位した位置に前記ネジ孔が穿設されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の切削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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