説明

切削試験機

【課題】 表面粗さが小さい、きれいな加工面の最適加工条件を得るために、膨大な工数が確保できなくても効率良く最短の時間で、かつ、最小のコストで結果を出すことができる切削試験機を提供する。
【解決手段】 ワークWの表面粗さが小さくなる加工条件を得るための切削試験機10であって、主軸台7に回転自在に軸支され、ワークWまたは工具を保持して回転する主軸7aと、ワークWの面粗度を検出する面粗度検出手段と、切削加工時に前記工具に加わる切削抵抗を検出する切削抵抗検出手段と、切削加工時における前記工具の温度を検出する温度検出手段とを備えたことを特徴とする切削試験機10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの最適な切削加工条件を得るための切削試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来にはなかった次世代材料が開発され、一般部品に採用されている。たとえば、前記次世代材料のコバールは、硬質ガラスと膨張係数を等しくし、鉄、ニッケル、コバルトから構成された合金である。このコバールを用いて作られた線材や管は、硬質ガラスに封入したり接触させたりすることができるため、主に電子管材料や光通信関連部品に使われている。
また、インコネルは、ニッケルをベースにした合金である。このインコネルは、耐熱性、耐食性に優れているため、航空機エンジンや原子力発電の機器に使用されている。
このように、従来の材料の切削条件では切削できない異種の難切削材の部品が多く出回るようになってきている。
【0003】
工作機械、たとえば、NC旋盤を使用して被加工物(ワーク)の外径を切削する場合やワークに深穴を加工する場合、たくさんの条件で試験をしなければならないが、その試験の膨大な工数が確保できないのが現状である。そのために、試行錯誤的に試験を行うため、多くの無駄が発生してしまうという問題があった。また、最適な切削条件が判らないため、最適な切削加工条件のもとで可能な最長の工具寿命が判らないという問題があった。さらに、新規の難切削材の材料と工具がともに高価であるため、切削試験のコストの割りに成果が低いという問題があった。
【0004】
図6は、従来のNC旋盤のワーク計測装置を示す平面図である。図6に示すように、ワーク計測装置50は、加工後のワークWの径を計測するものである。ワーク計測装置50は、タレット57の回転工具取付部57aに、回転工具の代わりに旋回自在に取り付けられた測定子55を備えている。測定子55の先端は球状のプローブ55cになっている。刃物台56に設けられた工具駆動用のモータ58により、旋回軸部55aの軸線の周りに測定部55を旋回させる。測定子55は、プローブ55cがワークWと接触した際の変位により接触を検知してワークの加工径を測定する(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
また、切削中のワークの表面粗さ判定方法(図示せず)が開示されている。これは、工作機械の無人化運転を行う場合、加工不良品を最小に抑えるために、所定の切削面粗度が損なわれたかどうか等、切削面の精度を監視するためのものである(たとえば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−321140号(段落0016〜0018、図3)
【特許文献2】特開平5−177512号(段落0007〜0009、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これまで、ワーク計測装置やワークの表面粗さ測定装置が機械に組み込まれた目的は、加工ワークを良品に仕上げるためであり、加工不良品を最小に抑えるために加工不良品が出る前に、事前に工具(バイト)のチップ交換等の対策を講じるためであった。これは品質管理や、生産管理の向上対策であり、最適な切削条件を見つけるためのものではなかった。
なお、チップとは、超硬合金で形成された刃部の小片をいう。バイトの場合は1個であるが、フライスの場合は複数個から構成される。消耗により交換が可能で、スローアウェイチップともいい、工具の先端部に固定される。
【0007】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するために創案されたものであり、表面粗さが小さい、きれいな加工面の最適加工条件を得るために、膨大な工数が確保できなくても効率良く最短の時間で、かつ、最小のコストで結果を出すことができる切削試験機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、ワーク(W)の表面粗さが小さくなる加工条件を得るための切削試験機(10)であって、主軸台(7)に回転自在に軸支され、ワーク(W)または工具(11)を保持して回転する主軸(7a)と、前記ワーク(W)の面粗度を検出する面粗度検出手段と、切削加工時に前記工具(11)に加わる切削抵抗を検出する切削抵抗検出手段と、切削加工時における前記工具(11)の温度を検出する温度検出手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の切削試験機(10)であって、前記ワーク(W)の硬度を検出する硬度検出手段と、前記工具(11)を撮像する撮像手段と、前記ワーク(W)の寸法を検出する寸法検出手段とを、さらに備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の切削試験機であって、前記温度検出手段は電対温度計であり、前記熱電対温度計が前記ワーク(W)と前記工具(11)との間に発生する熱起電力に基づいて、前記工具(11)の温度を検出するものであって、前記主軸(7a)と前記主軸台(7)とを電気的に絶縁するために、前記主軸(7a)が前記主軸台(7)にセラミックベアリング(7c、7d)により軸支され、前記主軸(7a)から熱起電力を検出するために、前記主軸(7a)に可動接点部(20)を設置したことを含む熱起電力検出手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の切削試験機であって、前記主軸(7a)の可動接点部(20)は、液体の金属である水銀(20c)を保持した筒状の水銀保持部材(20a)を主軸(7a)の軸線上に設け、主軸(7a)の軸線上の端部に設けた接触子(20e)を前記水銀保持部材(20a)の水銀(20c)に挿入したことを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記接触子(20e)は、細線であることを特徴とする請求項4に記載の切削試験機。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の切削試験機(10)であって、機上にワークの着脱に供されるマテハンロボット(10c)を、さらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、ワークの表面粗さが小さくなる加工条件を得るための切削試験機であって、主軸台に回転自在に軸支され、ワークまたは工具を保持して回転する主軸と、前記ワークの面粗度を検出する面粗度検出手段を備えたことにより、最適な切削条件であるか否かの判定に有効である。また、切削加工時に前記工具に加わる切削抵抗を検出する切削抵抗検出手段を備えたことにより、工具に加わる切削抵抗を検出することができるため、切削速度と、工具の最適な切り込み量と、送り量との決定に有効である。さらに、切削加工時における前記工具の温度を検出する温度検出手段とを備えたことにより、切削点での温度上昇を確認できるため、最適な切削加工条件を判定するのに有効である。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、ワークの硬度を検出する硬度検出手段と、工具を撮像する撮像手段と、ワークの寸法を検出する寸法検出手段とを、さらに、備えたことにより、加工面の硬さの程度が判り、工具の摩耗の程度が判り、ワークの径が判るため、最適な切削加工条件を決定するのに有効である。
また、ワークの加工面の硬さを測定するための硬度計を設けたことにより、ワークの加工前と加工後の比較ができるため、そのワークの特性(加工硬化)を知ることができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、熱電対温度計がワークと工具との間の熱起電力の電圧差に基づいて、工具先端の切削点の温度を検出するものであり、主軸と主軸台とを電気的に絶縁するために、主軸が主軸台にセラミックベアリングにより軸支され、主軸の熱起電力を検出するために、主軸が主軸台との間に可動接点部を設置したことを含む熱起電力検出手段が得られたことにより、主軸と刃物台を利用した1つの熱電対温度計が構成できる。これにより、工具の温度を測定する温度計ができる。また、この熱電対温度計により、刃物台上で露出するものは、工具に接続した電線1本であり、露出する配線が少なく簡素にできる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、前記主軸(7a)の可動接点部(20)は、液体の金属である水銀(20c)を保持した筒状の水銀保持部材(20a)を主軸(7a)の軸線上に設け、主軸(7a)の軸線上の端部に設けた接触子(20e)を水銀保持部材(20a)の水銀(20c)に挿入したことにより、これまでの問題であった摩擦熱による発熱が抑えられるので、高速回転に対応でき、さらに、ノイズの発生や、摩耗、騒音等が、解消できる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、接触子(20e)が細線であることから、周速が小さく高速回転しても摩擦熱の発生を抑えることができるため、高速回転が可能である。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、切削試験機(10)の機上にワークの着脱を行うマテハンロボット(10c)を備えたことにより、ワークの受け渡しや供給の自動化できるため、効率良く最短の時間で結果を出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明に係る切削試験機の斜視図である。図1に示すように、切削試験機10の正面には左右に開閉するドア10a、10aが配設されており、そのドア10a、10aを開くと、正面には主軸台7が配設され、その主軸台7の主軸7aにはコレットチャック7bが装着されている。その主軸台7の手前には、水平に固定されたテーブル9(図3参照)が配設され、テーブル9には刃物台9a、9bが配置されている。また、刃物台9a、9bには櫛歯状に工具や測定具が配置されている。さらに、切削試験機10の右側には操作盤10bが配置され、機上には、マテハンロボット10cが載置されている。
【0021】
図2は本発明に係る切削試験機の平面図であり、図3は正面図、図4は左側面図である。図2に示すように、この切削試験機10は、主軸台移動型のNC旋盤となっている。
つまり、ベッド1には左右(X軸)方向に長い矩形のベース2が配置され、その上面にすべりガイド2a、2bが形成されている。そのベース2の上には、X軸(左右)方向へ摺動自在にサドル3が配設されている。このサドル3は、ベース2の中央に配設されたX軸ボールネジ4aを介してベース2に接続されており、前記X軸ボールネジ4aの軸端部には、X軸サーボモータ4が接続されている。
【0022】
また、サドル3の上面には、すべりガイド2a、2bと直交する方向のすべりガイド3a、3a(図3参照)が設けられ、このすべりガイド3a、3aに前後(Z軸)方向へ摺動自在にスライドベース5が配設されている。このスライドベース5はZ軸(前後)方向に長い矩形であり、また、スライドベース5の中央の裏面にはZ軸ボールネジ6a(図3参照)が配置され、このZ軸ボールネジ6aを介してサドル3にスライドベース5が接続されており、前記Z軸ボールネジ6aの軸端部には、Z軸サーボモータ6が接続されている。
【0023】
さらに、図4は、本発明に係る切削試験機の左側面図である。図4に示すように、スライドベース5の上面には、主軸台7が載置され、主軸台7の後部には、スピンドルモータ8が配設され、プーリ8aとゴム製の絶縁体によって形成されたVベルト8bによって、回転動力が伝達されるようになっている。
したがって、主軸台7はX軸とZ軸を有しており、刃物台9cが固定であっても円筒状
に旋削加工ができるNC旋盤となっている。
また、ワークを把持するコレットチャック7bは、主軸7aに固定されており、前記主軸7aを回転支持するベアリングを絶縁体のセラミック製のベアリング7c、7d(図5参照)とし、さらに、回転動力を伝達するVベルト8bも絶縁体とすることにより、主軸7aは主軸台7から完全に絶縁状態を構成することができる。
【0024】
また、図3は本発明に係る切削試験機の正面図である。図3に示すように、テーブル9の上面の右側には、切削抵抗を検出する切削抵抗検出手段である切削抵抗測定装置(切削動力計ともいう)12が設けられ、その上にベース状の刃物台9cが載置され、その刃物台9cには、櫛歯状に工具(ツール)を固定したバイトホルダ9a、9b(図2参照)が固定されている。このバイトホルダ9aには溝部が形成されており、この溝部に外径切削用バイト(以下、外径バイトという)11が装着されて固定されている。
さらに、外径バイト11の後端部には、温度検出手段である熱起電力の検出用の電線13aが接続されている。また、バイトホルダ9bには、ワークを切り落して蘇生するために突切りバイト18が同様に溝部に固定されている。
左側のテーブル9の上面には、ベース状の刃物台9dが載置され、寸法検出手段であるワーク計測装置17と、硬度検出手段である硬度計15と、面粗度検出手段である面粗度測定装置14等がそれぞれのホルダに固定され、所定の間隔をもって配置されている。
また、主軸台7の右側には、撮像手段であるCCDカメラ16が配置されている。
【0025】
工具は、ここでは外径バイト11と突切りバイト18であるが、この他に、たとえば、ドリルやボーリングバーであってもよい。ドリルであれば、ドリル用ホルダを増設してもよいし、交換しても構わない。
【0026】
切削抵抗測定装置12は、たとえば、外径バイト11の3成分の切削抵抗である主分力と、背分力と、送り分力との測定できる装置は、3成分切削動力計ともいう。この切削抵抗測定装置12は、テーブル9の上に搭載されており、切削抵抗測定装置12の上には各工具が固定され、刃物台9cによって挟持されている。この切削抵抗測定装置12には、水晶圧電式センサが3組が組み込まれており、3成分の切削動力を測定することができる。また、3成分の切削抵抗を求める方式は、ひずみ計ゲージを用いた方式であってもよいし、この他の方式の測定装置であっても構わない。また、3成分に限らず、1成分の動力計や2成分の動力計を利用してもよい。
【0027】
温度検出手段の温度計は、図2に示すように、切削熱によって温度上昇する工具の刃先点の温度を測定する。外見上は、外径バイト11の後端部に熱電対温度計用の電線13a、13bを接続したものであるが、ワーク側の熱起電力を取り出すためには主軸の絶縁が必要なため、主軸7aのベアリングは、セラミックスベアリング7c、7dに置き換え、Vベルトはゴム製のVベルト8b(図4参照)によって動力を伝達している。また、回転している主軸7aから熱起電力を取り出すため、主軸7aの後部側に、水銀20cを使った可動接点部20(図5参照)を設置している。
原理は熱電対温度計と同様である。熱電対温度計は2種類の金属線の熱起電力を利用した温度計であり、異種金属が接している部分の一方の温度が上がると、熱起電力(電圧)が発生することは知られている。また、この熱起電力は、温度に依存する。
つまり、ワークと工具がともに金属の場合、切削点は、異種金属の接合部と考えることができるので、工具とワークとの間に熱起電力が発生する。そこで、この熱起電力を測定することによって、切削中の工具刃先の温度を評価することができる。
【0028】
図5は、主軸の可動接点部を示す断面の模式図である。図5に示すように、可動接点部20は、主軸7aの後部に配置されており、液体金属の水銀20cを保持する水銀保持部材20aと、主軸7aに設けられた接触子20eが設けられている。
これは、ワークWを切削する外径バイト11と、水銀保持部材20aの後端部20bとの間の電圧を測定することによって外径バイト11の温度を測定する。
水銀保持部材20aは直径が、たとえば、3.0mmの筒状であり、主軸7aの軸線上に設けられている。また、水銀保持部材20a後端部には電線13bが接続され、電線13bは電圧測定の電圧計に接続されている。
接触子20eは、主軸7aの軸線上の端部に設けられている。接触子20eは、振れのない姿勢で水銀20cの中に挿入し埋没されて可動接点とすることにより、良好な電気的接続を可能にしている。接触子20eは、ここでは直径が0.1mmの細線である。
したがって、接触子20eは外周の周速は、回転数がたとえば毎分5000回転であっても、1.57m/min(π×0.1mm×5000×1/1000=1.57m/min)と小さいため、摩擦熱による発熱が抑えられるので、高速回転に対応できる。
なお、一般に、これまでの可動接点部は、固体の金属同士(たとえば、銅板と銅板、または金属とブラシ)で構成されているが、固体の金属同士であると擦れ合うときの接点が不安定になり、ノイズの発生や、摩耗、騒音等のさまざまな問題が生じる。
そこで、図5に示すように、可動接点部に液体の金属である水銀を使用し、主軸側の回転子である接触子20eを限りなく最小径にしたことにより、その他のこれまでの問題、たとえば、ノイズの発生や、摩耗、騒音等が、解消できる。
【0029】
面粗度検出手段の面粗度測定装置14は、接触型であり、ワークWの表面粗さを触針が接触して測定する。この面粗度測定用の触針部はケース14aに格納され、内部には清浄な圧縮空気が供給されており、外部からの切削液の浸入を防止している。また、表面粗さを測定する際には、ケース14aが上昇して面粗度測定装置14の触針を出現させ、ワークWを接近させる。なお、光を照射してその散乱光の性質等から評価する方法や、光学素子(ガラスやプラスチック等の透明な材料)や絶縁材料などの表面粗さを評価する測定方法のような非接触式であってもよいし、この他の方式であっても構わない。
【0030】
硬度検出手段の硬度計15は、ワークWの加工面の硬さを測定するためのものであり、ロックウェル硬さ試験機に使われるのと同じダイヤモンド円錐圧子を使用する。ダイヤモンド円錐圧子は、先端が120°の円錐形になっており、このダイヤモンド円錐圧子にワークを所定の力で押し付け、その押しキズを面粗度測定装置14で測定して硬さを評価する。
たとえば、ステンレスのような、加工によって表面が加工硬化する材料の加工前、加工後の硬さを評価するには好都合である。
【0031】
撮像手段のCCDカメラ16は、工具のチップ刃先を拡大撮像して摩耗の具合を確認するためのカメラである。CCDカメラ16は、主軸台7に隣接してカバーに格納されている。CCDカメラ16は、加工後にエアシリンダ16bの駆動による前進によってドア16aが開き、たとえば、外径バイト11に接近し、チップ先端部の形状変化を撮像して画像データをパソコンに送信する。
【0032】
寸法検出手段のワーク計測装置17は、ワークの外径(直径)を等間隔に8カ所(45度ずつ)測定して平均値を求め、直径を表示する。これは全方位形精密マイクロスイッチを内蔵したプローブ17aによって検知される。この検知信号は、プローブ17aの元部に内蔵されたトランスミッタとレシーバで構成されるオプチカルトランスミッションからインターフェイスユニットに送られ、加工後の寸法計測が行われる。ワークの所定直径は、ソフトで指定する。
また、本体のX軸にはスケール(図示せず)が設けられ,クローズドループが形成されている。なお、スケールは、マグネスケール、パルスケール、インダクトシンなどのほか、その他のスケールであってもよい。
【0033】
つづいて、本発明の切削試験機の動作について説明する。
ワークストッカ21(図2参照)に新しいワークW(たとえば、φ20×150mmのバー材)が供給されると、機上のマテハンロボット10cのハンドがワークレスト(図示でず)に運んでセットすると、プッシャー(図示せず)がワークWをコレットチャック7bに押し込み、コレットチャック7bがワークWを把持する。
主軸7aが回転し、主軸台7が前後(Z軸)方向と、左右(X軸)方向へ移動し、予め入力されたプログラムにしたがって、最初の設定された切削条件にのっとり、外径バイト11にワークWが接近し、1回目の外径切削加工を行う。
その間、切削抵抗測定装置12は、外径バイト11の主分力と、背分力と、送り分力との3成分の切削抵抗を測定する。さらに、温度計13は、切削熱によって温度上昇する工具先端の切削点の温度を測定する。
【0034】
さらに、この面粗度測定装置14の触針部のケース14aが上昇し、触針部(図示せず)が現われると、主軸台7のワークWが接近する。そして、面粗度測定装置14の触針にワークWの表面が接触して表面粗さを測定する。
さらに、硬度計15に主軸台7が接近する。そして、ダイヤモンド円錐圧子にワークWを所定の力で押し付けて、その圧痕の形状を面粗度測定装置14で測定し、この粗さより硬さを推定する。
【0035】
また、CCDカメラ16のエアシリンダ16bが駆動してCCDカメラ16が前進すると、正面のドア16aが開き、CCDカメラ16が前進しながら左に移動して、外径バイト11に接近し、外径バイト11のチップ先端部の撮影を行う。
さらに、ワーク計測装置17のプローブに、主軸台7が移動して、C軸制御された主軸7aを割り出し、ワークの外径(直径)を等間隔に8カ所(45度ずつ)測定して、平均値を求め、直径表示する。
以上の測定を手際よく行い、元の位置に戻り、つぎの切削条件で2回目の切削加工を開始する。このように、この手順にしたがって、100種類以上の切削条件によって切削試験が効率良く、無駄なく行われ、終了する。
なお、ワーク直径が8mmになると、ワークWは突切りバイト18によって切断され、その後、マテハンロボット10c(図1参照)により25mm引き出され、ワークがなくなれば、新しいワークが供給される。
その結果、従来、試行錯誤で網羅的に決められた100種類以上の切削条件を実施するために、1〜2週間要していた切削試験作業は、2〜3時間で終えることができるようになった。これは、1/25〜1/33に短縮したことになる。このように、効率良く最短の時間でワークの切削データを採取して整理して最適な切削加工条件を提供することができる。
【0036】
なお、本発明はその技術思想の範囲内で種々の改造、変更が可能である。たとえば、NC旋盤の代わりに、フライス盤、マシニングセンタ(MC)等を使用してワークの外周を加工するフライス加工やミーリング加工であっても構わないし、また、種々の測定器の配置を変えてもよいし、種々の測定器の種類を増やしても構わない。
また。機械にいろいろセンサを装着することにより、測定データがデータベースに溜まる。そして、溜まったデータを参照しながら、切削試験計画を立て、また、加工を行う。こうしたサイクルを繰り返すことにより、ますます、精度の高い最適な切削加工条件を見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る切削試験機の斜視図である。
【図2】本発明に係る切削試験機の平面図である。
【図3】図1の正面図である
【図4】図1の左側面図である。
【図5】主軸の可動接点部を示す断面の模式図である。
【図6】従来のNC旋盤のワーク計測装置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0038】
7 主軸台
7a 主軸
7b コレットチャック
7c、7d セラミックスベアリング
8a プーリ
8b Vベルト
9 テーブル
9a,9b バイトホルダ
9c,9d 刃物台
10 切削試験機
10c マテハンロボット
11 工具(外径切削用バイト、外径バイト)
11c バイトホルダ
12 切削抵抗測定装置(切削抵抗検出手段)
13 温度計、熱電対温度計(温度検出手段)
13a、13b 電線
14 面粗度測定装置(面粗度検出手段)
15 硬度計(硬度検出手段)
16 CCDカメラ(撮像手段)
16a ドア
16b エアシリンダ
17 ワーク計測装置(寸法検出手段)
17a プローブ
18 突切りバイト
20 可動接点部
20a 水銀保持部材
20b 後端部
20c 水銀
20d シール
20e 接触子
21 ワークストッカ
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク(W)の表面粗さが小さくなる加工条件を得るための切削試験機(10)であって、
主軸台(7)に回転自在に軸支され、ワーク(W)または工具(11)を保持して回転する主軸(7a)と、
前記ワーク(W)の面粗度を検出する面粗度検出手段と、
切削加工時に前記工具(11)に加わる切削抵抗を検出する切削抵抗検出手段と、
切削加工時における前記工具(11)の温度を検出する温度検出手段と、
を備えたことを特徴とする切削試験機(10)。
【請求項2】
前記ワーク(W)の硬度を検出する硬度検出手段と、
前記工具(11)を撮像する撮像手段と、
前記ワーク(W)の寸法を検出する寸法検出手段とを、
さらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の切削試験機(10)。
【請求項3】
前記温度検出手段は電対温度計であり、前記熱電対温度計が前記ワーク(W)と前記工具(11)との間に発生する熱起電力に基づいて、前記工具(11)の温度を検出するものであって、
前記主軸(7a)と前記主軸台(7)とを電気的に絶縁するために、前記主軸(7a)が前記主軸台(7)にセラミックベアリング(7c、7d)により軸支され、
前記主軸(7a)から熱起電力を検出するために、前記主軸(7a)に可動接点部(20)を設置したことを含む熱起電力検出手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の切削試験機(10)。
【請求項4】
前記主軸(7a)の可動接点部(20)は、液体の金属である水銀(20c)を保持した筒状の水銀保持部材(20a)を主軸(7a)の軸線上に設け、主軸(7a)の軸線上の端部に設けた接触子(20e)を前記水銀保持部材(20a)の水銀(20c)に挿入したことを特徴とする請求項3に記載の切削試験機(10)。
【請求項5】
前記接触子(20e)は、細線であることを特徴とする請求項4に記載の切削試験機。
【請求項6】
機上にワーク(W)の着脱に供されるマテハンロボット(10c)を、さらに備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の切削試験機(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−102864(P2006−102864A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292103(P2004−292103)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(391001619)長野県 (64)
【出願人】(391033171)株式会社エグロ (14)
【Fターム(参考)】