説明

切断具

【課題】高強度のラインなどの切断に適し、且つ携帯性、操作性も高い切断具を提供すること。
【解決手段】実施形態のラインカッターは、ポリエチレンマルチフィラメントからなるラインの一部を任意に固定することが可能な固定部4と、固定部4に近接して配置された刃部5とを備え、刃部5は、固定部4に一部を固定されたラインの固定されていない部分を把持して刃部5に摺接可能に構成されている。このため、ラインを固定部4で固定した状態でラインを刃部5に押しつけながら摺動させることができ、強度の大きなラインを容易に切断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸状部材の切断具に係り、詳しくは、特に高強度の釣り糸を切断するラインカッターに適した切断具に関する。
【背景技術】
【0002】
ロッドやリールを用いる釣では、いわゆる「仕掛け」がセットされる。この仕掛けは、一般にロッドやリールに接続されるライン(道糸)と、サルカンなどの連結具を介してラインに接続されるハリスと、ハリスに結び付けられる針とから構成され、対象魚により適宜浮き、テンピン、餌かご、疑似餌などが付加される。ラインはハリスより太く強度が大きい。特に、大型魚を釣り上げるためのラインには相応の強度が求められる。このためラインには、例えば強度に応じた太さのポリアミドからなるモノフィラメントが用いられることが多かった。
【0003】
また、仕掛けは釣場で釣り人自身が作成したり修正することがあるため、ハリスやライン(以下「釣り糸」と総称する。)を釣場で切断する必要がある。このため強度の大きいラインを切断するためのラインカッターが用いられる。釣場では釣のために両手を自由に使いたいため、このラインカッターもいちいちポケットに入れず、釣服に装着したピンオンリール(ワイヤを繰り出すことができ、かつ自動で巻き取るリール)に取り付けて使用することが多く携帯性が要求される。
【0004】
そこで、このラインカッターには、毛抜きのような形状、例えば、特許文献1に示すような先端部が対向配置された一対の挟持部材を備え、切断刃が所定角度だけ傾斜した方向に沿って先端部に形成され、近接されることによって各切断刃同士の間に切断対象物が挟み込まれて切断される釣具用カッターが提案されている。このようなものであれば小型で携帯性も高く、刃先の接触圧が小さく長期間切れ味が維持できた。
【特許文献1】特開2004−97118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年ポリアミドのモノフィラメントのラインに替えて、より強度の強い素材も用いられるようになってきた。例えばポリアミドより伸びが少ないため感度が良好で、強度、耐光性、耐薬品性、耐摩耗性、耐屈曲疲労性などにも優れた超高分子量ポリエチレンを巻き癖がつきにくいように極細繊維を多数編んで形成したポリエチレンマルチフィラメントラインなどが使用されるようになってきた。
【0006】
ところが、このポリエチレンマルチフィラメントラインでは、多数の極細繊維から構成され、かつその強度も高いため、特許文献1に記載されたような従来のラインカッターでは切断できないという問題が生じた。鋸歯のついた大型の鋏や鋭利な剃刀などであれば切断はできるが、厳冬や夜間の岩壁、船上などの釣場では、このようなものでは携帯性や操作性に問題があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するため、高強度のラインなどの切断に適し、且つ携帯性、操作性の高い切断具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の糸状部材の切断具では、糸状部材(7)の一部を任意に固定することが可能な固定部(4)と、前記固定部(4)に近接して配置された刃部(5)とを備え、前記刃部(5)は、前記固定部(4)に一部を固定された糸状部材(7)の固定されていない部分を把持して当該刃部(5)に摺接可能に構成されたことを要旨とする。
【0009】
この構成の発明では、糸状部材を固定しながら刃部に摺接させることで、強度の大きな糸状部材でも容易に切断することができる。
また、請求項2に記載の糸状部材の切断具では、請求項1に記載の切断具の構成に加え、前記固定部(4)は、押圧による弾性変形により糸状部材(7)を固定する一対の挟持部材(1,2)から構成されたことを要旨とする。
【0010】
この構成の発明では、押圧による弾性変形により容易に糸状部材を固定できるという効果がある。
そして、請求項3に記載の糸状部材の切断具では、請求項2に記載の糸状部材の切断具の構成に加え、前記固定部(4)は、前記一対の挟持部材(1,2)のうちの第1の挟持部材(1)の先端部と他方の第2の挟持部材(2)とで前記糸状部材(7)を固定し、前記刃部(5)は、前記第2の挟持部材(2)を前記第1の挟持部材(1)よりも延設した先端部に設けられたことを要旨とする。
【0011】
この構成の発明では、第1、第2の挟持部材で固定した糸状部材を、延設した第2の挟持部材の先端に設けることで、固定された糸状部材を所定距離離間した刃部に摺接させて切断することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高強度のラインなどの切断に適し、且つ携帯性、操作性も高い切断具とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明の切断具を具体化したラインカッターの一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。図1に示すように、一対の板状のばね部材1,2は、全体がステンレススチール製の弾性を有する薄い金属板からなるとともに、略同一の魚をかたどった形状に打ち抜かれている。この一対のばね部材1,2の魚の頭部に相当する部分にスポット溶接により相互に溶着された固着部3が形成されるとともに、魚の尾部側の方向に向かって次第に相互に離間するようになっている。ばね部材1の尾部側の端部は内側に略90度屈曲され、その先端が対向するばね部材2に間隙を有して垂直に対向する固定部4が形成されている。一方、ばね部材2の尾部側の先端は、ばね部材1の先端よりも長く延設され、内側に略90度屈曲されるとともに、先端部に刃部5が形成されている。また、魚の目に当たる部分には、図示しないピンオンリールのワイヤ先端のフックに取り付けるための孔6が形成されている。
【0014】
そして、図2に示すように、ばね部材1,2は外側を指で把持し、押圧することで弾性変形して相互に近接し、固定部4がばね部材2の内側に当接可能になっている。
次に上記実施形態の作用について説明する。
【0015】
まず、図3に示す切断する対象であるライン7について説明する。従来のラインはポリアミド製のモノフィラメント(単繊維)であり、所定の強度を確保するためには、その断面積を大きくしていた。この場合は、比較的柔らかい均質な材質であるため、刃がついた毛抜き状のラインカッターで、その一部を傷つけるとそこから破断が拡がって全体に及び、容易に全体の切断が行われる。一方、ポリエチレンマルチフィラメントラインにおいては、超高分子量ポリエチレンの表面強度がポリアミドの表面強度より強いため、従来のラインカッターでは容易に表面に傷が付かない。さらに、極細繊維として編んで形成されているため弾力があり、特に刃と刃の間に極細繊維より大きな隙間があると有効な力が繊維に掛らない。また、多数の繊維からなるため1本の繊維が破断してもそれが全体に連続しない。そのため、従来のように刃と刃の間に挟持して押切る方法ではなかなか切断できなかった。
【0016】
本実施形態では、図3に示すようにばね部材1,2の外側を2点鎖線で示す指で把持し、押圧することで弾性変形させて相互に近接させ、固定部4とばね部材2の内側との間にライン7を挟持して固定する。このときライン7は、近接して配置された刃部5に接触する状態となっている。次に、そのまま一部が固定された状態でライン7の刃部5側の一端をつまみ、ばね部材1,2の長手方向に沿って引くようにして刃部5の刃先の延設方向に沿ってライン7を揺動させる(図4参照)。このとき、ライン7は、図3に示すようにライン7を引く力で刃部5に押しつけられる。そして、ライン7を揺動することで、固定部4と刃部5との間は距離dだけ離間しているため、ライン7は刃部5上を幅wの間で往復して摺動する。このとき、ライン7を構成する繊維は、その1本1本は極細であるため、擦れや摩擦熱には弱く切れやすい。また、刃部5と摺接している部分には十分な押圧力がかかっている。このため、数回往復させることで極細繊維が順次切断され、結果ポリエチレンマルチフィラメントからなるライン7全体は容易に切断することができる。
【0017】
上記第1の実施形態では、次のような効果を奏することができる。
・刃部5で押圧するだけでなく、刃部5にライン7を摺接させるため、表面強度の高いライン7でも容易に切断できる。
【0018】
・また、ライン7がどのような極細の繊維であっても、完全に切断するまで有効に刃部5にライン7を押圧することができる。
・構造が単純であるため、容易に製造でき、かつ小型化が容易であり、製造コストも低減することができる。
【0019】
・孔6があるので釣着に装着したピンオンリールのフックに容易に装着できる。
・操作がライン7を押圧して揺動させるだけの単純な操作で、手袋をした作業や、暗所、揺れる船上での作業でも容易にライン7を切断できる。
【0020】
・刃部5と刃部5とが接触することがないため、いつまでも刃部5の切れ味を維持することができ、高強度のライン7でも確実に切断できる。
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態を図5、図6を参照して説明する。本実施形態では、図1に示す第1の実施形態と同様に、2枚の板状のばね部材1,2は、全体がステンレススチール製の弾性を有する薄い金属板からなるとともに、略同一の魚をかたどった形状に打ち抜かれている。このばね部材1,2の魚の頭部に相当する部分にスポット溶接により相互に溶着された固着部3が形成されるとともに、魚の尾部側の方向に向かって次第に相互に離間するようになっている。また、魚の目に当たる部分には、図示しないピンオンリールのワイヤ先端のフックに取り付けるための孔6が形成されている。以上、図1を参照して図示を省略する。
【0021】
また、本実施形態では図5に示すように、ばね部材1の尾部側の端部と、ばね部材2の尾部側の端部とは、ばね部材1とばね部材2とを押圧して重ねたときに面一となるような斜め45度の斜面が形成されている。このばね部材1の先端は固定部4として機能し、ばね部材2の先端は刃部5として機能するようになっている。そして、ばね部材1,2は外側を指で把持し、押圧することで弾性変形して相互に近接し、固定部4がばね部材2の内側に当接可能になっている。
【0022】
次に上記実施形態の作用について説明する。
本実施形態では、ばね部材1,2の外側を指で把持し、押圧することで弾性変形させて相互に近接させ、固定部4とばね部材2の内側との間にライン7を挟持して固定する。この固定部4は刃部5と同様に先鋭な刃先が形成されているが、摺動されないためライン7は切断できず、固定する作用のみ発揮するものである。そして、このときライン7は、近接して配置された刃部5に接触可能な状態となっている。次に、そのままライン7を固定部4で固定した状態でライン7の刃部5側の一端をつまみ、図5において下方に引くようにしながら図6に示すように刃部5の刃先延設方向に沿ってライン7を揺動させる。このとき、ライン7は、図5に示すようにライン7を下に引く力で刃部5に押しつけられる。そして、ライン7を揺動することで、固定部4と刃部5の間には距離dだけ離間しているため、ライン7は刃部5上を図6に示すように幅wの間で往復して摺動する。このとき、ライン7を構成する繊維は、その1本1本は極細であるため、擦れや摩擦熱には弱く切れやすい。また、刃部5と摺接している部分には十分な押圧力がかかっている。このため、数回往復させることでポリエチレンマルチフィラメントからなるライン7は容易に切断することができる。
【0023】
上記第2の実施形態では、特に、次のような効果を奏することができる。
・固定部4、刃部5が、ばね部材1、2を曲げ加工することなく、重ねた状態で一体として研削することで容易に形成できるため、特に容易に製造できる。その結果コストも低減することができる。
【0024】
(第3の実施形態)
次に本発明の第3の実施形態を図7、図8を参照して説明する。本実施形態は、第2の実施形態の固定部4と刃部5の位置関係のみが異なるため、異なる部分のみ説明し、他の部分の説明は省略する。
【0025】
本実施形態では、図7に示すように固定部4と刃部5は、いずれも45度の斜面が形成されている。ただし、刃部5を備えるばね部材2を延長して、固定部4から離間するように形成されている。このため、図5に示す第2の実施形態に示す距離dより大きくなっている。したがって、ライン7を刃部5に摺接する幅wも第2の実施形態よりも大きくなり、その結果第2の実施形態よりもライン7を容易に切断できる。
【0026】
上記第3の実施形態では、特に次のような効果を奏することができる。
・固定部4、刃部5が、曲げ加工することなく、ばね部材1、2をそれぞれ研削することで容易に形成できるため、第1の実施形態よりも容易に製造できる。
【0027】
・固定部4でのラインの固定位置から切断位置までの距離dが、第2の実施形態より大きいため、摺接する幅wも大きくなり、より早く切断できる。
なお、上記第1〜3の実施形態は以下のように変更してもよい。なお、図9〜図12はいずれも指で押圧した状態を示す。
【0028】
○ 図9に示すように、固定部4を平坦な形状としてもよい。この場合、ライン7に接触する部分にヤスリ状の凹凸を設けるなど、滑り止め加工をすると、操作が容易になる。
○ また、図10に示すように固定部4と刃部5は、いずれか一方のばね部材(ここではばね部材1)に設けられるようにしてもよい。この場合、ばね部材1の端部は指で押圧した場合でも、ばね部材2から離間するように端部が外側に曲げ加工されており、その屈曲部が固定部4として形成され、ばね部材1の先端部に刃部5が形成される。このため、固定部4と刃部5は距離dだけ離間して、ライン7を刃部5に摺接させることができる。
【0029】
○ さらに図11に示すように、ばね部材1の端部を一旦外側に屈曲させて、さらにばね部材2から離間した位置で尾部側に延設し、再び屈曲させてばね部材2内側に所定距離離間させた状態で概ね垂直に対向する曲げ加工をする。そして刃部5は、このばね部材2の内側に対向する先端部に設ける。このように構成することで、刃部5が内側に向くようにすることができ、携帯性を高めることができる。
【0030】
○ そして図12に示すように、固定部4,4を、ばね部材1,2のいずれにも設けてライン7を挟持するようにしてもよい。
○ なお、この固定部4,4は、ばね部材1,2とは別のゴムなどの弾性があり滑りにくい材質とすることも好ましい。
【0031】
○ また、図12に示すように、刃部5,5をばね部材1,2のいずれにも設けて、いずれの方向にライン7を傾けてもライン7を切断できるようにすることもできる。
○ なお、上記実施形態では一対の挟持部材であるばね部材1,2は、別部材をスポット溶接してピンセット状の形状としているが、カシメ、接着等その固着方法は問わない。また、本発明では図13に示すようにばね部材1,2と固着部3とを金属板をU字状に曲げて連続してピンセット状に一体に形成したものも一対の挟持部材に含む。
【0032】
○ また、図13に示すように、ばね部材1,2の先端部を平行にL字状に延設してもよい。この場合、固定部4と刃部5の刃先の延設方向は、上記実施形態とは異なりばね部材1,2の長手方向と直交した方向になる。このようにL字状に形成することで押圧する指が無理な姿勢となることなくライン7を切断できる。
【0033】
○ なお、本発明の挟持部材は、全体を弾性部材で形成する必要はなく、上記実施形態のばね部材1,2に替えて、弾性のない素材をリンクとコイルばねなどを組み合わせて、全体として挟持部材とすることもできる。また、固定された本体に対してスライダを移動してライン7を固定するようなものも含む。
【0034】
(第4の実施形態)
次に本発明の第4の実施形態を図14を参照して説明する。本実施形態のラインカッターは、本体部11がステンレススチールの金属板から形成されるとともに、曲げ加工により断面形状が概ねコ字状に形成される。そして、一方の立設された端部11aには、V字状の切込み部8が形成されその底部に溝状の固定部4が設けられる。また、この固定部4と対向する他の立設された端部11bの先端には刃部5が形成される。
【0035】
次に上記実施形態の作用について説明する。
本実施形態では、V字状に形成された切込み部8にライン7を掛けて図の下方に引くと、ライン7が幅の狭い溝状の固定部4で挟持される。特にマルチフィラメントでは多数の繊維を編んで形成しているので滑りにくく、このような挟持を容易にしている。そしてこのライン7が固定部4で固定された状態で、刃部5側のライン7を指でつまんで下向きに引っ張りながら刃部5の刃先形成方向に沿ってライン7を揺動させる。このとき、ライン7は、図13に示すようにライン7を引く力で刃部5に押しつけられる。そして、ライン7を揺動することで、固定部4と刃部5との間は距離dだけ離間しているため、ライン7は刃部5上を幅wの間で往復して摺動する。ライン7を構成する繊維は、その1本1本は極細であるため、擦れや摩擦熱には弱く切れやすい。また、刃部5と摺接している部分には十分な押圧力がかかっている。このため、数回往復させることで極細繊維が順次切断され、結果ポリエチレンマルチフィラメントからなるライン7全体は容易に切断することができる。
【0036】
上記第4の実施形態では、次のような効果を奏することができる。
・構造が極めて簡単で生産が容易であり、コストも低減できる。
・固定部4はライン7を切込み部に引っかけて下方に引くだけで押圧することもなく容易に固定できる。
【0037】
・弾性変形する可動部もないため性能の低下もない。また、全体を肉厚の金属板で形成することもできるため、剛性の高いものとすることができる。
(第5の実施形態)
次に本発明の第5の実施形態を図15(a)、(b)を参照して説明する。本実施形態のラインカッターは、製造にあたって図15(a)に示すように、全体が細長の長方形のステンレススチールの金属板の本体部11の長手方向の一端部に刃部5を形成する。そして、刃部5を形成した端部と平行な底辺を有する概ね二等辺三角形の部分を打ち抜いて切込み部8を形成する。この切込み部8の刃部5と反対の方向には、固定部4が形成される。
【0038】
次に、図15(b)に示すように、このような本体部11の刃部5側の部分を概ね90度折り曲げ、さらに刃部5を巻き込むような方向に切込み部8の部分の本体部11を湾曲させる。
【0039】
このように形成したラインカッターの作用について説明する。
図15(b)に示すようにライン7は切込み部8の開口に掛けて、固定部4の部分に挟持させる。そして、ライン7の一部が固定された状態でライン7を切込み部8に入れるように引っ張るとライン7は刃部5に接触する。そして、ライン7を下に引きながら刃部5の刃先延設方向に沿って揺動させる。そうすることでライン7が切断できる。
【0040】
上記第5の実施形態では、特に、次のような効果を奏することができる。
・刃先が本体部11の内側に位置するので、携帯時にカバーがなくても刃先が他のものに当たりにくいため、携帯性が向上する。
【0041】
・本体部11全体が細長に形成され、刃部5と反対方向に延設されているため、この部分をハンドルとして使用でき、持ちやすくなっている。
○ なお、第4、第5の実施形態の切込み部8は三角形に限定されず、ライン7を固定可能な固定部4を備え、ライン7を刃部5に押圧して摺動できれば、狭い溝形状や曲線から構成されたものなどどのような形状でもよい。
【0042】
(第6の実施形態)
次に本発明の第6の実施形態を図16について説明する。本実施形態のラインカッターの本体部11は、ステンレススチールからなる細長い金属板から形成されるとともに、その長手方向の一端部が90度折り曲げ加工されて、その先端には刃部5が形成されている。また、他の端部は円弧状に形成されている。また、本体部11の中央部には、円柱状の突起からなう固定部4が設けられるとともに、固定部4には、くびれが形成されている。
【0043】
次に上記実施形態の作用について説明する。
ライン7は、固定部4のくびれ部分に1回〜複数回、巻回して固定する。そしてライン7を固定部4に固定したまま、ライン7の一端をつまんで本体部11の延設方向に沿って刃部5側に引っ張る。このときライン7は刃部5に接触する。そして、ライン7を下に引きながら刃部5の刃先延設方向に沿って揺動させる。そうすることでライン7が切断できる。
【0044】
上記第6の実施形態では、特に、次のような効果を奏することができる。
・固定部4には可動部がないため、故障や劣化がない。必要に応じて固定部4に巻き回す回数を変えることで、ラインに応じた固定力を得ることができる。
【0045】
上記1〜6実施形態は、さらに以下のように実施することができる。
○ 素材は、ステンレススチールに限らず、各種金属、エンジニアリングプラスチック、セラミックス等各種の材料を用いることができ、さらにこれらを適宜組み合わせて使用することもできる。
【0046】
○ 刃部5は、ばね部材1,2や本体部11と平行な刃先の延設方向を持つものに限定されさず、図17に示すように、ばね部材1,2や本体部11に対して所定の傾きを持ったものでもよい。この場合は、ライン7をばね部材1,2や本体部11と直交する方向に引き下げれば、その力でライン7を刃部5に押しつけながら、矢印方向にライン7を摺接することができる。
【0047】
○ 刃部5の刃先は直刃に限らず、細かい鋸歯や波刃でもよい。
○ また、図17に示すように刃部5の周囲にガード9を設け、不用意に刃先が触れないようにしたものも望ましい。
【0048】
○ 本発明の切断具は独立したラインカッターとしてではなく、例えば、ラインの保存用のリールに付属して設けられてもよい。
○ 刃部5は、本体と一体に形成される必要はなく、例えばプラスチック製の本体に金属製の刃部5を設けたものでもよい。また、固定部4もばね部材1,2、本体部11と別の部材を付加したものでもよい。
【0049】
○ 各実施形態では本発明をラインカッターとして切断の対象をポリエチレンマルチフィラメントからなるライン7を例に説明したが、もちろん従来のポリアミドモノフィラメントからなるライン、ポリフッ化ビニリデントモノフィラメントや、ポリエステルライン等の各種ラインを切断するにも用いることができる。もちろんハリスでも使用できる。さらに、釣り糸に限らず、スポーツや工芸、或いは産業用に使用できることはいうまでもない。
【0050】
○ また、各実施形態に開示された要素を削除し、或いは付加し、又は組み合わせて実施することができることは言うまでもない。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について追記する。
[付記1]前記糸状部材は釣用のラインであり、前記切断具がラインカッターであることを特徴とする。
[付記2]前記ラインは高密度ポリエチレンマルチフィラメントラインであることを特徴とする。
[付記3]前記挟持部材は2枚の弾性を有する板状部材から形成されたことを特徴とする切断具。
[付記4]前記刃部が前記板状部材と一体に設けられたことを特徴とする切断具。
[付記5]前記刃部が挟持部材の先端部が屈曲されて形成されたことを特徴とする切断具。
[付記6]前記固定部は、挟持部材の先端部が屈曲されて形成されたことを特徴とする切断具。
[付記7]前記固定部は、前記糸状部材をV字状の溝に固定することを特徴とする切断具。
[付記8]前記固定部は、前記糸状部材を巻回して固定することを特徴とする切断具。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1の実施形態を示す斜視図。
【図2】第1の実施形態のラインカッターを押圧した状態の斜視図。
【図3】第1の実施形態のラインカッターでラインを押圧した状態の断面図。
【図4】第1の実施形態のラインカッターでラインを揺動する状態を示す図。
【図5】第2の実施形態のラインカッターでラインを押圧した状態の断面図。
【図6】第2の実施形態のラインカッターでラインを揺動する状態を示す図。
【図7】第3の実施形態のラインカッターでラインを押圧した状態の断面図。
【図8】第3の実施形態のラインカッターでラインを揺動する状態を示す図。
【図9】別の実施例を示す図
【図10】さらに別の実施例を示す図。
【図11】さらに別の実施例を示す図。
【図12】さらに別の実施例を示す図。
【図13】さらに別の実施例を示す図。
【図14】第4の実施形態のラインカッターでラインを揺動する状態を示す斜視図。
【図15】(a)第5の実施形態のラインカッターの製造前の平面図。(b)第5の実施形態の使用時の斜視図。
【図16】第6の実施形態のラインカッターでラインを揺動する状態を示す斜視図。
【図17】刃部の別の形態を示す図。
【符号の説明】
【0052】
1…ばね部材(第1の挟持部材)、2…ばね部材(第2の挟持部材)、3…固着部、4…固定部、5…刃部、6…孔、7…ライン(糸状部材)、8…切込み部、9…ガード、11…本体部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸状部材の一部を任意に固定することが可能な固定部と、
前記固定部に近接して配置された刃部とを備え、
前記刃部は、前記固定部に一部を固定された糸状部材の固定されていない部分を把持して当該刃部に摺接可能に構成されたことを特徴とする糸状部材の切断具。
【請求項2】
前記固定部は、押圧による弾性変形により糸状部材を固定する一対の挟持部材から構成されたことを特徴とする請求項1に記載の糸状部材の切断具。
【請求項3】
前記固定部は、前記一対の挟持部材のうちの第1の挟持部材の先端部と他方の第2の挟持部材とで前記糸状部材を固定し、前記刃部は、前記第2の挟持部材を前記第1の挟持部材よりも延設した先端部に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の糸状部材の切断具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−209555(P2007−209555A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33090(P2006−33090)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000165365)兼松工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】