切断工具
【課題】切断時に被切断材がしっかりと固定されて、安定確実にかつやり直しなく被切断材を切断することができる切断工具を提供する。
【解決手段】切断刃1と、被切断材を受ける受け部2とを備え、被切断材に作用する切断刃1の切断力を、該被切断材の外面の一部分で受ける受け当接部3及び該被切断材の該一部分と異なる他の部分で受ける規制当接部4を相互間の角度を保持して回動するように一体化した被切断材保持部5を受け部2に回動可能に設け、切断時には、切断力が受け当接部3及び前記規制当接部4の双方に作用するようにされ、この切断力により被切断材保持部が回動するのを規制する回動規制手段(受け部)2を備えている。
【解決手段】切断刃1と、被切断材を受ける受け部2とを備え、被切断材に作用する切断刃1の切断力を、該被切断材の外面の一部分で受ける受け当接部3及び該被切断材の該一部分と異なる他の部分で受ける規制当接部4を相互間の角度を保持して回動するように一体化した被切断材保持部5を受け部2に回動可能に設け、切断時には、切断力が受け当接部3及び前記規制当接部4の双方に作用するようにされ、この切断力により被切断材保持部が回動するのを規制する回動規制手段(受け部)2を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線・配管材保護ダクトや塩化ビニール製パイプなどの被切断材を切断するための切断工具であって、刃軸を中心に回動して被切断材を切断する切断刃と、被切断材を受ける受け部及び前記受け部に対して前記刃軸の反対側に設けられ前記切断刃の切断操作をするための操作部を設けた工具本体とを備えた切断工具に関する。
【背景技術】
【0002】
配線・配管材保護ダクトや塩化ビニール製パイプなどの被切断材を切断するための切断工具は種々提案されている。
【0003】
図16は、本発明の背景技術となる切断工具を例示するもので、(a)はその正面図、(b)は(a)を上方より見た所を示す上面図である。
【0004】
この切断工具20は、切断軸11aを中心に回動する切断刃11と、被切断材(大径パイプ)P1を受ける受け部12と、切断軸11aと同じ回動軸15aを中心に回動して、被切断材P1を切断刃11から所定間隔離れた位置で抑える保持アーム15と、これら切断刃11、受け部12等を備えた工具本体16と、切断刃11を回動切断動作させるための固定側ハンドル17Aと移動側ハンドル17Bとからなる操作部17とを備えている。
【0005】
この切断工具20は、円弧形状の受け部12に対して、切断軸11aと同軸で被切断材P1を押さえる保持アーム15を設け、小さな被切断材(小径パイプ)P2も切断でき、また、保持アーム15が切断刃11から所定間隔離れた位置で被切断材P1、P2を押さえるので、切り口を直角にできる(特許文献1の段落[0022]、[0023])、という効果があるというものである。
【0006】
しかしながら、この切断工具20の保持アーム15は、被切断材P1、P2を切断する際に、誤って(例えば、どこかに引っかかったりして)、又は、外力により保持アーム15が解放状態とされてしまうのを回避することができない恐れがあった。そのため、被切断材P1、P2がしっかりと固定されず、切断作業が不安定となり、切断作業をやり直さなければならない場合もあった。
【特許文献1】特開2003−10571号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、切断時に被切断材がしっかりと固定されて、安定確実にかつやり直しなく被切断材を切断することができる切断工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の切断工具は、刃軸を中心に回動して被切断材を切断する切断刃と、被切断材を受ける受け部及び前記受け部に対して前記刃軸の反対側に設けられ前記切断刃の切断操作をするための操作部を設けた工具本体とを備えた切断工具であって、
該被切断材に作用する前記切断刃の切断力を、該被切断材の外面の一部分で受ける受け当接部及び該被切断材の該一部分と異なる他の部分で受ける規制当接部を相互間の角度を保持して回動するように一体化した被切断材保持部を前記受け部に回動可能に設け、
切断時には、前記被切断材に作用する前記切断刃からの切断力が、前記受け当接部及び前記規制当接部の双方に作用するようにされ、
この切断力により被切断材保持部が回動するのを規制する回動規制手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
なお、本発明においては、規制当接部とは、主として、被切断材が切断刃から遠ざからないように規制する役割を果たすものであり、受け当接部とは、主として、被切断材を受けて載せる役割を果たすものである。
【0010】
請求項2記載の切断工具は、請求項1に従属し、被切断材保持部は、更に、受け当接部と規制当接部に対して切断刃側となる位置に、被切断材を該被切断材の長手軸方向に直交する方向から受け入れる開口部を備え、前記受け当接部と前記規制当接部とは、前記開口部を形成しつつ、相互間の角度を保持して回動するように一体化され、
前記被切断材保持部は、前記開口部から前記切断刃に干渉されずに被切断材を受け入れる開状態から、収容した被切断材を切断するための切断状態まで回動可能とされていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の切断工具は、請求項1に従属し、被切断材保持部は、異なる被切断材に対応した受け当接部及び規制当接部を複数対備え、前記被切断材保持部を回動させることにより異なる被切断材をそれぞれの受け当接部及び規制当接部の一対で切断可能であることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の切断工具は、請求項1から3のいずれかに従属し、受け部が回動規制手段を構成することを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の切断工具は、請求項1から4のいずれかに従属し、前記被切断材保持部に受けられた被切断材が回動規制手段を構成することを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の切断工具は、請求項1から5のいずれかに従属し、受け当接部またはあるいは及び規制当接部は、切断時には受け当接部で受けられた被切断材が切断刃により切断力を受けて変形する部分の変形を防止するものであることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の切断工具は、請求項1から6のいずれかに従属し、受け当接部またはあるいは及び規制当接部は、切断時に被切断材が変形する部分の変形前の形状に沿った形状の変形防止部とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の切断工具によれば、刃軸を中心に回動して被切断材を切断する切断刃と、被切断材を受ける受け部及び前記受け部に対して前記刃軸の反対側に設けられ前記切断刃の切断操作をするための操作部を設けた工具本体とを備えた切断工具であって、
該被切断材に作用する前記切断刃の切断力を、該被切断材の外面の一部分で受ける受け当接部及び該被切断材の該一部分と異なる他の部分で受ける規制当接部を相互間の角度を保持して回動するように一体化した被切断材保持部を前記受け部に回動可能に設け、
切断時には、前記被切断材に作用する前記切断刃からの切断力が、前記受け当接部及び前記規制当接部の双方に作用するようにされ、
この切断力により被切断材保持部が回動するのを規制する回動規制手段を備えているので、切断時に被切断材がしっかりと固定されて、安定確実にかつやり直しなく被切断材を切断することができ、また、請求項2あるいは請求項3の構成を可能とする基礎となる。
【0017】
請求項2記載の切断工具によれば、請求項1の効果に加え、被切断材保持部は、更に、受け当接部と規制当接部に対して切断刃側となる位置に、被切断材を該被切断材の長手軸方向に直交する方向から受け入れる開口部を備え、前記受け当接部と前記規制当接部とは、前記開口部を形成しつつ、相互間の角度を保持して回動するように一体化され、
前記被切断材保持部は、前記開口部から前記切断刃に干渉されずに被切断材を受け入れる開状態から、収容した被切断材を切断するための切断状態まで回動可能とされているので、被切断材の収容に余分なスペースが不要となる。
【0018】
請求項3記載の切断工具によれば、請求項1の効果に加え、被切断材保持部は、異なる被切断材に対応した受け当接部及び規制当接部を複数対備え、前記被切断材保持部を回動させることにより異なる被切断材をそれぞれの受け当接部及び規制当接部の一対で切断可能であるので、複数種類の被切断材を切断することができる。
【0019】
請求項4あるいは5記載の切断工具によれは、請求項1から3のいずれかの効果に加え、回動規制手段の具体的構成が規定されているので、かかる回動規制手段を容易に実現することができる。
【0020】
請求項6記載の切断工具によれば、請求項1から6のいずれかの効果に加え、受け当接部またはあるいは及び規制当接部は、切断時には受け当接部で受けられた被切断材が切断刃により切断力を受けて変形する部分の変形を防止するものであるので、移動を規制することに加えて、変形も防止することができる。
【0021】
請求項7記載の切断工具によれば、請求項1から6のいずれかの効果に加え、受け当接部またはあるいは及び規制当接部は、切断時に被切断材が変形する部分の変形前の形状に沿った形状の変形防止部とされているので、変形防止効果をよりよく発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
<実施形態1>
図1は、本発明の切断工具の一例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図、図2は、(a)は、図1の保護ダクト切断工具の保護ダクト保持部と切断刃とが最大限開いた状態を示す正面図、(b)は、この保護ダクト切断工具の切断対象である配線・配管材保護ダクトの一例を示す横断面図である。
【0023】
まず、この保護ダクト切断工具10の被切断材の一例である配線・配管材保護ダクトDWについて図2(b)を用いて説明する。
【0024】
この配線・配管材保護ダクトDWは、配線・配管材を二列平行させて収容可能な二列用保護ダクトであって、合成樹脂製で可撓性があり、壁面等に接触する当接面Daaを備えた本体部Daと、この本体部Daに相互の可撓性によって着脱可能に装着されるカバー部Dbと、本体部Daに収容されるべき配線・配管材とカバー部Dbとの間に必要に応じて挿入される保護・断熱のための保護材Dcとを備えている。
【0025】
カバー部Dbの側部分を側壁Dba、反当接面Daa側、つまり、上面部分を天壁Dbbと称する。この配線・配管材保護ダクトDWは、保護材Dcを用いる場合と、用いない場合とがあるが、いずれにしても、図2(b)のような構成であるので、外部からの力に対して、撓みやすく変形しやすいものである。
【0026】
この切断工具10は、刃軸1aを中心に回動して被切断材DWを切断する切断刃1と、被切断材DWを受ける受け部2及びこの受け部2に対して刃軸1aの反対側に設けられ切断刃1の切断操作をするための操作部7を設けた工具本体6とを備えた切断工具である。
【0027】
その特徴は、被切断材DWに作用する切断刃1の切断力を、被切断材DWの外面の一部分で受ける受け当接部3及び該被切断材の該一部分と異なる他の部分で受ける規制当接部4を相互間の角度を保持して回動するように一体化した被切断材保持部5を受け部2に回動可能に設けたことにある。
【0028】
この切断工具10の更なる特徴は、切断時には、被切断材DWに作用す記切断刃1からの切断力が、受け当接部5及び規制当接部4の双方に作用するようにされ、この切断力により被切断材保持部が回動するのを規制する回動規制手段(この場合は、受け部2)を備えていることことにある。
【0029】
本発明では、この共回動する受け当接部3と規制当接部4とを一体化した被切断材保持部5が特徴であり、その詳細は後述する。一方、工具本体6側は、例えば、特開2005−312522号公報(本出願人によるもの)に記載された切断工具と同様なので詳細は省略するが、以下のような構成である。
【0030】
刃軸1aには切断刃1を開方向に付勢するスプリング1bが設けられ、切断刃1の刃軸1aを挟んで反対側には、順次切断刃1を回動させるためのラチェット歯1cが設けられている。ラチェットレバー1dは、ラチェット歯1cに噛み合って、切断刃1の回動位置をその都度保持するものであると共に、その噛合いを解放することができるものである。
【0031】
ロックレバー1eも、ラチェット歯1cに噛み合って、切断刃1の回動位置をその都度保持するものであると共に、その噛合いを解放することができるものである。操作部7は、固定側の固定ハンドル7Aと、ハンドル軸7aを中心に回動する回動ハンドル7Bとを備えている。
【0032】
作動側ラチェットレバー7bは、回動ハンドル7Bの操作に伴い、図2の切断刃1全開状態から、順にラチェット歯1cを反時計周りに回動させるものである。その際、固定ハンドル7Aの内側のラチェットレバー1dは、切断刃1が時計周りに戻らないようにしている。
【0033】
また、固定ハンドル7Aの外側のロックレバー1eは、内側のラチェットレバー1dによるロックが効かない程度に切断刃1が反時計回りに回動した際のロックの役割をしている。なお、フックレバー7cは、この切断工具10の不使用時に、固定ハンドル7Aに対して回動ハンドル7Bを引っ掻けて、操作部7の閉状態を維持するためのものである。
【0034】
このような構成で、この切断工具10は、切断刃1を、図2の全開の状態から図1の全閉の状態までこれらの図上で反時計周りに回動させ、また、ラチェットレバー1d、ロックレバー1e等の操作により、図2の全開状態とすることができるものである。
【0035】
被切断材保持部5は、受け当接部3と規制当接部4とを全体として「コ」字状、より具体的には、この切断工具10の主たる被切断材DWである二列形保護ダクトの当接面Daa、側壁Dba、天壁Dbbに接触する形状となっており、受け部2の刃軸1aと対峙する端部分に設けられた保持部回動軸5aを中心として、全体として回動するようになっている。
【0036】
また、被切断材保持部5は、図1(b)に示すように、保持部回動軸5aの近傍では連結されてはいるが、他の部分では、切断刃1を間に通過させるような両側一対の二股構成となっていて、これにより、被切断材保持部5に被切断材を保持しながら、切断刃1で切断できるようになっている。
【0037】
これらの切断刃1の刃軸1aを中心とする回動と、被切断材保持部5の保持部回動軸5aを中心とする回動との仕方は、図1の全閉状態では相互に離れて重なる部分はなく、図2の全閉状態では、切断刃1は、二股状態の被切断材保持部5に入り込んで、更に、二股状態となっている受け部2の位置まで達するようになるものである。
【0038】
受け部2は、受け当接部3を介して被切断材DWを受け止めるもので、その刃軸1aに近い側には、より小さい被切断材DS(図10参照)を受ける小受け当接部3Cと小規制当接部4Cとからなる小被切断材保持部5Cが設けられている。
【0039】
規制当接部4は、受け当接部3から直角に立ち上がっている側壁規制当接部4Aと、この側壁規制当接部4Aに傾斜部分を経て直角方向に連設され、受け当接部3に平行な天壁規制当接部4Bとを備えている。
【0040】
被切断材保持部5、更に、受け当接部3と規制当接部4に対して切断刃1側となる位置に、被切断材を該被切断材の長手軸方向に直交する方向から受け入れる開口部8を備え、
受け当接部3と規制当接部4とは、開口部8を形成しつつ、相互間の角度を保持して回動するように一体化されている。
【0041】
つまり、被切断材保持部5は、開口部8から切断刃1に干渉されずに被切断材DWを受け入れる開状態から、収容した被切断材DWを切断するための切断状態まで回動可能とされているのである。
【0042】
これより、この切断工具10を用いて、被切断材DW(二列形保護ダクト)を切断する状態を、図3から図9を用いて説明する。なお、これより既に説明した部分と同じ部分については同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0043】
図3は、図1の切断工具により被切断材を切断する態様を示すもので、(a)は開いた被切断材保持部に被切断材をセットした状態を示す斜視図、(b)は(a)の状態から被切断材保持部を閉じて、切断する前を示す斜視図である。
【0044】
まず、切断する際には、被切断材保持部5と切断刃1とを全開した状態で、この被切断材DWを被切断材保持部5の開口部8から被切断材保持部5に入れる。この際、被切断材保持部5は回動可能であって、その開口部6が切断刃1から遠ざかることができ、切断刃1とは大きく空間を置いて開口している開状態となるので、長さのある被切断材DWを、その長手軸方向に直交する方向に移動させて、簡単に入れることができる。
【0045】
つまり、周囲の空間に、被切断材DWを長手軸方向に移動させる空間がない場合でも、切断へのセット作業ができる。また、この際、本体部Daの当接面Daaが受け当接部3に、カバー部Dbの側壁Dbaと天壁Dbbが規制当接部4に接触して保持される。
【0046】
ついで、被切断材DWを収容した被切断材保持部5を図3(b)のように閉じ状態(切断状態)とし、回動ハンドル7Bの回動操作を繰り返すと、順次、切断刃1が回動して被切断材DWに近づき、接触する。図4は、図3(b)の状態を、被切断材の手前側から見た正面図である。
【0047】
図5は、図4の状態から更に切断刃が被切断材に切り込んだ状態を示す正面図、図6は、図5の状態から更に切断刃が被切断材に3分の1程度切り込んだ状態を示す正面図、図7は、図6の状態から更に切断刃が被切断材に3分の2程度切り込んだ状態を示す正面図、図8は、切断刃による被切断材の切断が完了した状態を示す正面図である。
【0048】
ここで、図5の状態に注目されたい。切断時には、被切断材DWに作用する切断刃1からの切断力が、受け当接部3及び規制当接部4の双方に作用するが、受け当接部3と規制当接部4との間の角度が共回動するように維持・固定されているので、双方で切断刃1の切断力をしっかりと受け、被切断材DWの動きが規制され、固定された状態で切断され始めている。
【0049】
また、この際、被切断材保持部5は、切断刃1からの切断力により回動しようとするが、その回動が受け部2で受け止められている。つまり、受け部2は、この例では、この切断力により被切断材保持部5が回動するのを規制する回動規制手段2として機能している。
【0050】
また、図6の状態にも注目されたい。更に、切断刃1の回動が進んで、保護材Dcを切断し、本体部Daの上部部分を切断し始めても、この部分がそれほど変形していない。これは、本体部Daの底面が受け当接部3で受けられ、カバー部Dbの側面と天面とが規制当接部4(側壁規制当接部4Aと天壁規制当接部4B)で受け止め規制されているため、その影響と思われる。
【0051】
図9(a)は、図1の切断工具で切断した被切断材を示す外観斜視図、(b)は、規制当接部を備えていない切断工具で切断した被切断材を示す外観斜視図である。
【0052】
本発明の被切断材保持部5(規制当接部4)を備えた切断工具10によって、切断した図9(a)の被切断材DWは、その本体部Da、カバー部Db、保護材Dcのいずれも被切断材DWの軸方向に直角に凹凸無く切断されている。
【0053】
これに比べ、このような規制当接部4のない切断工具で切断した被切断材DWは、本出願人の試験によれば、図9(b)に示すように、その本体部Da、カバー部Db、保護材Dcの切断面が凸凹になっていて、このままでは、使用することができない。
【0054】
また、この切断過程から解るように、この切断工具10によれば、切断中、切断刃1に受け当接部3が押され、したがって、これに共回動する規制当接部4も、間違っても動くことがなく、被切断材DWを受け止め、その移動・変形を防止することができる。
【0055】
つまり、この切断工具10によれば、切断時に被切断材がしっかりと固定されて、安定確実にかつやり直しなく被切断材DWを切断することができる。また、上述したように、この実施態様では、規制当接部4は、被切断材DWの切断時の移動を防止するものである。
【0056】
更に、規制当接部4が被切断材DWの形状に対応したものであれば、その変形を更に効果的に防止することができるものである。その点で、規制当接部4及び、これに受け当接部3を含めた被切断材保持部5は、被切断材DWの変形防止の役割を果たす変形防止部とも言えるものである。
【0057】
また、この実施形態1では、開口部8を備えた被切断材保持部5が、図3(a)の被切断材DWを収容するための開状態から、図3(b)の切断のための閉状態まで回動可能となっており、これにより、被切断材DWを三方から囲むような形状で、被切断材DWを受入れ、切断時に固定して変形を防止することを可能とすると共に、被切断材の収容を無駄なスペース無くできるという効果を達成している。
【0058】
図10(a)は図3に示した被切断材より小型の被切断材を示す外観斜視図、(b)は(a)の被切断材を図1の切断工具で切断する場合の態様を示す正面図である。
【0059】
図10(a)の被切断材DSは、図3の被切断材DWに比べ、配線・配管材を単列収容する単列用保護ダクトであり、同様の合成樹脂製であり、可撓性があるが、その可撓性の程度は小さいものであり、同様な本体部Dd、カバー部De、保護材Dfを備えている。
【0060】
このような小型の被切断材DSを切断する場合は、被切断材保持部5を開いて、小被切断材保持部5Cを覗かせ、そこに被切断材DSを図10(b)で示すように載せて、切断する。この場合、短寸の小規制当接部4Cであっても、被切断材DSの撓み、変形が少ないので、その切断面は、その長手軸方向に直角で、凹凸のないものとなる。
【0061】
つまり、この切断工具10によれば、大きくてより撓みやすい被切断材DWは、被切断材保持部(変形防止部)5を用いることで好適に、小さい撓みの少ない被切断材DSは、被切断材保持部(変形防止部)5を回動させて開状態として、小被切断材保持部5Cで好適に切断することができる。
【0062】
つまり、この切断工具10においては、被切断材保持部5、5Cは、異なる被切断材に対応した受け当接部3、3C及び規制当接部4,4Cを複数対備え、被切断材保持部5を回動させることにより異なる被切断材をそれぞれの受け当接部3、3C及び規制当接部4,4Cの一対で切断可能であり、工具10は異なる被切断材を好適に切断することができる。
【0063】
<実施形態2>
図11は、本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその切断工具によって一つの被切断材を切断する状態を示す正面図、(b)は同じ切断工具によって他の被切断材を切断する状態を示す正面図、(c)は同じ切断工具によって更に他の被切断材を切断する状態を示す正面図である。
【0064】
この切断工具10Aは、図11(a)、(b)、(c)から解るように、図1の切断工具10に比べ、被切断材保持部5Gは、異なる被切断材に対応した受け当接部3D、3E、3F及び規制当接部4D、4E、4Fを複数対備え、この被切断材保持部5Gを保持部回動軸5bを中心に回動させることにより異なる被切断材DW1、DW1、DW3をそれぞれの受け当接部3D、3E、3F及び規制当接部4D、4E、4Fの一対で切断可能である点が異なっている。
【0065】
各一対の受け当接部3D、3E、3F及び規制当接部4D、4E、4Fをそれぞれ個別被切断材保持部5D、5E、5Fとする。このような被切断材保持部5Gを回動可能に設置可能とした受け部を受け部2Aとする。
【0066】
この実施態様では、被切断材DW1、DW2、DW3は、高さは同一で、よりその幅が順に広くなっているもので、これに対応して、個別被切断材保持部5D、5E、5Fも、その規制当接部4D、4E、4Fが切断刃1に対して遠ざかるような形状となっている。
【0067】
この実施態様の場合、個別被切断材保持部5D、5E、5Fに載置された被切断材DW1、DW2、DW3が、切断刃1に押されて回動しようとするのを、それぞれの被切断材DW1、DW2、DW3が受け部2Aに接触することで規制している。
【0068】
つまり、この場合、被切断材保持部5D、5E、5Fに受けられた被切断材DW1、DW2、DW3が受け部2Aと共に回動規制手段を構成し、被切断材DW1、DW2、DW3を切断することができる。
【0069】
また、この場合、規制当接部4D、4E、4Fは、被切断材DW1、DW2、DW3の側壁だけに接触して規制しているが、天壁に接触するようには構成されていない。しかしながら、切断時には、共回動する受け当接部3D、3E、3Fと共に、切断刃1の切断力をしっかり受けて、被切断材DW1、DW2、DW3を固定保持するので、この切断工具10Aによれば、図1の切断工具10と同様の効果を発揮することができ、また、切断対象とする被切断材の種類を3種類以上とすることができる。
【0070】
また、この切断工具10Aによれば、規制当接部4D、4E、4Fには、被切断材DW1、DW2、DW3の天壁に接触する部分がないので、切断刃1が退避状態であれば、特に各個別被切断材保持部5D、5E、5Fを開状態とすることなく、切断状態であっても、被切断材DW1、DW2、DW3をその軸方向に直交する方向から、収容することができて、取り周りスペースが少ない場所でも使用が可能である。
【0071】
このことは、また後述もするように、規制当接部は、被切断材の外面を、受け当接部が受ける外面の一部とは異なる部分で受け、それぞれが切断刃1の切断力を受けるように構成すれば、本発明の基本的構成要件としては十分であることを示すものである。
【0072】
図12は、本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその切断工具によって一つの被切断材を切断する状態を示す正面図、(b)は同じ切断工具によって他の被切断材を切断する状態を示す正面図、(c)は同じ切断工具によって更に他の被切断材を切断する状態を示す正面図である。
【0073】
この切断工具10Bは、図11の切断工具10Aと比べて、被切断材保持部5G′が、複数の個別被切断材保持部5D′、5E′、5F′を回動させて、異なる被切断材DW1、DW2、DW3に対応可能としている点は共通するが、それぞれの規制当接部4D′、4E′、4F′が被切断材DW1、DW2、DW3の天壁に接触する天壁規制当接部4a、4b、4cを備えている点が異なっている。
【0074】
このような構成の切断工具10Bによれば、図11の切断工具10Aと同様の効果に加え、被切断材DW1、DW2、DW3の固定と変形防止をより良く発揮することができる。
【0075】
また、この構成の切断工具10Bにおいては、被切断材保持部5G′が回動可能であるということは、各個別被切断材保持部5D′、5E′、5F′を開状態と切断状態とにできる、という効果も併せ持つ。
【0076】
<実施形態3>
図13は、本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【0077】
この切断工具10Cは、図1の切断工具10に比べ、被切断材Pはパイプ状のもので、受け部2Bがこの被切断材Pの外周の一部を受け、被切断材保持部5Hが、受け部2Bと共動して切断刃1が被切断材Pを切断する力を受ける受け当接部3Gと、この受け当接部3Gに対して被切断材Pを挟んで、被切断材Pに押し付けられるように一体化された規制当接部4Gとを備えている点が異なっている。
【0078】
被切断材保持部5Hは、受け当接部3Gと規制当接部4Gの中間部分の保持部回動軸5c(受け部2Bの先端部分に設けられている。)を中心として回動して、上記、切断刃1の切断に伴う力を利用して、受け当接部3Gと規制当接部4Gとで被切断材Pを固定保持している。
【0079】
つまり、この切断工具10Cは、図1の切断工具10と同様の効果を発揮することができる。また、この切断工具10Cによれば、図から解るように、図示の被切断材Pより多少外形の異なるパイプ状の被切断材でも好適に切断することができる。
【0080】
また、この切断工具10Cにおいては、被切断材保持部5Hに保持された被切断材Pが受け部2Bと共同して、回転規制手段を構成している点で、図12の切断工具10Aと共通する。
【0081】
図14は、本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【0082】
この切断工具10Dは、図13のパイプ状の被切断材P用の切断工具10Cに比べ、同様にパイプ状の被切断材Pを切断するものである点は共通するが、被切断材保持部5Iが、それだけで被切断材Pを保持し、受け部2Cは間接的に被切断材保持部5Iの回動を規制する回動規制手段(この点では、図1の切断工具10と共通する。)として機能している点が異なっている。
【0083】
被切断材保持部5Iは、被切断材PをV字状に挟むような形状の受け当接部3Hと規制当接部4Hとを一体化して共回動するようにしたもので、受け部2Cの先端に設けられた保持部回動軸5dを中心として回動する。
【0084】
このような構成の切断工具10Dによれば、図14から解るように、切断刃1の切断力が被切断材PNに作用すると、被切断材Pは受け当接部3Hと規制当接部4Hとに押し付けられるようになり、被切断材保持部5Iにしっかり受け止められ固定されて切断されるので、図1の切断工具10と同様の効果を発揮することができる。
【0085】
なお、図13、14の切断工具10C、10Dからも解るように、本発明の切断工具の核となる構成要件は、受け当接部と規制当接部とが被切断材の外面を異なる部分で受け、共回動するという点であり、これにより、その回動を何らかの方法により規制すれば、被切断材を好適に切断でき、あるいは、被切断材保持部を開状態から切断状態へとして、被切断材の収容を容易にすることができるという効果を発揮する。
【0086】
<実施形態4>
図15は、本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【0087】
この切断工具10Eは、図1の切断工具10に比べ、被切断材保持部5Jが、受け部2Dに対して回動する点は共通するが、その回動のために特に回動軸がなく、受け部2に設けられた円弧状のガイド部2aに対して、被切断材保持部5Jの外周が同一円弧形状の円弧部5eとなっていて、回動可能となっている点が異なっている。
【0088】
被切断材保持部5Jに設けられた受け当接部3Iと規制当接部4Kは、図1のものと同一で、二列用保護ダクトである被切断材DWを三方から囲う形状となっている。また、規制当接部4Kは、被切断材DWの側壁Dbaに沿う側壁規制当接部4Iと天壁Dbbに沿う天壁規制当接部4Jとを備えている。
【0089】
また、この切断工具10Eの被切断材保持部5Jは、一列用保護ダクトである被切断材DSを収容するための、受け当接部3Lと規制当接部4Lとからなる小被切断材保持部5Kを備えている。この小被切断材保持部5Kは、受け当接部3Iの部分的な凹所として形成されている。
【0090】
この切断工具10Iには、このような構成で回動する被切断材保持部5Jの回動を規制する回動規制手段として、受け部2Dにストッパ2bが設けられている。このストッパ2bは、被切断材保持部5Jに保持された被切断材DW、あるいは、その一部である小被切断材保持部5Kに保持された被切断材DSに接触して、切断刃1からの切断力に抗して、被切断材保持部5Jの回動を規制するものである。
【0091】
このような構成の切断工具10Eによれば、図15から解るように、切断刃1の切断力が被切断材DWに作用すると、被切断材DWは受け当接部3Iと規制当接部4Kとに押し付けられるようになり、被切断材保持部5Jにしっかり受け止められ固定されて切断されるので、図1の切断工具10と同様の効果を発揮することができる。
【0092】
本発明の切断工具は、上記の実施態様に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施態様の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、本発明の技術的範囲には、これらの変形例、組み合わせも含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の切断工具は、切断時に被切断材がしっかりと固定されて、安定確実にかつやり直しなく被切断材を切断することことが要請される産業上の分野に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の切断工具の一例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図
【図2】(a)は、図1の保護ダクト切断工具の保護ダクト保持部と切断刃とが最大限開いた状態を示す正面図、(b)は、この保護ダクト切断工具の切断対象である配線・配管材保護ダクトの一例を示す横断面図
【図3】図1の切断工具により被切断材を切断する態様を示すもので、(a)は開いた被切断材保持部に被切断材をセットした状態を示す斜視図、(b)は(a)の状態から被切断材保持部を閉じて、切断する前を示す斜視図
【図4】図3(b)の状態を、被切断材の手前側から見た正面図
【図5】図4の状態から更に切断刃が被切断材に切り込んだ状態を示す正面図
【図6】図5の状態から更に切断刃が被切断材に3分の1程度切り込んだ状態を示す正面図
【図7】図6の状態から更に切断刃が被切断材に3分の2程度切り込んだ状態を示す正面図
【図8】切断刃による被切断材の切断が完了した状態を示す正面図
【図9】(a)は、図1の切断工具で切断した被切断材を示す外観斜視図、(b)は、受け当接部及び規制当接部の一対を備えていない切断工具で切断した被切断材を示す外観斜視図
【図10】(a)は図3に示した被切断材より小型の被切断材を示す外観斜視図、(b)は(a)の被切断材を図1の切断工具で切断する場合の態様を示す正面図
【図11】本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその切断工具によって一つの被切断材を切断する状態を示す正面図、(b)は同じ切断工具によって他の被切断材を切断する状態を示す正面図、(c)は同じ切断工具によって更に他の被切断材を切断する状態を示す正面図
【図12】本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその切断工具によって一つの被切断材を切断する状態を示す正面図、(b)は同じ切断工具によって他の被切断材を切断する状態を示す正面図、(c)は同じ切断工具によって更に他の被切断材を切断する状態を示す正面図
【図13】本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図
【図14】本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図
【図15】本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図
【図16】本発明の背景技術となる切断工具を例示するもので、(a)はその正面図、(b)は(a)を上方より見た所を示す上面図
【符号の説明】
【0095】
1 切断刃
1a 刃軸
2〜2D 受け部
3〜3I 受け当接部
4〜4K 規制当接部
4A、4I 側壁規制当接部
4B、4J 天壁規制当接部
5〜5J 被切断材保持部(変形防止部)
5a〜5d 保持部回動軸
5e 円弧部
6 工具本体
7 操作部
10〜10E 切断工具
DW〜DW3 被切断材
DS 被切断材
P、PS 被切断材
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線・配管材保護ダクトや塩化ビニール製パイプなどの被切断材を切断するための切断工具であって、刃軸を中心に回動して被切断材を切断する切断刃と、被切断材を受ける受け部及び前記受け部に対して前記刃軸の反対側に設けられ前記切断刃の切断操作をするための操作部を設けた工具本体とを備えた切断工具に関する。
【背景技術】
【0002】
配線・配管材保護ダクトや塩化ビニール製パイプなどの被切断材を切断するための切断工具は種々提案されている。
【0003】
図16は、本発明の背景技術となる切断工具を例示するもので、(a)はその正面図、(b)は(a)を上方より見た所を示す上面図である。
【0004】
この切断工具20は、切断軸11aを中心に回動する切断刃11と、被切断材(大径パイプ)P1を受ける受け部12と、切断軸11aと同じ回動軸15aを中心に回動して、被切断材P1を切断刃11から所定間隔離れた位置で抑える保持アーム15と、これら切断刃11、受け部12等を備えた工具本体16と、切断刃11を回動切断動作させるための固定側ハンドル17Aと移動側ハンドル17Bとからなる操作部17とを備えている。
【0005】
この切断工具20は、円弧形状の受け部12に対して、切断軸11aと同軸で被切断材P1を押さえる保持アーム15を設け、小さな被切断材(小径パイプ)P2も切断でき、また、保持アーム15が切断刃11から所定間隔離れた位置で被切断材P1、P2を押さえるので、切り口を直角にできる(特許文献1の段落[0022]、[0023])、という効果があるというものである。
【0006】
しかしながら、この切断工具20の保持アーム15は、被切断材P1、P2を切断する際に、誤って(例えば、どこかに引っかかったりして)、又は、外力により保持アーム15が解放状態とされてしまうのを回避することができない恐れがあった。そのため、被切断材P1、P2がしっかりと固定されず、切断作業が不安定となり、切断作業をやり直さなければならない場合もあった。
【特許文献1】特開2003−10571号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、切断時に被切断材がしっかりと固定されて、安定確実にかつやり直しなく被切断材を切断することができる切断工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の切断工具は、刃軸を中心に回動して被切断材を切断する切断刃と、被切断材を受ける受け部及び前記受け部に対して前記刃軸の反対側に設けられ前記切断刃の切断操作をするための操作部を設けた工具本体とを備えた切断工具であって、
該被切断材に作用する前記切断刃の切断力を、該被切断材の外面の一部分で受ける受け当接部及び該被切断材の該一部分と異なる他の部分で受ける規制当接部を相互間の角度を保持して回動するように一体化した被切断材保持部を前記受け部に回動可能に設け、
切断時には、前記被切断材に作用する前記切断刃からの切断力が、前記受け当接部及び前記規制当接部の双方に作用するようにされ、
この切断力により被切断材保持部が回動するのを規制する回動規制手段を備えていることを特徴とする。
【0009】
なお、本発明においては、規制当接部とは、主として、被切断材が切断刃から遠ざからないように規制する役割を果たすものであり、受け当接部とは、主として、被切断材を受けて載せる役割を果たすものである。
【0010】
請求項2記載の切断工具は、請求項1に従属し、被切断材保持部は、更に、受け当接部と規制当接部に対して切断刃側となる位置に、被切断材を該被切断材の長手軸方向に直交する方向から受け入れる開口部を備え、前記受け当接部と前記規制当接部とは、前記開口部を形成しつつ、相互間の角度を保持して回動するように一体化され、
前記被切断材保持部は、前記開口部から前記切断刃に干渉されずに被切断材を受け入れる開状態から、収容した被切断材を切断するための切断状態まで回動可能とされていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の切断工具は、請求項1に従属し、被切断材保持部は、異なる被切断材に対応した受け当接部及び規制当接部を複数対備え、前記被切断材保持部を回動させることにより異なる被切断材をそれぞれの受け当接部及び規制当接部の一対で切断可能であることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の切断工具は、請求項1から3のいずれかに従属し、受け部が回動規制手段を構成することを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の切断工具は、請求項1から4のいずれかに従属し、前記被切断材保持部に受けられた被切断材が回動規制手段を構成することを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の切断工具は、請求項1から5のいずれかに従属し、受け当接部またはあるいは及び規制当接部は、切断時には受け当接部で受けられた被切断材が切断刃により切断力を受けて変形する部分の変形を防止するものであることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の切断工具は、請求項1から6のいずれかに従属し、受け当接部またはあるいは及び規制当接部は、切断時に被切断材が変形する部分の変形前の形状に沿った形状の変形防止部とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の切断工具によれば、刃軸を中心に回動して被切断材を切断する切断刃と、被切断材を受ける受け部及び前記受け部に対して前記刃軸の反対側に設けられ前記切断刃の切断操作をするための操作部を設けた工具本体とを備えた切断工具であって、
該被切断材に作用する前記切断刃の切断力を、該被切断材の外面の一部分で受ける受け当接部及び該被切断材の該一部分と異なる他の部分で受ける規制当接部を相互間の角度を保持して回動するように一体化した被切断材保持部を前記受け部に回動可能に設け、
切断時には、前記被切断材に作用する前記切断刃からの切断力が、前記受け当接部及び前記規制当接部の双方に作用するようにされ、
この切断力により被切断材保持部が回動するのを規制する回動規制手段を備えているので、切断時に被切断材がしっかりと固定されて、安定確実にかつやり直しなく被切断材を切断することができ、また、請求項2あるいは請求項3の構成を可能とする基礎となる。
【0017】
請求項2記載の切断工具によれば、請求項1の効果に加え、被切断材保持部は、更に、受け当接部と規制当接部に対して切断刃側となる位置に、被切断材を該被切断材の長手軸方向に直交する方向から受け入れる開口部を備え、前記受け当接部と前記規制当接部とは、前記開口部を形成しつつ、相互間の角度を保持して回動するように一体化され、
前記被切断材保持部は、前記開口部から前記切断刃に干渉されずに被切断材を受け入れる開状態から、収容した被切断材を切断するための切断状態まで回動可能とされているので、被切断材の収容に余分なスペースが不要となる。
【0018】
請求項3記載の切断工具によれば、請求項1の効果に加え、被切断材保持部は、異なる被切断材に対応した受け当接部及び規制当接部を複数対備え、前記被切断材保持部を回動させることにより異なる被切断材をそれぞれの受け当接部及び規制当接部の一対で切断可能であるので、複数種類の被切断材を切断することができる。
【0019】
請求項4あるいは5記載の切断工具によれは、請求項1から3のいずれかの効果に加え、回動規制手段の具体的構成が規定されているので、かかる回動規制手段を容易に実現することができる。
【0020】
請求項6記載の切断工具によれば、請求項1から6のいずれかの効果に加え、受け当接部またはあるいは及び規制当接部は、切断時には受け当接部で受けられた被切断材が切断刃により切断力を受けて変形する部分の変形を防止するものであるので、移動を規制することに加えて、変形も防止することができる。
【0021】
請求項7記載の切断工具によれば、請求項1から6のいずれかの効果に加え、受け当接部またはあるいは及び規制当接部は、切断時に被切断材が変形する部分の変形前の形状に沿った形状の変形防止部とされているので、変形防止効果をよりよく発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
<実施形態1>
図1は、本発明の切断工具の一例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図、図2は、(a)は、図1の保護ダクト切断工具の保護ダクト保持部と切断刃とが最大限開いた状態を示す正面図、(b)は、この保護ダクト切断工具の切断対象である配線・配管材保護ダクトの一例を示す横断面図である。
【0023】
まず、この保護ダクト切断工具10の被切断材の一例である配線・配管材保護ダクトDWについて図2(b)を用いて説明する。
【0024】
この配線・配管材保護ダクトDWは、配線・配管材を二列平行させて収容可能な二列用保護ダクトであって、合成樹脂製で可撓性があり、壁面等に接触する当接面Daaを備えた本体部Daと、この本体部Daに相互の可撓性によって着脱可能に装着されるカバー部Dbと、本体部Daに収容されるべき配線・配管材とカバー部Dbとの間に必要に応じて挿入される保護・断熱のための保護材Dcとを備えている。
【0025】
カバー部Dbの側部分を側壁Dba、反当接面Daa側、つまり、上面部分を天壁Dbbと称する。この配線・配管材保護ダクトDWは、保護材Dcを用いる場合と、用いない場合とがあるが、いずれにしても、図2(b)のような構成であるので、外部からの力に対して、撓みやすく変形しやすいものである。
【0026】
この切断工具10は、刃軸1aを中心に回動して被切断材DWを切断する切断刃1と、被切断材DWを受ける受け部2及びこの受け部2に対して刃軸1aの反対側に設けられ切断刃1の切断操作をするための操作部7を設けた工具本体6とを備えた切断工具である。
【0027】
その特徴は、被切断材DWに作用する切断刃1の切断力を、被切断材DWの外面の一部分で受ける受け当接部3及び該被切断材の該一部分と異なる他の部分で受ける規制当接部4を相互間の角度を保持して回動するように一体化した被切断材保持部5を受け部2に回動可能に設けたことにある。
【0028】
この切断工具10の更なる特徴は、切断時には、被切断材DWに作用す記切断刃1からの切断力が、受け当接部5及び規制当接部4の双方に作用するようにされ、この切断力により被切断材保持部が回動するのを規制する回動規制手段(この場合は、受け部2)を備えていることことにある。
【0029】
本発明では、この共回動する受け当接部3と規制当接部4とを一体化した被切断材保持部5が特徴であり、その詳細は後述する。一方、工具本体6側は、例えば、特開2005−312522号公報(本出願人によるもの)に記載された切断工具と同様なので詳細は省略するが、以下のような構成である。
【0030】
刃軸1aには切断刃1を開方向に付勢するスプリング1bが設けられ、切断刃1の刃軸1aを挟んで反対側には、順次切断刃1を回動させるためのラチェット歯1cが設けられている。ラチェットレバー1dは、ラチェット歯1cに噛み合って、切断刃1の回動位置をその都度保持するものであると共に、その噛合いを解放することができるものである。
【0031】
ロックレバー1eも、ラチェット歯1cに噛み合って、切断刃1の回動位置をその都度保持するものであると共に、その噛合いを解放することができるものである。操作部7は、固定側の固定ハンドル7Aと、ハンドル軸7aを中心に回動する回動ハンドル7Bとを備えている。
【0032】
作動側ラチェットレバー7bは、回動ハンドル7Bの操作に伴い、図2の切断刃1全開状態から、順にラチェット歯1cを反時計周りに回動させるものである。その際、固定ハンドル7Aの内側のラチェットレバー1dは、切断刃1が時計周りに戻らないようにしている。
【0033】
また、固定ハンドル7Aの外側のロックレバー1eは、内側のラチェットレバー1dによるロックが効かない程度に切断刃1が反時計回りに回動した際のロックの役割をしている。なお、フックレバー7cは、この切断工具10の不使用時に、固定ハンドル7Aに対して回動ハンドル7Bを引っ掻けて、操作部7の閉状態を維持するためのものである。
【0034】
このような構成で、この切断工具10は、切断刃1を、図2の全開の状態から図1の全閉の状態までこれらの図上で反時計周りに回動させ、また、ラチェットレバー1d、ロックレバー1e等の操作により、図2の全開状態とすることができるものである。
【0035】
被切断材保持部5は、受け当接部3と規制当接部4とを全体として「コ」字状、より具体的には、この切断工具10の主たる被切断材DWである二列形保護ダクトの当接面Daa、側壁Dba、天壁Dbbに接触する形状となっており、受け部2の刃軸1aと対峙する端部分に設けられた保持部回動軸5aを中心として、全体として回動するようになっている。
【0036】
また、被切断材保持部5は、図1(b)に示すように、保持部回動軸5aの近傍では連結されてはいるが、他の部分では、切断刃1を間に通過させるような両側一対の二股構成となっていて、これにより、被切断材保持部5に被切断材を保持しながら、切断刃1で切断できるようになっている。
【0037】
これらの切断刃1の刃軸1aを中心とする回動と、被切断材保持部5の保持部回動軸5aを中心とする回動との仕方は、図1の全閉状態では相互に離れて重なる部分はなく、図2の全閉状態では、切断刃1は、二股状態の被切断材保持部5に入り込んで、更に、二股状態となっている受け部2の位置まで達するようになるものである。
【0038】
受け部2は、受け当接部3を介して被切断材DWを受け止めるもので、その刃軸1aに近い側には、より小さい被切断材DS(図10参照)を受ける小受け当接部3Cと小規制当接部4Cとからなる小被切断材保持部5Cが設けられている。
【0039】
規制当接部4は、受け当接部3から直角に立ち上がっている側壁規制当接部4Aと、この側壁規制当接部4Aに傾斜部分を経て直角方向に連設され、受け当接部3に平行な天壁規制当接部4Bとを備えている。
【0040】
被切断材保持部5、更に、受け当接部3と規制当接部4に対して切断刃1側となる位置に、被切断材を該被切断材の長手軸方向に直交する方向から受け入れる開口部8を備え、
受け当接部3と規制当接部4とは、開口部8を形成しつつ、相互間の角度を保持して回動するように一体化されている。
【0041】
つまり、被切断材保持部5は、開口部8から切断刃1に干渉されずに被切断材DWを受け入れる開状態から、収容した被切断材DWを切断するための切断状態まで回動可能とされているのである。
【0042】
これより、この切断工具10を用いて、被切断材DW(二列形保護ダクト)を切断する状態を、図3から図9を用いて説明する。なお、これより既に説明した部分と同じ部分については同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0043】
図3は、図1の切断工具により被切断材を切断する態様を示すもので、(a)は開いた被切断材保持部に被切断材をセットした状態を示す斜視図、(b)は(a)の状態から被切断材保持部を閉じて、切断する前を示す斜視図である。
【0044】
まず、切断する際には、被切断材保持部5と切断刃1とを全開した状態で、この被切断材DWを被切断材保持部5の開口部8から被切断材保持部5に入れる。この際、被切断材保持部5は回動可能であって、その開口部6が切断刃1から遠ざかることができ、切断刃1とは大きく空間を置いて開口している開状態となるので、長さのある被切断材DWを、その長手軸方向に直交する方向に移動させて、簡単に入れることができる。
【0045】
つまり、周囲の空間に、被切断材DWを長手軸方向に移動させる空間がない場合でも、切断へのセット作業ができる。また、この際、本体部Daの当接面Daaが受け当接部3に、カバー部Dbの側壁Dbaと天壁Dbbが規制当接部4に接触して保持される。
【0046】
ついで、被切断材DWを収容した被切断材保持部5を図3(b)のように閉じ状態(切断状態)とし、回動ハンドル7Bの回動操作を繰り返すと、順次、切断刃1が回動して被切断材DWに近づき、接触する。図4は、図3(b)の状態を、被切断材の手前側から見た正面図である。
【0047】
図5は、図4の状態から更に切断刃が被切断材に切り込んだ状態を示す正面図、図6は、図5の状態から更に切断刃が被切断材に3分の1程度切り込んだ状態を示す正面図、図7は、図6の状態から更に切断刃が被切断材に3分の2程度切り込んだ状態を示す正面図、図8は、切断刃による被切断材の切断が完了した状態を示す正面図である。
【0048】
ここで、図5の状態に注目されたい。切断時には、被切断材DWに作用する切断刃1からの切断力が、受け当接部3及び規制当接部4の双方に作用するが、受け当接部3と規制当接部4との間の角度が共回動するように維持・固定されているので、双方で切断刃1の切断力をしっかりと受け、被切断材DWの動きが規制され、固定された状態で切断され始めている。
【0049】
また、この際、被切断材保持部5は、切断刃1からの切断力により回動しようとするが、その回動が受け部2で受け止められている。つまり、受け部2は、この例では、この切断力により被切断材保持部5が回動するのを規制する回動規制手段2として機能している。
【0050】
また、図6の状態にも注目されたい。更に、切断刃1の回動が進んで、保護材Dcを切断し、本体部Daの上部部分を切断し始めても、この部分がそれほど変形していない。これは、本体部Daの底面が受け当接部3で受けられ、カバー部Dbの側面と天面とが規制当接部4(側壁規制当接部4Aと天壁規制当接部4B)で受け止め規制されているため、その影響と思われる。
【0051】
図9(a)は、図1の切断工具で切断した被切断材を示す外観斜視図、(b)は、規制当接部を備えていない切断工具で切断した被切断材を示す外観斜視図である。
【0052】
本発明の被切断材保持部5(規制当接部4)を備えた切断工具10によって、切断した図9(a)の被切断材DWは、その本体部Da、カバー部Db、保護材Dcのいずれも被切断材DWの軸方向に直角に凹凸無く切断されている。
【0053】
これに比べ、このような規制当接部4のない切断工具で切断した被切断材DWは、本出願人の試験によれば、図9(b)に示すように、その本体部Da、カバー部Db、保護材Dcの切断面が凸凹になっていて、このままでは、使用することができない。
【0054】
また、この切断過程から解るように、この切断工具10によれば、切断中、切断刃1に受け当接部3が押され、したがって、これに共回動する規制当接部4も、間違っても動くことがなく、被切断材DWを受け止め、その移動・変形を防止することができる。
【0055】
つまり、この切断工具10によれば、切断時に被切断材がしっかりと固定されて、安定確実にかつやり直しなく被切断材DWを切断することができる。また、上述したように、この実施態様では、規制当接部4は、被切断材DWの切断時の移動を防止するものである。
【0056】
更に、規制当接部4が被切断材DWの形状に対応したものであれば、その変形を更に効果的に防止することができるものである。その点で、規制当接部4及び、これに受け当接部3を含めた被切断材保持部5は、被切断材DWの変形防止の役割を果たす変形防止部とも言えるものである。
【0057】
また、この実施形態1では、開口部8を備えた被切断材保持部5が、図3(a)の被切断材DWを収容するための開状態から、図3(b)の切断のための閉状態まで回動可能となっており、これにより、被切断材DWを三方から囲むような形状で、被切断材DWを受入れ、切断時に固定して変形を防止することを可能とすると共に、被切断材の収容を無駄なスペース無くできるという効果を達成している。
【0058】
図10(a)は図3に示した被切断材より小型の被切断材を示す外観斜視図、(b)は(a)の被切断材を図1の切断工具で切断する場合の態様を示す正面図である。
【0059】
図10(a)の被切断材DSは、図3の被切断材DWに比べ、配線・配管材を単列収容する単列用保護ダクトであり、同様の合成樹脂製であり、可撓性があるが、その可撓性の程度は小さいものであり、同様な本体部Dd、カバー部De、保護材Dfを備えている。
【0060】
このような小型の被切断材DSを切断する場合は、被切断材保持部5を開いて、小被切断材保持部5Cを覗かせ、そこに被切断材DSを図10(b)で示すように載せて、切断する。この場合、短寸の小規制当接部4Cであっても、被切断材DSの撓み、変形が少ないので、その切断面は、その長手軸方向に直角で、凹凸のないものとなる。
【0061】
つまり、この切断工具10によれば、大きくてより撓みやすい被切断材DWは、被切断材保持部(変形防止部)5を用いることで好適に、小さい撓みの少ない被切断材DSは、被切断材保持部(変形防止部)5を回動させて開状態として、小被切断材保持部5Cで好適に切断することができる。
【0062】
つまり、この切断工具10においては、被切断材保持部5、5Cは、異なる被切断材に対応した受け当接部3、3C及び規制当接部4,4Cを複数対備え、被切断材保持部5を回動させることにより異なる被切断材をそれぞれの受け当接部3、3C及び規制当接部4,4Cの一対で切断可能であり、工具10は異なる被切断材を好適に切断することができる。
【0063】
<実施形態2>
図11は、本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその切断工具によって一つの被切断材を切断する状態を示す正面図、(b)は同じ切断工具によって他の被切断材を切断する状態を示す正面図、(c)は同じ切断工具によって更に他の被切断材を切断する状態を示す正面図である。
【0064】
この切断工具10Aは、図11(a)、(b)、(c)から解るように、図1の切断工具10に比べ、被切断材保持部5Gは、異なる被切断材に対応した受け当接部3D、3E、3F及び規制当接部4D、4E、4Fを複数対備え、この被切断材保持部5Gを保持部回動軸5bを中心に回動させることにより異なる被切断材DW1、DW1、DW3をそれぞれの受け当接部3D、3E、3F及び規制当接部4D、4E、4Fの一対で切断可能である点が異なっている。
【0065】
各一対の受け当接部3D、3E、3F及び規制当接部4D、4E、4Fをそれぞれ個別被切断材保持部5D、5E、5Fとする。このような被切断材保持部5Gを回動可能に設置可能とした受け部を受け部2Aとする。
【0066】
この実施態様では、被切断材DW1、DW2、DW3は、高さは同一で、よりその幅が順に広くなっているもので、これに対応して、個別被切断材保持部5D、5E、5Fも、その規制当接部4D、4E、4Fが切断刃1に対して遠ざかるような形状となっている。
【0067】
この実施態様の場合、個別被切断材保持部5D、5E、5Fに載置された被切断材DW1、DW2、DW3が、切断刃1に押されて回動しようとするのを、それぞれの被切断材DW1、DW2、DW3が受け部2Aに接触することで規制している。
【0068】
つまり、この場合、被切断材保持部5D、5E、5Fに受けられた被切断材DW1、DW2、DW3が受け部2Aと共に回動規制手段を構成し、被切断材DW1、DW2、DW3を切断することができる。
【0069】
また、この場合、規制当接部4D、4E、4Fは、被切断材DW1、DW2、DW3の側壁だけに接触して規制しているが、天壁に接触するようには構成されていない。しかしながら、切断時には、共回動する受け当接部3D、3E、3Fと共に、切断刃1の切断力をしっかり受けて、被切断材DW1、DW2、DW3を固定保持するので、この切断工具10Aによれば、図1の切断工具10と同様の効果を発揮することができ、また、切断対象とする被切断材の種類を3種類以上とすることができる。
【0070】
また、この切断工具10Aによれば、規制当接部4D、4E、4Fには、被切断材DW1、DW2、DW3の天壁に接触する部分がないので、切断刃1が退避状態であれば、特に各個別被切断材保持部5D、5E、5Fを開状態とすることなく、切断状態であっても、被切断材DW1、DW2、DW3をその軸方向に直交する方向から、収容することができて、取り周りスペースが少ない場所でも使用が可能である。
【0071】
このことは、また後述もするように、規制当接部は、被切断材の外面を、受け当接部が受ける外面の一部とは異なる部分で受け、それぞれが切断刃1の切断力を受けるように構成すれば、本発明の基本的構成要件としては十分であることを示すものである。
【0072】
図12は、本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその切断工具によって一つの被切断材を切断する状態を示す正面図、(b)は同じ切断工具によって他の被切断材を切断する状態を示す正面図、(c)は同じ切断工具によって更に他の被切断材を切断する状態を示す正面図である。
【0073】
この切断工具10Bは、図11の切断工具10Aと比べて、被切断材保持部5G′が、複数の個別被切断材保持部5D′、5E′、5F′を回動させて、異なる被切断材DW1、DW2、DW3に対応可能としている点は共通するが、それぞれの規制当接部4D′、4E′、4F′が被切断材DW1、DW2、DW3の天壁に接触する天壁規制当接部4a、4b、4cを備えている点が異なっている。
【0074】
このような構成の切断工具10Bによれば、図11の切断工具10Aと同様の効果に加え、被切断材DW1、DW2、DW3の固定と変形防止をより良く発揮することができる。
【0075】
また、この構成の切断工具10Bにおいては、被切断材保持部5G′が回動可能であるということは、各個別被切断材保持部5D′、5E′、5F′を開状態と切断状態とにできる、という効果も併せ持つ。
【0076】
<実施形態3>
図13は、本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【0077】
この切断工具10Cは、図1の切断工具10に比べ、被切断材Pはパイプ状のもので、受け部2Bがこの被切断材Pの外周の一部を受け、被切断材保持部5Hが、受け部2Bと共動して切断刃1が被切断材Pを切断する力を受ける受け当接部3Gと、この受け当接部3Gに対して被切断材Pを挟んで、被切断材Pに押し付けられるように一体化された規制当接部4Gとを備えている点が異なっている。
【0078】
被切断材保持部5Hは、受け当接部3Gと規制当接部4Gの中間部分の保持部回動軸5c(受け部2Bの先端部分に設けられている。)を中心として回動して、上記、切断刃1の切断に伴う力を利用して、受け当接部3Gと規制当接部4Gとで被切断材Pを固定保持している。
【0079】
つまり、この切断工具10Cは、図1の切断工具10と同様の効果を発揮することができる。また、この切断工具10Cによれば、図から解るように、図示の被切断材Pより多少外形の異なるパイプ状の被切断材でも好適に切断することができる。
【0080】
また、この切断工具10Cにおいては、被切断材保持部5Hに保持された被切断材Pが受け部2Bと共同して、回転規制手段を構成している点で、図12の切断工具10Aと共通する。
【0081】
図14は、本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【0082】
この切断工具10Dは、図13のパイプ状の被切断材P用の切断工具10Cに比べ、同様にパイプ状の被切断材Pを切断するものである点は共通するが、被切断材保持部5Iが、それだけで被切断材Pを保持し、受け部2Cは間接的に被切断材保持部5Iの回動を規制する回動規制手段(この点では、図1の切断工具10と共通する。)として機能している点が異なっている。
【0083】
被切断材保持部5Iは、被切断材PをV字状に挟むような形状の受け当接部3Hと規制当接部4Hとを一体化して共回動するようにしたもので、受け部2Cの先端に設けられた保持部回動軸5dを中心として回動する。
【0084】
このような構成の切断工具10Dによれば、図14から解るように、切断刃1の切断力が被切断材PNに作用すると、被切断材Pは受け当接部3Hと規制当接部4Hとに押し付けられるようになり、被切断材保持部5Iにしっかり受け止められ固定されて切断されるので、図1の切断工具10と同様の効果を発揮することができる。
【0085】
なお、図13、14の切断工具10C、10Dからも解るように、本発明の切断工具の核となる構成要件は、受け当接部と規制当接部とが被切断材の外面を異なる部分で受け、共回動するという点であり、これにより、その回動を何らかの方法により規制すれば、被切断材を好適に切断でき、あるいは、被切断材保持部を開状態から切断状態へとして、被切断材の収容を容易にすることができるという効果を発揮する。
【0086】
<実施形態4>
図15は、本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図である。
【0087】
この切断工具10Eは、図1の切断工具10に比べ、被切断材保持部5Jが、受け部2Dに対して回動する点は共通するが、その回動のために特に回動軸がなく、受け部2に設けられた円弧状のガイド部2aに対して、被切断材保持部5Jの外周が同一円弧形状の円弧部5eとなっていて、回動可能となっている点が異なっている。
【0088】
被切断材保持部5Jに設けられた受け当接部3Iと規制当接部4Kは、図1のものと同一で、二列用保護ダクトである被切断材DWを三方から囲う形状となっている。また、規制当接部4Kは、被切断材DWの側壁Dbaに沿う側壁規制当接部4Iと天壁Dbbに沿う天壁規制当接部4Jとを備えている。
【0089】
また、この切断工具10Eの被切断材保持部5Jは、一列用保護ダクトである被切断材DSを収容するための、受け当接部3Lと規制当接部4Lとからなる小被切断材保持部5Kを備えている。この小被切断材保持部5Kは、受け当接部3Iの部分的な凹所として形成されている。
【0090】
この切断工具10Iには、このような構成で回動する被切断材保持部5Jの回動を規制する回動規制手段として、受け部2Dにストッパ2bが設けられている。このストッパ2bは、被切断材保持部5Jに保持された被切断材DW、あるいは、その一部である小被切断材保持部5Kに保持された被切断材DSに接触して、切断刃1からの切断力に抗して、被切断材保持部5Jの回動を規制するものである。
【0091】
このような構成の切断工具10Eによれば、図15から解るように、切断刃1の切断力が被切断材DWに作用すると、被切断材DWは受け当接部3Iと規制当接部4Kとに押し付けられるようになり、被切断材保持部5Jにしっかり受け止められ固定されて切断されるので、図1の切断工具10と同様の効果を発揮することができる。
【0092】
本発明の切断工具は、上記の実施態様に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施態様の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、本発明の技術的範囲には、これらの変形例、組み合わせも含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の切断工具は、切断時に被切断材がしっかりと固定されて、安定確実にかつやり直しなく被切断材を切断することことが要請される産業上の分野に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の切断工具の一例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図
【図2】(a)は、図1の保護ダクト切断工具の保護ダクト保持部と切断刃とが最大限開いた状態を示す正面図、(b)は、この保護ダクト切断工具の切断対象である配線・配管材保護ダクトの一例を示す横断面図
【図3】図1の切断工具により被切断材を切断する態様を示すもので、(a)は開いた被切断材保持部に被切断材をセットした状態を示す斜視図、(b)は(a)の状態から被切断材保持部を閉じて、切断する前を示す斜視図
【図4】図3(b)の状態を、被切断材の手前側から見た正面図
【図5】図4の状態から更に切断刃が被切断材に切り込んだ状態を示す正面図
【図6】図5の状態から更に切断刃が被切断材に3分の1程度切り込んだ状態を示す正面図
【図7】図6の状態から更に切断刃が被切断材に3分の2程度切り込んだ状態を示す正面図
【図8】切断刃による被切断材の切断が完了した状態を示す正面図
【図9】(a)は、図1の切断工具で切断した被切断材を示す外観斜視図、(b)は、受け当接部及び規制当接部の一対を備えていない切断工具で切断した被切断材を示す外観斜視図
【図10】(a)は図3に示した被切断材より小型の被切断材を示す外観斜視図、(b)は(a)の被切断材を図1の切断工具で切断する場合の態様を示す正面図
【図11】本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその切断工具によって一つの被切断材を切断する状態を示す正面図、(b)は同じ切断工具によって他の被切断材を切断する状態を示す正面図、(c)は同じ切断工具によって更に他の被切断材を切断する状態を示す正面図
【図12】本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその切断工具によって一つの被切断材を切断する状態を示す正面図、(b)は同じ切断工具によって他の被切断材を切断する状態を示す正面図、(c)は同じ切断工具によって更に他の被切断材を切断する状態を示す正面図
【図13】本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図
【図14】本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図
【図15】本発明の切断工具の他例を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図
【図16】本発明の背景技術となる切断工具を例示するもので、(a)はその正面図、(b)は(a)を上方より見た所を示す上面図
【符号の説明】
【0095】
1 切断刃
1a 刃軸
2〜2D 受け部
3〜3I 受け当接部
4〜4K 規制当接部
4A、4I 側壁規制当接部
4B、4J 天壁規制当接部
5〜5J 被切断材保持部(変形防止部)
5a〜5d 保持部回動軸
5e 円弧部
6 工具本体
7 操作部
10〜10E 切断工具
DW〜DW3 被切断材
DS 被切断材
P、PS 被切断材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃軸を中心に回動して被切断材を切断する切断刃と、被切断材を受ける受け部及び前記受け部に対して前記刃軸の反対側に設けられ前記切断刃の切断操作をするための操作部を設けた工具本体とを備えた切断工具であって、
該被切断材に作用する前記切断刃の切断力を、該被切断材の外面の一部分で受ける受け当接部及び該被切断材の該一部分と異なる他の部分で受ける規制当接部を相互間の角度を保持して回動するように一体化した被切断材保持部を前記受け部に回動可能に設け、
切断時には、前記被切断材に作用する前記切断刃からの切断力が、前記受け当接部及び前記規制当接部の双方に作用するようにされ、
この切断力により被切断材保持部が回動するのを規制する回動規制手段を備えていることを特徴とする切断工具。
【請求項2】
被切断材保持部は、更に、受け当接部と規制当接部に対して切断刃側となる位置に、被切断材を該被切断材の長手軸方向に直交する方向から受け入れる開口部を備え、
前記受け当接部と前記規制当接部とは、前記開口部を形成しつつ、相互間の角度を保持して回動するように一体化され、
前記被切断材保持部は、前記開口部から前記切断刃に干渉されずに被切断材を受け入れる開状態から、収容した被切断材を切断するための切断状態まで回動可能とされていることを特徴とする請求項1記載の切断工具。
【請求項3】
被切断材保持部は、異なる被切断材に対応した受け当接部及び規制当接部を複数対備え、前記被切断材保持部を回動させることにより異なる被切断材をそれぞれの受け当接部及び規制当接部の一対で切断可能であることを特徴とする請求項1記載の切断工具。
【請求項4】
受け部が回動規制手段を構成することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の切断工具。
【請求項5】
前記被切断材保持部に受けられた被切断材が回動規制手段を構成することを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の切断工具。
【請求項6】
受け当接部またはあるいは及び規制当接部は、切断時には受け当接部で受けられた被切断材が切断刃により切断力を受けて変形する部分の変形を防止するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の切断工具。
【請求項7】
受け当接部またはあるいは及び規制当接部は、切断時に被切断材が変形する部分の変形前の形状に沿った形状の変形防止部とされていることを特徴とする請求項1から6のいずれか記載の切断工具。
【請求項1】
刃軸を中心に回動して被切断材を切断する切断刃と、被切断材を受ける受け部及び前記受け部に対して前記刃軸の反対側に設けられ前記切断刃の切断操作をするための操作部を設けた工具本体とを備えた切断工具であって、
該被切断材に作用する前記切断刃の切断力を、該被切断材の外面の一部分で受ける受け当接部及び該被切断材の該一部分と異なる他の部分で受ける規制当接部を相互間の角度を保持して回動するように一体化した被切断材保持部を前記受け部に回動可能に設け、
切断時には、前記被切断材に作用する前記切断刃からの切断力が、前記受け当接部及び前記規制当接部の双方に作用するようにされ、
この切断力により被切断材保持部が回動するのを規制する回動規制手段を備えていることを特徴とする切断工具。
【請求項2】
被切断材保持部は、更に、受け当接部と規制当接部に対して切断刃側となる位置に、被切断材を該被切断材の長手軸方向に直交する方向から受け入れる開口部を備え、
前記受け当接部と前記規制当接部とは、前記開口部を形成しつつ、相互間の角度を保持して回動するように一体化され、
前記被切断材保持部は、前記開口部から前記切断刃に干渉されずに被切断材を受け入れる開状態から、収容した被切断材を切断するための切断状態まで回動可能とされていることを特徴とする請求項1記載の切断工具。
【請求項3】
被切断材保持部は、異なる被切断材に対応した受け当接部及び規制当接部を複数対備え、前記被切断材保持部を回動させることにより異なる被切断材をそれぞれの受け当接部及び規制当接部の一対で切断可能であることを特徴とする請求項1記載の切断工具。
【請求項4】
受け部が回動規制手段を構成することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の切断工具。
【請求項5】
前記被切断材保持部に受けられた被切断材が回動規制手段を構成することを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の切断工具。
【請求項6】
受け当接部またはあるいは及び規制当接部は、切断時には受け当接部で受けられた被切断材が切断刃により切断力を受けて変形する部分の変形を防止するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の切断工具。
【請求項7】
受け当接部またはあるいは及び規制当接部は、切断時に被切断材が変形する部分の変形前の形状に沿った形状の変形防止部とされていることを特徴とする請求項1から6のいずれか記載の切断工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−219679(P2009−219679A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67557(P2008−67557)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】
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