説明

切断用定規

【課題】切断作業者が刃先だけは切断用定規に沿っているものの、カッターナイフ自体は任意の角度に傾けて切断作業をしているとカッターナイフの刃先を持ち上げたときに、刃先が定規の上方へ入り込んでしまい、その結果、手を負傷してしまうという課題を解決する。
【解決手段】切断刃物のガイド面と切断対象物に接する面とのなす角が鈍角とし、切断刃物のガイド面と切断対象物に接しない定規上面とのなす角が鋭角とした、切断刃物のガイド面が切断対象物に対して傾斜した状態に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断用定規に関するものである。さらに詳しくは、紙やフィルムのシート状物を表面に貼り付ける際に、シート状物を重ね合わせて切断し、切断した部分を除去して、その切断端面を接合して接合部分を目立たなくするという、例えば壁紙の重ね切り工法やダイノックシートやガラスフィルムの施工の際に使用する切断用定規に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、壁紙の重ね切り工法に使用する切断用定規が知られている。切断用定規は切断する対象物の上に配置し、定規の側面を切断用のガイドとして切断する刃物を沿わせて移動させて使用するのであるが、従来の定規は、切断用のガイドとして使用する定規の側面が切断対象物に対して直角になっているものばかりであった。そのために、作業者が切断の刃物の刃先を定規に沿わせ、刃物角度を適当に傾けたりして裁断するという作業をしていた。
【0003】
また特許文献1に示すような、定規本体の長手方向沿いの片側縁端部に楯壁を一体化に設けて該楯壁を撓み防止とガイド面と防護面とを兼備する事を特徴とする楯壁を設けた多様定規が知られているが、本発明に開示されているガイド面も切断対象物に対して直角になっているものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−276235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
定規の側面が切断対象物に対して直角になっているものであると、定規を使用して切断し、定規の終端付近になってくるとカッターナイフを切断対象物から持ち上げるのであるが、この作業を行っているときには、カッターナイフの刃を定規の側面にぴったりと沿わせずに、切断作業者が刃先だけは切断用定規に沿っているものの、カッターナイフ自体は任意の角度に傾けて切断作業をしている場合がよくある。
【0006】
刃先だけ定規に沿わせてカッターナイフを傾けて切断をすると、カッターナイフが安定せずに切断面の角度が一定とならずにうねりが生じて、波打った状態の切断面となってしまっていた。
【0007】
そしてまた、切断中に定規の終端付近に来ると、刃先を定規の方へ沿わせる状態を保持しながら角度を注意して作業者が一定に保とうとしているために、定規方向への力が常にかかった状態となっているために、カッターナイフの刃先を持ち上げたときに、刃先が定規の上方へ入り込んでしまい、その結果、手を負傷してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1は、シート状物を重ね合わせて切断し、その切断端面を合わせて接合するようなシート状物の切断用定規であって、切断刃物のガイド面と切断対象物に接する面とのなす角が鈍角とされ、切断刃物のガイド面と切断対象物に接しない定規上面とのなす角が鋭角とされ、上記切断刃物のガイド面が切断対象物に対して傾斜した状態であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2は、切断刃物のガイド面の刃物本体側が位置する上面側に弾性部材を取り付けることによって、切断終了位置で刃物を持ち上げた際に弾性部材に切断刃物の刃先が接触することにより、上記弾性部材が弾性変形して抵抗となることにより切断用定規側へ切断刃物の刃先が入り込むことを防ぐことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3は、切断用定規側面の第1の面及び第2の面に、定規が落下した際に床材等を損傷しないための弾性材を取付していることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4は、切断対象物に接しない定規上面又は切断対象物に接する面のいずれかに切断刃物のガイド面の縁に当接する位置に目盛りを設けたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5は、切断対象物に切断用定規を押さえつけるための穴を、切断対象物に接しない定規上面から切断対象物に接する面に貫通して3箇所設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、切断ガイド面を傾斜した状態に設けているために、切断刃物、例えばカッターナイフの刃先を切断ガイド面に沿わせることで刃先の傾斜角度を安定した状態で裁断することができる。そのために、刃先を切断ガイド面に沿わせるようにすることで定規の上方に刃先が入り込んでしまう方向への力のかけ方も無理に行うこともなく、そのために定規の上方に刃先が入り込んでしまうことや、切断対象物を波打った状態で切断してしまうことも防止することができ、傾斜角度を安定させて、かつ安全に切断作業をすることができる。
【0014】
そして、特に内装の壁紙施工などの場合であると、端部を傾斜して切断し、その端部を重ね合わせた状態で壁面に貼り付けすることができるため、壁面に直角になった切断面よりも端部が目立ちにくく、湿気によって壁紙が膨張と収縮を繰り返した場合に下地に切断時の傷(石膏ボードの紙の部分に対する切断時の傷)があると目開きしやすくなるが、傾斜した状態に切断して重ね合わせて貼り付けしているために、直角に切断した場合よりこの目開きの発生がしない状態に仕上げることが可能となるのである。
【0015】
また、切断刃物のガイド面の刃物本体側が位置する上面側に弾性部材を取り付けることにより、万一不注意等で切断刃物の刃先が定規上方に入り込みそうになった場合には、刃物に弾性部材が当接して、抵抗となり、定規の上方に刃先が入り込んでしまうことも防止するために安全に切断作業をすることができる。
【0016】
切断用定規側面の第1の面及び第2の面に弾性材を取り付けることで、不注意で切断用定規を落下させてしまったりした場合に床材等を損傷することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の1例を説明する斜視図である。
【図2】図1の第1の面側から見た側面図である。
【図3】本発明の実施形態の別の1例を説明する斜視図である。
【図4】図3の第1の面側から見た側面図である。
【図5】実施形態の別の1例を説明する側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態の1例を説明する。図1は1実施形態の斜視図である。
【0019】
切断用定規1は巾が70mm、長さ300mm、厚みが5mmの定規で、図1に示すように切断ガイド面2の片側端部である第1の面1aは平面視で切断ガイド面2の上部の辺及び下部の辺それぞれと90度、すなわち直角に設定され、切断用定規1の上面と下面と直角に設定されている。もう片方端部である第2の面1bは、平面視で切断ガイド面2の上部の辺下部の辺それぞれと45度の角度に設定され、切断用定規1の上面と下面と直角に設定されている。第3の面1cは切断ガイド面2の上辺と平行で第1の面1aと直角に設定されている。
【0020】
切断ガイド面2は、図2に示すように、上面の辺よりも下面の辺が第3の面1c側に位置して傾斜、すなわち、切断刃物のガイド面2と切断対象物に接する面とのなす角が鈍角で、切断刃物のガイド面2と切断対象物に接しない定規上面とのなす角が鋭角とされたガイド面2の傾斜に設定されている。図2に示した寸法tは0.5mmに設定されており、角度θは定規の厚み5mm、寸法t=0.5mmからtanθ=10によりθ=約84.29度である。もちろんθの角度は上記に限定するものではなく、寸法tを0.2mm〜1.5mm、すなわち角度θの約73.30度〜87.71度の範囲で適宜設定すればよく、ただ、あまりθの角度を小さくすると、切断ガイド面2にカッターナイフの刃先を沿わせるときにカッターナイフの傾きを大きくすることが必要となり、大きく傾けた状態で切断することが難しくなることと、カッターナイフを大きく傾けると、斜めに切断した壁紙が糊の水分によって伸張するために、斜めにカットした下側になる壁紙の上に上側の壁紙が乗り上げてしまようになり、下側になる壁紙の方向から乗り上げた壁紙の端部が陰になって見えてしまったりすることがあるために寸法tは0.2mm〜0.5mm程度(角度θの範囲は約84度〜約88度程度)として角度を適宜設定しておくことが望ましい。本実施形態の説明では、実際に切断をしてみて一番切断がしやすいとの結論が得られた上記の数値(寸法t=0.5mm)としている。図においては実寸法通りで作成すると傾斜がわかりにくいため、角度を実寸法ではなく強調した図としている。
【0021】
そして、図1に図示しているように、切断ガイド面2に対する目盛り2aを、第1の面1aに対する目盛り3aを、そして第2の面1cに対する目盛り3bをそれぞれ切断用定規1の上面(又は下面)に設けている。
【0022】
また、切断用定規1には、作業者が指を入れて壁面や切断対象物に押しつけるための穴5が3箇所設けられている。例えば人差し指を第2の面1bに近い穴に入れ、親指を真ん中の穴5に入れて第2の面1bの側から切断ガイド面2にカッターナイフの刃を沿わせて切断を始める。そして切断位置が定規の中央付近にくると、定規をずれないように固定した状態で人差し指を真ん中の穴5に移動させ、親指を第1の面1a側の穴5に移動させてしっかりと固定した状態で切断作業をすることができるようにしている。
【0023】
そして、また、第1の面1aと第2の面1bには、それぞれの面と同形のラバー4a、4bを貼り付けている。このラバー4a、4bの貼り付けは、切断用定規1を不注意により落としてしまった場合などに、床面や壁面を傷つけないように保護するためのものである。もちろん定規自体の保護もその目的としていることはいうまでもない。
【0024】
上記に説明したように、切断用定規1の切断ガイド面2を傾斜させて、その傾斜にカッターナイフなどの刃先を沿わせて切断するようにできるので、刃物の刃先角度を作業者自身で傾けた状態にしなくても容易に一定な角度に傾けた状態で切断作業を行える。
【0025】
そして、切断ガイド面2に沿わせることに注意して作業をすることで、カッターナイフなどの刃物が定規の上面の辺を越えて定規上方へ入り込んでしまうことを防ぐことができ、その結果、刃先で手を怪我することを防止することができるようになるのである。
【0026】
傾斜した状態で切断対象物を切断すると、その端部を合わせたときには、傾斜されて切断した端部が重なった状態となり、特に壁紙施工の場合などでは、壁紙の裏紙が重なった状態で壁に貼り付けされ、壁紙の表面の切断位置と壁紙を貼り付けする下地の刃先が当接した部分が垂直方向から見てずれた状態となるため、壁紙貼付後の目開きが発生しにくくできるのである。
【0027】
次に別の実施形態について図3及び図4を用いて説明する。第1の面1a、第2の面1b、第3の面1cと、目盛り3a、3b、そしてラバー4a、4bと切断ガイド面2の傾斜、さらに穴5については図1及び図2で説明した実施形態と同様である。
【0028】
図4に示すように、切断ガイド面2の上方に段差部を設け、その段差部にラバー2bを設けている。ラバー2bに厚みは1mmで巾5mmとし、ラバー2bと切断用定規1の上面は段差のない平面をなすように構成している。そして、ラバー2bに目盛り2aと同等の目盛り2cを設けている。もちろんラバーの寸法は上記のみに限定するものではない。
【0029】
目盛り2cをラバー2bに設ける実施形態として説明しているが、ラバー2bの巾を小さくし、すなわち段差部の巾を小さくして、切断用定規1の上面に目盛りを設けるようにしてもよいのである。
【0030】
切断用定規1の上面にラバー2bを設けることで、切断作業中にカッターナイフ等を移動させて対象物を切断し、カッターナイフ等を上方に持ち上げて切断を終わらせる際に、カッターナイフ等の刃先が切断ガイド面2に刃先を沿わせるように力をかけているために切断用定規1の上面の上方に入り込もうとするが、刃先がラバー2bに当接し、ラバー2bが弾性変形し、摩擦力が大きくなることで手の方まで刃先が入り込むことを防ぐために怪我をしたりすることを防止することができる。
【0031】
上記の実施形態では、穴5を設けることで説明しているが、適宜取手を設けるようにしてもかまわない。また、図5に示すように、目盛り2aと同等の目盛りを付した板部材6をラバー2bと切断用定規1の接合部を覆うように定規の長さ方向にわたってネジ止め等で設け、板部材6で覆うことによりラバー2bの剥がれ防止をするようにしてもかまわない。
【符号の説明】
【0032】
1 切断用定規
1a 第1の面
1b 第2の面
1c 第3の面
2 切断ガイド面
2a 目盛り
3a、3b 目盛り
4a、4b ラバー
5 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状物を重ね合わせて切断し、その切断端面を合わせて接合するようなシート状物の切断用定規であって、
切断刃物のガイド面と切断対象物に接する面とのなす角が鈍角とされ、
切断刃物のガイド面と切断対象物に接しない定規上面とのなす角が鋭角とされ、
上記切断刃物のガイド面が切断対象物に対して傾斜した状態であること
を特徴とする切断用定規。
【請求項2】
切断刃物のガイド面の刃物本体側が位置する上面側に弾性部材を取り付けることによって、切断終了位置で刃物を持ち上げた際に弾性部材に切断刃物の刃先が接触することにより、上記弾性部材が弾性変形して抵抗となることにより切断用定規側へ切断刃物の刃先が入り込むことを防ぐことを特徴とする請求項1記載の切断用定規。
【請求項3】
切断用定規側面の第1の面及び第2の面に、定規が落下した際に床材等を損傷しないための弾性材を取付していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の切断用定規。
【請求項4】
切断対象物に接しない定規上面又は切断対象物に接する面のいずれかに切断刃物のガイド面の縁に当接する位置に目盛りを設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の切断用定規。
【請求項5】
切断対象物に切断用定規を押さえつけるための穴を、切断対象物に接しない定規上面から切断対象物に接する面に貫通して3箇所設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の切断用定規。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−106296(P2012−106296A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255433(P2010−255433)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000163121)極東産機株式会社 (68)
【Fターム(参考)】