説明

刈取収穫機の刈取部

【課題】穀稈引起体に対し、分草体後部の位置を変えることなく先端部を前後方向に移動させる分草体を設けることにより、畔際の植立穀稈を十分に刈取り枕刈り作業を省力化すると共に、分草体が畔や地面と接当した際に分草体等を保護することができる刈取収穫機の刈取部を提供する。
【解決手段】 刈取部フレーム9に、植立穀稈を分草する分草体2と分草された穀稈を引き起す穀稈引起体11を設け、引き起された穀稈を刈刃13によって刈取る刈取収穫機の刈取部であって、前記刈取部フレーム9に支持される分草体2を、穀稈引起体11に対し分草体後部位置を固定したまま、先端部を前後方向に移動自在に設けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は穀稈引起体に分草体を備えた刈取収穫機の刈取部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刈取作業を行う際に、分草体を通常刈取作業の分草姿勢から上方に退避移動させた退避姿勢で畔際の植立穀稈を刈取ることにより、手刈り作業(枕刈り)を少なくするようにしたコンバインの刈取部は既に公知である(例えば特許文献1。)。
上記刈取部の分草体は、穀稈引起体に対し上下移動(摺動)自在に取付構成すると共に、当該穀稈引起体の上部を刈取部フレームに対し前後方向に回動することができる構成となっている。
また通常の刈取作業における分草体を、穀稈引起体に対し前側に移動させることにより、倒伏状態の穀稈を起立分草する倒伏稈分草姿勢に切り換えて、分草起立させた穀稈を穀稈引起体に引き継ぎ刈刃で刈取るようにした刈取部は既に公知である(例えば特許文献2。)。
上記特許文献2の刈取部に設置される分草体は、刈取部フレームの分草フレームに対し内外二重筒構造によって位置変更自在に挿入支持し、且つ分草体の後部を穀稈引起体側に取付けた弾性分草体の先端部に穀稈を継送するように接続する構成となっている。
【特許文献1】特許第3449780号公報
【特許文献2】実公昭55−1147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1で示される刈取部は、畔際の植立穀稈を刈取る刈取作業(以下単に枕刈り作業と言う)を行うとき、分草体を上昇させ且つ穀稈引起体を後方に回動変位させるので、分草体を畔に接当させることなく刈刃を接近させて畔際刈りを行い、人手による枕刈り作業を少なくすることができる利点がある。
然しながら、分草体を穀稈引起体に対し摺動自在に設け、且つ穀稈引起体を上部を支点に回動変位させる構成にしているため、通常の刈取作業時に分草体に加わる分草負荷を穀稈引起体が直接的に受けるので、刈取部は穀稈引起体の補強を要し、また穀稈引起体を刈取部フレームに回動変位させる複雑でコスト高な構造になる等の欠点がある。
一方、特許文献2で示される刈取部は、分草体を後方に位置決めした通常の分草姿勢から、前側に移動させた倒伏稈分草姿勢に固定することにより、大きく倒伏している穀稈を前方から緩やかに分草し、穂部のしごきや引き抜きなどの不都合を生じさせることなく起立させる利点がある。
然し、この分草体の両姿勢への切り換えは、植立穀稈の倒伏状態を常に監視しながら、機体を停止しコンバイン作業を一時的に中断させ、手作業によって分草体を移動して固定を行わねばならない欠点がある。また分草体は通常の分草姿勢において、畔際刈り時に刈り残しを生ずるため多量の枕刈り作業を必要とする問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために本発明の刈取収穫機の刈取部は、第1に、刈取部フレーム9に、植立穀稈を分草する分草体2と分草された穀稈を引き起す穀稈引起体11を設け、引き起された穀稈を刈刃13によって刈取る刈取収穫機の刈取部において、前記刈取部フレーム9に支持される分草体2を、穀稈引起体11に対し分草体後部位置を固定したまま、先端部を前後方向に移動自在に設けたことを特徴としている。
【0005】
第2に、分草体2を、刈取部フレーム9に固定支持される後側分草体17と前後移動自
在に支持される前側分草体15とに分割して構成すると共に、該前側分草体15をスプリング27により前方に向けて付勢したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
以上のように本発明によれば、刈取部フレームに支持される分草体を、穀稈引起体に対し分草体後部位置を固定したまま、先端部を前後方向に移動自在に設けたことにより、畔際の植立穀稈を刈取る際に、先端部を退動させて分草体を短縮し枕刈り作業の少ない刈取作業を行うことができ、また通常の刈取作業と同様に起立分草した穀稈を分草体から穀稈引起体に確実に案内し、スムーズな引き起しを行わせることができる。
【0007】
また前後移動する前側分草体で起立分草される穀稈を、穀稈引起体に対し一定姿勢で支持される後側分草体を介して案内するので、穀稈を分草体から穀稈引起体に確実に引き継ぎ穀稈引起体による引起作用をスムーズに行わせて、刈刃による刈取りを整然と行うことができる。また前側分草体は畔と接当したり地面に突入した場合に接当負荷を逃がすので、分草体や穀稈引起体等の破損や変形等を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1において符号1は、本発明に係わる分草体2を備えたコンバインであり、クローラー式の走行装置1aを備えた走行機台1bに、刈取部3と脱穀部5等の作業部を従来のものと同様に前後方向に配置し、刈取部3の後方で脱穀部5の右側に操縦部6とグレンタンク7を配置し、脱穀部5の後方に排藁カッター装置8を備えた構成となっている。
【0009】
この構成により、刈取部3によって刈り取った植立穀稈は脱穀部5に搬送して脱穀され、脱穀済の排稈は排藁カッター装置8によって切断され又は非切断の長藁状態のまま機外に排出される。また脱穀部5によって脱穀選別された穀粒は、グレンタンク7に収容して一連のコンバイン作業を行うことができる。
【0010】
上記刈取部3は刈取部フレーム9の後端を、走行機台1bの前側に立設される支柱に回動可能に支持し、且つ刈取部フレーム9の中途部を走行機台1b側から油圧シリンダによって昇降作動可能に支持される。
そして、刈取部3は刈取部フレーム9から前側に延設した複数の分草フレーム10に、分草体2と穀稈引起体11を前後方向に設け、分草体2によって仕分けた(分草した)植立穀稈を穀稈引起体11の引起爪12によって引き起し、稈身を伸ばした状態で刈刃13で刈り取った穀稈を脱穀部5に向けて搬送することができる。
【0011】
次に図2,図3を参照し分草体2について説明する。図示例の分草体2は分草面を形成する分草ガイド板部材を、前側分草体15と中間分草体16と後側分草体17とに3分割した構成にしている。この前側分草体15と中間分草体16と後側分草体17とは互いの端部をラップさせ、且つ後側分草体17に対し中間分草体16及び前側分草体15を弾力的に付勢し進退作動させて伸縮することができるように構成している。
【0012】
即ち、後側分草体17は、パイプ杆からなる分草フレーム10の先端部に立設された二股状の支持部材20の上部に取付支持している。中間分草体16は、上記分草フレーム10内にスライド自在に挿入支持される中分草フレーム21の先端部に立設される支持部材22の上部に取付支持している。後側分草体17は、上記中分草フレーム21内にスライド自在に挿入支持される先分草フレーム23の先端部に設けた橇状の支持部材25に一体的に設けている。上記支持部材22は前後方向に撓むことができる弾性部材で形成することが望ましい。
【0013】
そして、分草フレーム10の先端部内にはつる巻き状のスプリング26を挿入した状態で受け具10aによって位置決め支持し、中分草フレーム21を所定の分草位置に張圧付勢している。また中分草フレーム21の先端部内には前記スプリング26より低い弾性力に設定したスプリング27を挿入し受け具21aによって位置決め支持し、先分草フレーム23を所定の分草位置に張圧付勢している。尚、中分草フレーム21及び先分草フレーム23の前方側への抜け止めは図示しない抜け止め手段によって行っている。
【0014】
また図2に示すように分草体2は通常の分草姿勢において、中間分草体16の後部は後側分草体17の先端部上方に近接してラップし、また前側分草体15の後部は中間分草体16の先端部上方にラップし、各ラップ部はそれぞれ前方の分草体の後方移動を許容する傾斜形状と隙間を有して設けられている。
【0015】
また後側分草体17と中間分草体16と前側分草体15は、共に下向き半円弧状(椀形状)断面で先細となる形状に形成し且つ側面視で前下り傾斜状に支持することにより、互いのラップ部を介して中間分草体16と前側分草体15の分草フレーム軸心を中心とする側方回動を規制するようにしている。尚、中間分草体16と前側分草体15の側方回動規制手段は、例えば分草フレーム10と中分草フレーム21と先分草フレーム23を共に角パイプ材となしてスライド自在に挿入することもできる。
【0016】
そして、分草体2は前方の中間分草体16或いは前側分草体15の所定の退動を検知する検出手段30を備えている。図示例の検出手段30は前記支持部材20に設けた取付座31に取付支持され、前方に突出させたセンサ片32が、中間分草体16の退動によって支持部材22と接当したときON信号を図示しない制御装置に送り、警報或いは作業中止手段によって作業者に報知し、分草体2の破損や変形等に伴う作業トラブルを防止するようにしている。
【0017】
以上のように構成される刈取部3を備えたコンバイン1は、刈取部3を下降させてコンバイン1を前進走行をしながらコンバイン作業を行うとき、分草体2は通常の分草姿勢において、穀稈引起体11の前側で固定支持された後側分草体17に対し中間分草体16と前側分草体15が、それぞれスプリング26,27によって前方に付勢されて伸長しているので、植立穀稈を前側分草体15で分草しながら中間分草体16と後側分草体17で起立させ、起立姿勢を保持したまま植立穀稈を後側分草体17によって穀稈引起体11に誘導案内し確実に引き継ぎ、穀稈引起体11による引き起しを常にスムーズに行わせて、後方の刈刃13による刈取りを整然と行うことができる利点がある。
【0018】
そして、畔際の植立穀稈を刈取る場合に、前側分草体15の先端部を畔に接当させると、該前側分草体15及び中間分草体16はスプリング26,27に抗して退動し分草体2を短縮した状態にすることができるので、後側分草体17は穀稈引起体11に対し分草体後部の引き継ぎ関係を変えることなく、起立分草した穀稈を穀稈引起体11に確実に継送すると共に、分草体2の先端部と刈刃13との距離を少なくした状態で畔直近の穀稈を刈取ることができる。
【0019】
従って、畔際に刈り残しされる植立穀稈を少なくし人為的な枕刈り作業を省力化することができる。また分草体2の先端部が畔畝等に接当したり地面に突入した場合に、前側分草体15及び中間分草体16がスプリング27,26に抗して順次退動し接当負荷を逃がすので、分草体2及び刈取部フレーム9並びに穀稈引起体11等の破損や変形を防止し保護することができると共に、伸縮する分草体2は上記負荷が解除されると元の分草姿勢に自動的に復帰するので、刈取作業を中断することなく連続的に行うことができる。
【0020】
また分草体2は、図示例のように後側分草体17に対し中間分草体16と前側分草体1
5とで構成する他、中間分草体16を省略し後側分草体17に対し前側分草体15を付勢支持することができ、この場合も分草体2を前方に長く形成し穀稈引起体11のより前方から穀稈を緩やかな分草面によって無理なく分草し、穂部のしごきや引き抜きを伴うことなく穀稈引起体11に案内し、起立分草した穀稈を継送し引起作用をスムーズに行わせることができる利点がある。
【0021】
また前側分草体15或いは中間分草体16の所定以上の退動を検知する検出手段30を設けた刈取部3は、検出手段30の検知信号によって前側分草体15の無理な接当を回避することができると共に、刈取部3の破損等を防止した刈取り作業を能率よく行うことができる。
【0022】
尚、分草体2は例えば図2に点線で示すように、操縦部6側に設置した分草体伸縮用の操作レバー37に設けたワイヤ39を、分草フレーム10内に挿入し先分草フレーム23の後端と接続することができる。この場合には必要により操作レバー37を操作することにより、操縦部6側から人為的に先分草フレーム23を退動させて、分草体2を短縮することができるので、先分草フレーム23を畔に接当させたり地面に突入させることを予め回避することができる。また分草体2の伸縮操作手段は操作レバー37に代えて、操作スイッチ付きの電動モータを利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の分草体構造を備えたコンバインの全体斜視図である。
【図2】図1の分草体の構成を示す側断面図である。
【図3】図2の分草体の構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 コンバイン
2 分草体
3 刈取部
11 穀稈引起体
13 刈刃
15 前側分草体
16 中間分草体
17 後側分草体
26,27 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部フレーム(9)に、植立穀稈を分草する分草体(2)と分草された穀稈を引き起す穀稈引起体(11)を設け、引き起された穀稈を刈刃(13)によって刈取る刈取収穫機の刈取部において、前記刈取部フレーム(9)に支持される分草体(2)を、穀稈引起体(11)に対し分草体後部位置を固定したまま、先端部を前後方向に移動自在に設けたことを特徴とする刈取収穫機の刈取部。
【請求項2】
分草体(2)を、刈取部フレーム(9)に固定支持される後側分草体(17)と前後移動自在に支持される前側分草体(15)とに分割して構成すると共に、該前側分草体(15)をスプリング(27)により前方に向けて付勢した請求項1記載の刈取収穫機の刈取部。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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