説明

刈取機

【課題】チップレシーバを装着する際の作業者の負担をより一層軽減することができる刈取機を提供する。
【解決手段】前後方向に伸びる刃物2と、該刃物2を支持する刃物支持部と、該刃物支持部の支持梁12に前後方向に着脱自在にスライド装着されるチップレシーバ3とを備えた刈取機であって、チップレシーバ3を刃物支持部に保持するための保持機構を備え、該保持機構は、チップレシーバ3のスライド装着時にスライド開始点から所定区間内は弾性変形せず該所定区間を過ぎると弾性変形してスライド移動に対する摩擦抵抗を増大させる弾性変形部43を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着脱自在なチップレシーバを備えた刈取機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の刈取機として本出願人は既に下記特許文献1所載のものを提案している。即ち、チップレシーバを刃物押さえにスライドさせて装着するという構成であって、従来のネジによる取付構成に比してその着脱作業が極めて容易になるという利点を有するものである。具体的には、チップレシーバの上部取付部の下面に長手方向(前後方向)に延びる左右一対の突出壁(係合体)を下方に向けて突設する一方、該チップレシーバの上部取付部の下面に対向する上側の刃物押さえの上面には長手方向に延びる左右一対の突出壁(係止部)を上方に向けて突設して、チップレシーバの突出壁の外側の側面を上側の刃物押さえの突出壁の内側の側面に摺動させながらチップレシーバをスライド装着する。また、下側の刃物押さえの下側に位置するチップレシーバの下部取付部の上面には長手方向に延びる凹条(係合部)が形成され、該凹条の内側を下側の刃物押さえが摺動する。
【0003】
チップレシーバの突出壁の間隔は上側の刃物押さえの突出壁の間隔よりも若干大きく形成され、また、チップレシーバの凹条の幅は下側の刃物押さえのそれよりも若干狭く形成されているため、チップレシーバの上部取付部の突出壁はその間隔を狭めるように左右方向内側に向けて弾性変形し、チップレシーバの下部取付部は凹条の幅が広がるように左右方向外側に向けて弾性変形し、それらの弾性復元力によってチップレシーバは上下両刃物押さえにしっかりと保持されることになる。
【0004】
しかしながら、チップレシーバの突出壁や凹条並びに上側の刃物押さえの突出壁はそれらの全長に亘って形成されており、従って、チップレシーバをスライド装着する際には、そのスライド開始点からチップレシーバの突出壁や下部取付部が弾性変形しながら上下の刃物押さえと摺動することになる。また、チップレシーバの突出壁や下部取付部はスライド開始点からのスライド量が増加する程、弾性変形する領域が増加し、それに伴って摺動抵抗も増加していく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3121580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえに本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされ、チップレシーバを装着する際の作業者の負担をより一層軽減することができる刈取機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係る刈取機は、前後方向に伸びる刃物と、該刃物を支持する刃物支持部と、該刃物支持部に前後方向に着脱自在にスライド装着されるチップレシーバとを備えた刈取機であって、チップレシーバを刃物支持部に保持するための保持機構を備え、該保持機構は、チップレシーバのスライド装着時にスライド開始点から所定区間内は弾性変形せず該所定区間を過ぎると弾性変形してスライド移動に対する摩擦抵抗を増大させる弾性変形部を備えていることを特徴とする。
【0008】
該構成の刈取機にチップレシーバをスライド装着する際、保持機構の弾性変形部がスライド開始点から所定区間内においては弾性変形しないので、その所定区間内においてチップレシーバをスライド移動させる際の摩擦抵抗が小さい。従って、チップレシーバの姿勢が安定しにくいスライド開始点においてその作業性が向上し、チップレシーバを刃物支持部に容易に装着開始することができる。そして、所定区間を過ぎると弾性変形部が弾性変形してスライド移動に対する摩擦抵抗が増大することになるが、その時点では既に刃物支持部に対してチップレシーバが所定長さ装着された状態にあるのでチップレシーバの姿勢は安定しており、従ってチップレシーバをそのままスライド終了点までスムーズにスライド移動させることができる。
【0009】
特に、弾性変形部は、刃物支持部とチップレシーバのうちの一方の部材に設けられ、保持機構は、前記所定区間内は刃物支持部とチップレシーバのうちの他方の部材に当接せず該所定区間を過ぎると他方の部材に当接する当接部を一方の部材に備え、該当接部が他方の部材に当接することにより弾性変形部が弾性変形するように構成され、他方の部材には、スライド終了点において当接部を係止するための係止部が設けられていることが好ましい。該構成においては当接部が他方の部材に当接することで弾性変形部が弾性変形するので、弾性変形部が弾性変形を開始する位置を容易に決定することができる。しかも、他方の部材に設けられた係止部がスライド終了点において当接部を係止するので、チップレシーバを確実にスライド終了点に保持することができる。
【0010】
更に、弾性変形部として板バネが設けられ、該板バネに当接部が形成されていることが好ましい。弾性変形部と当接部を別部材から構成することもできるが、両者を板バネによる一体構成とすることにより部品点数が削減されると同時に構造が簡素化できる結果耐久性も向上する。また、板バネであるので当接部も容易に形成できる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明に係る刈取機にあっては、スライド開始点から所定区間内は弾性変形せずにその所定区間を過ぎると弾性変形する弾性変形部を備えているので、チップレシーバを楽にスライド装着することができ、作業負担が軽減される。また、刈取機においては刃物に向けてチップレシーバを装着することになるが、チップレシーバを楽にスライド装着できるので、装着作業時の怪我のリスクも軽減されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態における刈取機を示す平面図。
【図2】同刈取機の要部を示す正面図。
【図3】図1のQ−Q線断面図。
【図4】図1のP−P線要部断面図。
【図5】同刈取機のチップレシーバを示す断面図。
【図6】同刈取機のチップレシーバの要部を示す底面図。
【図7】図5の要部拡大図。
【図8】同刈取機にチップレシーバを装着する途中の状態であってチップレシーバの当接部が刃物支持部に当接する直前の状態を示す要部断面図。
【図9】同刈取機にチップレシーバを装着する途中の状態であってチップレシーバの当接部が刃物支持部に当接した時の状態を示す要部平面図。
【図10】同刈取機にチップレシーバを装着する途中の状態であってチップレシーバの当接部が刃物支持部に当接した時の状態を示す要部断面図。
【図11】同刈取機にチップレシーバを装着する途中の状態であってチップレシーバの当接部が刃物支持部に当接した後の状態を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態にかかる刈取機について図面を参酌しつつ説明する。図1に示すように、本実施形態における刈取機は、ヘッジトリマとも称されるものであって、本体1に内蔵された図示しない駆動装置としてのモータによって駆動されて前後方向に往復運動する刃物2と、該刃物2によって刈り取られた枝葉を一時的に捕集するためのチップレシーバ3とを備えている。
【0014】
該刃物2は、本体1から前方に向けて伸びていて、図3及び図4のように上下に対向する一対の刃体3,4から構成されている。各刃体3,4は前後方向に伸びる板状であってその両側部には側方に突出する三角状あるいは台形状の刃部が前後方向に一定間隔毎に形成されている。但し、刃部の間隔(ピッチ)を変えてもよく、例えば、刃体3,4の前部の刃部の間隔が後部の刃部の間隔よりも大きくなるように形成してもよい。そして、上下一対の刃体3,4が交互に前後に往復運動することにより枝葉を刈り取ることができる。尚、上下二枚の刃体3,4が共に往復運動するのではなく、一方を固定刃、他方を可動刃としてもよい。また、図1において符号4は本体1に一体に設けられた主ハンドルで、符号5は本体1に前後に回動可能に設けられた補助ハンドルである。また、図2にも示しているように、本体1の前部には、刃物2によって切断された枝葉等が後方の作業者へ向かうのを阻止するためのガード板6が取り付けられている。
【0015】
刃物2は刃物支持部に前後に往復動可能に支持されている。該刃物支持部は、刃物2を上下から挟み込むようにして支持する。具体的には、刃物支持部も刃物2と同様に前後方向に伸びていてその後端部が本体1に取り付け固定されており、刃物2を上下に狭持すべく上側構成部材と下側構成部材から主構成される。刃物2の下側に位置する下側構成部材として板状の下側支持板10が設けられ、刃物2の上側に位置する上側構成部材は三つの部材から構成され、下から順に、板状の上側支持板11と、該上側支持板11の上側に重ねられた上方に開口する横断面視略コの字状の支持梁12と、該支持梁12の上部開口をカバーするカバー体13とからなる。
【0016】
上側支持板11と下側支持板10との間には図4のように筒状のスペーサ14が配置され、該スペーサ14によって上側支持板11と下側支持板10との間の上下の間隔が設定されている。その一方、刃物2には前後方向に長い長孔15が複数形成されている。その長孔15にスペーサ14が位置することで刃物2は前後に往復動可能となる。また、スペーサ14を上下に貫通するようにして下側からボルト16が挿入されており、支持梁12の上側からナット17をボルト16に螺着させることにより、下側支持板10と上側支持板11及び支持梁12とがスペーサ14を介して上下に連結固定されている。尚、スペーサ14やボルト16は図2のように前後方向に間隔をあけて複数個配置されている。尚、上側支持板11と下側支持板10は刃物2の摺動に対して耐久性に優れた素材を使用することが好ましい。また、上側支持板11は下側支持板10よりも薄いものを使用することが好ましい。
【0017】
支持梁12は、前後方向が押し出し方向となるように形成されたアルミ押し出し材から構成され、上側支持板11に重なり合う底板部20と、該底板部20の両側縁部から上方に立ち上がる左右一対の側壁部21とからなる。支持梁12の両側壁部21の外面にはそれぞれ前後方向に沿って凹溝22が形成されている。該凹溝22は、チップレシーバ3を刃物支持部に前後方向に沿ってスライド装着するためのものであって、支持梁12の前端部から後端部まで形成されている。また、両側壁部21の内面上部にもそれぞれ前後方向に沿って凹溝23が形成されており、該凹溝23にカバー体13のフランジ部13aが係合している。
【0018】
カバー体13は下方に開口する横断面視略コの字状であって、その両側部下端にそれぞれフランジ部13aが側方に向けて突設されており、該フランジ部13aが凹溝23をスライドすることで、支持梁12の前端部からカバー体13を後方に向けてスライドさせながら装着でき、逆に前方に向けてスライドさせることにより支持梁12からカバー体13を外すことができる。カバー体13を支持梁12から外すと支持梁12の上部開口が開放されてその底板部20の上面が露出することになり、その状態で上記ナット17の螺着、締結作業を行うことができる。このカバー体13は例えば樹脂から成形により形成される。尚、支持梁12とカバー体13とから形成される略矩形の前端開口部には前側からキャップ18が装着されている(図1、図2、図10参照)。該キャップ18の上面18aは、前側ほど低くなる傾斜面となっており、その上面18aは後端部においてカバー体13の上面13bの高さと略一致している。
【0019】
かかる構成の刃物支持部にチップレシーバ3が着脱自在にスライド装着されている。該チップレシーバ3は例えば合成樹脂から成形等により形成され、その上面が略水平な平坦面とされて枝葉を載置する載置部31と、該載置部31の一方の側部から外向き斜め上方に立ち上がって枝葉を受け止める立ち壁部32と、載置部31の下面の他方の側部に形成されて刃物支持部に取り付けるための取付部とを有している。載置部31は刃物2の略全長に亘る長さを有し、立ち壁部32は載置部31の前端部と後端部にそれぞれ回り込んで載置部31を三方から囲むように形成されている。尚、立ち壁部32から更に天井部を延設して枝葉等の上方への飛散を防止するようにしてもよい。
【0020】
チップレシーバ3の取付部は、載置部31の下面から下方に突出する左右一対の取り付け用側壁33を備えている。該取り付け用側壁33はチップレシーバ3の略全長に亘って形成されていて、図3のように支持梁12の側壁部21の外側に該側壁部21との間に所定の隙間を形成するようにして位置する。そして、取り付け用側壁33の下端部内面には図5乃至図7にも示しているように、支持梁12の側壁部21の外面に形成された凹溝22に係合する係合突起34が突設されている。該係合突起34は、前後方向に所定の長さを有する形状であって、且つ、前後方向即ちスライド方向に間隔をおきながら複数形成されている。本実施形態においては係合突起34は合計4箇所形成されている。該係合突起34は支持梁12の凹溝22に所定のクリアランスを保ちつつ係合するように形成されており、取り付け用側壁33が弾性変形して支持梁12を外側から挟み込むという構成とはされていない。尚、チップレシーバ3は図5のように前後方向中央部を中心として前後対称形状とされていて、刃物2に対する立ち壁部32の向きが左右逆の配置にはなるものの前後何れからもスライド装着できるようになっている。そして、四つの係合突起34のうち前後両端の係合突起34については、スライド装着開始時において凹溝22にスムーズに係合させることができるように工夫されている。即ち、図6のように、前後両端に位置する係合突起34は、そのスライド開始側の端部において、内向きの先端面がハの字に広がった傾斜面34aとなっている。また、図7に示すように、係合突起34の上面の前後両端部にも下向きの傾斜面34bがそれぞれ形成されており、この下向きの傾斜面34bは全ての係合突起34に形成されている。このように凹溝22に係合突起34がスムーズに係合できるようになっている。
【0021】
また、図3のように、取り付け用側壁33の内側には該取り付け用側壁33と所定の間隔をおいて摺動突起35が下方に向けて突設されている。該摺動突起35は支持梁12の側壁部21の上面と摺動可能に形成され、カバー体13には接触せずそれとの間には所定の隙間が形成される。該摺動突起35は両取り付け用側壁33の内側にそれぞれ左右対称に配置されていて、図5のように前後方向に間隔をあけながら列をなすようにして複数箇所形成されている。本実施形態においては摺動突起35は一列につき合計6箇所形成され、左右一列ずつで合計12個形成されている。また、同図に示すように、摺動突起35は、前後方向において係合突起34が形成されていない領域に形成されている。
【0022】
次に、チップレシーバ3を刃物支持部に保持するための保持機構について説明する。図5に示すように、チップレシーバ3の前後方向中央部には板バネ40が取り付けられている。該板バネ40は、図4にも示すように前後方向の中央部に下方に円弧状に湾曲しつつ突出した当接部41を有している。載置部31には上下に貫通する貫通孔が形成されており、該貫通孔を介して当接部41が載置部31の下面から下方に突出するように載置部31に上側から組み込まれている。板バネ40の前後両端部には上方に向けて略直角に折り曲げられた係止片部42が形成されており、載置部31に上方に向けて突設された前後一対の係止突部36に板バネ40の前後の係止片部42が下側から係止する。係止片部42と当接部41との間の領域はフラットなバネ部43(弾性変形部)となっていて、図8のように当接部41がカバー体13の上面13bに当接していないフリー状態においてはバネ部43は載置部31の上面に当接していて弾性変形していない状態にある。一方、図4のように当接部41がカバー体13の上面13bに当接した状態においてはバネ部43が載置部31の上面から上側に斜めに持ち上がるように弾性変形する。尚、板バネ40の上側には、両バネ部43の端部を上から押さえるためのバネ押さえ44が備えられている。該バネ押さえ44も前後方向に伸びた形状であってその両端部下面にバネ部43を押さえるための押さえ用突部45がそれぞれ形成され、両端部上面には載置部31の係止突部36に下側から係止される係止用段差部46が形成されている。尚、板バネ40とバネ押さえ44は載置部31に上側から取り付けられるが、その取り付けに際しては、板バネ40やバネ押さえ44を斜めに傾けた状態として、図4において向かって左側の係止突部36の下側に板バネ40の一方の係止片部42やバネ押さえ44の一方の係止用段差部46を初めに差し込んで係止させ、その後、他方の係止片部42や他方の係止用段差部46を同図の向かって右側の係止突部36に係止させるようにする。
【0023】
上述のように板バネ40の当接部41はカバー体13の上面13bに当接するのであるが、チップレシーバ3が所定位置のスライド終了点に到達したとき、その当接部41を係止するための係止凹部47(係止部)がカバー体13の上面13bに形成されている。該係止凹部47は図4のように円弧状に形成されている。尚、係止凹部47に当接部41がはまり込むようにして係止された状態となってもバネ部43は弾性変形量は減少するものの所定の弾性変形量は残る。更に、係止凹部47の後方には係止凹部47の底面から連続して立ち上がるストッパ壁48が上方に向けて突設されている。該ストッパ壁48によって当接部41が後方へ移動することが阻止される。また、仮に当接部41がストッパ壁48を後側に乗り越えようとして上方に移動したとしても、バネ押さえ44がバネ部43を上側から押さえているので、該バネ押さえ44によっても当接部41のストッパ壁48の乗り越えが阻止される。従って、当接部41はチップレシーバ3に通常作用する力の範囲では係止凹部47から前側には離脱することはできても後側には離脱できない。但し、本実施形態では、万一チップレシーバ3を後方に過度に押し過ぎたとしても、図2のようにガード板6にチップレシーバ3が当接するので、それ以上の後方への移動は不可能になっている。
【0024】
以上のように構成された刈取機にチップレシーバ3をスライド装着するには、支持梁12の前端部からチップレシーバ3を後方に向けてスライドさせていくことになる。その際、チップレシーバ3の左右一対の取り付け用側壁33の間に支持梁12を差し込むようにする。支持梁12の凹溝22にチップレシーバ3の係合突起34が係合し始めるスライド開始点においては、両取り付け用側壁33で支持梁12を左右に挟み込む構成ではないのでスムーズに係合突起34を凹溝22に係合させることができる。また、板バネ40の当接部41はチップレシーバ3の前後方向中央部に位置しているので、図8にも示しているようにスライド開始点から全スライド長さの略半分の区間(所定区間)まではカバー体13やキャップ18に当接部41が当接せず、従って板バネ40のバネ部43も弾性変形しない。従って、チップレシーバ3の姿勢が安定しにくいスライド開始点において楽に装着作業を開始することができる。更に、端部に位置する係合突起34には左右に広がった傾斜面34aが形成され、また、係合突起34の上面にも下向きの傾斜面34bが形成されているので、スライド開始点において係合突起34をスムーズに凹溝22に係入させることができる。
【0025】
その後、チップレシーバ3を後方に向けてスライドさせていくのであるが、係合突起34が前後方向に連続的に形成されているのではなく間隔をおいて複数箇所に形成されているので、凹溝22との間の摩擦抵抗(摺動抵抗)が過度に大きくなることがなくスムーズにスライド移動させることができる。そして、隣り合った係合突起34の間の領域にはカバー体13の上面13bに当接可能な摺動突起35が形成されているので、係合突起34が間隔をおいて形成された構造であってもチップレシーバ3がこじたりすることがなくスムーズにスライド移動できる。該摺動突起35もまた間隔をおいて形成されているので摩擦抵抗を最小限に抑えることができる。
【0026】
そして、チップレシーバ3を全長の略半分程度までスライドさせてくると、図9及び図10に示すように、キャップ18の上面18aに板バネ40の当接部41が当接する。キャップ18の上面18aは後方ほど高くなる傾斜面となっていてカバー体13の上面13bとの間に段差がないので、当接部41はキャップ18の上面18aに誘導されながら徐々に上側に押されていき、図11のように自動的にカバー体13の上面13bに当接するようになる。該当接部41の上側への移動に伴ってバネ部43が弾性変形し、当接部41には下方に向けて弾性復元力が作用する。従って、当接部41がカバー体13に当接することによってチップレシーバ3のスライド移動に対する摩擦抵抗が増大することになる。但し、その状態では既に所定長さのスライド移動が終わっていて支持梁12に対するチップレシーバ3の姿勢も安定しているので、その後、所定位置であるスライド終了点までチップレシーバ3をスムーズに押し込むことができる。尚、図11のように、当接部41がカバー体13の上面13bを摺動する状態では、バネ部43がバネ押さえ44に接触するあるいは若干隙間が空いた状態となっている。
【0027】
そして、スライド終了点まで到達すると図4のように当接部41が係止凹部47にはまり込んで係止され、チップレシーバ3はその位置で停止し保持される。当接部41が係止凹部47にはまり込むことでバネ部43の弾性変形量はその分だけ減少するが、本実施形態では弾性変形が全てなくなるのではなく所定量の弾性変形は残存する構成となっている。但し、当接部41が係止凹部47にはまり込むことでバネ部43の弾性変形が全てなくなる構成であってもよい。
【0028】
尚、仮に当接部41が係止凹部47から前側に外れてチップレシーバ3が前側に移動したとしても、バネ部43の弾性復元力で当接部41がカバー体13の上面13bに押し付けられているので、そのままチップレシーバ3が前方に抜け落ちるということがなくその位置に保持される。
【0029】
このように、本実施形態における刈取機にあっては、チップレシーバ3のスライド移動の途中から当接部41がカバー体13に当接してバネ部43が弾性変形する構成であってそれまでの略半分の区間においては当接部41はカバー体13には当接せずにバネ部43も弾性変形しないので、スライド開始点から略半分の区間である所定区間内においてチップレシーバ3を楽にスライド移動させることができる。そして、中間地点で当接部41がカバー体13に当接してバネ部43が弾性変形し、それに伴って摩擦抵抗が増大することになるが、チップレシーバ3の姿勢が既に安定状態にあるのでそのまま継続して楽にスライド移動させることができる。しかも、その中間地点において増大した摩擦抵抗はその後スライド終了点まで一定であるので、従来のようにスライド開始点からスライド終了点に向けて摩擦抵抗が徐々に増大していくということはなく、この点においても楽に装着作業を完了することができる。そして、チップレシーバ3をスムーズにスライド装着できるので装着時における怪我のリスクも抑制できる。
【0030】
また、当接部41を板バネ40に形成しているので、当接部41と弾性変形部を別部材とする必要がなく、部品点数を削減できると共に、耐久性も向上することになる。また、板バネ40も前後対称形状であるので、チップレシーバ3を前後何れの向きからスライド装着しても摩擦抵抗が同じになるという利点がある。
【0031】
更に、板バネ40の当接部41を支持梁12ではなくカバー体13に当接させるようにしているので、支持梁12をアルミ押し出し材等の金属から構成することで刃物支持部に十分な強度を持たせることができると共に、カバー体13を摺動性の良い合成樹脂製等の材質とすることもでき、また係止凹部47を形成することも容易である。
【0032】
尚、本実施形態では、係止凹部47を前後方向の縦断面視において円弧状としたが、V字状とするなど、その形状は任意である。更に、例えば、係止凹部47をV字状とした場合には、その後方に上述したようなストッパ壁48を突設することに代えて、あるいは、ストッパ壁48と共に、V字状の係止凹部47の後側の傾斜面を前側の傾斜面よりも角度を急なものとして係止凹部47からの当接部41の後側への離脱を防止するようにすることもできる。同様に当接部41も円弧状の突起ではなく三角状の突起等の種々の形状であってもよい。
【0033】
また、上記実施形態では、後方にガード板6が設けられていてチップレシーバ3の後方移動がカード板6によって阻止される構成となっているが、例えば、刃物2の長さが本実施形態のものよりも長い場合などのようにガード板6とチップレシーバ3との間に所定の隙間が形成されるような構成もある。そのような場合においては、刈取機を落下させた時などのような緊急時において通常作用する力よりも大きな力がチップレシーバ3に作用した場合に、当接部41が係止凹部47から前側に離脱することができるのみならずストッパ壁48を乗り越えて後側にも離脱することも可能であり、それにより落下衝撃が緩和され、チップレシーバ3の破損が防止される。
【0034】
また更に、板バネ40をチップレシーバ3に設けて係止凹部47をカバー体13に形成したが、逆に、板バネ40をカバー体13に設けてチップレシーバ3に係止凹部47を形成するようにしてもよい。その場合、カバー体13に形成していた係止凹部47の位置に、当接部41が上を向くようにして板バネ40を取り付けることが好ましい。また、カバー体13に係止凹部47を形成するのではなく支持梁12に係止凹部47を形成してもよい。同様に、板バネ40を支持梁12に設けるようにしてもよい。支持梁12に係止凹部47を形成したり板バネ40を取り付けたりする場合には、例えば側壁部21の上面や側面に形成したり取り付けたりすることができる。
【0035】
尚、上記実施形態では板バネ40をチップレシーバ3の前後方向中央部に設けていたが、前後何れかにオフセットした位置に設けてもよく、何れにしても、スライド移動の途中から当接部41が当接する構成とすればよい。
【0036】
また、弾性変形部として板バネ40を用いたが、板バネ40には限られず、例えば、チップレシーバ3やカバー体13等に弾性変形部を一体的に形成してもよい。
【0037】
また更に、スライド終了点において当接部41を係止するための係止部として凹状の係止凹部47を形成したが、係止部は凹状ではなくてもよく、例えば載置部31の上面に係止部として凸部を形成し、該凸部の後面で当接部41を係止するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 本体
2 刃物
2a 刃体
2b 刃体
3 チップレシーバ
4 主ハンドル
5 補助ハンドル
6 ガード板
10 下側支持板(刃物支持部)
11 上側支持板(刃物支持部)
12 支持梁(刃物支持部)
13 カバー体(刃物支持部)
13a フランジ部
13b 上面
14 スペーサ
15 長孔
16 ボルト
17 ナット
18 キャップ
18a 上面
20 底板部
21 側壁部
22 凹溝
23 凹溝
31 載置部
32 立ち壁部
33 取り付け用側壁
34 係合突起
34a 傾斜面
34b 傾斜面
35 摺動突起
36 係止突部
40 板バネ
41 当接部
42 係止片部
43 バネ部(弾性変形部)
44 バネ押さえ
45 押さえ用突部
46 係止用段差部
47 係止凹部(係止部)
48 ストッパ壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に伸びる刃物と、該刃物を支持する刃物支持部と、該刃物支持部に前後方向に着脱自在にスライド装着されるチップレシーバとを備えた刈取機であって、
チップレシーバを刃物支持部に保持するための保持機構を備え、
該保持機構は、チップレシーバのスライド装着時にスライド開始点から所定区間内は弾性変形せず該所定区間を過ぎると弾性変形してスライド移動に対する摩擦抵抗を増大させる弾性変形部を備えていることを特徴とする刈取機。
【請求項2】
弾性変形部は、刃物支持部とチップレシーバのうちの一方の部材に設けられ、保持機構は、前記所定区間内は刃物支持部とチップレシーバのうちの他方の部材に当接せず該所定区間を過ぎると他方の部材に当接する当接部を一方の部材に備え、該当接部が他方の部材に当接することにより弾性変形部が弾性変形するように構成され、他方の部材には、スライド終了点において当接部を係止するための係止部が設けられている請求項1記載の刈取機。
【請求項3】
弾性変形部として板バネが設けられ、該板バネに当接部が形成されている請求項2記載の刈取機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−111020(P2013−111020A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260435(P2011−260435)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】