説明

刈払機

【課題】背が高い被切断部材(植物)を刈り取る際に使用する、切断した被切断部材を所望の一側方に傾倒させる刈払機を提供する。
【解決手段】走行車輪5と、原動機1と、その原動機1によって回転する刈払刃2と、を備えた刈払機であって、刈払刃2の上方位置に、刈払刃2よりも先に被切断部材に当接すると共に平面視V字状に配設される一対の当接部30を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈払機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刈払機は、エンジンと、エンジンによって回転する回転刃と、走行用の車輪と、作業者が操作する操作ハンドルと、を備え、操作ハンドルを手で押しながら操作して草や小さな木といった植物を切断するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−289710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、トウモロコシやサトウキビ、ケナフといった、背が高い被切断部材(植物)を切断すると、切断後の長い茎や幹が四方八方に折り重なるように傾倒してしまい、集積や回収する際に多大な労力と時間がかかってしまうという問題があった。また、刈払作業中に使用者に倒れたり作業の邪魔となるという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、切断した被切断部材を所望の一側方に傾倒させる刈払機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の刈払機は、走行車輪と、原動機と、該原動機によって回転する刈払刃と、を備えた刈払機に於て、上記刈払刃の上方位置に、該刈払刃よりも先に被切断部材に当接すると共に平面視V字状に配設される一対の当接部を設けたものである。
また、上記一対の当接部を、車輪接地面から500mm以上1200mm以下の高さ寸法に設けたものである。
また、一本の円管部材を平面視V字状に折曲形成したガイド部材の両側縁部をもって、上記一対の当接部としたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の刈払機によれば、切断した被切断部材を作業者の右手側又は左手側といった所望の一側方に傾倒させることができる。つまり、切断後の被切断部材が一側方に集められ容易に回収できる。或いは、迅速かつ容易に、より大きな塊に集積させることができる。少ない人数で効率良く作業できる。また、作業者側に傾倒してくるのを防止でき安全かつ容易に刈払作業できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の一形態の側面図である。
【図2】要部正面図である。
【図3】要部平面図である。
【図4】作用説明図である。
【図5】図3のA−A断面図である。
【図6】図3のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
本発明の刈払機は、図1乃至図3に示すように、エンジン等の原動機1と、原動機1を保持するパイプフレーム状の基台部材4と、基台部材4下端に水平軸心廻りに回転自在に枢着された走行車輪5と、基台部材4に連結され作業者が操作する操作杆6と、原動機1によって鉛直状回転軸心L2廻りに回転する刈払刃2と、原動機1から前方下傾状に突設されて原動機1からの回転力を刈払刃2に伝達する伝達軸70が挿通された筒状の保持杆7と、を備えている。使用者が操作杆6のハンドル部6aを握って前進しながら刈払作業を行なう手押式の刈払機である。
【0010】
そして、刈払刃2の上方位置に、刈払刃2よりも先に切断すべき被切断部材Kに当接する一対の当接部30,30を設けている。当接部30は、車輪接地面Gから500mm以上1200mm以下の高さ寸法Hに設けられている。なお、高さ寸法Hを800mm以上1100以下とするのが望ましい。
【0011】
一対の当接部30,30は、平面視V字状に配設されている。具体的には、1本の金属製の円管部材(パイプ)を、平面視で回転軸心L2を通過すると共に進行方向Yと一致する一直線Laを対称軸として、左右対称のV字状に折曲形成(成形)したガイド部材3を設け、そのガイド部材3の左右の両側縁部(両側壁部)を、一対の当接部30,30としている。
【0012】
また、当接部30,30の相互の開き角度θは、45°以上75°以下に設定されている。
また、当接部30は、中間部に屈曲部30aを有し、この屈曲部30aから後方側に向かうにつれて左右外方側へ折曲げ形成されている。この屈曲角度αを0°以上25°以下に設定している。より好ましくは屈曲角度αを10°以上20°以下とする。
【0013】
また、一対の当接部30,30は、刈払刃2の前方半円部よりも先に、被切断部材Kに当接するように刈払刃2の刃先2aよりもラジアル外方側に配設されている。即ち、刈払刃2の刃先2aが、平面視で、当接部30,30よりも前方及び左右外方に突出しないように配設されている。また、一対の当接部30,30の左右最大幅寸法(ガイド部材3の幅寸法)Wを刈払刃2の直径寸法Dを越える寸法に設定している。
【0014】
また、一対の当接部30,30は、平面視逆三角形状の樹脂製の補強連結部材31に取着されている。
図3と図5及び図6に示すように、補強連結部材31は、平面視逆三角状の平板部31Aと、ガイド部材3を把持すると共に平面視逆ハの字状又はV字状に配設される横断面C字状の保持部31Bと、平板部31Aの後方辺に膨設され他の部材と連結するための連結部31Cと、を有している。
【0015】
保持部31Bは、左右内方からガイド部材3を保持し、ガイド部材3の側縁部(当接部30)を露出させるように形成されている。言い換えると、保持部31Bはガイド部材3の側縁部より外方へ突出しないように形成している。被切断部材Kが補強連結部材31に接触せず、前進に伴ってスムーズに摺接するように形成している。また、当接部30は、保持部31Bから露出したガイド部材3の横断面円弧状の側方壁部(図6に二点鎖線で囲んだ範囲)とも言える。
【0016】
また、図1と図3及び図5に示すように、連結部31Cは、保持杆7に一方端が連結部材72を介して取着された支持部材9の他方端が差し込まれる差込口部31aを有している。また、基台部材4に帯板部材42を介して一方端が取着された左右一対の接続部材8,8の他方端が夫々差し込まれて取着される左右一対の接続口部31b,31bを有している。
【0017】
つまり、補強連結部材31は、2本の接続部材8,8と1本の支持部材9によって、基台部材4や保持杆7に連結され、刈払刃2の上方位置に当接部30(ガイド部材3)を水平状に保持している。
【0018】
なお、本発明に於て、「前」とは、作業者がハンドル部6aを握って前進する進行方向Y側を言う。また、作業者が進行方向Yに向いて前進する際に右手のある側を「右手側」と呼ぶ。また、「被切断部材K」とは、トウモロコシやサトウキビ又はケナフ等の背が高い植物を言う。「背が高い植物」とは、車輪接地面G(地面)からの500mm以上の高さに成長した植物のことを言う。また、刈払刃2は、説明を容易するために簡略化して図示したが、実際は外周縁部を鋸刃状に形成したものであり、例えばチップソーである。
【0019】
また、保持杆7の先端側かつ刈払刃2の後方位置に、小さな切断片が後方(作業者側)に飛び散らないようにする飛散防止部材71を付設している。また、走行車輪5は、1つの略樽型の主車輪5aと、主車輪5aの両側に配設される左右一対の補助車輪5b,5bと、を有している。補助車輪5b,5bは基台部材4の下端に着脱自在に設けられている。
【0020】
また、刈払刃2の下端には、刈払刃2を接地面Gから所定切断高さ位置で水平状に保持するための略椀型の接地部材21を設けている。接地部材21は刈払刃2に対して空転自在である。
【0021】
また、原動機1のクラッチケース10の近傍に、保持杆7をクラッチケース10により強く固着するための、上下一対の補強かつ防振用の板状の挟持部材41,41を設けている。一対の挟持部材41,41は、一方端が帯板部材42を介して基台部材4に取着され、他方端がゴム又は樹脂製の防振部材47を介して保持杆7を挟持している。
【0022】
本発明は設計変更可能であって、接続部材8,8の一方端は、保持杆7に連結補助部材を介して取着しても良い。接続部材8,8及び支持部材9を、基台部材4や保持杆7から着脱自在とし、当接部30を着脱自在に設けても良い。
【0023】
また、図示省略するが、接続部材8,8及び支持部材9の両方或いは一方を二重筒構造等で伸縮自在に設け、接続部材8,8及び支持部材9の一方端側を水平軸心廻りに揺動自在に基台部材4や保持杆7に取着し、接続部材8,8及び支持部材9の他方端側を水平軸心廻りに揺動自在に補強連結部材31に取着して、当接部30の高さ寸法Hを調節自在に構成するも好ましい。高さ寸法Hを調節自在に構成した際は、当接部30を水平状(刈払刃2と平行状)とした位置で固定可能なロックボルト等の位置決め固定手段を設けるのが好ましい。
【0024】
上述した本発明の刈払機の使用方法(作用)について説明する。
作業者が原動機1を始動させると、刈払刃2が回転する。作業者は操作ハンドル部6aを持って前進する。
図3に示すように、平面視で、一直線Laを被切断部材Kの部材列Sの左右のどちらかに配置して前進させる。なお、図2及び図3は、切断すべき部材列Sが作業者の右手側となるようにして前進した場合を図示している。
【0025】
前進を開始すると、左右一対の当接部30,30の内の一方側(作業者の右手側)の当接部30に、刈払刃2よりも先に被切断部材Kの中間部乃至上部が接触する。
図2及び図3に示すように、前進に伴って、被切断部材Kは一側方(矢印X方向)に傾く。被切断部材Kによる進行方向Yを遮断するような傾きや使用者側への傾きが発生せず、視界を良好にすると共に刈払作業中の前進を容易にする。
【0026】
さらに前進することで、当接部30によって、被切断部材Kは矢印Xに示す一側方に、押され、曲げ力Mが付与され、確実に矢印Xに示した右側方へ切断にて倒れてゆく。被切断部材Kに、一側方へ倒す力(曲げ力M)を付与しつつ切断するので、切断時に切断口を開口させ、切断摩擦抵抗を軽減すると共に被切断部材Kが刈払刃2側に引込まれたり巻付くのを防止して、切断を容易にする。
【0027】
被切断部材Kは所定の切断高さで切断され、接地面Gに所定切断高さの残部kが残る。切断された被切断部材Kは、一方の当接部30によって、矢印Xにて示す右側方のみ倒れて整然と並んでゆく。
【0028】
図4に於て、被切断部材Kが複数の部材列S1,S2,S3として植えられた農地等で刈払作業を行なう場合を具体的に説明する。
先ず、第1部材列S1が、作業者の右手側となるように刈払機を直線状に前進させる。右手側の当接部30が、切断後の被切断部材Kを右手側に傾倒させる。
次に、隣りの第2部材列S2を切断するためにUターンし、第2部材列S2が、作業者の左手側となるようにして刈払機を直線状に前進させる。左手側の当接部30が、切断後の被切断部材Kを左手側に傾倒させる。
そして、第2部材列S2を終えるとUターンし、第3部材列S3が、作業者の右手側となるようにして刈払機を前進させる。右手側の当接部30が、切断後の被切断部材Kを右手側に傾倒させる。なお、図4は、刈払作業が終了した状態を図示している。
【0029】
つまり、左右一対の当接部30,30の内の一方を、被切断部材Kに当接させることで、作業者の右手側又は左手側といった所望の一側方に切断後の被切断部材Kの傾倒を可能としている。また、刈払刃2を左右方向に振るようなスイング操作を行わずとも(刈払機を直進させるだけで)、所望の一側方に切断後の被切断部材Kが傾倒する。
【0030】
そして、上述のように往路と復路で刈払作業を行なうと、複数の部材列S1,S2,S3を基準として見たときに、一定方向(矢印E方向)に、切断後の被切断部材Kが傾倒される。部材列Sの一定方向側に、切断後の被切断部材Kが傾倒した切断片列を形成する。刈払作業に伴って、切断後の被切断部材Kは同一方向(矢印E方向)へ整然と並ぶ。刈払作業後の回収作業、或いは、より大きな塊への集積作業を容易にする。刈払、集積、回収といった作業全体の効率を向上させる。
【0031】
ここで、当接部30の高さ寸法Hが500mm未満であったとすると、被切断部材Kがトウモロコシ等の根元近傍がしなりにくい植物の場合に、当接部30にそって一側方に倒れず接触抵抗が増加して、作業者が強い力で操作杆6を押さなければ前進が困難となってしまう。また、1200mmを越えると、刈払機全体の重心位置が高くなって不安定となってしまう。特に、高さ寸法Hを800mm以上1100mm以下とすると、安定姿勢で最も効率的に刈払作業が可能となる。
【0032】
また、開き角度θが上述した上限値を越えると、被切断部材Kを当接部30に滑らせるように摺接させることができず、接触抵抗が増加して前進することが困難となってしまう。また、下限値未満であると、被切断部材Kが十分に一側方へ傾かず、切断後の被切断部材Kを一側方に傾倒させることが困難となる。
【0033】
また、屈曲角度αが上述した上限値を越えると、被切断部材Kが当接部30に沿うように傾倒せず接触抵抗が増加して、使用者が強い力で操作杆6を押さなければ前進が困難となってしまう。また、下限値未満であると、十分に被切断部材Kを傾倒させることや、切断が容易となる張りを付与させることが困難となる。
【0034】
以上のように、本発明の刈払機は、走行車輪5と、原動機1と、原動機1によって回転する刈払刃2と、を備えた刈払機に於て、刈払刃2の上方位置に、刈払刃2よりも先に被切断部材Kに当接すると共に平面視V字状に配設される一対の当接部30,30を設けたので、刈払機をスイング操作することなく直進させるだけで、被切断部材Kを切断して所望の一側方に傾倒させることができる。また、被切断部材Kを複数の部材列S1,S2,S3に対して一定方向に整然と刈り倒すことができる。これによって、切断後の被切断部材Kを迅速かつ容易に回収でき、又は、より大きな塊に集積させることができる。また、作業者(操作者)側に傾倒してくるのを防止でき安全に刈払作業できる。被切断部材Kを右手側又は左手側といった作業者の所望の一側方向に傾倒させつつ部材列Sに沿って往復しながら刈払作業を円滑に行うことができる。さらに、切断の瞬間に(図2の矢印のように)曲げ力Mを与えつつ行うので、切断が軽く容易となる利点もある。
【0035】
また、一対の当接部30,30を車輪接地面Gから500mm以上1200mm以下の高さ寸法Hに設けたので、確実に被切断部材Kを一側方へ倒してゆくことができる。被切断部材Kがトウモロコシ等のしなりにくい植物の場合であっても、当接部30に沿うように倒せ、使用者が強い力で操作杆6を押さなくとも容易に前進できる。また、刈払機全体の重心位置が適切な位置となって安定して走行させることができる。使用者の視界の妨げとなる被切断部材Kを確実に所望の一側方に傾倒させ、前方の視界を良好できる。
【0036】
また、一本の円管部材を平面視V字状に折曲形成したガイド部材3の両側縁部をもって、一対の当接部30,30としたので、当接部30,30を容易にV字状に配設できると共に軽量で剛性も十分となる。当接部30を横断面円弧状とし、被切断部材Kとの接触面積を少なくして摩擦抵抗を軽減し、前進に伴ってスムーズに摺接させることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 原動機
2 刈払刃
3 ガイド部材
5 走行車輪
30 当接部
G 車輪接地面
H 高さ寸法
K 被切断部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車輪(5)と、原動機(1)と、該原動機(1)によって回転する刈払刃(2)と、を備えた刈払機に於て、
上記刈払刃(2)の上方位置に、該刈払刃(2)よりも先に被切断部材(K)に当接すると共に平面視V字状に配設される一対の当接部(30)(30)を設けたことを特徴とする刈払機。
【請求項2】
上記一対の当接部(30)(30)を、車輪接地面(G)から500mm以上1200mm以下の高さ寸法(H)に設けた請求項1記載の刈払機。
【請求項3】
一本の円管部材を平面視V字状に折曲形成したガイド部材(3)の両側縁部をもって、上記一対の当接部(30)(30)とした請求項1又は2記載の刈払機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−50360(P2011−50360A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204954(P2009−204954)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000112934)ブイアイブイエンジニアリング株式会社 (12)
【Fターム(参考)】