説明

刈込機

【課題】 モータの高速回転の無駄を省き、1回の充電で刈込機を使用できる時間を長くする。
【解決手段】 ハウジング2と、ハウジング2に内蔵されたモータ5と、ハウジング2に装着されモータ5の電源となる電池パック4と、モータ5に駆動され、上刃と下刃からなる一対の刈刃3,3と、モータ5の駆動を制御する制御回路20と、制御回路20に内臓される制御IC21の信号によりモータ5への駆動電流をオンオフする半導体スイッチング素子と、を有するヘッジトリマ1において、制御IC21の信号は電池パック4に内蔵された電池10の電池電圧に対応するデューティー比で制御される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池で駆動されるモータを動力源とするヘッジトリマやバリカン等の刈込機のモータ制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹木の剪定や生垣の整形に使用される電動工具として、長手方向に沿って櫛歯状に刃が形成された上下一対の刈刃をそれらの長手方向に往復運動させるヘッジトリマが知られている。特許文献1、および、特許文献2は、電池で駆動されるモータを動力源とするヘッジトリマを開示しているが、モータ制御に関する考察はなされていない。
【0003】
また、芝刈り作業において、通常の芝刈り機では刈れない隅や飛び石まわりの芝生の仕上げ用に使用される電動工具として、固定刃と可動刃からなる上下一対の刈刃を揺動運動させるバリカンが知られている。特許文献3は、電池で駆動されるモータを動力源とするバリカンを開示しているが、モータ制御に関する考察はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−058341号公報
【特許文献2】特開2008−023648号公報
【特許文献3】特開平5−227842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ヘッジトリマやバリカン等の刈込機に関するものであるが、以降の明細書ではヘッジトリマにて説明する。電源コードを用いる従来のAC電源駆動式のヘッジトリマでは、1,400〜1,600rpmのモータ回転数でモータを回転させて動力源としていた。しかし、電池駆動式のヘッジトリマでは図4にDUTY100%の略直線として示すように、電池が充電直後の満充電状態では電池電圧Vは12vとなり、1,800rpm弱の回転数でモータは回転し、ヘッジトリマで枝刈り作業を続行すると、電池容量が減少し、それに連れて電池電圧Vも低下し、例えば、電池電圧Vが9vではモータの回転数は約1,300rpmまで低下し、枝刈り等の作業効率が低下した。モータ回転数が1,600rpm以上では必要以上の高速回転となり電池エネルギーが無駄になり、騒音の発生も問題であった。また、モータ回転数が1,400rpm以下では枝刈り等の作業効率は悪く実質的に使用不可であり、電池の充電が必要になった。本発明の課題は、モータの回転数が1,600rpm以上になる無駄を省き、1回の充電でヘッジトリマを使用できる時間を長くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、ハウジングと、該ハウジングに内蔵されたモータと、該ハウジングに装着され該モータの電源となる電池パックと、該モータに駆動され、上刃と下刃からなる一対の刈刃と、該モータの駆動を制御する制御回路と、該制御回路に内臓される制御ICの信号により該モータへの駆動電流をオンオフする半導体スイッチング素子と、を有する刈込機において、該制御ICの信号は該電池パックに内蔵された電池の電池電圧に対応するデューティー比で制御されることを特徴とする。
【0007】
ここで、該制御ICにはターボスイッチが設けられ、該ターボスイッチによって該モータの回転数がより高速に制御されることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1回の充電で刈込機を使用できる時間を長くすることができるので、度々電池パックの充電を行う必要がなく、効率的に枝刈り等の作業ができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】本発明に係るヘッジトリマの平面図である。
【図1B】本発明に係るヘッジトリマの要部縦断側面図である。
【図2】本発明に係るモータ制御回路図である。
【図3】デューティー比を説明する図である。
【図4】電池電圧とモータ回転数の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0011】
図1A、図1Bにおいて、1はヘッジトリマであり、2はヘッジトリマ1のハウジングであって、通常樹脂で成形された左右一対の半割りハウジング部材(2a,2b)を重ね合わせて組み立てたハウジング2の中に駆動源であるモータ5を内蔵している。ハウジング2の前方(図1Aの右側)には、長手方向に沿って櫛歯状に刃が形成された上下一対の刈刃3,3が設けられ、後方には、ハウジング2の一部であるハンドル2dに後方から電池パック4が挿入されて装着されている。2cはガードであって、刈り取られた枝葉から作業者を保護するものであり、6はトリガーレバーであって、これを指で操作することによりマイクロスイッチSW1がオン、オフし、モータ5を回転、非回転とすることができる。
【0012】
図2はモータ5の制御回路20であり、ハウジング2内の適当な場所に設置されている。制御回路20の主回路は、電池パック4内の電池10、マイクロスイッチSW1、配線11、モータ5、半導体スイッチング素子(FET:電解効果型トランジスタ)30、配線12で構成され、半導体スイッチング素子30は制御回路20内の制御IC21の信号によりモータ5への駆動電流をオンオフする。制御IC21はマイクロコンピュータ(CPU)を内蔵し、電池10によって起動される不図示の定電圧電源によって動作する。CPUの周りにはプログラムが内蔵されたROMの他に、RAM、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ、入力回路(INPUT)、出力回路(OUTPUT)が設けられている。A/Dコンバータは配線11に接続されており、電池電圧Vを読み取ってCPUへデジタル信号に変換して伝達する。ROMの中には後述するデューティー比を記憶するデータテーブルD1,D2があり、CPUはプログラムに従って、A/Dコンバータから伝達された電池電圧Vに対応するデューティー比をデータテーブルD1またはD2から読み出し、出力回路に接続されている半導体スイッチング素子30のゲート30gに与えるゲート信号のデューティー比を制御する。SW2はハンドル2dの適当な場所に設けられているターボスイッチであり、このターボスイッチSW2がオフのときCPUはデータテーブルD1からデューティー比を読み出し、オンのときデータテーブルD2から読み出すようプログラムで制御される。データテーブルD1には細い枝や草を刈る場合に適したデューティー比が記憶され、データテーブルD2には太い枝や草を刈る場合に適したデューティー比が記憶されている。
【0013】
図3に示すように、デューティー比は1サイクルを表す時間Tに対する時間tの比であり、時間tがオンで時間T−tがオフとなる信号波形である。ヘッジトリマ1では、時間Tは約1msが適当である。
【0014】
図4はデューティー比を変えたときの電池電圧Vとモータ5の回転数の関係を表しており、DUTY100%とはデューティー比が100%の意であり、このときは信号はオン、オフせずに連続してオンの状態の信号となる。DUTY80%とはデューティー比が80%の意であり、時間Tの内80%がオンの信号で、DUTY60%とはデューティー比が60%の意であり、時間Tの内60%がオンの信号である。DUTY100%の信号でヘッジトリマを連続運転すると、現行の仕様では30分強でモータ5の回転数は1,400rpm以下となる。運転時間を延長するためにもっと大きな電池パックを装着すればよいが、そうすると重量が増し作業性が悪くなるということになり、その兼ね合いで電池パックの大きさが決まってくる。
【0015】
以上のように構成されたヘッジトリマ1において、満充電された電池パック4をヘッジトリマ1に装着し、ハンドル2dを手で握ってトリガーレバー6をオン操作すると、マイクロスイッチSW1がオンとなり、電池10からモータ5へ電流が流れモータ5が回転を開始する。一方、マイクロスイッチSW1のオンにより制御IC21が起動し、制御IC21のA/Dコンバータは電池10の電池電圧Vを配線11を介して読み込み、デジタル信号に変換してCPUへ伝達するので、CPUはROMに内蔵されたプログラムに従ってデータテーブルD1またはD2から電池電圧Vに対応するデューティー比を読み出す。図4から理解されるように、電池電圧Vが12vのときは、CPUがデータテーブルD1またはD2から読み出す値によって、ゲート30gに与えられるゲート信号はデューティー比が60%以下になるよう制御される。
【0016】
作業者が枝刈り等の作業を続行すると電池10の電気容量は減少していき、電池10の電池電圧Vは低下していく。電池電圧Vが例えば10.5vに低下すると、モータ5の回転数は1,400rpmを下回るようになり作業に支障が出ることになるが、CPUは電池電圧Vが10.5vに低下したことをA/Dコンバータを介して知ると、その電圧に対応したデューティー比をデータテーブルD1またはD2から読み出し、デューティー比を60%から80%に上げ、モータ5の回転数が1,500rpmを中心とする1,400〜1,600rpmの範囲内に入るよう制御する。(ここでは分かりやすい説明とするため、1,400rpmを下回るまでデューティー比を変更しないように説明したが、これに限らずもっときめ細かく電池電圧Vをチェックしデューティー比が1,500rpmで一定となるよう制御してもよい。また、デューティー比についても60%からいきなり80%に上げるのではなく、70%に上げるとしてもよい。)さらに電池電圧Vが低下して10vになるとCPUは上記と同様の制御を行ってデューティー比を80%から100%に上げ、モータ5の回転数が1,400〜1,600rpmの範囲内に入るよう制御する。このようにデューティー比を制御することにより、モータ5の回転数が1,600rpm以上になることを避け、1,400〜1,600rpmの範囲内に入るよう制御するので、電池エネルギーの無駄を省くことができ、その分ヘッジトリマ1を長く運転することが可能となる。実験では1.5倍以上長く運転できることを確認した。
【0017】
次にターボスイッチSW2の作用について説明する。今、電池電圧Vが11vであると仮定すると、図4に示すように、デューティー比は60%でも80%でもモータ5の回転数は1,400〜1,600rpmの範囲内に入るのであるが、ターボスイッチSW2がオフの場合はCPUはデータテーブルD1からデータを読み出し、デューティー比を60%に設定し、ターボスイッチSW2がオンの場合はCPUはデータテーブルD2からデータを読み出し、デューティー比を80%に設定する。このように制御するので、ターボスイッチSW2がオフの場合は細い枝や草を刈るのに適した回転数でモータ5は回転し、ターボスイッチSW2がオンの場合は太い枝や草を刈るのに適したより高速の回転数でモータ5を回転させることができ、枝や草の状況に適した作業ができる。
【0018】
本発明による刈込機は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【符号の説明】
【0019】
1 ヘッジトリマ、2 ハウジング、3 刈刃、4 電池パック、5 モータ、6 トリガーレバー、10 電池、20 制御回路、21 制御IC、30 半導体スイッチング素子、SW2 ターボスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、該ハウジングに内蔵されたモータと、該ハウジングに装着され該モータの電源となる電池パックと、該モータに駆動され、上刃と下刃からなる一対の刈刃と、該モータの駆動を制御する制御回路と、該制御回路に内臓される制御ICの信号により該モータへの駆動電流をオンオフする半導体スイッチング素子と、を有する刈込機において、該制御ICの信号は該電池パックに内蔵された電池の電池電圧に対応するデューティー比で制御されることを特徴とする刈込機。
【請求項2】
該制御ICにはターボスイッチが設けられ、該ターボスイッチによって該モータの回転数がより高速に制御されることを特徴とする請求項1に記載の刈込機。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−5353(P2012−5353A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141340(P2010−141340)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】