説明

列車検知装置及び移動体検知装置

【課題】構造が簡単で低コスト化を図ることができるとともに安全性を向上させることができる列車検知装置及び移動体検知装置を提供する。
【解決手段】列車3が区間ATから区間BTに進入すると、列車3の車輪4R,4Lがレール7R,7L上を転がりながら移動するため、区間BT内のレール7R,7Lが衝撃力を受けて振動する。レール7R,7Lが振動すると検出部12がこの振動を検出して、検出部12の圧電ゴム部が外力を受けて機械的に変位するため、この圧電ゴム部の両端の一対の電極部間に電位差が生じ、導電部12f,12gに電流が流れる。その結果、区間BTに列車3が進入したときに発生する振動を検出部12が電気信号に変換し、この電気信号が判定部13に入力する。このため、区間BTに列車3が存在すると判定部13が判定して、信号機2が停止信号(赤信号)を現示するように信号機2の軌道継電器2bを判定部13が切り替る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定区間内の列車の有無を検知する列車検知装置、及び所定区間内の移動体の有無を検知する移動体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図12は、従来の列車検知装置の原理を説明するための模式図であり、図12(A)は閉そく区間内に列車が存在しない状態を示す模式図であり、図12(B)は閉そく区間内に列車が存在する状態を示す模式図である。
現在、列車運転の安全を確保するための信号保安装置(信号システム)では、列車検知装置として軌道回路方式が多く採用されている。例えば、図12に示す従来の列車検知装置111は、軌道を構成する左右のレール107R,107Lを電気回路の一部として利用しており、閉そく区間Bに列車103が存在すると左右のレール107R,107Lを車輪104R,104Lと車軸104Aとが短絡することによって電流の流れが変化しこの閉そく区間B内の列車103を検知している。ここで、閉そく区間Bとは、列車の衝突を防ぐために、一定の区間に一列車のみを占有させ、他の列車がこの区間に進入するのを禁止するために区間である。絶縁継目101は、隣接する軌道回路との境界に設置してレール107R,107Lを電気的に絶縁する構造のレール継目である。この従来の列車検知装置111では、左右のレール107R,107Lに軌道回路用電源102cから軌道回路電流を流している。従来の列車検知装置111では、閉そく区間B内に列車103が存在しないときには、軌道継電器(軌道リレー)102bに軌道回路電流が流れて軌道リレーを扛上させ信号機102を進行信号(青)に現示する。一方、従来の列車検知装置111は、閉そく区間B内に列車103が進入してこの列車103の車軸104Aによって左右のレール107R,107Lが短絡すると軌道継電器(軌道リレー)102bに軌道回路電流が流れず軌道リレーを落下させ信号機102を停止信号(赤)に現示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の列車検知装置111では、軌道回路電流の短絡による焼損事故が発生したり、短絡不良によって検知不良などの障害が発生したりする問題点があった。また、近年、列車が走行する軌道と自動車が走行する道路の双方を走行可能な車両(デュアル・モード・ビークル(Dual Mode Vehicle(以下、DMVという)))や、コンクリート軌道上をゴムタイヤ車両が走行する新交通システムなどが開発されている。しかし、従来の列車検知装置111では、DMVや新交通システムがゴムタイヤによって軌道上を走行する車両であるため、ゴムタイヤが絶縁体となって左右のレール107R,107Lを短絡することができず、列車103の検知が不可能である。このため、従来の列車検知装置111では、DMVのような列車103を検知するためには高価な検知方式を導入する必要がありコストが高くなってしまう問題点がある。
【0004】
このような従来の列車検知装置の問題点を解決するために、軌道回路を使用せずに列車を検知する方式が提案されている。従来の列車検知装置は、上側外部層に取り付けられた上側磁石と、下側外部層に取り付けられて上側磁石との間に磁界を形成する下側磁石と、上側外部層と下側外部層との間に挟み込まれた中央層と、この中央層に取り付けられて上側磁石と下側磁石との間の磁界を横切る可動コイルとを備えている(例えば、特許文献1参照)。このような従来の列車検知装置は、線路に取り付けられており、列車が通過して電磁誘導作用によって可動コイルが磁界を横切るときに発生する誘導起電力によって列車を検知している。
【0005】
このような従来の列車検知装置では、上側外部層、下側外部層及び中央層の三層構造であり、中央層に可動コイルを駆動可能に配置する必要があるため、構造が複雑になり製造コストが高くなる問題点がある。また、従来の列車検知装置では、可動コイルが磁界を横切る構造であるため、列車の通過によって繰り返し駆動すると可動部分が破損するおそれがあり、耐久性に欠けメンテナンスに手間がかかる問題点がある。
【0006】
【特許文献1】特表2007-504789号公報
【0007】
この発明の課題は、構造が簡単で低コスト化を図ることができるとともに安全性を向上させることができる列車検知装置及び移動体検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図1〜図3及び図11に示すように、所定区間(BT;FT,GT)内の列車(3)の有無を検知する列車検知装置であって、前記所定区間内の前記列車の進入及び進出を検出する検出手段(12)と、前記検出手段の検出結果に基づいて前記所定区間内の前記列車の有無を判定する判定手段(13;18)とを備え、前記検出手段は、前記列車が軌道(6)上を走行するときに前記所定区間内に発生する振動を圧電効果によって電気信号に変換して出力し、前記判定手段は、前記検出手段が出力する電気信号に基づいて前記所定区間内の前記列車の有無を判定することを特徴とする列車検知装置(11;21)である。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の列車検知装置において、図1〜図3に示すように、前記検出手段は、前記所定区間が一列車の占有を許可し他の列車の進入を禁止する閉そく区間(BT)であるときに、この閉そく区間内に発生する振動を圧電効果によって電気信号に変換して出力し、前記判定手段は、前記閉そく区間内の前記列車の有無を判定することを特徴とする列車検知装置である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の列車検知装置において、図5に示すように、前記検出手段は、前記列車の車輪(4R,4L)が走行するレール(7R,7L)とこのレールを支持する支持体(8)との間に挿入されていることを特徴とする列車検知装置である。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載の列車検知装置において、前記検出手段は、前記振動を前記電気信号に変換する圧電軌道パッドであることを特徴としている列車検知装置である。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の列車検知装置において、図8に示すように、前記検出手段は、前記列車の車輪(4R,4L)が走行するレール(7R,7L)を支持する支持体(8)とこの支持体を支持する路盤(5)との間に挿入されていることを特徴とする列車検知装置である。
【0013】
請求項6の発明は、請求項5に記載の列車検知装置において、前記検出手段は、前記振動を前記電気信号に変換する圧電スラブマットであることを特徴とする列車検知装置である。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の列車検知装置において、図5に示すように、前記検出手段は、ゴム中に圧電材料を分散させた圧電ゴム部(12a)を備えることを特徴とする列車検知装置である。
【0015】
請求項8の発明は、図9及び図11に示すように、所定区間(DT;ET)内の移動体(14)の有無を検知する移動体検知装置であって、前記所定区間内の前記移動体の進入及び進出を検出する検出手段(17)と、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記所定区間内の前記移動体の有無を判定する判定手段(18)とを備え、前記検出手段は、前記移動体が通路(15)上を移動するときに前記所定区間内に発生する振動を圧電効果によって電気信号に変換して出力し、前記判定手段は、前記検出手段が出力する電気信号に基づいて前記所定区間内の前記移動体の有無を判定することを特徴とする移動体検知装置(16)である。
【0016】
請求項9の発明は、請求項8に記載の移動体検知装置において、図11に示すように、前記検出手段は、前記移動体が踏切道上を移動するときに、この踏切道の所定区間(ET)内に発生する振動を圧電効果によって電気信号に変換して出力し、前記判定手段は、前記検出手段が出力する電気信号に基づいて前記所定区間内の前記移動体の有無を判定することを特徴とする移動体検知装置である。
【0017】
請求項10の発明は、請求項8又は請求項9に記載の移動体検知装置において、前記検出手段は、ゴム中に圧電材料を分散させた圧電ゴム部を備えることを特徴とする移動体検知装置である。
【発明の効果】
【0018】
この発明によると、構造が簡単で低コスト化を図ることができるとともに安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る列車検知装置の列車進入前の状態を模式的に示す平面図である。図2は、この発明の第1実施形態に係る列車検知装置の列車進入中の状態を模式的に示す平面図である。図3は、この発明の第1実施形態に係る列車検知装置の列車進出後の状態を模式的に示す平面図である。図4は、図1のIV-IV線で切断した状態を示す断面図である。図5は、図1のV-V線で切断した状態を示す断面図である。
【0020】
図1〜図3に示す区間AT,BT,CTは、列車検知装置11によって列車3の有無を検出する検出区間である。区間AT,BT,CTは、例えば、列車3の衝突を防止するために、一列車の占有を許可し他の列車の進入を禁止する閉そく区間である。区間ATは、信号機2が防護する区間の外方(列車3から見て信号機2が見える方向)の軌道回路であり、区間BTは信号機2が防護する区間の内方の軌道回路である。
【0021】
絶縁継目1は、レール7R,7Lを電気的に絶縁する構造のレール継目であり、隣接する区間AT,BT,CTの境界に設置されている。絶縁継目1は、レール7R,7Lと左右一対の継目板との間、レール7Rの端部とレール7Lの端部との間、及び左右一対の継目板を連結する継目板ボルトとレール7R,7Lとの間に絶縁材を挟み込み継目部分を電気的に絶縁する継目構造である。
【0022】
信号機2は、信号を現示する装置である。信号機2は、例えば、区間BTに進入する列車3に対して信号現示する閉そく信号機であり、区間BTの入口に設置され、列車3の先頭が区間BTに進入したときに自動的に停止を指示し、列車3の後尾が区間BTから進出すると進行を指示する。ここで、信号現示とは、信号が示す符号の意味であり、図1〜図3に示すような2現示の場合には停止信号(赤)及び進行信号(青)の2種類である。信号機2は、列車検知装置11と連動して信号現示し、電源部2aと軌道継電器(軌道リレー)2bなどを備えている。電源部2aは、信号機2に電力を供給する信号機用電源であり軌道継電器2bに電流を流す。軌道継電器2bは、信号機2の信号現示を変化させるための継電器(リレー)であり、電源部2aと直列に接続されている。軌道継電器2bは、図2に示すように、区間BTに列車3が存在するときには、信号機2の信号現示を停止信号(赤信号)に現示しており、図1及び図3に示すように区間BTに列車3が存在しないときには、接点が切り替わり信号機2の進行現示を進行信号(青信号)に現示する。
【0023】
図1〜図3に示す列車3は、軌道6上を運転する目的で組成された車両であり、電車又は気動車などの鉄道車両である。列車3は、1両又は複数両の車両によって編成されている。車輪4R,4Lは、車両を支持する部材であり、左右一対のレール7R,7Lとそれぞれ回転接触する。車輪4R,4Lは、図4及び図5に示すように、レール頭部7aの頭頂面7dと接触して摩擦抵抗を受ける踏面4aと、脱輪を防止するために車輪4R,4Lの外周部に連続して形成されたフランジ面4bとを備えている。
【0024】
路盤5は、軌道6を支持する基盤であり、図1〜図3に示す列車3が通過するときに発生する荷重を支持する構造物である。路盤5は、例えば、良質な自然土などを用いて締め固められた土路盤などである。
【0025】
図1〜図5に示す軌道6は、列車3が走行する通路(線路)であり、図1〜図3に示すレール7R,7Lと、支持体8と、図4及び図5に示す道床9と、レール締結装置10などを備えている。図1〜図5に示す軌道6は、砂利又は砕石などの粒状体によって構成された道床9上にレール7R,7Lと支持体8とによって構成された軌きょうを敷設した有道床軌道である。
【0026】
図1〜図3に示すレール7R,7Lは、列車3の車輪4R,4Lを支持し案内して列車3を走行させる部材であり、図4及び図5に示すようにレール頭部7aと、レール底部(フランジ部)7bと、レール腹部(ウェブ部)7cなどを備えている。レール頭部7aは、鉄道車両の車輪4R,4Lと接触する部分であり、車輪4R,4Lを直接支持する頭頂面(頭部上面)7dなどを備えている。レール底部7bは、支持体8上に設置されて取り付けられる部分であり、レール締結装置10の締結ばね10bによって押さえ付けられる底部上面7eと、支持体8上に設置される底部下面7fと、レール底部7bの左右の側面部分を構成する底部側面7gなどを備えている。レール腹部7cは、レール頭部7aとレール底部7bとを繋ぐ部分であり、レール頭部7aに作用する輪重及び押圧をレール底部7bに伝達する。
【0027】
図1〜図5に示す支持体(支承体)8は、レール7R,7Lを支持する部材である。支持体8は、左右のレール7R,7Lを固定して軌間を正確に保持し、レール7R,7Lから伝達される列車荷重を道床9に分散させるために、図4及び図5に示すようにレール7R,7Lと道床9との間に設置されるまくらぎである。図1〜図5に示す支持体8は、レール7R,7Lに対して直角に並べて敷設される横まくらぎ(一般区間で使用される並まくらぎ)であり、例えば緊張材として使用される鋼材(Prestressing Steel(PC))によってプレストレスが与えられたプレストレスコンクリート製まくらぎ(PCまくらぎ)である。支持体8は、図1〜図3に示すように、レール7R,7Lの長さ方向に所定の間隔をあけて配置されており、レール7R,7Lを離散的に支持している。
【0028】
図4及び図5に示す道床9は、支持体8を支持し路盤5に荷重を分散し伝達する構造体である。道床9は、支持体8と路盤5との間に敷き詰められる砂利又は砕石などの粒状体からなるバラスト9aを備えており、このバラスト9aによって構成されたバラスト道床である。
【0029】
図1〜図5に示すレール締結装置10は、レール7R,7Lを支持体8に締結する装置であり、図1〜図3に示す列車3が通過する際に発生する振動を吸収する緩衝機能を有する。レール締結装置10は、図4及び図5に示すように、軌道パッド10aと、締結ばね10bと、ばね受台10cと、埋込栓10dと、締結ボルト10eと、座金10fなどを備えている。レール締結装置10は、レール底部7bと支持体8との間に軌道パッド10aを挟み込み、締結ばね10bによってレール7R,7Lを支持体8に締結する。軌道パッド10aは、レール7R,7Lと支持体8との間に挿入する弾性体である。軌道パッド10aは、列車3が通過する際に発生する衝撃荷重を緩和する機能と、レール7R,7Lが長手方向に移動するふく進に対する抵抗力を確保する機能と、レール7R,7Lと支持体8とを電気的に絶縁する機能とを有する加硫ゴム製やウレタン製の板状部材である。締結ばね10bは、レール7R,7Lを押さえ付けて締結するばねであり、底部上面7e及び底部側面7gを押さえ付ける押さえ金(ばねクリップ)として機能する。ばね受台10cは、締結ばね10bを支持する部材であり、レール7R,7Lと支持体8とを電気的に絶縁するくさび状の部材である。ばね受台10cは、支持体8と締結ばね10bとの間に挿入する挿入量を調節することによってレール7R,7Lの左右方向の位置を調節する。埋込栓10dは、締結ボルト10eを締結するために支持体8に埋め込まれる部材であり、レール7R,7Lと支持体8とを電気的に絶縁する。締結ボルト10eは、締結ばね10bを締め付ける部材であり、締結ばね10bの貫通孔を貫通して埋込栓10dの雌ねじ部にねじ込まれて固定される。座金10fは、締結ボルト10eと締結ばね10bとの間に挟み込まれる部材である。
【0030】
図1〜図3に示す列車検知装置11は、区間BT内の列車3の有無を検出する装置であり、軌道6上を通過する列車3を検知する。列車検知装置11は、図1及び図3に示すように、区間BT内に列車3が存在しないときには、信号機2が進行信号(青信号)を現示するように軌道継電器2bの接点を切り替える。一方、列車検知装置11は、図2に示すように、区間BT内に列車3が存在するときには、信号機2が停止信号(赤信号)を現示するように軌道継電器2bの接点を切り替える。列車検知装置11は、図1〜図3に示すように、検出部12と判定部13などを備えている。
【0031】
図6は、この発明の第1実施形態に係る列車検知装置の検出部の縦断面図である。
図1〜図3に示す検出部12は、区間BT内の列車3の進入及び進出を検出する手段である。検出部12は、列車3が軌道6上を走行するときに区間BT内に発生する振動を圧電効果によって電気信号(列車検知信号)に変換して出力する圧電材である。検出部12は、列車3が通過するときに発生する衝撃を緩和し、振動の大きさに応じた電力を発生する弾性を有する圧電素子などである。検出部12は、列車3が通過したときに発生する機械的な振動を電気信号に変換する機械電気変換部として機能するとともに、列車3の通過によって荷重が作用したときに電力を発生して列車3を検出するセンサとしても機能する。検出部12は、図5に示すように、レール7R,7Lと支持体8との間に挿入されており、振動を電気信号に変換する圧電軌道パッドである。検出部12は、図4に示すレール締結装置10の軌道パッド10aと同様にレール締結装置10の一部を構成しており、軌道パット10aと同様の機能を有するとともに圧電材としての機能も有する。検出部12は、例えば、図1〜図3に示す区間BTの入口側(列車3が進入する側の絶縁継目1寄り)と区間BTの出口側(列車3が進出する側の絶縁継目1寄り)との間に所定の間隔をあけて複数配置されている。検出部12は、列車3が軌道6を走行するときに左右の車輪4R,4Lが同時にこれらの検出部12上を通過して同時に電気信号を発生するように、左右のレール7R,7Lの下方にそれぞれ配置されている。検出部12は、図6に示すように、圧電ゴム部12aと、電極部12b,12cと、絶縁部12d,12eと、導電部12f,12gなどを備えている。
【0032】
図5に示す圧電ゴム部12aは、ゴム中に圧電材料を分散させた部材である。圧電ゴム部12aは、例えば、ニトリルゴムなどのゴム材とチタン酸ジルコン酸鉛(商品名PZT)などの圧電セラミック粉末とを混合する混合工程と、この混合工程後の混合物を加硫する加硫工程と、この加硫工程後の混合物の両端部に電圧を印加してこの混合物を分極させる分極工程とによって製造される。
【0033】
電極部12b,12cは、圧電ゴム部12aに電気的に接続された接点部分である。電極部12b,12cは、圧電ゴム部12aの両面にそれぞれ積層されており、圧電ゴム部12aの両面全域を被覆するように形成されている。電極部12b,12cは、例えば、金属、金属酸化物又はカーボンなどの導電性材料を蒸着、シルクスクリーン印刷又はイオンスパッタリングなどの方法によって圧電ゴム部12aの両面に形成されたり、導電性材料を含有する樹脂又は導電性高分子などの導電性樹脂を圧電ゴム部12aの両面に多層化して形成されたりする。
【0034】
絶縁部12dは、レール底部7bと電極部12bとの間を電気的に絶縁する部分であり、絶縁部12eは支持体8と電極部12cとの間を電気的に絶縁する部分である。絶縁部12d,12eは、電極部12b,12cの表面に積層されており、電極部12b,12cの表面全域を被覆するように形成されている。絶縁部12d,12eは、例えば、電極部12b,12cの表面に接着剤などによって接合された絶縁性のゴム又は合成樹脂である。
【0035】
導電部12f,12gは、圧電ゴム部12aが発生する電流が流れる部分であり、導電材の表面を絶縁材によって被覆された電線などである。導電部12f,12gは、一方の端部が電極部12b,12cにそれぞれ接続されており、他方の端部が判定部13に接続されている。
【0036】
図1〜図3に示す判定部13は、検出部12の検出結果に基づいて、区間BT内の列車3の有無を判定する手段であり、検出部12が出力する電気信号に基づいて区間BT内の列車3の有無を判定するとともに、検出部12が出力する電気信号に基づいて列車3の通過を判定する。判定部13は、図1に示すように、列車3が区間BT内に進入する前には検出部12がOFF状態であるため、区間BT内に列車3が存在しないと判定する。判定部13は、図2に示すように、列車3が区間BT内に進入すると検出部12がON状態になるため、区間BT内に列車3が存在すると判定する。判定部13は、図3に示すように、列車3が区間BT内から進出すると検出部12がOFF状態になるため、区間BT内に列車3が存在しないと判定する。判定部13は、区間AT,CT内を列車3が走行しているときに発生する振動が区間BT内に伝播し、検出部12から出力される電気信号に基づいて列車3が区間BT内に存在すると誤判定するのを防ぐために、検出部12が出力する電気信号が所定の判定基準レベル(しきい値)を超えているか否かを判定する。判定部13は、検出部12が出力する電気信号が判定基準レベルを超えているときには、列車3が区間BT内に存在すると判定し、検出部12が出力する電気信号が判定基準レベル以下であるときには、列車3が区間BT内に存在しないと判定する。判定部13は、検出部12が出力する電気信号が判定基準レベルを超えたと判定したときには、図2に示すように信号機2が停止信号(赤信号)を現示するように信号機2の軌道継電器2bを切り替える。一方、判定部13は、検出部12が出力する電気信号が判定基準レベル以下であると判定したときには、図1及び図3に示すように、信号機2が進行信号(青信号)を現示するように信号機2の軌道継電器2bを切り替る。
【0037】
次に、この発明の第1実施形態に係る列車検知装置の動作を説明する。
図1に示すように、区間AT内をD方向に列車3が走行すると、列車3の車輪4R,4Lがレール7R,7L上を転がりながら移動するため、区間AT内のレール7R,7Lが衝撃力を受けて振動し、この振動が絶縁継目1を通じて区間BT内のレール7R,7Lに伝播する。区間BT内のレール7R,7Lが振動すると検出部12がこの振動を検出して電気信号を判定部13に出力するが、区間ATから区間BTに振動が伝播するときにこの振動が減衰しているため、検出部12が出力する電気信号のレベルが判定基準レベル以下となる。このため、区間BTに列車3が存在しないと判定部13が判定して、信号機2が進行信号(青信号)を現示するように、信号機2の軌道継電器2bを判定部13が切り替る。
【0038】
図2に示すように、列車3が絶縁継目1を通過して区間AT内から区間BT内に進入すると、列車3の車輪4R,4Lがレール7R,7L上を転がりながら移動するため、区間BT内のレール7R,7Lが衝撃力を受けて振動する。レール7R,7Lが振動すると検出部12の圧電ゴム部12aが外力を受けて機械的に変位するため、電極部12bと電極部12cとの間に電位差が生じ、導電部12f,12gに電流が流れる。その結果、区間BT内に列車3が進入したときに発生する振動を検出部12が電気信号に変換し、この電気信号が判定部13に入力する。区間BT内を列車3が走行するときには区間AT内を列車3が走行するときに比べて振動が大きくなるため、検出部12が出力する電気信号のレベルが判定基準レベルを超える。このため、区間BT内に列車3が存在すると判定部13が判定して、信号機2が停止信号(赤信号)を現示するように信号機2の軌道継電器2bを判定部13が切り替る。
【0039】
図3に示すように、列車3が絶縁継目1を通過して区間BT内から区間CT内に進入すると、区間CT内のレール7R,7Lが衝撃力を受けて振動し、この振動が絶縁継目1を通じて区間BT内のレール7R,7Lに伝播する。区間BT内のレール7R,7Lが振動すると検出部12がこの振動を検出して電気信号を判定部13に出力するが、区間CT内から区間BT内に振動が伝播するときにこの振動が減衰しているため、検出部12が出力する電気信号のレベルが判定基準レベル以下となる。このため、区間BT内に列車3が存在しないと判定部13が判定して、信号機2が進行信号(青信号)を現示するように信号機2の軌道継電器2bを判定部13が切り替る。
【0040】
この発明の第1実施形態に係る列車検知装置には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、列車3が軌道6上を走行するときに区間BT内に発生する振動を圧電効果によって検出部12が電気信号に変換して出力し、検出部12が出力する電気信号に基づいて区間BT内の列車3の有無を判定部13が判定する。その結果、図12に示す従来の列車検知装置111のような軌道回路電流を使用せずに区間BT内の列車3を検知することができるため、安全性を向上させることができる。また、DMVや新交通システムのようなゴムタイヤによって走行する車両であっても、列車3が走行するときに発生する振動を利用して列車3を検知することができるため、高価な検知システムを使用せずに安価に列車3を検知することができる。
【0041】
(2) この第1実施形態では、閉そく区間内に発生する振動を圧電効果によって検出部12が電気信号に変換して出力し、この閉そく区間内の列車3の有無を判定部13が判定する。このため、軌道回路電流の短絡による焼損事故が発生したり、短絡不良によって検知不良などの障害が発生したりするのを防ぐことができる。また、DMVや新交通システムのようなゴムタイヤを使用する車両であっても、軌道回路電流によって左右のレール7R,7Lを短絡させずに列車3を簡単に検知することができる。さらに、図12に示すような絶縁継目101によってレール107R,107Lを電気的に絶縁して軌道回路電流を流し列車103を検知する必要がなくなるため、図1〜図3に示す絶縁継目1を構造が簡単で取付作業が容易な普通継目に置き換えて列車3を簡単に検知することができる。
【0042】
(3) この第1実施形態では、列車3の車輪4R,4Lが走行するレール7R,7Lと支持体8との間に検出部12が挿入されている。このため、従来の移動体検知装置のような取り付けが困難な可動コイルとは異なり、レール7R,7Lと支持体8との間に圧電材12を挟み込むだけで簡単に取り付けることができる。
【0043】
(4) この第1実施形態では、検出部12が振動を電気信号に変換する圧電軌道パッドである。このため、列車3が走行するときに発生するレール7R,7Lの機械的な振動を電気信号に圧電軌道パッドによって変換して、区間BT内に列車3が存在するか否かを簡単に検知することができる。また、軌道回路電流を常時流す必要がなくなり、圧電軌道パッド自体が圧電性を有し電圧を発生するため、図12に示すような軌道回路用電源102cを省略することができる。さらに、レール7R,7Lと車輪4R,4Lとの接触点に作用する垂直方向の荷重(輪重)から、列車3が通過するときに発生する衝撃力を考慮すると、圧電軌道パッドが数kV程度の電圧を発生する可能性がある。このため、検出部12からの出力信号を増幅するためのアンプなどの増幅器を省略することができ、装置全体を安価に製造することができる。
【0044】
(5) この第1実施形態では、ゴム中に圧電材料を分散させた圧電ゴム部12aを検出部12が備えている。このため、従来の列車検知装置のような可動コイルを利用した複雑で取り付けが困難な電磁誘導方式の構造ではなく、構造が簡単で製造が容易な圧電方式の圧電ゴム部12aを利用して検出部12を簡単に取り付けることができる。また、圧電ゴム部12aにレール7R,7Lから衝撃力が作用しても、圧電ゴム部12aが弾力性と可撓性を有するため検出部12が破損することがなく、検出部12の耐久性を向上させることができる。
【0045】
(第2実施形態)
図7は、この発明の第2実施形態に係る列車検知装置を模式的に示す平面図である。図8は、図7のVIII-VIII線で切断した状態を示す断面図である。以下では、図1〜図6に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図7及び図8に示す路盤5は、スラブ軌道区間に設置される路盤コンクリートであり、図7に示すように支持体8の水平力を支えるために所定の間隔をあけて突起(突起コンクリート)5aが形成されている。軌道6は、路盤コンクリート上に軌道スラブを敷設したスラブ軌道であり、有道床軌道の保守作業を軽減するために開発された省力化軌道の一種である。支持体8は、矩形平板状のプレキャストのコンクリート版からなるスラブ版(軌道スラブ)であり、レール7R,7Lと道床9との間に設置されている。検出部12は、列車3が走行するレール7R,7Lを支持する支持体8とこの支持体8を支持する路盤5との間に挿入されており、振動を電気信号に変換する圧電スラブマットである。検出部12は、スラブ軌道において列車3が走行したときに発生する振動及び騒音の拡散を低減するために支持体8と路盤5との間に挿入されるゴム製のスラブマットとしての機能を有するするとともに、圧電材としての機能も有する。検出部12は、図7に示す区間BTの入口側(列車3が進入する側の絶縁継目1寄り)から区間BTの出口側(列車3が進出する側の絶縁継目1寄り)に向かって連続して配置されている。
【0046】
この発明の第2実施形態に係る列車検知装置には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第2実施形態では、レール7R,7Lを支持する支持体8とこの支持体8を支持する路盤5との間に検出部12が挿入されている。その結果、支持体8と路盤5との間の広範囲にわたって検出部12が挟み込まれるため、列車3が走行するときに発生するレール7R,7Lの振動を平均化して、区間BT内の列車3の有無を正確に検出することができる。
【0047】
(2) この第2実施形態では、検出部12が振動を電気信号に変換する圧電スラブマットである。その結果、路盤5上に支持体8を設置するときに、この路盤5上に圧電スラブマットを敷設して支持体8を設置することができるため、圧電スラブマットの敷設作業が容易になって作業時間を短縮化することができる。また、圧電スラブマットが支持体8と路盤5とに広範囲で接触するため、圧電スラブマットからの出力電圧が大きくなり検出精度を向上させることができる。
【0048】
(第3実施形態)
図9は、この発明の第3実施形態に係る移動体検知装置の移動体進入中の状態を模式的に示す平面図である。図10は、図9のIX-IX線で切断した状態を示す断面図である。
図9に示す区間DTは、移動体検知装置16によって移動体14の有無を検出する検出区間であり、例えば移動体14の通行が禁止されている通行禁止区間、又は移動体14の通行を監視する通行監視区間などである。移動体14は、通路15上を移動する物体であり、例えば自動車又は自動二輪車などの車両である。移動体14は、通路15及び検出部17と回転接触する車輪14aなどを備えている。通路15は、移動体14が通過する道路であり、図10に示すように、アスファルト混合物の表層(路面)15aと、この表層15aから伝達される交通荷重を分散させて路床15cに伝達する路盤15bと、交通荷重を支持する路床15cなどを備えている。
【0049】
移動体検知装置16は、区間DT内の移動体14の有無を検知する装置であり、通路15上を移動する移動体14を検知する。移動体検知装置16は、図1〜図3に示す列車検知装置11と同様の検出部17と判定部18とを備えている。検出部17は、区間DT内の移動体14の進入及び進出を検出する手段であり、移動体14が通路15上を走行するときに区間DT内に発生する振動を圧電効果によって電気信号(移動体検知信号)に変換して出力する圧電ゴムマットである。検出部17は、移動体14が通過するときに発生する衝撃を緩和し、振動の大きさに応じた電力を発生する弾性を有する圧電素子などの圧電材であり、表層15aの表面に接着剤などによって取り付けられている。検出部17は、図9に示す区間DTの入口側(移動体14が進入する側)と、この区間DTの出口側(移動体14が進出する側)とに、通路15の幅員(道幅)と略同一の長さでこの通路15の幅方向に沿って配置されている。検出部17は、図1〜図3及び図5に示す検出部12と同一構造であり詳細な説明を省略する。判定部18は、検出部17の検出結果に基づいて、区間DT内の移動体14の有無を判定する手段であり、検出部17が出力する電気信号に基づいて区間DT内の移動体14の有無を判定するとともに、検出部17が出力する電気信号に基づいて移動体14の通過を判定する。判定部18は、図1〜図3及び図5に示す判定部13と同一構造であり、区間DT内に移動体14が存在すると判定したときには、移動体14の通行量を監視する監視装置や移動体14に警告を発生する警告発生装置などに判定結果を送信する。
【0050】
この発明の第3実施形態に係る移動体検知装置には、第1実施形態及び第2実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第3実施形態では、移動体14が通路15上を移動するときに区間DT内に発生する振動を検出部17が圧電効果によって電気信号に変換して出力し、この検出部17が出力する電気信号に基づいて区間DT内の移動体14の有無を判定部18が判定する。このため、移動体14が通過するときに発生する振動を利用して区間DT内の移動体14の有無を簡単に検知することができる。
【0051】
(2) この第3実施形態では、ゴム中に圧電材料を分散させた圧電ゴム部を検出部17が備えている。このため、移動体14が繰り返し通路15上を通過して検出部17に繰り返し荷重が作用しても、圧電ゴム部が可撓性と弾力性を有するため検出部17が破損するのを防ぐことができる。
【0052】
(第4実施形態)
図11は、この発明の第4実施形態に係る移動体検知装置の移動体進入時の状態を模式的に示す平面図である。
図11に示す区間ETは、移動体検知装置16によって移動体(障害物)14の有無を検出する検出区間であり、例えば列車3が通過するときには通行が禁止され列車3が通過しないときには通行が許可されている踏切区間などである。区間ETは、軌道6を中心として両側にそれぞれ配置された踏切遮断機23間の距離であり、一方の踏切遮断機23の遮断かんと他方の踏切遮断機23の遮断かんとの間の距離である。通路15は、軌道6を挟むと道路とが平面交差する踏切(踏切道)である。
【0053】
踏切保安装置19は、踏切の通行の安全を図るために設備される装置であり、移動体検知装置20と、列車検知装置21と、踏切警報機22と、踏切遮断機23と、信号機24などを備えている。踏切保安装置19は、列車3と移動体14との衝突を防ぐために、踏切内で移動体14が動けなくなるなどの支障が発生したときには、踏切内の移動体14を自動的に検知して信号機24によって列車3に停止信号を現示し、列車3の安全な運行を確保する。
【0054】
移動体検知装置20は、区間ET内の移動体14の有無を検知する装置であり、図9に示す移動体検知装置16と同様の検出部17と判定部18などを備えている。図11に示す検出部17は、区間ET内の移動体14の進入及び進出を検出する手段であり、移動体14が踏切道上を移動するときにこの区間ET内に発生する振動を圧電効果によって電気信号(移動体検知信号)に変換して出力する圧電ゴムマットである。検出部17は、踏切道の幅員(道幅)と略同一の幅であり、かつ、この踏切道の長さ(道路方向の長さ)と略同一の長さであり、列車3の走行に支障のない範囲内で連続して配置されている。判定部18は、列車検知装置21の検出部12の検出結果と移動体検知装置20の検出部17の検出結果とに基づいて、区間ET内の移動体14の有無を判定する手段である。判定部18は、検出部12,17が出力する電気信号に基づいて区間ET内の移動体14の有無を判定する。判定部18は、列車3の踏切への進入を検出部12が検知した後に、区間ET内への移動体14の進入を検出部17が検出したときには、区間ET内に移動体14が存在すると判定し、信号機24が停止信号を現示するように制御部24bに指令する。
【0055】
列車検知装置21は、区間FT,GT内の列車3の有無を検出する装置であり、図1〜図3に示す列車検知装置11と同様の検出部12などを備えている。検出部12は、区間FT,GT内の列車3の進入及び進出を検出する手段であり、列車3の踏切への接近とこの列車3の踏切からの進出とを検出する。検出部12は、列車3が軌道6上を走行するときに区間FT,GT内に発生する振動を圧電効果によって電気信号(列車検知信号)に変換して出力する。検出部12は、列車3の踏切への進入(チェックイン)を検知する警報始動点(列車3から見て踏切よりも手前側の地点)と、列車3の踏切からの進出(チェックアウト)を検知する警報終止点(列車3から見て踏切よりも遠方側の地点)とにそれぞれ配置されている。
【0056】
踏切警報機22は、踏切道を通行する通行者に列車3の通過を警報する装置であり、交互に点灯する2灯の閃光式赤色灯(踏切警報灯)と音響とによって警告する。踏切警報機22は、警報始動点側の検出部12が列車3の踏切への進入を検知すると警報を開始し、警報終止点側の検出部12が列車3の踏切からの進出を検知すると警報を終了する。
【0057】
踏切遮断機23は、踏切道を遮断する装置であり、軌道6の両側において遮断かんなどによって道路交通を遮断する。踏切遮断機23は、踏切警報機22と同様に、警報始動点側の検出部12が列車3の踏切への進入を検知すると踏切の遮断を開始し、警報終止点側の検出部12が列車3の踏切からの進出を検知すると踏切の遮断を終了する。
【0058】
信号機24は、信号を現示する装置である。信号機24は、例えば、列車3を緊急に防護する必要があるときに、移動体検知装置20と連動して停止信号を現示し接近する列車3に警報する発光信号機(特殊信号発光機)などである。信号機24は、例えば、正五角形に並んだ5つの赤色灯を左回りに循環移動するように点灯させて停止信号を現示する。信号機24は、電源部24aと制御部24bなどを備えている。電源部24aは、信号機24に電力を供給する信号機用電源であり制御部24bに電流を流す。制御部24bは、信号機24の種々の動作を制御する部分であり、移動体検知装置20と連動して信号機24の動作開始及び動作停止などを制御する特殊信号発光機用制御器などである。制御部24bは、区間ET内に移動体14が存在するときには、信号機24を停止信号(赤信号)に現示し、区間ET内に移動体14が存在しないときには、信号機24を進行信号(青信号)に現示する。信号機24は、列車3が踏切の手前で停止可能なように区間ETの前方に設置されている。
【0059】
次に、この発明の第4実施形態に係る移動体検知装置の動作を説明する。
図11に示すように、列車3がD方向に走行して警報始動点側の検出部12をこの列車3の車輪4R,4Lが通過すると、列車3の踏切への進入をこの警報始動点側の検出部12が検知して、検出部12が電気信号を判定部18に出力する。その結果、踏切警報機22に警報動作の開始を判定部18が指令するとともに、踏切遮断機23に遮断かんの下降動作の開始を判定部18が指令する。踏切警報機22が警報動作を開始し踏切遮断機23が遮断かんを下降したにもかかわらず、移動体14が踏切内に進入すると列車3と衝突する危険性がある。移動体14が踏切内に進入すると、通路15上を移動体14が走行するときに発生する衝撃を検出部12が検出して、検出部12が電気信号を判定部15に出力する。このため、列車3の踏切への進入を検出部12が検知した後に、区間ET内への移動体14の進入を検出部17が検出したときには、区間ET内に移動体14が存在していると判定部18が判定し、信号機24が停止信号を現示するように制御部24bに判定部18が指令する。
【0060】
この発明の第4実施形態に係る移動体検知装置には、第1実施形態〜第3実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第4実施形態では、移動体14が踏切道上を移動するときに、この踏切道の区間ET内に発生する振動を検出部17が圧電効果によって電気信号に変換して出力し、この検出部17が出力する電気信号に基づいて区間ET内の移動体14の有無を判定部18が判定する。このため、移動体14が踏切道を通過するときに発生する振動を利用して区間ET内の移動体14の有無を簡単に検知することができる。その結果、踏切警報機22が警報動作を開始しているにもかかわらず、移動体14が踏切内に進入して列車3と衝突するような踏切障害事故の発生を未然に防止することができる。
【0061】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、区間BTが閉そく区間である場合を例に挙げて説明したが閉そく区間に限定するものではなく、列車3の通行を検出する必要がある所定の検出区間についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、支持体8がまくらぎ又はスラブ版である場合を例に挙げて説明したが、レール7R,7Lを長さ方向に連続して支持しレール7R,7Lの長さ方向に沿って敷設される梯子状のラダーまくらぎのような縦まくらぎについても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、レール締結装置10として締結ばね10bを使用した締結装置を例にあげて説明したが、支持体8とレール7R,7Lとの間にタイプレートを挿入した締結装置や、線ばねを使用した締結装置などについてもこの発明を適用することができる。
【0062】
(2) この第1実施形態では、区間BTの入口側から出口側に向かって所定の間隔をあけて検出部12を配置する場合を例に挙げて説明したが、区間BTの両端部である入口側と出口側のみに検出部12を配置することもできる。また、この第2実施形態では、路盤5と支持体8との間に検出部12を挿入する場合を例に挙げて説明したが、レール7R,7Lと支持体8との間に検出部12を挿入するとともに路盤5と支持体8との間に検出部12を挿入することもできる。
【0063】
(3) この第3実施形態及び第4実施形態では、移動体14が車両である場合を例に挙げて説明したが、通路15上を通行する人間又は動物などの移動体についてもこの発明を適用することができる。また、この第4実施形態では、列車3の踏切への接近とこの列車3の踏切からの進出とを圧電効果を利用して検出部12によって検出する場合を例に挙げて説明したが、このような検出方法に限定するものではない。例えば、区間FT,GT内のレール7R,7Lに所定周波数の信号を流し、レール7R,7L間を列車3の車軸によって短絡させて列車3を検知する踏切制御子を利用して、列車3の踏切への接近とこの列車3の踏切からの進出とを検出することもできる。さらに、この第4実施形態では、踏切道に検出部17を配置して移動体14を検知する場合を例に挙げて説明したが、踏切道と交差するレール7R,7Lの下方に検出部12を配置して検出部17とともに移動体14を検知することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明の第1実施形態に係る列車検知装置の列車進入前の状態を模式的に示す平面図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る列車検知装置の列車進入中の状態を模式的に示す平面図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る列車検知装置の列車進出後の状態を模式的に示す平面図である。
【図4】図1のIV-IV線で切断した状態を示す断面図である。
【図5】図1のV-V線で切断した状態を示す断面図である。
【図6】この発明の第1実施形態に係る列車検知装置の検出部の縦断面図である。
【図7】この発明の第2実施形態に係る列車検知装置を模式的に示す平面図である。
【図8】図7のVIII-VIII線で切断した状態を示す断面図である。
【図9】この発明の第3実施形態に係る移動体検知装置の移動体進入中の状態を模式的に示す平面図である。
【図10】図9のIX-IX線で切断した状態を示す断面図である。
【図11】この発明の第4実施形態に係る移動体検知装置の移動体進入時の状態を模式的に示す平面図である。
【図12】従来の列車検知装置の原理を説明するための模式図であり、(A)は閉そく区間内に列車が存在しない状態を示す模式図であり、(B)は閉そく区間内に列車が存在する状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0065】
1 絶縁継目
2 信号機
3 列車
4R,4L 車輪
5 路盤
6 軌道
7R,7L レール
8 支持体
9 道床
10 レール締結装置
10a 軌道パッド
11 列車検知装置
12 検出部(検出手段)
12a 圧電ゴム部
12b,12c 電極部
12d,12e 絶縁部
12f,12g 導電部
13 判定部(判定手段)
14 移動体
14a 車輪
15 通路
16 移動体検知装置
17 検出部(検出手段)
18 判定部(判定手段)
19 踏切保安装置
20 移動体検知装置
21 列車検知装置
22 踏切警報機
23 踏切遮断機
24 信号機
AT,BT,CT 区間(閉そく区間)
DT,ET,FT,GT 区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定区間内の列車の有無を検知する列車検知装置であって、
前記所定区間内の前記列車の進入及び進出を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて前記所定区間内の前記列車の有無を判定する判定手段とを備え、
前記検出手段は、前記列車が軌道上を走行するときに前記所定区間内に発生する振動を圧電効果によって電気信号に変換して出力し、
前記判定手段は、前記検出手段が出力する電気信号に基づいて前記所定区間内の前記列車の有無を判定すること、
を特徴とする列車検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の列車検知装置において、
前記検出手段は、前記所定区間が一列車の占有を許可し他の列車の進入を禁止する閉そく区間であるときに、この閉そく区間内に発生する振動を圧電効果によって電気信号に変換して出力し、
前記判定手段は、前記閉そく区間内の前記列車の有無を判定すること、
を特徴とする列車検知装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の列車検知装置において、
前記検出手段は、前記列車の車輪が走行するレールとこのレールを支持する支持体との間に挿入されていること、
を特徴とする列車検知装置。
【請求項4】
請求項3に記載の列車検知装置において、
前記検出手段は、前記振動を前記電気信号に変換する圧電軌道パッドであること、
を特徴とする列車検知装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の列車検知装置において、
前記検出手段は、前記列車の車輪が走行するレールを支持する支持体とこの支持体を支持する路盤との間に挿入されていること、
を特徴とする列車検知装置。
【請求項6】
請求項5に記載の列車検知装置において、
前記検出手段は、前記振動を前記電気信号に変換する圧電スラブマットであること、
を特徴とする列車検知装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の列車検知装置において、
前記検出手段は、ゴム中に圧電材料を分散させた圧電ゴム部を備えること、
を特徴とする列車検知装置。
【請求項8】
所定区間内の移動体の有無を検知する移動体検知装置であって、
前記所定区間内の前記移動体の進入及び進出を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記所定区間内の前記移動体の有無を判定する判定手段とを備え、
前記検出手段は、前記移動体が通路上を移動するときに前記所定区間内に発生する振動を圧電効果によって電気信号に変換して出力し、
前記判定手段は、前記検出手段が出力する電気信号に基づいて前記所定区間内の前記移動体の有無を判定すること、
を特徴とする移動体検知装置。
【請求項9】
請求項8に記載の移動体検知装置において、
前記検出手段は、前記移動体が踏切道上を移動するときに、この踏切道の所定区間内に発生する振動を圧電効果によって電気信号に変換して出力し、
前記判定手段は、前記検出手段が出力する電気信号に基づいて前記所定区間内の前記移動体の有無を判定すること、
を特徴とする移動体検知装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の移動体検知装置において、
前記検出手段は、ゴム中に圧電材料を分散させた圧電ゴム部を備えること、
を特徴とする移動体検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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