説明

判別装置

【課題】 印刷物が原本であるか複製物かを高速で判別すると同時に、誤判別してしまう可能性の低い判別装置を提供する事を目的とする。
【解決手段】 光源310から光を印刷物100の基材110部分へ照射し、その反射光の強度を光検出器410にて検出する。検出された反射光の強度のコントラスト値をもとに判別手段にて印刷物100が原本であるか、複製物であるかを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物が原本であるか複製物かを判別する判別装置に係り、特に印刷物の基材の色が原本と異なる基材を用いて複製された複製物を判別するための判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル方式のカラー複写機やコンピュータと接続して用いられるカラースキャナやカラープリンタが普及し、印刷物の複製が簡便に行えるようになっている。また、これら複写機やカラースキャナ、カラープリンタの性能の向上はめざましく、印刷物の原本と複製物の差違の判別がつきにくくなっている。
【0003】
従来、印刷物の原本と複製物の判別装置は、その印刷方式の違いを利用して行われていた。具体的には、有価証券の真券は通常凹版印刷が施されており、一方複写機やプリンタで印刷された複写物はシアン(C)、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、ブラック(K)などのドットで印刷されている。
【0004】
従って、有価証券の真券の基材表面(非印刷部分)と印刷表面(印刷部分)が高密度に配置されているような領域に光を照射すると、その光の透過光または反射光には印刷パターンに応じた大きな振幅の明暗パターンが生じる。しかし、有価証券の複製物の対応する領域に光を照射すると、照射した光の透過光または反射光の明暗パターンの振幅は小さくなる。そこで、従来の判別装置はこの明暗パターンを検出器にて所定の解像度で取得し、取得された明暗パターンに基づき、真券と複製物を判別していた(特許文献1)
【特許文献1】特開2003−323656公報 図7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、基材表面と印刷表面に照射された光の透過光や反射光に含まれる明暗パターンを取得するためには、検知の鍵となる印刷パターンが存在していなければならない。すなわち、明暗パターンを読み取るラインが少しでもずれると、読み取られる明暗パターンは全く異なるものとなってしまう。
【0006】
また、従来の判別装置では、検知の鍵となる印刷パターンが存在している部分において、印刷物の「ばたつき」や「うねり」を、十分な解像度を得られる焦点深度以下に抑制しなければならない。従って、判別装置の搬送装置に高い精度が必要となってしまい、印刷物を高速で判別することが難しい。これは、ATM等の様に高速な処理があまり求められない機器に実装される判別装置では、ATM等の処理速度は落ちるものの判別装置部分の稼働率が低いため致命的な弱点とはならない。しかし、大量の印刷物の真偽判定を行わなければならない機器に、このような判別装置を用いることは難しい。
【0007】
また、誤って印刷物に焦点深度よりも大きく「ばたつき」や「うねり」が生じ、誤判別してしまう可能性が高くなってしまう。
【0008】
本発明は、このような事情を鑑みてされたもので、印刷物が原本であるか複製物かを高速で判別すると同時に、誤判別してしまう可能性の低い判別装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の判別装置は、印刷物の基材表面に光を照射するための光源と、前記印刷物の表面にて反射した前記光の強度を測定するための光検出器と、前記光検出器が前記印刷物の基材表面にて反射した前記光を走査して測定するように、前記印刷物を前記印刷物の印刷面に対して略平行に移動させるための搬送装置と、前記光検出器から出力される出力信号のうち、前記印刷物の原本の前記基材表面に相当する位置における前記出力信号の振幅より、前記印刷物が原本であるか複製物であるかを判別するための判別手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の判別装置は、印刷物の基材表面に光を照射するための光源と、前記印刷物の表面にて反射した前記光の強度を測定するための光検出器と、前記光検出器が前記印刷物の基材表面にて反射した前記光を走査して測定するように、前記光源と前記光検出器を前記印刷物の印刷面に対して略平行に移動させるための移動ヘッドと、前記光検出器から出力される出力信号のうち、前記印刷物の原本の前記基材表面に相当する位置における前記出力信号の振幅より、前記印刷物が原本であるか複製物であるかを判別するための判別手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
印刷物が原本であるか複製物かを高速で判別すると同時に、誤判別してしまう可能性の低い判別装置を提供する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態による判別装置のブロック図を示す。
【0014】
本発明の第1の実施の形態による判別装置は、搬送装置200、ランプ300、光検出器400、判別手段500を有している。また、必要に応じて選別装置600を設けることも可能である。
【0015】
搬送装置200は、搬送ベルト210と駆動手段215を有している。駆動手段215は、例えばモータ等の動力源(図示せず)を利用して、回転運動が可能となるように設けられている。搬送ベルト210は、無限軌道の様に駆動手段215を取り巻くように取り付けられている。搬送ベルト210は搬送方向220の方向に、被検体である印刷物100を搬送(移動)できるように設けられている。
【0016】
印刷物100は、複製されることで社会的機能を損なうような印刷物、例えば紙幣や株券、商品券のような有価証券類があげられる。印刷物100は例えば淡い赤紫色の基材110上に印刷内容150が印刷されたものである。印刷内容150の印刷には、例えば凹版印刷を用いることができる。基材は、例えば紙や塩化ビニルなどをシート状にしたものである。
【0017】
ランプ300は、光源310とレンズ315を有している。光源310は、搬送装置200によって搬送された印刷物100に光320を照射するために設けられている。この時、印刷物100に光320を照射する角度は、高い反射率を維持するため、また光検出器400との干渉をさけるために、印刷物100の光320を照射する面に対して45±10度程度が好ましい。
【0018】
光源310から照射される光320の波長は、例えば緑色、具体的には波長520乃至535nmが好ましい。光源310から照射された光320に含まれる余分な波長の光の量が少なく、また消費電力も少ないため、光源310には発光ダイオード(LED)、またはレーザダイオードが特に好ましい。レンズ315は、光源310から照射された光320を、あらかじめ定められた照射領域330に絞るために設けられている。
【0019】
図2に、光源310から光320が照射された状態の印刷物100を示す。印刷物100の基材110上には、光源310から照射されレンズ315にて絞られた光は、照射領域330の領域に照射される。照射された光のうち、スポット420の範囲にて反射した光を光検出器400は検出する。印刷物100の「ばたつき」や「うねり」があっても、光源310から照射された光320の反射光を光検出器400が検出できるように、照射領域330の面積は直径1.0±0.2mm程度が好ましい。
【0020】
光検出器400は、センサ410、レンズ430、ピンホール440を有している。光源310から印刷物100に照射された光320の反射光の強度を測定するために、光検出器400は設けられている。光源310から印刷物100に照射された光320の反射光が、光検出器400に入射する位置に、光検出器400は設けられている。光検出器400に入射した反射光は、レンズ430にて集光された後、センサ410に設けられた受光部415に入射する。センサ410は、受光部415に入射した光の強度を電気信号(出力信号)へと変換する。
【0021】
レンズ430とセンサ410との間には、ピンホール440が設けられている。スポット420は図3に示すように、レンズ430によってピンホール440と共役(結像)の関係となっている。そして、ピンホール440を通過した光は、受光部415に入射する。また、レンズ430と印刷物100の間に位置するように、絞り435が設けられている。絞り435の開口面積を調整することで、受光部415に入射する反射光の量を制御することができる。
【0022】
レンズ430の詳細について説明する。レンズ430の開口数は、例えばNA=0.03程度が好ましい。また、レンズ430は回折限界性能を有しており、レンズ430の収差が光の波長に比較して十分小さく、判別装置の解像力は光の波長と開口数だけで決定される。
【0023】
図8に、NA=0.03の無収差レンズを用いた場合のMTF特性図を示す。縦軸はMTF(コントラスト再現度)、横軸は空間周波数(本/mm)を示している。円形開口の理想レンズ(無収差レンズ)の場合、解像本数はMTF9%となる。また、多少収差の残っている現実のレンズの場合、解像本数はMTF10〜20%となる。(オプトロニクス社編集部編 「光学系の仕組みと応用」 オプトロニクス社刊より)従って、±0.5mmの焦点ズレが生じる可能性がある場合において、NA=0.03の無収差レンズを用いると、空間周波数は74本/mmであり、スポット420の径は少なくとも6.75μm以上とすることが必要である。
【0024】
なお、印刷物100の複製物の解像度が8本/mmより粗い場合、容易に肉眼で印刷物100が原本であるか複製物であるかを判別することができる。よって、スポット420の径が125μmより大きい必要性はない。
【0025】
搬送装置200と、ランプ300、光検出器400の関係について説明する。前述の通り、搬送装置200は、搬送方向220の方向に印刷物100を搬送できるように設けられている。ランプ300が印刷物100の基材110の表面(非印刷部分)を照射し、光検出器400が、基材110の表面にて反射した光を走査して測定するように、搬送方向220は設定されている。また、印刷物100の印刷内容150が印刷された面(印刷面)に対して略平行となるように、搬送方向220は設定されている。
【0026】
ここで略平行とは、光検出器400が基材110の表面にて反射した光を走査して測定する際、印刷物100の少なくとも一部が焦点深度、すなわち本実施の形態では±0.5mmの範囲内で移動できる程度に平行という意味である。焦点深度±0.5mmの範囲内であれば、最大±0.5mmの焦点ズレが生じた場合でも、十分な解像度を確保することができるためである。
【0027】
判別手段500は、光検出器400と出力信号伝達経路450にて接続されている。判別手段500は、例えば演算装置や記憶手段を有するマイコンやシーケンサなどの情報処理装置を用いることができる。光検出器400にて電気信号に変換された光の強度を、あらかじめ決められたピッチで判別装置500はサンプリング(検出)する。例えば、搬送装置200が印刷物100を搬送する速度を1m/secとした場合、1秒間に100,000回(10μm)のピッチでサンプリングする。サンプリングピッチを10μmとした場合、判別手段500がサンプリングしたサンプリングデータの容量は、約100kB/sec程度となる。現在のマイコンやシーケンサのデータ処理能力を考慮しても、十分に判別手段500が判別することができる程度のデータレートである。
【0028】
判別手段500がサンプリングした光の強度のデータをもとに、印刷物100が原本であるか複製物であるかどうか、判別装置500は判別する。判別装置500の判別の結果は、判別結果出力経路510を通じて出力される。
【0029】
選別装置600は、判別結果出力経路510に接続されている。選別装置600は必要に応じて設けられてもよいし、省略されてもよい。例えば、ATMや自動販売機に内蔵されるような装置は省略されても構わない。また、銀行等で紙幣識別装置として用いられる場合には選別装置600を設けたほうが望ましい。
【0030】
判別結果出力経路510を通じて出力された判別結果に基づいて、選別装置600は印刷物100を原本と複製物とに分類して排出する。判別結果が原本だった場合、選別装置600は判別装置の通常の排出口へ排出する。一方、判別結果が複製物だった場合、選別装置600は判別装置の複製物専用の排出口へ排出する。その際、図示しないカウンターを用い、排出した原本と複製物の枚数を表示画面等に表示することもできる。
【0031】
つぎに、本実施の形態による判別装置を用いた判別の詳細について説明する。まず、印刷物100の原本と、複製物との違いについて説明する。
【0032】
印刷物100の原本は、例えば淡い赤紫色の基材110の上に凹版印刷等の技術を用いて、印刷内容150が印刷されている。一方、複製物は例えば図4に示す様に、まず見本となる印刷物100の原本を、カラースキャナ等のイメージングデバイスを用いて一旦電子データに変換する。続いて、例えばパーソナルコンピュータや複写機に設けられたCPUなどの情報処理装置を用いて、変換された電子データをノイズの除去、色の補正などデータ加工する。そして、加工された電子データをインクジェットプリンタやレーザプリンタなどのプリンタを用いて印刷する。
【0033】
こうしてできた印刷物100の複製物180と、原本170を図5に示す。原本170の基材110を拡大観察すると、無地の下地175からなっている。一方、複製物180の原本170の基材110に相当する部分を拡大観察すると、白色紙185の上に、赤紫色のインク(CYMKのM)のドット190が、淡い赤紫色の基材の明度に応じた間隔をもって印刷されている。
【0034】
これは、プリンタの色再現性を高めるために、白色度の高い用紙を用いて印刷することを前提としてプリンタが設計されているためである。従って、例えば淡い赤紫色のような色味を有する原本170を複製しようとすると、原本の基材110の部分に相当する領域においても、図5に示す様にドット190を印刷されることとなる。
【0035】
また、このようにドット190を印刷しない場合、原本170の基材110に相当する部分の色が、原本170と複製物180とで異なるため、肉眼にて容易に原本170と複製物180とを判別することができる。また、原本と同じ淡い赤紫色の基材110を用いて複製物180を印刷した場合、印刷内容150の色が、原本170と複製物180とで異なるため、肉眼にて容易に原本170と複製物180とを判別することができる。
【0036】
さらに、現在のプリンタのインク粒は、例えばインクジェットプリンタの場合約2pL程度であり、基材110に印刷された場合のドット190の径は約16μmである。従って、光検出器400はこのドット190の有無を光の強度として電気信号の振幅として変換し、判別装置500はこの電気信号の振幅を原本170にてサンプリングされるべき振幅と比較することで、印刷物100が原本であるか複製物であるかを判別することができる。
【0037】
判別装置500の電気信号の振幅の比較について説明する。判別装置500は、サンプリングした光の強度のデータのうち、原本170の基材110表面に相当する位置における電気信号の振幅から、比較可能な指標となる数値(以下指標という)を求める。そして、この指標を、あらかじめ設定された閾値と比較し、印刷物100が原本であるか、複製物であるかを判断する。閾値は、あらかじめ複数の原本の光の強度データを取得し、このあらかじめ取得したデータをもとにマージンを考慮し設定する。
【0038】
指標は、例えばサンプリングした光の強度データから求められる最大値と最小値の差、コントラスト値、算術平均粗さ、最大高さ、10点平均粗さ、または2乗平均粗さ、もしくはこれらの指標を複数組み合わせて用いることができる。本実施の形態では、コントラスト値を例にとって説明する。算術平均粗さ、最大高さ、10点平均粗さ、または2乗平均粗さは、JIS B 0601に詳細が記載されているので、本実施の形態では説明を省略する。
【0039】
コントラスト値は、下記の式(1)を用いて計算される値である。
【0040】

(Amax−Amin)/(Amax+Amin) (1)
Amax:サンプリングした光の強度の最大値
Amin:サンプリングした光の強度の最小値

ここで、光の強度のデータの印刷物100の「ばたつき」や「うねり」の影響を最小限に抑制する必要がある。そこで、光の強度のデータをサンプリングする際、印刷物100が焦点深度±0.5mmの範囲内で移動した部分にてサンプリングされた光の強度のデータの一部を、判別装置500は選別する。例えば、印刷物100が12cm移動し、全体で2mmのばたつき、12cm移動したうちの3cmの移動において±0.5mmの範囲内のばたつきであった場合、印刷物がこの3cm移動した時のサンプリングされた光の強度のデータ中の、連続する任意のデータ(例えば7つのデータ)を選別する。そして、選別された任意のデータから、式(1)を用いてコントラスト値を求める。
【0041】
図9は、本実施の形態による判別装置を用いて、印刷物の原本と複製物とにランプ300から光を照射し、その光の反射光の強度を光検出器400にて電気信号に変換し、判別装置500にてサンプリングした実験データである。縦軸は、判別装置500にてサンプリングした電気信号である。横軸は、光検出器400が印刷物100の基材110表面にて反射した光を走査した距離、すなわち、サンプリングを行っている間、印刷物100が移動した距離である。図9の通り、原本と複製物では、コントラスト値が約10倍程度ことなるため、例えば、コントラスト値が0.1より大きい場合は複製物と判断し、コントラスト値が0.1以下の場合は原本と判断することができる。
【0042】
このようにしてできた判別装置は、印刷物100が原本であるか複製物かを高速で判別することができる。これは、印刷物100を高い精度で位置合わせ(あらかじめ印刷物100に印刷されている印刷パターンに応じた振幅の明暗を取得するため、目的とする印刷パターンに光を照射するための位置合わせ)する必要がないためである。本実施例による判別装置は、印刷物100の広い面積の余白部分(基材110の表面)に光を照射するので、精度の高い位置合わせは必要ない。紙幣等の一般的な印刷物100には、幅5mm程度の余白部分が設けられている。従って、印刷物100の位置許容誤差は±2mm程度であり、簡便な位置合わせを行うだけでも正確に判別することができる。
【0043】
また、印刷物が原本であるか複製物かを判別する際、誤判別してしまう可能性が非常に低い。基材表面と印刷表面に光を照射し、印刷パターンに応じた明暗パターンを取得する場合、目的とする印刷パターンの部分に光検出器400の焦点深度より大きい「ばたつき」や「うねり」があると誤判断してしまうことがある。しかし、本実施の形態による判別装置は、光検出器400の焦点深度の範囲内に「ばたつき」や「うねり」がある部分の光の強度のデータを選別する。従って、本実施の形態による判別装置は、誤判別してしまう可能性が非常に低い。
【0044】
なお、本実施の形態にさらに色センサを組み合わせても構わない。色センサをさらに設けることにより、印刷物100の色、すなわち基材110や印刷内容150の色を検出し、検出された色データをさらに用いて、印刷物が原本であるか複製物であるかを判別しても構わない。
【0045】
(第2の実施の形態)
図6および図7を用いて本発明の第2の実施の形態による判別装置について説明する。なお、第1の実施の形態と同一部分については、その説明を省略する。図6は人間の目の色に対する感度を示す図である。縦軸は人間の目の相対感度(dB)、横軸は空間周波数(本/mm)である。また、図7は一般的な赤紫(マゼンダ)、青緑(シアン)、黄色(イエロー)のインクの、照射された光の波長と反射率の関係を示す図である。縦軸は反射率(%)、横軸は波長(nm)である。
【0046】
印刷物100は、淡い黄色の基材110上に印刷内容150が印刷されたものである。光源310から照射される光320の波長は、青色、具体的には波長400乃至500nmである。光源310には、例えば青色LEDや青色レーザダイオードを用いることができる。次にこの詳細を説明する。
【0047】
図6に示す通り、黄色のパターンは黒のパターンに対して10倍、赤紫に対して3倍程度密度の粗いパターンでも、人間の目には認識できない。従って、通常プリンタのインクに、赤紫、青緑について濃度の異なる2種類のインクが用いられることはあるが、黄色について明度のことなる2種類のインクが用いられることは少ない。そこで、プリンタは人間の目の黄色に対する分解能の低さを利用し、濃い黄色のインクのみを用い、淡い濃度の黄色は濃い黄色のドットの間隔を広げて印刷することで表現している。
【0048】
また、図7に示す通り、黄色のインクに波長500nm以下の光(青)が照射された場合、その反射率は非常に低い。一方、黄色のインクに波長が500nmより大きい光が照射された場合、その反射率は非常に高い。すなわち、波長500nm以下の光を照射した場合、濃い黄色のドットが印刷された部分の反射率が非常に低くなるが、基材表面の反射率は変わらない。なお、黄色のインクに波長400nm未満の光が照射された場合は、人間の目には認識できない光のため、インクの種類によって反射率が異なる可能性がある。そこで、光源310から照射される光の波長を波長400乃至500nmとすれば、光検出器400の黄色に対する分解能が向上する。
【0049】
このようにしてできた判別装置は、本発明の第1の実施の形態による判別装置と同様に、印刷物100が原本であるか複製物かを高速で判別することができる。また、印刷物が原本であるか複製物かを判別する際、誤判別してしまう可能性が非常に低い。
【0050】
さらに、本発明の第1の実施の形態による判別装置に比べ、光検出器400の黄色に対する分解能が向上するので、誤判別してしまう可能性がさらに低い。また、プリンタを用いて印刷された印刷物は淡い濃度の黄色は濃い黄色のドットの間隔を広げて印刷することで表現しているため、光検出器400の黄色に対する分解能の余裕が十分にあり、誤判別してしまう可能性がさらに低い。
【0051】
なお、本発明の実施の形態では、光源310に緑色LED、青色LED、緑色レーザダイオードまたは青色レーザダイオードを用いる例について説明したが、図10(a)に示すように、光源310にハロゲンランプ等の白色光を照射するランプ311と、その白色の光の波長520乃至535nmの緑色光、または波長400乃至500nmの青色光のみを透過する光学フィルタ316とを組み合わせたものを用いても構わない。
【0052】
また、図10(b)に示すように、光学フィルタ316を用いる代わりに、白色光20照射するランプ光源310と、印刷物100とセンサ410との間にその白色の光の波長520乃至535nmの緑色光、または波長400乃至500nmの青色光のみを透過する光学フィルタ436とを設けても構わない。
【0053】
また、本発明の第1の実施の形態による判別装置と同様に、本実施の形態にさらに色センサを組み合わせたり、他の公知の判別方法を組み合わせたりしても構わない。
【0054】
また、図11に示す様に、ランプ300と光検出器400とを、移動ヘッド230に搭載しても構わない。光検出器400が基材110の表面にて反射した光をするように、ランプ300と光検出器400を移動ヘッド230は移動させる。この時の移動方向は、印刷物100の印刷内容150が印刷された面(印刷面)に対して略平行である。この場合、光検出器400が基材110の表面にて反射した光を走査して測定するように搬送方向220を設定しなくても構わない。
【0055】
さらに、本発明の第1の実施の形態による判別装置では赤紫色の基材の印刷物を判別する例、本発明の第2の実施の形態による判別装置では黄色の基材の印刷物を判別する例について説明したが、これらを組み合わせたり、他の色の基材の印刷物を判別する構成を組み合わせたりしても構わない。また、本発明の実施の形態による判別装置では、赤紫や黄色のドットが印刷された複製物を判別する例について説明したが、網点や網線、万線が印刷された複製物についても、同様の構成を用いて判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施の形態による判別装置
【図2】本発明の第1の実施の形態による判別装置の部分拡大図
【図3】本発明の第1の実施の形態による判別装置の部分拡大図
【図4】印刷物100を複製する方法の例
【図5】印刷物100の複製物180と、原本170
【図6】人間の目の色に対する感度
【図7】一般的な赤紫、青緑、黄色のインクの、照射された光の波長と反射率の関係を示す図
【図8】NA=0.03の無収差レンズを用いた場合のMTF特性図
【図9】本発明の第1の実施の形態による実験データ
【図10】本発明の第1の実施の形態による判別装置の変形例
【図11】本発明の第1の実施の形態による判別装置の変形例
【符号の説明】
【0057】
印刷物 100
基材 110
印刷内容 150
原本 170
無地の下地 175
複製物 180
白色紙 185
ドット 190
搬送装置 200
搬送ベルト 210
駆動手段 215
搬送方向 220
移動ヘッド 230
ランプ 300
光源 310
ランプ 311
レンズ 315
光学フィルタ 316
光 320
照射領域 330
光検出器 400
センサ 410
受光部 415
スポット 420
レンズ 430
絞り 435
光学フィルタ436
ピンホール 440
出力信号伝達経路 450
判別手段 500
判別結果出力経路 510
選別装置 600

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷物に光を照射するための光源と、
前記印刷物の表面にて反射した前記光の強度を測定するための光検出器と、
前記光検出器が前記印刷物の基材表面にて反射した前記光を走査して測定するように、前記印刷物を前記印刷物の印刷面に対して略平行に移動させるための搬送装置と、
前記光検出器から出力される出力信号のうち、前記印刷物の原本の前記基材表面に相当する位置における前記出力信号の振幅より、前記印刷物が原本であるか複製物であるかを判別するための判別手段と、を有する判別装置。
【請求項2】
印刷物に光を照射するための光源と、
前記印刷物の表面にて反射した前記光の強度を測定するための光検出器と、
前記光検出器が前記印刷物の基材表面にて反射した前記光を走査して測定するように、前記光源と前記光検出器を前記印刷物の印刷面に対して略平行に移動させるための移動ヘッドと、
前記光検出器から出力される出力信号のうち、前記印刷物の原本の前記基材表面に相当する位置における前記出力信号の振幅より、前記印刷物が原本であるか複製物であるかを判別するための判別手段と、を有する判別装置。
【請求項3】
前記判別手段は、前記出力信号のばらつきを表す指標を求め、前記指標とあらかじめ設定された閾値とを比較することにより複製物または原本であると判断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の判別装置。
【請求項4】
前記指標は、前記出力信号からあらかじめ設定されたピッチであらかじめ設定された回数サンプリングされた出力値の最大値と最小値の差であることを特徴とする請求項3に記載の判別装置。
【請求項5】
前記指標は、前記出力信号からあらかじめ設定されたピッチであらかじめ設定された回数サンプリングされた出力値の最大値(Amax)と最小値(Amin)から求められる、
(Amax−Amin)/(Amax+Amin)
であることを特徴とする請求項3に記載の判別装置。
【請求項6】
前記指標は、前記出力信号の測定曲線から求められる算術平均粗さ、最大高さ、10点平均粗さ、または2乗平均粗さであることを特徴とする請求項3に記載の判別装置。
【請求項7】
前記光源は、波長520乃至535nmの緑色、または波長400乃至500nmの青色の光を照射することができる光源であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の判別装置。
【請求項8】
前記光源は、LEDまたはレーザダイオードであることを特徴とする請求項7に記載の判別装置。
【請求項9】
前記光検出器は、波長520乃至535nmの緑色、または波長400乃至500nmの青色の光のみを透過することができる光学フィルタをさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の判別装置。
【請求項10】
前記光検出器は、前記印刷物の表面の直径6.75乃至125μmの範囲にて反射した前記光を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の判別装置。
【請求項11】
前記印刷物を原本と複製物とに分類して排出するための選別装置をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の判別装置。
【請求項12】
前記基材表面は、前記印刷物に設けられた余白部分であることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の判別装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−65771(P2006−65771A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250463(P2004−250463)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】