説明

判定装置、判定システム、判定方法、及びコンピュータプログラム

【課題】正確性、客観性を担保しつつ、非破壊で、建造物等に用いられている膜材の現時点での強度を判定する技術を提供する。
【解決手段】判定装置100は、対象膜材の表面を撮像して得た基礎画像についての基礎画像データをカメラ200から受付け、基礎画像の所定の範囲のすべての画素に割当てられた色についての情報である画素値を検出して色情報を得る。判定装置は、色情報を、複数の表色系について得る。判定装置は、実際に強度が落ちた多数の膜材のサンプルを実測して得た複数の表色系についての色情報と、サンプルの強度についての強度情報を有している。判定装置は、基礎画像から得た色情報とそれが持っていた色情報を比較して、基礎画像の強度情報を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜材の劣化の程度を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建材としての膜材が存在している。建材としての膜材は、その素材等にもよるが、その他の建材によっては得られない曲面を得られる、透光性を得やすい等の利点を備えており普及している。例えば、競技場としての巨大なスタジアムの屋根、博覧会のパビリオン、テント式の倉庫などに、建材として膜材を使ったものが多い。
【0003】
ところで、これら膜材は、長期間使用すれば当然に経年劣化により強度が落ちる。膜材は、建造物、構造物(以下、「建造物等」という。)の外皮として用いられることが多いので、使用されている膜材の現時点での強度を調べたいという要求がある。
建造物等に使用されている膜材の現時点の強度を調べるのは、一般的に難しい。使用されている膜材の一部を切り取って実際に強度を計測するのが最も簡単であるが、それは、膜材の強度を落とすことに繋がるし、例え後から膜材の切り取った部分の補修を行ったとしても、膜材が持っている美しさを損ねることになる。
したがって、非破壊で膜材の現時点での強度を測定することが好ましいが、膜材は薄い素材であるため、コンクリート製の躯体や、鉄筋等の強度を非破壊で検査するために汎用されている超音波や、X線を用いる技術を応用することが難しい。
他方、膜材は、強度の低下の程度が、その表面に現れやすいという特性がある。建造物等に用いられる膜材は、少なくとも片面が樹脂により形成されている(例えば、繊維により膜状に形成された基材の少なくとも片面を樹脂で被覆して形成されている)ものが多いが、これら膜材の現時点の強度は、例えば、膜材の表面を形成する樹脂に生じたクラックと強い相関関係を持つことが経験則として知られている。このような経験則を利用して、目視により、建造物等に使用されている膜材の現時点での強度を判定することが行われている。しかしながら、かかる判定は、判定を行う者の経験、錬度に負う部分が大きく、また、判定を行う者の主観を排除することが難しいため、その判定結果の正確性、客観性を担保することが難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、正確性、客観性を担保しつつ、非破壊で、建造物等に用いられている膜材の現時点での強度を判定するための技術を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するための本発明は、以下のような第1発明と第2発明に大別される。
【0006】
第1発明は、膜材の強度と強い相関のある膜材の判定対象面上の色というパラメータを用いて、膜材の現時点の強度を判定する技術に関する。
【0007】
本願の第1発明は、まず、以下のような判定装置として具現化される。
第1発明は、少なくとも片面が樹脂により形成された膜材の強度の劣化の度合いを判定する判定装置である。
そして、この判定装置は、強度の劣化の度合いを判定される対象膜材の樹脂により形成された面である判定対象面を所定の撮像装置によって撮像することによって得られた基礎画像についての基礎画像データを受付ける受付け手段と、前記受付け手段が受付けた基礎画像データから、当該基礎画像データの基になった基礎画像中の適当な範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色に関連した情報である色情報が、複数の表色系について一組とされたものである組色情報を生成する色分析手段と、前記対象膜材と同種の膜材に対して計測を行うことによって実際に得られた、当該膜材の強度についての情報である強度情報と、当該膜材の樹脂により形成された面を所定の撮像装置によって撮像して得られた画像についての画像データから、当該画像データの基になった画像の適当な範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色に関連した情報である基準色情報が、前記色分析手段が用いるのと同じ複数の表色系について一組として生成された基準組色情報とを、様々な強度について、前記強度情報と、前記基準組色情報とを互いに対応付けた状態で複数記録した記録手段と、前記色分析手段が生成した前記組色情報と、前記記録手段に記録されている複数の前記基準組色情報とを、前記組色情報に含まれる複数の前記色情報と、前記基準組色情報に含まれる複数の前記基準色情報との類似性により比較することで前記組色情報と最も近い前記基準組色情報か、又は前記組色情報と同じであると判断できる前記基準組色情報に基づいて求められる組色情報を決定するとともに、前記組色情報と最も近い前記基準組色情報を決定した場合にはその基準組色情報と対応付けられている前記強度情報を用いて、前記組色情報と同じであると判断できる組色情報を決定した場合にはその組色情報に対応付けられると推定される強度情報を用いて、前記対象膜材の強度の判定結果を決定する決定手段と、を備えている。
この判定装置は、概念的に説明すれば、強度の劣化の度合いを判定される対象膜材の樹脂により形成された面である判定対象面を所定の撮像装置で撮像することにより得た基礎画像(乃至それから得られたデータ。これが基礎画像データである。)を、記録手段に記録されていたその対象膜材と同種の膜材であって、実際に強度の落ちているものを撮像装置で撮像することにより得られた画像(乃至それから得られた画像データ)と対比することにより、対象膜材の強度を判定することとしている。記録手段には、強度の落ちている膜材から得た膜材の強度についての実測値に関する複数の強度情報が、実際に経年劣化により強度の落ちているものを撮像装置で撮像することにより得られた複数の画像(乃至その画像から得られた画像データ)と関連付けて記録されている。そして、この判定装置では、この判定装置が備える決定手段が基礎画像データと類似するもの少なくとも一つを決定し、その画像と関連付けられている強度情報から、対象膜材の強度を判定することとしている。
この判定装置では、結果的に、人に頼らずに、基礎画像と、実際に強度の落ちた膜材を撮像して得た画像の対比を行うことになるので、正確性、客観性を担保しつつ、非破壊で、建造物等に用いられている膜材の現時点での強度を判定できるようになる。
なお、この判定装置の決定手段は、上述のように、前記色分析手段が生成した前記組色情報と、前記記録手段に記録されている複数の前記基準組色情報とを、前記組色情報に含まれる複数の前記色情報と、前記基準組色情報に含まれる複数の前記基準色情報との類似性により比較することで、前記組色情報と最も近い前記基準組色情報か、又は前記組色情報と同じであると判断できる前記基準組色情報に基づいて求められる組色情報を決定するとともに、前記組色情報と最も近い前記基準組色情報を決定した場合にはその基準組色情報と対応付けられている前記強度情報を用いて、前記組色情報と同じであると判断できる組色情報を決定した場合にはその組色情報に対応付けられると推定される強度情報を用いて、前記対象膜材の強度の判定結果を決定するようになっている。この決定は、例えば、組色情報に最も類似する基準組色情報を決定する場合には、その決定された基準組色情報に対応付けられた強度情報そのものを、又組色情報と同じであると判断できる基準組色情報に基づいて求められる組色情報を決定した場合には、その組色情報に対応付けられると推定される強度情報そのものを対象膜材の強度情報とするようにしてもよいし、或いはそれら強度情報に何らかの補正を行い、その補正後の値を対象膜材の強度情報とするようにしてもよい。なお、組色情報と同じであると判断できる基準組色情報に基づいて求められる組色情報を決定する場合には、基準組色情報とは異なる組色情報が、対象膜材から得られた組色情報と最も近い(或いは類似する)ものとして決定される場合がある。これは、対象膜材と同種の膜材から得られた互いに対応付けられた基準組色情報と強度情報における基準組色情報のうちの最も近いものの間に存在する組色情報であるが、これは記録手段に記録された基準組色情報から演算により求めることができるものである。この組色情報に対応付けられていると推定される強度情報は、記録手段に記録された基準組色情報と強度情報を用いて演算を行うことにより求めることができる。なお、2つ又はそれ以上の基準組色情報を組色情報に類似するものとして決定し、それら複数の基準組色情報に対応付けられた複数の強度情報に基づいて(例えば、平均をとったり、中央値を求めたりして)、対象膜材の強度情報を決定してもよい。以上のような強度情報の決定の仕方をしてもよいのは、後述する第2発明の場合も同様である。
それのみならず、この判定装置には、以下の利点がある。
この判定装置は、基礎画像データから、当該基礎画像データの基になった基礎画像中の適当な範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色に関連した情報である複数の色情報を一組とした組色情報を生成する色分析手段を有している。この組色情報に含まれる色情報は、基礎画像データを複数の表色系で表現したものとされている。
ここで、表色系とは、色をチャンネルと呼ばれる数値により表現するための方法、形式であり、RGB、HSV、XYZ、Lなどが良く知られている。
また、記録手段に記録されている実際に強度の落ちている膜材を撮像装置で撮像することにより得られた画像から得られたデータは、より正確には、対象膜材と同種の膜材の樹脂により形成された面を所定の撮像装置によって撮像して得られた画像についての画像データから、当該画像データの基になった画像の適当な範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色に関連した情報である複数の基準色情報を一組とした基準組色情報を含むものとされている。そして、この基準組色情報に含まれる基準色情報は、対象膜材と同種の膜材から得られた画像(乃至画像データ)を複数の表色系で表現して得られるものとされている。
この判定装置の決定手段は、基礎画像データから生成した前記組色情報と、前記記録手段に記録されている複数の前記基準組色情報とを、前記組色情報に含まれる複数の前記色情報と、前記基準組色情報に含まれる複数の前記基準色情報との類似性(より正確には、色情報と基準色情報の対応するもの同士(同じ表色系で表現されたもの同士)との類似性、以下同じ。)により比較することで、前記記録手段に記録された複数の前記基準組色情報の中から前記組色情報に類似するもの少なくとも一つを決定するようにしている。人間が現物の膜材同士を比較する場合、或いは人間が対象膜材を撮像して得た画像とそれと同種の画像同士を比較する場合には、このような複数の表色系を用いての判断を行うことができない。また、画像データの類似性を判断する際に複数の表色系を用いることで、その判断の正確さ、客観性を高めることも可能になる。
このような点により、第1発明の判定装置は、膜材の現時点での強度を判定した場合の判定結果の正確性と客観性が高い。
なお、第1発明において、複数の色情報を表現する複数の表色系と、複数の基準色情報を表現する複数の表色系は、同じものとされる。また、判定装置で使用される複数の表色系は、例えばユーザが行う入力手段の操作により、適宜変更できるようにしてもよい。これらの点は、第2発明でも共通である。
なお、本願発明において強度情報と、基準組色情報とを生成するために用いる対象膜材と同種の膜材は、対象膜材と完全に同一の膜材である必要はなく、その経年劣化の仕方が対象膜材とある程度同じであると想定できるものであればよい。
【0008】
第1発明の判定装置と同様の作用効果を、以下の判定システムによっても得ることができる。第1発明における判定システムは、撮像手段を含むものであり、例えば以下のようなものとされる。
第1発明による判定システムは、少なくとも片面が樹脂により形成された膜材の強度の劣化の度合いを判定する判定システムである。
そして、この判定システムは、強度の劣化の度合いを判定される対象膜材の樹脂により形成された面である判定対象面を撮像して基礎画像を得る撮像手段と、前記撮像手段により得られた前記基礎画像についての基礎画像データを、前記撮像手段から直接、又は他の機器を介して受付ける受付け手段と、前記受付け手段が受付けた基礎画像データから、当該基礎画像データの基になった基礎画像中の適当な範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色に関連した情報である色情報が、複数の表色系について一組とされたものである組色情報を生成する色分析手段と、前記対象膜材と同種の膜材に対して計測を行うことによって実際に得られた、当該膜材の強度についての情報である強度情報と、当該膜材の樹脂により形成された面を所定の撮像装置によって撮像して得られた画像についての画像データから、当該画像データの基になった画像の適当な範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色に関連した情報である基準色情報が、前記色分析手段が用いるのと同じ複数の表色系について一組として生成された基準組色情報とを、様々な強度について、前記強度情報と、前記基準組色情報とを互いに対応付けた状態で複数記録した記録手段と、前記色分析手段が生成した前記組色情報と、前記記録手段に記録されている複数の前記基準組色情報とを、前記組色情報に含まれる複数の前記色情報と、前記基準組色情報に含まれる複数の前記基準色情報との類似性により比較することで、前記組色情報と最も近い前記基準組色情報か、又は前記組色情報と同じであると判断できる前記基準組色情報に基づいて求められる組色情報を決定するとともに、前記組色情報と最も近い前記基準組色情報を決定した場合にはその基準組色情報と対応付けられている前記強度情報を用いて、前記組色情報と同じであると判断できる組色情報を決定した場合にはその組色情報に対応付けられると推定される強度情報を用いて、前記対象膜材の強度の判定結果を決定する決定手段と、を備えている。
【0009】
第1発明の判定装置と同様の作用効果を、以下の判定方法によっても得ることができる。第1発明における判定方法は、例えば以下のようなものとされる。
第1発明の判定方法は、少なくとも片面が樹脂により形成された膜材の強度の劣化の度合いを判定する判定装置にて実行される判定方法であって、当該判定装置が実行する、以下の過程を含む。
その過程は、強度の劣化の度合いを判定される対象膜材の樹脂により形成された面である判定対象面を所定の撮像装置によって撮像することによって得られた基礎画像についての基礎画像データを受付ける受付け過程と、前記受付け過程で受付けた基礎画像データから、当該基礎画像データの基になった基礎画像中の適当な範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色に関連した情報である色情報が、複数の表色系について一組とされたものである組色情報を生成する色分析過程と、前記対象膜材と同種の膜材に対して計測を行うことによって実際に得られた、当該膜材の強度についての情報である強度情報と、当該膜材の樹脂により形成された面を所定の撮像装置によって撮像して得られた画像についての画像データから、当該画像データの基になった画像の適当な範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色に関連した情報である基準色情報が、前記色分析過程で用いるのと同じ複数の表色系について一組として生成された基準組色情報とを、様々な強度について、前記強度情報と、前記基準組色情報とを互いに対応付けた状態で記録手段に複数記録する記録過程と、前記色分析過程で生成した前記組色情報と、前記記録手段に記録されている複数の前記基準組色情報とを、前記組色情報に含まれる複数の前記色情報と、前記基準組色情報に含まれる複数の前記基準色情報との類似性により比較することで、前記組色情報と最も近い前記基準組色情報か、又は前記組色情報と同じであると判断できる前記基準組色情報に基づいて求められる組色情報を決定するとともに、前記組色情報と最も近い前記基準組色情報を決定した場合にはその基準組色情報と対応付けられている前記強度情報を用いて、前記組色情報と同じであると判断できる組色情報を決定した場合にはその組色情報に対応付けられると推定される強度情報を用いて、前記対象膜材の強度の判定結果を決定する決定過程である。
【0010】
第1発明の判定装置と同様の作用効果を、以下のコンピュータプログラムによっても得ることができる。このコンピュータプログラムを用いれば、汎用のコンピュータを、第1発明の判定装置として機能させられる。第1発明におけるコンピュータプログラムは、例えば以下のようなものとされる。
第1発明におけるコンピュータプログラムは、コンピュータを、少なくとも片面が樹脂により形成された膜材の強度の劣化の度合いを判定する判定装置として機能させるためのコンピュータプログラムである。
そして、このコンピュータプログラムは、前記コンピュータを、強度の劣化の度合いを判定される対象膜材の樹脂により形成された面である判定対象面を所定の撮像装置によって撮像することによって得られた基礎画像についての基礎画像データを受付ける受付け手段、前記受付け手段が受付けた基礎画像データから、当該基礎画像データの基になった基礎画像中の適当な範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色に関連した情報である色情報が、複数の表色系について一組とされたものである組色情報を生成する色分析手段、前記対象膜材と同種の膜材に対して計測を行うことによって実際に得られた、当該膜材の強度についての情報である強度情報と、当該膜材の樹脂により形成された面を所定の撮像装置によって撮像して得られた画像についての画像データから、当該画像データの基になった画像の適当な範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色に関連した情報である基準色情報が、前記色分析手段が用いるのと同じ複数の表色系について一組として生成された基準組色情報とを、様々な強度について、前記強度情報と、前記基準組色情報とを互いに対応付けた状態で複数記録した記録手段、前記色分析手段が生成した前記組色情報と、前記記録手段に記録されている複数の前記基準組色情報とを、前記組色情報に含まれる複数の前記色情報と、前記基準組色情報に含まれる複数の前記基準色情報との類似性により比較することで、前記組色情報と最も近い前記基準組色情報か、又は前記組色情報と同じであると判断できる前記基準組色情報に基づいて求められる組色情報を決定するとともに、前記組色情報と最も近い前記基準組色情報を決定した場合にはその基準組色情報と対応付けられている前記強度情報を用いて、前記組色情報と同じであると判断できる組色情報を決定した場合にはその組色情報に対応付けられると推定される強度情報を用いて、前記対象膜材の強度の判定結果を決定する決定手段、として機能させるためのものとされる。
【0011】
第2発明は、膜材の強度と強い相関のある膜材の判定対象面上の色というパラメータに代えて、膜材の強度と強い相関のある膜材の判定対象面上に現れた形態的特徴というパラメータを用いて、膜材の現時点の強度を判定する技術に関する。
【0012】
本願の第2発明は、まず、以下のような判定装置として具現化される。
第2発明は、繊維により膜状に形成された基材の少なくとも片面を樹脂で被覆して形成された膜材の強度の劣化の度合いを判定する判定装置である。
そして、この判定装置は、強度の劣化の度合いを判定される対象膜材の樹脂により形成された面である判定対象面を所定の撮像装置によって撮像することによって得られた基礎画像についての基礎画像データを受付ける受付け手段と、前記受付け手段が受付けた基礎画像データから、当該基礎画像データの基になった基礎画像中に映っている前記樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している前記繊維とについての特徴を定量化した情報である形態情報を生成する形態分析手段と、前記対象膜材と同種の膜材に対して計測を行うことによって実際に得られた、当該膜材の強度についての情報である強度情報と、当該膜材の樹脂により形成された面を所定の撮像装置によって撮像して得られた画像についての画像データから、当該画像データの基になった画像中に映っている樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している繊維とについての特徴を定量化して生成した情報である基準形態情報とを、様々な強度について、前記強度情報と、前記基準形態情報とを互いに対応付けた状態で複数記録した記録手段と、前記形態分析手段が生成した前記形態情報と、前記記録手段に記録されている複数の前記基準形態情報とを比較することにより、前記形態情報に最も近い前記基準形態情報か、又は前記形態情報と同じであると判断できる前記基準形態情報に基づいて求められる形態情報を決定するとともに、前記形態情報に最も近い前記基準形態情報を決定した場合にはその基準形態情報と対応付けられている前記強度情報を用いて、前記形態情報と同じであると判断できる形態情報を決定した場合にはその形態情報に対応付けられると推定される強度情報を用いて、前記対象膜材の強度の判定結果を決定する決定手段と、を備えている。
第2発明による判定装置は、第1発明による判定装置と基本的な部分では共通する。
第2発明による判定装置は、第1発明の色分析手段に代えて、形態分析手段を有する。形態分析手段は、受付け手段が受付けた基礎画像データから、当該基礎画像データの基になった基礎画像中に映っている樹脂と、樹脂に生じたクラックと、樹脂から露出している繊維とについての特徴を定量化した情報である形態情報を生成するものとされている。
また、第2発明における記録手段は、強度情報と、基準形態情報を記録している。第2発明の決定手段は、基礎画像データから強度情報を決定するに当たり、形態分析手段が生成した形態情報と、記録手段に記録されていた複数の基準形態情報とを比較することにより、前記形態情報に最も近い前記基準形態情報か、又は前記形態情報と同じであると判断できる前記基準形態情報に基づいて求められる形態情報を決定するとともに、前記形態情報に最も近い前記基準形態情報を決定した場合にはその基準形態情報と対応付けられている前記強度情報を用いて、前記形態情報と同じであると判断できる形態情報を決定した場合にはその形態情報に対応付けられると推定される強度情報を用いて、対象膜材の強度の判定結果を決定するようにしている。
この判定装置では、結果的に、人に頼らずに、基礎画像と、実際に強度の落ちた膜材を撮像して得た画像の対比を行うことになるので、正確性、客観性を担保しつつ、非破壊で、建造物等に用いられている膜材の現時点での強度を判定できるようになる。
なお、第2発明は、第1発明と組合わせて用いることもできる。
その場合、判定装置には、色分析手段と形態分析手段の双方が含まれることになり、記録手段には、基準組色情報と、基準形態情報と、強度情報とが記録されることになる。また、決定手段は、第1発明の決定手段が行う処理と第2発明の決定手段が行う処理の双方を実行するものとなる。ここで、第1発明の決定手段が行う処理と第2発明の決定手段が行う処理は、独立したものとすることもできるし、一方を主他方を主の判定結果を修正するための従としたものとすることもできるし、組色情報及び形態情報と基準組色情報及び基準形態情報の類似性をまとめて判定するものとすることもできる。
【0013】
第2発明の判定装置と同様の作用効果を、以下の判定システムによっても得ることができる。第2発明における判定システムは、撮像手段を含むものであり、例えば以下のようなものとされる。
第2発明による判定システムは、繊維により膜状に形成された基材の少なくとも片面を樹脂で被覆して形成された膜材の強度の劣化の度合いを判定する判定システムである。
そして、この判定システムは、強度の劣化の度合いを判定される対象膜材の樹脂により形成された面である判定対象面を撮像して基礎画像を得る撮像手段と、前記撮像手段により得られた前記基礎画像についての基礎画像データを、前記撮像手段から直接、又は他の機器を介して受付ける受付け手段と、前記受付け手段が受付けた基礎画像データから、当該基礎画像データの基になった基礎画像中に映っている前記樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している前記繊維とについての特徴を定量化した情報である形態情報を生成する形態分析手段と、前記対象膜材と同種の膜材に対して計測を行うことによって実際に得られた、当該膜材の強度についての情報である強度情報と、当該膜材の樹脂により形成された面を所定の撮像装置によって撮像して得られた画像についての画像データから、当該画像データの基になった画像中に映っている樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している繊維とについての特徴を定量化して生成した情報である基準形態情報とを、様々な強度について、前記強度情報と、前記基準形態情報とを互いに対応付けた状態で複数記録した記録手段と、前記形態分析手段が生成した前記形態情報と、前記記録手段に記録されている複数の前記基準形態情報とを比較することにより、前記形態情報に最も近い前記基準形態情報か、又は前記形態情報と同じであると判断できる前記基準形態情報に基づいて求められる形態情報を決定するとともに、前記形態情報に最も近い前記基準形態情報を決定した場合にはその基準形態情報と対応付けられている前記強度情報を用いて、前記形態情報と同じであると判断できる形態情報を決定した場合にはその形態情報に対応付けられると推定される強度情報を用いて、前記対象膜材の強度の判定結果を決定する決定手段と、を備えている。
【0014】
第2発明の判定装置と同様の作用効果を、以下の判定方法によっても得ることができる。第2発明における判定方法は、例えば以下のようなものとされる。
第2発明の判定方法は、繊維により膜状に形成された基材の少なくとも片面を樹脂で被覆して形成された膜材の強度の劣化の度合いを判定する判定装置にて実行される判定方法であって、当該判定装置が実行する、以下の過程を含む。
その過程は、強度の劣化の度合いを判定される対象膜材の樹脂により形成された面である判定対象面を所定の撮像装置によって撮像することによって得られた基礎画像についての基礎画像データを受付ける受付け過程と、前記受付け過程で受付けた基礎画像データから、当該基礎画像データの基になった基礎画像中に映っている前記樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している前記繊維とについての特徴を定量化した情報である形態情報を生成する形態分析過程と、前記対象膜材と同種の膜材に対して計測を行うことによって実際に得られた、当該膜材の強度についての情報である強度情報と、当該膜材の樹脂により形成された面を所定の撮像装置によって撮像して得られた画像についての画像データから、当該画像データの基になった画像中に映っている樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している繊維とについての特徴を定量化して生成した情報である基準形態情報とを、様々な強度について、前記強度情報と、前記基準形態情報とを互いに対応付けた状態で記録手段に複数記録する記録過程と、前記形態分析過程で生成した前記形態情報と、前記記録手段に記録されている複数の前記基準形態情報とを比較することにより、前記形態情報に最も近い前記基準形態情報か、又は前記形態情報と同じであると判断できる前記基準形態情報に基づいて求められる形態情報を決定するとともに、前記形態情報に最も近い前記基準形態情報を決定した場合にはその基準形態情報と対応付けられている前記強度情報を用いて、前記形態情報と同じであると判断できる形態情報を決定した場合にはその形態情報に対応付けられると推定される強度情報を用いて、前記対象膜材の強度の判定結果を決定する決定過程である。
【0015】
第2発明の判定装置と同様の作用効果を、以下のコンピュータプログラムによっても得ることができる。このコンピュータプログラムを用いれば、汎用のコンピュータを、第2発明の判定装置として機能させられる。第2発明におけるコンピュータプログラムは、例えば以下のようなものとされる。
第2発明におけるコンピュータプログラムは、コンピュータを、繊維により膜状に形成された基材の少なくとも片面を樹脂で被覆して形成された膜材の強度の劣化の度合いを判定する判定装置として機能させるためのコンピュータプログラムである。
そして、このコンピュータプログラムは、前記コンピュータを、強度の劣化の度合いを判定される対象膜材の樹脂により形成された面である判定対象面を所定の撮像装置によって撮像することによって得られた基礎画像についての基礎画像データを受付ける受付け手段、前記受付け手段が受付けた基礎画像データから、当該基礎画像データの基になった基礎画像中に映っている前記樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している前記繊維とについての特徴を定量化した情報である形態情報を生成する形態分析手段、前記対象膜材と同種の膜材に対して計測を行うことによって実際に得られた、当該膜材の強度についての情報である強度情報と、当該膜材の樹脂により形成された面を所定の撮像装置によって撮像して得られた画像についての画像データから、当該画像データの基になった画像中に映っている樹脂と、樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している繊維とについての特徴を定量化して生成した情報である基準形態情報とを、様々な強度について、前記強度情報と、前記基準形態情報とを互いに対応付けた状態で複数記録した記録手段、前記形態分析手段が生成した前記形態情報と、前記記録手段に記録されている複数の前記基準形態情報とを比較することにより、前記形態情報に最も近い前記基準形態情報か、又は前記形態情報と同じであると判断できる前記基準形態情報に基づいて求められる形態情報を決定するとともに、前記形態情報に最も近い前記基準形態情報を決定した場合にはその基準形態情報と対応付けられている前記強度情報を用いて、前記形態情報と同じであると判断できる形態情報を決定した場合にはその形態情報に対応付けられると推定される強度情報を用いて、前記対象膜材の強度の判定結果を決定する決定手段、として機能させるためのものとされる。
【0016】
第1発明における前記色分析手段は、前記色情報を、基礎画像中の前記範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色についての情報を統計的に処理して得られた指標である色指標を含むものとして生成するようなものとすることができる。つまり、色情報は、そのような色指標を含むものとすることができる。
第1発明における前記色分析手段は、前記色情報を、前記色指標を複数種類含むものとして生成するようになっていてもよい。つまり、色情報に含まれる色指標は、複数であってもよい。もちろん、色情報に含まれる色指標が1種類でも構わない。
前記色分析手段は、前記色情報を、前記色指標として、基礎画像中の前記範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色についての、分散、最頻値、平均値、最大値、最小値、中央値、のうちの少なくとも一つを含むものとして生成するようになっていても構わない。これ以外の色指標を、色分析手段が生成するようになっていても構わない。
なお、記録手段に記録される基準組色情報に含まれる基準色情報は、色分析手段が生成する色情報と比較できるように、色分析手段が色情報に色指標を含めるのであれば、それと同じ種類の色指標を含むものとされる。
【0017】
第2発明での形態分析手段は、以下のようなものとすることができる。
前記対象膜材の前記基材が、繊維を縦横にわたして織られたものとされている場合、前記形態分析手段は、前記形態情報を、前記基礎画像中に映っている縦方向の繊維と横方向の繊維とが交わる交点を頂点とするか、又は縦方向の繊維と横方向の繊維とが交わる交点を中心とする、縦横方向で互いに隣接する複数の矩形領域に分割するとともに、各矩形領域中に映っている前記樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している前記繊維のそれぞれを認識し、その認識結果に基づいて前記樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している前記繊維とについての特徴を定量化して形態情報を生成するようになっていてもよい。縦方向の繊維と横方向の繊維とが交わる交点は、繊維が重なることにより基材の厚さが増す部分であり、それ故磨耗した樹脂の下にあった基材(繊維)が露出することの多い部分である。そのような特徴点を基準となる点として用いることにより、対象膜材の形態的特徴を定量化するための手掛かり(指標又はパラメータ。)を作りやすくなる。
形態分析手段は、縦方向の繊維と横方向の繊維が交わる交点の位置をどのように決定するようになっていてもよい。例えば、前記形態分析手段は、前記基礎画像のうち前記繊維の映っている領域である繊維領域を検出し、検出したその繊維領域の中で縦横にわたされた繊維の縦向き、横向きのそれぞれと同じ向きで最も長さの長くなる繊維の横方向における位置、及び繊維の縦方向における位置を検出し、それらの交わる位置を、その繊維領域における縦方向の繊維と横方向の繊維が交わる交点の位置であると決定するようになっていてもよい。形態分析手段が分析する基礎画像は、形態分析手段により、その基礎画像中に映っているものの認識が終わった後(例えば、基礎画像中のどこに樹脂が、どこに繊維が映っているかということについての認識が終わった後)のものであってもよい。
対象膜材の前記基材が、繊維を縦横にわたして織られたものとされている場合、前記形態分析手段は、前記形態情報を、以下のようなものとして生成してもよい。形態情報は、前記繊維に関しては、(複数の前記矩形領域のそれぞれに含まれている前記繊維領域の面積の平均値)と、(複数の前記矩形領域のそれぞれに含まれている前記繊維領域の面積の標準偏差)と、(複数の前記矩形領域のうち、前記繊維領域の面積が最大のものの当該面積)と、(前記繊維領域のそれぞれの縦方向の長さの平均値と横方向の長さの平均値の少なくとも一方)と、(前記繊維領域のそれぞれの縦方向の長さの最大値と横方向の長さの最大値の少なくとも一方)と、(複数の前記矩形領域のうち前記繊維が映っているものの数)と、の少なくとも一つを認識した結果に基づいて、前記樹脂と前記クラックに関しては、(前記基礎画像の所定の範囲である基準範囲に含まれている前記クラックの数/前記基準範囲に含まれている、前記クラックが映っている領域であるクラック領域の面積の和と、前記樹脂が映っている領域である樹脂領域の面積の和、の和)と、(前記基準範囲に含まれている前記クラック領域の面積の和/前記基準範囲に含まれている、前記クラック領域の面積の和と、前記樹脂領域の面積の和、の和)と、の少なくとも一つを認識した結果に基づいて、生成されるようになっていてもよい。カッコで囲まれたものそれぞれは、対象膜材の形態的特徴を定量化するための指標となり得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
この実施形態において具現化される判定システムは、図1に示す如きものである。
この判定システムは、判定装置100と、カメラ200とを含んで構成されている。
判定装置100は、汎用的なコンピュータにより構成されている。判定装置100は、この実施形態ではCRTディスプレイとされたディスプレイ101と、この実施形態ではキーボードとマウスにより構成された入力装置102を備えている。
判定装置100の詳細は、後述する。
【0019】
カメラ200は、本発明の撮像装置乃至撮像手段に相当するものであり、この実施形態では、図1に示したような長細い形状のマイクロスコープとされている。このようなマイクロスコープの例として、スカラ株式会社のSZ−7000(商標)を挙げることができる。
このカメラ200は、手持ち可能な細長いケース210を備えている。ケース210の先端には孔211が開いている。この孔211を撮像対象物に当接させた状態で、このカメラ200は撮像を行う。ケース210には、シャッターボタン212が設けられており、シャッターボタン212を操作することにより、静止画の撮像を行える。
ケース210の中には、図示を省略するが、撮像を行う例えばCCDである撮像素子と、撮像対象物からの像光を撮像対象物の拡大撮像を行えるようにして撮像素子に導く光学系と、撮像対象物に孔211を介して照明光を照射する例えばLEDである光源と、を内蔵している。光学系の焦点が、ケース210の孔211の部分に合うようにされているので、このカメラ200では、先端の孔211を撮像対象物に当接させるだけで焦点の合った状態での撮像対象物の拡大撮像が行えるようになっている。このようなカメラ200は、手振れを押さえつつ拡大画像を撮像できるのに加え、それが内蔵の光源からの光のみを照明光として撮像を行うため撮像条件を規定の条件に一定に保てる、という点で、この判定システムとの相性がよい。
カメラ200は、後述するようにして強度の判定の対象となる膜材(対象膜材)の樹脂で形成されている面である判定対象面を撮像することにより画像データ(本発明における基礎画像データに相当する。以下、基礎画像データという。)を生成する。
なお、この実施形態における対象膜材300は、図2(A)の断面図、図2(B)の分解図に示されたように、この実施形態ではポリエステル繊維である繊維310を縦横に織って形成された基材311の両面を、この実施形態ではPVC(ポリ塩化ビニル)である樹脂320により被覆したものとされている。なお、繊維310、樹脂320の素材は他のものでもよく、樹脂320は基材311の片面のみを覆っていても構わない。判定対象面は、この実施形態の対象膜材300は両面が樹脂320で覆われているので対象膜材300の両面となるが、対象膜材300の一方側の面しか樹脂320で覆われていないのであれば、樹脂320で覆われた面のみが判定対象面となる。
なお、基礎画像データは、色についての情報を含む(つまり、基礎画像はカラー画像である。)。基礎画像データは、また、この実施形態では、140倍と、40倍の2種類の倍率のいずれかの倍率で対象膜材300を撮像した基礎画像についてのものであり、横608ピクセル、縦464ピクセルの大きさとされる。基礎画像に映りこむ範囲は、140倍の場合は凡そ幅(基礎画像の長辺方向)2mm、40倍の場合は凡そ幅6mmとなる。倍率の変更は、例えば、ケース210に内蔵の光学系の交換により行うことができる。なお、基礎画像は、縦横にわたされた繊維310の方向にその縦横が合うように撮像する。ただし、基礎画像をそのように撮像しないことも可能である。その場合には、判定装置100で基礎画像をそのような向きにするような修正を行う。
カメラ200は、例えば、USBケーブル220により、判定装置100に有線で接続可能となっており、基礎画像データを判定装置100に送ることができるようになっている。
もっとも、カメラ200は、基礎画像データを、例えば赤外線により無線で判定装置100に送るようになっていてもよい。また、カメラ200が、メモリカードなどの着脱自在な記録媒体を備えている場合、その記録媒体を介して判定装置100に基礎画像データを送るようになっていてもよい。
なお、基礎画像データは、カメラ200が生成する必要は必ずしもない。カメラ200が銀塩カメラである場合には、カメラで撮像したフィルムを現像した画像をスキャナ等で読取ることにより基礎画像データを生成し、それを判定装置100に送るようにしてもよい。
【0020】
次に判定装置100について説明する。
判定装置100となるコンピュータは、ディスクドライブを備えている。そしてそのディスクドライブに、CD−ROMやDVD−ROMなどにより構成される記録媒体Rを挿入し、その記録媒体Rに記録されているプログラムを読み込ませることができるようになっている。判定装置100は、上述の過程によって本発明によるプログラムをインストールされ、本発明の判定装置100に求められる各機能を有するものとなる。但し、上述のプログラムは、記録媒体Rを介して判定装置100にインストールされる必要は必ずしもなく、インターネット等のネットワークを介しての配信により判定装置100にインストールされるようにしても構わない。なお、プログラムの一部(或いはプログラムを実行するために必要となるデータの一部)が判定装置100にインストールされないようにすることもできる。その場合、判定装置100は、ディスクドライブに挿入した状態の記録媒体Rから必要なデータを読み出しながら以下の処理を実行することになる。
また、このプログラムは、それ単体でコンピュータに本発明の判定装置100としての機能を奏させることができるようなものでもよく、それとコンピュータにインストールされているOS、或いはその他のプログラムとの協働により、コンピュータに本発明の判定装置100としての機能を奏させるようなものとなっていても良い。
【0021】
判定装置100のハードウエア構成を、図3に示す。
判定装置100は、この実施形態では、CPU(central processing unit)111、ROM(read only memory)112、HDD(hard disk drive)113、RAM(random access memory)114、インタフェイス115と、これらを接続するバス116とを備えている。
ROM112、あるいはHDD113には、OS及び上述した本発明によるプログラム、及び所定のデータ(これには、後述する基準組色情報、基準形態情報、及び強度情報が含まれる。)が記録されている。CPU111は、判定装置100全体の制御を行うものであり、ROM112、あるいはHDD113に記憶されたプログラムやデータに基づいて、後述する処理を実行するものである。RAM114は、CPU111が処理を行う際の作業用記憶領域として用いられる。
インタフェイス115は、判定装置100と外部との間でデータのやり取りを行うための窓口となる。インタフェイス115は、入力装置102からの入力を受付けるようになっている。また、カメラ200から基礎画像データを受付けるようになっている。それが可能なように、インタフェイス115は、USBケーブル220の端部にある接続端子を受付けるための接続端子を備えている。インタフェイス115は、また、ディスクドライブから本発明におけるプログラムを受付けられるようになっている。インタフェイス115は、また、ディスプレイ101に画像を表示させるためのディスプレイ制御データをディスプレイ101に送るようになっている。ディスプレイ制御データを受付けたディスプレイ101は、それに基づいて画像を表示する。
【0022】
上述のプログラムの実行により、本発明の判定装置100が内蔵するCPU111は、以下の機能ブロックを形成する。
つまり、図4に示したように、この判定装置100の内部には、データ受付部121と、データ処理部122と、データ出力部123とが形成される。
【0023】
データ受付部121は、カメラ200で撮像されることにより生成された基礎画像データを受け付けるものである。この実施形態におけるデータ受付部121は、カメラ200と判定装置100とを繋ぐUSBケーブル220、インタフェイス115を介してかかる基礎画像データを受け付けるようになっている。また、データ受付部121は、入力装置102からの入力を、インタフェイス115を介して受付けるようになっている。
データ受付部121は、基礎画像データ、又は入力装置102からの入力を受付けた場合には、その内容を解析してデータ処理部122へと送るようになっている。
【0024】
データ処理部122は、基礎画像データに基づいて、対象膜材の強度の決定を行うものである。対象膜材の強度についての決定を行ったら、データ処理部122は決定されたその強度についての情報をディスプレイ101に表示させるため、その強度についての情報をデータ出力部123に送るようになっている。データ出力部123は、そのデータに基づいて、ディスプレイ101に強度についての情報を表示させるためのディスプレイ制御データを生成するようになっており、インタフェイス115を介してディスプレイ101にディスプレイ制御データを送る。これを受付けたディスプレイ101は、対象膜材の強度についての情報を含む画像を表示することになる。
【0025】
データ処理部122は、より詳細には、図5に表示したように形成される。
データ処理部122は、制御部122A、色分析部122B、形態分析部122C、判定部122D、記録部122Eを備えている。
【0026】
制御部122Aは、基礎画像データに基づいて、対象膜材の強度の決定を行う処理の全体を統括するものである。制御部122Aの制御下で、色分析部122B、形態分析部122C、判定部122Dは以下の処理を行う。例えば、この実施形態の判定装置100は3つのモードで、対象膜材の強度の判定を行えるようになっているが、いずれのモードで対象膜材の強度の判定を行うかという制御を、制御部122Aは行う。本実施形態の判定装置100が実行する3つのモードは、基礎画像データから生成した情報として組色情報(後述する)のみを用いて膜材の現在の強度の判定を行うモード(以下、「色モード」という。)と、基礎画像データから生成した情報として形態情報(後述する)のみを用いて膜材の現在の強度の判定を行うモード(以下、「形態モード」という。)と、基礎画像データから生成した情報として組色情報と形態情報の双方を用いて膜材の現在の強度の判定を行うモード(以下、「色/形態モード」という。)である。なお、3つのモードのいずれを実行するかは、入力装置102からデータ受付部121を介して送られて来た入力の結果に応じて、制御部122Aが決定する。制御部122Aは、色モードを実行すると決定した場合には、色分析部122Bと判定部122Dに、形態モードを実行すると決定した場合には形態分析部122Cと判定部122Dに、色/形態モードを実行すると決定した場合には、色分析部122Bと形態分析部122Cと判定部122Dに、判定を行うための処理を行えとの指示を送るようになっている。
【0027】
色分析部122Bは、データ受付部121を介して基礎画像データを受付け、受付けた基礎画像データに基づいて、組色情報を生成するものである。
色分析部122Bは、上述の指示を制御部122Aから受けた場合に、組色情報を、以下のようにして生成する。
組色情報を生成するには、まず、基礎画像中の適当な範囲を取出す。上述したように、この実施形態では、基礎画像に映り込んでいる判定対象面の幅は、倍率が140倍の場合は凡そ2mm、倍率が40倍の場合は凡そ6mmとされている。この実施形態では、必ずしもその限りではないが、基礎画像中の全範囲を、取出す対象としている。もっとも、基礎画像中の左側から幅1mm分等の基礎画像の一部を、基礎画像から取出す対象とする「適当な範囲」としても構わない。
次いで、その範囲内にあるすべての画素に割当てられているその画素が表示する色を決定するための情報(以下、「画素値」という。)を抽出する。この画素値の抽出は、複数の表色系に対して行う。この実施形態では、RGB、HSV、XYZ、Lの4つの表色系を用いるが、用いられる表色系は必ずしも4種類でなくてもよく、また、上述した4種類の表色系以外の表色系を用いても構わない。なお、用いる表色系は、例えば、インタフェイス115、データ受付部121を介して受付けた入力装置102からの入力により、変更できるようになっていてもよい。この入力は、例えば、制御部122Aが受付け、それを受付けた制御部122Aが、この表色系を用いよという指示を色分析部122Bに送り、これを受付けた色分析部122Bにその表色系を使用させるようにすることができる。
次いで、その範囲内にあるすべての画素に割当てられていた画素値の抽出を4つの表色系について終えたら、各表色系の画素値を統計的に処理して、以下のような色指標を生成する。必ずしもそうである必要はないが、この実施形態では、色指標は複数とされる。
この実施形態で用いられる色指標は、画素値の、分散、最頻値、平均値、最大値、最小値、中央値、の6種類とされる。色指標は、これには限られず、他のものを含んでいてもよいし、また、これらのうちの幾つかを欠いてもよい。このようにして、複数の色指標が4種類の表色系のそれぞれについて生成されることになる。なお、用いる色指標は、例えば、インタフェイス115、データ受付部121を介して受付けた入力装置102からの入力により、変更できるようになっていてもよい。この入力は、例えば、制御部122Aが受付け、それを受付けた制御部122Aが、この色指標を用いよという指示を色分析部122Bに送り、これを受付けた色分析部122Bにその色指標を使用させるようにすることができる。
ある表色系についての色指標をまとめたものが、本発明における色情報である。この実施形態では、RGB、HSV、XYZ、Lの4つの表色系のそれぞれに対応する色情報(つまり、4種類の色情報)が用いられる。そして、この4種類の色情報をまとめたものが、本発明における組色情報である。
この実施形態では、このように、それぞれが6種類の色指標を含む4種類の色情報の集合として、組色情報を生成する。膜材が使用により劣化しその強度が落ちた場合には膜材の表面の色が変化するため、この組色情報は、膜材の強度と相関関係を有する。
色分析部122Bは、生成した組色情報(或いはそれについてのデータ)を、判定部122Dに送るようになっている。
【0028】
形態分析部122Cは、データ受付部121を介して基礎画像データを受付け、受付けた基礎画像データに基づいて、形態情報を生成するものである。
形態情報は、基礎画像データの基になった基礎画像中に映っている対象膜材300の樹脂320と、樹脂320に生じたクラックと、樹脂320から露出している繊維310とについての特徴を定量化した情報である。繊維310は、経年劣化等を原因とする樹脂320の磨耗により膜材300の表面に表れる。クラックは、対象膜材300上の樹脂320の上に、経年劣化等を原因として現れる。これらは、対象膜材の強度の低下の程度と強い相関があるため、形態情報は、膜材の強度の低下と強い相関関係を有する。
形態分析部122Cは、上述の指示を制御部122Aから受けた場合に、形態情報を、以下のようにして生成する。
【0029】
形態分析部122Cは、基礎画像に対して領域分割の処理を行うことにより、基礎画像から、基礎画像に映っている樹脂320、クラック、樹脂320から露出している繊維310を認識する。領域分割は、各画素が樹脂320、クラック、繊維310の何を表しているかを判別する(クラスタリングする)ことにより行う。クラスタリング手法としては、どのようなものを用いてもよい。教師あり判別手法、教師無し判別手法のいずれを用いても構わない。教師あり判別手法としては、例えば、K最近傍決定則(K Nearest Neighbor Method)や、決定木法(Decision tree)を用いることができる。教師無し判別法としては、例えば、k-means法を用いることができる。
K最近傍決定則を用いる場合には、クラスタリングの対象となる画素の画素値をクラスタリングするために、それらの各々が樹脂320、クラック、繊維310の何を表しているかが判っている多数の既知の画素値を用いる。画素値を、所定の座標空間に配し、対象となる画素の画素値と距離的に近いものを既知の画素値の中から適当な数(例えば3つ)選び出し、それらが樹脂320、クラック、繊維310のどれに該当するかということにより、対象となる画素を樹脂320、クラック、繊維310のいずれかにクラスタリングする。なお、選び出した画素が該当するものが樹脂320、クラック、繊維310のいずれにも集中しなかった場合、この実施形態では、多数決により、その画素が樹脂320、クラック、繊維310のどれに該当するかを決定する。
決定木法は、複数の条件を設定し、それら条件を満たすか満たさないかという解を求め、その解の組み合わせの別により、対象をクラスタリングする方法である。この実施形態の場合では、各画素の画素値を、組色情報を用いた場合と同様に、複数の表色系により求め、複数の表色系に含まれる3つの要素(例えば、R、G、B)のそれぞれに対して過去の経験から設定された所定の閾値をその画素の画素値が超えるか否か、ということに対する解の組み合わせにより、対象となる画素が樹脂320、クラック、繊維310のどれに該当するかを決定する。これらに加えて、或いは代えて、各表色系で表現した場合の画素値の和や差などの適当な条件を、上述の複数の条件として用いることができる。
k-means法は、サンプルを予め定めた数の複数のクラスタにクラスタリングする手法であり、クラスタの数のみが最初から決定されている場合に用いられる、データマイニングの分野等で最近用いられている手法である。この実施形態では、サンプルを3つ以上のクラスタにクラスタリングすることとしている。必ずしもこの限りではないが、この実施形態では、樹脂320、クラック、繊維310の3つを、クラスタとして選択することとする。この方法では、まず、多数のサンプルが存在する所定の仮想空間内に、クラスタの数(この実施形態では3つ)に対応する中心サンプルを適当に設定する。そして、多数のクラスタを、それらとの距離が最も近い中心サンプルにクラスタリングする。次いで、各クラスタにおいて、そのクラスタにクラスタリングされたサンプルの中心位置を求める。そして、それを新たな中心サンプルとする。という処理を、中心サンプルが収束して動かなくなるまで繰り返す。それにより、各サンプルが予め定めた数のクラスタに一気にクラスタリングされる。この実施形態では、各画素の画素値をサンプルとして、k-means法を実行する。
上述のいずれかの方法でクラスタリングを行い、この実施形態では、基礎画像の画像認識を行い、基礎画像のどこに何が映っているかということを把握する。
次いで、この実施形態では、形態分析部122Cは、基礎画像の分割を行う。基礎画像の分割は、この実施形態では、その基礎画像中に映っている縦方向の繊維と横方向の繊維とが交わる交点を頂点とする縦横方向で互いに隣接する複数の矩形領域か、又は縦方向の繊維と横方向の繊維とが交わる交点を中心とする、縦横方向で互いに隣接する複数の矩形領域に基礎画像を分割することにより行われる。この実施形態では、縦方向の繊維と横方向の繊維とが交わる交点を中心とする、縦横方向で互いに隣接する複数の矩形領域に基礎画像を分割する。このような処理を行う場合、どのようにして縦方向の繊維と横方向の繊維とが交わる交点を求めるかについて、以下説明する。
縦方向の繊維と横方向の繊維とが交わる交点を求めるには、まず、画像の二値化を行う。二値化は、基礎画像のうち、画像認識する適当な範囲(この実施形態では、この「適当な範囲」は、基礎画像の全体とする。)について、繊維と認識した領域と背景を、白黒に分ける。この実施形態では、繊維と認識された領域を白、背景を黒として表された二値化画像に基礎画像を変換する。なお、この実施形態では、白黒に変換された基礎画像に対して、ノイズ除去の目的で、二値画像における孔埋め、孤点除去の用途で知られた収縮、膨張の処理を2度ずつ行うようにしている。収縮、膨張の処理を行うことで、白黒画像は、図6に示したように変化する。なお、収縮と膨張の間に、例えばガウス関数を用いて、平準化の処理を行ってもよい。これにより、更にノイズ除去を行えるようになる。なお、二値化を行う際に用いる画像は、基礎画像そのものである必要はない。例えば、k-means法を用いて各画素を3つにクラスタリングした基礎画像(これは、三値化された基礎画像に相当する。)を二値化のために用いることができる。図6は、そのようなクラスタリングを行い、その後ガウス関数を用いての平準化を行った場合の画像の例を示す図である。
次いで、二値化して得られた画像のうち、まとまって白くされている部分のそれぞれに対して、以下の処理を行う。図7に、二値化された基礎画像中の繊維の領域(繊維領域F)の一例を示す。この繊維領域について、横方向(X座標方向)のそれぞれの場所で、繊維領域Fの縦方向(Y座標方向)の長さを求める。図7には、Y、Y、Yの3箇所のみで繊維領域Fの縦方向の長さを求める処理を行った様子を概念的に図示しているが、実際はこれをX座標方向のすべての位置で行う。対象膜材となる膜材300の構成は、この実施形態では、図2に示したようなものとなっており、縦横に走る繊維310が重なり合っている部分を覆う樹脂320の厚さは、他の部分よりも薄くなっている。それゆえ、このような対象膜材300の表面で繊維310が露出するのは、繊維310が重なり合っている部分であると予想できる。そのことを利用して、この実施形態では、ある繊維領域Fのうち、縦方向の長さが最も長い部分を、横糸の縦糸に重なっている部分だと決定する。同様に、ある繊維領域Fのうち、横方向の長さが最も長い部分を、縦糸の横糸に重なっている部分だと決定する。図7では、Yの部分で繊維領域Fの縦方向の長さが長くなっているので、そこの座標が横糸の縦糸に重なっている部分だと決定する。このような処理を、各繊維領域Fに対して行う。各繊維領域Fにおいて決定された横糸の縦糸に重なっている部分の座標、又は縦糸の横糸に重なっている部分の座標に誤差がある場合にはそれを修正して、基礎画像に映っている対象膜材300における縦横に走る繊維の交点を決定していく。そして、そのように決定された交点を中心とする矩形の領域に、二値化された基礎画像を分割する。分割された二値化後の基礎画像の例を、図8に示す。図8中の破線が、縦横に走る繊維が存在すると決定された位置を示す。図8中の実線が、縦横に走る繊維の交点を中心とする矩形に基礎画像を分割する境界線である。境界線で囲まれた範囲が、矩形領域である。
次いで、形態分析部122Cは、基礎画像に映っている樹脂320と、クラックと、繊維310についての特徴を定量化する。この定量化は、矩形領域に分割された基礎画像から行われる場合もあるし、そうでない場合もある。なお、矩形領域に分割された基礎画像には、二値化される前の基礎画像に、図8で示したような矩形領域を当てはめただけのものと、二値化された後の基礎画像に矩形領域を当てはめた図8で示したものの双方が含まれる。
この実施形態では、対象膜材300の形態の定量化を行うために用いるパラメータは、以下のようなものである。以下のパラメータは、必ずしもすべて用いられる必要はないし、以下のパラメータ以外のパラメータを用いることも可能である。どのパラメータを用いるかということは、入力装置102からの入力により可変にすることが可能である。
繊維についてのパラメータは以下のようなものとすることができる。
1. 複数の矩形領域のそれぞれに含まれている繊維領域(繊維の映っている領域)の面積の平均値
2. 複数の矩形領域のそれぞれに含まれている繊維領域の面積の標準偏差
3. 複数の矩形領域のうち、そこに含まれている繊維領域の面積が最大のものの当該面積
4. 複数の繊維領域のそれぞれの縦方向の長さの平均値と横方向の長さの平均値の少なくとも一方
5. 複数の繊維領域のうち、縦方向の長さが最大であるものの当該最大値と、横方向の長さが最大であるものの当該最大値の少なくとも一方
6. 複数の矩形領域のうち繊維領域を含むものの数
クラックと樹脂についてのパラメータは、以下のようなものとすることができる。
7. 基礎画像の所定の範囲である基準範囲(例えば、すべての矩形領域を合わせた範囲)に含まれているクラックの数/基準範囲に映っているすべてのクラック領域(クラックが映っている領域)の面積と、すべての樹脂領域(樹脂が映っている領域)の面積の総和
8.基準範囲に含まれているすべてのクラック領域の面積の和/基準範囲に映っているすべてのクラック領域の面積と、すべての樹脂領域の面積の総和
この実施形態では、上記1〜8のパラメータのうち、矩形領域に分割された基礎画像を用いなければならないのは、1、2、3及び6である。
なお、4、5のパラメータにおける繊維領域の縦方向の長さ、及び横方向の長さは、矩形領域の枠を無視して、基礎画像中の繊維があると判定された部分における繊維領域の縦方向、又は横方向の長さとして計測される。例えば、繊維領域の横方向の長さは、図8のt〜tのように計測される。なお、樹脂の磨耗が大きく当初(樹脂の磨耗が大きくない時期)は別個のものであった隣接する繊維領域同士が繋がっている場合(例えば、図8のt、tは、左右に隣接する繊維領域同士が繋がっている)、繋がっている繊維領域全体の長さを、繊維領域の長さと判定する。
このようにして、形態情報が生成される。
形態分析部122Cは、生成した形態情報(或いはそれについてのデータ)を、判定部122Dに送るようになっている。
【0030】
判定部122Dは、制御部122Aから受付けた上述の指示に基づいて、以下の処理を実行する。
判定部122Dは、色モードが実行される場合には、色分析部122Bから受取った組色情報を、記録部122Eから読出した基準組色情報(乃至そのデータ)と比較することで、対象膜材300の現時点における強度を判定する。
判定部122Dは、形態モードが実行される場合には、形態分析部122Cから受取った形態情報を、記録部122Eから読出した基準形態情報(乃至そのデータ)と比較することで、対象膜材300の現時点における強度を判定する。
判定部122Dは、色/形態モードが実行される場合には、色分析部122Bから受取った組色情報、及び形態分析部122Cから受取った形態情報を、記録部122Eから読出した基準組色情報及び基準形態情報(乃至それらのデータ)と比較することで、対象膜材300の現時点における強度を判定する。
記録部122Eに記録されているデータは、この判定装置100で強度の判定をなされることが予定されている複数種類の膜材についての以下のようなデータである。
記録部122Eには、強度が実際に落ちた膜材を試料として実際に計測することにより得られたその膜材の強度についての強度情報と、その試料を撮像して得た画像から、判定装置100が基礎画像から組色情報を作るのと同じ過程を経て生成された組色情報と同種の情報である基準組色情報とが、互いに関連付けた状態で記録されている。基準組色情報は、組色情報に含まれうるすべての色情報に対応する色情報(本発明における基準色情報)を含んでおり(つまり、色情報を作るのに用いられる可能性のあるすべての表色系でのデータを有しており)、また、組色情報に含まれうるすべての色指標についての情報を含んでいる。
記録部112Eには、また、強度が実際に落ちた膜材を試料と撮像した画像から、判定装置100が基礎画像から形態情報を作るのと同じ過程を経て生成された形態情報と同種の情報である基準形態情報が、強度情報と互いに関連付けた状態で記録されている。基準形態情報は、形態情報に含まれうるすべてのパラメータについての情報を含んでいる。
なお、この実施形態の強度情報は、対象膜材300の現時点の強度(この実施形態では、必ずしもそうする必要はないが、縦横方向の引張り強度の平均を膜材の強度と定義することにする。)が、対象膜材300が新品の場合と比較して何%残っているかという情報とされている。もっとも、強度情報は、必ずしもこのようなものでなくてもよく、例えば、対象膜材300の縦方向の引張り強度、横方向の引張り強度のいずれか、或いはこれら又は縦横方向の引張り強度の平均の値そのものでもよい。
【0031】
判定部122Dは、実行されるのが色モードである場合には、組色情報と、基準組色情報とを、組色情報に含まれていた複数の色情報のそれぞれを、基準組色情報に含まれていた複数の基準色情報のうちの同じ表色系で表現されたものと比較することにより、色分析部122Bが生成した組色情報が、複数の基準組色情報のどれに一番類似するか、又は色分析部122Bが生成した組色情報と同一と判断することのできる組色情報を決定する。色情報と、基準色情報との比較による基準組色情報又は組色情報の決定には、色情報と基準色情報に共通して含まれている色指標の情報を用いる。かかる決定には、多変量解析の一般手法である重回帰分析や、M5P (tree-based piecewise linear models)を用いることができる。
このようにして、判定部122Dは、色分析部122Bが生成した組色情報が、複数の基準組色情報のどれに一番類似するか、又は色分析部122Bが生成した組色情報と同一と判断することのできる組色情報が何かということを決定する。判定部122Dは、決定された基準組色情報と関連付けられている(又は上述の組色情報と関連付けられていると推定できる)強度情報そのもの、またはその強度情報に多少の補正を行うことにより得られた、対象膜材300のその時点における強度についての情報を、最終的に出力すべき最終情報として生成する。なお、組色情報と、基準組色情報とからの強度情報の決定は、組色情報に含まれる様々な色指標を説明変数とし、強度情報を目的情報とした場合の回帰分析として捉えることができる場合がある。
なお、判定部122Dは、2つ又はそれ以上の基準組色情報を色分析部122Bが生成した組色情報に類似するものとして決定し、それら複数の基準組色情報に対応付けられた複数の強度情報に基づいて(例えば、平均をとったり、中央値を求めたりして)、対象膜材の強度情報を決定してもよい。
判定部122Dは、実行されるのが形態モードである場合には、形態情報と、基準形態情報とを比較することにより、形態分析部122Cが生成した形態情報が、複数の基準形態情報のどれに一番類似するか、又は形態分析部122Cが生成した形態情報と同一と判断することのできる形態情報を決定する。形態情報と、基準形態情報との比較による基準形態情報又は形態情報の決定には、これらに共通して含まれている上述のパラメータについての情報を用いる。かかる決定には、多変量解析の一般手法である重回帰分析や、M5Pを用いることができる。
このようにして、判定部122Dは、形態分析部122Cが生成した形態情報が、複数の基準形態情報のどれに一番類似するか、又は形態分析部122Cが生成した形態情報と同一と判断することのできる形態情報が何かということを決定する。判定部122Dは、決定された基準形態情報と関連付けられている(又は上述の形態情報と関連付けられていると推定できる)強度情報そのもの、またはその強度情報に多少の補正を行うことにより得られた、対象膜材300のその時点における強度についての情報を、最終的に出力すべき最終情報として生成する。なお、形態情報と、基準形態情報とからの強度情報の決定は、形態情報に含まれる様々なパラメータを説明変数とし、強度情報を目的情報とした場合の回帰分析として捉えることができる場合がある。
なお、判定部122Dは、2つ又はそれ以上の基準形態情報を形態分析部122Cが生成した形態情報に類似するものとして決定し、それら複数の基準形態情報に対応付けられた複数の強度情報に基づいて(例えば、平均をとったり、中央値を求めたりして)、対象膜材の強度情報を決定してもよい。
判定部122Dは、実行されるのが色/形態モードである場合には、上述の色モードの場合の処理と、形態モードの場合の処理を併せて実行する。この場合、判定部122Dは、組色情報と、基準組色情報とを、色モードの場合と同様に比較する処理と、形態情報と基準形態情報とを形態モードの場合と同様に比較する処理とを別に行い、それら各処理で求められた強度情報に基づいて(例えば平均して)最終的な強度情報を決定してもよいし、又は組色情報と形態情報の組合せと、基準組色情報と基準形態情報の組合せとをまとめて比較して、色分析部122Bが生成した組色情報及び形態分析部122Cが生成した形態情報の組合わせと最も類似する、基準組色情報及び基準形態情報の組み合わせ、又は色分析部122Bが生成した組色情報及び形態分析部122Cが生成した形態情報の組合わせと同じと判断できる組色情報と形態情報の組合せを決定する。かかる決定には、多変量解析の一般手法である重回帰分析や、M5Pを用いることができる。
判定部122Dは、決定された基準組色情報及び基準形態情報の組み合わせと関連付けられている(又は上述の組色情報と形態情報の組合せと関連付けられていると推定できる)強度情報そのもの、またはその強度情報に対して補正を行う(例えば、複数の強度情報を平均する、或いはその複数の強度情報の中央値を取る)ことにより得られた、対象膜材300のその時点における強度についての情報を、最終的に出力すべき最終情報として生成する。なお、組色情報及び形態情報と、基準組色情報及び基準形態情報とからの強度情報の決定は、組色情報に含まれる色指標と形態情報に含まれるパラメータとを説明変数とし、強度情報を目的情報とした場合の回帰分析として捉えることができる場合がある。
いずれにせよ、最終情報は、データ出力部123に送られる。それを受付けたデータ出力部123は、最終情報に応じた画像をディスプレイ101に表示させるべくディスプレイ制御データを生成し、それをディスプレイ101に送る。これを受取ったディスプレイ101は、最終情報をユーザが視認できるような画像をディスプレイ101に表示する。
【0032】
上述した判定装置100を用いて、対象膜材300の現時点における強度の判定を行い、その後、その対象膜材300の現時点における強度を実際に計測して判定結果の正確性を調べた。その結果を、表1に示す。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態による判定システムの全体構成を概略的に示す斜視図。
【図2】図1に示した判定装置により強度の判定をされる対象膜材の一例の構成を示す図。
【図3】図1に示した判定装置のハードウエア構成を示す図。
【図4】図1に示した判定装置の内部に生成される機能ブロックを示すブロック図。
【図5】図4に示したデータ処理部の内部を示す機能ブロック図。
【図6】図1に示した判定装置で実行される二値化処理による基礎画像の変化の仕方を示す図。
【図7】図1に示した判定装置で実行される対象膜材の縦糸と横糸の交点を検出する処理の仕方を概念的に示す図。
【図8】図1に示した判定装置で生成された、矩形領域に分割された基礎画像の状態を概念的に示す図。
【符号の説明】
【0034】
100 判定装置
101 ディスプレイ
102 入力装置
121 データ受付部
122 データ処理部
122A 制御部
122B 色分析部
122C 形態分析部
122D 判定部
122E 記録部
123 データ出力部
200 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面が樹脂により形成された膜材の強度の劣化の度合いを判定する判定装置であって、
強度の劣化の度合いを判定される対象膜材の樹脂により形成された面である判定対象面を所定の撮像装置によって撮像することによって得られた基礎画像についての基礎画像データを受付ける受付け手段と、
前記受付け手段が受付けた基礎画像データから、当該基礎画像データの基になった基礎画像中の適当な範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色に関連した情報である色情報が、複数の表色系について一組とされたものである組色情報を生成する色分析手段と、
前記対象膜材と同種の膜材に対して計測を行うことによって実際に得られた、当該膜材の強度についての情報である強度情報と、当該膜材の樹脂により形成された面を所定の撮像装置によって撮像して得られた画像についての画像データから、当該画像データの基になった画像の適当な範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色に関連した情報である基準色情報が、前記色分析手段が用いるのと同じ複数の表色系について一組として生成された基準組色情報とを、様々な強度について、前記強度情報と、前記基準組色情報とを互いに対応付けた状態で複数記録した記録手段と、
前記色分析手段が生成した前記組色情報と、前記記録手段に記録されている複数の前記基準組色情報とを、前記組色情報に含まれる複数の前記色情報と、前記基準組色情報に含まれる複数の前記基準色情報との類似性により比較することで、前記組色情報と最も近い前記基準組色情報か、又は前記組色情報と同じであると判断できる前記基準組色情報に基づいて求められる組色情報を決定するとともに、前記組色情報と最も近い前記基準組色情報を決定した場合にはその基準組色情報と対応付けられている前記強度情報を用いて、前記組色情報と同じであると判断できる組色情報を決定した場合にはその組色情報に対応付けられると推定される強度情報を用いて、前記対象膜材の強度の判定結果を決定する決定手段と、
を備えている、判定装置。
【請求項2】
前記色分析手段は、前記色情報を、基礎画像中の前記範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色についての情報を統計的に処理して得られた指標である色指標を含むものとして生成するようになっている、
請求項1記載の判定装置。
【請求項3】
前記色分析手段は、前記色情報を、前記色指標を複数種類含むものとして生成するようになっている、
請求項2記載の判定装置。
【請求項4】
前記色分析手段は、前記色情報を、前記色指標として、基礎画像中の前記範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色についての、分散、最頻値、平均値、最大値、最小値、中央値のうちの少なくとも一つを含むものとして生成するようになっている、
請求項3記載の判定装置。
【請求項5】
繊維により膜状に形成された基材の少なくとも片面を樹脂で被覆して形成された膜材の強度の劣化の度合いを判定する判定装置であって、
強度の劣化の度合いを判定される対象膜材の樹脂により形成された面である判定対象面を所定の撮像装置によって撮像することによって得られた基礎画像についての基礎画像データを受付ける受付け手段と、
前記受付け手段が受付けた基礎画像データから、当該基礎画像データの基になった基礎画像中に映っている前記樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している前記繊維とについての特徴を定量化した情報である形態情報を生成する形態分析手段と、
前記対象膜材と同種の膜材に対して計測を行うことによって実際に得られた、当該膜材の強度についての情報である強度情報と、当該膜材の樹脂により形成された面を所定の撮像装置によって撮像して得られた画像についての画像データから、当該画像データの基になった画像中に映っている樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している繊維とについての特徴を定量化して生成した情報である基準形態情報とを、様々な強度について、前記強度情報と、前記基準形態情報とを互いに対応付けた状態で複数記録した記録手段と、
前記形態分析手段が生成した前記形態情報と、前記記録手段に記録されている複数の前記基準形態情報とを比較することにより、前記形態情報に最も近い前記基準形態情報か、又は前記形態情報と同じであると判断できる前記基準形態情報に基づいて求められる形態情報を決定するとともに、前記形態情報に最も近い前記基準形態情報を決定した場合にはその基準形態情報と対応付けられている前記強度情報を用いて、前記形態情報と同じであると判断できる形態情報を決定した場合にはその形態情報に対応付けられると推定される強度情報を用いて、前記対象膜材の強度の判定結果を決定する決定手段と、
を備えている、判定装置。
【請求項6】
前記対象膜材の前記基材は、繊維を縦横にわたして織られたものとされており、
前記形態分析手段は、前記形態情報を、前記基礎画像中に映っている縦方向の繊維と横方向の繊維とが交わる交点を頂点とするか、又は縦方向の繊維と横方向の繊維とが交わる交点を中心とする、縦横方向で互いに隣接する複数の矩形領域に分割するとともに、各矩形領域中に映っている前記樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している前記繊維のそれぞれを認識し、その認識結果に基づいて前記樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している前記繊維とについての特徴を定量化して形態情報を生成するようになっている、
請求項5記載の判定装置。
【請求項7】
前記形態分析手段は、前記基礎画像のうち前記繊維の映っている領域である繊維領域を検出し、検出したその繊維領域の中で縦横にわたされた繊維の縦向き、横向きのそれぞれと同じ向きで最も長さの長くなる繊維の横方向における位置、及び繊維の縦方向における位置を検出し、それらの交わる位置を、その繊維領域における縦方向の繊維と横方向の繊維が交わる交点の位置であると決定するようになっている、
請求項6記載の判定装置。
【請求項8】
前記対象膜材の前記基材は、繊維を縦横にわたして織られたものとされており、
前記形態分析手段は、前記形態情報を、
前記繊維に関しては、(複数の前記矩形領域のそれぞれに含まれている前記繊維領域の面積の平均値)と、(複数の前記矩形領域のそれぞれに含まれている前記繊維領域の面積の標準偏差)と、(複数の前記矩形領域のうち、前記繊維領域の面積が最大のものの当該面積)と、(前記繊維領域のそれぞれの縦方向の長さの平均値と横方向の長さの平均値の少なくとも一方)と、(前記繊維領域のそれぞれの縦方向の長さの最大値と横方向の長さの最大値の少なくとも一方)と、(複数の前記矩形領域のうち前記繊維が映っているものの数)と、の少なくとも一つを認識した結果に基づいて、
前記樹脂と前記クラックに関しては、(前記基礎画像の所定の範囲である基準範囲に含まれている前記クラックの数/前記基準範囲に含まれている、前記クラックが映っている領域であるクラック領域の面積の和と、前記樹脂が映っている領域である樹脂領域の面積の和、の和)と、(前記基準範囲に含まれている前記クラック領域の面積の和/前記基準範囲に含まれている、前記クラック領域の面積の和と、前記樹脂領域の面積の和、の和)と、の少なくとも一つを認識した結果に基づいて、
生成するようになっている、
請求項6記載の判定装置。
【請求項9】
少なくとも片面が樹脂により形成された膜材の強度の劣化の度合いを判定する判定システムであって、
強度の劣化の度合いを判定される対象膜材の樹脂により形成された面である判定対象面を撮像して基礎画像を得る撮像手段と、
前記撮像手段により得られた前記基礎画像についての基礎画像データを、前記撮像手段から直接、又は他の機器を介して受付ける受付け手段と、
前記受付け手段が受付けた基礎画像データから、当該基礎画像データの基になった基礎画像中の適当な範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色に関連した情報である色情報が、複数の表色系について一組とされたものである組色情報を生成する色分析手段と、
前記対象膜材と同種の膜材に対して計測を行うことによって実際に得られた、当該膜材の強度についての情報である強度情報と、当該膜材の樹脂により形成された面を所定の撮像装置によって撮像して得られた画像についての画像データから、当該画像データの基になった画像の適当な範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色に関連した情報である基準色情報が、前記色分析手段が用いるのと同じ複数の表色系について一組として生成された基準組色情報とを、様々な強度について、前記強度情報と、前記基準組色情報とを互いに対応付けた状態で複数記録した記録手段と、
前記色分析手段が生成した前記組色情報と、前記記録手段に記録されている複数の前記基準組色情報とを、前記組色情報に含まれる複数の前記色情報と、前記基準組色情報に含まれる複数の前記基準色情報との類似性により比較することで、前記組色情報と最も近い前記基準組色情報か、又は前記組色情報と同じであると判断できる前記基準組色情報に基づいて求められる組色情報を決定するとともに、前記組色情報と最も近い前記基準組色情報を決定した場合にはその基準組色情報と対応付けられている前記強度情報を用いて、前記組色情報と同じであると判断できる組色情報を決定した場合にはその組色情報に対応付けられると推定される強度情報を用いて、前記対象膜材の強度の判定結果を決定する決定手段と、
を備えている、判定システム。
【請求項10】
繊維により膜状に形成された基材の少なくとも片面を樹脂で被覆して形成された膜材の強度の劣化の度合いを判定する判定システムであって、
強度の劣化の度合いを判定される対象膜材の樹脂により形成された面である判定対象面を撮像して基礎画像を得る撮像手段と、
前記撮像手段により得られた前記基礎画像についての基礎画像データを、前記撮像手段から直接、又は他の機器を介して受付ける受付け手段と、
前記受付け手段が受付けた基礎画像データから、当該基礎画像データの基になった基礎画像中に映っている前記樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している前記繊維とについての特徴を定量化した情報である形態情報を生成する形態分析手段と、
前記対象膜材と同種の膜材に対して計測を行うことによって実際に得られた、当該膜材の強度についての情報である強度情報と、当該膜材の樹脂により形成された面を所定の撮像装置によって撮像して得られた画像についての画像データから、当該画像データの基になった画像中に映っている樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している繊維とについての特徴を定量化して生成した情報である基準形態情報とを、様々な強度について、前記強度情報と、前記基準形態情報とを互いに対応付けた状態で複数記録した記録手段と、
前記形態分析手段が生成した前記形態情報と、前記記録手段に記録されている複数の前記基準形態情報とを比較することにより、前記形態情報に最も近い前記基準形態情報か、又は前記形態情報と同じであると判断できる前記基準形態情報に基づいて求められる形態情報を決定するとともに、前記形態情報に最も近い前記基準形態情報を決定した場合にはその基準形態情報と対応付けられている前記強度情報を用いて、前記形態情報と同じであると判断できる形態情報を決定した場合にはその形態情報に対応付けられると推定される強度情報を用いて、前記対象膜材の強度の判定結果を決定する決定手段と、
を備えている、判定システム。
【請求項11】
少なくとも片面が樹脂により形成された膜材の強度の劣化の度合いを判定する判定装置にて実行される判定方法であって、当該判定装置が実行する、
強度の劣化の度合いを判定される対象膜材の樹脂により形成された面である判定対象面を所定の撮像装置によって撮像することによって得られた基礎画像についての基礎画像データを受付ける受付け過程と、
前記受付け過程で受付けた基礎画像データから、当該基礎画像データの基になった基礎画像中の適当な範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色に関連した情報である色情報が、複数の表色系について一組とされたものである組色情報を生成する色分析過程と、
前記対象膜材と同種の膜材に対して計測を行うことによって実際に得られた、当該膜材の強度についての情報である強度情報と、当該膜材の樹脂により形成された面を所定の撮像装置によって撮像して得られた画像についての画像データから、当該画像データの基になった画像の適当な範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色に関連した情報である基準色情報が、前記色分析過程で用いるのと同じ複数の表色系について一組として生成された基準組色情報とを、様々な強度について、前記強度情報と、前記基準組色情報とを互いに対応付けた状態で記録手段に複数記録する記録過程と、
前記色分析過程で生成した前記組色情報と、前記記録手段に記録されている複数の前記基準組色情報とを、前記組色情報に含まれる複数の前記色情報と、前記基準組色情報に含まれる複数の前記基準色情報との類似性により比較することで、前記組色情報と最も近い前記基準組色情報か、又は前記組色情報と同じであると判断できる前記基準組色情報に基づいて求められる組色情報を決定するとともに、前記組色情報と最も近い前記基準組色情報を決定した場合にはその基準組色情報と対応付けられている前記強度情報を用いて、前記組色情報と同じであると判断できる組色情報を決定した場合にはその組色情報に対応付けられると推定される強度情報を用いて、前記対象膜材の強度の判定結果を決定する決定過程と、
を含む、判定方法。
【請求項12】
繊維により膜状に形成された基材の少なくとも片面を樹脂で被覆して形成された膜材の強度の劣化の度合いを判定する判定装置にて実行される判定方法であって、当該判定装置が実行する、
強度の劣化の度合いを判定される対象膜材の樹脂により形成された面である判定対象面を所定の撮像装置によって撮像することによって得られた基礎画像についての基礎画像データを受付ける受付け過程と、
前記受付け過程で受付けた基礎画像データから、当該基礎画像データの基になった基礎画像中に映っている前記樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している前記繊維とについての特徴を定量化した情報である形態情報を生成する形態分析過程と、
前記対象膜材と同種の膜材に対して計測を行うことによって実際に得られた、当該膜材の強度についての情報である強度情報と、当該膜材の樹脂により形成された面を所定の撮像装置によって撮像して得られた画像についての画像データから、当該画像データの基になった画像中に映っている樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している繊維とについての特徴を定量化して生成した情報である基準形態情報とを、様々な強度について、前記強度情報と、前記基準形態情報とを互いに対応付けた状態で記録手段に複数記録する記録過程と、
前記形態分析過程で生成した前記形態情報と、前記記録手段に記録されている複数の前記基準形態情報とを比較することにより、前記形態情報に最も近い前記基準形態情報か、又は前記形態情報と同じであると判断できる前記基準形態情報に基づいて求められる形態情報を決定するとともに、前記形態情報に最も近い前記基準形態情報を決定した場合にはその基準形態情報と対応付けられている前記強度情報を用いて、前記形態情報と同じであると判断できる形態情報を決定した場合にはその形態情報に対応付けられると推定される強度情報を用いて、前記対象膜材の強度の判定結果を決定する決定過程と、
を含む、判定方法。
【請求項13】
コンピュータを、少なくとも片面が樹脂により形成された膜材の強度の劣化の度合いを判定する判定装置として機能させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
強度の劣化の度合いを判定される対象膜材の樹脂により形成された面である判定対象面を所定の撮像装置によって撮像することによって得られた基礎画像についての基礎画像データを受付ける受付け手段、
前記受付け手段が受付けた基礎画像データから、当該基礎画像データの基になった基礎画像中の適当な範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色に関連した情報である色情報が、複数の表色系について一組とされたものである組色情報を生成する色分析手段、
前記対象膜材と同種の膜材に対して計測を行うことによって実際に得られた、当該膜材の強度についての情報である強度情報と、当該膜材の樹脂により形成された面を所定の撮像装置によって撮像して得られた画像についての画像データから、当該画像データの基になった画像の適当な範囲内に位置するすべての画素に割当てられた色に関連した情報である基準色情報が、前記色分析手段が用いるのと同じ複数の表色系について一組として生成された基準組色情報とを、様々な強度について、前記強度情報と、前記基準組色情報とを互いに対応付けた状態で複数記録した記録手段、
前記色分析手段が生成した前記組色情報と、前記記録手段に記録されている複数の前記基準組色情報とを、前記組色情報に含まれる複数の前記色情報と、前記基準組色情報に含まれる前記基準色情報との類似性により比較することで、前記組色情報と最も近い前記基準組色情報か、又は前記組色情報と同じであると判断できる前記基準組色情報に基づいて求められる組色情報を決定するとともに、前記組色情報と最も近い前記基準組色情報を決定した場合にはその基準組色情報と対応付けられている前記強度情報を用いて、前記組色情報と同じであると判断できる組色情報を決定した場合にはその組色情報に対応付けられると推定される強度情報を用いて、前記対象膜材の強度の判定結果を決定する決定手段、
として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項14】
コンピュータを、繊維により膜状に形成された基材の少なくとも片面を樹脂で被覆して形成された膜材の強度の劣化の度合いを判定する判定装置として機能させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
強度の劣化の度合いを判定される対象膜材の樹脂により形成された面である判定対象面を所定の撮像装置によって撮像することによって得られた基礎画像についての基礎画像データを受付ける受付け手段、
前記受付け手段が受付けた基礎画像データから、当該基礎画像データの基になった基礎画像中に映っている前記樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している前記繊維とについての特徴を定量化した情報である形態情報を生成する形態分析手段、
前記対象膜材と同種の膜材に対して計測を行うことによって実際に得られた、当該膜材の強度についての情報である強度情報と、当該膜材の樹脂により形成された面を所定の撮像装置によって撮像して得られた画像についての画像データから、当該画像データの基になった画像中に映っている樹脂と、前記樹脂に生じたクラックと、前記樹脂から露出している繊維とについての特徴を定量化して生成した情報である基準形態情報とを、様々な強度について、前記強度情報と、前記基準形態情報とを互いに対応付けた状態で複数記録した記録手段、
前記形態分析手段が生成した前記形態情報と、前記記録手段に記録されている複数の前記基準形態情報とを比較することにより、前記形態情報に最も近い前記基準形態情報か、又は前記形態情報と同じであると判断できる前記基準形態情報に基づいて求められる形態情報を決定するとともに、前記形態情報に最も近い前記基準形態情報を決定した場合にはその基準形態情報と対応付けられている前記強度情報を用いて、前記形態情報と同じであると判断できる形態情報を決定した場合にはその形態情報に対応付けられると推定される強度情報を用いて、前記対象膜材の強度の判定結果を決定する決定手段、
として機能させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−190880(P2008−190880A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22491(P2007−22491)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】