説明

別個のエネルギー吸収体及びファシア支持体を有するバンパ

バンパシステムは、ビームであって、当該ビームを車両に取り付けるように適合したマウントを有するビームと、当該ビームが変形する前に衝突エネルギーを分散させるために、当該ビームの表面上に配置された熱成形エネルギー吸収体とを備える。バンパシステムはさらに、ファシア支持体であって、エネルギー吸収体の前面に係合する後側凹状面を有する第1のセクションと、ファシアをファシア支持体の支持位置に固定するように適合したファシア取り付け構造部を有する第2のセクションとを有する、ファシア支持体を備える。異なるファシア支持体を組み付けることによって、異なるファシアを同じビームとエネルギー吸収体との組み合わせにおいても支持することができるため、ツーリングコストと、在庫しておくべき種々の部品の点数が削減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[背景]
本発明は、剛性ビーム、可塑性エネルギー吸収体及びファシア支持体を有するバンパシステムに関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2004年6月22日に出願された「BUMPER HAVING SEPARATE ENERGY ABSORBER AND FASCIA SUPPORT」と題する仮出願番号第60/581,941号(この内容全体は本明細書に完全に援用される)の利益を主張するものである。
【0003】
ビームと、衝突エネルギーを分散して制御するためのエネルギー吸収体とを組み込んだ、多くの車両パンパシステムが開発されている。種々の位置及び種々の前端部材に取り付けられたブラケットを用いているバンパシステムを美観上覆うために、ファシアが車両に取り付けられることが多い。しかしながら、結果として部品数は増大して、それぞれの部品が個々の在庫を必要とするとともに個別の手作業での取り付けを必要とし、車両の総コストは増大する。また、追加されたブラケットのそれぞれが、寸法のばらつきや品質管理上の問題を生じさせる可能性がある。より少ない部品数で、より一体化されるとともに、バンパシステムの後側に配置される他の車両の前端部品からではなく、より直接的にバンパシステムから支持するファシア取り付けシステムを提供することが望ましい。
【0004】
少なくとも1つの従来技術のバンパシステムは、真空熱成形シートから作製されたエネルギー吸収体を組み込んでいる。しかしながら、真空熱成形における工程上の制限のため、真空熱成形シート上でファシアを取り付けるための取り付け位置を厳密に制御することは困難である。したがって、低コストであり、可撓性を有するという熱成形部品の利点と、最適な精度で安定してファシアの取り付け位置を提供するファシア支持構造部とを統合したバンパ及びエネルギー管理システムが必要とされている。
【発明の開示】
【0005】
したがって、上記の利点を有するとともに上記の課題を解決するバンパシステムが望まれている。
【0006】
[発明の概要]
本発明の一態様では、バンパシステムは、ビームであって、当該ビームを車両に取り付けるように適合したマウントを有するビームと、当該ビームが変形する前に衝突エネルギーを分散させるために、当該ビームの表面上に配置されたエネルギー吸収体とを備える。バンパシステムは、エネルギー吸収体の前面にはまって係合する後側凹状面を有する第1のセクションと、ファシアをファシア支持体に支持位置で固定するように適合したファシア取り付け構造部を有する第2のセクションとを有する、ファシア支持体をさらに備える。
【0007】
より狭い形態では、同じビームとエネルギー吸収体との組み合わせとともに用いられる、種々のファシアが提供される。
【0008】
本発明のこれら及び他の態様、目的及び特徴は、以下の明細書、特許請求の範囲、及び添付の図面を検討することによって、当事者により理解及び判断されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[好適な実施形態の詳細な説明]
バンパシステム20(図1)は、ビーム21であって、ビーム21を車両に取り付けるように適合したマウント22を有するビーム21と、ビーム21が変形する前に衝突エネルギーを分散させるために、ビーム21の表面上に配置された熱成形エネルギー吸収体23とを備える。バンパシステム20は、エネルギー吸収体23の前面及びバンパビーム21にはまって係合する後側凹状面26を有する第1の下部セクション25と、ファシア29の上部を支持する第2の上部セクション27とを有する射出成形部分を含むファシア支持体24をさらに備える。ファシア支持体24において、ファシア29を十分に支持可能な安定位置にファシア29を固定するためのファシア取り付け構造部28が所望に応じて設けられる。ファシア支持体24A(図4)のように、異なるファシア支持体を組み付けることによって、同じビーム21とエネルギー吸収体23との組み合わせにおいても異なるファシア29Aを支持することが可能であるため、ツーリング(tooling)コストと在庫しておくべき種々の部品点数とが削減される。
【0010】
ビーム21(図1)は、B字状断面を有する。しかしながら、本発明の概念は、「D」字状、「C」字状及び他の形状等のような他のビームとともに用いることができることが意図される。車両用マウント22の対は、ビーム21の後面に取り付けられるプレートと、車両のフレームにビーム21を取り付けるための後方延出管状部22’とを有している。
【0011】
図示のエネルギー吸収体23は、真空熱成形される。これにより、エネルギー吸収体を低コストのツーリングから作製することができ、ツーリングは迅速に製作することができる。しかしながら、本発明の概念は、射出成形エネルギー吸収体、発泡エネルギー吸収体、及び車両バンパシステム産業で既知の他のエネルギー吸収体等、他のエネルギー吸収体とともに用いることができることが意図される。特に、本構成の利点は、所与のビーム及びエネルギー吸収体が、種々のファシア支持体を受け取ることができ、そのため、同じビームとエネルギー吸収体との組み合わせを異なる種々の車両に用いることが可能であることである。とりわけ、ファシア支持体の下部は自身が衝撃吸収特性を有しており、具体的には、異なる衝突基準を満たすために、ビーム及びエネルギー吸収体の衝撃吸収特性を補完するように作製することができる。このことは、同じビーム及びエネルギー吸収体を、生産ライン上にある異なる車両のモデルや、または同じモデルの車両における前側及び後側のバンパシステムでの使用を可能にする。
【0012】
図示の熱成形エネルギー吸収体23は、ビーム21の上面及び下面に重なる上部フランジ31及び下部フランジ32を有する。フランジ31及び32は任意に、組み立ての際に上部ビーム面及び下部ビーム面と摩擦係合してビーム21にエネルギー吸収体23を一時的に保持するパッドを有する。フックタブ、別個のプッシュピン締結具、ねじ等の他の手段を用いることができることが意図される。エネルギー吸収体23はベース壁33(図3)及びベース壁33から前方に形成された複数のクラッシュボックス(図示のクラッシュボックス34、34A及び34B)をさらに有する。クラッシュボックス34、34A及び34Bは、特定用途の必要に応じて最適なエネルギー吸収のために形成された前壁35、上壁36、下壁37、及び側壁38、39を有する。図示の壁35〜39は「O」字状、「I」字状及び断続的な円状等のように、種々の箱形を画定する起伏及び湾曲を有する。「I」字状、「X」字状及び「T」字状等のように、無限に広範の種々の箱形が作製されることができることが意図される。特に、前壁35、上壁36及び下壁37は、後述するように後側凹状面26に嵌合するように適合した形状を画定している。隣接するボックス34同士の間に位置するベース壁33の部分は、空気力学的に湾曲したビーム21の表面に対して、エネルギー吸収体23が密着して曲がるように、エネルギー吸収体23を撓ませるのに十分な可撓性を有している。
【0013】
上述のように、ファシア支持体24は、ビーム21の前面にはまって係合する後側凹状面26を有する下部セクション25と、ファシア取り付け構造部28を有する上部セクション27とを備える。より具体的には、上部セクション27は、特定のファシア(すなわち図示のファシア29)を支持するのに最適化された前/上壁43を有する水平延出ビームセクション42を含む。前壁43を強化させるために、前壁43から後方に延びる強化リブ45が設けられる。
【0014】
図示の下部セクション25は、3つの下方延出セクション25A、25B及び25Cを有しており、これらは前壁50と対向する側壁51とを含む、後向きC字状の断面をそれぞれ有する。側壁51はそれぞれ、エネルギー吸収体23の前面にはまって係合するように形成された後縁52を有する。図示の後縁52は、凹状下部53、エネルギー吸収体23及びビーム21の上部に係止される後方突出部54、上方延出セクション55、及び第2の後方突出部56を有する。第2の後方突出部56は、ファシア29の上部セクションを保持及び支持し、車両のエンジンコンパートメントフードの前縁に沿って延びる。
【0015】
所望に応じて、取り付け構造部がファシア支持体24に設けられる。例えば、図示のファシア支持体24は、ファシア支持体24及びエネルギー吸収体をビーム21に取り付ける締結具用の取り付け穴46を有し、ラブストリップ48及びファシア23をファシア支持体24に取り付ける孔付きパッド位置47を含み、さらに、ラジエータサポート等の車両部品にファシア支持体24の上部セクション27を取り付ける締結具を受け取る側部取り付け穴49を含む。ファシアがラブストリップ48を受け取るように形成されている位置において、凹みが下部セクション25A、25B、25Cを横切って水平方向に生じる。ファシア支持体24は射出成形されるため、非常に精度の高い取り付け位置を提供することができるとともに、セルフタッピン式取り付けねじを受け取る孔付き構造ボスを提供することができる。また、ファシア支持体24は、GE社製のZenoy等のエネルギー吸収材料から作製することができる。また、ファシア支持体24、特に下部セクション25は、最適なエネルギー吸収のための形状にすることができる。例えば、クラッシュボックスは、セクション25A、25B、25Cの1つ又は複数内に成形されることができる。
【0016】
図4によって示されるように、異なるファシア29Aが所望される場合、第2のファシア支持体24Aを、ファシア支持体24に代替することができる。このようなことは、例えば、アップレベルパッケージや改変された前端部により(あるモデル年から次のモデル年にかけて行われる場合等)異なるファシア29Aがもたらされる、特別仕様モデルの車両において行われる。図示の構成では、ファシア29Aは、より高く且つより直立して「四角ばった」外観を有し、かなり長い垂直前面60と、ほぼ水平方向に延びた後方延出面61を有している。
【0017】
「十分に装備された」モデルの車両が「装備されていない」モデルの車両よりも重量があり、結果として異なるバンパ衝突要件となる場合等、種々のエネルギー吸収体がエネルギー吸収体23の代替となることができることも意図される。例えば、射出成形エネルギー吸収体を、より重量のある最大限に装備されたモデル車両に用いることができ、熱成形エネルギー吸収体を、装備されていないモデル車両に用いることができる。
【0018】
本発明の概念から逸脱しない限り、上記構造に対して変形及び変更を行うことができることを理解されたい。また、これらの特許請求の範囲が言語によって別段に明記されない限り、かかる概念は添付の特許請求の範囲によってカバーされることが意図されることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を具現するバンパシステムを有する前端構造の断面図である。
【図2】図1のエネルギー吸収体及び係合しているファシア支持体の斜視図である。
【図3】図2の分解斜視図である。
【図4】代替的な前端構造の、図1と同様の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビームであって、当該ビームを車両に取り付けるように適合したマウントを有するビームと、
前記ビームが変形する前に衝突エネルギーを分散させるために、前記ビームの表面上に配置されたエネルギー吸収体と、
第1のファシア支持体であって、前記エネルギー吸収体の前面にはまって係合する後側凹状面を有する第1のセクションと、ファシアを前記ファシア支持体に支持位置で固定するように適合した第1のファシア取り付け構造部を有する第2のセクションとを有する第1のファシア支持体と
を備えるバンパシステム。
【請求項2】
前記ファシア支持体の前記第2のセクションが、前記第1のセクションの上に延びるとともに、周囲の空気を前記ビームを介して車両のラジエータに通過させるように適合し、拡張された開口を有する請求項1のバンパシステム。
【請求項3】
前記エネルギー吸収体が、熱成形される請求項1のバンパシステム。
【請求項4】
前記バンパシステムは、
前記ファシア支持体の後側凹状面と同様の形状である第2の後側凹状面を有する下部セクションと、
前記ファシア支持体の前記第1のファシア取り付け構造部とは異なる第2の取り付け構造部を有する上部セクションと
を有する第2のファシア支持体を備え、
前記第1のファシア支持体と前記第2のファシア支持体とが、所望により選択的に前記ビーム及び前記エネルギー吸収体に取り付け可能な請求項1のバンパシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−503397(P2008−503397A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518233(P2007−518233)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/022057
【国際公開番号】WO2006/002235
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(503379461)ネットシェイプ・インターナショナル・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (5)
【氏名又は名称原語表記】NETSHAPE INTERNATIONAL, LLC
【住所又は居所原語表記】1900 Hayes Street, Grand Haven, MI 49418, U.S.A.