説明

利用者認証機能付きロッカーシステム

【課題】扉の開閉と物品の入出庫の履歴を、扉を開けた人物の識別情報とともに記録する、利用者認証機能付きのロッカーシステムを提案する。
【解決手段】物品収納室12の開口部に扉18を付し、扉の施錠手段24を有するロッカー本体2と、扉18の解除操作を行う人物の生体情報を読み取り、認証用の情報と照合し、認証が成立した場合のみ解除操作に応じて施錠手段24に解錠信号を送る制御部30と、制御部から送られた扉18の施解錠の履歴及び解錠者の識別情報を経時的に記憶する管理部50とを備える。制御部30は、さらに物品収納室12内の検知用エリアAへの物品の持込み及び当該エリアからの物品の持出しを検知することが可能な物品センサ34を有する。管理部50は、制御部30が送信した扉の施解錠動作の情報と物品の持込み乃至持出しの情報とを、それぞれの順序が判るように表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者認証機能付きロッカーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば高価な機械・安全管理が必要な薬品・機密書類などの物品を特定の人間に使用させたいときに、ロッカーに錠を施し、複数の利用者に鍵を渡すことが行われる。しかしながら、利用者の一人が鍵を紛失すると物品の安全を保障できない。
【0003】
そうした不便を解消するために、指紋や身体的特徴・静脈などの生体情報により、予め登録された人物を認証し、ロッカーの扉の解錠を許可するシステムが提案されている(特許文献1の0054及び特許文献2の段落0002)。
【0004】
他方、ロッカー以外では、自動販売機の売上金の盗難防止のために扉の解錠を生体認証した作業員に許可し、そのIDを記憶するものも提案されている(特許文献3)。
【0005】
宝飾品などの物品陳列板にかかる荷重を重量センサで測り、陳列板から物品が離れた後一定時間内に荷重が戻らないと警報を発する方法も提案されている(特許文献4)。
【0006】
また宅配便を一時的に預ける共同ロッカー装置であって、配達人が認証カードを挿入して扉を開け、物品を納めたことを重量センサで検知して、配送人が装置に挿入した伝票に、物品の重量や配達時間を印刷し(特許文献5の段落0024)、利用者が物品を受理して扉を閉じたときの時刻を印刷する(段落0018)ものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−260073
【特許文献2】特開2010−009364
【特許文献3】特開2003−232154
【特許文献4】特開平10−304954
【特許文献5】特開平05−098857
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜2のロッカーシステムは、生体認証された人物に扉の解錠を許可するが、物品が紛失したときの責任の所在が明確ではない。
【0009】
特許文献3のものは、扉を解錠した者が記憶に残るが、物品の入出庫を監視していないので、物品が紛失しても紛失を生じた時点を特定することが難しい。
【0010】
特許文献4の方法は、陳列板から物品が一定時間離れたときに盗難と見なしている。しかしこの方法は、物品の利用時間が区々である通常のロッカーには適用できない。
【0011】
特許文献5のシステムは、扉を閉じた時間を宅配物の受取り時間と扱って記憶する。宅配物を一時的預かるという用途においては、かような扱いをしても格段不都合を生じないであろうが、機密資料などをロッカーに保管し、共用する場合は事情が異なる。
【0012】
その場合には、扉を開けることが必ずしも物品を持ち出すことを意味しないからである。例えば扉を開けても目的の物品を他人が持ち出している可能性もあるし、目的の場所と異なる扉を間違ってあけることもある。
【0013】
また薬品庫などでは、過剰な消費などの不適切な使用を監視することが望ましい。
【0014】
本発明の第1の目的は、利用者を認証可能なロッカーシステムにおいて、扉の解施錠及び物品の持込み・持出しの履歴と利用者の情報とを管理可能とすることである。
【0015】
本発明の第2の目的は、上記の管理機能を有する生体認証機能付きのロッカーシステムにおいて、物品の持込み及び持出しの時刻を記録できるようにすることである。
【0016】
本発明の第3の目的は、上記の管理機能を有する生体認証機能付きのロッカーシステムにおいて、保管される物品の重量の変化を記憶できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の手段は、
物品収納室12の開口部に扉18を付設し、この扉をロックするための施錠手段24を設けたロッカー本体2と、
扉18の解除操作をする人の生体情報を読み取るとともに、認証用の情報と照合して認証が成立した場合のみ解除操作に応じて施錠手段24に解錠信号を送る制御部30を有し、この制御部が形成した扉18の施解錠の履歴及び解錠者の識別情報を管理部50に経時的に記憶するように形成したコントローラ機構28を具備し、
上記制御部30は、さらに物品収納室12内の検知用エリアAへの物品の持込み及び検知用エリアAからの物品の持出しを検知することが可能な物品センサ34を有しており、
上記管理部50は、制御部30が送信した扉の施錠、解錠、物品の持込み、及び物品の持出しの各事象の情報を、少なくともそれら各事象の生じた順序が判るように記憶する機能を有する。
【0018】
本手段は、利用者の生体認証及び扉の施解錠の履歴の記憶ができるロッカーシステムにおいて、図2の如く物品の持込み及び持出しを検知する物品センサ34を設けることを提案する。生体認証を利用して物品を持ち出した個人を特定することで、各利用者の責任感を刺激し、物品の紛失や不必要に長時間の持出しを回避できる。
【0019】
「ロッカー」は、施錠可能な扉付きの物品収納用設備である。「生体認証」は、後述の如く従来周知の方式を採用できる。「物品センサ」は、図示例の感圧センサや重力センサに限らず、光学的センサなどを用いてもよい。「コントローラ機構」は、ロッカー本体の扉の開閉及び認証装置を制御する制御部と、必要な情報を記憶する管理部とを有する。図2の例ではロッカー本体に制御部を組み込むとともに、ロッカー本体の外に管理部を設けているが、この場合において管理部とは別に一時的に所要の情報(履歴など)を制御部に記憶するようにしてもよい。また例えば一個のロッカーに本発明を適用する場合などには制御部が管理部を含んでいても構わない。また管理部は、施錠・解錠・物品の持込み乃至持出しの順序が判るように記憶する。もっとも物品の持込み乃至持出しは、施錠操作に付随する事項として記憶してもよい(表2参照)。各事象の時刻を記憶することは必須ではない。
【0020】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ上記コントローラ機構28は、物品を持ち出した時刻及び物品を持ち込んだ時刻、或いは扉を施錠した時刻及び扉を解錠した時刻を記憶するものとする。
【0021】
本手段は、コントローラ機構(管理部又は制御部)に物品の利用時間を特定するために必要な時刻を記憶することを提案する。物品を持ち出した時刻及び物品を持ち込んだ時刻を記憶することが最善であるが、代りに扉の施錠・解錠の各時刻を記憶してもよい。
【0022】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ
上記検知用エリアAは、物品を載置するための載置面とし、
上記物品センサ34は、上記検知用エリアAに置かれた物品の位置・荷重など、当該物品が検知用エリアの上にあることを示す情報量を、少なくとも扉が解錠されている状態で継続的に測定し、その情報量の変化により検知用エリアAへの物品の持込み及び検知用エリアAからの物品の持出しを検知するように形成している。
【0023】
本手段は、物品の所在を示す情報を継続的に観察することを提案する。これにより物品の持込み及び持出しを的確に検知できる。扉を解錠した時点で物品の有無を確認するから盗難予防効果が高まる。物品の荷重圧力を検知する感圧センサや重量センサ、物品が空間の一部を占めることを検知するセンサ(光センサなど)を利用できる。
【0024】
第4の手段は、第3の手段を有し、かつ
上記物品センサ34は、上記検知用エリアAに置かれた物品の荷重圧力を検知する機能を有している。
【0025】
本手段は、物品の荷重圧力を検知し、圧力の変動を物品の持込み及び持出しの表れとして記憶することを提案する。圧力の変化を2値的に感知する感圧センサ(図5)又は連続量として検知できる重量センサ(図9)の何れも利用できる。物品を検知用エリアから持ち上げるだけで記録に残るから物品の持出しをより確実に検知できる。
【0026】
第5の手段は、第4の手段を有し、かつ
上記物品センサ34は、物品の荷重を測定する機能を有し、この荷重の変化を、扉18の開閉及び物品の持込み及び持出しの記録とともにコントローラ機構28に記憶するように構成している。
【0027】
本手段では、図9に示す重量センサで荷重の変化をコントローラ機構(管理部又は制御部)に記録するので、消耗品の消費状況を記録することができる。システムの管理者は、ロッカーの扉を開かなくても物品の消費状況を把握することができ、物品の補充などの物品の管理が容易となる。
【発明の効果】
【0028】
第1の手段に係る発明によれば、扉の開閉記録及び操作者の認証記録の履歴とともに、物品の持込み乃至持出しを記憶させるから、物品の管理を的確に行うことができる。
【0029】
第2の手段に係る発明によれば、扉の施解錠と物品の持込み乃至持出しの時刻を記録したから、物品の利用時間を的確に把握できる。
【0030】
第3の手段に係る発明によれば、開扉状態で物品の存否を継続的に監視しているから、扉を開いた時点で物品が在ったか否かが明確になり、より確実に物品を管理できる。
【0031】
第4の手段に係る発明によれば、検知用エリアにおける物品の荷重圧力の変動を検知するから、物品の持出しなどをより的確に把握することができる。
【0032】
第5の手段に係る発明によれば、測定された物品の重量の変動をコントローラ機構28に記憶するから、例えば薬品などの消耗品の消費状況が明確に分る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るロッカーシステムの一部の扉を開とした状態での正面図である。
【図2】図1のシステムの全ての扉を閉じた状態での一部透視した側面図である。
【図3】図1のシステムの物品収納室を開放した状態での正面図である。
【図4】図3の物品収納室を、扉を閉じた状態での横断面図である。
【図5】図3の物品収納室を、扉を閉じた状態での縦断面図である。
【図6】図1のシステムの設備収納室を閉鎖した状態での縦断面図である。
【図7】図1のシステムの要部の通信回線の説明図である。
【図8】図1のシステムの構成説明図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るロッカーシステムの物品収納室の開放状態での縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1から図8は、本発明の第1の実施形態に係るロッカーシステムを示している。
【0035】
このロッカーシステムは、図1乃至図2に示すロッカー本体2と、コントローラ機構28と、図2に示す管理部50と、図3に示す通信回線60とで構成されている。
【0036】
図1には、一つのロッカー本体2しか記載していないが、複数のロッカー本体2及び制御部30を、一つの管理部50で管理することが可能である。
【0037】
ロッカー本体2は、ケーシング3と、扉16,18と、施錠手段24とで形成されている。
【0038】
上記ケーシング3は、図1の如く前方から見て相互に交差する複数の縦板部4及び水平盤6と、これら縦板部及び水平盤の後面を閉塞する背板部8とで形成されている。
【0039】
図示の例では、それら縦板部4及び水平盤6で区画される複数の凹所の一つを、後述の制御部を組み込むための設備収納室10とし、残りの凹所を物品収納室12に形成している。この図示例の構成は適宜変更することができる。
【0040】
また図示例では、上記水平盤6は、図3に示す如く下板部6aと上板部6bとを一定の間隙を存して連結した2重板構造であり、その間隙内に後述の物品センサを格納できるようにしている。上板部6bには、適数(図示例では2つ)の貫通孔7を穿設している。この貫通孔の周りの上板部分上面は、物品載置面を兼ねた検知用エリアAである。図3のうち符号Cは、ケースなどの物品収納具である。書類などの物品は、物品収納具に入れて検知用エリアに載置することができる。
【0041】
上記扉16は設備収納室10の開口部に、また扉18は物品収納室12の開口部に枢着軸20により枢着されている。設備収納室用の扉16の上下各部には、各設備を組み付けるための取付凹部17A及び取付孔17Bを形成している。上述の物品収納室12と扉18とで物品収納庫Bを構成している。
【0042】
上記施錠手段24は、図4に示すように、係合アームを突出可能な係合部(電子錠)24aと、係合アームの受部である被係合部24bとで形成されており、その一方を扉側に、他方を物品収納室の内面側に設ける。
【0043】
上記施錠手段24は、後述の制御装置からの信号により解錠される。これにより扉18を開くことができる。扉が閉じられたときには、施錠手段24は、後述の制御装置からの信号により施錠する。なお、扉が閉じられると自動的に施錠されるように構成してもよいが、そのときには、施錠手段24から制御装置へ施錠したことを通知する信号を送信するように構成するものとする。
【0044】
コントローラ機構28は、図2に示す如く制御部30と管理部50とで構成されている。
【0045】
上記制御部30は、図8に示す如く第1生体認証用センサ32と、物品センサ34と、制御装置40と、操作パネル42とは、IO装置46とで形成されている。
【0046】
図示例では、上記制御部30はロッカー本体2に組み込まれているが、物品センサを除く制御部の各要素はロッカー本体2とは別個に設けてもよい。
【0047】
上記第1生体認証用センサ32は、人体から生体情報を読み取って制御装置側へ送り込む機能を有するものである。上記第1生体認証用センサ32は、既述の指紋・静脈認証、身体的特徴による認証など従来公知の方式を採用することができる。以下の例では指紋認証方式を例にとって説明する。図示例では、図1も示すように第1生認証用認証センサ32を設備収納室用の扉16の取付凹部17A内に配置している。
【0048】
上記物品センサ34は、本実施形態では感圧センサであり、図5の如く上方へ突出する感圧用の入力突子36を有する。この感圧センサは、物品収納室12の底部である水平盤6内に収納されており、上記貫通孔7から入力突子36を突出している。
【0049】
上記感圧センサは、物品の荷重圧力が一定値以上であれば物品の状態を「有」と、一定値以下であれば「無」と2値的に判別する。その判別結果は、管理装置に対して、本実施形態においては制御装置を経由して、また必要であれば直接に送信される。
【0050】
上記制御装置40と操作パネル42とは、図示例では、図6に示すように一体的に結合され、設備収納室用の扉16の取付孔17B内に嵌め込んでいる。もっとも制御装置40と操作パネル42とを別々に配置しても構わない。図1に示した操作パネル42は、ロッカー本体が有する物品収納庫Bの番号を表すボタン43と、操作手順などを表示する表示盤44とを有している。
【0051】
上記制御装置40の主たる機能は、予め登録された人物にのみ、操作パネル42の操作を許可することである。すなわち、制御装置40は、第1生体認証用センサ32から送信された生体情報を、予めメモリーに記憶された生体情報のデータと照合する。制御装置40は、それら両者が照合する場合にのみ、操作パネル42からの入力に応じて、該当する施錠手段24に解錠指令を送信する。
【0052】
上記制御装置40の他の機能は、扉18を解錠したこと、施錠したこと、物品の「有」、「無」を検知したこと、の4つの基本情報を、制御装置40内に記憶し、また管理装置56へ送信することである。
【0053】
これらの情報は逐次送信してもよく、制御装置40に一時的に記憶され、管理装置56からの要求により、送信するようにしてもよい。
【0054】
また各基本情報に対応させて、物品の管理に必要な補足情報(例えば事柄が行われた時刻)を、基本情報とともに送信することができる。各事柄の時刻は、解錠・施錠に関しては例えば解錠指令・施錠指令を発信した時刻とし、物品の有・無に関しては、物品センサ34から荷重圧力の変化の信号を受信した時刻とすればよい。
【0055】
さらに上記補足情報には、各事柄の操作者の識別情報を含めるとよい。扉が解錠されてから再び施錠されるまでの、解錠、物品の持込み、物品の持出し、施錠の各事柄は、その解錠のために生体認証した人物によって行われたものとして、その人物のIDを各事柄の操作者の識別情報とするように制御装置40を構成するとよい。
【0056】
基本情報に補足情報を対応させることは、下記の管理装置に行わせてもよい。
【0057】
上記管理部50は、図8に示す如く、第2生体認証用センサ52と、表示手段54と、管理装置56とで構成される。
【0058】
上記第2生体認証用センサ52は、第1生体認証用センサ32で採取した生体情報と照合させるための認証用の情報を採取するためのものである。
【0059】
上記表示手段54は、管理装置56の出力を表示する装置(CRTや液晶パネルなど)である。
【0060】
上記管理装置56は、例えば管理用コンピューターで構成することができ、データベースなどの記憶手段58を有する。この記憶手段58は、上記の認証用の情報などのシステムの運用の元になる基礎情報と、ロッカー本体2での施錠・解錠・物品の持込み乃至持出しなどの管理情報とを記憶することができる。
【0061】
上記管理情報の記録を模式的に表すと、次の表1のようになる。この表は、後述の表示手段54により表示できるようにするとよい。この表では、扉の解錠状態をOFF、施錠状態をONで表し、物品が検知用エリアにあることを「有」、検知用エリアにないことを「無」と表示している。
【0062】
【表1】

【0063】
これらの情報を経時的に表すことで、物品の状態を的確に管理できる。上の表の例では、ロッカー本体2の物品収納庫No.2に関して、操作者Xが扉を解錠して物品を持ち出すとともに施錠し、次に操作者Yが扉を解錠したが、何も持ち出さずに施錠し、最後に操作者Xが扉を解錠して物品を返すとともに施錠をしたことが判る。
【0064】
上記の表1では、物品の持込み及び物品の持出しを、解錠、施錠と別の情報として扱っているが、例えば解錠、施錠の2つを基本情報とし、物品の持込み及び物品の持出しを解錠の操作の補足情報としてもよい(表2参照)。
【0065】
【表2】

【0066】
上記管理装置56は、上記のように各情報を表示する機能を有することが望ましい。もっとも上記の表は単なる一例に過ぎない。各情報の履歴を表示できればよく、その表示方法は適宜変更することができる。
【0067】
通信回線60は、施錠手段24と制御部30との間、制御部30と管理部50との間、制御部30内部の各装置の間、管理部50内部の各装置の間で信号や情報を送信するための手段である。図示の通信回線60は有線であるが、無線方式としてもよい。
【0068】
図7は、通信回線60のうちロッカー本体2を通過する部分の配線を表している。符号62は、管理装置56側の回線と接続するための接続端子であり、この接続端子62から延びるケーブルがケーシング3の一部を貫通し、図示の例では縦板部4に沿って設備収納室10の制御装置40へ至る。制御装置40と物品センサ34との間、乃至制御装置40と施錠手段24との間にもそれぞれケーブルが配線されている。
【0069】
上記構成によれば、扉18を解錠し、検知用エリアAから物品を持出し、或いは検知用エリアAへ物品を持込み(戻し)、施錠するということを、操作者を特定できるように記録して管理するから、物品が紛失したり、或いは長期間持ち出されているときに、簡単に持ち出した人物を特定できる。
【0070】
なお、利用者認証の手段として、例えば特許文献5の認証カードなどを使用することも出来ないことはないが、そのカードを紛失したり、或いは他人が一時的に不正使用する可能性がある。生体認証を採用することで、認証された利用者の情報と物品の出入りの情報との組み合わせによる管理の精度が向上する。
【0071】
本発明のシステムは、単に生体認証の機能と、センサによる物品の出入りを確認する機能を組み合わせただけのものではなく、生体認証による人物情報と物の出入りの情報とを一体化して、順序立てて管理することに重点がある。さらに一つの物品収納庫内部を複数の検知用エリアに区画することで、物品収納庫内に収納された複数の物品が紛失したことに長期間気付かないという不都合を低減することもできる。
【0072】
以下、本発明の他の実施形態を説明する。これらの説明において第1実施形態と同じ構成については解説を省略する。
【0073】
図9は、本発明の第2の実施形態に係るロッカーシステムの要部を示している。本実施形態は、物品センサ34を、第1の実施形態の感圧センサから重量センサに変更し、物品の荷重の変化を履歴とともに記録するようにしたものである。
【0074】
物品センサ34の入力突子36の先端には、物品載置台38を付設している。本実施形態ではこの物品載置台の上面が検知用エリアAとなる。
【0075】
本実施形態での管理情報の記録を模式的に表すと、次の表3のようになる。操作者Xが物品を持ち出したときの重量と、返還されたときの重量とを比較すると、消費された物品の量が判る。
【0076】
【表3】

【0077】
物品の重量を記録に残すことにより、次の利点を生ずる。
(イ)物品の消費状況の傾向を正確に把握することができ、例えばその物品を過不足なく補充することが容易である。
(ロ)誰がどれだけの量を消費したということを一定の期間に亘って追跡調査できるから、利用者に物品の消費量を節約することを促すこともできる。
(ハ)例えば複数の本や書類をケースに入れて管理している場合、持出し時と持込み時とで重量が変化しているときには、持ち出した書類などの一部が紛失している(或いは余分な書類が紛れこんでいる)可能性がある。
【実施例】
【0078】
[実施例1]
(1)本発明のロッカー本体2は、施錠手段でロック可能な物品収納庫Bを有するものであり、例えばキャビネットや箪笥などの家具的なもの、建物の設備と一体となったものでも構わない。
(2)本システムの制御装置40は、適数(一つを含む)の物品収納庫Bの解錠を制御する複数個の制御コンピュータとし、また管理装置56は、それら複数の制御コンピュータと連携して各種機能(サーバー機能を含む)を発揮する一台の管理用コンピュータとすることができる。
(3)すなわち、制御装置40で解錠操作に必要なマスターデータ(データベースや生体認証データ)は、管理装置56で作製し、マスタデータ配信処理で各制御装置40へ送信することができる。
(4)この機能により、管理装置が未稼働の状態でも各制御装置40が稼動することが可能となる。
【0079】
[実施例2]
(1)管理装置56は、用途の異なる複数のロッカー本体(書庫、貴重品庫、更衣室ロッカーなど)を管理することができ、例えば表1〜表3のような動作履歴を表す画面のタイトル(「書庫」や「薬品庫」など)を表示しかつ変更することができる。
(2)管理装置56は、少なくともシステムの管理者が利用者を登録する機能、ロッカー本体の情報を登録する機能、各物品収納庫Bの状況を監視する機能、各物品収納庫Bの解錠・施錠・物品の持込み・持出しの履歴を監視する機能を有する。管理装置56は、管理者毎にどこまでの機能を使用可能とするかを設定できるものとする。
【0080】
[実施例3]
(1)各制御装置40に対して解錠操作が可能な利用者は、一人でも複数でもよい。
(2)制御装置40での認証作業では、生体認証の他に、パスワード入力を要求してもよい。利用者が生体認証手続及びパスワード入力を行った後、制御装置40は、表示盤44に解錠表示、或いはエラー表示を行うようにすることができる。
【符号の説明】
【0081】
2…ロッカー本体 3…ケーシング 4…縦板部 6…水平盤
6a…下板部 6b…上板部 7…貫通孔 8…背板部
10…設備収納室 12…物品収納室 14…係合部 16、18…扉
17A…取付凹部 17B…取付孔 20…枢着軸
24…施錠手段 24a…係合部 24b…被係合部 28…コントローラ機構
30…制御部 32…第1生体認証用センサ 34…物品センサ
36…入力突子 38…物品載置台 40…制御装置 42…操作パネル
43…ボタン 44…表示盤 46…IO装置
50…管理部 52…第2生体認証用センサ
54…表示手段56…管理装置 58…記憶手段
60…通信回線 62…接続端子
A…検知用エリア B…物品収納庫 C…物品収納具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品収納室(12)の開口部に扉(18)を付設し、この扉をロックするための施錠手段(24)を設けたロッカー本体(2)と、
扉(18)の解除操作をする人の生体情報を読み取るとともに、認証用の情報と照合して認証が成立した場合のみ解除操作に応じて施錠手段24に解錠信号を送る制御部(30)を有し、この制御部が形成した扉(18)の施解錠の履歴及び解錠者の識別情報を管理部(50)に経時的に記憶するように形成したコントローラ機構(28)を具備し、
上記制御部(30)は、さらに物品収納室(12)内の検知用エリア(A)への物品の持込み及び検知用エリア(A)からの物品の持出しを検知することが可能な物品センサ(34)を有しており、
上記管理部(50)は、制御部(30)が送信した扉の施錠、解錠、物品の持込み、及び物品の持出しの各事象の情報を、少なくともそれら各事象の生じた順序が判るように記憶する機能を有することを特徴とする、利用者認証機能付きロッカーシステム。
【請求項2】
上記コントローラ機構(28)は、物品を持ち出した時刻及び物品を持ち込んだ時刻、或いは扉を施錠した時刻及び扉を解錠した時刻を記憶することを特徴とする、請求項1記載の利用者認証機能付きロッカーシステム。
【請求項3】
上記検知用エリア(A)は、物品を載置するための載置面とし、
上記物品センサ(34)は、上記検知用エリア(A)に置かれた物品の位置・荷重など、当該物品が検知用エリアの上にあることを示す情報量を、少なくとも扉が解錠されている状態で継続的に測定し、その情報量の変化により検知用エリア(A)への物品の持込み及び検知用エリア(A)からの物品の持出しを検知するように形成したことを特徴とする、請求項2に記載の利用者認証機能付きロッカーシステム。
【請求項4】
上記物品センサ(34)は、上記検知用エリア(A)に置かれた物品の荷重圧力を検知する機能を有したことを特徴とする、請求項3に記載の利用者認証機能付きロッカーシステム。
【請求項5】
上記物品センサ(34)は、物品の荷重を測定する機能を有し、この荷重の変化を、扉(18)の開閉及び物品の持込み及び持出しの記録とともにコントローラ機構28に記憶するように構成したことを特徴とする、請求項4に記載の利用者認証機能付きロッカーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−57371(P2012−57371A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202223(P2010−202223)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(395014334)
【出願人】(510243643)
【Fターム(参考)】