説明

到来角推定装置及びその動作方法並びに記録媒体

【課題】曖昧性の問題を効率よく解決することができる到来角推定装置及びその動作方法並びに動作方法を記録した記録媒体を提供する。
【解決手段】到来角推定装置の動作方法であって、受信信号に対するアレイアンテナに含まれたアンテナエレメントにおける位相差を示す第1ステアリングベクトルを算出するステップと、前記第1ステアリングベクトルに基づいて前記受信信号の到来角に対する2つ以上の候補値を導き出すステップと、前記到来角推定装置が所定の回転角だけ回転することに対応する第2ステアリングベクトルを検出するステップと、前記第2ステアリングベクトルと前記所定の回転角とに基づいて選択された前記2つ以上の候補値の内の1つの候補値を用いて前記到来角を決定するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、多重アンテナを用いて入射角または到来角を推定する技術に関し、より詳細には曖昧性(ambiguity)の問題を解消することで、より正確に到来角を推定することのできる到来角推定装置及びその動作方法並びに記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、位置情報に基づくサービス(Location Based Service:LBS)を提供するためには、ユーザの位置を推定する測位(Localization)技術が要求される。測位技術は位置を推定する方式によって三角測量方式、近接(proximity)方式、フィンガープリント(finger−print)方式があり、用いられる媒体によってセルラーシステムの基地局を用いる方式及びGPS衛星システムを用いる方式がある。
【0003】
三角測量方式は、距離を用いる方式及び角度を用いる方式に区別され得る。距離を用いる方式は少なくとも3つの基準点から送信された信号のTOA(Time of Arrival)又はTDOA(Time Difference of Arrival)などを用いて受信地点の位置を算出する。また、角度を用いる方式は、少なくとも2つの基準点から送信された信号の到来角(Angle of Arrival:AoA)又は入射角を用いて受信地点の位置を算出する。
【0004】
到来角又は入射角を推定する方法は、指向性アンテナを用いる方法及びアレイアンテナを用いる方法に分類されうる。指向性アンテナを用いる方法は、固定された指向性放射パターンを順次回転しながら受信信号の入射角又は到来角をスキャニングする。また、アレイアンテナを用いる方法は、アレイアンテナに含まれたアンテナエレメントそれぞれにおける受信信号に基づいて入射角又は到来角を推定する。
しかしながら、アレイアンテナを用いる方法においては、曖昧性(ambiguity)が生じうるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は上記従来のアレイアンテナを用いる方法における問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、曖昧性の問題を効率よく解決することができる到来角推定装置及びその動作方法並びに動作方法を記録した記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本発明による到来角推定装置の動作方法は、到来角推定装置の動作方法であって、受信信号に対するアレイアンテナに含まれたアンテナエレメントにおける位相差を示す第1ステアリングベクトルを算出するステップと、前記第1ステアリングベクトルに基づいて前記受信信号の到来角に対する2つ以上の候補値を導き出すステップと、前記到来角推定装置が所定の回転角だけ回転することに対応する第2ステアリングベクトルを検出するステップと、前記第2ステアリングベクトルと前記所定の回転角とに基づいて選択された前記2つ以上の候補値の内の1つの候補値を用いて前記到来角を決定するステップとを有することを特徴とする。
【0007】
前記到来角を決定するステップは、前記第2ステアリングベクトルに対する複数の候補に関する情報を予め格納するメモリを用いて前記到来角を決定するステップであることが好ましい。
前記第2ステアリングベクトルの候補に関する情報は、前記到来角に対する前記2つ以上の候補値それぞれに対して、前記所定の回転角に対応する前記第2ステアリングベクトルの候補に関する情報を含むことが好ましい。
前記到来角推定装置の回転角を測定するステップをさらに有することが好ましい。
前記到来角を決定するステップは、前記第2ステアリングベクトルに対する前記候補のうち前記第2ステアリングベクトルと最も類似する1つの候補を抽出するステップと、前記第2ステアリングベクトルと前記最も類似する1つの候補を用いて前記到来角を推定するステップとを含むことが好ましい。
前記アレイアンテナは、全方向性アンテナであるか、前記アンテナエレメント間の間隔が半波長より長いか同一であることが好ましい。
【0008】
また、上記目的を達成するためになされた本発明による到来角推定装置の動作方法は、到来角推定装置の動作方法であって、対象装置からの受信信号に対するアレイアンテナに含まれたアンテナエレメントにおける位相差を示す第1ステアリングベクトルを算出するステップと、前記第1ステアリングベクトルに基づいて前記受信信号の到来角に対する2つ以上の候補値を導き出すステップと、前記対象装置が向かう方向と前記到来角推定装置が向かう方向との間の角度が所定の回転角である場合、前記到来角推定装置から前記対象装置への第2ステアリングベクトルに関する情報を前記対象装置から受信するステップと、前記対象装置の前記所定の回転角と前記第2ステアリングベクトルに関する情報とに基づいて選択される前記2つ以上の候補値の内の1つの候補値を用いて前記到来角を決定するステップとを有することを特徴とする。
【0009】
前記到来角を決定するステップは、前記対象装置の回転と前記到来角推定装置の回転との間の双対性(duality)に基づいて前記到来角を決定するステップであることが好ましい。
前記到来角を決定するステップは、前記所定の回転角に対応する前記到来角推定装置の仮想回転角を認識するステップと、前記到来角推定装置が前記仮想回転角だけ仮想に回転することに対応する前記第2ステアリングベクトルに対する複数の候補の内から前記第2ステアリングベクトルと最も類似する1つの候補を抽出するステップと、前記第2ステアリングベクトルと最も類似する前記1つの候補を用いて前記到来角を推定するステップとを含むことが好ましい。
前記第2ステアリングベクトルの複数の候補は、予めメモリに格納されていることが好ましい。
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明によるコンピュータで読み出し可能な記録媒体は、到来角推定装置の動作方法を行うためのプログラムが記録されていることを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するためになされた本発明による到来角推定装置は、到来角推定装置であって、対象装置から前記到来角推定装置への第1ステアリングベクトルを算出し、前記到来角推定装置が第1回転角だけ回転することに対応する第2ステアリングベクトルを算出するために受信信号に対するアレイアンテナに含まれたアンテナエレメントにおける位相差を算出する位相差算出器と、前記第1ステアリングベクトルに基づいて前記受信信号の到来角に対する2つ以上の候補値を導き出す候補値導出器と、前記第2ステアリングベクトルと前記第1回転角に基づいて選択された前記2つ以上の候補値の内の1つの候補値を用いて前記到来角を決定する到来角決定器とを有することを特徴とする。
【0012】
前記到来角推定装置の回転角を測定するセンサをさらに有することが好ましい。
前記到来角推定装置が向かう方向と前記対象装置が向かう方向との間の角度が第2回転角である場合、前記到来角推定装置から前記対象装置への第3ステアリングベクトルに関する情報を前記対象装置から受信する情報受信部をさらに有し、前記到来角決定器は、前記第2回転角と前記第3ステアリングベクトルに関する情報とに基づいて選択される前記2つ以上の候補値の内の1つの候補値を用いて前記到来角を決定することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る到来角推定装置及びその動作方法並びに記録媒体によれば、到来角推定装置の回転に応答して第2ステアリングベクトルを検出し、その第2ステアリングベクトルを用いて到来角を推定することによって、曖昧性の問題を効率よく解決することができるという効果がある。
また、曖昧性の問題が発生しなくても第2ステアリングベクトルを用いることによって、より正確に到来角を推定することができるという効果がある。
また、到来角推定装置が回転できない場合にも対象装置の回転を用いて曖昧性の問題を効率よく解決することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】受信信号に対するアレイアンテナのアンテナエレメントにおける位相差を示す図である。
【図2】アンテナエレメント間の間隔が一波長であるユニフォーム線形アレイアンテナシステムに対して受信信号の入射角が0°、90°、180°、270°の場合に受信信号のビームパターンを示す図である。
【図3】アンテナエレメント間の間隔が一波長であるユニフォーム線形アレイアンテナシステムに対して、受信信号の入射角が0°であり回転角が20°である場合の受信信号のビームパターンと、受信信号の入射角が90°であり回転角が20°である場合の受信信号のビームパターンを示す図である。
【図4】アンテナエレメント間の間隔が一波長であるユニフォーム線形アレイアンテナシステムに対して、受信信号の入射角が180°であり回転角が20°である場合の受信信号のビームパターンと、受信信号の入射角が270°であり回転角が20°である場合の受信信号のビームパターンを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る到来角推定装置の動作方法を説明するためのフローチャートである。
【図6】対象装置が回転する場合、到来角推定装置および対象装置の関係を示す図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る到来角推定装置の動作方法を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態に係る到来角推定装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る到来角推定装置及びその動作方法を実施するための形態の具体例を図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、受信信号に対するアレイアンテナのアンテナエレメントにおける位相差を示す図である。
図1を参照すると、通信装置に設けられたアレイアンテナは3つのアンテナエレメントAnt1、Ant2、Ant3を含む。
【0017】
このとき、ウェーブベクトルが

である平面波(plane wave)がアレイアンテナに所定の入射角θとして入る場合、アンテナエレメントの位置に応じて受信信号に対するアンテナエレメントは所定の位相差を有する。一般に、入射角(または到来角)θを推定するために第1ステアリングベクトル

が用いられ、第1ステアリングベクトル

はアンテナエレメントの間の位相差に基づいた以下の数式1のように定義される。
【0018】
【数1】

ここで、

はm番目のアンテナエレメントの位置を示すベクトルであり、Nはアンテナエレメントの数である。
【0019】
入射角θを推定するためには互いに異なる入射角それぞれに対応するステアリングベクトルが互いに区別されるようにアレイアンテナを設けなければならない。
すなわち、入射角θおよびθが互いに異なる場合、θに対応するステアリングベクトル

とθに対応するステアリングベクトル

が互いに異なるようにアレイアンテナを設けなければならない。
【0020】
しかし、アレイアンテナを計画的に設けていない場合、入射角θおよびθに対して同一のステアリングベクトルが生成され得るが、これを入射角の曖昧性の問題という。
曖昧性の問題が発生する場合に入射角になり得る様々な候補が発生し、このような候補のうちいずれか1つを実際の入射角に推定することは困難である。
【0021】
また、ユニフォーム線形アレイ(uniform linear array)アンテナにおいて、アンテナエレメント間の間隔は全てdとして同一であり、第1ステアリングベクトルは下記の数式2のように表される。
【0022】
【数2】

ここで、λは波長である。
【0023】
このとき、ユニフォーム線形アレイアンテナも曖昧性の問題を有することがあり、その曖昧性の問題は下記の数式3のように表される。
【数3】

【0024】
ユニフォーム線形アレイアンテナで入射角を推定する場合、アンテナエレメントが平行に立ち並んでいる方向を基準にして前面と後面の同一の角度(+θと−θ)に入ってくる信号に対して同一のステアリングベクトルが形成される。すなわち、

が成り立つ。また、アンテナエレメント間の間隔(d)が半波長以上である場合、2つの互いに異なる角度に対して同一のステアリングベクトルが生成されることから、曖昧性の問題が発生する。
【0025】
したがって、このような曖昧性の問題を克服するためにアンテナエレメント間の間隔を半波長以下に維持したり、指向性アンテナを用いることが提案される。ただしアレイアンテナを用いる場合、空間ダイバシティなどを用いて効率を向上させるためにはアンテナエレメント間の間隔を一波長以上に維持する方が好ましく、指向性アンテナでなく全方向性(omni−directional)アンテナを用いる方が好ましい。
【0026】
従って、全方向性アンテナを用いてアンテナエレメント間の間隔を一波長以上に維持できるけれども、曖昧性の問題を解決する技術が必要である。
以下で詳細に説明するが、本発明の実施形態は互いに異なる入射角に対して同一のステアリングベクトルが生成された場合、対象装置又は到来角推定装置を所定の回転角だけ回転して第2ステアリングベクトルを把握した後、その第2ステアリングベクトルを用いることによって、曖昧性の問題を解決すると同時に所望する入射角を正確に推定することができる。
【0027】
図2は、アンテナエレメント間の間隔が一波長であるユニフォーム線形アレイアンテナシステムに対して、受信信号の入射角が0°、90°、180°、270°である場合の受信信号のビームパターンを示す図である。
【0028】
図2に示すように、受信信号の入射角が0°、90°、180°、270°である場合には、1つの同一のビームパターンが形成される。すなわち、互いに異なる4個の入射角が存在しても1つのビームパターンが形成され、これは互いに異なる4個の入射角に対するステアリングベクトルが全て同一であることを意味する。
【0029】
図2に示すビームパターンに対応する1つのステアリングベクトルから導き出されることができる入射角は0°、90°、180°、270°になるため、到来角推定装置はいかなる入射角で信号が受信されているかを判断することはできない。
しかしながら、本発明の実施形態では、所定の回転角Δθだけ、到来角推定装置を回転した後、第2ステアリングベクトルを把握して第2ステアリングベクトルに基づいて最初の入射角が0°、90°、180°、270°のうちいずれかであるかを判断することができる。
【0030】
図3は、アンテナエレメント間の間隔が一波長であるユニフォーム線形アレイアンテナシステムに対して、受信信号の入射角が0°であり、回転角が20°である場合の受信信号のビームパターンと、受信信号の入射角が90°であり回転角が20°である場合の受信信号のビームパターンを示す図である。
【0031】
図2及び図3に示すように、受信信号の入射角が0°であり到来角推定装置が20°だけ回転した場合、図2に示すビームパターンは図3の“310”に記載されたビームパターンのように変化する。
また、受信信号の入射角が90°であり、到来角推定装置が20°だけ回転した場合、図2に示すビームパターンは図3の“320”に記載されたビームパターンのように変化する。
【0032】
到来角推定装置を20°だけ回転した後に現れるビームパターン(または第2ステアリングベクトル)を参照することにより、最初の入射角が0°、90°のいずれであるかを判断する。もし、到来角推定装置を20°だけ回転した後に現れるビームパターン(または第2ステアリングベクトル)が図3の“310”と類似していれば、最初の入射角は約0°であると推定され、図3の“320”と類似していれば、最初の入射角は約90°であると推定してもよい。
【0033】
図4は、アンテナエレメント間の間隔が一波長であるユニフォーム線形アレイアンテナシステムに対して、受信信号の入射角が180°であり回転角が20°である場合の受信信号のビームパターンと、受信信号の入射角が270°であり回転角が20°である場合の受信信号のビームパターンを示す図である。
【0034】
図2及び図4を参照すると、受信信号の入射角が180°であり到来角推定装置が20°だけ回転した場合、図2に示すビームパターンは図4の“410”に記載されたビームパターンのように変化する。
また、受信信号の入射角が270°であり到来角推定装置が20°だけ回転した場合、図2に示すビームパターンは図4の“420”に記載されたビームパターンのように変化する。
【0035】
到来角推定装置を20°だけ回転した後に現れるビームパターン(または第2ステアリングベクトル)を参照することにより、最初の入射角が180°、270°のいずれかであるかを判断することができる。もし、到来角推定装置を20°だけ回転した後に現れるビームパターン(または第2ステアリングベクトル)が図4に示す“410”と類似していれば、最初の入射角は約180°であると推定してもよく、図4に示す“420”と類似していれば、最初の入射角は約270°であると推定してもよい。
【0036】
従って、本発明の実施形態では、到来角推定装置を所定の回転角だけ回転した後に現れるビームパターン又は第2ステアリングベクトルの候補を予めメモリに格納しておき、実際のビームパターン又は実際の第2ステアリングベクトルがどの候補と類似するかをチェックすることによって、最初の入射角を判断することができる。
【0037】
図5は、本発明の一実施形態に係る到来角推定装置の動作方法を説明するための動作フローチャートである。
図5に示すように、本発明の一実施形態に係る到来角推定装置は、アレイアンテナを用いて受信信号に対するアンテナエレメント間の位相差を算出し、第1ステアリングベクトルを算出する(ステップS510)。
【0038】
次に、曖昧性の問題に起因する第1ステアリングベクトルに対応する入射角の候補値は複数存在し、到来角推定装置はその中から2つ以上の候補値を導き出す(ステップS520)。
【0039】
次に、到来角推定装置は、予め設けられたセンサ(例えば、磁力計(magnetometer))を用いて到来角推定装置の回転角を測定する(ステップS530)。
【0040】
次に、到来角推定装置は、測定された回転角に対応する第2ステアリングベクトルを検出する(ステップS540)。
【0041】
次に、到来角推定装置は、第2ステアリングベクトルの候補の内から第2ステアリングベクトルと最も類似する候補を抽出する(ステップS550)。
このとき、測定された回転角に対する第2ステアリングベクトルの候補は予めメモリに格納されている。
【0042】
次に、到来角推定装置は、抽出された候補に基づいて到来角を推定する(ステップS560)。
例えば、抽出された候補が到来角50°に対応する場合、到来角推定装置は、到来角を50°と推定する。
【0043】
到来角推定装置が常に回転できるものではない。例えば、到来角推定装置が無線LANの固定APに設けられた場合、到来角推定装置が回転することは難しいこともある。
このとき、本発明の実施形態は、到来角推定装置を回転する代りに、対象装置(すなわち、信号を送信する装置)が向かう方向に相当する対象装置の回転角を用いて到来角を推定してもよい。これに対しては下記で詳細に説明する。
【0044】
図6は、対象装置が回転している場合の、到来角推定装置及び対象装置の関係を示す図である。
図6に示すように、対象装置620から到来角推定装置610に入射角θの信号が入る。
【0045】
そして、対象装置620が向かっている方向(B方向)は到来角推定装置610が向かっている方向(A方向)から回転角αだけ回転している。すなわち、対象装置620が向かう方向と到来角推定装置610が向かう方向との間の角度は、回転角αとして表現される。
【0046】
このとき、対象装置620で推定された到来角推定装置610からの信号に対する入射角は、双対性によって「π+θ+α」となる。すなわち、対象装置620が到来角推定装置610からの信号に対する入射角を推定することは、到来角推定装置610が「π+α」だけ回転した後、対象装置620からの信号に対する入射角の推定と同じであると見なされる。
【0047】
したがって、本発明の実施形態によれば、対象装置620と到来角推定装置610とは互いに情報を交換することによって、曖昧性の問題を克服しながら対象装置620から到来角推定装置610への信号に対する入射角を推定することができる。それだけではなく、本発明の実施形態によれば、より正確に対象装置620から到来角推定装置610への信号に対する入射角を推定することができる。
【0048】
上述した内容を整理すれば、下記の数式4が導き出される。
【数4】

【0049】
図7は、本発明の他の実施形態に係る到来角推定装置の動作方法を説明するためのフローチャートである。
図7に示すように、到来角推定装置は、対象装置からの受信信号に対するアレイアンテナに含まれたアンテナエレメントにおける位相差を示す第1ステアリングベクトルを算出する(ステップS710)。
【0050】
次に、到来角推定装置は第1ステアリングベクトルに基づいて到来角に対する2つ以上の候補値を導き出す(ステップS720)。このとき、曖昧性の問題によって第1ステアリングベクトルだけを用いては対象装置からの受信信号の到来角を検出することができない。
【0051】
次に、到来角推定装置は、到来角推定装置が向かう方向と対象装置が向かう方向との間の角度が「所定の回転角」である場合、到来角推定装置は、到来角推定装置から対象装置への第2ステアリングベクトルに関する情報を対象装置から受信する(ステップS730)。
【0052】
ここで、第2ステアリングベクトルに関する情報は、対象装置の回転角に関する情報、第2ステアリングベクトルに対応するビームパターンに関する情報などを含んでもよい。
【0053】
次に、到来角推定装置は、第2ステアリングベクトルに関する情報に基づいて対象装置の回転角を認識する(ステップS740)。
ここで、対象装置の回転角は、到来角推定装置が向かう方向と対象装置が向かう方向との間の角度を意味する。
【0054】
次に、到来角推定装置は、対象装置の回転角に対応する到来角推定装置の仮想の回転角を認識する(ステップS750)。
すなわち、到来角推定装置は双対性を用いて仮想の回転角を認識することができる。
【0055】
次に、到来角推定装置は、到来角推定装置が仮想の回転角だけ回転した場合に生成される第2ステアリングベクトルの候補の内から実際の第2ステアリングベクトルと類似する候補を抽出する(ステップS760)。
ここで、2つのベクトルが互いに類似するということは、2つのベクトルに対応するビームパターンが互いに類似することと等価的な意味である。
【0056】
そして、到来角推定装置は、第2ステアリングベクトルと最も類似する1つの候補を用いて到来角を推定する(ステップS770)。
【0057】
図8は、本発明の一実施形態に係る到来角推定装置を示すブロック図である。
図8に示すように、本発明の一実施形態に係る到来角推定装置は、MIMO受信器810、位相差算出器820、候補値導出器830、到来角決定器840、情報受信部850、センサ860、及びメモリ870を含む。
【0058】
MIMO受信器810は、アンテナエレメントから受信した信号を結合する。結合された信号は情報受信部850に提供される。
【0059】
位相差算出器820は、受信信号に対するアレイアンテナに含まれたアンテナエレメントにおける位相差を算出する。このような位相差に基づいて第1ステアリングベクトルが定義される。
【0060】
候補値導出器830は、第1ステアリングベクトルに基づいて受信信号の到来角に対する2つ以上の候補値を導き出す。
【0061】
また、位相差算出器820は、到来角推定装置が所定の回転角だけ回転することに対応する第2ステアリングベクトルを検出するために位相差を算出する。
【0062】
到来角決定器840は、第2ステアリングベクトルと到来角推定装置の回転角とに基づいて選択された2つ以上の候補値の内の1つの候補値を用いて到来角を決定する。ここで、到来角推定装置の回転角は、センサ860によって測定される。
【0063】
メモリ870は、第2ステアリングベクトルの複数の候補を格納し、到来角決定機840は、メモリ870に格納された候補の内の1つの候補を用いて到来角を決定する。
【0064】
情報受信部850は、アンテナエレメントで受信されて結合された信号を用いて対象装置によって提供された情報を認識する。例えば、到来角推定装置から対象装置への方向が第2回転角だけ回転している場合(すなわち、到来角推定装置が向かう方向と対象装置が向かう方向との間の角度が第2回転角である場合)、情報受信部850は、到来角推定装置から対象装置への第3ステアリングベクトルに関する情報を対象装置から受信する。
このとき、到来角決定器840は、第2回転角と第3ステアリングベクトルに関する情報とに基づいて選択された2つ以上の候補値の内の1つの候補値を用いて到来角を決定する。
【0065】
図8に示す到来角推定装置に対しては、図1〜図7に基づいて説明された内容がそのまま適用されてもよいため、より詳細な説明は省略する。
【0066】
上述した到来角推定装置の動作方法は、多様なコンピュータ手段を介して実行することができるプログラム命令形態に具現され、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録されることができる。
コンピュータ読取可能な記録媒体は、プログラム命令、データファイル、データ構造などを単独又は組み合わせて含んでもよい。記録媒体に記録されるプログラム命令は、本発明の目的のために特別に設計されて構成されたものでもよく、コンピュータソフトウェア分野の技術を有する当業者にとって公知であり使用可能なものであってもよい。
コンピュータ読取可能な記録媒体の例としては、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク及び磁気テープのような磁気媒体、CD−ROM、DVDのような光記録媒体、フロプティカルディスクのような磁気−光媒体、及びROM、RAM、フラッシュメモリなどのようなプログラム命令を保存して実行するように特別に構成されたハードウェア装置が含まれる。
プログラム命令の例としては、コンパイラによって生成されるような機械語コードだけでなく、インタプリタなどを用いてコンピュータによって実行され得る高級言語コードを含む。上述のハードウェア装置は、本発明の動作を行うために1つ以上のソフトウェア階層で作動するように構成され、その逆も同様である。
【0067】
尚、本発明は、上述の実施形態に限られるものではない。本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
610 到来角推定装置
620 対象装置
810 MIMO受信器
820 位相差算出器
830 候補値導出器
840 到来角決定器
850 情報受信部
860 センサ
870 メモリ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
到来角推定装置の動作方法であって、
受信信号に対するアレイアンテナに含まれたアンテナエレメントにおける位相差を示す第1ステアリングベクトルを算出するステップと、
前記第1ステアリングベクトルに基づいて前記受信信号の到来角に対する2つ以上の候補値を導き出すステップと、
前記到来角推定装置が所定の回転角だけ回転することに対応する第2ステアリングベクトルを検出するステップと、
前記第2ステアリングベクトルと前記所定の回転角とに基づいて選択された前記2つ以上の候補値の内の1つの候補値を用いて前記到来角を決定するステップとを有することを特徴とする到来角推定装置の動作方法。
【請求項2】
前記到来角を決定するステップは、前記第2ステアリングベクトルに対する複数の候補に関する情報を予め格納するメモリを用いて前記到来角を決定するステップであることを特徴とする請求項1に記載の到来角推定装置の動作方法。
【請求項3】
前記第2ステアリングベクトルの候補に関する情報は、前記到来角に対する前記2つ以上の候補値それぞれに対して、前記所定の回転角に対応する前記第2ステアリングベクトルの候補に関する情報を含むことを特徴とする請求項2に記載の到来角推定装置の動作方法。
【請求項4】
前記到来角推定装置の回転角を測定するステップをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の到来角推定装置の動作方法。
【請求項5】
前記到来角を決定するステップは、前記第2ステアリングベクトルに対する前記候補のうち前記第2ステアリングベクトルと最も類似する1つの候補を抽出するステップと、
前記第2ステアリングベクトルと前記最も類似する1つの候補を用いて前記到来角を推定するステップとを含むことを特徴とする請求項2に記載の到来角推定装置の動作方法。
【請求項6】
前記アレイアンテナは、全方向性アンテナであるか、前記アンテナエレメント間の間隔が半波長より長いか同一であることを特徴とする請求項1に記載の到来角推定装置の動作方法。
【請求項7】
到来角推定装置の動作方法であって、
対象装置からの受信信号に対するアレイアンテナに含まれたアンテナエレメントにおける位相差を示す第1ステアリングベクトルを算出するステップと、
前記第1ステアリングベクトルに基づいて前記受信信号の到来角に対する2つ以上の候補値を導き出すステップと、
前記対象装置が向かう方向と前記到来角推定装置が向かう方向との間の角度が所定の回転角である場合、前記到来角推定装置から前記対象装置への第2ステアリングベクトルに関する情報を前記対象装置から受信するステップと、
前記対象装置の前記所定の回転角と前記第2ステアリングベクトルに関する情報とに基づいて選択される前記2つ以上の候補値の内の1つの候補値を用いて前記到来角を決定するステップとを有することを特徴とする到来角推定装置の動作方法。
【請求項8】
前記到来角を決定するステップは、前記対象装置の回転と前記到来角推定装置の回転との間の双対性(duality)に基づいて前記到来角を決定するステップであることを特徴とする請求項7に記載の到来角推定装置の動作方法。
【請求項9】
前記到来角を決定するステップは、前記所定の回転角に対応する前記到来角推定装置の仮想回転角を認識するステップと、
前記到来角推定装置が前記仮想回転角だけ仮想に回転することに対応する前記第2ステアリングベクトルに対する複数の候補の内から前記第2ステアリングベクトルと最も類似する1つの候補を抽出するステップと、
前記第2ステアリングベクトルと最も類似する前記1つの候補を用いて前記到来角を推定するステップとを含むことを特徴とする請求項7に記載の到来角推定装置の動作方法。
【請求項10】
前記第2ステアリングベクトルの複数の候補は、予めメモリに格納されていることを特徴とする請求項9に記載の到来角推定装置の動作方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の到来角推定装置の動作方法を行うためのプログラムが記録されていることを特徴とするコンピュータで読み出し可能な記録媒体。
【請求項12】
到来角推定装置であって、
対象装置から前記到来角推定装置への第1ステアリングベクトルを算出し、前記到来角推定装置が第1回転角だけ回転することに対応する第2ステアリングベクトルを算出するために受信信号に対するアレイアンテナに含まれたアンテナエレメントにおける位相差を算出する位相差算出器と、
前記第1ステアリングベクトルに基づいて前記受信信号の到来角に対する2つ以上の候補値を導き出す候補値導出器と、
前記第2ステアリングベクトルと前記第1回転角に基づいて選択された前記2つ以上の候補値の内の1つの候補値を用いて前記到来角を決定する到来角決定器とを有することを特徴とする到来角推定装置。
【請求項13】
前記到来角推定装置の回転角を測定するセンサをさらに有することを特徴とする請求項12に記載の到来角測定装置。
【請求項14】
前記到来角推定装置が向かう方向と前記対象装置が向かう方向との間の角度が第2回転角である場合、前記到来角推定装置から前記対象装置への第3ステアリングベクトルに関する情報を前記対象装置から受信する情報受信部をさらに有し、
前記到来角決定器は、前記第2回転角と前記第3ステアリングベクトルに関する情報とに基づいて選択される前記2つ以上の候補値の内の1つの候補値を用いて前記到来角を決定することを特徴とする請求項12に記載の到来角推定装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−169895(P2011−169895A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27182(P2011−27182)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】